JPH0790437A - 成形機用シリンダ及びその製造方法 - Google Patents

成形機用シリンダ及びその製造方法

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JPH0790437A
JPH0790437A JP5241259A JP24125993A JPH0790437A JP H0790437 A JPH0790437 A JP H0790437A JP 5241259 A JP5241259 A JP 5241259A JP 24125993 A JP24125993 A JP 24125993A JP H0790437 A JPH0790437 A JP H0790437A
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賢二 丸田
Satoshi Fukui
福井  聡
Minoru Funabiki
実 船曳
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐摩耗性及び耐食性に優れた成形機用シリン
ダを提供する。 【構成】 この成形機用シリンダは、合金鋼からなる中
空円筒形状のシリンダ母材の内面に、重量比でCr 5
〜20%、B 1.5〜4%、C 0.7%以下、Si
1〜4%、Mn 2%以下、Fe 5〜20%、Cu 5
〜20%、W 3〜15%、Co 3〜20%、Mo 2
〜12%、残部実質的にNi及び不可避的不純物からな
るNi基合金のライニング層を有する。シリンダ母材は
Cr−Mo鋼、又はNi−Cr−Mo鋼であって、熱処
理を施したシリンダ母材の金属組織はベイナイト20%
以上、残部ソルバイトからなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラスチック成形機等
に用いる円筒状シリンダ及びその製造方法に関し、詳し
くは耐摩耗性、耐食性、耐クラック性に優れた成形機用
シリンダ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチック等の成形機用シリンダに
は、加熱成形中の樹脂または樹脂に加えた添加剤による
腐食あるいは摩耗を防止するため、鋼材からなる中空円
筒状のシリンダ母材の内面に、耐摩耗性と耐食性とを有
する合金材料を、遠心鋳造法によりライニングするとい
う構造のものが使用されている。
【0003】このような構造の成形機用シリンダには、
近年、生産性を向上するために、射出成形サイクルの短
縮及び耐射出圧力の上昇が望まれているが、そうすると
射出成形サイクルの毎に、上述のような延性の小さい合
金材料からなるライニング材に繰返し膨張、収縮の応力
がかかり、疲労によりクラックが発生しやすくなるの
で、シリンダ母材はできるだけ膨張しないように高強度
にする必要がある。
【0004】しかし、上述の成形機用シリンダの母材
は、主としてパーライトと少量のフェライトとからなっ
ているため、高速高圧の射出成形サイクルに対して十分
な強度を有しておらず、その結果ライニング材は膨張、
収縮により疲労破壊を起し、クラックが生じるという問
題がある。
【0005】そこで、これらの性能を向上させる方法と
して、図9に示すように、焼嵌方法によって、補強部材
4をライニング材3とシリンダ母材2とからなる成形機
用シリンダ1に接合する方法が考えられる。しかし、こ
の方法は製造コストが上がるという問題があり、また手
間がかかるため製作手数を長くするという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的
は、コストアップ、製作手数延長等の弊害を伴わずに、
疲労強度、耐クラック性、耐摩耗性、耐食性かつ耐凝着
性に優れた成形機用シリンダを提供することである。
【0007】また本発明のもう一つの目的は、かかる成
形機用シリンダを製造する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者は、合金鋼からなる中空円筒形状のシ
リンダ母材に、耐摩耗性及び耐食性を有する合金を遠心
鋳造によりライニングした成形機用シリンダを作製する
際に、シリンダ母材を所望の組織とし、このために適当
な熱処理を施すことにより、コストアップ、製作手数延
長等の弊害を伴わずに、疲労強度、特に耐クラック性に
優れた成形機用シリンダが得られることを発見し、本発
明に想到した。
【0009】すなわち、本発明の成形機用シリンダは、
合金鋼からなる中空円筒形状のシリンダ母材と、前記シ
リンダ母材の内面に存する耐摩耗性及び耐食性に優れた
ライニング材とを有し、前記シリンダ母材の組織は、ベ
イナイト20%以上、残部ソルバイトからなることを特
徴とする。
【0010】また本発明の合金鋼からなる中空円筒形状
を有するシリンダ母材と、前記シリンダ母材の内面に存
する耐摩耗性及び耐食性に優れたライニング材とを有
し、前記シリンダ母材の組織が、ベイナイト20%以
上、残部ソルバイトからなる成形機用シリンダの製造方
法は、前記ライニング材を前記シリンダ母材内に入れて
遠心鋳造後、20〜200℃/分の冷却速度でベイナイ
ト変態を起こす温度領域まで冷却し、そこで10分以上
保持後、1〜10℃/分の加熱速度で、550〜650
℃のアニール温度まで加熱し、アニール後室温まで冷却
することを特徴とする。
【0011】
【実施例及び作用】まず、本発明の一実施例による成形
機用シリンダの母材について説明する。本実施例におい
ては、耐摩耗性及び耐食性を有するライニング材を被覆
するシリンダ母材として合金鋼を用いる。合金鋼とし
て、Cr−Mo鋼を用いる場合、化学成分の含有率はC
0.3〜0.5 重量%、Si 0.15〜0.35 重量%、Mn 0.3
〜1.5 重量%以下、P 0.03 重量%以下、S 0.03 重量
%以下、Cr 0.7〜1.5 重量%、Mo 0.1〜0.5 重量%
とするのが強度上好ましく、日本工業規格(JIS G 4105)
に規定されている SCM440、SCM445 相当のCr−Mo鋼
が適する。
【0012】合金鋼として、Ni−Cr−Mo鋼を用い
る場合、化学成分の含有率はC 0.3〜0.5 重量%、Si
0.15〜0.35 重量%、Mn 0.3〜1.5 重量%以下、P
0.03重量%以下、S 0.03 重量%以下、Ni 3.0 重量
%以下、Cr 0.7〜1.5 重量%、Mo 0.1〜0.5 重量%
とするのが強度上好ましく、日本工業規格(JIS G 4103)
に規定されている SNCM439 相当のNi−Cr−Mo鋼
が適する。
【0013】また本実施例においては、シリンダ母材の
強度を向上するために、組織の20%以上をベイナイト
により形成し、残部をソルバイトにより形成する。組織
のベイナイトが20%未満であると十分な強度が得られ
ないため好ましくない。
【0014】以上に示す組織構成とするために、本実施
例においては、上述したライニング材を上述したシリン
ダ母材内に入れて遠心鋳造後、熱処理を施すが、この熱
処理方法を図1に示す熱処理パターンにより説明する。
【0015】ここで、図1の横軸は時間、縦軸は温度を
示しており、また熱処理パターン上のAは遠心鋳造工
程、Bは冷却工程、Cは保持工程、Dは加熱工程、Eは
アニール工程、Fは室温までの冷却工程を示している。
【0016】本実施例においては、Aに示す遠心鋳造工
程により、成形機用シリンダを形成し、その後Bに示す
冷却工程において、ベイナイト変態を起こす温度領域ま
で冷却するが、この時の冷却速度は20〜200℃/分
である。冷却速度が20℃/分未満であると、トルース
タイトを生じ、また200℃/分を超えると、ライニン
グ材の内面に割れが生じやすくなる。
【0017】次いでCに示す保持工程において、ベイナ
イト変態を起こす領域は300〜600℃である。ベイ
ナイト変態を起こす領域が300℃未満であると低温で
の母材の変態膨張によりライニング材の内面に割れが生
じやすくなり、また600℃を超えるとパーライトが生
じる。
【0018】また保持工程における保持時間は10分以
上必要である。保持時間が10分未満であるとシリンダ
母材のベイナイト量が20%未満となり、十分な強度が
得られなくなる。
【0019】次いでDに示すアニール温度まで加熱を行
うが、この時、加熱速度は1〜10℃/分である。加熱
速度が1℃/分未満であと、シリンダ母材のベイナイト
量が過多となり、ライニング材の内面に割れを発生しや
すくなる。また10℃/分を超えると、逆にベイナイト
量が不足して強度が得られなくなる。
【0020】次いでEに示すアニールを行うが、アニー
ル温度は550〜650℃である。550℃未満である
と残留応力除去というアニールの目的を果たさず、また
650℃を超えると金属組織に影響をおよぼす。また、
アニール時間は1〜5時間である。アニール時間が1時
間未満であると十分に残留応力を除去できず、5時間を
超えた場合はその効果に著しい変化がない。
【0021】最後にFに示すように室温まで冷却する。
以上により形成される本実施例の成形機用シリンダは、
シリンダ母材の強度が著しく向上するため、優れた疲労
強度、特に耐クラック性を有する。
【0022】次に本実施例に用いる耐摩耗性及び耐食性
を有するライニング材を構成する合金成分について説明
する。
【0023】Crの含有率は 5.0〜20.0 重量%であ
る。CrはC、Bと結合して炭化物、硼化物を形成し、
耐摩耗性を向上させる作用を有し、また、Ni基地中に
固溶して強度と耐食性を向上させる作用を有するが、2
0.0 重量%を超えると合金の融点を著しく上昇させて鋳
造性を損なうため好ましくない。5.0 重量%未満ではそ
の効果を発揮しない。特に好ましいCrの含有率は 10.
0〜15.0 重量%である。
【0024】Bの含有率は 1.5〜4.0 重量%である。B
はCr、W、Moと結して組織中に高硬度の硼化物を析
出させ、合金の硬度を向上させる作用を有するが、1.5
重量%未満ではその効果が十分ではなく、4.0重量%を
超えると超共晶組織が粗大化し、かつ脆性を増すので好
ましくない。
【0025】またCr量とB量の関係は、Cr量を増す
場合はB量を減らし、Cr量を減らす場合、B量を増す
ことにより、合金が微細な組織となり強度の大きい共晶
組成となる。すなわちCr 10重量%のときB約2.5重量
%が本実施例における合金の共晶組成であり、このCr
とBの均衡を保つのが好ましい。またCr 10重量%の
ときW 5〜7 重量%、Mo 3〜8 重量%の均衡を保つの
が好ましい。
【0026】Cの含有率は 0.7 重量%以下である。C
は基地の硬さと強度を向上させる作用を有するが、0.7
重量%を超えると共晶度が上昇して脆くなり、強度が低
下するため好ましくない。
【0027】Siの含有率は 1.0〜4.0 重量%である。
Siは合金の融点を低下させ、鋳造性を向上する作用を
有するが、1.0重量%未満では、その作用が不十分とな
るため好ましくない。またSiはNi、Cuと金属化合
物を形成して基地中に析出するため、耐摩耗性を向上さ
せる作用を有するが、4.0重量%を超えると合金の靭性
を損うため好ましくない。
【0028】Mnは脱酸材としての作用をするが、その
効果から含有率は 2.0重量%以下とする。
【0029】Feの含有率は 5.0〜20.0 重量%であ
る。Feは当初合金中に含有されなくても、鋼材からな
るシリンダ母材との溶着反応によりシリンダ母材から侵
入する。所定量のFeがシリンダ母材から合金へ移行す
ることがライニング材とシリンダ母材との完全な溶着を
遂行する上で必要であるが、Feが 5.0重量%未満で
は、その効果を発揮しない。またFeが増加すると硬さ
を低下させ、20.0重量%を超えるとその影響が無視でな
くなるため、好ましくない。
【0030】Cuの含有率は 5.0〜20.0 重量%であ
る。CuはNi基地中に固溶して合金の融点を低下させ
るたる鋳造性を向上させるとともに、特にふっ酸に対す
る耐食性を向上させる作用を有するが、 5.0重量%未満
ではその作用が不十分であり、また 20.0重量%を超え
ると硬さを著しく低下させるため好ましくない。特に好
ましくは 8.0〜15.0 重量%である。
【0031】Wの含有率は 3.0〜15.0 重量%である。
WもCr同様、炭化物、硼化物を形成し、耐摩耗性を向
上させる作用を有すると共にCuと相乗的に作用して耐
食性を向上させる。また、組織を微細化させる作用も有
するので高強度化に寄与する。3.0重量%未満では上記
効果は不十分であり、15.0重量%を超えると鋳造性を悪
くするので好ましくない。特に好ましくは 5.0〜10.0
重量%である。
【0032】Moの含有率は 2.0〜12.0 重量%であ
る。MoもW、Cr同様、炭化物、硼化物を形成し、耐
摩耗性を向上させると共に、一部のMoは基地組織中に
も固溶し耐食性をも向上させる。特に、本発明によるM
oを添加することにより、本合金を遠心鋳造する際、母
材側にWの遠心分離による偏析を発生しやすい傾向を抑
制し、ライニング層全体にW、Moを主体とした硼化物
を均質晶出させる。2.0重量%未満ではこの作用が不十
分であり、12.0重量%を超えるとMo主体の硼化物を形
成し、ライニング層の機械的強度が低下し問題となる。
【0033】Coの含有率は 3.0〜20.0 重量%であ
る。CoはCr及びBと化合して硼化物を形成し、耐摩
耗性と耐食性を向上させるが、Co含有量の増大にとも
なう製造原価の上昇により経済的効果を損なうので、そ
の上限を 20.0重量%とする。また、5.0重量%未満では
その効果が得られない。Niは耐摩耗性、耐食性を与え
るため基合金成分として残量%とする。
【0034】さらに本実施例においては、上述のライニ
ング材中に、NbCを分散させることにより、耐摩耗性
をさらに向上することができる。この場合、NbCの大
きさは50μm以下の微粒子状であるのが好ましい。ま
た、NbCの好ましい含有率は、ライニング材 100重量
部当り、3.0〜20.0重量部である。
【0035】NbCは前記ライニング材 100重量部に対
して、3.0重量部未満ではその効果が得られず、また 2
0.0重量部を超えるとライニング材の粘度が大きくな
り、遠心鋳造法による均一なライニング層を形成するこ
とができなくなるとともに、強度の低下が大きくなる。
【0036】本発明を以下の具体的実施例により詳細に
説明する。熱処理サイクルは図1を参照して説明する。 (実施例1)日本工業規格(JIS G 4105)に規定されるSC
M440相当のCr−Mo鋼を用いて、シリンダ母材を形成
した。
【0037】次いで、ライニング材用合金を形成するた
めに、表1に示す組成の合金を配合するが、鋳造中にシ
リンダ母材からFeが移行するため、この移行するFe
量を見込んだ配合とした。
【0038】
【表1】
【0039】このようにして配合されたライニング材用
本発明合金を加熱溶解した後、加熱炉中にて1150℃
に加熱したシリンダ母材の中空部に鋳込温度1450℃
で遠心鋳造した(図1に示すA)。
【0040】次いで、冷却温度40℃/分で、480℃
のベイナイト変態を起こす温度まで冷却した後(図1に
示すB)、20分間保持し(図1に示すC)、次いで、
加熱速度5℃/分で630℃のアニール温度まで再加熱
した後(図1に示すD)、5時間保持してアニールを行
い(図1に示すE)、室温に至るまで冷却した(図1に
示すF)。
【0041】以上により形成された、成形機用シリンダ
のライニング材の金属組織を図6に示す。また、シリン
ダ母材の組織は、図7の金属組織に示すように、約50
%のソルバイトとに形成された。
【0042】(実施例2)日本工業規格(JIS G 4103)に
規定されるSCM439相当のNi−Cr−Mo鋼を用いて、
シリンダ母材を形成し、次いで、実施例1と同様の構成
のライニング材を同様の方法により形成した。
【0043】上記シリンダ母材に上記ライニング材を鋳
込温度1450℃で遠心鋳造して(図1に示すA)成形
機用シリンダを作製し、次いで熱処理を施したが、その
際の熱処理条件は、冷却温度20℃/分(図1に示す
B)ベイナイト変態を起こす温度450℃、保持時間2
0分(図1に示すC)、加熱速度5℃/分(図1に示す
D)、アニール温度600℃、アニール時間5時間(図
1に示すE)であり、それ以外の条件は実施例1と同様
とした。
【0044】(実施例3)実施例1と同様のCr−Mo
鋼を用いて、シリンダ母材を形成し、次いで、実施例1
と同様の化学成分含有率を有するライニング材に、前記
ライニング材100重量部に対して10重量部のNbC
を含有するようにライニング材用合金を配合し、実施例
1と同様の方法でライニング材を形成した。
【0045】上記シリンダ母材に上記ライニング材を鋳
込温度1450℃で遠心鋳造して成形機用シリンダを作
製し、次いで熱処理を施したが、その際の熱処理条件は
実施例1と同様とした。
【0046】(実施例4)実施例2と同様のNi−Cr
−Mo鋼を用いて、シリンダ母材を形成し、実施例1と
同様の化学成分含有率を有する合金100重量部に対し
て10重量部のNbC微粒子を配合することにより、実
施例1と同様の方法でライニング材を形成した。
【0047】上記シリンダ母材に上記ライニング材を1
450℃の温度で遠心鋳造して成形機用シリンダを作製
し、次いで熱処理を施したが、その際の熱処理条件は実
施例1と同様とした。
【0048】(比較例)実施例1と同様のCr−Mo鋼
を用いて、シリンダ母材を形成し、次いで表1に示す組
成の合金を用いて、実施例1と同様の方法でライニング
材を形成した。
【0049】上記シリンダ母材に上記ライニング材を1
100℃の温度で遠心鋳造して(図1に示すA)成形機
用シリンダを作製し、次いで熱処理を施したが、その際
の熱処理条件は、冷却速度60℃/分(図1に示す
B)、ベイナイト変態を起こす直前の温度620℃まで
冷却、保持時間20分(図1に示すC)、加熱速度5℃
/分(図1に示すD)、アニール温度630℃、アニー
ル時間5時間(図1に示すE)であり、それ以外の条件
は実施例1と同様とした。
【0050】以上により形成された、成形機用シリンダ
のシリンダ母材組織は、図8の金属組織に示すように、
パーライトを約90%有し、残部はフェライトで構成さ
れていた。
【0051】上述の実施例1〜4及び比較例の成形機用
シリンダについて、ライニング材の引張強さ(曲げ強さ
とワイブル値から算出した値)及びシリンダ母材の降伏
点応力を計測した。実施例1〜4について、ほぼ同様の
結果が得られたため、実施例1、比較例の結果を図2に
示す。
【0052】さらに上述の実施例1〜4及び比較例の成
形機用シリンダについて、耐圧強度を計測した。実施例
1〜4について、ほぼ同様の結果が得られたため、実施
例1、比較例の結果を図3に示す。
【0053】上述の実施例1〜4及び比較例の成形機用
シリンダから、10mm×15mm×10mmの大きさの試料を作製
し、#400の研磨紙に、荷重2.0kgで押圧し、480mの距離
を摺動させた後ライニング材の摩耗量を調べた。この結
果を、比較例の結果を10とした時の相対値によって表
し、耐摩耗性を評価した。実施例2は実施例1と、実施
例4は実施例3と同様の結果が得られたため、実施例
1、3及び比較例の結果を図4に示す。
【0054】さらに上述の実施例1〜4及び比較例の成
形機用シリンダから、1.5mm×4mm×10mmの大きさの試料
を作製し、50℃の10%HCl水溶液中に24時間浸
潰した後に、ライニング材の腐食減量率を調べた。この
結果を、比較例の結果を1とした時の相対値によって表
し、耐食性を評価した。実施例1〜4については同様の
結果が得られたため、実施例1、比較例について結果を
図5に示す。
【0055】図2から明らかなように、実施例1の成形
機用シリンダを形成するライニング材の引張強さは、比
較例の成形機用シリンダに比べて、約2倍以上に著しく
向上した。
【0056】また実施例1のシリンダ母材の降伏点応力
は、比較例に対して80%以上向上した。
【0057】さらに図3から明らかなように、実施例1
の成形機用シリンダの耐圧強度は、比較例の成形機用シ
リンダに対して約80%向上した。
【0058】以上により、本実施例における成形機用シ
リンダは、ライニング材が十分な強度を有するととも
に、シリンダ母材の強度が飛躍的に向上したため、耐ク
ラック性が著しく向上した。
【0059】実施例1のライニング材の耐摩耗性につい
ては、図4に示すように、耐摩耗性の評価は、比較例を
10とした時の相対値が7となり、摩耗量が減少してお
り、耐摩耗性の向上が認められる。
【0060】また、実施例1のライニング材の酸に対す
る比較例を1とした時の相対値は1.0となり、腐食減
量率が同じであり、十分な耐食性が得られた。
【0061】実施例3の成形機用シリンダについては、
実施例1とほぼ同様の結果が得られた。しかし、ライニ
ング材の耐摩耗性については、図4に示すように、比較
例を10とした得の相対値が4以下と、60%以上摩耗
量を減少し、耐摩耗性を飛躍的に向上することができ
た。
【0062】以上、実施例1及び実施例3を例にとって
比較例と比較したが、実施例1と同様の結果を得た実施
例2、実施例3と同様の結果を得た実施例4についても
同様の効果を発揮することは勿論である。
【0063】以上の結果のまとめとして、表1に示した
本発明ライニング材の特性を比較例と併せて表2に示
す。
【0064】
【表2】
【0065】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の成形機用
シリンダは、合金鋼からなる中空円筒形状のシリンダ母
材に、耐摩耗性合金からなるライニング材を設けている
が、本発明の方法に従って熱処理を施すことによって、
シリンダ母材の組織の20%以上をベイナイトにより形
成し、残部をソルバイトにより形成している。
【0066】これにより、高速高圧の射出サイクルに対
応して、ライニング材に膨脹、収縮の応力がかかる場合
でも、シリンダ母材が優れた強度を有するので、ライニ
ング材に生じる歪みを抑え、優れた疲労強度、耐クラッ
ク性を有する成形機用シリンダを、コストアップ、製作
手数延長等の弊害を伴わずに得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例成形機用シリンダの熱処理工程
を示すパターン図である。
【図2】実施例1、比較例のライニング材の引張強さ及
びシリンダ母材の降伏点応力を示す図である。
【図3】実施例1、比較例の耐圧強度を示す図である。
【図4】実施例1、実施例3、比較例の摩耗量の相対値
を示す図である。
【図5】実施例1、比較例の腐食減量率の相対値を示す
図である。
【図6】実施例1のシリンダライニング材の金属組織を
示す顕微鏡写真である。
【図7】実施例1のシリンダ母材の金属組織を示す顕微
鏡写真である。
【図8】比較例のシリンダ母材の金属組織を示す顕微鏡
写真である。
【図9】成形機用シリンダの一例を示す概略断面図であ
る。
【符号の説明】
1 成形機用シリンダ、 2 シリンダ母材、 3 ラ
イニング材、4 補強部材
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年11月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合金鋼からなる中空円筒形状のシリンダ
    母材と、前記シリンダ母材の内面に存する耐摩耗性及び
    耐食性に優れたライニング材とを有する成形機用シリン
    ダにおいて、前記ライニング材は、Cr 5.0〜20.0 重
    量%、B 1.5〜4.0 重量%、C 0.7 重量%以下、Si
    1.0〜4.0 重量%、Mn 2.0 重量%以下、Fe 5.0〜2
    0.0 重量%、Cu 5.0〜20.0 重量%、W 3.0〜15.0 重
    量%、Co 3.0〜20.0 重量%、Mo 2.0〜12.0 重量
    %、残部実質的にNi及び不可避的不純物のNi基合金
    からなることを特徴とする成形機用シリンダ。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の成形機用シリンダにお
    いて、前記シリンダ母材の組織は、ベイナイト20%以
    上、残部ソルバイトからなることを特徴とする成形機用
    シリンダ。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の成形機用
    シリンダにおいて、前記ライニング材は、Cr 5.0〜2
    0.0 重量%、B 1.5〜4.0 重量%、C 0.7 重量%以
    下、Si 1.0〜4.0 重量%、Mn 2.0 重量%以下、F
    e 5.0〜20.0 重量%、Cu 5.0〜20.0 重量%、W 3.0
    〜15.0 重量%、Co 3.0〜20.0 重量%、Mo 2.0〜1
    2.0 重量%、残部実質的にNi及び不可避的不純物から
    なるNi基合金 100 重量部当り 3.0〜20.0 重量部のN
    bCを分散させてなることを特徴とする成形機用シリン
    ダ。
  4. 【請求項4】 請求項1及至3のいずれかに記載の成形
    機用シリンダにおいて、前記ライニング材のCuが 8.0
    〜15.0 重量%であことを特徴とする成形機用シリン
    ダ。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載の成形
    機用シリンダにおいて、W 5.0〜10.0 重量%であるこ
    とを特徴とする成形機用シリンダ。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかに記載の成形
    機用シリンダにおいて、前記シリンダ母材を形成する合
    金鋼が、C 0.3〜0.5 重量%、Si 0.15〜0.35 重量
    %、Mn 0.3〜1.5 重量%、P 0.03 重量%以下、S
    0.03 重量%以下、Cr 0.7〜1.5 重量%、Mo 0.1〜
    0.5 重量%、残部実質的にFe及び不可避的不純物から
    なるCr−Mo鋼であることを特徴とする成形機用シリ
    ンダ。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至5のいずれかに記載の成形
    機用シリンダにおいて、前記シリンダ母材を形成する合
    金鋼が、C 0.3〜0.5 重量%、Si 0.15〜0.35 重量
    %、Mn 0.3〜1.5 重量%、P 0.03 重量%以下、S
    0.03 重量%以下、Ni 3.0 重量%以下、Cr 0.7〜1.
    5 重量%、Mo 0.1〜0.5 重量%、残部実質的にFe及
    び不可避的不純物からなるNi−Cr−Mo鋼であるこ
    とを特徴とする成形機用シリンダ。
  8. 【請求項8】 請求項2乃至7のいずれかに記載の成形
    機用シリンダの製造方法において、ライニング材をシリ
    ンダ母材内に入れて遠心鋳造後、20〜200℃/分の冷却
    速度でベイナイト変態を起こす温度領域まで冷却し、そ
    こで10分以上保持後、1〜10℃/分の加熱速度で、550〜
    650℃のアニール温度まで加熱し、アニール後室温まで
    冷却することを特徴とする方法。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の成形機用シリンダの製
    造方法において、前記ベイナイト変態を起こす領域が30
    0〜600℃であることを特徴とする方法。
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