JPH07310170A - 耐酸化性および耐摩耗性に優れた硬質皮膜 - Google Patents
耐酸化性および耐摩耗性に優れた硬質皮膜Info
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- JPH07310170A JPH07310170A JP10015194A JP10015194A JPH07310170A JP H07310170 A JPH07310170 A JP H07310170A JP 10015194 A JP10015194 A JP 10015194A JP 10015194 A JP10015194 A JP 10015194A JP H07310170 A JPH07310170 A JP H07310170A
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Abstract
母材との密着性をも改善した硬質皮膜を提供する。 【構成】 TiN皮膜表面にAlをイオン注入し、前記
皮膜の表層部にTiとAlの複合窒化物層を形成したも
のである。
Description
工,穿孔加工等の加工に使用される工作工具の表面コー
ティング材として有用な硬質皮膜に関し、特に耐酸化性
および耐摩耗性を改善すると共に、母材との密着性にも
優れた硬質皮膜に関するものである。
耗性部材を製作する場合は、耐摩耗性等の性能をより優
れたものとする目的で、耐摩耗性部材の表面にTi等の
窒化物や炭化物よりなる耐摩耗性皮膜を形成することが
行なわれている。
(CVD法)や物理的蒸着法(PVD法)によるTiN
やTiCが汎用されており、特に高温耐酸化性(耐熱
性)の優れたTiN膜が広く実用化されている。即ちT
iNはTiCより耐熱性に優れている為、切削時の加工
熱や摩擦熱によって昇温する工具すくい面をクレータ摩
耗から保護する機能を発揮する。しかしTiNはTiC
に比べて低硬度であるので被削材と接する逃げ面に発生
するフランク摩耗に対してはむしろ脆弱であり、フラン
ク摩耗に対してはTiCの方が高い耐久性を示す。但
し、TiNは上記欠点にも拘らず、基材に対する密着性
に優れており、且つ基材の種類如何に関わらず被覆膜を
形成し易いという特徴があるので、これらの点が評価さ
れて各種工作工具としてはイオンプレーティング方法に
よってTiN膜を基材表面に被覆したものが多く使用さ
れている。
ており、切削条件がより過酷化する傾向にある為、上記
した様な従来のTiN皮膜程度ではこの要請に応えきれ
なくなっている。そこで耐熱性や硬度が更に優れた皮膜
として、TiNにTiやN以外の第3若しくは第4の元
素を添加することが試みられており、前記CVD法やP
VD法によりTiとAlの複合窒化物固溶体や複合炭化
物固溶体の皮膜が提案されている(特公平4−5364
2号)。
様な皮膜では、TiN皮膜に比べて母材表面に対する密
着性が十分でないために、過酷な切削条件下では却って
皮膜剥離が発生しやすく、この様な被膜を母材に形成し
た切削工具を用いても、必ずしも十分満足する切削性能
を示さないのが現状である。本発明はこうした事情に着
目してなされたものであって、その目的は、耐酸化性お
よび耐摩耗性を改善すると共に、母材との密着性をも改
善した硬質皮膜を提供することにある。
発明とは、TiN皮膜表面にAlをイオン注入し、前記
皮膜の表層部にTiとAlの複合窒化物層を形成したも
のである点に要旨を有する硬質皮膜である。上記硬質皮
膜において、Alのイオン注入量は、5×1015〜5×
1017イオン/cm2 であることが好ましい。また膜厚
は、0.1μm以上であることが好ましい。
化によって工具すくい面に生じるクレータ摩耗と、被削
材との機械的な擦り摩耗によって工具逃げ面に生じるフ
ランク摩耗がある。そしてクレータ摩耗を低減する上で
必要な特性は、耐熱性および耐酸化性であり、フランク
摩耗を低減する上で必要な特性は高硬度であるというこ
とができる。従って、表面被覆切削工具を更に高性能化
するためには、上記の様な諸特性を全て満足する硬質皮
膜を工具母材表面に形成してやる必要がある。
において昇温すると、800℃までは表面に薄いAl酸
化皮膜を形成し、これが保護皮膜となって酸化が抑制さ
れ、高温での耐酸化性に優れたものとなる。また硬度に
関しては、ビッカース硬度(Hv)が約2500kg/
mm2 と高い。しかしながら(Ti,Al)N皮膜は、
内部応力が大きいので、時として母材との剥離が発生す
ることがある。そのために、これらの皮膜には、硬度や
耐熱性は勿論のこと、母材との密着性においても優れて
いる必要がある。
iNよりも硬度や耐熱性に優れた(Ti,Al)N皮膜
に着目し、特にこの様な形態の皮膜における母材との密
着性を向上させるべく様々な角度から検討を重ねた。そ
の結果、基本的に密着性が良好なTiN皮膜表面に、高
運動エネルギーによる非熱平衡で且つ低温のプロセスで
あるイオン注入法を適用して、Alをイオン注入すれ
ば、TiNの良好な密着性を維持したままTiとAlの
複合窒化物層が形成でき、この層は上記(Ti,Al)
N皮膜の様な優れた硬度や耐熱性をも発揮するものであ
ることが判明し、本発明を完成した。
オン注入してやれば、TiN皮膜は勿論のこと従来の
(Ti,Al)N皮膜よりも酸化開始温度を高くするこ
とができ、且つ硬度も上昇させることができる。またこ
れらの皮膜は、密着性が良いというTiN皮膜本来の特
性も損なうことがないので、剥離の問題も生じない。尚
上記複合窒化物層は、濃度的に厚み方向に傾斜組織を形
成することになる。
i,Al)N皮膜よりも密着性の良好なTiN皮膜へA
lをイオン注入を行ない、TiN皮膜表面を改質してT
iとAlの複合窒化物を形成した硬質皮膜である。そし
て本発明の硬質皮膜を工具母材の表面に形成すると、切
削時にAl2 O3 保護皮膜が生成されると共に、密着性
はTiN皮膜と同等であるので、イオンプレーティング
法スパッタ法等による(Ti,Al)N皮膜よりも、工
具寿命が大幅に向上することになる。
面に形成するに当たっては、下記の手順に従えば良い。
まず超硬合金や高速度鋼等の材質からなるドリル、エン
ドミル、チップ等の工具母材表面に、イオンプレーティ
ング法やスパッタリング法等で密着性の良いTiN皮膜
を被覆した後、その皮膜へAlのイオン注入を行ない、
表層部にTiとAlの複合窒化物層を形成する。
量については、特に限定するものではないが、5×10
15〜5×1017イオン/cm2 程度が好ましい。即ちA
lイオン注入量が5×1015イオン/cm2 未満では、
Alの注入量が不十分であり、TiN皮膜の改質効果が
発揮されず、膜特性がTiNと殆ど変わらない。またA
lイオン注入量が5×1017イオン/cm2 を超える
と、皮膜がアモルファス化し、耐摩耗性が低下する。尚
Alイオン注入量の好ましい範囲は、1×1016〜1×
1017イオン/cm2 程度である。
形成するときの膜厚については、特に限定されるもので
はないが、少なくとも0.1μm以上であることが好ま
しい。即ち0.1μm未満では、Alイオン注入時のス
パッタで膜が殆どなくなってしまう。尚膜厚の好ましい
下限は、1μm程度である。一方膜厚の上限についても
特に限定されるものではないが、あまり厚くしてもその
効果が飽和するばかりか、生産性も低下するので、10
μm以下が好ましい。尚膜厚のより好ましい上限は、5
μm程度である。
下記の実施例に限定されるものではなく、前・後記の趣
旨に徴して適宜設計変更することは本発明の技術的範囲
に含まれる。
00℃に予備加熱した後、蒸発源よりTiを蒸発させる
と共に、N2 ガスを導入して5×10-5〜4×10-6T
orrの雰囲気とし、且つ前記チップに−100Vの電
圧を印加し、種々の膜厚のTiN皮膜の成膜を行なっ
た。
1015〜5×1017イオン/cm2,70KeVの条件で
Alのイオン注入を行ない、下記表1に示す本発明材
(No.1〜9)を製作した。また従来例として上記と同
じ条件で製作したTiN皮膜を被覆した超硬チップ(N
o.10)と、蒸発源からTiとAlを同時に蒸発し、
N2 導入圧5×10-5〜4×10-6Torrの条件で
(Ti,Al)N皮膜を被覆した超硬チップ(No.1
1)も製作した。
供したところ、下記表2に示す結果が得られた。 〈切削条件〉 被切材 :S50C 切削速度:170m/min 送り速度:0.2mm/rev 切り込み:1mm 切削時間:15分、30分
のTiN皮膜(No.10)は、密着性は良好である
が、大きく摩耗していることが分かる。また超硬チップ
とも密着性の悪い(Ti,Al)N皮膜(No.11)
は、切削時間が30分で刃先部分に剥離が生じていた。
これに対し本発明の実施例のもの(No.1〜9)は、従
来のTiN皮膜や(Ti,Al)N皮膜よりも優れた耐
摩耗性を示していることがわかる。
て、150℃に予備加熱した後、蒸発源よりTiを蒸発
させると共にN2 を導入して7×10-3Torrの雰囲
気とし、且つ基材に−50Vの電圧を印加して膜厚3μ
mのTiN皮膜を形成した。
1017イオン/cm2 、70KeVの条件でAlイオン
注入を行ない、下記表3に示す本発明の皮膜(No.12
〜16)を製作した。また従来例として、上記と同じ条
件で製作したTiN膜を被覆した白金板(No.17)
と、蒸発源よりTiとAlを蒸発し、N2 導入圧7×1
0-3Torrの条件下で(Ti,Al)N皮膜を被覆し
た白金板(No.18)も製作した。
験に供したところ、表3に併記する結果が得られた。 <酸化条件> 昇温範囲:室温〜1300℃ 昇温速度:3℃/min 雰囲気 :乾燥空気 流量 :50cc/min
600℃、(Ti,Al)N皮膜では800℃で酸化が
始まるのに対して、Alのイオン注入を行なった実施例
では、酸化開始温度を高め、耐酸化性を向上させること
ができた。
来のTiN皮膜や(Ti,Al)N皮膜における耐酸化
性および耐摩耗性を更に向上させると共に、密着性にも
優れた硬質皮膜が得られた。
Claims (3)
- 【請求項1】 TiN皮膜表面にAlをイオン注入し、
前記皮膜の表層部にTiとAlの複合窒化物層を形成し
たものであることを特徴とする耐酸化性および耐摩耗性
に優れた硬質皮膜。 - 【請求項2】 Alのイオン注入量が、5×1015〜5
×1017イオン/cm2 である請求項1に記載の硬質皮
膜。 - 【請求項3】 膜厚が0.1μm以上である請求項1ま
たは2に記載の硬質皮膜。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10015194A JPH07310170A (ja) | 1994-05-13 | 1994-05-13 | 耐酸化性および耐摩耗性に優れた硬質皮膜 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10015194A JPH07310170A (ja) | 1994-05-13 | 1994-05-13 | 耐酸化性および耐摩耗性に優れた硬質皮膜 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07310170A true JPH07310170A (ja) | 1995-11-28 |
Family
ID=14266326
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10015194A Pending JPH07310170A (ja) | 1994-05-13 | 1994-05-13 | 耐酸化性および耐摩耗性に優れた硬質皮膜 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07310170A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE19615534C1 (de) * | 1996-04-19 | 1998-01-15 | Dresden Ev Inst Festkoerper | Beschichteter Verschleißkörper |
JP2002542949A (ja) * | 1999-04-22 | 2002-12-17 | シルバーブルック リサーチ プロプライエタリー リミテッド | 作動装置の構成部材 |
-
1994
- 1994-05-13 JP JP10015194A patent/JPH07310170A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE19615534C1 (de) * | 1996-04-19 | 1998-01-15 | Dresden Ev Inst Festkoerper | Beschichteter Verschleißkörper |
JP2002542949A (ja) * | 1999-04-22 | 2002-12-17 | シルバーブルック リサーチ プロプライエタリー リミテッド | 作動装置の構成部材 |
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A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20031215 |
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