JPH0733844A - 脂肪族ポリエステルを主成分とするゲルおよび温度変化に応答する薬物放出制御材料 - Google Patents

脂肪族ポリエステルを主成分とするゲルおよび温度変化に応答する薬物放出制御材料

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JPH0733844A
JPH0733844A JP20196593A JP20196593A JPH0733844A JP H0733844 A JPH0733844 A JP H0733844A JP 20196593 A JP20196593 A JP 20196593A JP 20196593 A JP20196593 A JP 20196593A JP H0733844 A JPH0733844 A JP H0733844A
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general formula
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JP20196593A
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English (en)
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Yutaka Nagase
裕 長瀬
Takao Aoyanagi
隆夫 青柳
Fusae Miyata
房枝 宮田
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Sagami Chemical Research Institute
Original Assignee
Sagami Chemical Research Institute
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 温度変化に応答して薬物放出のON−OFF
制御機能を有する薬物放出制御材料を提供する。 【構成】 下記一般式(I)で表わされるポリエステル
系多官能性マクロモノマーと下記一般式(II)で表わ
される末端に重合基を有するポリエチレングリコールと
を、重量比が99/1〜70/30の範囲で混合し重合
して得られる脂肪族ポリエステルを主成分とするゲル、
および該ゲルからなる薬物放出制御材料。 【化1】 (式中、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル
基、R2は水素原子、メチル基またはエチル基、X1およ
びX2は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1
〜6のアルキル基またはフェニル基、Yは水素原子、ア
ルキル基または-C(=O)C(X2)=CH2で表わされる基であ
り、qは0〜6の整数、mは0または1、aは5〜50
0、nは5〜50、pは0〜6の整数である。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、脂肪族ポリエステルを
主成分とし重合性置換基を3個ないしは4個有するポリ
エステル系多官能性マクロモノマーと、末端に重合基を
有するポリエチレングリコールを混合して重合すること
により得られる脂肪族ポリエステルを主成分とするゲ
ル、さらには該ゲルからなる、温度変化に応答する薬物
放出制御材料に関するものである。本発明の脂肪族ポリ
エステルを主成分とするゲルは、主成分となる脂肪族ポ
リエステルの構成成分あるいは平均重合度を種々変化さ
せることによりその熱転移温度をコントロールすること
が可能であり、任意の温度範囲での薬物放出におけるO
N−OFF制御を可能にする材料として有用である。
【0002】
【従来技術】医薬をより効率良く目的部位に到達させ副
作用を抑える目的で、薬物の新しい投与技術、薬物送達
システム(ドラッグデリバリーシステム、DDS)につ
いての研究が近年活発に行なわれている。この中で、化
学物質、pH、温度、電場、磁場などの外的環境変化に
応答して化学構造変化、相転移、形態変化、物性変化な
どを起こす高分子を薬物放出の時間的制御に応用する研
究が活発である。このような刺激応答性高分子材料を用
いることにより、製剤自身が体内の生理的変化に由来す
る信号を感知し、その程度に応じて放出量を判断し、薬
物を放出する、あるいは止める機能(ON−OFF制御
機能)を兼ね備えたDDSが可能となる。
【0003】特に、温度変化に応答する高分子を用いた
温度感応性薬物放出システムは、例えば、発熱時に限り
解熱剤を投与すること、あるいは外部から熱を加えるだ
けで投与したい時に薬物を放出させたりすることなどが
可能となり、実用的なDDSとして盛んに研究が行なわ
れている。これまでに知られている温度変化に応答する
高分子材料としては、ポリ-N-イソプロピルアクリルア
ミドからなるゲル(岡野ら、表面科学、第10巻、90
頁、1989年;J. Controlled Release、第11巻、
255頁、1990年、など参照)、N-イソプロピル
アクリルアミドとアルキルメタクリレートとの共重合体
からなるゲル(吉田ら、人工臓器、第19巻、1243
頁、1990年;Drug Delivery System、第5巻、27
9頁、1990年、など参照)、ポリアクリル酸とポリ
アクリルアミドからなる交互浸潤網目(IPN)ゲル
(上遠野ら、J. Controlled Release、第16巻、21
5頁、1991年、など参照)あるいは多孔膜中に液晶
分子を含浸させた膜(野沢ら、J. Controlled Releas
e、第15巻、29頁、1991年、など参照)などが
提案されている。これらの高分子は、温度変化によるゲ
ルの収縮、膨潤を利用したり、液晶転移温度前後におけ
る透過性の差を利用して温度変化に応答した薬物放出の
ON−OFF制御を実現可能にしたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
温度変化に応答する高分子、いわゆる温度感応性高分子
は、力学的強度に劣る、ON−OFF制御を行なう温度
を任意に設定しにくい、生体内で使用した場合体内に残
存する、また液晶含浸膜の場合には液晶分子の固定化が
不充分なため繰り返し使用における安定性に欠ける、な
どの欠点を有しておりいまだに実用化には至っていない
のが現状である。特に、このような薬物放出のON−O
FF制御は生体内で行なう場合がほとんどであるので、
使用後は体内あるいは自然環境下で分解吸収される材料
を用いることが理想的である。したがって、いわゆる生
分解性高分子を基材とすることが考えられるが、これま
でに生分解性高分子を温度感応性高分子として用いた例
はない。そこで、本発明の目的は、生分解性高分子とし
て良く知られているポリラクチド、ポリグリコリド、ポ
リーγーブチロラクトン、ポリーεーカプロラクトン、ポリ
ーβーヒドロキシ酪酸、ポリーβーヒドロキシ吉草酸などの
脂肪族ポリエステル(高分子学会編、高分子新素材便
覧、1989年、322〜347頁参照)を主成分とし
た高分子を用いることにより、使用後は体内や自然環境
下で分解、吸収され、かつ従来の材料がもつ、力学的強
度に劣る、ON−OFF制御を行なう温度を任意に設定
しにくいなどの問題点を解決した新規の温度感応性高分
子を提供することである。
【0005】一方、本発明者らは、上記の脂肪族ポリエ
ステルからなる三次元架橋体すなわちゲルを合成し、そ
の転移温度前後において薬物放出のON−OFF制御が
可能となることを見出している。(日本化学会第65春
季年会、1993年、258頁参照)しかしながら、脂
肪族ポリエステルのみからなるゲルでは薬物の透過性が
低いという欠点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、薬物の透
過性が高くしかも薬物放出のON−OFF制御が可能な
脂肪族ポリエステルを主成分としたゲルを得るために鋭
意研究した結果、脂肪族ポリエステルを主成分とし重合
性置換基を3個ないしは4個有するポリエステル系多官
能性マクロモノマーを、末端に重合基を有するポリエチ
レングリコールと混合して重合することにより目的とす
るゲルが容易に得られ、さらに主成分となる脂肪族ポリ
エステルの構成成分あるいは平均重合度を種々変化させ
ることにより任意のゲル転移温度を付与することが可能
となり、さらにその転移温度の前後において薬物放出の
ON−OFF制御が可能で薬物放出時に脂肪族ポリエス
テルのみからなるゲルに比べ薬物の透過性が高くなるこ
とを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、下記一般式(I)
【0008】
【化7】
【0009】(式中、R1は水素原子または炭素数1〜
6のアルキル基、X1は水素原子、ハロゲン原子、シア
ノ基、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基、A
は脂肪族ポリエステル鎖であり、mは0または1、pは
それぞれの分岐鎖において各々同一または異なっても良
く0〜6の整数である。)で表わされるポリエステル系
多官能性マクロモノマーおよび下記一般式(II)
【0010】
【化8】
【0011】(式中、X2は水素原子、ハロゲン原子、
シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル
基、Yは水素原子、アルキル基または-C(=O)C(X2)=CH2
で表わされる基であり、nは5〜50の整数である。)
で表わされる末端に重合基を有するポリエチレングリコ
ールを、前記一般式(I)で表わされる化合物と前記一
般式(II)で表わされる化合物との重量比が99/1
〜70/30の範囲で重合することにより得られる脂肪
族ポリエステルを主成分とするゲル、および該ゲルから
なる、温度変化に応答する薬物放出制御材料に関するも
のである。なお、前記一般式(I)中Aで表わされる脂
肪族ポリエステル鎖は、好ましくは下記一般式(II
I)
【0012】
【化9】
【0013】(式中、R2は水素原子、メチル基または
エチル基、qは0〜6の整数である。また、R2および
qは繰り返し単位ごとに同一または任意に異なっても良
い。)で表される繰り返し単位からなるポリエステル鎖
であり、かつその平均重合度が5〜500の範囲内にあ
ることが望ましい。
【0014】前記一般式(I)で表わされるポリエステ
ル系多官能性マクロモノマーは、例えば、以下に述べる
方法により容易に合成することができる。すなわち、下
記一般式(IV)
【0015】
【化10】
【0016】(式中、R1、mおよびpは前記定義のと
おりである。)で表わされるトリオールまたはテトラオ
ール化合物存在下、下記一般式(V)
【0017】
【化11】
【0018】(式中、R2は前記定義のとおりであ
る。)または下記一般式(VI)
【0019】
【化12】
【0020】(式中、R2およびqは前記定義のとおり
である。)で表わされる環状エステル化合物を単独ある
いは2種以上混合して開環重合することにより下記一般
式(VII)
【0021】
【化13】
【0022】(式中、R1、A、mおよびpは前記定義
のとおりである。)で表わされる前駆体を得、これをさ
らに下記一般式(VIII)
【0023】
【化14】
【0024】(式中、X1は前記定義のとおりであ
る。)で表わされる酸クロリドと反応させることにより
合成することができる。
【0025】ここで用いる前記一般式(IV)で表わさ
れるトリオールまたはテトラオール化合物としては、グ
リセリン、1,1,1−トリ(ヒドロキシメチル)エタ
ン、1,1,1−トリ(ヒドロキシメチル)プロパン、
1,1,1−トリ(ヒドロキシメチル)ブタン、1,
1,1−トリ(ヒドロキシメチル)ペンタン、1,1,
1−トリ(ヒドロキシメチル)ヘキサン、1,1,1−
トリ(ヒドロキシメチル)ペンタン、ペンタエリスリト
ール、1,3,5−トリ(ヒドロキシメチル)ペンタ
ン、1,3,3,5−テトラ(ヒドロキシメチル)ペン
タン、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、1,2,
2,6−テトラヒドロキシヘキサン等を例示することが
できる。
【0026】また、前記一般式(V)または(VI)で
表わされる環状エステル化合物としては、グリコリド、
D,L−ラクチド、L−ラクチド、D−ラクチド、β−
プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラ
クトン、β−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、δ
−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−カプロラ
クトン、ε−カプロラクトン等を例示することができ
る。これらの環状エステル化合物を単独にあるいは2種
以上混合して用い、前記一般式(IV)で表わされるト
リオールまたはテトラオール化合物存在下50℃から2
00℃、より好ましくは100℃から200℃の温度に
加温することにより容易に開環重合を起こし前記一般式
(VII)で表わされる前駆体が得られる。また、特に
ラクチド類の開環重合に際しては触媒を用いる方がより
好ましく、ここで用いられる触媒としては、2−エチル
ヘキサン酸錫、酢酸トリブチル錫、塩化トリブチル錫、
メトキシトリブチル錫、t−ブトキシトリブチル錫等の
錫系触媒、三酸化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩
化アンチモン、三弗化アンチモン等のアンチモン系触
媒、あるいは亜鉛粉末、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜
鉛、弗化亜鉛等の亜鉛系触媒等を挙げることができる。
【0027】このようにして得られる前記一般式(VI
I)で表わされる前駆体から、前記一般式(I)で表わ
されるポリエステル系多官能性マクロモノマーへ誘導す
る際に用いる、前記一般式(VIII)で表わされる酸
クロリドとしては、アクリル酸クロリド、α−クロロア
クリル酸クロリド、α−シアノアクリル酸クロリド、メ
タクリル酸クロリド、α−ブチルアクリル酸クロリド、
α−フェニルアクリル酸クロリド等を例示することがで
きる。なお、前記一般式(VII)で表わされる前駆体
と前記一般式(VIII)で表わされる酸クロリドとの
反応は有機溶媒中で行なうことが好ましく、溶媒として
は、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、クロロ
ホルム、四塩化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、
ジメチルスルホキシド等が好適に用いられる。また、こ
の反応に際しては塩化水素が発生するので、その補足剤
としてトリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、
ピリジン等の有機塩基存在下で行なうことにより好適に
反応が進行する。
【0028】本発明のゲルを製造する際に用いられる前
記一般式(II)で表わされる末端に重合基を有するポ
リエチレングリコールの一部は市販されており、また、
市販されていないものについては、片末端または両末端
に水酸基を有する市販のポリエチレングリコールと、下
記一般式(IX)
【0029】
【化15】
【0030】で表わされる酸クロリドとを反応させるこ
とにより容易に合成することができる。この酸クロリド
としては、前記一般式(VIII)で表わされる酸クロ
リドについて例示したものと同様のものを例示しうる。
【0031】前記一般式(I)で表わされるポリエステ
ル系多官能性マクロモノマーと前記一般式(II)で表
わされる末端に重合基を有するポリエチレングリコール
とを重合して本発明の脂肪族ポリエステルを主成分とす
るゲルを製造する際には、ラジカル重合、アニオン重
合、カチオン重合などの公知の付加重合法を用いること
ができる。しかしながら、この場合にはラジカル重合法
が最も簡便な方法として好適に用いられる。
【0032】ラジカル重合法で行なう場合は、バルク重
合、溶液重合、乳化重合等の公知の方法を用いることが
できる。また、ラジカル重合反応は、単に加熱、可視光
あるいは紫外線の照射またはラジカル開始剤の添加によ
り開始される。反応に好適に用いられるラジカル開始剤
としては、ジラウロイルペルオキシド、ジ-t-ブチルペ
ルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルヒドロ
ペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等の有機過酸
化物あるいはα,α',−アゾビスイソブチロニトリルや
アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ化合物
などを例示することができる。さらに、重合を可視光あ
るいは紫外線などの光照射により開始する場合には、一
般に用いられる光重合開始剤および増感剤共存下にて行
なうことにより好適に重合が開始される。ここで用いら
れる光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾフェノ
ン、アセトフェノン、ベンジル、p,p’−ジメトキシ
ベンジル、p,p’−ジクロロベンジル、カンファーキ
ノン、α−ナフチル、アセナフセン、チオキサンソン、
2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソ
ン、2,4−ジエトキシチオキサンソン、トリメチルベ
ンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等を挙げること
ができる。また、増感剤としては、n−ブチルアミン、
トリエチルアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレー
ト、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトル
イジン、トリエチル−n−ブチルホスフィン、4−ジメ
チルアミノ安息香酸イソアミル等が好適に用いられる。
一方、重合反応に利用できる有機溶媒は、例えば、ベン
ゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒ
ドロフラン、クロロホルム、メチルエチルケトン、フル
オロベンゼン、メタノール、エタノール、n−あるいは
i−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、
N,N−ジメチルアセトアミド等を例示できるが、これ
らに限定されるものではない。重合反応は、通常室温か
ら100℃の範囲で円滑に進行する。なお、この重合反
応は通常の反応容器内にて攪拌しながら行なっても良い
が、その他、ガラス板の間や鋳型中に原料となるマクロ
モノマー、溶媒、重合開始剤などの必要な試薬を注入し
て行なうことも可能である。したがって、重合時にフィ
ルム状や板状、棒状、球状、チューブ状、ペレット状な
ど任意の形に成形することができ、さらに延伸、紡糸な
どの2次加工を施すことも可能である。
【0033】また、前記一般式(I)で表わされるポリ
エステル系多官能性マクロモノマーと前記一般式(I
I)で表わされる末端に重合基を有するポリエチレング
リコールとを混合して重合する際には、前記一般式
(I)で表わされる化合物と前記一般式(II)で表わ
される化合物との重量比は99/1〜70/30の範囲
であり、95/5〜80/20の範囲にあることが好ま
しい。すなわち、前記一般式(I)で表わされるポリエ
ステル系多官能性マクロモノマーの比率がこの範囲より
多いと、得られるゲルの薬物透過性が低くなり、また少
ないと温度変化に対して薬物放出をON−OFF制御す
ることが困難となる。
【0034】このようにして得られる本発明の脂肪族ポ
リエステルを主成分とするゲルは、後に試験例として示
すように、原料となる前記一般式(I)で表わされるポ
リエステル系多官能性マクロモノマー中Aで表わされる
脂肪族ポリエステル鎖の繰り返し単位の成分あるいは平
均重合度を種々変化させることにより、ゲル転移温度を
任意にコントロールすることができる。特に、薬物放出
の温度によるON−OFF制御を生体内の温度、すなわ
ち30〜40℃前後で行ないたい場合には、前記一般式
(I)で表わされるポリエステル系多官能性マクロモノ
マー中Aで表わされる脂肪族ポリエステル鎖の繰り返し
単位の成分としてはポリラクトンを含む成分であること
が望ましく、その平均重合度は特に5〜100の範囲に
あることがより好ましい。さらに、前述の通り原料とな
るマクロモノマーの重合時に任意の形状に成形加工する
ことができるので、フィルム、板、棒、球、チューブ、
針、糸、あるいはマイクロカプセルなど材料として用い
る際の目的にかなった形にすることが可能となる。した
がって、本発明の脂肪族ポリエステルを主成分とするゲ
ルは、加水分解性あるいは生分解性を有するプラスチッ
ク、ゴム、繊維、あるいは吸収性縫合糸、医薬や農薬、
殺菌剤などの薬物の徐放性製剤のマトリックスなどの幅
広い用途に使用することができる。
【0035】本発明の薬物放出制御材料からなる製剤を
作製するには、前記一般式(I)で表わされるポリエス
テル系多官能性マクロモノマーおよび前記一般式(I
I)で表わされる末端に重合基を有するポリエチレング
リコールの混合物を重合する際に使用する薬物を混入さ
せて行なう、本発明の脂肪族ポリエステルを主成分とす
るゲルに薬物を含浸させる、フィルム状、チューブ状ま
たはカプセル状に成形されたゲルの中に薬物を封入す
る、などの方法が適用できる。
【0036】本発明のゲルからなる薬物放出制御材料を
利用して温度変化に応答するDDSを行なう際に用いら
れる薬物は、人間用あるいは動物用いずれの薬物であっ
てもよく、例えば消炎鎮痛剤としては、アセトアミノフ
ェノン、アスピリン、サリチル酸メチル、サリチル酸コ
リン、サリチル酸グリコール、l−メントール、カンフ
ァー、メフェナム酸、フルフェナム酸、アンチピリン、
インドメタシン、ジクロフェナック、アルクロフェナッ
ク、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、
プラノプロフェン、フェノプロフェン、フェンプロフェ
ン、フルルビプロフェン、インドプロフェン、フェンチ
アザック、トルメチン、スプロフェン、ベンザダック、
ブフェキサマック、ピロキシカム、フェニルブタゾン、
オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ペンタゾジン、
メピリゾールなど;ステロイド系消炎剤としては、ヒド
ロコーチゾン、プレドニゾロン、デキサメサゾン、トリ
アムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、
フルドロコーチゾンアセテートなど;抗ヒスタミン剤な
いし抗アレルギー剤としてはクロルフェニラミン、グリ
チルリチン酸、ジフェンヒドラミン、ペリアクチンな
ど;局所麻酔剤としてはベンゾカイン、プロカイン、ジ
ブカイン、リドカインなど;抗菌剤等としては、クロル
テトラサイクリンなどのテトラサイクリン類、アンピシ
リンなどのペニシリン類、セファロチンなどのセファロ
スポリン類、カナマイシンなどのアミノグリコシド類、
エリスロマイシンなどのマクロライド類、クロラムフェ
ニコール、ヨード化合物、ニトロフラントイン、ナイス
タチン、アンホテリシン、フラジオマイシン、スルホン
アミド類、ピロールニトリン、クロトリマゾール、ニト
ロフラゾンなど;抗高血圧剤としてはクロニジン、α−
メチルドーパ、レセルピン、シロシンゴピン、レシナミ
ン、シンナリジン、ヒドラジン、プラゾシンなど;降圧
利尿剤としてはテオフィリン、トリクロロメチアジド、
フロセミド、トリバミド、メチクロチアジド、ペンフル
ジド、ハイドロサイアザイド、スピロノラクトン、メト
ラゾンなど;強心剤としてはジギタリス、ユビデカレノ
ン、ドパミンなど;冠血管拡張剤としてはニトログリセ
リン、イソソルビトール−ジナイトレート、エリスリト
−ルテトラナイトレート、ペンタエリスリトールテトラ
ナイトレート、ジピリダモール、ジラゼブ、トラピジ
ル、トリメタジジンなど;血管収縮剤としてはジヒドロ
エルゴタミン、ジヒドロエルゴトキシンなど;β−ブロ
ッカーないし抗不整脈治療剤としてはピンドール、塩酸
プロプラノロールなど;カルシウム拮抗剤としてはジル
チアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン、ベラパミル、
ベンシクラン、ジラゼブなど;抗てんかん剤としてはニ
トラゼパム、メプロバメート、フェニトインなど;抗め
まい剤としてはイソプレナリン、ベタヒスチン、スコポ
ラミンなど;精神安定剤としてはジアゼパム、ロラゼパ
ム、フルニトラゼパム、フルフェナジンなど;催眠鎮静
剤としてはフェノバルビタール、アモバルビタール、シ
クロバルビタールなど;筋弛緩剤としてはトリペリゾ
ン、バクロフェン、タントロレンナトリウム、シクロベ
ンザピリンなど;自律神経用剤としてはアトロピン、レ
ボドパなど;呼吸器官用剤としてはコデイン、エフェド
リン、イソプロテレノール、デキストロメトルファン、
オレシプレナリン、イプラトロピウムブロミド、クロモ
グリク酸など;ホルモン剤ないし抗ホルモン剤としては
コルチコトロピン、オキシトシン、バソプレシン、テス
トステロン、プロゲステロン、エストラジオール、唾液
腺ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎ホルモン、カリクレ
イン、インシュリン、オキセンドロンなど;ビタミン剤
としてはビタミンA,B,C,D,E,Kおよびそれら
の誘導体、カルシェフェロール類、メコバラミンなど;
抗腫瘍剤としては5−フルオロウラシルおよびその誘導
体、アドリアマイシン、クレスチン、ピシバニール、ア
ンシタビン、シタラビンなど;酵素類としてはウロキナ
ーゼなど;漢方薬ないし生薬エキスとしては、甘草、ア
ロエ、紫根など;抗潰瘍剤としてはアラントイン、アル
ジオキサ、アルクロキサなど;その他プロスタグランジ
ン類、糖尿病治療剤などを挙げることができる。これら
の薬物は必要に応じ、二種以上を併用することもでき
る。また、本発明の薬物放出制御材料を用いた温度変化
に応答するDDSは上に挙げた医薬品に限らず、目的に
応じて殺虫剤、除草剤あるいは肥料などの農薬などにも
適用することが可能である。
【0037】以下、本発明を実施例および試験例により
さらに詳細に説明する。ただし、本発明がこれらに限定
されるものでないことはもちろんである。なお、以下の
1H−NMRスペクトルデータ中、"H"で表わされる記号
はそのケミカルシフトに帰属されるプロトンを示すもの
とする。
【0038】
【実施例】
参考例1
【0039】
【化16】
【0040】ペンタエリスリトール(以下、PETと略
記する。)1.23g(9.03mmol)およびε−カプロラクトン
(以下、CLと略記する。)82.4g(722mmol)を混合し、
185℃にて3日間加熱攪拌した。得られた反応混合物を
アセトンに溶解し、過剰量のヘキサン/ジエチルエーテ
ル混合溶媒(1/1)中に再沈澱を行ない、上記の化学
式(1)で表わされるポリCLからなる前駆体を白色粉
末として得た。
【0041】1H-NMR, δ(CDCl3, ppm); 1.58 (m, -CH
2(C"H" 2)3 CH2O-), 2.31 (t, -COC"H" 2 -), 4.06 (t, -C"
H" 2 O-). IR (cm-1); 3520 (-OH), 2940, 2870, 1730 (C=O), 147
0, 1420, 1370, 1300,1240, 1190, 1110, 1050, 960, 7
30.
【0042】得られた前駆体をテトラヒドロフランに溶
解し、この溶液に約10当量のメタクリル酸クロリドおよ
びトリエチルアミンを加え室温にて3日間攪拌した。次
に、溶媒および未反応のメタクリル酸クロリドおよびト
リエチルアミンを留去した後、酢酸エチルを加えて生成
した塩を濾別し、さらに過剰量のヘキサン/ジエチルエ
ーテル/メタノール混合溶媒(18/1/1)中に再沈
澱を行ない、上記の化学式(2)で表わされる構造を有
する四官能性マクロモノマーを白色粉末として得た。
(収量;74.2g)また、1H−NMRスペクトルのピーク
面積比から求めた平均重合度バーaは19.1、GPCによ
りポリスチレン換算値として求めた重量平均分子量は2.
05x104であった。
【0043】1H-NMR, δ(CDCl3, ppm); 1.58 (m, -CH
2(C"H" 2)3 CH2O-), 1.90 (s, -C(C"H" 3 )=CH2), 2.31 (t,
-COC"H" 2 -), 4.06 (t, -C"H" 2 O-), 5.58 (d, -C(CH3)=
C"H"2),6.12 (d, -C(CH3)=C"H"2). IR (cm-1); 2940, 2870, 1730 (C=O), 1640(C=C), 147
0, 1420, 1370, 1300,1240, 1190, 1110, 1050, 960, 8
40, 730.
【0044】参考例2
【0045】
【化17】
【0046】PET0.456g(3.35mmol)、L−ラクチド
(以下、LLAと略記する。)4.83g(33.5mmol)および
2−エチルヘキサン酸錫0.05g(0.123mmol)を混合し、18
5℃にて24時間加熱攪拌した。次に、この反応溶液にC
L30.6g(268mmol)を加えさらに185℃にて24時間加熱攪
拌した。得られた反応混合物をアセトンに溶解し、過剰
量のヘキサン/ジエチルエーテル/メタノール混合溶媒
(1/1/0.01)中に再沈澱を行ない、上記の化学
式(3)で表わされるLLA/CLブロック共重合体か
らなる前駆体を白色粉末として得た。
【0047】1H-NMR, δ(CDCl3, ppm); 1.54 (m, -CH
2(C"H" 2)3 CH2O-, -CH(C"H" 3 )O-), 2.31(t, -COC"H" 2 -),
4.06 (t, -C"H" 2 O-), 5.14 (q, C"H"(CH3)O-). IR (cm-1); 3510 (-OH), 2940, 2870, 1730 (C=O), 146
0, 1420, 1380, 1360,1250, 1190, 1130, 1090, 1040,
960, 870, 740.
【0048】得られた前駆体をテトラヒドロフランに溶
解し、この溶液に約10当量のメタクリル酸クロリドおよ
びトリエチルアミンを加え室温にて24時間攪拌した。次
に、溶媒および未反応のメタクリル酸クロリドおよびト
リエチルアミンを留去した後、酢酸エチルを加えて生成
した塩を濾別し、さらに過剰量のヘキサン/ジエチルエ
ーテル/メタノール混合溶媒(18/1/1)中に再沈
澱を行ない、上記の化学式(4)で表わされる構造を有
する四官能性マクロモノマーを白色粉末として得た。
(収量;33.0g)また、1H−NMRスペクトルのピーク
面積比から求めた組成x/yと平均重合度バーa(バー
x+バーy)はそれぞれ80/20および23.8であり、GP
Cによりポリスチレン換算値として求めた重量平均分子
量は2.34x104であった。
【0049】1H-NMR, δ(CDCl3, ppm); 1.54 (m, -CH
2(C"H" 2)3 CH2O-, -CH(C"H" 3 )O-), 1.96(s, -C(C"H" 3 )=C
H2), 2.31 (t, -COC"H" 2 -), 4.06 (t, -C"H" 2 O-), 5.14
(q, C"H"(CH3)O-) 5.63 (d, -C(CH3)=C"H"2), 6.12
(d, -C(CH3)=C"H"2) IR (cm-1); 2940, 2870, 1740 (C=O), 1640 (C=C), 146
0, 1420, 1380, 1250,1190, 1130, 1110, 1040, 960, 8
70, 810, 740.
【0050】参考例3
【0051】
【化18】
【0052】PET0.340g(2.50mmol)およびδ−バレロ
ラクトン(以下、VLと略記する。)30.0g(300mmol)を
混合し、185℃にて3日間加熱攪拌した。得られた反応
混合物をアセトンに溶解し、過剰量のヘキサン/ジエチ
ルエーテル混合溶媒(1/1)中に再沈澱を行ない、上
記の化学式(5)で表わされるポリVLからなる前駆体
を白色粉末として得た。
【0053】1H-NMR, δ(CDCl3, ppm); 1.58 (m, -CH
2(C"H" 2)2 CH2O-), 2.31 (t, -COC"H" 2 -), 4.05 (t, -C"
H" 2 O-). IR (cm-1); 3520 (-OH), 2960, 2890, 1730 (C=O), 147
0, 1420, 1400, 1380,1320, 1260, 1190, 1170, 1100,
1070, 1050, 950, 920, 730.
【0054】得られた前駆体をテトラヒドロフランに溶
解し、この溶液に約10当量のメタクリル酸クロリドお
よびトリエチルアミンを加え室温にて3日間攪拌した。
次に、溶媒および未反応のメタクリル酸クロリドおよび
トリエチルアミンを留去した後、酢酸エチルを加えて生
成した塩を濾別し、さらに過剰量のヘキサン/ジエチル
エーテル/メタノール混合溶媒(18/1/1)中に再
沈澱を行ない、上記の化学式(6)で表わされる構造を
有する四官能性マクロモノマーを白色粉末として得た。
(収量;28.0g)また、1H−NMRスペクトルのピーク
面積比から求めた平均重合度バーaは28.8、GPCによ
りポリスチレン換算値として求めた重量平均分子量は9.
00x104であった。
【0055】1H-NMR, δ(CDCl3, ppm); 1.58 (m, -CH
2(C"H" 2)2 CH2O-), 1.90 (s, -C(C"H" 3 )=CH2), 2.31 (t,
-COC"H" 2 -), 4.06 (t, -C"H" 2 O-), 5.58 (d, -C(CH3)=
C"H"2),6.12 (d, -C(CH3)=C"H"2). IR (cm-1); 2960, 2890, 1730 (C=O), 1640 (C=C), 147
0, 1420, 1400, 1380,1320, 1260, 1190, 1170, 1100,
1070, 1050, 950, 920, 810, 730.
【0056】実施例1〜6
【0057】
【化19】
【0058】参考例1〜3で得られた四官能性のポリエ
ステル系マクロモノマー(2)、(4)および(6)
と、上記の化学式(7)で表わされる片末端にメタクリ
ロイル基を有するポリエチレングリコール(以下、PE
Gと略記する。)を表1に記載の量混合し、さらにN,N-
ジメチル-p-トルイジン0.01gおよびカンファーキノン0.
01gとをキシレン1gに溶解した。10cmx10cmのガラス板2
枚の間に厚さ0.1mmテフロン製スペーサーをはさみ込
み、その隙間に上記のキシレン溶液を注入した。これに
可視光を約0.5mW/cm2の強度で均一に10分間照射した
ところ、いずれもマクロモノマーが重合して厚さが約15
0μmの無色透明なゲル膜が得られた。これらをアセトン
中に約8時間浸漬して内部の開始剤および増感剤を抽出
除去した後、減圧下にて充分に乾燥した。得られたゲル
膜について示差走査熱量計によりそれぞれのゲルの転移
温度および転移熱量を測定した。それらの結果を表1に
示す。なお、表中の転移温度は、吸熱ピークの極大点の
温度を示す。表からわかるように、これらのゲルはいず
れも転移熱量の大きな相転移を示し、また、ポリエステ
ル鎖の構成成分の違いにより、転移温度がそれぞれ異な
ることが明らかとなった。
【0059】
【表1】 表1 ─────────────────────────────────── 実施例 マクロモノマーの化合物 PEGの PEGの 転移温度 転移熱量 番号 番号、重量(g) 平均重合度ハ゛ーn 重量(g) (℃) (mJ/mg) ─────────────────────────────────── 1 (2)、0.80 23 0.20 48.0 39.6 2 (2)、0.90 23 0.10 48.6 51.7 3 (2)、0.95 23 0.05 49.0 55.6 4 (2)、0.95 9 0.05 50.3 54.7 5 (4)、0.90 23 0.10 49.8 44.0 6 (4)、0.95 23 0.05 50.0 46.0 7 (6)、0.95 23 0.05 51.6 63.9 ───────────────────────────────────
【0060】実施例8、9
【0061】
【化20】
【0062】参考例1で得られた四官能性のポリエステ
ル系マクロモノマー(2)と、上記の化学式(8)で表
わされる両末端にメタクリロイル基を有するPEGを表
2に記載の量混合し、さらにN,N-ジメチル-p-トルイジ
ン0.01gおよびカンファーキノン0.01gとをキシレン1gに
溶解した。10cmx10cmのガラス板2枚の間に厚さ0.1mmテ
フロン製スペーサーをはさみ込み、その隙間に上記のキ
シレン溶液を注入した。これに可視光を約0.5mW/cm2
強度で均一に10分間照射したところ、いずれもマクロ
モノマーが重合して厚さが60〜90μmの無色透明なゲル
膜が得られた。これらをアセトン中に約8時間浸漬して
内部の開始剤および増感剤を抽出除去した後、減圧下に
て充分に乾燥した。得られたゲル膜について示差走査熱
量計によりそれぞれのゲルの転移温度および転移熱量を
測定した。それらの結果を表2に示す。なお、表中の転
移温度は、吸熱ピークの極大点の温度を示す。
【0063】
【表2】 表2 ─────────────────────────────────── 実施例 マクロモノマーの化合物 PEGの PEGの 転移温度 転移熱量 番号 番号、重量(g) 平均重合度ハ゛ーn 重量(g) (℃) (mJ/mg) ─────────────────────────────────── 8 (2)、0.95 14 0.05 49.8 41.3 9 (2)、0.95 23 0.05 50.5 55.6 ───────────────────────────────────
【0064】実施例10 2−チャンバー拡散セル(有効断面積0.95cm2)に実施
例1で得られたゲル膜をはさみ、ドナー部に飽和量の抗
炎症剤インドメタシン約7mg(約0.3wt.%)を含むpH=7.
4に調整したリン酸緩衡液を2ml入れ、レセプター部にp
H=7.4に調整したリン酸緩衡液を2ml入れ、セル全体を
一定温度に調整した恒温槽に浸漬した。恒温槽の温度を
20℃−40℃−20℃−40℃−20℃と2時間おき
に2段階の温度で2サイクル半それぞれ変化させ、20
分ごとにレセプター部よりサンプリングし、高速液体ク
ロマトグラフィーにより透過したインドメタシンの定量
を行なった。各サンプリング時間におけるレセプター部
中のインドメタシンの累積透過量を時間に対してプロッ
トしたところ、図1に示すグラフが得られた。また、参
考例1で得られたポリCLからなるマクロモノマーを単
独で重合して得られたゲル膜を用い、同様なインドメタ
シンの透過実験を行なった結果を比較のため図1に記載
した。これらのグラフからわかるように、いずれのゲル
膜においても、その転移温度の前後においてインドメタ
シンの透過速度が大幅に異なり(低温側で遅く、高温側
で速い)、薬物の放出速度を温度により制御できること
が確認された。さらに、実施例1で得られたゲル膜はポ
リCL単独からなるゲル膜に比べ薬物の透過量が大幅に
向上していることがわかった。
【0065】実施例11〜18 2−チャンバー拡散セル(有効断面積0.95cm2)に実施
例2〜9で得られたゲル膜をそれぞれはさみ、ドナー部
にアンチピリン10mg(0.5wt.%)を含むpH=7.4に調整し
たリン酸緩衡液を2ml入れ、レセプター部にpH=7.4に
調整したリン酸緩衡液を2ml入れ、セル全体を一定温度
に調整した恒温槽に浸漬した。恒温槽の温度を20℃−
40℃−20℃−40℃−20℃と2時間おきに2段階
の温度で2サイクル半それぞれ変化させ、20分ごとに
レセプター部よりサンプリングし、高速液体クロマトグ
ラフィーにより透過したアンチピリンの定量を行なっ
た。各サンプリング時間におけるレセプター部中のアン
チピリンの累積透過量を時間に対してプロットしたとこ
ろ、図2〜9に示すグラフがそれぞれ得られた。なお、
本実施例11〜18の結果はそれぞれ図2〜9に対応す
る。これらのグラフからわかるように、いずれのゲル膜
においても、その転移温度の前後においてアンチピリン
の透過速度が大幅に異なり(低温側で遅く、高温側で速
い)、薬物の放出速度を温度により制御できることが確
認された。また、参考例1で得られたポリCLからなる
マクロモノマーを単独で重合して得られたゲル膜を用
い、同様なアンチピリンの透過実験を行なった結果を比
較のため図2に記載した。図2からわかるように、実施
例2で得られたゲル膜はポリCL単独からなるゲル膜に
比べ薬物の透過量が大幅に向上している。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例10の結果;実施例1で得られたゲル膜
を用いたインドメタシンの透過実験結果(△)、および
参考例1で得られたポリCLマクロモノマーを単独重合
して得られたゲル膜を用いたインドメタシンの透過実験
結果(○)。
【図2】実施例11の結果;実施例2で得られたゲル膜
を用いたアンチピリンの透過実験結果(□)、および参
考例1で得られたポリCLマクロモノマーを単独重合し
て得られたゲル膜を用いたアンチピリンの透過実験結果
(○)。
【図3】実施例12の結果;実施例3で得られたゲル膜
を用いたアンチピリンの透過実験結果。
【図4】実施例13の結果;実施例4で得られたゲル膜
を用いたアンチピリンの透過実験結果。
【図5】実施例14の結果;実施例5で得られたゲル膜
を用いたアンチピリンの透過実験結果。
【図6】実施例15の結果;実施例6で得られたゲル膜
を用いたアンチピリンの透過実験結果。
【図7】実施例16の結果;実施例7で得られたゲル膜
を用いたアンチピリンの透過実験結果。
【図8】実施例17の結果;実施例8で得られたゲル膜
を用いたアンチピリンの透過実験結果。
【図9】実施例18の結果;実施例9で得られたゲル膜
を用いたアンチピリンの透過実験結果。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I) 【化1】 (式中、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル
    基、X1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数
    1〜6のアルキル基またはフェニル基、Aは脂肪族ポリ
    エステル鎖であり、mは0または1、pはそれぞれの分
    岐鎖において各々同一または異なっても良く0〜6の整
    数である。)で表わされるポリエステル系多官能性マク
    ロモノマーおよび下記一般式(II) 【化2】 (式中、X2は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭
    素数1〜6のアルキル基またはフェニル基、Yは水素原
    子、アルキル基または-C(=O)C(X2)=CH2で表わされる基
    であり、nは5〜50の整数である。)で表わされる末
    端に重合基を有するポリエチレングリコールを、前記一
    般式(I)で表わされる化合物と前記一般式(II)で
    表わされる化合物との重量比が99/1〜70/30の
    範囲で重合することにより得られる脂肪族ポリエステル
    を主成分とするゲル。
  2. 【請求項2】 一般式(I)中Aで表わされる脂肪族ポ
    リエステル鎖が、下記一般式(III) 【化3】 (式中、R2は水素原子、メチル基またはエチル基、q
    は0〜6の整数である。また、R2およびqは繰り返し
    単位ごとに同一または任意に異なっても良い。)で表さ
    れる繰り返し単位からなるポリエステル鎖であり、かつ
    このポリエステル鎖の平均重合度が5〜500の範囲内
    にあることを特徴とする、請求項1に記載のゲル。
  3. 【請求項3】 下記一般式(I) 【化4】 (式中、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル
    基、X1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数
    1〜6のアルキル基またはフェニル基、Aは脂肪族ポリ
    エステル鎖であり、mは0または1、pはそれぞれの分
    岐鎖において各々同一または異なっても良く0〜6の整
    数である。)で表わされるポリエステル系多官能性マク
    ロモノマーおよび下記一般式(II) 【化5】 (式中、X2は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭
    素数1〜6のアルキル基またはフェニル基、Yは水素原
    子、アルキル基または-C(=O)C(X2)=CH2で表わされる基
    であり、nは5〜50の整数である。)で表わされる末
    端に重合基を有するポリエチレングリコールを、前記一
    般式(I)で表わされる化合物と前記一般式(II)で
    表わされる化合物との重量比が99/1〜70/30の
    範囲で重合することにより得られる脂肪族ポリエステル
    を主成分とするゲルからなる、温度変化に応答する薬物
    放出制御材料。
  4. 【請求項4】 一般式(I)中Aで表わされる脂肪族ポ
    リエステル鎖が、下記一般式(III) 【化6】 (式中、R2は水素原子、メチル基またはエチル基、q
    は0〜6の整数である。また、R2およびqは繰り返し
    単位ごとに同一または任意に異なっても良い。)で表さ
    れる繰り返し単位からなるポリエステル鎖であり、かつ
    このポリエステル鎖の平均重合度が5〜500の範囲内
    にあることを特徴とする、請求項3に記載の温度変化に
    応答する薬物放出制御材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1997000275A3 (en) * 1995-06-16 1997-03-06 Gel Sciences Inc Responsive polymer networks and methods of their use
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JP2021522362A (ja) * 2018-04-19 2021-08-30 ポリ−メッド インコーポレイテッド 光硬化プロセスのためのマクロマー及び組成物

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