JPH079092Y2 - 血沈管 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は血沈管に関するものである。

〔従来の技術〕

従来の血沈管は両端が開口し、長さ30cm、内径3mmのガ
ラス管によって作られている。このガラス管の一端開口
から20cmにわたり1mm目盛りが付けられている。そし
て、このような従来の血沈管を使用して血沈検査を行な
うが、この血沈検査は次のようにして行なわれる。ま
ず、血液に血液抗凝固剤、例えば、３、８％クエン酸ナ
トリウムを添加し、人が吸うことにより血沈管内を減圧
して、血液を血沈管の０点（基点）まで入れ、又は注射
器等で血液を血沈管の０点まで入れていた。次に、この
血沈管を垂直に静置し、時間ごとの赤血球の沈降した界
面を測定する。そして、血沈検査の終了後は、使用した
血沈管を洗浄、滅菌、乾燥等を行ない、血沈管を再生使
用している。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、上述の血沈管を使用して血沈検査を行な
うには、まず、人が口で吸ったり、注射器を使用して血
沈管の０点まで血液を入れる必要がある。この操作は、
単純ではあるが、意外に熟練をよするものであり、且
つ、このような手作業は時間がかかり、多数検体を短時
間で処理することは困難である。又、上述のような作業
過程、若しくは、再生使用による洗浄、滅菌、乾燥など
の作業過程において、医療従事者が血液に由来する疾
病、例えば、ウィルス性肝炎、AIDS等の院内感染の可能
性があり、しかも、再生使用に伴う作業も手間かがかか
る。更に、上述の血沈管を長期にわたり使用している
と、壁面に脂肪、蛋白質等が付着して、洗浄が不完全に
なりやすく、得られたデータが不完全になる虞がある。

そこで、本考案は、上記事情に鑑みてなされたもので、
操作が容易で時間がかからず、医療従事者が血液に由来
する疾病に感染することなく、しかも、得られたデータ
の信頼性の高い血沈管を得ることを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記課題を解決するため、本考案の血沈管は均一な内径
を有し両端開口の合成樹脂管のいずれか一方の開口を、
0.03〜0.75の範囲の勾配を有すると共に多孔性合成樹脂
体の長さ寸法より長いテーパ状ガイドに形成して空気吸
引口とし、該空気吸引口から前記合成樹脂管の内径寸法
の少なくとも12倍離れた前記合成樹脂管内の所定位置に
前記多孔性合成樹脂体を挿着し、いずれか他方の開口を
液体流入口とし、前記多孔性合成樹脂体は、熱可塑性樹
脂を半融成形により得た多孔質体内にキセロゲル状態の
高吸水性高分子を密着させることで、気体は通過するが
液体は通過させない特性を有してなるものである。

又、液体流入口側から合成樹脂管に目盛を付け、多孔性
合成樹脂体の一端面が前記目盛の基点となるように、前
記合成樹脂管内に前記多孔性合成樹脂体を挿着すると良
い。

〔作用〕

上記構成の血沈管によれば、合成樹脂管内にテーパ状ガ
イドの空気吸引口から多孔性合成樹脂体のほぼ全部を挿
入でき、そのあと合成樹脂管の内径寸法の少なくとも12
倍離れた合成樹脂管内の所定位置に、多孔性合成樹脂体
を押込み挿着させることができ、人が口で空気吸引口側
から空気を吸引して血沈管を使用するような場合でも、
多孔性合成樹脂体をダ液などにより反応させることな
く、血液等の液体は、所定位置に装着された多孔性合成
樹脂体の一端面まで直ちに流入し、多孔性合成樹脂体に
よりそれ以上流入しない。このあと、血沈管を垂直にし
て赤血球の沈降状態を所定時間ごとに測定する。

又、流体流入口側から目盛を付け、この目盛の基点とな
る位置に多孔性合成樹脂体の一端面が位置するようにし
たもので、テーパ状ガイドの空気吸引口側から吸引すれ
ば血液等の液体は目盛の基点まで直ちに流入し、多孔性
合成樹脂体によりそれ以上流入しない。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を添付図面に基づいて詳述する。

図面は本考案の血沈管の斜視図である。同図において、
１は血沈管を示し、該血沈管１は、例えば、ポリエチレ
ン、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂管２
から作られている。この合成樹脂管２は内径が均一に形
成され且つ両端が開口している。合成樹脂管２の一端開
口はテーパ状ガイドを形成した空気吸引口４となってお
り、このテーパ状ガイドは、合成樹脂管２内の所定位置
に多孔性合成樹脂体５を挿着させ易いように設けられた
ものである。

このテーパ状ガイドは、0.03〜0.75の範囲の勾配を有す
ると共に多孔性合成樹脂体５の長さ寸法より長くなって
いる。すなわち、このテーパ状ガイドの勾配が0.03〜0.
75の範囲であると、長さ方向に10mm進むことにより、
（0.3mm〜7.5mm）×２倍＝0.6mm〜15mm径方向に進むこ
とになる。

ここで、合成樹脂管２の内径が2.55mmであり、多孔性合
成樹脂体５の寸法が外形3.0mm、長さ2.8mmであるとする
と、合成樹脂管２内に多孔性合成樹脂体５を容易に挿入
するためには、そのほぼ全体が合成樹脂管２内に容易に
入ることが必要となるから、合成樹脂管２の内径が3.0m
m以上あるテーパ状ガイドの長さ区間が2.8mmあれば良
い。

従って、テーパ状ガイドの勾配が0.03である場合は、テ
ーパ状ガイドの長さは以下のとおりとなる。

（3.0−2.55）mm/（0.03×２）＋2.8mm＝10.3mm また、テーパ状ガイドの勾配が0.75である場合は、テー
パ状ガイドの長さは以下のとおりとなる。

（3.0−2.55）mm/（0.75×２）＋2.8mm＝3.1mm なお、この合成樹脂管２の他端開口は血液等の液体を流
入させる液体流入口３となっている。

この多孔性合成樹脂体５は、気体は通過するが液体は通
過させない特性を有している。

そして、この多孔性合成樹脂体５は、前記所定位置、す
なわち、合成樹脂管２の内径寸法の少なくとも12倍離れ
た合成樹脂管２内に挿着されるから、人が口にて液体を
吸引するような場合に、ダ液が流れても多孔性合成樹脂
体５の後述の止水反応を起こさせにくくしている。

この多孔性合成樹脂体５は、ポリエチレン、ポリプロピ
レン、エチレン、酢酸ビニール共重合体、ポリスチレ
ン、アクリロニトル系共重合体等の熱可塑性樹脂の粉粒
体を半融成形をして得られた多孔質体内に高吸水性高分
子（キセロゲル）を密着させることにより得られるもの
である。

ここで、半融成形とは、上述のような熱可塑性樹脂の粉
粒体を一定形状の金型に充填し、気孔率を調整する目的
で充填層を加圧し、更に、この粉粒体充填層を均一に加
熱して、粒子の接触表面が半融状態で融着した時点で冷
却して、各粒子間空隙が完全に連続した３次元的空間
（気孔）を形成させる成形法をいう。又、高吸水性高分
子とは、ゼラチン、寒天、アラビアガム等の吸水能及び
封止能力のある高分子化合物をいい、キセロゲルとは、
この高吸水性高分子が乾いた状態のことをいう。

従って、前記多孔性合成樹脂体５は、前述の熱可塑性樹
脂の粉粒体を半融成形して得られた多孔質体内にキセロ
ゲル状態の高吸水性高分子を密着させたものであるか
ら、空気等の基体を通すが、血液等の液体が多孔性合成
樹脂体５に接触すると、止水反応、すなわち、キセロゲ
ル状態の高吸水性高分子が液体を瞬時に吸収して、キセ
ロゲル状の高吸水性高分子が膨潤し、液体を通さなくな
る。

この多孔性合成樹脂体５は、その一端面5aが液体流入口
３側から1mmきざみで目盛を付けてあり、20cmのところ
が０点（基点）に位置するように合成樹脂管２内に挿着
されている。

次に、上記構成になる血沈管の使用方法を説明する。

まず、本考案の血沈管１を用意し、クエン酸ナトリウム
により凝固防止された血液の入った試験管等の中に、血
沈管１の液体流入口３を入れる。次に、ポンプ等でテー
パ状ガイドになっている空気吸引口４側から合成樹脂管
２内を減圧すると、液体流入口３から合成樹脂管２内に
血液が入り、この血液が目盛の０点、すなわち、多孔性
合成樹脂体５の一端面5aに達すると、多孔性合成樹脂体
５内に密着したキセロゲル状態の高吸水性高分子が瞬時
に血液中の水分を吸収し膨潤して封止状態になり、血液
は０点にて止まる。

従って、血沈管１内に血液を０点まで入れる操作は、容
易且つ瞬時に行なうことができる。このあと、血沈管１
を垂直にして、赤血球の沈降状態を所定時間ごとに測定
すれば良い。測定後、使用した血沈管１は廃棄する。

〔考案の効果〕

以上詳述したように、本考案の血沈管によれば、合成樹
脂管内にテーパ状ガイドの空気吸引口から多孔性合成樹
脂体のほぼ全部を挿入でき、そのあと合成樹脂管の内径
寸法の少なくとも12倍離れた合成樹脂管内の所定位置
に、多孔性合成樹脂体を押し込み挿着させることがで
き、人が口で空気吸引口側から空気を吸引して血沈管を
使用するような場合でも、多孔性合成樹脂体がダ液など
より反応させることなく、血液等の液体は、所定位置に
挿着された多孔性合成樹脂体の一端面まで直ちに流入
し、多孔性合成樹脂体によりそれ以上流入しない。この
あと、血沈管を垂直にして赤血球の沈降状態を所定時間
ごとに測定することができる。従って、安価な合成樹脂
で作ることが出来、しかも、テーパ状ガイドの空気吸引
口から多孔性合成樹脂体を所定位置に挿着するから製作
が容易になり、血沈管を安価に作ることができる。この
ため、使い捨てが可能になり、従来のように再生使用の
ための洗浄、滅菌、乾燥等の作業がなくなる。又、洗浄
が不完全なために壁面に付着した脂肪、蛋白質によっ
て、得られたデータの信頼性の低下もなくなる。且つ、
このような作業過程がないから、血液に由来するウィル
ス性肝炎、AIDS等の疾病に感染する虞がほとんどない。
又、テーパ状ガイドの空気吸引口側から人が吸引するよ
うな場合であっても、ダ液などが多孔性合成樹脂体に流
れて止水反応を起こすようなこともほとんどなくなり、
血液等の液体は、所定位置に挿着された多孔性合成樹脂
体の一端面に直ちに流入して、それ以上流入しないか
ら、操作が容易で作業時間もわずかになり、人件費も減
少できる。更に、上述の作業過程では血液に触れる機会
がほとんどないから、血液に由来する上記疾病もほとん
どない。

又、液体流入口側から合成樹脂管に目盛を付け、多孔性
合成樹脂体の一端面が前記目盛の基点となるように、前
記合成樹脂管内に前記多孔性合成樹脂体を挿着している
ので、テーパ状ガイドの空気吸引口側から吸引すれば、
血液等の液体は合成樹脂管内に目盛の基点まで直ちに流
入する。従って、目盛の基点まで血液等の液体を入れる
のに調節する必要がないから、血沈検査の基準作業が容
易である。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例にかかる血沈管の斜視図である。 １……血沈管、２……合成樹脂管 ３……液体流入口、４……空気吸引口 ５……多孔性合成樹脂体 5a……一端面

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】均一な内径を有し両端開口の合成樹脂管の
   いずれか一方の開口を、0.03〜0.75の範囲の勾配を有す
   ると共に多孔性合成樹脂体の長さ寸法より長いテーパ状
   ガイドに形成して空気吸引口とし、該空気吸引口から前
   記合成樹脂管の内径寸法の少なくとも12倍離れた前記合
   成樹脂管内の所定位置に前記多孔性合成樹脂体を挿着
   し、いずれか他方の開口を液体流入口とし、前記多孔性
   合成樹脂体は、熱可塑性樹脂を半融成形により得た多孔
   質体内にキセロゲル状態の高吸水性高分子を密着させる
   ことで、気体は通過するが液体は通過させない特性を有
   してなることを特徴とする血沈管。
2. 【請求項２】液体流入口側から合成樹脂管に目盛を付
   け、多孔性合成樹脂体の一端面が前記目盛の基点となる
   ように、前記合成樹脂管内に前記多孔性合成樹脂体を挿
   着する請求項（１）記載の血沈管。