JPH07325069A - 高温部材の劣化検出方法および装置 - Google Patents

高温部材の劣化検出方法および装置

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JPH07325069A
JPH07325069A JP6119141A JP11914194A JPH07325069A JP H07325069 A JPH07325069 A JP H07325069A JP 6119141 A JP6119141 A JP 6119141A JP 11914194 A JP11914194 A JP 11914194A JP H07325069 A JPH07325069 A JP H07325069A
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JP
Japan
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ultrasonic
deterioration
coating
high temperature
vibrator
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Application number
JP6119141A
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English (en)
Inventor
Takahiro Kubo
貴博 久保
Ichiro Furumura
一朗 古村
Chie Ogawa
智恵 小川
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】燃焼ガス等の中で使用される高温部材の表面直
下の材料劣化を、確実かつ容易に検出でき、メンテナン
スを効果的に実施できる非破壊的な高温部材の劣化検出
方法および装置を提供する。 【構成】高温で使用される構造部材について、超音波顕
微鏡により損傷評価部位上の表面波音速を計測し(S1
05)、予めデータベースとして実験的に求めた表面波
音速と、表層部の劣化相形状との関係に基づいて劣化相
の発生状況を推定し、これにより劣化状態を把握する
(S105)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高温で長時間にわたって
使用される固体材料表面近傍の材質劣化を超音波により
検出する高温部材の劣化検出方法、およびその方法を実
施するための高温部材の劣化検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、ガスタービン、蒸気タービンな
どの高温で長時間使用される機器の構造部材は、運転中
の燃焼ガスなどによる高温暴露により主に定常運転時に
蓄積されるクリープ損傷と、主に起動停止時に蓄積され
る疲労損傷などを受け、材料中に劣化が蓄積される。こ
れらの劣化が蓄積した構造部材には微視的な劣化相の出
現、微小亀裂の発生などが起こり、ついには大きな変形
から破断に進展することがある。
【0003】また、ガスタービンや蒸気タービンには、
需要者側の電力需要増減要求によって起動停止が頻繁に
なり、急激な運転変動に伴うガスあるいは蒸気温度、ま
たは圧力変化の影響を受けるようになった。このような
状況の下で、上述の劣化は従来の経験則よりも短時間で
進行することが、定期点検あるいは実機材の劣化調査な
どから明らかとなってきた。
【0004】さらにガスタービンにおいては、燃焼ガス
のタービン入口温度を上昇させると熱効率が上昇するこ
とが知られており、地球環境保護(CO2 低減)の観点
からも入力温度は、ますます高温化する傾向にある。し
かし部品側から見れば、より過酷な環境に曝されること
を意味し、短寿命化に伴う部品あたりの材料コストの上
昇は熱効率向上による利益を相殺しかねない状況にあ
る。
【0005】以上に述べたような背景下で機器の安定運
用を図るために、高温構造材料の劣化診断技術の高精度
化、および部品毎のきめ細かい保守管理が必要とされて
いる。
【0006】ところで、ガスタービン動翼には高温強度
の高いNi基超合金が多用されており、さらに温度環境
の最も厳しい第1段動翼の燃焼ガス通路部には、動翼の
酸化劣化に対する寿命を長期化するため耐酸化性コーテ
ィングが施されている。このコーティングは、ある組成
の金属粉末を、真空プラズ溶射法により動翼に吹き付け
て翼全体を覆うもので、このコーティングの施工により
動翼の酸化および腐食損傷の進行が抑えられる。
【0007】但し、このような耐酸化コーティングにつ
いても、上述の構造材料と同様に高温による損傷を受
け、運転中に材質が劣化する。翼材全体の寿命を考えた
場合、コーティング寿命は基材寿命よりも短く、コーテ
ィングだけが劣化している段階でリコーティングを行う
必要がある。コーティングだけの劣化を検出する方法と
しては、コーティング表面の導電率変化から推定する方
法(特願平3−177060)などが提案されている。
【0008】しかし、基材まで劣化が進行した段階で
は、リコーティングしても寿命延長の効果が望めず、リ
コーティング不可と診断された実機翼材は、そのままの
状態で本来の翼材が持つ寿命まで運転に供される。それ
らのリコーティング不可と診断された動翼の廃却基準と
しては、基材中の劣化進行度合が目安となるが、コーテ
ィング上から基材の劣化を非破壊的に診断することは難
しく、ガスタービン第1段動翼の劣化損傷評価の重要課
題の1つとなっている。
【0009】また、ガスタービン動翼の製造段階でコー
ティング厚さを計測する有効な方法が従来知られておら
ず、同条件で製造した翼の抜取り切断検査に頼ってい
る。効率向上を念頭に置いた翼形状の多様化もあって、
現状の検出方法では多大なコストを要している。
【0010】また、運転中に吹き付けられる燃焼ガスに
より、コーティング肉厚の減少も劣化形態の1つとして
現れる。この減肉が生じた動翼では耐酸化コーティング
の目的が失われ、基材の劣化が逸早く引き起こされるた
め、基材の材質劣化と同様に減肉の検出もコーティング
劣化損傷評価の重要課題となっている。
【0011】固体材料の表面近傍を伝播する超音波の音
速を計測するために用いられる従来の超音波顕微鏡にお
いては、図19に示す如く被検査物1の表面1s に近接
して設置したレンズロッド2の上端部に酸化亜鉛または
圧電セラミック等の超音波振動子3をスパッタリングや
接着により構成している。この超音波振動子3に接続し
た超音波送信器4から超音波励起用信号5を印加するこ
とにより超音波6を発生させると、レンズロッド2の中
心近傍を伝播する超音波6c はそのレンズロッド2のレ
ンズ面2s で屈折することなく透過し、伝音媒体7中を
伝播した後、被検査物1の表面1s で反射し、逆の経路
をたどって超音波振動子3に到達して電圧信号に変換さ
れ、受信信号8c として超音波受信器9に導かれる。他
方、レンズロッド2の周辺部を伝播する超音波6s は、
レンズロッド2のレンズ面2s で屈折し、伝音媒体7中
を伝播した後、被検査物1の表面1s で表面波に変換さ
れ、表面を伝播した後に中心軸を挟んで入射時と対象な
位置で伝音媒体7からレンズロッド2へと伝播し、最終
的に超音波振動子3に到達して電圧信号に変換され、受
信信号8s として超音波受信器9に導かれる。
【0012】したがって、超音波受信器9の出力信号1
0は、被検査物1の表面1s での反射信号8と被検査物
1の表面1s を伝播した表面波8s とが加算された信号
である。レンズロッド2および超音波振動子3からなる
超音波プローブと、被検査物表面1s との距離を変化さ
せると、出力信号10の強度は、これら2つの波が加算
される際の干渉の状況に応じて図20に示すように、多
数の極大点および極小点を有する減衰波形となる。通
常、Vz曲線と呼ばれているこの減衰曲線の極大点間、
あるいは極小点間の間隔ΔZから、被検査物の表面波音
速υSAW が下記(1)式で計測されることが知られてい
る。
【0013】
【数1】
【0014】また、図19に示した通常の超音波顕微鏡
のプローブは、そのレンズ面が球面であるため、図21
に矢印aで示すように、被検査物1の表面のあらゆる方
向に表面波を励起する。従って、前述の図20および式
(1)で示したVz曲線から算出される表面波音速は平
均化された値であり、材質の異方性が存在する被検査物
や材質劣化に伴う方向性を持った析出物の生成や結晶成
長が生じている被検査物の表面波音速を正しく評価する
ためには、例えば図22に示す線集束レンズ11や、図
23に示す超音波の伝播方向の一方を遮るマスク12を
付加した点集束レンズを用い、被検査物表面における超
音波の伝播方向を図22の矢印bの如く一方向に限定す
る方法が用いられている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ガスタービン動翼の耐
酸化コーティング下部の基材劣化を検出する方法、およ
び耐酸化コーティングの減肉量を評価する方法には、有
力な非破壊的手段がなく、定期点検中などに翼材料の一
部を抜取り、切断して組織観察を実施し、劣化状態およ
び減肉量を決定する方法が実施されていた。
【0016】また金属組織を非破壊的に観察する方法と
して、フィルムに組織を転写して観察するレプリカ法と
呼ばれる方法があるが、本発明で対象としている基材劣
化および減肉は、コーティング表面に現れない類のもの
であるため、表面の金属組織変化を検出するレプリカ法
では検出不可能で、コーティング施工部にはこのレプリ
カ法が採用できない。
【0017】また、前述した図19の原理に則って被検
査物の表面波音速υSAW を計測する際に、被検査物の材
質によっては図20に示す如く、明瞭な極大点および極
小点を有するVz曲線が得られる場合と、極大点および
極小点が明瞭でなく単調減少に近いVz曲線が得られる
場合とが存在することが知られており、この材質により
Vz曲線の相違は、被検査物の表面近傍を伝播する表面
波の減衰特性に起因することが知られている(例:K.Ya
manaka、et al.、Acoustical Imaging、12、p.79、198
3)。
【0018】従って、図19に示した従来の超音波顕微
鏡のプローブおよび超音波送受信装置では、表面波の減
衰が大きな被検査物においては表面波音速υSAW が計測
困難であり、超音波伝播特性の変化に基づく材質劣化の
評価が不可能であるという問題点があった。
【0019】また、被検査物の表面波音速を材料の音速
異方性も考慮して計測する際に、線集束レンズは円筒面
を有するレンズ面と被検査物表面との平行度を厳密に合
わせる必要があるため、被検査物の位置調整が困難であ
ることや、方向の異なるデータを得るためにレンズや被
検査物を回転させると、この平行度が狂いやすく再度調
整が必要であること、線集束レンズでは画像を描かせる
ことができないために表面波音速を計測した同じ位置で
画像データを得るためにはレンズを点集束レンズに取り
替えねばならない等の問題がある。また、マスクを付加
した点集束レンズは表面波音速の計測をしつつ画像デー
タを得ることができる利点はあるものの、マスクを付加
して限定した超音波伝播方向以外の超音波も僅かに含ま
れるため、計測された表面波音速に誤差が含まれると言
う問題があった。
【0020】さらに、線集束レンズやマスクを付加した
点集束レンズで被検査物表面のあらゆる方向の超音波伝
播特性を計測するには、何れの場合もレンズやマスクを
回転するか、または被検査物を回転させることが必要で
あり、全方位のデータを集束するには多大な時間を必要
としていた。
【0021】本発明は上述した従来の未解決であった諸
問題を解決するためになされたもので、その目的は、燃
焼ガス等の中で使用される高温部材の表面直下の材料劣
化を、確実かつ容易に検出でき、メンテナンスを効果的
に実施できる非破壊的な高温部材の劣化検出方法および
装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明に係る高温部材の劣化検出方法
は、高温で使用される構造部材について、超音波顕微鏡
により損傷評価部位上の表面波音速を計測し、予めデー
タベースとして実験的に求めた表面波音速と、表層部の
劣化相形状との関係に基づいて劣化相の発生状況を推定
し、これにより劣化状態を把握することを特徴とする。
【0023】請求項2記載の発明に係る高温部材の劣化
検出方法は、高温で使用される構造部材に耐熱用、耐酸
化用その他の目的で被覆されたコーティングの厚さにつ
いて、コーティングと基材との超音波減衰特性の差を用
いて表面波減衰特性を計測し、予めデータベースとして
実験的に求めてあるコーティング厚さと表面波減衰特性
との関係に基づいてコーティング厚さを推定することを
特徴とする。
【0024】請求項3記載の発明に係る高温部材の劣化
検出方法は、高温で使用される構造部材に耐熱用、耐酸
化用その他の目的で被覆したコーティングについて、そ
のコーティング厚さの減肉量を、請求項2に記載のコー
ティング厚さ推定方法を用いて評価し、部材の劣化状態
を把握することを特徴とする。
【0025】請求項4記載の発明に係る高温部材の劣化
検出装置は、超音波送受信部を備え、球面状のレンズ面
を有する超音波プローブと、このプローブのレンズ面の
中心部に貼装された円形の高分子圧電振動子およびその
周辺部に貼装されたリング状の高分子圧電振動子または
中心の円形部分と周辺のリング状部分との電極を分割し
た高分子圧電振動子と、これら各振動子または電極ごと
に独立に接続された超音波出力を制御する超音波送信器
と、各振動子ごとに独立に接続された増倍率を制御する
ことが可能な超音波受信器と、これらの振動子により得
られた受信超音波信号を加算処理する加算器とを備えた
ことを特徴とする。
【0026】請求項5記載の発明に係る高温部材の劣化
検出装置は、超音波送受信用のレンズ面に高分子圧電振
動子を貼装した超音波プローブおよび超音波送受信部を
備え、前記レンズ面に貼装した高分子圧電振動子を分割
するか、または高分子圧電振動子の電極を分割すること
により、レンズ面中心部に円形の振動子部分を構成する
とともに、その周囲にリング状の振動子部分を構成し、
前記リング状の振動子部分を多数の放射状の領域に分割
し、その全ての振動子に、超音波出力の制御が可能な超
音波送信器と増倍率の制御が可能な超音波受信器とを接
続し、これら全ての振動子の動作を制御して全ての振動
子あるいは指定した複数個の振動子の出力信号を選択す
る振動子選択制御回路を設けるとともに、選択された複
数個の振動子の出力信号を加算処理するための加算器を
設けたことを特徴とする。
【0027】請求項6記載の発明に係る高温部材の劣化
検出装置は、超音波送受信用のレンズ面に高分子圧電振
動子を貼装した超音波プローブおよび超音波送受信部を
備え、前記レンズ面に貼装した高分子圧電振動子を分割
するか、または高分子圧電振動子の電極を分割すること
により、円形の振動子を中心に通る線分で多数の放射状
に分割し、これら全ての振動子それぞれに超音波送受信
器と増倍率を制御することが可能な超音波受信器とを接
続し、これら全ての振動子の動作を制御して全ての振動
子あるいは指定した複数個の振動子の出力信号を選択す
る振動子選択制御回路を設けるとともに、選択された複
数個の振動子の出力信号を加算処理するための加算器を
設けたことを特徴とする。
【0028】
【作用】上記の構成を有する請求項1〜3記載の発明に
よれば、評価対象材料の超音波顕微鏡による表面波音速
の計測および超音波減衰特性の評価により、最も確から
しい供試材の度合いを決定できる。つまり、実体評価を
ベースにした高精度の損傷評価が可能で、従来の切断組
織調査による損傷評価法と異なり、全く非破壊的に劣化
を検出することが可能となる。特に請求項2記載の発明
によれば、施工時のコーティングの厚さ管理にも水平展
開が可能で、製造時の品質管理に役立つ。
【0029】即ち、請求項1の発明に係る高温構造部材
の劣化検出方法によれば、高温で使用される構造部材に
ついて、超音波顕微鏡により損傷評価部位上の表面波音
速を計測し、予めデータベースとして実験的に求めてあ
る表面波音速と、表層部の劣化相形状の関係に照らし
て、劣化相の発生状況を推定することができる。
【0030】請求項2の発明に係る高温構造部材の劣化
検出方法によれば、高温で使用される構造部材に耐熱、
耐酸化などの目的で被覆してあるコーティングの厚さ
を、コーティングと基材との超音波減衰特性の差を利用
して、表面波減衰特性を計測し、予めデータベースとし
て実験的に求めてあるコーティング厚さと表面波減衰特
性との関係に照らして、コーティング厚さを推定するこ
とができる。
【0031】請求項3の発明に係る高温構造部材の劣化
検出方法によれば、高温で使用される構造部材に耐熱、
耐酸化などの目的で被覆してあるコーティングに、例え
ば燃焼ガスが吹き付けられることにより起こるコーティ
ング厚さの減肉量を評価し、部材の劣化状態を把握する
ことができる。
【0032】請求項4の発明に係る高温部材の劣化検出
装置によれば、レンズ面中心部で発生した超音波の被検
査物表面における反射信号とレンズ面の周辺部から発生
し、被検査物表面近傍を表面波として伝播して受信され
る表面波信号を加算および干渉させる際に、それぞれの
振動子に独立に接続した超音波送受信器の超音波出力を
制御するか、または各振動子ごとに独立に接続した増幅
器の増幅率を制御することにより、表面反射信号に対す
る表面波信号の強度比率を適切な割合に設定し、表面波
の減衰が大きくVz曲線の極大点や極小点が生じにくい
材料においても表面波音速を計測することが可能とな
る。
【0033】請求項5および6記載の発明によれば、レ
ンズの中心を挾んで対称な位置にある振動子を選択して
用いることにより、特定の方向にのみ伝播する表面波の
音速を計測することが可能であるとともに、振動子の選
択を順次切り換えることにより被検査物表面のあらゆる
方向の表面波音速をプローブや被検査物を回転させるこ
と無く短時間で計測することが可能である。また、分割
された全振動子を同時に全て選択すれば、従来の点集束
レンズと同等の画像データを得ることも可能である。
【0034】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。
【0035】実施例1(図1〜図3) 本実施例は請求項1の発明に対応するもので、ガスター
ビンの第1段動翼のコーティングを劣化検出の対象とし
ている。この動翼は、Ni基超合金からなる基材の燃焼
ガス通路部の腹側および背側に、Co、Cr、Al、Y
等を含む耐酸化コーティングが施した構成とされてい
る。
【0036】図1は本実施例による評価線図(劣化相長
/音速マスターカーブ)の作成手順を示している。ま
ず、実機ガスタービンの第1段動翼と同一の製作方法に
より、基材上にコーティングを施した試料を作成する
(ステップS101)。次に、その試料を実験室にて実
機環境を模擬した環境中に保持し(ステップS10
2)、実機で起こる加熱劣化を実験室的に再現する。な
お、この実機環境とは、ガスタービン定常運転中に計測
した温度、圧力、ガス成分などを忠実に再現したもので
ある。効率的に劣化材を作成するため、場合によっては
温度、圧力などの条件を適宜変更し、加速的に劣化を引
き起こさせ、実験室劣化材作成時間の短縮を図る。
【0037】ここで、図2によってコーティング層劣化
のメカニズムを説明する。メカニズム1は基材への健全
なコーティング層を示しており、約150〜200μm
の膜厚で、最表面に約5μmのAl2 3 の酸化保護皮
膜20が形成されている。メカニズム2は酸化保護皮膜
が破壊し、コーティング層のAlが窒化し(窒化物21
を黒粒で示す)、内部酸化層(帯状の白い部分)22も
形成している状態を示す。メカニズム3はコーティング
層全てにおいて窒化物21が生成し、高温暴露によって
コーティング層中のAlが基材23に拡散して、基材中
にも針状の劣化相(AlN:図中の細長い黒色粒)24
が生成した状態を示す。メカニズム4はさらに劣化が進
行して、基材23中の針状AlNの劣化相24が成長し
た段階である。メカニズム5はコーティング層に微小き
裂25が発生して、コーティング層および基材の劣化が
進行した段階を示す。
【0038】本発明で取り上げる基材の劣化とは、図2
におけるメカニズム3以降を意味し、基材中に針状劣化
相(AlN)が発生する現象のことを指す。つまり、実
機動翼のコーティング下部の基材劣化を判断するには、
基材中の針状劣化相の長さが重要なポイントとなってい
る。
【0039】以上のコーティング層劣化のメカニズムを
念頭に置き、図1に示すように、実験室劣化材コーティ
ングを切断し、コーティングと基材との界面に生じた針
状劣化相を中心として、材料組織の観察を行う(ステッ
プS103)。さらに、パラメータとして基材中の針状
劣化相の長さを計測する(ステップS104)。
【0040】次に超音波顕微鏡によりコーティング部の
表面波音速を計測する(ステップS105)。この表面
波音速は被検体の弾性特性に敏感な指標で、発明者らに
よる検討の結果、コーティング下部の針状相の長さと明
瞭な相関が認められた物性値である。即ち、コーティン
グの劣化は弾性特性の変化を引き起こしている。また表
面波音速は、被検体表面から1波長程度の深さの弾性情
報を含むため、計測周波数を低くする(数10MHz)
ことにより、より深い位置の弾性特性情報も含むデータ
が採取できる。
【0041】表面波音速計測の作業は、切断面ではなく
コーティング表面から行う。これは実機適用を図る場合
に、切断せずに計測できる技術の確立をねらった所期の
目的のためである。なおコーティング表面は、施工後の
表面処理(ショットブラストなど)および高温暴露によ
り粗くなっているが、計測周波数を低く押さえることに
より表面粗さの影響の少ない計測が可能である。
【0042】このようにして得られた、表面波音速計測
結果と針状劣化相長さとの関係に基づいて、針状劣化相
長さの評価カーブを作成する(ステップS106)。図
1に示したカーブG1 は、劣化相長/音速マスターカー
ブであり、同図のように、針状劣化相長さの増加に従っ
て、表面波音速は単調に増加する傾向を示す。
【0043】図3はコーティング劣化による部材廃却基
準の策定フローチャートである。強度特性試験片形状に
加工したガスタービン動翼基材に、実機製造条件と同一
の条件にてコーティングを施工する(ステップS30
1)。
【0044】次に、模擬実機環境中に保持し(ステップ
S302)、実機劣化と同等の劣化を試験片に施して人
工劣化試験片を作成する。その試験片を用いて強度特性
試験(クリープ試験)を実施し(ステップS303)、
人工劣化材の強度特性を把握する。さらに、試験後の試
験片を切断し、前記針状劣化相の長さを計測する(ステ
ップS304)。
【0045】これらのデータから、強度特性と針状劣化
相長さの関係図を作成し、設計データを参考にして、部
材の強度を満足する針状劣化相長さの境界値Lc を求め
る。
【0046】決定したLc を図1の手順にて作成した劣
化相長/音速マスターカーブに反映し、部材強度を満足
する表面波音速の上限値を求める(ステップS30
5)。
【0047】以上の手順にて作成した劣化相長/音速マ
スターカーブG3 を利用すれば、実機被検体のコーティ
ング部から超音波顕微鏡を用いて計測した表面波音速デ
ータに基づいて、針状劣化相の長さを推定することが可
能で、さらに図3の手順にて決定した針状劣化相長さと
材料強度との関係に照らし合わせれば、部材の今後の処
分(例えば交換または運転継続)を決定できる。
【0048】本実施例では、850℃のクリープ試験を
行い、図3中の劣化相長/強度マスターカーブG3 を求
めた。基材部に生成する針状劣化相は非常に脆い相であ
るので、その長さが長くなるにつれて強度を分担する断
面積が小さくなる。すなわち、針状劣化相長さの増加に
対してクリープ強度は単純に減少する傾向を示す。
【0049】この劣化相長/強度マスターカーブを採取
した後、設計的な観点から実機翼に係るクリープ負荷を
定量的に考慮し、実機翼材に必要な強度の下限値を求め
て、その値と対応する針状劣化相長さLc を決定した。
そして、Lc を図1の手順によって策定した劣化相長/
音速マスターカーブに反映させ、表面波音速許容上限値
c を求めて最終的な評価カーブとした。
【0050】こうして人工劣化材で作成した劣化相長/
音速マスターカーブを基に、実機ガスタービン1段動翼
材の基材中に生成した針状劣化相長さを推定した。超音
波顕微鏡による測定の結果、表面波音速3,247m/
sを得た。このデータから推定した針状劣化相長さは8
0μmと推定できた。この推定値は、同材同部位の切断
調査の結果から得られた針状劣化相長さ82μmという
データに略一致している。
【0051】上述した実施例1によれば、ガスタービン
動翼基材中の劣化相の発生状況を推定して劣化状態を把
握することができ、交換、補修の必要性あるいは時期を
知るだけでなく、破壊を未然に防ぐことが可能となる。
【0052】実施例2(図4および図5) 本実施例は請求項2の発明に対応するもので、図4は本
実施例の評価線図(コーティング厚さ/減衰定数マスタ
ーカーブ)の作成手順を示すフローチャートである。
【0053】まず、実機ガスタービン1段動翼と同一の
製作方法により、コーティングの試料(超音波顕微鏡測
定用)を作成する(ステップS401)。このとき、コ
ーティングを溶射するパス数を変化させて、コーティン
グ厚さの異なる試験片を数種作成し、それぞれの切断調
査を行って(ステップS402)、コーティング厚さを
計測する(ステップS403)。
【0054】次に、超音波顕微鏡により作成した試験片
の表面波減衰特性を計測する(ステップS404)。コ
ーティング面上の表面波減衰特性把握が目的であるた
め、計測は溶射されたコーティング面で行う。
【0055】ところで、コーティングは超音波の減衰が
殆どない特性を有するのに対し、基材(Ni基超合金)
は減衰が非常に大きい。したがって、表面波は1波長程
度の深さまでの情報を含むことから、コーティングが厚
い試験片では表面波が基材まで到達せず、減衰の殆どな
いデータが得られる。これに対し、コーティング厚さの
小さい試験片から得られたデータは、基材情報を多く含
むために減衰が大きく検出される。
【0056】計測した表面波減衰特性と、切断調査によ
り得られたコーティング厚さデータとの関係に基づい
て、コーティング厚さ/減衰定数マスターカーブG4
作成する(ステップS405)。
【0057】図5は、コーティング厚さの異なる試験片
で計測したVz曲線を示している。Vz曲線は超音波顕
微鏡プローブ先端近傍において、試料から垂直に反射し
てプローブに入射する波と、試料表面を伝わる表面波が
漏洩してプローブに入射する波とがプローブ内で干渉し
て発生するもので、横軸にプローブと試料との距離z、
縦軸に相対的な超音波の反射強度Vを表している。この
図5から明らかなように、コーティングの厚さによって
Vz曲線の形状が変化している。特に曲線の山と谷との
高低差の違いが顕著に見られ、これは減衰特性が変化し
ていることを意味する。コーティングの厚い方が高低差
が大きく、表面波の減衰が小さい。逆に薄いコーティン
グでは表面波減衰が大きいデータとなっている。
【0058】この理由は前述したコーティングと基材と
の減衰特性の差によるものである。本データは15MH
zの周波数で計測しており、表面(計測面)から約20
0μm下部までの情報を含んでいることから、コーティ
ングの薄い試料(基材情報を多く含む)で、表面波減衰
定数が大きいデータとなった。
【0059】図5から算出した減衰定数とコーティング
厚さとの関係を図にしたのが、図4中に示すコーティン
グ厚さ/減衰定数マスターカーブである。このカーブを
用い、ガスタービン実機動翼芯材のコーティング厚さを
推定した結果、超音波顕微鏡で得た175μmのデータ
に対し、切断調査の結果は165μmで、両者は略一致
した。
【0060】このような実施例2によれば、ガスタービ
ン動翼に耐熱、耐酸化などの目的で施してあるコーティ
ングの厚さを全く非破壊的に知ることができ、実機部材
製造後の品質管理としてのコーティング厚さ評価に適用
できる。
【0061】実施例3 本実施例は請求項3の発明に対応するものである。
【0062】例えばガスタービンの第1段動翼コーティ
ングは、実機運転中に、ガス流によって減肉する。前記
の針状劣化相発生が主にメタル温度の高い部分で生じる
のに対し、減肉はガス流量の大きい部位で発生する。
【0063】減肉が発生するとコーティングの耐酸化性
が低下し、さらに進めば基材に直接燃焼ガスが吹き付け
られることになって翼材の寿命を著しく低下させる。減
肉量を正確に見積って、リコーティングなどの的確な処
置を施すことが翼材保守管理上欠かせないため、減肉量
評価もガスタービン1段動翼コーティングの劣化評価の
対象課題に挙がっている。
【0064】本実施例は、減肉による劣化を非破壊的に
検出する方法であり、図4の手順にて作成したコーティ
ング厚さ評価カーブを用い、定期点検時に計測した実機
ガスタービンの第1段動翼の表面波減衰特性データか
ら、評価時のコーティング厚さを推定し、さらにリコー
ティングの要、不要を決定するものである。
【0065】本実施例によれば、超音波顕微鏡にて表面
波の減衰特性を計測することにより、運転中の高温暴露
によるコーティング層の減肉量を非破壊的に推定するこ
とが可能で、劣化状態を把握して交換、補修の必要性あ
るいは時期を知ることができ、破壊を未然に防ぐことが
可能となる。
【0066】実施例4(図6〜図10) 本実施例は請求項4に対応するものである。
【0067】図6および図7は、本実施例による材質劣
化計測置の超音波プローブの断面および電極構造を示し
ている。
【0068】被検査物41の表面41s に近接して設置
される超音波プローブ42のレンズ面42s は球面を成
している。その表面中心部には高分子圧電振動子43c
が接着されており、その周囲にはリング状の高分子圧電
振動子43s が接着されている。この中心部と周囲のリ
ング状部分とに分割された振動子は、別個の振動子とし
て接着することも可能であり、また高分子圧電振動子の
特徴を生かして電極のみをエッチング等で分割して構成
することも可能である。
【0069】高分子圧電振動子43c および43s の全
面には、振動子から電音媒体44への超音波の伝達効率
を向上させ、且つ振動子の保護を兼ねた音響整合層45
が形成されており、それぞれの振動子に接続されている
リード線46c および46sを介して中心部の振動子4
c と周囲のリング状の電振動子43s とを同時に駆動
すると、レンズ面42s の曲率に応じて円錐状に集束さ
れた超音波ビーム47が放射される。
【0070】図8は、本発明による材質劣化計測置の全
体の構成例を示すブロック図である。超音波プローブ4
2のレンズ面42s 中心部に取り付けられた振動子43
c に接続されている中央部振動子リード線46c は、振
動子における超音波の発生を励振し且つその強度を制御
するための、出力電圧Sc を制御することが可能な超音
波送信器48c に接続されており、さらに受信信号を増
幅するための増幅率を制御可能な増幅器としての超音波
受信器49c にも並列に接続されている。
【0071】また、超音波プローブ42のレンズ面周辺
部に取り付けられたリング状の振動子43s に接続され
ているリード線46s も、レンズ面中心部の振動子から
のリード線46c と同様に、このリング状振動子におけ
る超音波の強度を制御するための出力電圧Ss を制御可
能な超音波送信器48s に接続されており、さらにリン
グ状振動子の受信信号を増幅するための制御可能な超音
波受信器49s に並列に接続されている。
【0072】これら2つの超音波受信器49c および4
s の出力信号は、加算器410において位相加算さ
れ、レンズ面中心部の振動子で受信された信号とレンズ
面周辺部の振動子で受信信号の干渉した信号波形として
出力され、振幅計測器411を介してデータ収集用コン
ピュータ412に記録される。さらに、データ収集用コ
ンピュータ412は、超音波プローブを保持している3
次元走査機構413の動作を制御するとともに、被検査
物に対する超音波プローブの相対的な位置、即ちx,
y,z方向の位置情報も記録し、且つ超音波送信器の出
力や超音波受信機の増幅率等、全体の動作を制御する。
【0073】次に、上記実施例4の動作について図9お
よび図10を用いて説明する。
【0074】超音波振動子で発生した超音波の伝播経路
を説明する図9において、超音波プローブ42のレンズ
面中央部に接着された円形の高分子圧電振動子43c
発生した超音波は伝音媒体44中を伝播し、被検査物4
1に対して垂直に入射するため、そのエネルギーの一部
T は被検査物41の内部へ伝播し、その他のエネルギ
ーUR は伝音媒体44と被検査物41の界面で反射して
逆の経路をたどってレンズ面中央部の円形の振動子43
c で受信され、表面反射波の受信信号Wc として出力さ
れる。
【0075】他方、超音波プローブ42のレンズ面周辺
部に接着されたリング状の高分子圧電振動子43s で発
生した超音波は伝音媒体44中を伝播し、被検査物41
に対して斜めに入射するため、伝音媒体44と被検査物
41の界面で屈折し、臨界角θとなる条件で表面波とし
て被検査物表面41s を伝播する。この表面波は伝音媒
体44中へ常に漏洩超音波を再放出しているが、リング
状振動子43s の中心を挾んで入射側と対称な位置で漏
洩した超音波が漏洩表面波Us として受信され、表面波
の受信信号Ws として出力される。
【0076】上記の表面反射波信号Wc と表面波信号W
s は、図19に示した従来の超音波顕微鏡では一つの振
動子で受信されレンズロッド内で位相加算されるのに対
し、本実施例では別々の振動子43c 、43s で受信さ
れ、それぞれ独立の増幅器で適当な倍率に増幅された後
に、加算器により直接加算して干渉した信号を得る。従
って、材料の減衰特性の違いによる表面反射波信号Wc
と表面波信号Ws 、および、これらから得られるVz曲
線は図10に示すように、減衰の少ない材料においては
(a) のごとく表面反射波信号Wc と表面波信号Ws 両方
の信号ともに明瞭で、Vz曲線も明瞭な極大・極小点を
示すが、減衰の大きな材料においては(b) のごとく表面
波信号Ws が減衰してしまうためにVz曲線は極大・極
小点を示さなくなり、音速を算出することが不可能にな
る。この(b) の信号波形を適切な比率で増幅した結果が
(c) であり、表面反射波信号Wc に対して表面波信号W
sを適切な強度に設定できるため、減衰が大きな材料に
対しても極大・極小点を示すVz曲線を再現することが
可能となる。
【0077】実施例5(図11〜図15) 本実施例は請求項5の発明に対応するものである。
【0078】図11および図12は本実施例の材質劣化
検出装置における超音波プローブの断面および電極構造
を示している。
【0079】被検査物51の表面51s に近接して設置
される超音波プローブ52のレンズ面52s の周辺部に
接着されているリング状の高分子圧電振動子53s は、
振動子そのもの又は電極を分割することにより多数の放
射状の振動子53s1、53s2…53snに分割されてお
り、それぞれにリード線56s1、56s2…56snが接続
されている。
【0080】図13はこの実施例5による材質劣化検出
装置の全体構成を示すブロック図である。超音波プロー
ブのレンズ面中心部に取り付けられた振動子に接続され
ているリード線56c は前記実施例4と同様に、出力電
圧Sc を制御することが可能な超音波送信器58c と、
受信信号を増幅するための増幅率を制御可能な超音波受
信器59c とに並列に接続されている。さらに、レンズ
面周辺部のリング状の部分で、分割して放射状に接着さ
れている多数の振動子のリード線56s1、56s2…56sn
も、出力電圧Ss を制御可能な超音波送信器58s1、5
s2…58snと、これら多数の振動子の受信信号を独立
に増幅するための制御可能な超音波受信器59s1、59
s2…59snとに並列に接続されている。
【0081】また、これら多数の超音波受信器59s1
59s2…59snでは、振動子選択器514からの信号に
より全ての振動子あるいは特定の複数個の振動子が選択
され、それらの出力信号は、レンズ面中心部の振動子か
らの出力信号とともに加算器510において位相加算さ
れ、レンズ面周辺部の選択された振動子の方向にのみ関
与した干渉信号波形として出力され、振幅計測器511
を介してデータ収集用コンピュータ512に記録され
る。さらに、データ収集用コンピュータ512は、3次
元走査機構513、振動子選択器514、超音波送信器
58s1、58s2…58snおよび超音波受信器59s1、5
s2…59sn等の動作を制御するとともに、超音波プロ
ーブのx,y,z方向の位置情報等も記録する。
【0082】次に、上記実施例5の動作について図14
および図15を用いて説明する。
【0083】図14におい振動子選択器により、放射状
に分割された振動子のうち斜線で示すレンズ面中心部の
振動子43c と、リング状振動子を放射状に多数に分割
した振動子53s1、53s2…53snの中でレンズ面中心
を挾んで対向する振動子53sjおよび53sqを選択する
と、表面波の伝播方向を選択して放射状の振動子の方向
に設定することができるため、この方向の音速を計測す
ることが可能となり、振動子の選択を順次切り替えて行
くことにより被検査物表面における音速の異方性を評価
することが可能となる。
【0084】また、図15に示すように全ての振動子を
同時に選択すれば、通常の超音波顕微鏡における点集束
レンズを用いるプローブと同様に、被検査物表面近傍の
超音波伝播特性を反映した画像を描くために用いること
ができる。
【0085】実施例6(図16〜図18) 本実施例は請求項6の発明に対応するものである。
【0086】図16は本実施例による超音波プローブの
電極構造を示している。
【0087】超音波プローブ62のレンズ面62s に接
着されている円形の高分子圧電振動子は、振動子そのも
の又は電極を分割することにより、中心から外周まで連
続した多数の放射状の振動子63s1、63s2…63sn
分割されており、それぞれの振動子は実施例5の場合と
同様に、個々に独立した超音波送信器および超音波受信
器に接続されている。
【0088】従って、図17に示すように、対向する放
射状の振動子を選択的に動作させれば、この方向の表面
波伝播速度を計測することが可能となり、これを順次切
り替えて用いることにより、被検査物表面における音速
の異方性を評価することが可能となる。
【0089】また、図18に示すように、全ての振動子
を同時に選択して動作させれば、通常の超音波顕微鏡に
おける点集束レンズを用いるプローブと同様に、被検査
物表面近傍の超音波伝播特性を反映した画像を描くため
に用いることができる。
【0090】
【発明の効果】以上で詳述したように、請求項1の発明
に係る高温構造部材の劣化検出方法によれば、高温で使
用される構造部材について、超音波顕微鏡により損傷評
価部位上の表面波音速を計測し、予めデータベースとし
て実験的に求めてある表面波音速と、表層部の劣化相形
状の関係に照らして、劣化相の発生状況を推定すること
ができる。
【0091】請求項2の発明に係る高温構造部材の劣化
検出方法によれば、高温で使用される構造部材に耐熱、
耐酸化などの目的で被覆してあるコーティングの厚さ
を、コーティングと基材との超音波減衰特性の差を利用
して、表面波減衰特性を計測し、予めデータベースとし
て実験的に求めてあるコーティング厚さと表面波減衰特
性との関係に照らして、コーティング厚さを推定するこ
とができる。
【0092】請求項3の発明に係る高温構造部材の劣化
検出方法によれば、高温で使用される構造部材に耐熱、
耐酸化などの目的で被覆してあるコーティングに、例え
ば燃焼ガスが吹き付けられることにより起こるコーティ
ング厚さの減肉量を評価し、部材の劣化状態を把握する
ことができる。
【0093】上記効果は、いずれも従来切断調査により
実施していた劣化評価を、超音波顕微鏡により全く非破
壊的に実施するもので、寿命予測やリコーティング時期
の予測なども非破壊的手段で可能となり、切断調査のた
めに交換する部品を必要としないだけでなく、メンテナ
ンスも容易となり、保守管理に要するコストが大幅に削
減できる。
【0094】請求項4から6までの発明に係る高温構造
部材の劣化検出装置によれば、超音波の減衰が大きな材
料においても極大点・極小点の明瞭なVz曲線を得るこ
とができ、表面波音速を計測することができる。さら
に、材質の異方性が存在する被検査物や材質劣化に伴う
方向性を持った析出物の生成や結晶成長が生じている被
検査物の表面波音速を短時間で精度良く計測することが
可能となり、また、従来の超音波顕微鏡と同様の被検査
物表面近傍の超音波伝播特性を反映した画像を描くこと
もできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1を示すもので、表面波音速か
ら基材中に発生した針状劣化相の長さを推定する劣化相
長/音速マスターカーブの作成手順を示す図。
【図2】上記実施例1におけるコーティング層劣化のメ
カニズムを示す図。
【図3】上記実施例1における針状劣化相長さとコーテ
ィング施工試料の強度の関係を表す劣化相長/強度マス
ターカーブの作成手順を示す図。
【図4】本発明の実施例2を示すもので、表面波減衰定
数からコーティング厚さを推定するコーティング厚さ/
減衰定数マスターカーブ3の作成手順を示す図。
【図5】上記実施例2におけるコーティング厚さの違う
試験片で計測したV(z)曲線を示す図。
【図6】本発明の実施例4を示すもので、材質劣化計測
装置の実施例に用いられる振動子をレンズ中心部とレン
ズ周辺部に分割した超音波プローブの縦断面図。
【図7】上記実施例4における振動子構造を示す図。
【図8】上記実施例4における超音波プローブを用いる
材質劣化計測装置全体の構成を示すブロック図。
【図9】上記実施例4における超音波プローブを用いる
場合の超音波の伝播を説明する図。
【図10】(a),(b),(c)は上記実施例4にお
ける超音波プローブを用いる場合に得られる出力信号を
示す図。
【図11】本発明の実施例5を示すもので、材質劣化計
測装置の実施例に用いられる振動子をレンズ中心部とレ
ンズ周辺部に分割し、さらにレンズ周辺部の振動子を放
射状に分割した超音波プローブの縦断面図。
【図12】上記実施例5における振動子構造を示す図。
【図13】上記実施例5における超音波プローブを用い
る材質劣化計測装置全体の構成を示すブロック図。
【図14】上記実施例4における超音波プローブを用
い、音速異方性を計測する場合の振動子の選択状況を説
明する図。
【図15】上記実施例5における超音波プローブを用
い、画像を計測する場合の振動子の選択状況を説明する
図。
【図16】本発明の実施例6を示すもので、材質劣化計
測装置の実施例に用いられる振動子の中心から周辺に向
かって放射状に分割した超音波プローブの振動子構造を
示す図。
【図17】上記実施例6における超音波プローブを用
い、音速異方性を計測する場合の振動子の選択状況を説
明する図。
【図18】上記実施例6における超音波プローブを用
い、画像を計測する場合の振動子の選択状況を説明する
図。
【図19】従来の超音波顕微鏡のプローブと超音波の伝
播および出力信号を説明する図。
【図20】従来の超音波顕微鏡で超音波の減衰が少ない
材料を計測した場合のVz曲線を示す図。
【図21】従来の超音波顕微鏡に用いる点集束レンズと
音速測定方向を示す図。
【図22】従来の超音波顕微鏡に用いる線集束レンズと
音速測定方向を示す図。
【図23】従来の超音波顕微鏡で点集束レンズを用い、
音速測定方向を限定するためのマスクの構造を示す図。
【符号の説明】
20 酸化保護皮膜 21 窒化物 22 内部酸化層 23 基材 24 劣化相 25 き裂 41 被検査物 41s 検査物表面 42 超音波プローブ 42s 超音波プローブレンズ 43c レンズ面中央部振動子 43s レンズ面周辺部振動子 44 伝音媒体 45 音響整合層 46c 中央部振動子リード線 46s 周辺部振動子リード線 47 超音波ビーム 48c 中央部振動子用超音波送信器 48s 周辺部振動子用超音波送信器 49c 中央部振動子用超音波受信器 49s 周辺部振動子用超音波受信器 51 被検査物 51s 検査物表面 52 超音波プローブ 52s 超音波プローブレンズ 53c レンズ面中央部振動子 53s1〜53sn レンズ面周辺部振動子 54 伝音媒体 55 音響整合層 56c 中央部振動子リード線 56s1〜56sn 周辺部振動子リード線 57 超音波ビーム 58c 中央部振動子用超音波送信器 58s1〜58sn 周辺部振動子用超音波送信器 59c 中央部振動子用超音波受信器 59s1〜59sn 周辺部振動子用超音波受信器 410 加算器 411 振幅計測器 412 データ収集用コンピュータ 413 3次元走査機構 510 加算器 511 振幅計測器 512 データ収集用コンピュータ 513 3次元走査機構

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高温で使用される構造部材について、超
    音波顕微鏡により損傷評価部位上の表面波音速を計測
    し、予めデータベースとして実験的に求めた表面波音速
    と、表層部の劣化相形状との関係に基づいて劣化相の発
    生状況を推定し、これにより劣化状態を把握することを
    特徴とする高温部材の劣化検出方法。
  2. 【請求項2】 高温で使用される構造部材に耐熱用、耐
    酸化用その他の目的で被覆されたコーティングの厚さに
    ついて、コーティングと基材との超音波減衰特性の差を
    用いて表面波減衰特性を計測し、予めデータベースとし
    て実験的に求めてあるコーティング厚さと表面波減衰特
    性との関係に基づいてコーティング厚さを推定すること
    を特徴とする高温部材の劣化検出方法。
  3. 【請求項3】 高温で使用される構造部材に耐熱用、耐
    酸化用その他の目的で被覆したコーティングについて、
    そのコーティング厚さの減肉量を、請求項2に記載のコ
    ーティング厚さ推定方法を用いて評価し、部材の劣化状
    態を把握することを特徴とする高温部材の劣化検出方
    法。
  4. 【請求項4】 超音波送受信部を備え、球面状のレンズ
    面を有する超音波プローブと、このプローブのレンズ面
    の中心部に貼装された円形の高分子圧電振動子およびそ
    の周辺部に貼装されたリング状の高分子圧電振動子また
    は中心の円形部分と周辺のリング状部分との電極を分割
    した高分子圧電振動子と、これら各振動子または電極ご
    とに独立に接続された超音波出力を制御する超音波送信
    器と、各振動子ごとに独立に接続された増倍率を制御す
    ることが可能な超音波受信器と、これらの振動子により
    得られた受信超音波信号を加算処理する加算器とを備え
    たことを特徴とする高温部材の劣化検出装置。
  5. 【請求項5】 超音波送受信用のレンズ面に高分子圧電
    振動子を貼装した超音波プローブおよび超音波送受信部
    を備え、前記レンズ面に貼装した高分子圧電振動子を分
    割するか、または高分子圧電振動子の電極を分割するこ
    とにより、レンズ面中心部に円形の振動子部分を構成す
    るとともに、その周囲にリング状の振動子部分を構成
    し、前記リング状の振動子部分を多数の放射状の領域に
    分割し、その全ての振動子に、超音波出力の制御が可能
    な超音波送信器と増倍率の制御が可能な超音波受信器と
    を接続し、これら全ての振動子の動作を制御して全ての
    振動子あるいは指定した複数個の振動子の出力信号を選
    択する振動子選択制御回路を設けるとともに、選択され
    た複数個の振動子の出力信号を加算処理するための加算
    器を設けたことを特徴とする請求項4記載の高温部材の
    劣化検出装置。
  6. 【請求項6】 超音波送受信用のレンズ面に高分子圧電
    振動子を貼装した超音波プローブおよび超音波送受信部
    を備え、前記レンズ面に貼装した高分子圧電振動子を分
    割するか、または高分子圧電振動子の電極を分割するこ
    とにより、円形の振動子を中心に通る線分で多数の放射
    状に分割し、これら全ての振動子それぞれに超音波送受
    信器と増倍率を制御することが可能な超音波受信器とを
    接続し、これら全ての振動子の動作を制御して全ての振
    動子あるいは指定した複数個の振動子の出力信号を選択
    する振動子選択制御回路を設けるとともに、選択された
    複数個の振動子の出力信号を加算処理するための加算器
    を設けたことを特徴とする請求項4記載の高温部材の劣
    化検出装置。
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