JPH0760777A - 電子機器用超薄肉筐体 - Google Patents

電子機器用超薄肉筐体

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JPH0760777A
JPH0760777A JP16350493A JP16350493A JPH0760777A JP H0760777 A JPH0760777 A JP H0760777A JP 16350493 A JP16350493 A JP 16350493A JP 16350493 A JP16350493 A JP 16350493A JP H0760777 A JPH0760777 A JP H0760777A
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JP
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housing
case
resin
thin
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JP16350493A
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English (en)
Inventor
Mikio Takeshima
幹夫 竹島
Shiro Nishi
史郎 西
Kozaburo Nakamura
孔三郎 中村
Shuji Urabe
周二 卜部
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Nippon Telegraph and Telephone Corp
Original Assignee
Nippon Telegraph and Telephone Corp
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Publication date
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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29LINDEXING SCHEME ASSOCIATED WITH SUBCLASS B29C, RELATING TO PARTICULAR ARTICLES
    • B29L2031/00Other particular articles
    • B29L2031/34Electrical apparatus, e.g. sparking plugs or parts thereof
    • B29L2031/3431Telephones, Earphones
    • B29L2031/3437Cellular phones

Landscapes

  • Casings For Electric Apparatus (AREA)
  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Telephone Set Structure (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】軽量で、かつ剛性、耐衝撃性、嵌合性、耐熱寸
法安定性、ウエルド安定性およびメッキ付着性に優れた
0.1cm以下の厚みの電子機器用超薄肉筐体を提供す
る。 【構成】熱可塑性樹脂単独、もしくは上記熱可塑性樹脂
に、炭素繊維、ガラス繊維、有機フィラー、無機フィラ
ーのうちから選択される少なくとも1種の強化材料を充
填した複合材料からなり、かつ厚さが0.1cm以下の超
薄肉に成形した電子機器用超薄肉筐体。または、熱可塑
性樹脂を2種以上混合して調製したアロイ樹脂単独、も
しくは上記アロイ樹脂に、炭素繊維、ガラス繊維、有機
フィラー、無機フィラーのうちから選択される少なくと
も1種の強化材料を充填した複合材料からなり、かつ厚
さが0.1cm以下の超薄肉に成形した電子機器用超薄肉
筐体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子機器を収納する筐体
に係り、特に、軽量で、かつ剛性、嵌合性、耐衝撃性、
耐熱寸法安定性、ウエルド安定性およびメッキ付着性等
に優れた厚みが0.1cm以下の電子機器用超薄肉筐体に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子機器を収納するための筐体
(ハウジング)用の材料としては、電子機器を保護する
という観点から、アルミニウム、マグネシウム等の金属
材料やセラミック材料が使用されてきた。しかし、これ
らの材料の比重はアルミニウムの2.69を始めとして
かなり大きいため、電子機器の総重量に占める筐体の割
合が大きくなり、かなり重いものとなっていた。また、
金属材料は価格が高く、成形加工も難しいため、重量、
コストおよび生産性の面で問題があった。金属材料が抱
えている上記の問題点を解決するため、代替材料として
低比重で値段が安く、かつ成形加工性に優れたプラスチ
ック材料が注目を浴びるようになってきた。筐体用のプ
ラスチック材料としては、アクリロニトリル−ブタジエ
ン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカ−ボネー
ト(PC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、芳香族ポ
リアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)
樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、液晶ポ
リマー(LCP)樹脂などが使用されている。これらプ
ラスチック材料の比重は0.8〜1.4であり、金属材料
と比べておおよそ1/4程度と小さいため、電子機器の
筐体に成形した場合には、著しく軽量化をはかることが
できる。また、プラスチック材料は一般的に圧縮成形、
射出成形、射出−圧縮成形、ブロー成形等の方法によっ
て成形されるが、その中でも射出成形法は量産性に優れ
ているため低価格化をはかることができるので、電子機
器の筐体成形法として最も多く用いられている成形技術
である。しかしながら、プラスチック材料の引張り強
度、弾性率、衝撃強度などの機械的特性および熱変形温
度などの熱的特性は、金属材料やセラミック材料に比べ
て劣るため、筐体等の成形品の肉厚を0.3〜0.4cm
と厚くしたり、またプラスチック材料同士をブレンドし
てABS/PC樹脂系、ABS/PBT樹脂系、PC/
PS樹脂系、PPE(ポリフェニレンエーテル)/耐衝
撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂系、芳香族ポリアミ
ド/PPE樹脂系、ABS/PPE樹脂系などのアロイ
化材料を用いたり、あるいはプラスチック材料中に炭素
繊維、ガラス繊維、ボロン繊維またはチラノ繊維等の無
機フィラーあるいはケブラー繊維、PBT繊維等の有機
フィラーを強化繊維として充填して繊維強化プラスチッ
ク(FRP)化したりして機械的特性および熱的特性等
を向上する試みがなされている。一方、近年になって、
パソコン、カセット、電話機等の電子機器の分野におい
て、従来の重厚長大型から軽薄短小型への移行が急速に
進み、それにつれてノートブック型パソコン、携帯電
話、電池ケースといった電子機器の小型軽量化の開発競
争が激化するようになってきている。例えば、携帯電話
を例にとると、従来NTTが開発した携帯電話は体積/
重量が約400cc/640gであったものが、1990
年に開発した「ムーバ」は体積/重量が約150cc/2
30gと、体積・重量比で約36〜38%まで小型軽量
化が達成されるようになった。なお、従来技術における
代表例として、小型軽量化を指向した平面アンテナ付き
携帯電話機筐体(特開平5−14044号公報)が挙げ
られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、携帯電
話「ムーバ」にしても、ポケットサイズの携帯用として
持ち歩くには体積・重量とも、いまだ十分に満足される
ものでなく、人間が携帯用として持ち歩く物の軽さの感
覚的基準は100g前後であることから、いっそうの小
型軽量化が望まれている。電子機器を小型軽量化するた
めには、部品の点数削減および小型軽量化、高密度実装
技術による回路部品の小型軽量化、2次電池の小型軽量
化等をはかることが必須であるが、筐体は製品全体に占
める重量のウエイトが高いため、電子機器の小型軽量化
については筐体の小型軽量化が強く望まれている。この
内、筐体の小型化にとっては、電子機器が小型化されれ
ばされるほど、複雑な形状をしている筐体の成形が困難
となるため、超精密成形技術の確立が望まれる。また、
筐体の軽量化については、筐体に要求される特性を低減
させることなく、比重の小さな材料を用いた筐体の薄肉
化を達成する必要がある。一般に、筐体の薄肉化はプラ
スチック材料の成形加工にとって非常に難しい技術であ
り、特に量産性に優れた射出成形の分野において肉厚
0.1cm以下の筐体を実用化した例はない。これは、次
のような理由によるものと考えられる。第1の理由は、
筐体の超薄肉化により、筐体の剛性や耐衝撃性などの機
械的特性、あるいは耐熱寸法安定性などの熱的特性が極
端に低下することである。筐体の厚みが厚い場合には、
たとえ弾性率の小さな材料を用いても筐体の剛性が大き
くなるため余り問題はないが、筐体の超薄肉化をはかっ
た場合には剛性が低下するため、筐体は曲げ、ねじれ等
の外部応力により変形しやすくなり、変形が起こった場
合には、内部構成部品に対して悪影響を及ぼす。ここ
で、筐体に曲げ応力を負荷した場合を想定してみると、
筐体の断面2次モーメントをI、筐体材料の弾性率をE
とすると、筐体の剛性Dは次の(数1)式で表わされ
る。 D=I×E ………(数1) 断面2次モーメントIは、筐体の幅をb、厚さをdとす
ると次の(数2)式で表わされる。 I=1/12・bd3 ………(数2) したがって、(数1)および(数2)式から、筐体の剛
性Dは次の(数3)式で表わされることになる。 D=1/12・bd3・E ………(数3) 例えば、弾性率E=25,000kg/cm2を有するプラ
スチック材料を用いて構成した筐体を考えた場合、単位
幅の筐体の厚さdを0.1cmとすると、筐体の剛性Dは
(数3)式から2.08kg・cm2となる。次に、筐体の
厚さdを薄肉化により上記の半分の0.05cmとした場
合、上記0.1cm厚さの筐体の剛性と同一の剛性を確保
するためには、(数3)式から約8倍の199,700
kg/cm2の弾性率を有する筐体材料を使用しなければ
ならないことになる。このように、筐体の剛性Dは筐体
の厚さdの3乗に依存するため、筐体を薄肉化しようと
する場合、弾性率の極端に大きな筐体材料を使用する必
要がある。また、電子機器を誤って落下させた場合を想
定すると、筐体にクラックや破壊を生じさせないように
筐体の耐衝撃性を保証する必要がある。特に、筐体を超
薄肉化した場合には、耐衝撃性が大きく低下するため衝
撃力を筐体で緩和しきれなくなり、筐体が破損したり、
内部構成部品に衝撃力が直接加わることになる。この耐
衝撃性低下の傾向は、肉厚が0.1cmを下回ると特に顕
著に現れるようになる。したがって、筐体を超薄肉化し
ようとする場合には、耐衝撃性を考慮して、特に衝撃強
度の大きな材料を使用する必要がある。さらに、射出成
形においては、成形品内に分子配向歪みや冷却歪みによ
る残留応力が生じ易いため、熱変形温度の低い材料を使
用した場合には、温度の高い使用環境下で残留応力が開
放されて筐体が変形する危険性がある。特に、筐体を超
薄肉化した場合には、薄肉成形により残留応力が発生し
やすくなるため熱的信頼性が特に危惧される。したがっ
て、筐体を超薄肉化しようとする場合には、上記の弾性
率や衝撃強度と同様、熱変形温度の高い材料を使用して
残留応力の小さな筐体成形法を用いる必要がある。上述
のごとく、筐体を超薄肉化する場合に、弾性率、衝撃強
度などの機械的特性や熱変形温度などの熱的特性の優れ
た材料を用いる必要があるが、これらの特性をすべて満
足させる材料の開発が難しいため、筐体の薄肉化にはあ
る程度の限界があった。第2の理由は、射出成形法にお
いて、溶融樹脂を超薄肉の金型キャビティ内に高速で充
填できないことによる。超薄肉成形にとっては、溶融樹
脂の粘度が支配的要因となり、粘度が小さくなるほど溶
融樹脂は薄肉の金型キャビティ内に充填しやすくなる。
しかしながら、筐体の強度特性や熱的特性の保証をする
ために、材料をアロイ化したりFRP化した場合には、
材料の溶融粘度が大きくなるため、強度特性や熱的特性
の優れた複合材料による超薄肉成形ができないでいた。
さらに、射出成形においては、ウエルド部の強度的信頼
性(ウエルド安定性)が問題となる。金型内に射出され
た溶融樹脂は、そのメルトフロントが合体するウエルド
部において強度的信頼性が低下する傾向がある。特に、
樹脂が冷えた状態でウエルド部を形成したり、FRP化
による複合材料を使用した場合には、ウエルド部の強度
は他の部分と比べかなり低下する。このようなウエルド
部は、複雑な形状をしている筐体の場合にはさまざまな
箇所に発生する。また、超薄肉筐体とした場合には、金
型内における溶融樹脂の流動挙動が不明確であるため、
ウエルド強度の大きな材料を用いることによってウエル
ド安定性を特に保証する必要がある。上述した筐体用プ
ラスチック材料の内、これまでハウジング材料として用
いられてきたABS、PC系樹脂を始めとした単一材
料、またはABS/PBT、ABS/PCを始めとした
アロイ化材料、あるいは炭素繊維、ガラス繊維を始めと
した繊維材料を充填した繊維強化複合材料では、上記超
薄肉筐体用材料に要求される特性を満足させるものはな
く、これらの材料を超薄肉筐体用として使用した場合に
は、溶融粘度が大きいことによる流動性の不足や、弾性
率が小さいことによる剛性の不足や、熱変形温度が低い
ことによる耐熱寸法安定性の不足や、衝撃強度が小さい
ことによる耐衝撃性の不足を生じる可能性が極めて大き
い。また、電子機器用筐体として使用するためには、電
磁波対策を講ずることが必須であるが、そのためには、
樹脂材料からなる筐体に電磁波シールドを施す必要があ
る。樹脂材料よりなる筐体に電磁波シールドを施すため
には、筐体が良好なメッキ付着性あるいは塗装性を有し
ていることが必要である。したがって、上記材料による
筐体の超薄肉化を可能とするためには、機械的特性、熱
的特性およびウエルド安定性に優れ、溶融粘度が小さ
く、かつメッキ付着性など、電子機器筐体に要求される
特性をバランスよく兼ね備えた新たな材料自体の改良を
はかると共に、筐体の超精密射出成形による超薄肉化技
術を開発する必要がある。
【0004】本発明の目的は、上記従来技術における問
題点および課題を解決して、軽量で、かつ剛性、耐衝撃
性、嵌合性、耐熱寸法安定性、ウエルド安定性およびメ
ッキ付着性に優れた0.1cm以下の厚みの電子機器用超
薄肉筐体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的を達成
するために、以下に示す樹脂材料ならびに成形手段を用
い、電子機器用の超薄肉筐体を実現するものである。 (1)熱可塑性樹脂単独で、あるいは上記熱可塑性樹脂
に、炭素繊維またはガラス繊維または各種有機フィラ
ー、無機フィラーのうちから選ばれる少なくとも1種の
強化材料を充填して、電子機器を収納する筐体として必
要な特性と性能を持つ繊維強化複合材料となし、0.1c
m以下の厚みとなるように超薄肉成形を行い、所望の特
性および性能をもつ電子機器用の超薄肉筐体とするもの
である。また、(2)2種以上の熱可塑性樹脂を混合し
てアロイ樹脂としたもの単独で、あるいは上記アロイ樹
脂に炭素繊維またはガラス繊維または各種有機フィラ
ー、無機フィラーのうちから選ばれる少なくとも1種の
強化材料を充填して、電子機器を収納する筐体として必
要な特性と性能を持つ繊維強化アロイ樹脂複合材料とな
し、0.1cm以下の厚みとなるように超薄肉成形を行
い、所望の特性および性能をもつ電子機器用の超薄肉筐
体とするものである。ここで、上記(1)の熱可塑性樹
脂としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン
共重合体(ABS)樹脂、ポリカ−ボネート(PC)樹
脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリスチ
レン(PS)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、ポリ
ブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、芳香族ポリア
ミド樹脂およびポリフェニレンスルフィド(PPS)樹
脂などに代表されるハウジング用樹脂材料を適用するこ
とができ、上記(2)のアロイ樹脂としては、ABS/
PC系樹脂、ABS/PBT系樹脂、ポリフェニレンエ
ーテル(PPE)/耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)
系(変成PPE)樹脂、PPS/ポリアミド系樹脂およ
びPPE/芳香族ポリアミド系樹脂等に代表されるハウ
ジング用アロイ樹脂材料を適用することができるが、も
ちろん、これらの樹脂材料に限定されるものではなく、
射出成形法あるいは射出−圧縮成形法等のプラスチック
成形法により成形できる熱可塑性樹脂あるいはアロイ樹
脂であれば適用可能であることは言うまでもない。さら
に、上記熱可塑性樹脂あるいはアロイ樹脂については、
特にその種類、溶融粘度、各種機械的および熱的特性に
ついて限定するものではないが、超薄肉成形のため、溶
融粘度は機械的および熱的特性を劣化させない程度に低
目のグレードとなるよう、熱可塑性樹脂については分子
量、共重合比等を適宜調整することが好ましく、また、
アロイ樹脂については構成成分の混合比率、各成分の分
子量等を調節して改質することが望ましい。また、筐体
成形時における溶融樹脂の流動性を高めるために可塑剤
を添加してもよいし、耐衝撃性向上のためにゴム成分を
添加してもよい。また、上記(1)および(2)に用い
る炭素繊維またはガラス繊維については、その種類、形
状、樹脂中への充填量について特に限定するものではな
く、流動性を低下させない程度の充填量として、超薄肉
筐体の機械的特性および熱的特性を高める量であればよ
い。さらに、有機フィラーについては、ケブラー繊維、
ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維等が用いら
れ、無機フィラーについては、ボロン繊維、チラノ繊維
等を適用することがきるが、これらについても、その種
類、形状、樹脂中への充填量について特に限定するもの
ではなく、流動性を低下させない程度の充填量として超
薄肉筐体の機械的特性および熱的特性を高める量であれ
ばよい。また、上記(1)および(2)における超薄肉
筐体の成形法としては、特に限定するものではないが、
射出成形法あるいは射出−圧縮成形法等の成形条件を精
密に制御できる成形法であれば適用することができる。
さらに、超薄肉筐体の成形条件としては、次の点を考慮
して行うことが好ましい。 樹脂温度は、溶融樹脂の流動性を高めるために、樹脂
の分解が生じない程度になるべく高くする。 射出速度は、溶融樹脂の流動性が低下しない内に、金
型キャビティ内に充填する必要があるためできるだけ速
くする。 射出圧力は、残留応力が発生しないようになるべく低
くする。 金型温度は、溶融樹脂の流動性を低下させないため、
成形サイクルや離型後の寸法変化を考慮してなるべく高
くする。 (3)上記(1)で示した熱可塑性樹脂として、ポリカ
−ボネート(PC)樹脂を用い超薄肉筐体を成形する。
PC樹脂は、カーボネート結合(−OCO−)を有する
樹脂の総称であり、ビスフェノールA系、ビスフェノー
ルE系など、その分子構造の違いによりさまざまな種類
がある。そのため、分子構造、分子量、可塑剤の種類
(オレフィン系、リン酸エステル系等)や、その量など
を制御することにより、機械的特性や熱的特性を劣化さ
せることなく、PC樹脂の溶融流動性を向上させた超薄
肉筐体用のグレード開発が可能となる。特に、ガラス繊
維や炭素繊維等の繊維強化グレードは、機械的特性およ
び熱的特性に優れている。 (4)上記(1)で示した熱可塑性樹脂として、アクリ
ロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)
樹脂を用い超薄肉筐体を成形する。ABS樹脂は、アク
リロニトリルと、ブタジエンと、スチレンの3元共重合
体であり、各成分の共重合比、特にゴム成分の比率を調
整することにより、機械的特性や熱的特性を劣化させる
ことなく、ABS樹脂の溶融流動性を向上させた超薄肉
筐体用のグレード開発が可能となる。特に、ガラス繊維
や炭素繊維等の繊維強化グレードは、機械的特性および
熱的特性に優れている。 (5)上記(1)で示した熱可塑性樹脂として、ポリフ
ェニレンスルフィド(PPS)樹脂を用い超薄肉筐体を
成形する。PPS樹脂は、熱変形温度が汎用樹脂を大き
く上回り、また機械的特性、耐薬品性、成形性が優れて
いる反面、バリが発生し易いといった問題点を有してい
る。しかし、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維を充
填することにより、PPS樹脂におけるバリの発生を防
止し、超薄肉筐体用として好適な材料グレードの開発が
可能となる。 (6)上記(1)で示した熱可塑性樹脂として、液晶ポ
リマー(LCP)樹脂を用い超薄肉筐体を成形する。L
CP樹脂は、優れた流動性と機械的特性、熱的特性を兼
ね備えた樹脂材料であるが、異方性が大きいためガラス
繊維や炭素繊維などの繊維材料を充填することにより異
方性を小さくすることができ、超薄肉筐体用材料として
使用することができる。 (7)上記アロイ樹脂として、アクリロニトリル−ブタ
ジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂とポリカ−ボ
ネート(PC)樹脂とのアロイ化物を用い、超薄肉筐体
を成形する。ABS樹脂とPC樹脂は数少ない相溶性の
良い組み合わせであるため、超薄肉筐体用として、AB
S各成分の共重合比、PCの粘度、アロイ樹脂中のゴム
成分の分散粒子径の最適化などにより、各樹脂の長所を
生かし、短所を補ったグレードの開発が可能である。す
なわち、ABS/PCアロイ樹脂は、ABS樹脂の熱変
形温度や難燃性を高め、PC樹脂の成形加工性、メッキ
付着性、塗装性の向上、衝撃強さの厚み依存性の低下、
コストダウンなどの優れた特性を有している。特に、ガ
ラス繊維や炭素繊維等を充填した繊維強化グレードは、
機械的特性および熱的特性に優れている。 (8)前記アロイ樹脂として、アクリロニトリル−ブタ
ジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂とポリブチレ
ンテレフタレート(PBT)樹脂とのアロイ化物を用
い、超薄肉筐体を成形する。ABS樹脂とPBT樹脂
は、比較的簡単にアロイ化することができるため、AB
S各成分の共重合比、PBTの粘度、アロイ樹脂中の各
成分の比率などを調節することにより、超薄肉筐体用と
して、各樹脂の長所を生かし短所を補ったグレードの開
発が可能である。すなわち、ABS/PBTアロイ樹脂
は、ABS樹脂の成形加工性や熱変形温度を高め、PB
T樹脂の耐衝撃性、寸法安定性、メッキ付着性、塗装性
などを高めることができる。また、ガラス繊維や炭素繊
維等を充填した繊維強化グレードは、機械的特性および
熱的特性に優れている。 (9)上記アロイ樹脂として、ポリフェニレンスルフィ
ド(PPS)樹脂とポリアミド樹脂とのアロイ化物を用
い、超薄肉筐体を成形する。上述したように、PPS樹
脂は、熱変形温度、機械的特性、耐薬品性、成形性など
の特性が優れている反面、バリが発生し易く、その他、
耐衝撃性やウエルド特性が劣るといった欠点を有してい
る。そのため、他の樹脂とアロイ化したり、ガラス繊維
や炭素繊維などの強化繊維を充填したりすることによ
り、PPS樹脂のじん性を高め、バリの発生が防止でき
る。アロイ化するための樹脂としては、ポリアミド−6
樹脂、ポリアミド−66樹脂、ポリアミド−12樹脂、
芳香族ポリアミド樹脂等のポリアミド系樹脂が適してい
るが、中でも超薄肉筐体用としては、芳香族ポリアミド
樹脂であるポリアミドメタキシレンジアミン−6(PA
MXD−6)樹脂が好適に用いられる。 (10)上記アロイ樹脂として、芳香族ポリアミド樹脂
とポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂とのアロイ化
物を用い超薄肉筐体を成形する。芳香族ポリアミド樹脂
としては、機械的特性に優れ、吸水率の小さな上記PA
MXD−6樹脂が好適であるが、PAMXD−6樹脂は
結晶性であるため成形収縮が大きく反りが発生し易い。
そのため、流動性は劣るが比容積変化の少ない非晶性の
PPE樹脂を用い、超薄肉筐体用としてPAMXD−6
樹脂の流動性が低下しない程度にアロイ化することによ
り、反りの発生を低減化することができる。また、剛性
を高めるために炭素繊維やガラス繊維を充填したり、耐
衝撃性強化のためゴム成分を添加したりすることが好ま
しい。 (11)上記アロイ樹脂として、ポリフェニレンエーテ
ル(PPE)樹脂と耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)
樹脂とのアロイ化物を用い超薄肉筐体を成形する。PP
E/HIPS系のアロイ樹脂は、完全相溶系であり、各
成分の比率の調節により、超薄肉筐体用として、機械的
特性を低下させることなく、熱変形温度や流動性を幅広
く調整制御することが可能である。
【0006】
【作用】上記電子機器用超薄肉筐体の超薄肉の成形性の
確認は、超薄肉筐体として図1に示す携帯電話機用の筐
体を取り上げて行った。図1は、小型軽量化を指向した
平面アンテナ付き携帯電話機筐体(特開平5−1404
4号公報)の概略図であり、1は筐体、2はアンテナ
部、3はスピーカ部、4は表示部、5は操作ボタン部、
6は盲人用突起、7はマイクロフォン部、8は音量調節
ボタン部、9は平面アンテナ部、10はウエルド部を示
す。この筐体1は全体が、縦長さ13.5cm、横長さ4
cm、厚さ1.5cmの大きさで、スピーカ部3、表示部
4、操作ボタン部5、盲人用突起6、マイクロフォン部
7用の穴を配したUケース1Aと、平面アンテナ部設置
用のLケース1Bと、2次電池収納用のスライドケース
1Cの各ケースからなる。これらの各ケースは別々に射
出成形法により成形された後、互いに嵌合により一体化
できるようになっている。筐体の肉厚は、Uケース1A
の天板部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1C
の天板部及び側壁部を0.05cm仕上がりとし、Uケー
ス1Aの側壁部の一部の厚みを嵌合強度を考慮して厚さ
0.1cmとした。なお、図1に示すような厚さ0.05c
mの超薄肉筐体を射出成形するための金型設計および最
適射出成形条件の決定は、CAE(Computer Aided
Engineering)解析技術を駆使して行い、材料物性デー
タを導入することにより溶融樹脂のフローパターン、圧
力分布、温度分布などを調べ、ゲート構造、ゲート位
置、キャビティ構造などの金型構造、射出温度、射出速
度、射出圧力、保圧などの最適成形条件を決定した。超
薄肉筐体の評価は、筐体の射出成形性および筐体特性を
もって行い、射出成形性としては、0.05cm薄肉成形
性、賦形性、バリ、外観を取り上げ、筐体特性として
は、筐体重量、機械的特性(剛性、耐衝撃性、ウエルド
安定性、嵌合性)および耐熱寸法安定性を取り上げた。
ここで筐体特性の内、剛性に関しては直接評価し難いた
め、材料の弾性率および各筐体ケースを嵌合して組み立
てた筐体の曲げ試験あるいは筐体を握った感じから判定
した。また、嵌合性に関しても直接評価し難いため、各
筐体ケースを嵌合して組み立てた感じから判定した。筐
体の剛性は、筐体自身のたわみ易さや各ケース嵌合性の
目安となり、大きな弾性率の成形材料を用いるほど剛性
が増すため外力に対して変形し難くなり、嵌合性も安定
する。耐衝撃性については標準化された試験法がないた
め、本発明の検討においては、嵌合した筐体内に重量調
節用の重りを封入することにより筐体全体の重量が12
0gとなるように調節した。このように重量調節した筐
体を、図1のA面およびB面に面衝撃が加わるよう90
cm高さからPタイル上に自由落下させ、筐体の破損状
況を観察して判定し、破壊もクラックも白化もない場合
には優、白化のみが生じた場合には良、クラックあるい
は破壊が生じた場合には可として評価した。ウエルド安
定性については、Uケースのボタン操作部に発生するウ
エルド部10を成形品から切り出し、その引張り強さお
よび破断伸びを測定することにより判定し、ウエルド部
の引っ張強さおよび破断伸びの低下の程度が材料自体の
それと比較して10%以下であれば優、10〜30%の
間であれば良、30%以上であれば可として評価した。
耐熱寸法安定性については、筐体を100℃に保った恒
温糟内に設置した状態で3時間熱処理し、その後取り出
して半日経過後の寸法変化量を測定して判定し、寸法変
化量が0.3%以下であれば優、0.3〜0.5%の間で
あれば良、0.5%以上であれば可として評価した。電
子機器を真夏の自動車に放置したような場合には、場所
によっては100℃程度まで温度が上昇するため、耐熱
寸法安定性については、特に考慮を払う必要がある。な
お、上記超薄肉筐体の評価基準は、0.05cm肉厚とい
う超薄肉の筐体について行ったため、かなり厳しいもの
となっている。しかしながら、本発明の権利範囲は筐体
肉厚を0.1cm以下としており、その代表例として筐体
肉厚を0.05cmとしているため、下記の実施例におい
て評価結果が可となる薄肉筐体についても一概に採用で
きない訳ではなく、筐体肉厚を0.05cm〜0.10cm
の間の薄肉に設計すれば、良程度の評価になるものと思
われる。このような0.05cm〜0.10cmの間の肉厚
を有する薄肉筐体の成形性の確認は、CAE解析により
行った。また、0.05cm以下の肉厚を有する筐体につ
いても、本発明の超薄肉筐体用材料の開発思想および超
薄肉精密射出成形技術を駆使すれば成形が可能であるこ
とは言うまでもない。
【0007】
【実施例】以下に、本発明の超薄肉筐体について実施例
を挙げ、さらに詳細に説明する。使用した樹脂の基本的
物性については表1〜表4に、各筐体ケースの射出成形
性として0.05cm薄肉成形性、賦形性、バリ、外観に
ついては表5〜表8に、成形した各筐体ケースを嵌合し
て筐体形状に組み立てた場合の筐体重量、剛性、耐衝撃
性、ウエルド安定性、嵌合性および耐熱寸法安定性につ
いては表9〜表12に示す。
【0008】
【表1】
【0009】
【表2】
【0010】
【表3】
【0011】
【表4】
【0012】
【表5】
【0013】
【表6】
【0014】
【表7】
【0015】
【表8】
【0016】
【表9】
【0017】
【表10】
【0018】
【表11】
【0019】
【表12】
【0020】〈実施例1〉以下に示す実施例1〜5にお
いては、ABS系の超薄肉筐体について説明する。各成
分の共重合比を調整することにより流動性を改善したA
BS樹脂(以下、ABS1と略称する。)を用い、図1
に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形した。表
5の実施例1に示すように、各筐体ケース共、バリが少
々出たため良として評価したが、板厚はほぼ設計通り仕
上がり、Uケース1Aの天板部、Lケース1Bの側壁
部、スライドケース1Cの天板部および側壁部を目標と
する厚さ0.05cmから±5%以内の誤差に抑えること
ができ、さらに、賦形性も図1の設計寸法を満足し、筐
体の外観も綺麗に仕上がったことが分かった。そのた
め、0.05cm薄肉成形性、賦形性および外観は優とし
て評価した。このように、ABS1を用いることによ
り、これまで0.1cmが限界であった筐体肉厚を0.0
5cmという超薄肉に仕上げることができ、筐体重量を
大幅に軽量化することができた。次に、表9に示す実施
例1の筐体特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表1の実施例1に示した、ABS
1の曲げ弾性率が小さいことからも予想されるように、
筐体形状に仕上げた場合の剛性は劣り、また各筐体ケー
スの嵌合性も、さほど強固なものとならなかった。その
ため、筐体の剛性および嵌合性は可として評価した。 〔耐衝撃性〕表1の実施例1に示した、ABS1のアイ
ゾット衝撃強度は比較的大きい値であり、120g筐体
を90cm高さから落下させた場合でも筐体に破壊やク
ラックは発生せず、そのため筐体の耐衝撃性は優として
評価し、実用上問題のないものと判断した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表1の実施例1に示した、ABS1
の熱変形温度が88℃と低いことからも予想されるよう
に、100℃、3時間の熱処理条件下で大きく変形した
ため、筐体の耐熱寸法安定性は可として評価した。以上
示したように、超薄肉成形のために流動性を改善したA
BS1を用いることにより、0.05cm厚さの超薄肉筐
体の形状に仕上げることはできたが、剛性、嵌合性、耐
熱寸法安定性を満足させることができなかった。
【0021】〈実施例2〉各成分の共重合比を調節する
ことにより流動性及び熱変形温度を改善したABS樹脂
(以下、ABS2と略称する。)を用い、図1に示す構
造の3部品からなる筐体ケースを成形した。表5の実施
例2に示すように、各筐体ケース共、バリが少々出たた
め良として評価したが、板厚はほぼ設計通りに仕上が
り、Uケース1Aの天板部、Lケース1Bの側壁部、ス
ライドケース1Cの天板部および側壁部を目標とする厚
さ0.05cmから±5%以内の誤差に抑えることがで
き、さらに賦形性も図1の設計寸法を満足し、筐体の外
観も綺麗に仕上げることができることが分かった。その
ため、0.05cm薄肉成形性、賦形性および外観は優と
して評価した。このように、ABS2を用いることによ
り、これまで0.1cmが限界であった筐体肉厚を0.0
5cmという超薄肉に仕上げることができ、筐体重量を
大幅に軽量化することができた。なお、実施例1および
2共に、樹脂の溶融粘度はシリンダ温度を上昇させるほ
ど低下するが、シリンダ温度を上げ過ぎるとバリや焼け
が生じ易くなり、反対に下げ過ぎるとヒケが生じ賦形性
が悪くなった。次に、表9に示す実施例2の筐体特性に
ついて項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表1の実施例2に示した、ABS
2の曲げ弾性率が、ABS1と同様小さいことからも予
想されるように、筐体形状に仕上げた場合の剛性は劣っ
たものとなり、また、各筐体ケースの嵌合性もそれほど
強固なものとならなかった。そのため、筐体の剛性およ
び嵌合性は可として評価した。 〔耐衝撃性〕表1の実施例2に示した、ABS2のアイ
ゾット衝撃強度が、ABS1よりも20%程度低下して
いることからも予想されるように、120g筐体を90
cm高さから落下させた場合、筐体のコーナ部に一部白
化が生じ、実施例1よりも耐衝撃性は劣ったが、その他
の部分に大きな破壊やクラックが生じなかったため、筐
体の耐衝撃性は良として評価し、実用上はさほど問題な
いものと判断した。なお、筐体肉厚を0.05cm〜0.
10cmの間となるように設計すれば白化も起こらず、
十分に耐衝撃性を満足するものと考えられる。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表1の実施例2に示した、ABS2
の熱変形温度はABS1よりも10%ほど改善されてい
るが、100℃、3時間の熱処理条件下で0.3%以上
の変形を生じたため、筐体の耐熱寸法安定性は可として
評価した。なお、実施例1および2の場合、薄肉筐体の
熱処理温度を90℃とした場合には0.1%以下の変形
量に留まり、耐熱寸法安定性の優れたものが得られた。
以上示したように、超薄肉成形のために流動性および熱
変形温度を改善したABS2を用いることにより、0.
05cm厚さの薄肉筐体の形状に仕上げることができた
が、実施例1と同様、剛性、嵌合性および耐熱寸法安定
性を満足させることはできなかった。このように、実施
例1および2におけるようなABS単味の材料を用いた
0.05cm肉厚の薄肉筐体においては、剛性、嵌合性お
よび耐熱寸法安定性を満足させることはできなかった
が、筐体肉厚を0.05cm〜0.10cmの間となるよ
うに設計すれば、これらの特性を満足することは可能で
あると考えられる。なお、一般成形用厚肉グレードの耐
熱ABS樹脂を用い、図1に示す構造の3部品からなる
筐体ケースを成形したが、樹脂の溶融粘度が大きいた
め、0.05cm薄肉成形性を満足させることができず、
板厚は0.1cm以上の厚さの仕上がりとなり、大きな変
形と外観の悪い筐体が得られた。
【0022】〈実施例3〉実施例1におけるABS1の
曲げ弾性率および熱変形温度を改善する目的で、ABS
1中にガラス繊維(GF)を20%充填したガラス繊維
複合材料(以下、ABS1/GF20と略称する。)を
用い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成
形した。表5の実施例3に示すように、各筐体ケース共
バリもなく、図1の設計通りに賦形でき、さらに板厚も
ほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板部、Lケ
ース1Bの側壁部、スライドケース1Cの天板部および
側壁部を目標とする厚さ0.05cmから±5%の誤差に
抑えることができることが分かった。そのため、0.0
5cm薄肉成形性、賦形性およびバリは優として評価し
た。一方、筐体の外観は、ガラス繊維が若干表面に浮か
び出たため良として評価した。このように、ABS1/
GF20を用いることにより、これまで0.1cmが限界
であった筐体肉厚を0.05cmという超薄肉筐体に仕上
げることができ、筐体重量を大幅に軽量化することがで
きた。次に表9に示す実施例3の筐体特性について項目
別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表1の実施例3に示した、ABS
1/GF20の曲げ弾性率が、かなり大きいことからも
予想されるように、筐体形状に仕上げた場合の剛性は優
れており、各筐体ケースの嵌合性もかなり強固なものと
なった。そのため、筐体の剛性および嵌合性は優として
評価し実用上問題ないものと判断した。 〔耐衝撃性〕表1の実施例3に示した、ABS1/GF
20のアイゾット衝撃強度が、ABS1およびABS2
よりも大きく低下していることから予想されるように、
120g筐体を90cm高さから落下させた場合に、衝
撃を受けた箇所によっては一部白化やミクロクラックが
発生したため、筐体の耐衝撃性は可として評価した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して、引張り強度が上昇し破断伸びが減少
した。しかし、破断伸びの減少の程度が20%程であっ
たため、筐体のウエルド安定性は良として評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表1の実施例3に示した、ABS1
/GF20の熱変形温度は105℃と向上しており、1
00℃、3時間の熱処理条件下でも0.1%以下の変形
量を保つことが確かめられたため、筐体の耐熱寸法安定
性は優として評価し、実用上問題ないものと判断した。
以上示したように、ガラス繊維強化により曲げ弾性率と
熱変形温度を改善したABS1/GF20を用いること
により、耐衝撃性およびウエルド安定性に問題はあるも
のの、軽量で、かつ剛性、嵌合性、耐熱寸法安定性を満
足する0.05cm厚の超薄肉筐体の成形が可能となっ
た。
【0023】〈実施例4〉実施例1におけるABS1の
曲げ弾性率および熱変形温度を改善する目的で、実施例
3のガラス繊維にかえて、炭素繊維(CF)を7%充填
した炭素繊維複合材料(以下、ABS1/CF7と略称
する。)を用い、図1に示す構造の3部品からなる筐体
ケースを成形した。表5の実施例4に示すように、各筐
体ケース共バリもなく、図1の設計通りに賦形でき、さ
らに板厚もほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天
板部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1Cの天
板部および側壁部を目標とする厚さ0.05cmから±5
%以内の誤差に抑えることができることが分かった。そ
のため、0.05cm薄肉成形性、賦形性及びバリは優と
して評価した。一方、筐体の外観は、炭素繊維が若干表
面に浮かび出たため良として評価した。このように、A
BS1/CF7を用いることにより、これまで0.1cm
が限界であった筐体肉厚を0.05cmという超薄肉筐体
に仕上げることができ、筐体重量を大幅に軽量化するこ
とができた。次に、表9に示す実施例4の筐体特性につ
いて項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表1の実施例4に示した、ABS
1/CF7の曲げ弾性率がそれほど大きくないことから
も予想されるように、筐体形状に仕上げた場合の剛性は
中程度であり、各筐体ケースの嵌合性もあまり強固なも
のとはならなかったため、筐体の剛性および嵌合性は良
として評価した。しかしながら、筐体肉厚を0.05cm
〜0.10cmの間となるように設計すれば、十分に筐体
の剛性および嵌合性を満足するものと考えられる。 〔耐衝撃性〕表1の実施例4に示した、ABS1/CF
7のアイゾット衝撃強度は、実施例3におけるABS1
/GF20よりもさらに低下しており、120g筐体を
90cm高さから落下させた場合、衝撃を受けた箇所に
よっては一部白化や亀裂が発生したため、筐体の耐衝撃
性は可として評価した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して30%以上大きく低下した値を示した
ため、筐体のウエルド安定性は可として評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表1の実施例4に示したABS1/
CF7の熱変形温度は、ABS2と同程度で97℃と余
り高くないが、100℃、3時間の熱処理条件下でも
0.1〜0.3%の間の変形量を保つことが確かめられた
ため、筐体の耐熱寸法安定性は優として評価し、実用上
問題ないものと判断した。以上示したように、炭素繊維
強化によりABS1よりも曲げ弾性率と熱変形温度を改
善したABS1/CF7を用いることにより、剛性、嵌
合性、耐衝撃性およびウエルド安定性に問題はあるもの
の、軽量でかつ耐熱寸法安定性を満足する0.05cm厚
の超薄肉筐体の成形が可能となった。
【0024】〈実施例5〉実施例4におけるABS1/
CF7の曲げ弾性率を改善する目的で、実施例4の炭素
繊維充填量を7%から10%に増加させた炭酸繊維複合
材料(以下、ABS1/CF10と略称する。)を用
い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形
した。表5の実施例5に示すように、各筐体ケース共バ
リもなく、図1の設計通りに賦形でき、さらに、板厚も
ほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板部、Lケ
ース1Bの側壁部、スライドケース1Cの天板部および
側壁部を目標とする厚さ0.05cmから±5%以内の誤
差に抑えることができることが分かった。そのため、
0.05cm薄肉成形性、賦形性及びバリは優として評価
した。一方、筐体の外観は、実施例4と同様、炭素繊維
が若干表面に浮かび出たため良として評価した。このよ
うに、ABS1/CF10を用いることにより、これま
で0.1cmが限界であった筐体肉厚を0.05cmという
超薄肉筐体に仕上げることができ、筐体重量を大幅に軽
量化することができた。なお、実施例3〜5において用
いた繊維強化複合材料の溶融粘度は、シリンダ温度を上
昇させるほど低下するが、シリンダ温度を上げ過ぎると
焼けが生じ易くなり、反対に下げ過ぎるとヒケを生じて
賦形性が悪くなった。次に、表9の実施例5に示す筐体
特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表1の実施例5に示した、ABS
1/CF10の曲げ弾性率が、実施例4のABS1/C
F7よりも2倍ほど向上していることからも予想される
ように、筐体形状に仕上げた場合の剛性は大きく、各筐
体ケースの嵌合性も強固なものとなったため、筐体の剛
性および嵌合性は優として評価し、実用上問題ないもの
と判断した。 〔耐衝撃性〕表1の実施例5に示した、ABS1/CF
10のアイゾット衝撃強度は、ABS1/CF7と同程
度であり、120g筐体を90cm高さから落下させた
場合、衝撃を受けた箇所によっては一部白化や亀裂が生
じたため、筐体の耐衝撃性は可として評価した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して、20%ほど大きく低下した値を示し
たため、筐体のウエルド安定性は可として評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表1の実施例5に示した、ABS1
/CF10の熱変形温度は99℃と余り高くないが、1
00℃、3時間の熱処理条件下でも0.1%以下の変形量
を保つことが確かめられたため、筐体の耐熱寸法性は優
として評価し、実用上問題ないものと判断した。以上示
したように、炭素繊維強化により曲げ弾性率を改善した
ABS1/CF10を用いることにより、耐衝撃性およ
びウエルド安定性に問題はあるものの、軽量で、かつ剛
性、嵌合性および耐熱寸法安定性を満足する0.05cm
厚の超薄肉筐体の成形が可能となった。このように、実
施例3〜5におけるような繊維強化ABS複合材料を用
いた0.05cm肉厚の薄肉筐体においては、耐衝撃性お
よびウエルド安定性を満足することはできなかったが、
筐体肉厚を0.05cm〜0.10cmの間となるように設
計すれば、上記の特性を満足することができるものと考
えられる。なお、一般成形用厚肉グレードのガラス繊維
強化ABS複合材料(ガラス繊維充填量15%)および
炭素繊維強化ABS複合材料(炭素繊維充填量8%)を
用いて、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを
成形したが、樹脂の溶融粘度が大きいため、0.05cm
薄肉成形性を満足させることができず、板厚は0.1cm
以上の厚さの仕上がりとなり、大きな変形と外観の悪い
筐体が得られた。
【0025】〈実施例6〉実施例6〜8はPC系超薄肉
筐体について説明する。流れ値Q(JIS−K−671
9に準拠)が15〜20×10~2cc/秒となるように、
分子量および可塑剤量を調整した超低粘度タイプのポリ
カ−ボネート樹脂(以下、PC1と略称する。)を用
い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形
した。表5の実施例6に示すように、各筐体ケース共、
バリが少々出たため良として評価したが、板厚はほぼ設
計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板部、Lケース1
Bの側壁部、スライドケース1Cの天板部および側壁部
を目標とする厚さ0.05cmから±5%以内の誤差に抑
えることができ、さらに賦形性も図1の設計寸法を満足
し、筐体の外観も綺麗に仕上げることができることが分
かった。そのため、0.05cm薄肉成形性、賦形性およ
び外観は優として評価した。このように、PC1を用い
ることにより、今まで0.1cmが限界であった筐体肉厚
を0.05cmという超薄肉に仕上げることができ、筐体
重量を大幅に軽量化することができた。なお、PC1の
溶融粘度は、シリンダ温度を上昇させるほど低下する
が、シリンダ温度を上げ過ぎるとバリや焼けが生じ易く
なり、反対に下げ過ぎるとヒケを生じて賦形性が悪くな
った。次に、表9に示す実施例6の筐体特性について項
目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表1の実施例6に示した、PC1
の曲げ弾性率が小さいことからも予想されるように、筐
体形状に仕上げた場合の剛性は劣り、また各筐体ケース
の嵌合性もそれほど強固なものとはならなかった。その
ため、筐体の剛性および嵌合性は可として評価した。 〔耐衝撃性〕表1の実施例6に示した、PC1のアイゾ
ット衝撃強度はそれほど大きくないが、120g筐体を
90cm高さから落下させた場合でも、筐体に白化やク
ラックは発生せず、そのため筐体の耐衝撃性は優として
評価し、実用上問題ないものと判断した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表1の実施例6に示した、PC1の
熱変形温度が136℃と高いことからも予想されるよう
に、100℃、3時間の熱処理条件下でも0.1%以下
の変形量を保つことが確かめられたため、筐体の耐熱寸
法安定性は優として評価し実用上問題ないものと判断し
た。以上示したように、超薄肉成形のために流動性を改
善したPC1を用いることにより、剛性および嵌合性に
問題はあるものの、軽量で、かつ耐衝撃性、ウエルド安
定性および耐熱寸法安定性を満足した0.05cm厚の超
薄肉筐体の成形が可能となった。このように、本実施例
におけるようなPC単味材料を用いた0.05cm肉厚の
薄肉筐体においては、剛性および嵌合性を満足させるこ
とはできなかったが、筐体肉厚を0.05cm〜0.10c
mの間となるように設計すれば、上記の特性を満足する
ことができるものと考えられる。なお、流れ値Qが7〜
10×10~2cc/秒の一般成形用厚肉グレードのポリカ
−ボネート樹脂を用いて、図1に示す構造の3部品から
なる筐体ケースを成形したが、樹脂の溶融粘度が大きい
ため、いずれの筐体ケースにおいても0.05cm薄肉成
形性を満足させることができず、板厚は0.1cm以上の
厚さの仕上がりとなり、大きな変形と外観の悪い筐体が
得られた。
【0026】〈実施例7〉PC1の曲げ弾性率を改善す
る目的で、PC1に炭素繊維(CF)を10%充填した
複合材料(以下、PC1/CF10と略称する。)を用
い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形
した。表5の実施例7に示すように、各筐体ケース共、
板厚はほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板
部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1Cの天板
部および側壁部を目標とする厚さ0.05cmから±5%
以内の誤差に抑えることができ、さらに賦形性も図1の
設計寸法を満足することが分かった。しかしながら、U
ケースおよびスライドケースにおいては、バリが少々大
きく、また外観も繊維の配向流れが若干表面に浮かび出
たため、バリおよび外観については良として評価した。
このように、PC1/CF10を用いることにより、今
まで0.1cmが限界であった筐体肉厚を0.05cmとい
う超薄肉に仕上げることができ、筐体重量を大幅に軽量
化することができた。次に表9に示す実施例7の筐体特
性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表1の実施例7に示した、PC1
/CF10の曲げ弾性率が、PC1よりも3倍ほど大き
いことからも予想されるように、筐体形状に仕上げた場
合、実施例6のPC1筐体よりもかなり大きな剛性のも
のとなり、各筐体ケースの嵌合性も安定した強固なもの
となった。そのため、筐体の剛性および嵌合性は優とし
て評価し、実用上問題ないものと判断した。 〔耐衝撃性〕表1の実施例7に示した、PC1/CF1
0のアイゾット衝撃強度は、PC1と同程度の値である
が、120g筐体を90cm高さから落下させた場合
に、筐体の一部に白化が生じた。しかしながら、その他
の部分には大きな破壊やクラックが発生しなかったた
め、筐体の耐衝撃性は良として評価し実用上はさほど問
題ないものと判断した。また、筐体肉厚を0.05cm〜
0.10cmの間となるように設計すれば、白化も生じる
ことなく十分に耐衝撃性を満足するものと考えられる。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度およおび破断伸びを測定した結果、材料自
体の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題
のない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優とし
て評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表1の実施例7に示した、PC1/
CF10の熱変形温度が145℃と高いことからも予想
されるように、100℃、3時間の熱処理条件下でも
0.1%以下の変形量を保つことが確かめられたため、
筐体の耐熱寸法安定性は優として評価し、実用上問題な
いものと判断した。なお、PC1/CF10を用いて成
形した筐体では、120℃、3時間の熱処理条件下でも
0.1%以下の変形量に留まり、非常に耐熱寸法安定性
の優れた筐体であることが明らかとなった。以上示した
ように、炭素繊維強化により剛性を改善したPC1/C
F10を用いることにより、耐衝撃性に若干問題はある
ものの、軽量で、剛性、嵌合性、ウエルド安定性、耐熱
寸法安定性を満足した0.05cm厚の超薄肉筐体の成形
が可能となった。なお、PC1中に炭素繊維を20%充
填した複合材料を用いて、図1に示す構造の3部品から
なる筐体ケースを成形したが、Lケース1Bを除いて比
較的厚い0.06cm前後の仕上がりとなり、嵌合筐体の
耐衝撃性もクラックが生じて悪化した。
【0027】〈実施例8〉実施例7の炭素繊維にかえ
て、PC1中にガラス繊維を20%充填した複合材料
(PC1/GF20と略す。)を用い、図1に示す構造
の3部品からなる筐体ケースを成形した。表5の実施例
8に示すように、各筐体ケース共、板厚はほぼ設計通り
に仕上がり、Uケース1Aの天板部、Lケース1Bの側
壁部、スライドケース1Cの天板部および側壁部を目標
とする厚さ0.05cmから±5%以内の誤差に抑えるこ
とができ、さらに賦形性も図1の設計寸法を満足するこ
とが分かった。しかしながら、Uケースおよびスライド
ケースにおいては、バリが少々大きく、また外観も繊維
の配向流れが若干表面に浮かび出たため、バリおよび外
観については良として評価した。このように、PC1/
GF20を用いることにより、今まで0.1cmが限界で
あった筐体肉厚を0.05cmという超薄肉に仕上げるこ
とができ、筐体重量を大幅に軽量化することができた。
なお、実施例7および8において用いた繊維強化複合材
料の溶融粘度は、シリンダ温度を上昇させるほど低下す
るが、シリンダ温度を上げ過ぎるとバリや焼けが生じ易
くなり、反対に下げ過ぎるとヒケを生じて賦形性が悪く
なった。次に、表9に示す実施例8の筐体特性について
項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表1の実施例8に示した、PC1
/GF20の曲げ弾性率が、実施例6におけるPC1の
それよりも3倍ほど大きいことからも予想されるよう
に、筐体形状に仕上げた場合、実施例6の筐体よりもか
なり大きな剛性が得られ、各筐体ケースの嵌合性も安定
した強固なものとなった。そのため、筐体の剛性および
嵌合性は優として評価し、実用上問題ないものと判断し
た。 〔耐衝撃性〕表1の実施例8に示した、PC1/GF2
0のアイゾット衝撃強度は、実施例7のPC1/CF1
0よりも向上しているが、120g筐体を90cm高さ
から落下させた場合、実施例7と同様、筐体に一部白化
が生じた。しかしながら、その他の部分に大きな破壊や
クラックが発生しなかったため、筐体の耐衝撃性は良と
して評価し実用上さほど問題ないものと判断した。ま
た、筐体肉厚を0.05cm〜0.10cmの間となるよう
に設計すれば、白化も起こらず、十分に耐衝撃性を満足
するものと考えられる。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して20%ほど低下したため、筐体のウエ
ルド安定性は良として評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表1の実施例8に示した、PC1/
GF20の熱変形温度が150℃と高いことからも予想
されるように、100℃、3時間の熱処理条件下でも
0.1%以下の変形量を保つことが確かめられたため、
筐体の耐熱寸法安定性は優として評価し実用上問題ない
ものと判断した。なお、PC1/GF20を用いて成形
した筐体では、120℃、3時間の熱処理条件下でも
0.1%以下の変形量に留まり、非常に耐熱寸法安定性
の優れた筐体であることが明らかとなった。以上示した
ように、PC1/GF20を用いることにより、耐衝撃
性とウエルド安定性に若干問題はあるものの、軽量で、
剛性、嵌合性および耐熱寸法安定性を満足した0.05c
m厚の超薄肉筐体の成形が可能となった。ここで、一般
成形用厚肉グレードのガラス繊維強化PC複合材料(ガ
ラス繊維充填量10%)および炭素繊維強化PC複合材
料(炭素繊維充填量5%)を用いて、図1に示す構造の
3部品からなる筐体ケースを成形したが、樹脂の溶融粘
度が大きいため、いずれの筐体ケースにおいても0.0
5cm薄肉形成を満足させることができず、板厚は0.1
cm以上の厚い仕上がりとなり、大きな変形と外観の悪
い筐体が得られた。なお、上記の実施例においては、分
子量を調節することにより流動性を改善したポリカ−ボ
ネート樹脂を用いた例について説明したが、特開昭60
−166321号公報に開示されているような分子構造
を変化させて流動性を改善した高流動タイプのポリカ−
ボネート樹脂を用いてもよいし、また特開昭61−12
3658号公報に開示されているように、ポリカ−ボネ
ート樹脂にポリカ−ボネートオリゴマ−を配合して高流
動タイプとした樹脂材料を用いてもよい。
【0028】〈実施例9〉実施例9〜13においては、
ABS/PC系超薄肉筐体について説明する。ABSと
PCの比率、およびABS中におけるゴム成分の割合を
調節することにより流動性を改善したABS/PCアロ
イ樹脂(以下、ABS/PC1と略称する。)を用い、
図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形し
た。表6の実施例9に示すように、各筐体ケース共、バ
リが少々出たため良として評価したが、板厚はほぼ設計
通りに仕上がり、Uケース1Aの天板部、Lケース1B
の側壁部、スライドケース1Cの天板部および側壁部を
目標とする厚さ0.05cmから±5%以内の誤差に抑え
ることができ、さらに賦形性も図1の設計寸法を満足
し、筐体の外観も綺麗に仕上げることができることが分
かった。そのため、0.05cm薄肉成形性、賦形性およ
び外観は優として評価した。このように、ABS/PC
1を用いることにより、今まで0.1cmが限界であった
筐体肉厚を0.05cmという超薄肉筐体に仕上げること
ができ、筐体重量を大幅に軽量化することができた。次
に、表10の実施例9に示す筐体特性について項目別に
説明する。 〔剛性および嵌合性〕表2の実施例9に示した、ABS
/PC1の曲げ弾性率が小さいことからも予想されるよ
うに、筐体形状に仕上げた場合の剛性は劣っており、ま
た各筐体ケースの嵌合性もそれほど強固なものとならな
かった。そのため、筐体の剛性および嵌合性は可として
評価した。 〔耐衝撃性〕表2の実施例9に示した、ABS/PC1
のアイゾット衝撃強度はかなり大きく、120g筐体を
90cm高さから落下させた場合でも、筐体にクラック
や破壊は起こらず、そのため筐体の耐衝撃性は優として
評価し、実用上問題ないものと判断した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表2の実施例9に示した、ABS/
PC1の熱変形温度は102℃であるが、100℃、3
時間の熱処理条件下で0.3〜0.5%の間の変形量とな
ったため、筐体の耐熱寸法安定性は良として評価した。
以上示したように、超薄肉成形のために流動性を改善し
たABS/PC1を用いることにより、剛性、嵌合性お
よび耐熱寸法安定性に問題はあるものの、軽量で、耐衝
撃性およびウエルド安定性を満足した0.05cm厚の超
薄肉筐体の成形が可能となった。
【0029】〈実施例10〉ABSとPCの比率、およ
びABS中におけるゴム成分の割合を調節することによ
り流動性および熱変形温度を改善したABS/PCアロ
イ樹脂(以下、ABS/PC2と略称する。)を用い、
図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形し
た。表6の実施例10に示すように、各筐体ケース共、
バリが少々出たため良として評価したが、板厚はほぼ設
計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板部、Lケース1
Bの側壁部、スライドケース1Cの天板部および側壁部
を目標とする厚さ0.05cmから±5%以内の誤差に抑
えることができ、さらに賦形性も図1の設計寸法を満足
し、筐体の外観も綺麗に仕上げることができることが分
かった。そのため、0.05cm薄肉成形性、賦形性およ
び外観は優として評価した。このように、ABS/PC
2を用いることにより、今まで0.1cmが限界であった
筐体肉厚を0.05cmという超薄肉筐体に仕上げること
ができ、筐体重量を大幅に軽量化することができた。な
お、実施例9および10におけるABS/PC1および
ABS/PC2の溶融粘度は、シリンダ温度を上昇させ
るほど低下するが、シリンダ温度を上げ過ぎるとバリや
焼けが生じ易くなり、反対に下げ過ぎるとヒケを生じて
賦形性が悪くなった。次に、表10に示す実施例10の
筐体特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表2の実施例10に示した、AB
S/PC2の曲げ弾性率が、ABS/PC1と同様に大
きくないことからも予想されるように、筐体形状に仕上
げた場合の剛性は劣っており、また各筐体ケースの嵌合
性もそれぼど強固なものとならなかった。そのため、筐
体の剛性および嵌合性は可として評価した。 〔耐衝撃性〕表2の実施例10に示した、ABS/PC
2のアイゾット衝撃強度は、ABS/PC1とほぼ同程
度の大きな値であり、120g筐体を90cm高さから
落下させた場合でも、筐体に白化やクラックは生じなか
った。そのため、筐体の耐衝撃性は優として評価し、実
用上問題ないものと判断した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表2の実施例10に示した、ABS
/PC2の熱変形温度は112℃とABS/PC1より
も向上しており、100℃、3時間の熱処理条件下でも
0.1%以下の変形量を保つことが確かめられたため、
筐体の耐熱寸法安定性は優として評価し実用上問題ない
ものと判断した。以上示したように、流動性および耐熱
性を改善したABS/PC2を用いることにより、剛性
および嵌合性に問題はあるものの、軽量で、耐衝撃性、
ウエルド安定性および耐熱寸法安定性に優れた0.05c
m厚の超薄肉の筐体の成形が可能となった。このよう
に、実施例9および10におけるようなABS/PCア
ロイ樹脂を用いた0.05cm肉厚の薄肉筐体において
は、剛性および嵌合性を満足させることができず、また
実施例9においては耐熱寸法安定性に若干問題を生じた
が、筐体肉厚を0.05cm〜0.10cmの間となるよう
に設計すれば、上記の特性を十分に満足することができ
るものと考えられる。なお、一般成形用厚肉グレードの
ABS/PCアロイ樹脂を用いて図1に示す構造の3部
品からなる筐体ケースを成形したが、樹脂の溶融粘度が
大きいため、いずれの筐体ケースにおいても0.05cm
薄肉成形性を満足することができず、板厚は0.1cm以
上の厚い仕上がりとなり、大きな変形と外観の悪い筐体
が得られた。
【0030】〈実施例11〉ABS/PC1の曲げ弾性
率および熱変形温度を改善する目的で、ABS/PC1
中にガラス繊維(GF)を10%充填したガラス繊維複
合材料(以下、ABS/PC1/GF10と略称す
る。)を用い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケ
ースを成形した。表6の実施例11に示すように、各筐
体ケース共バリもなく、図1の設計通りに賦形でき、さ
らに板厚もほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天
板部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1Cの天
板部及び側壁部を目標とする厚さ0.05cmから±5%
以内の誤差に抑えることのできることが分かった。その
ため、0.05cm薄肉成形性、賦形性およびバリは優と
して評価した。一方、筐体の外観は、ガラス繊維が若干
表面に浮かび出たため良として評価した。このように、
ABS/PC1/GF10を用いることにより、今まで
0.1cmが限界であった筐体肉厚を0.05cmという超
薄肉筐体に仕上げることができ、筐体重量を大幅に軽量
化することができた。次に、表10に示す実施例11の
筐体特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表2の実施例11に示した、AB
S/PC1/GF10の曲げ弾性率は、ABS/PC1
と比べて2倍程度向上しているが、強化繊維を充填した
割に小さな値を示しており、筐体形状に仕上げた場合で
も剛性は中程度であり、各筐体ケースの嵌合性もあまり
強固なものとならなかったため、筐体の剛性および嵌合
性は良として評価した。なお、筐体肉厚を0.05cm〜
0.10cmの間となるように設計すれば、十分に剛性お
よび嵌合性を満足するものと考えられる。 〔耐衝撃性〕表2の実施例11に示した、ABS/PC
1/GF10のアイゾット衝撃強度は、ガラス繊維を充
填した効果により、ABS/PC1と比べて大きく低下
しているが、120g筐体を90cm高さから落下させ
た場合でも筐体に一部白化を生じた程度であり、その他
の部分に大きなクラックや破壊を生じなかったため、筐
体の耐衝撃性は良として評価し実用上さほど問題はない
ものと判断した。なお、筐体肉厚を0.05cm〜0.1
0cmの間となるように設計すれば、白化も起こらず十
分に耐衝撃性を満足するものと考えられる。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に引張り強度および破
断伸びを調べた結果、材料自体の特性と比較し、引張り
強度が上昇して破断伸びが減少した。しかしながら、破
断伸びの減少の程度は、実用上さほど問題ない程度であ
ったため、筐体のウエルド安定性は優として評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表2の実施例11に示した、ABS
/PC1/GF10の熱変形温度は124℃とかなり高
く、100℃、3時間の熱処理条件下でも0.1%以下
の変形量を保つことが確かめられたため、筐体の耐熱寸
法安定性は優として評価し実用上問題ないものと判断し
た。以上示したように、曲げ弾性率および熱変形温度を
改善したABS/PC1/GF10を用いることによ
り、剛性、嵌合性および耐衝撃性に若干問題はあるもの
の、軽量で、ウエルド安定性および耐熱寸法安定性に優
れた0.05cm厚の超薄肉筐体の成形が可能となった。
【0031】〈実施例12〉ABS/PC1/GF10
の曲げ弾性率を改善する目的で、実施例11のガラス繊
維充填量を20%に増加させたガラス繊維複合材料(以
下、ABS/PC1/GF20と略称する。)を用い、
図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形し
た。表6の実施例12に示すように、各筐体ケース共バ
リもなく、図1の設計通りに賦形でき、さらに板厚もほ
ぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板部、Lケー
ス1Bの側壁部、スライドケース1Cの天板部および側
壁部を目標とする厚さ0.05cmから±5%以内の誤差
に抑えることができることが分かった。そのため、0.
05cm薄肉成形性、賦形性およびバリは優として評価
した。一方、筐体の外観は実施例11と同様にガラス繊
維が若干表面に浮かび出たため良として評価した。この
ように、ABS/PC1/GF20を用いることによ
り、今まで0.1cmが限界であった筐体肉厚を0.05c
mという超薄肉筐体に仕上げることができ、筐体重量を
大幅に軽量化することができた。次に、表10の実施例
12に示す筐体特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表2の実施例12に示した、AB
S/PC1/GF20の曲げ弾性率が、ABS/PC1
/GF10と比べて40%ほど向上していることからも
予想されるように、筐体形状に仕上げた場合の剛性は大
きく、各筐体ケースの嵌合性もかなり強固なものとなっ
た。そのため、筐体の剛性および嵌合性は優として評価
し、実用上問題ないものと判断した。 〔耐衝撃性〕表2の実施例12に示した、ABS/PC
1/GF20のアイゾット衝撃強度は、ABS/PC1
/GF10と同程度で余り大きくなく、120g筐体を
90cm高さから落下させた場合でも筐体に一部白化が
生じた。しかしながら、その他の部分にクラックや破壊
を生じなかったため、筐体の耐衝撃性は良として評価し
実用上はさほど問題ないものと判断した。なお、筐体肉
厚を0.05cm〜0.10cmの間となるように設計すれば
白化も起こらず、十分に耐衝撃性を満足するものと考え
られる。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを調べた結果、材料自体の
特性と比較し、引張り強度が上昇して破断伸びが減少し
た。しかしながら、破断伸びの減少の程度は、実用上さ
ほど問題ない程度であったため筐体のウエルド安定性は
優として評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表2の実施例12に示した、ABS
/PC1/GF20の熱変形温度は125℃とかなり高
く、100℃、3時間の熱処理条件下でも0.1%以下
の変形量を保つことが確かめられたため、筐体の耐熱寸
法安定性は優として評価し実用上問題ないものと判断し
た。以上示したように、剛性を改善したABS/PC1
/GF20を用いることにより、耐衝撃性に若干問題は
あるものの、軽量で、剛性、ウエルド安定性、嵌合性お
よび耐熱寸法安定性に優れた0.05cm厚の超薄肉筐体
の成形が可能となった。
【0032】〈実施例13〉実施例12と同様、実施例
11の曲げ弾性率を改善する目的で、実施例12のガラ
ス繊維に変えてABS/PC1中に炭素繊維(CF)を
10%充填した炭素繊維複合材料(以下、ABS/PC
1/CF10と略称する。)を用い、図1に示す構造の
3部品からなる筐体ケースを成形した。表6の実施例1
3に示すように、各筐体ケース共バリもなく、図1の設
計通りに賦形でき、さらに板厚もほぼ設計通りに仕上が
り、Uケース1Aの天板部、Lケース1Bの側壁部、ス
ライドケース1Cの天板部および側壁部を目標とする厚
さ0.05cmから±5%以内の誤差に抑えることができ
ることが分かった。そのため、0.05cm薄肉成形性、
賦形性およびバリは優として評価した。一方筐体の外観
は、実施例11と同様、ガラス繊維が若干表面に浮かび
出たため良として評価した。このように、ABS/PC
1/CF10を用いることにより、今まで0.1cmが限
界であった筐体肉厚を0.05cmという超薄肉筐体に仕
上げることができ、筐体重量を大幅に軽量化することが
できた。なお、実施例11〜13における繊維強化複合
材料の溶融粘度は、シリンダ温度を上昇させるほど低下
するが、シリンダ温度を上げ過ぎると焼けを生じ易くな
り、反対に下げ過ぎるとヒケを生じて賦形性が悪くなっ
た。次に、表10に示す実施例13の筐体特性について
項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表2の実施例13に示した、AB
S/PC1/CF10の曲げ弾性率が、実施例12と同
程度に大きいことからも予想されるように、筐体形状に
仕上げた場合の剛性は優れており、各筐体ケースの嵌合
性もかなり強固なものとなった。そのため、筐体の剛性
および嵌合性は優として評価し、実用上問題ないものと
判断した。 〔耐衝撃性〕表2の実施例13に示した、ABS/PC
1/CF10のアイゾット衝撃強度は、実施例11およ
び12と同程度で余り大きくなく、120g筐体を90
cm高さから落下させた場合でも筐体に一部白化が生じ
た。しかし、その他の部分にはクラックや破壊が発生し
なかったため、筐体の耐衝撃性は良として評価し実用上
さほど問題はないものと判断した。なお、筐体肉厚を
0.05cm〜0.10cmの間となるように設計すれば、
白化も生じることなく十分に耐衝撃性を満足するものと
考えられる。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを調べた結果、材料自体の
特性と比較し、引張り強度が上昇して破断伸びが減少し
た。しかし、破断伸びの減少は実用上さほど問題ない程
度であるため、筐体のウエルド安定性は優として評価し
た。 〔耐熱寸法安定性〕表2の実施例13に示した、ABS
/PC1/CF10の熱変形温度は115℃と比較的高
く、100℃、3時間の熱処理条件下でも0.1%以下
の変形量を保つことが確かめられたため、筐体の耐熱寸
法安定性は優として評価し実用上問題ないものと判断し
た。以上示したように、曲げ弾性率を改善したABS/
PC1/CF10を用いることにより、耐衝撃性に若干
問題はあるものの、軽量で、剛性、ウエルド安定性、嵌
合性および耐熱寸法安定性に優れた0.05cm厚の超薄
肉筐体の成形が可能となった。なお、一般成形用の厚肉
グレードのガラス繊維強化ABS/PCアロイ複合材料
(ガラス繊維充填量10%)および炭素繊維強化ABS
/PCアロイ複合材料(炭素繊維充填量8%)を用い
て、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形
したが、樹脂の溶融粘度が大きいため、いずれの筐体ケ
ースにおいても0.05cm薄肉成形性を満足させること
ができず、板厚は0.1cm以上の厚い仕上がりとなり、
大きな変形と外観の悪い筐体が得られた。
【0033】〈実施例14〉実施例14〜16において
は、PPS/ナイロン系超薄肉筐体について説明する。
流動性を改善したPPS樹脂中にガラス繊維を10%充
填した複合材料(以下、PPS/GF10と略称す
る。)を用い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケ
ースを成形した。表6の実施例14に示すように、各筐
体ケース共、バリが少々出たため良として評価したが、
板厚はほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板
部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1Cの天板
部および側壁部を目標とする厚さ0.05cmから±5%
以内の誤差に抑えることができ、さらに賦形性も図1の
設計寸法を満足し、筐体の外観も綺麗に仕上げることが
できることが分かった。そのため、0.05cm薄肉成形
性、賦形性および外観は優として評価した。このよう
に、PPS/GF10を用いることにより、今まで0.
1cmが限界であった筐体肉厚を0.05cmという超薄
肉に仕上げることができ、筐体重量を大幅に軽量化する
ことができた。なお、PPS/GF10の溶融粘度は、
シリンダ温度を上昇させるほど低下するが、シリンダ温
度を上げ過ぎるとバリや焼けが生じ易くなり、反対に下
げ過ぎるとヒケを生じて賦形性が悪くなった。次に、表
10の実施例14に示す筐体特性について項目別に説明
する。 〔剛性および嵌合性〕表2の実施例14に示した、PP
S/GF10の曲げ弾性率が非常に大きいことからも予
想されるように、筐体形状に仕上げた場合はかなり大き
な剛性のものとなり、各筐体ケースの嵌合性も非常に強
固なものとなった。そのため、筐体の剛性および嵌合性
は優として評価し、実用上問題ないものと判断した。 〔耐衝撃性〕表2の実施例14に示した、PPS/GF
10のアイゾット衝撃強度は小さく、120g筐体を9
0cm高さから落下させた場合、筐体にクラックが生じ
たため、筐体の耐衝撃性は可として評価した。しかしな
がら、筐体肉厚を0.05cm〜0.10cmの間となるよ
うに設計すれば、クラックも起こらず、耐衝撃性の評価
も良程度になり得るものと考えられる。 〔ウエルド安定性〕表2の実施例14に示した、PPS
/GF10のウエルド強度が小さいことからも予想され
るように、ボタン操作部に発生したウエルド部の引張り
強度および破断伸びを測定した結果、材料自体の特性と
比較して50%程大きく低下し実用上問題が生じた。そ
のため、筐体のウエルド安定性は可として評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表2の実施例14に示した、PPS
/GF10の熱変形温度が260℃以上と非常に高いこ
とからも予想されるように、100℃、3時間の熱処理
条件下でも0.1%以下の変形量を保つことが確かめら
れたため、筐体の耐熱寸法安定性は優として評価し、実
用上問題ないものと判断した。なお、PPS/GF10
を用いて成形した筐体では、120℃、24時間の熱処
理条件下でも0.1%以下の変形量に留まり、非常に耐
熱寸法安定性の優れた筐体であることが明らかとなっ
た。以上示したように、PPS/GF10を用いた超薄
肉筐体では、耐衝撃性およびウエルド安定性は満足しな
いものの、軽量で、剛性、嵌合性および耐熱寸法安定性
を満足した0.05cm厚の超薄肉筐体の成形が可能とな
った。なお、一般成形用の厚肉グレードのガラス繊維強
化PPS複合材料(ガラス繊維充填量10%)を用いて
図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形した
が、樹脂の溶融粘度が大きいため、いずれの筐体ケース
においても0.05cm薄肉成形性を満足することができ
ず、板厚は0.1cm以上の厚い仕上がりとなり、大きな
変形と外観の悪い筐体が得られた。
【0034】〈実施例15〉実施例14におけるPPS
/GF10の衝撃強度とウエルド強度を改善する目的
で、PPS樹脂中にポリアミド樹脂を所定の割合でアロ
イ化した高じん性タイプのPPS/ナイロンアロイ樹脂
中にガラス繊維を40%充填した複合材料(以下、PP
S/ナイロン1/GF40と略称する。)を用い、図1
に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形した。な
お、本実施例においては、PPS樹脂とのアロイ化材料
であるポリアミド樹脂として、ポリアミドメタキシレン
ジアミン−6(PAMXD−6)樹脂を用いた。表6の
実施例15に示すように、各筐体ケース共、バリもな
く、外観も綺麗で、図1の設計通りに賦形でき、さらに
板厚もほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板
部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1Cの天板
部および側壁部を目標とする0.05cm厚さから±5%
以内の誤差に抑えることのできることが分かった。その
ため、0.05cm薄肉成形性、賦形性、バリおよび外観
は優として評価した。このように、PPS/ナイロン1
/GF40を用いることにより、今まで0.1cmが限界
であった筐体肉厚を0.05cmという超薄肉に仕上げる
ことができ、筐体重量を大幅に軽量化することができ
た。次に、表10に示す実施例15の筐体特性について
項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表2の実施例15に示した、PP
S/ナイロン1/GF40の曲げ弾性率がかなり大きい
ことからも予想されるように、筐体形状に仕上げた場
合、筐体の剛性も優れたものとなり、各筐体ケースの嵌
合性も非常に強固なものとなった。そのため、筐体の剛
性および嵌合性は優として評価し、実用上問題ないもの
と判断した。 〔耐衝撃性〕表2の実施例15に示した、PPS/ナイ
ロン1/GF40のアイゾット衝撃強度は、PPS/G
F10と比べてそれほど改善されておらず、120g筐
体を90cm高さから落下させた場合に、筐体の一部に
白化が生じたため、筐体の耐衝撃性は良として評価し
た。しかしながら、その他の部分に目だったクラックや
破壊が生じなかったため、実用上はさほど問題ないもの
と判断した。なお、筐体肉厚を0.05cm〜0.10cm
の間となるように設計すれば、白化も起こらず、十分に
耐衝撃性を満足するものと考えられる。 〔ウエルド安定性〕表2の実施例15に示した、PPS
/ナイロン1/GF40のウエルド強度が、PPS/G
F10よりも2倍程度大きな値を示していることからも
予想されるように、ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表2の実施例15に示した、PPS
/ナイロン1/GF40の熱変形温度が260℃以上と
非常に高いことからも予想されるように、100℃、3
時間の熱処理条件下でも0.1%以下の変形量を保つこ
とが確かめられたため、筐体の耐熱寸法安定性は優とし
て評価し、実用上問題ないものと判断した。なお、PP
S/ナイロン1/GF40を用いて成形した筐体では、
実施例14と同様、120℃、24時間の熱処理条件下
でも0.1%以下の変形量に留まり、非常に耐熱寸法安
定性の優れた筐体であることが明らかとなった。以上示
したように、高じん性のPPS/ナイロン1/GF40
を用いた超薄肉筐体では、耐衝撃性に若干問題はあるも
のの、軽量で、剛性、嵌合性、ウエルド安定性および耐
熱寸法安定性を満足する0.05cm厚の超薄肉筐体の成
形が可能である。
【0035】〈実施例16〉実施例15と同様、実施例
14におけるPPS/GF10の衝撃強度とウエルド強
度を改善する目的で、PPS樹脂とPAMXD−6樹脂
とのアロイ化比率を調整した高じん性タイプのPPS樹
脂中に、ガラス繊維を40%充填した複合材料(以下、
PPS/ナイロン2/GF40と略称する。)を用い、
図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形し
た。表6の実施例16に示すように、各筐体ケース共、
バリもなく、外観も綺麗で、図1の設計通りに賦形で
き、さらに板厚もほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1
Aの天板部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1
Cの天板部および側壁部を目標とする厚さ0.05cmか
ら±5%以内の誤差に抑えることができることが分かっ
た。そのため、0.05cm薄肉成形性、賦形性、バリお
よび外観は優として評価した。このように、PPS/ナ
イロン2/GF40を用いることにより、今まで0.1c
mが限界であった筐体肉厚を0.05cmという超薄肉に
仕上げることができ、筐体重量を大幅に軽量化すること
ができた。なお、実施例15および16におけるPPS
/ナイロン系複合材料の溶融粘度は、シリンダ温度を上
昇させるほど低下するが、シリンダ温度を上げ過ぎると
焼けが生じ易くなり、反対に下げ過ぎるとヒケを生じて
賦形性が悪くなった。次に、表10に示す実施例16の
筐体特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表2の実施例16に示した、PP
S/ナイロン2/GF40の曲げ弾性率がかなり大きい
ことからも予想されるように、筐体形状に仕上げた場
合、筐体の剛性は優れたものとなり、各筐体ケースの嵌
合性も非常に強固なものとなった。そのため、筐体の剛
性および嵌合性は優として評価し、実用上問題ないもの
と判断した。 〔耐衝撃性〕表2の実施例16に示した、PPS/ナイ
ロン2/GF40のアイゾット衝撃強度はかなり改善さ
れており、120g筐体を90cm高さから落下させた
場合でも、筐体に白化やクラックが生じなかったため、
筐体の耐衝撃性は優として評価し、実用上問題のないも
のと判断した。 〔ウエルド安定性〕表2の実施例16に示した、PPS
/ナイロン2/GF40のウエルド強度は、実施例14
のPPS/GF10と実施例15のPPS/ナイロン1
/GF40の中間の値となっているが、ボタン操作部に
発生したウエルド部の引張り強度および破断伸びを測定
した結果、材料自体の特性と比較して20%程の低下と
なり、実用上、若干ウエルド信頼性に問題を生じたた
め、筐体のウエルド安定性は良として評価した。なお、
筐体肉厚を0.05cm〜0.10cmの間となるように設
計すれば、ウエルド部の引張り強度および破断伸びも低
下せず、十分にウエルド安定性を満足するものと考えら
れる。 〔耐熱寸法安定性〕表2の実施例16に示した、PPS
/ナイロン2/GF40の熱変形温度が260℃以上と
非常に高いことからも予想されるように、100℃、3
時間の熱処理条件下でも0.1%以下の変形量を保つこ
とが確かめられたため、筐体の耐熱寸法安定性は優とし
て評価し、実用上問題ないものと判断した。なお、PP
S/ナイロン2/GF40を用いて成形した筐体では、
実施例15と同様、120℃、24時間の熱処理条件下
でも0.1%以下の変形量に留まり、非常に耐熱寸法安
定性の優れた筐体であることが明らかとなった。以上示
したように、実施例15より高じん性タイプであるPP
S/ナイロン2/GF40を用いた超薄肉筐体では、ウ
エルド安定性に若干問題はあるものの、軽量で、剛性、
嵌合性、耐衝撃性および耐熱寸法安定性を満足した0.
05cm厚の超薄肉筐体の成形が可能となった。また、
実施例15および16とは異なり、PPS/ナイロンア
ロイ樹脂中に炭素繊維を5〜20%の範囲で充填した炭
素繊維複合材料を用い、図1に示す構造の3部品からな
る筐体ケースを成形した。この場合も上記と同様に、軽
量で、剛性、嵌合性、ウエルド安定性、耐熱寸法安定性
を満足した0.05cm厚の超薄肉筐体の成形が可能とな
ったが、この複合材料は耐衝撃強度が低いため、耐衝撃
性に問題が生じた。ここで、実施例15および16にお
いては、PPS樹脂とのアロイ化材料であるポリアミド
樹脂としてPAMXD−6樹脂を使用したが、PAMX
D−6樹脂と同じポリアミド樹脂であるポリアミド6、
ポリアミド6−6、ポリアミド4−6、ポリアミド12
等であっても良く、また他の樹脂系のポリフェニレンエ
ーテル樹脂であっても良く、PPS樹脂のじん性を高め
るものであれば、特に限定するものではない。なお、一
般成形用厚肉グレードのガラス繊維強化PPS/PAM
XD−6アロイ複合材料(ガラス繊維充填量30%)を
用いて、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを
成形したが、樹脂の溶融粘度が大きいため、いずれの筐
体ケースにおいても0.05cm薄肉成形性を満足させる
ことができず、板厚は0.1cm以上のかなり厚い仕上が
りとなり、大きな変形と外観の悪い筐体が得られた。
【0036】〈実施例17〉実施例17〜22において
は、ABS/PBT系超薄肉筐体について説明する。
ABS樹脂とPBT樹脂の比率を調整することにより、
薄肉成形用として流動性を改善したABS/PBTアロ
イ樹脂(以下、ABS/PBT1と略称する。)を用
い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形
した。表7の実施例17に示すように、各筐体ケース
共、バリは生じなかったが、板厚が多少厚い0.06c
mほどになり、全体的に幾らか変形が生じたため、0.
05cm薄肉成形性および賦形性は良として評価した。
また、筐体の外観は綺麗なものが得られたため、優とし
て評価した。このように、ABS/PBT1を用いるこ
とにより、今まで0.1cmが限界であった筐体肉厚を
0.06cm程度の薄肉筐体に仕上げることができ、筐
体重量を大幅に軽量化することができた。次に、表11
に示す実施例17の筐体特性について項目別に説明す
る。 〔剛性および嵌合性〕表3の実施例17に示した、AB
S/PBT1の曲げ弾性率が小さいことからも予想され
るように、筐体形状に仕上げた場合の剛性は劣ってお
り、また、各筐体ケースの嵌合性もそれほど強固なもの
とならなかったため、筐体の剛性および嵌合性は可とし
て評価した。 〔耐衝撃性〕表3の実施例17に示した、ABS/PB
T1のアイゾット衝撃強度はかなり大きな値であり、1
20g筐体を90cm高さから落下させた場合でも筐体
に白化やクラックが生じなかったため、筐体の耐衝撃性
は優として評価し、実用上問題ないものと判断した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを調べた結果、材料自体の
特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題のな
い程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として評
価した。 〔耐熱寸法安定性〕表3の実施例17に示した、ABS
/PBT1の熱変形温度が90℃と低いことからも予想
されるように、100℃、3時間の熱処理条件下で1%
以上変形したため、筐体の耐熱寸法安定性は可として評
価した。以上示したように、ABS/PBT1を用いる
ことにより、0.05cm薄肉成形性、剛性、嵌合性お
よび耐熱寸法安定性に問題はあるものの、軽量で、耐衝
撃性およびウエルド安定性に優れた薄肉筐体が成形可能
となった。
【0037】〈実施例18〉ABS/PBT1の流動性
をさらに改善するため、PBT樹脂の分子量およびAB
S樹脂とPBT樹脂の比率を調整した高流動グレードの
ABS/PBTアロイ樹脂(以下、ABS/PBT2と
略称する。)を用い、図1に示す構造の3部品からなる
筐体ケースを成形した。表7の実施例18に示すよう
に、各筐体ケース共、バリが少々出たため良として評価
したが、板厚はほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1A
の天板部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1C
の天板部および側壁部を目標とする厚さ0.05cmか
ら±5%以内の誤差に抑えられることができ、さらに、
賦形性も図1の設計寸法を満足し、筐体の外観も綺麗に
仕上げることができることが分かった。そのため、0.
05cm薄肉成形性、賦形性および外観は優として評価
した。
【0038】このように、ABS/PBT2を用いるこ
とにより、今まで0.1cmが限界であった筐体肉厚を
0.05cmという超薄肉筐体に仕上げることができ、
筐体重量を大幅に軽量化することができた。なお、実施
例17および18におけるABS/PBTアロイ樹脂の
溶融粘度は、シリンダ温度を上昇させるほど低下する
が、シリンダ温度を上げ過ぎるとバリや焼けが生じ易く
なり、反対に下げ過ぎるとヒケを生じて賦形性が悪くな
った。次に、表11の実施例18に示す筐体特性は、表
3の実施例18の材料特性から予想されるとおり、実施
例17とほぼ同様の結果となり、剛性および嵌合性は
可、耐衝撃性およびウエルド安定性は優、耐熱寸法安定
性は可として評価した。なお、実施例17および18に
おいて、薄肉筐体の熱処理温度を90℃とした場合に
は、0.1%以下の変形量に留まり、優れた耐熱寸法安
定性を示した。以上示したように、流動性を改善したA
BS/PBT2を用いることにより、剛性、嵌合性およ
び耐熱寸法安定性に問題はあるものの、軽量で、耐衝撃
性およびウエルド安定性に優れた0.05cm厚の超薄
肉筐体が成形可能となった。このように、実施例17お
よび18におけるようなABS/PBTアロイ樹脂を用
いた0.05cm肉厚の薄肉筐体においては、剛性、嵌
合性および耐熱寸法安定性を満足することはできなかっ
たが、筐体肉厚を0.05cm〜0.10cmの間とな
るように設計すれば、これらの特性を満足することがで
きるものと考えられる。なお、一般成形用の厚肉グレー
ドのABS/PBTアロイ樹脂を用い、図1に示す構造
の3部品からなる筐体ケースを成形したが、樹脂の溶融
粘度が大きいため、いずれの筐体ケースにおいても0.
05cm薄肉成形性を満足させることができず、板厚は
0.1cm以上の厚い仕上がりとなり、大きな変形と外
観の悪い筐体が得られた。
【0039】〈実施例19〉実施例18におけるABS
/PBT2の曲げ弾性率および熱変形温度を改善する目
的で、ABS/PBT2中に、ガラス繊維(GF)を3
0%充填したガラス繊維複合材料(ABS/PBT2/
GF30と略称する。)を用い、図1に示す構造の3部
品からなる筐体ケースを成形した。表7の実施例19に
示すように、各筐体ケース共、バリが少々多く、外観
は、ガラス繊維が若干表面に浮かび出たため、バリおよ
び外観は良として評価したが、板厚はほぼ設計通りに仕
上がり、Uケース1Aの天板部、Lケース1Bの側壁
部、スライドケース1Cの天板部および側壁部を目標と
する厚さ0.05cmから±5%以内の誤差に抑えるこ
とができ、さらに、図1の設計寸法を満足することがで
きたことが分かる。そのため、0.05cm薄肉成形性
および賦形性は優として評価した。このように、ABS
/PBT2/GF30を用いることにより、今まで0.
1cmが限界であった筐体肉厚を0.05cmという超
薄肉筐体に仕上げることができ、筐体重量を大幅に軽量
化することができた。次に、表11に示す実施例18の
筐体特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表3の実施例18に示すように、
ABS/PBT2/GF30の曲げ弾性率が、ABS/
PBT2よりも3倍以上大きいことからも予想されるよ
うに、筐体形状に仕上げた場合の剛性は大きく、各筐体
ケースの嵌合性もかなり強固なものとなった。そのた
め、筐体の剛性および嵌合性は優として評価し、実用上
問題ないものと判断した。 〔耐衝撃性〕表3の実施例18に示すように、ABS/
PBT2/GF30のアイゾット衝撃強度は、ABS/
PBT2と比べてかなり低下しているが、120g筐体
を90cm高さから落下させた場合でも筐体に白化やク
ラックは発生せず、そのため、筐体の耐衝撃性は優とし
て評価し、実用上問題ないものと判断した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを調べた結果、材料自体の
特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題ない
程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として評価
した。 〔耐熱寸法安定性〕表3の実施例18に示した、ABS
/PBT2/GF30の熱変形温度は105℃と、AB
S/PBT2と比べて10℃以上増加しており、100
℃、3時間の熱処理条件下でも0.1%以下の変形量を
保つことが確かめられたため、筐体の耐熱寸法安定性は
優として評価し、実用上問題ないものと判断した。以上
示したように、曲げ弾性率および熱変形温度を改善した
ABS/PBT2/GF30を用いることにより、軽量
で、剛性、嵌合性、耐衝撃性、ウエルド安定性および耐
熱寸法安定性に優れた0.05cm厚の超薄肉筐体が成
形可能となった。
【0040】〈実施例20〉実施例19と同様、実施例
18におけるABS/PBT2の曲げ弾性率および熱変
形温度を改善する目的で、実施例19のガラス繊維に変
えて、ABS/PBT2中に炭素繊維(CF)を10%
充填した炭素繊維複合材料(以下、ABS/PBT2/
CF10と略称する。)を用い、図1に示す構造の3部
品からなる筐体ケースを成形した。表7の実施例20に
示すように、各筐体ケース共、バリが少々多く、外観
は、炭素繊維が若干表面に浮かび出たため、バリおよび
外観は良として評価したが、板厚はほぼ設計通りに仕上
がり、Uケース1Aの天板部、Lケース1Bの側壁部、
スライドケース1Cの天板部および側壁部を目標とする
厚さ0.05cmから±5%以内の誤差におさえること
ができ、さらに、図1の設計寸法を満足することが分か
った。そのため、0.05cm薄肉成形性および賦形性
は優として評価した。このように、ABS/PBT2/
CF10を用いることにより、今まで0.1cmが限界
であった筐体肉厚を0.05cmという超薄肉筐体に仕
上げることができ、筐体重量を大幅に軽量化することが
できた。次に、表11に示す実施例20の筐体特性につ
いて項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表3の実施例20に示した、AB
S/PBT2/CF10の曲げ弾性率が、ABS/PB
T2の2倍以上改善されていることからも予想されるよ
うに、筐体形状に仕上げた場合の剛性は大きく、各筐体
ケースの嵌合性もかなり強固なものとなった。そのた
め、筐体の剛性および嵌合性は優として評価し、実用上
問題ないものと判断した。 〔耐衝撃性〕表3の実施例20に示したABS/PBT
2/CF10のアイゾット衝撃強度は、炭素繊維を充填
した効果でかなり低下しており、120g筐体を90c
m高さから落下させた場合、筐体に一部白化を生じたた
め、筐体の耐衝撃性は良として評価した。しかし、他の
箇所に目立ったクラックや破壊が生じなかったため、実
用上はさほど問題ないものと判断した。なお、筐体肉厚
を0.05cm〜0.10cmの間となるように設計す
れば、白化も生じることなく、十分に耐衝撃性を満足す
るものと考えられる。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較し、引張り強度が上昇して破断伸びが減少
したが、破断伸びの減少の程度は、実用上さほど問題な
い程度のため、筐体のウエルド安定性は優として評価し
た。 〔耐熱寸法安定性〕表3の実施例20に示した、ABS
/PBT2/CF10の熱変形温度は、104℃と、A
BS/PBT2と比べて10℃以上改善されており、1
00℃、3時間の熱処理条件下でも0.1%以下の変形
量を保つことが確かめられたため、筐体の耐熱寸法安定
性は優として評価し、実用上問題ないものと判断した。
以上示したように、曲げ弾性率および熱変形温度を改善
したABS/PBT2/CF10を用いることにより、
耐衝撃性に若干問題はあるものの、軽量で、剛性、嵌合
性、ウエルド安定性および耐熱寸法安定性に優れた0.
05cm厚の超薄肉筐体が成形可能となった。
【0041】〈実施例21〉実施例20におけるABS
/PBT2/CF10の流動性をさらに改善する目的
で、PBTの分子量およびABSとPBT各樹脂成分の
比率を調節した高流動グレードのABS/PBTアロイ
樹脂中に炭素繊維(CF)を10%充填した炭素繊維複
合材料(以下、ABS/PBT3/CF10と略称す
る。)を用い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケ
ースを成形した。表7の実施例20に示すように、各筐
体ケース共、バリが少々多く、外観は、炭素繊維が若干
表面に浮かび出たため、バリおよび外観は良として評価
したが、板厚はほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1A
の天板部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1C
の天板部および側壁部を目標とする厚さ0.05cmか
ら±5%以内の誤差に抑えることができ、さらに、図1
の設計寸法を満足していることが分かった。そのため、
0.05cm薄肉成形性および賦形性は優として評価し
た。このように、ABS/PBT3/CF10を用いる
ことにより、今まで0.1cmが限界であった筐体肉厚
を0.05cmという超薄肉筐体に仕上げることがで
き、筐体重量を大幅に軽量化することができた。次に、
表11に示す実施例20の筐体特性について項目別に説
明する。 〔剛性および嵌合性〕表3の実施例20に示した、AB
S/PBT3/CF10の曲げ弾性率は、ABS/PB
T2/CF10と比べて低目であることからも予想され
るように、筐体形状に仕上げた場合の剛性や各筐体ケー
スの嵌合性は中程度であった。そのため、筐体の剛性お
よび嵌合性は良として評価したが、この場合、筐体肉厚
を0.05cm〜0.10cmの間となるように設計す
れば、十分に剛性および嵌合性を満足するものと考えら
れる。 〔耐衝撃性〕表3の実施例20に示した、ABS/PB
T3/CF10のアイゾット衝撃強度が、ABS/PB
T2/CF10よりも2倍以上大きな値に改善されてい
ることからも予想されるように、120g筐体を90c
m高さから落下させた場合でも、筐体に白化やクラック
は発生せず、そのため、筐体の耐衝撃性は優として評価
し、実用上問題ないものと判断した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを調べた結果、材料自体の
特性と比較し、引張り強度が上昇して破断伸びが減少し
たが、破断伸びの減少の程度は実用上さほど問題ない程
度のため、筐体のウエルド安定性は優として評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表3の実施例20に示した、ABS
/PBT3/CF10の熱変形温度は146℃と、AB
S/PBT2/GF40およびABS/PBT2/CF
10と比べてかなり上昇しており、100℃、3時間の
熱処理条件下でも0.1%以下の変形量を保つことが確
かめられたため、筐体の耐熱寸法安定性は優として評価
し、実用上問題ないものと判断した。なお、この場合、
120℃、3時間の熱処理条件下でも0.1%以下の変
形量に留まり、非常に耐熱寸法安定性の優れた筐体であ
ることが明らかとなった。以上示したように、流動性、
剛性および熱変形温度を改善したABS/PBT3/C
F10を用いることにより、剛性および嵌合性に若干問
題はあるものの、軽量で、耐衝撃性、ウエルド安定性お
よび耐熱寸法安定性に優れた0.05cm厚の超薄肉筐
体が成形可能となった。
【0042】〈実施例22〉実施例20におけるABS
/PBT2/CF10の曲げ弾性率をさらに向上させる
目的で、ABS/PBT2中に充填する炭素繊維(C
F)の量を15%に増加させた炭素繊維複合材料(以
下、ABS/PBT2/CF15と略称する。)を用
い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形
した。表7の実施例22に示すように、各筐体ケース
共、バリが少々多く、外観は、炭素繊維が若干表面に浮
かび出たため、バリおよび外観は良として評価したが、
板厚はほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板
部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1Cの天板
部および側壁部を目標とする厚さ0.05cmから±5
%以内の誤差におさえることができ、さらに、図1の設
計寸法を満足していることが分かった。そのため、0.
05cm薄肉成形性および賦形性は優として評価した。
このように、ABS/PBT2/CF15を用いること
により、今まで0.1cmが限界であった筐体肉厚を
0.05cmという超薄肉筐体に仕上げることができ、
筐体重量を大幅に軽量化することができた。なお、実施
例19〜22におけるABS/PBT系繊維強化複合材
料の溶融粘度は、シリンダ温度を上昇させるほど低下す
るが、シリンダ温度を上げ過ぎるとバリや焼けが生じ易
くなり、反対に下げ過ぎるとヒケを生じて賦形性が悪く
なった。次に、表11の実施例22に示す筐体特性につ
いて項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表3の実施例22に示した、AB
S/PBT2/CF15の曲げ弾性率が、ABS/PB
T2/CF10よりも60%ほど増加していることから
も予想されるように、筐体形状に仕上げた場合の剛性は
大きく、各筐体ケースの嵌合性もかなり強度なものとな
った。そのため、筐体の剛性および嵌合性は優として評
価し、実用上問題ないものと判断した。 〔耐衝撃性〕表3の実施例22に示した、ABS/PB
T2/CF15のアイゾット衝撃強度は、ABS/PB
T2/CF10とほぼ同程度であり、120g筐体を9
0cm高さから落下させた場合、筐体の一部に白化を生
じたため、筐体の耐衝撃性は良として評価した。しかし
ながら、他の部分に目立った白化やクラックは発生しな
かったため、実用上はさほど問題ないものと判断した。
なお、筐体の肉厚を0.05cm〜0.10cmの間と
なるように設計すれば、白化も生じることなく、十分に
耐衝撃性を満足するものと考えられる。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを調べた結果、材料自体の
特性と比較し、引張り強度が上昇して破断伸びが減少し
たが、破断伸びの減少の程度は、実用上さほど問題ない
程度のため、筐体のウエルド安定性は優として評価し
た。 〔耐熱寸法安定性〕表3の実施例22に示した、ABS
/PBT2/CF15の熱変形温度は105℃であり、
この値はABS/PBT2/CF10と同程度であるこ
とからも予想されるように、100℃、3時間の熱処理
条件下でも0.1%以下の変形量を保つことが確かめら
れたため、筐体の耐熱寸法安定性は優として評価し、実
用上問題ないものと判断した。以上示したように、曲げ
弾性率を改善したABS/PBT2/CF15を用いる
ことにより、耐衝撃性に若干問題はあるものの、軽量
で、剛性、嵌合性、ウエルド安定性および耐熱寸法安定
性に優れた0.05cm厚の超薄肉筐体が成形可能とな
った。なお、一般成形用厚肉グレードのガラス繊維強化
ABS/PBTアロイ複合材料(ガラス繊維充填量15
%)および炭素繊維強化ABS/PBTアロイ複合材料
(炭素繊維充填量10%)を用い、図1に示す構造の3
部品からなる筐体ケースを成形したが、樹脂の溶融粘度
が大きいため、いずれの筐体ケースにおいても0.05
cm薄肉成形性を満足することができず、板厚は0.1
cm以上のかなり厚い仕上がりとなり、大きな変形と外
観の悪い筐体が得られた。
【0043】〈実施例23〉本実施例では、LCP系超
薄肉筐体について説明する。流動性を改善したLCP樹
脂中にガラス繊維(GF)を30%充填した複合材料
(以下、LCP/GF30と略称する。)を用い、図1
に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形した。表
7の実施例23に示すように、各筐体ケースの射出成形
性は以下のようになった。各筐体共、板厚はほぼ設計通
りに仕上がり、Uケース1Aの天板部、Lケース1Bの
側壁部、スライドケース1Cの天板部および側壁部を目
標とする厚さ0.05cmから±5%以内の誤差に抑え
ることができ、さらに、図1の設計寸法通りに賦形でき
たため、0.05cm薄肉成形性および賦形性は優とし
て評価した。バリは、Uケースにおいて少々多かったた
め良として評価したが、Lケースおよびスライドケース
においては生じなかったので優として評価した。また、
外観は、Uケースにおいてガラス繊維が若干表面に浮か
び出たため良として評価したが、スライドケースにおい
ては、かなりの繊維の流動模様が現われたため可として
評価した。このように、LCP/GF30を用いること
により、今まで0.1cmが限界であった筐体肉厚を
0.05cmという超薄肉筐体に仕上げることができ、
筐体重量を大幅に軽量化することができた。なお、LC
P/GF30の溶融粘度は、シリンダ温度を上昇させる
ほど低下するが、シリンダ温度を上げ過ぎるとバリや焼
けが生じ易くなり、反対に下げ過ぎるとヒケを生じて賦
形性が悪くなる。次に、表11の実施例23に示す筐体
特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表3の実施例23に示した、LC
P/GF30の曲げ弾性率がかなり大きいことからも予
想されるように、筐体形状に仕上げた場合の剛性は優れ
ており、また、各筐体ケースの嵌合性も強固なものとな
ったため、筐体の剛性および嵌合性は優として評価し
た。 〔耐衝撃性〕表3の実施例23に示した、LCP/GF
30のアイゾット衝撃強度はかなり大きな値となってい
るが、120g筐体を90cm高さからら落下させた場
合、筐体にクラックが生じたため、筐体の耐衝撃性は可
として評価した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを調べた結果、材料自体の
特性と比べて50%ほど大きく低下したため、筐体のウ
エルド安定性は可として評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表3の実施例23に示したLCP/
GF30の熱変形温度が250℃と高いことからも予想
されるように、100℃、3時間の熱処理条件下でも
0.1%以下の変形量であったため、筐体の耐熱寸法安
定性は優として評価した。なお、この場合、120℃、
24時間の熱処理条件下でも0.1%以下の変形量であ
り、非常に耐熱変形特性の優れた筐体であることが明ら
かとなった。以上示したように、LCP/GF30を用
いることにより、耐衝撃性およびウエルド安定性に問題
はあるものの、軽量で、剛性、嵌合性、ウエルド安定性
および耐熱変形特性に優れた0.05cm厚の超薄肉筐
体が成形可能となった。本実施例におけるような繊維強
化LCP複合材料を用いた0.05cm肉厚の薄肉筐体
においては、耐衝撃性およびウエルド安定性を満足する
ことはできなかったが、筐体肉厚を0.05cm〜0.
10cmの間となるように設計すれば、これらの特性を
満足することができるものと考えられる。なお、一般成
形用の厚肉グレードのガラス繊維強化LCP樹脂(ガラ
ス繊維充填量15%)および炭素繊維強化LCP樹脂
(炭素繊維充填量10%)を用い、図1に示す構造の3
部品からなる筐体ケースを成形したが、樹脂の溶融粘度
が大きいため、いずれの筐体ケースにおいても0.05
cm薄肉成形性を満足することができず、板厚は0.1
cm以上とかなり厚い仕上がりとなり、大きな変形と外
観の悪い筐体が得られた。
【0044】〈実施例24〉実施例24および25にお
いては、ナイロン(PAMXD−6)/PPE系超薄肉
筐体について説明する。PAMXD−6樹脂にPPE樹
脂を65:35の割合でアロイ化することにより、薄肉
成形性用に流動性を改善したアロイ樹脂に、さらに、ガ
ラス繊維を15%充填した複合材料(以下、ナイロン/
PPE1/GF15と略称する。)を用い、図1に示す
構造の3部品からなる筐体ケースを成形した。表8の実
施例24に示すように、スライドケースにおいてバリが
多少出たため良として評価したが、その他の筐体におい
てはバリは発生せず、優として評価した。また、各筐体
ケース共、図1の設計通りに賦形でき、さらに板厚もほ
ぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板部、Lケー
ス1Bの側壁部、スライドケース1Cの天板部および側
壁部を目標とする厚さ0.05cmから±5%以内の誤
差に抑えることができたため、0.05cm薄肉成形性
および賦形性は優として評価した。さらに、筐体の外観
は、Uケースおよびスライドケースにおいて、繊維の配
向流れが若干表面に浮かび出たため良として評価した。
このように、ナイロン/PPE1/GF15を用いるこ
とにより、今まで0.1cmが限界であった筐体肉厚を
0.05cmという超薄肉に仕上げることができ、筐体
重量を大幅に軽量化することができた。次に、表12に
示す実施例24の筐体特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表4の実施例24に示した、ナイ
ロン/PPE1/GF15の曲げ弾性率が大きいことか
らも予想されるように、筐体形状に仕上げた場合の剛性
は優れており、各筐体ケースの嵌合性も安定した強固な
ものとなった。そのため、筐体の剛性および嵌合性は優
として評価し、実用上問題ないものと判断した。 〔耐衝撃性〕表4の実施例24に示した、ナイロン/P
PE1/GF15のアイゾット衝撃強度はそれほど大き
くないが、120g筐体を90cm高さから落下させた
場合でも、筐体に白化やクラックが生じなかったため、
筐体の耐衝撃性は優として評価した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強さおよび破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表4の実施例24に示した、ナイロ
ン/PPE1/GF15の熱変形温度が208℃と高い
ことからも予想されるように、100℃、3時間の熱処
理条件下でも0.1%以下の変形量を保つことが確かめ
られたため、筐体の耐熱性は優として評価し、実用上問
題ないものと判断した。なお、この場合、120℃、2
4時間の熱処理条件下でも0.1%以下の変形量に留ま
り、耐熱変形特性の非常に優れた筐体であることが明ら
かとなった。以上示したように、流動性を改善したナイ
ロン/PPE1/GF15を用いることにより、軽量
で、剛性、嵌合性、耐衝撃性、ウエルド安定性および耐
熱変形特性を満足する0.05cm厚の超薄肉筐体の成
形が可能となった。
【0045】〈実施例25〉実施例24におけるガラス
繊維に代えて、炭素繊維を8%充填した複合材料(以
下、ナイロン/PPE1/CF8と略称する。)を用
い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形
した。表8の実施例25に示すように、スライドケース
においてバリが多少出たため良として評価したが、その
他の筐体においてはバリは発生せず、優として評価し
た。また、各筐体ケース共、図1の設計通りに賦形で
き、さらに板厚もほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1
Aの天板部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1
Cの天板部および側壁部を目標とする厚さ0.05cm
から±5%以内の誤差におさえることができたため、
0.05cm薄肉成形性および賦形性は優として評価し
た。さらに、筐体の外観は、Uケースおよびスライドケ
ースにおいて、繊維の配向流れが若干表面に浮かび出た
ため良として評価した。このように、ナイロン/PPE
1/CF8を用いることにより、今まで0.1cmが限
界であった筐体肉厚を0.05cmという超薄肉に仕上
げることができ、筐体重量を大幅に軽量化することがで
きた。なお、実施例24および25におけるナイロン/
PPEアロイ樹脂の溶融粘度は、シリンダ温度を上昇さ
せるほど低下するが、シリンダ温度を上げ過ぎるとバリ
や焼けが生じ易くなり、反対に下げ過ぎるとヒケを生じ
て賦形性が悪くなる。次に、表12に示す実施例25の
筐体特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表4の実施例25に示した、ナイ
ロン/PPE1/CF8の曲げ弾性率が、ナイロン/P
PE1/GF15と同程度の大きな値であることからも
予想されるように、筐体形状に仕上げた場合、剛性は優
れたものとなり、各筐体ケースの嵌合性も安定した強固
なものとなった。そのため、筐体の剛性および嵌合性は
優として評価した。 〔耐衝撃性〕表4の実施例25に示した、ナイロン/P
PE1/CF8のアイゾット衝撃強度も、ナイロン/P
PE1/GF15と同程度で低目の値であるが、120
g筐体を90cm高さから落下させた場合、筐体に一部
白化が生じたため、筐体の耐衝撃性は良として評価し
た。なお、筐体肉厚を0.05cm〜0.10cmの間
となるように設計すれば、白化も生じることなく、十分
に耐衝撃性を満足するものと考えられる。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生したウエルド部
の引張り強度および破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表4の実施例25に示した、ナイロ
ン/PPE1/CF8の熱変形温度が210℃と高いこ
とからも予想されるように、100℃、3時間の熱処理
条件下でも0.1%以下の変形量を保つことが確かめら
れたため、筐体の耐熱寸法安定性は優として評価し、実
用上問題ないものと判断した。なお、この場合、120
℃、24時間の熱処理条件下でも0.1%以下の変形量
に留まり、耐熱変形特性の非常に優れた筐体であること
が明らかとなった。以上示したように、ナイロン/PP
E1/CF8を用いることにより、耐衝撃性に若干問題
はあるものの、軽量で、剛性、嵌合性、ウエルド安定性
および耐熱変形特性に優れた0.05cm厚の超薄肉筐
体の成形が可能となった。なお、PAMXD−6樹脂と
PPE樹脂の比率を60:40としてアロイ化し、さら
にガラス繊維を15%充填した複合材料および炭素繊維
を8%充填した複合材料を用い、図1に示す構造の3部
品からなる筐体ケースを成形した。その結果、両複合材
料共に賦形性は満足したが、板厚はいずれの筐体ケース
も0.05cm仕上がりを満足せず、さらにバリが大き
く発生し、反り変形や歪みが大きく発生したため不満足
なものとなった。この原因としては、PAMXD−6樹
脂へのPPE樹脂のアロイ化の比率が多すぎ、さらに強
化繊維を充填したことによる樹脂の流動性不足が考えら
れる。しかしながら、筐体肉厚を0.05cm〜0.1
0cmの間となるように設計すれば、十分に薄肉成形性
を満足するものと考えられる。
【0046】〈実施例26〉実施例26〜28において
は、PPE/HIPS系超薄肉筐体について説明する。
PPE樹脂とHIPS樹脂の比率を調節してアロイ化す
ることにより、薄肉成形用に流動性を改善したPPE/
HIPSアロイ樹脂(以下、PPE/HIPS1と略称
する。)を用い、図1に示す構造の3部品からなる筐体
ケースを成形した。表8の実施例26に示すように、各
筐体ケース共、バリが少々出たため良として評価した
が、板厚はほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1Aの天
板部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1Cの天
板部および側壁部を目標とする厚さ0.05cmから±
5%以内の誤差におさえることができ、さらに、賦形性
も図1の設計寸法を満足し、筐体の外観も綺麗に仕上げ
ることができることが分かった。そのため、0.05c
m薄肉成形性、賦形性および外観は優として評価した。
このように、PPE/HIPS1を用いることにより、
今まで0.1cmが限界であった筐体肉厚を0.05c
mという超薄肉に仕上げることができ、筐体重量を大幅
に軽量化することができた。なお、PPE/HIPS1
の溶融粘度は、シリンダ温度を上昇させるほど低下する
が、シリンダ温度を上げ過ぎるとバリや焼けが生じ易く
なり、反対に下げ過ぎるとヒケを生じて賦形性が悪くな
った。次に、表12の実施例26に示した筐体特性につ
いて項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表4の実施例26に示した、PP
E/HIPS1の曲げ弾性率が小さいことからも予想さ
れるように、筐体形状に仕上げた場合の剛性は劣ってお
り、各筐体ケースの嵌合性もそれほど強固なものとはな
らなかった。そのため、筐体の剛性および嵌合性は可と
して評価した。 〔耐衝撃性〕表4の実施例26に示した、PPE/HI
PS1のアイゾット衝撃強度は比較的大きい値であり、
120g筐体を90cm高さから落下させた場合でも筐
体に白化やクラックは生じなかった。そのため、筐体の
耐衝撃性は優として評価し、実用上問題ないものと判断
した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生するウエルド部
の引張り強さおよび破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表4の実施例26に示した、PPE
/HIPS1の熱変形温度が90℃と低いことからも予
想されるように、100℃、3時間の熱処理条件下でか
なり変形したため、筐体の耐熱寸法安定は可として評価
した。なお、熱処理温度を90℃とした場合には、0.
1%以下の変形量に留まり、耐熱寸法安定性の優れた筐
体が得られた。以上示したように、超薄肉成形のために
流動性を改善したPPE/HIPS1を用いることによ
り、剛性、嵌合性および耐熱寸法安定性に問題はあるも
のの、軽量で、耐衝撃性およびウエルド安定性を満足し
た0.05cm厚の超薄肉筐体の成形が可能となった。
このように、本実施例におけるようなPPE/HIPS
1を用いた0.05cm肉厚の薄肉筐体においては、剛
性、嵌合性および耐熱寸法安定性を満足することはでき
なかったが、筐体肉厚を0.05cm〜0.10cmの
間となるように設計すれば、これらの特性を満足するこ
とができるものと考えられる。なお、一般成形用の厚肉
グレートのPPE/HIPSアロイ樹脂を用い、図1に
示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形したが、樹
脂の溶融粘度が大きいため、いずれの筐体ケースにおい
ても0.05cm薄肉成形性を満足することができず、
板厚は0.1cm以上のかなり厚い仕上がりとなり、変
形も大きく、外観の悪い仕上がりとなった。
【0047】〈実施例27〉実施例26におけるPPE
/HIPS1の曲げ弾性率および熱変形温度を改善する
目的で、PPE/HIPS1に炭素繊維を10%充填し
た複合材料(以下、PPE/HIPS1/CF10と略
称する。)を用い、図1に示す構造の3部品からなる筐
体ケースを成形した。表8の実施例27に示すように、
各筐体ケース共、バリもなく、図1の設計通りに賦形で
き、さらに板厚もほぼ設計通りに仕上がり、Uケース1
Aの天板部、Lケース1Bの側壁部、スライドケース1
Cの天板部および側壁部を目標とする厚さ0.05cm
から±5%以内の誤差に抑えることができることが分か
った。そのため、0.05cm薄肉成形性、賦形性およ
びバリは優として評価した。また、筐体の外観は、Uケ
ースおよびスライドケースにおいて、繊維の配向流れが
若干表面に浮かび出たため良として評価した。このよう
に、PPE/HIPS1/CF10を用いることによ
り、今まで0.1cmが限界であった筐体肉厚を0.0
5cmという超薄肉に仕上げることができ、筐体重量を
大幅に軽量化することができた。次に、表12に示す実
施例27の筐体特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表4の実施例27に示した、PP
E/HIPS1/CF10の曲げ弾性率が、PPE/H
IPS1の2倍ほど大きく改善されていることからも予
想されるように、筐体形状に仕上げた場合、筐体の剛性
は優れたものとなり、各筐体ケースの嵌合性も安定した
強固なものとなった。そのため、筐体の剛性および嵌合
性は優として評価し、実用上問題ないものと判断した。 〔耐衝撃性〕表4の実施例27に示した、PPE/HI
PS1/CF10のアイゾット衝撃強度は、PPE/H
IPS1と比べて大きく低下しているが、120g筐体
を90cm高さから落下させた場合でも、筐体に一部白
化を生じた程度で、他に大きなクラックや破壊を生じな
かったため、筐体の耐衝撃性は良として評価し、実用上
さほど問題ないものと判断した。なお、筐体肉厚を0.
05cm〜0.10cmの間となるように設計すれば、
白化も生じることなく、十分に耐衝撃性を満足するもの
と考えられる。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生するウエルド部
の引張り強さおよび破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱寸法安定性〕表4の実施例27に示した、PPE
/HIPS1/CF10の熱変形温度が118℃と高い
ことからも予想されるように、100℃、3時間の熱処
理条件下でも0.1%以下の変形量を保つことが確かめ
られたため、筐体の耐熱寸法安定性は優として評価し、
実用上問題ないものと判断した。なお、120℃、3時
間の熱処理条件下でも0.3%以下の変形量に留まり、
非常に耐熱寸法安定性の優れた筐体であることが明らか
となった。以上示したように、曲げ弾性率および熱変形
温度を改善したPPE/HIPS1/CF10を用いる
ことにより、耐衝撃性に若干問題はあるものの、軽量
で、剛性、嵌合性、ウエルド安定性および耐熱寸法安定
性を満足した0.05cm厚の超薄肉筐体の成形が可能
となった。
【0048】〈実施例28〉実施例27と同様、PPE
/HIPS1の曲げ弾性率および熱変形温度を改善する
目的で、実施例27における炭素繊維の代わりに、ガラ
ス繊維(GF)を20%充填した複合材料(以下、PP
E/HIPS1/GF20と略称する。)を用い、図1
に示す構造の3部品からなる筐体ケースを成形した。表
8の実施例28に示すように、各筐体ケース共、バリも
なく、図1の設計通りに賦形でき、さらに板厚もほぼ設
計通りに仕上がり、Uケース1Aの天板部、Lケース1
Bの側壁部、スライドケース1Cの天板部および側壁部
を目標とする厚さ0.05cmから±5%以内の誤差に
抑えることができることが分かった。そのため、0.0
5cm薄肉成形性、賦形性およびバリは優として評価し
た。また、筐体の外観は、Uケースおよびスライドケー
スにおいて、ガラス繊維の配向流れが若干表面に浮かび
出たため良として評価した。このように、PPE/HI
PS1/GF20を用いることにより、今まで0.1c
mが限界であった筐体肉厚を0.05cmという超薄肉
に仕上げることができ、筐体重量を大幅に軽量化するこ
とができた。なお、実施例27および28におけるPP
E/HIPSアロイ複合材料の溶融粘度は、シリンダ温
度を上昇させるほど低下するが、シリンダ温度を上げ過
ぎるとバリや焼けが生じ易くなり、反対に下げ過ぎると
ヒケを生じて賦形性が悪くなる。次に、表12に示す実
施例28の筐体特性について項目別に説明する。 〔剛性および嵌合性〕表4の実施例28に示した、PP
E/HIPS1/GF20の曲げ弾性率がPPE/HI
PS1/CF10と同程度で大きいことからも予想され
るように、筐体形状に仕上げた場合、筐体の剛性は優れ
たものとなり、各筐体ケースの嵌合性も安定した強固な
ものとなった。そのため、筐体の剛性および嵌合性は優
として評価し、実用上問題ないものと判断した。 〔耐衝撃性〕表4の実施例28に示した、PPE/HI
PS1/GF20のアイゾット衝撃強度は、PPE/H
IPS1/CF10の2倍程度で比較的大きい値とな
り、120g筐体を90cm高さから落下させた場合で
も、筐体に白化やクラックが生じなかったため、筐体の
耐衝撃性は優として評価した。 〔ウエルド安定性〕ボタン操作部に発生するウエルド部
の引張り強さおよび破断伸びを測定した結果、材料自体
の特性と比較して10%ほど低下したが、実用上問題の
ない程度であるため、筐体のウエルド安定性は優として
評価した。 〔耐熱変形特性〕表4の実施例28に示した、PPE/
HIPS1/GF20の熱変形温度が140℃と高いこ
とからも予想されるように、100℃、3時間の熱処理
条件下でも0.1%以下の変形量を保つことが確かめら
れたため、筐体の耐熱性は優として評価し、実用上問題
ないものと判断した。なお、120℃、3時間の熱処理
条件下でも0.1%以下の変形量に留まり、非常に耐熱
寸法安定性の優れた筐体であることが明らかとなった。
以上示したように、曲げ弾性率および熱変形温度を改善
したPPE/HIPS1/GF20を用いることによ
り、軽量で、剛性、嵌合性、耐衝撃性、ウエルド安定性
および耐熱変形特性を満足した0.05cm厚の超薄肉
筐体の成形が可能となった。なお、一般成形用の厚肉グ
レードのガラス繊維強化PPE/HIPSアロイ複合材
料(ガラス繊維充填量20%)および炭素繊維強化PP
E/HIPSアロイ複合材料(炭素繊維充填量10%)
を用い、図1に示す構造の3部品からなる筐体ケースを
成形したが、樹脂の溶融粘度が大きいため、いずれの筐
体ケースにおいても0.05cm薄肉成形性を満足する
ことができず、板厚は0.1cm以上とかなり厚目の仕
上がりとなり、変形も大きく、外観の悪い仕上がりとな
った。また、本発明における超薄肉筐体は、すべてメッ
キ付着性を有しており、電磁波対策を行うためのシール
ドを筐体に施すことができる。ここで、本発明における
繊維強化複合材料を用いた超薄肉筐体では、繊維強化材
として炭素繊維、ガラス繊維に限らず、ボロン繊維、チ
ラノ繊維等の無機フィラーやケブラー繊維、PBT繊維
などの有機フィラーを用いた場合でも同様の効果を奏す
る。なお、炭素繊維を繊維強化材として用いる場合に
は、本実施例でも示したように、少ない充填量でも優れ
た筐体特性を発揮することができる。また、ガラス繊維
や炭素繊維などの強化繊維の量を増せば、剛性、嵌合
性、耐熱変形特性などの特性は向上するが、逆に溶融流
動性、耐衝撃性、ウエルド安定性などの特性が低下する
恐れがある。また、本発明においては、筐体の超薄肉成
形性を確かめるため、図1に示す構造の携帯電話機筐体
を取り上げたが、超薄肉成形の技術は、携帯電話機筐体
に限らず、軽量小形化を指向しているノートブック型パ
ソコン、二次電池、カセット、ポケットベル、コードレ
スフォン等の筐体ケースにも適用することができる。
【0049】
【発明の効果】本発明の電子機器用超薄肉筐体によれ
ば、従来の筐体と比較して、剛性、嵌合性、耐衝撃性、
ウエルド安定性、耐熱寸法安定性およびメッキ付着性を
劣化させることなく、0.1cm以下の厚さの超薄肉化
により、著しい軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で例示した超薄肉筐体からなる
携帯電話機の筐体構造を示す模式図。
【符号の説明】
1…筐体 1A…Uケース 1B…Lケース 1C…スライドケース 2…アンテナ部 3…スピーカ部 4…表示部 5…操作ボタン部 6…盲人用突起 7…マイクロフォン部 8…音量調節ボタン部 9…平面アンテナ部 10…ウエルド部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // B29L 22:00 (31)優先権主張番号 特願平4−191920 (32)優先日 平4(1992)7月20日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平4−191923 (32)優先日 平4(1992)7月20日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平5−58144 (32)優先日 平5(1993)3月18日 (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平5−145815 (32)優先日 平5(1993)6月17日 (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 卜部 周二 東京都千代田区内幸町一丁目1番6号 日 本電信電話株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱可塑性樹脂単独、もしくは上記熱可塑性
    樹脂に、炭素繊維、ガラス繊維、有機フィラー、無機フ
    ィラーのうちから選択される少なくとも1種の強化材料
    を充填した複合材料からなり、かつ厚さが0.1cm以下
    の超薄肉に成形してなることを特徴とする電子機器用超
    薄肉筐体。
  2. 【請求項2】熱可塑性樹脂を2種以上混合して調製した
    アロイ樹脂単独、もしくは上記アロイ樹脂に、炭素繊
    維、ガラス繊維、有機フィラー、無機フィラーのうちか
    ら選択される少なくとも1種の強化材料を充填した複合
    材料からなり、かつ厚さが0.1cm以下の超薄肉に成形
    してなることを特徴とする電子機器用超薄肉筐体。
  3. 【請求項3】請求項1において、熱可塑性樹脂は、ポリ
    カ−ボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−ス
    チレン共重合体樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂ま
    たは液晶ポリマー樹脂のうちから選択された樹脂である
    ことを特徴とする電子機器用超薄肉筐体。
  4. 【請求項4】請求項2において、アロイ樹脂は、アクリ
    ロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂と、ポ
    リカ−ボネート樹脂もしくはポリブチレンテレフタレー
    ト樹脂とのアロイ化物であることを特徴とする電子機器
    用超薄肉筐体。
  5. 【請求項5】請求項2において、アロイ樹脂は、ポリア
    ミド樹脂とポリフェニレンスルフィド樹脂とのアロイ化
    物であることを特徴とする電子機器用超薄肉筐体。
  6. 【請求項6】請求項2において、アロイ樹脂は、ポリフ
    ェニレンエーテル樹脂と、ポリアミドメタキシレンジア
    ミン−6樹脂もしくは耐衝撃性ポリスチレン樹脂とのア
    ロイ化物であることを特徴とする電子機器用超薄肉筐
    体。
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JP5-145815 1993-06-17
JP5-58144 1993-06-17
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