JPH07249498A - 中性子発生装置 - Google Patents

中性子発生装置

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JPH07249498A
JPH07249498A JP5419794A JP5419794A JPH07249498A JP H07249498 A JPH07249498 A JP H07249498A JP 5419794 A JP5419794 A JP 5419794A JP 5419794 A JP5419794 A JP 5419794A JP H07249498 A JPH07249498 A JP H07249498A
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reaction tank
beam duct
vacuum
entrance hole
charged particles
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JP5419794A
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Yuichi Hoshi
有一 星
Isamu Ono
勇 大野
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IHI Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ターゲット物質が沸騰してしまうことを防止
し得て中性子を安定に発生させ得る中性子発生装置を提
供する。 【構成】 荷電粒子ビームdをビームダクト7から入射
孔8を通して反応槽4に入射させてターゲット物質1に
打ち込み、そこで核反応を生ぜしめて中性子ビームnを
発生させる。ビームダクトおよび反応槽からの真空排気
は、ビームダクトに接続した真空排気手段9により行な
う。入射孔にはオリフィスパイプ10を接続しておき、
そのオリフィスパイプを通して荷電粒子ビームを入射さ
せるとともに、オリフィスパイプの排気抵抗により反応
槽とビームダクトとの間に差圧が生じるようにし、反応
槽内の真空度をビームダクト内の真空度を低く設定す
る。また、オリフィスパイプ10に代えて、複数のオリ
フィス板により差動排気構造としてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種物質に中性子を照
射してその劣化試験等を行なう場合等に用いられる中性
子発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の装置としては、液体リチウムを
ターゲット物質としてそれに重陽子を打ち込み、そこで
生じる核反応によって中性子を発生させるようにしたも
のが知られている。すなわち、1個の陽子と1個の中性
子を有する重水素の原子核である重陽子を粒子加速器に
より加速して質量数7のリチウムに打ち込み、それによ
って生じる核反応によりリチウムを質量数8のベリリウ
ムに変換するとともに1個の中性子を放出させるのであ
る。なお、重陽子を質量数7のリチウムに打ち込むと質
量数7のベリリウムに変換されて2個の中性子が放出さ
れるような核反応や、重陽子を質量数6のリチウムに打
ち込むと質量数7のベリリウムに変換されて1個の中性
子が放出されるような核反応も起こり得る。
【0003】図5および図6はそのような原理に基づい
て中性子を発生させる装置の概要を示すものである。こ
の装置は、融点温度(181℃)以上、通常は220℃
程度に加熱して液化させた液体リチウム1を、流入管路
2、ストレーナ3を経て反応槽4へ連続的に供給し、そ
の反応槽4内に設けたノズル5によって液体リチウム流
を絞り込みつつ膜状態で流下させて流出管6を経て取り
出すとともに、粒子加速器(図示略)により加速した重
陽子ビームdを打ち込むためのビームダクト7を反応槽
4の側部に接続し、そのビームダクト7から入射孔8を
通して重陽子ビームdを反応槽4内に入射させるように
したものである。
【0004】この装置では、ビームダクト7に接続して
いる真空ポンプ9によりビームダクト7およびそれに連
通している反応槽4内から真空引きを行なってそれらの
内部をたとえば1×10-6Torr程度の真空とした状態
で、ノズル5により絞り込まれた液体リチウム流に対し
て重陽子ビームdを打ち込む。これにより、重陽子ビー
ムdが打ち込まれた点において上記の核反応が生じて中
性子ビームnが放射され、放射された中性子ビームnは
重陽子ビームdの軌道の延長線上を中心とする所定の範
囲に分布した状態で反応槽4の前方に出射するので、反
応槽4の前方位置に試験体を配置しておいてその試験体
に対して中性子ビームnを照射し、各種の試験を行なう
のである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
な装置においては、液体リチウム1に重陽子ビームdを
打ち込むことによって核反応が生じる確率は極めて低い
ものであり、打ち込まれた重陽子ビームdの95%以上
は核反応を生じることなくそのまま液体リチウム1を通
過してしまうものである。そして、未反応の重陽子ビー
ムdの持つ運動エネルギは液体リチウム1を通過する際
に熱エネルギに変り、その熱エネルギにより液体リチウ
ム1の表層部が局所的に過熱してしまい、沸点温度(大
気圧下においては1,340℃程度であるが、反応槽4内の
真空度が1×10-6Torr程度とされた場合においては30
0℃程度である)を越えてしまって沸騰してしまうこと
があるが、液体リチウム1が沸騰してしまうと以下のよ
うな問題が生じて中性子ビームnを安定に発生させるこ
とができないものであった。
【0006】すなわち、液体リチウム1が沸騰してしま
うと、膜状態で流下していく液体リチウム流が乱されて
しまい、その結果、発生する中性子ビームnの分布が異
常となったり、膜の厚みが薄くなって重陽子ビームdが
反応槽4の壁面に直接的に照射されることにより壁面が
損傷してしまうことがある。また、蒸発したリチウムが
反応槽4内の真空度を著しく悪化させるので重陽子ビー
ムdのエネルギを減少させたりその軌道を歪めてしまう
ことがあるし、さらには、蒸発したリチウムがビームダ
クト7を通して加速器に流れ込んで加速器に対しても悪
影響を及ぼしてしまうことがある。
【0007】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、ターゲット物質が沸騰してしまうことを防止し得て
中性子を安定に出射させ得る有効な装置を提供すること
を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、液体状のター
ゲット物質に対して加速した荷電粒子を打ち込むことに
よって、それらターゲット物質と荷電粒子とによる核反
応により中性子を発生させる構成の装置であって、前記
ターゲット物質を膜状態で流下させるための反応槽と、
該反応槽に接続されてその接続部に設けられている入射
孔を通して前記荷電粒子を反応槽内に入射させるための
ビームダクトと、該ビームダクトに接続されていてこの
ビームダクトおよび前記入射孔を通して反応槽から真空
排気を行なうための真空排気手段とを具備し、前記入射
孔には、前記荷電粒子を通過させ得る径寸法とされてい
るとともに反応槽内とビームダクト内に差圧を保持し得
る長さ寸法とされたオリフィスパイプを接続してなるこ
とを特徴とするものである。そこで、前記オリフィスパ
イプは、その先端を前記入射孔に接続した状態で前記ビ
ームダクト内に設けることが考えられるが、入射孔を挿
通させてその中間部を入射孔に接続することでビームダ
クトと反応槽に跨がるように設けることでも良い。ある
いは、前記のオリフィスパイプおよび真空排気手段に代
えて、前記荷電粒子を通過させ得る径寸法の入射孔がそ
れぞれ設けられ前記ビームダクトを複数の空間に区画す
る複数のオリフィス板と、前記複数の空間の各々に接続
されて前記反応槽と離間した空間側から該反応槽側に向
けて段階的に真空度を低下させるように各空間内もしく
は前記入射孔を通して前記反応槽内を真空排気するため
の複数の真空排気手段を具備することもできる。また、
前記ターゲット物質としては液体リチウムを用いるとと
もに、前記荷電粒子としては重陽子を用いることが一般
的である。
【0009】
【作用】本発明の装置では、荷電粒子を反応槽に入射さ
せるための入射孔にオリフィスパイプを接続して、荷電
粒子をそのオリフィスパイプの内側を通して反応槽に入
射させる。また、ビームダクトに接続した真空排気手段
によってビームダクト内から真空排気を行なうとともに
上記オリフィスパイプを通して反応槽内からも真空排気
を行なう。これにより、オリフィスパイプによる排気抵
抗によって反応槽内の真空度はビームダクト内の真空度
より自ずと低下する。換言すれば、反応槽内の圧力はビ
ームダクト内の圧力より自ずと高くなる。そして、オリ
フィスパイプの径寸法や長さ寸法を荷電粒子の入射に支
障を来さない範囲内で適宜調節することでその排気抵抗
を調節することができ、それによってビームダクト内と
反応槽内の差圧を自由に調節できるから、反応槽内の真
空度をビームダクト内の真空度より低く設定する限りに
おいて所望の真空度に自由に設定できることになる。そ
こで、反応槽内の真空度を核反応が支障なく生じる範囲
内で従来より低く設定すれば、反応槽内におけるターゲ
ット物質の沸点温度を上昇させることができ、その沸騰
を抑制し得ることになる。また、上記オリフィスパイプ
に代えてオリフィス板を用いた場合、複数の真空排気手
段を用いて複数のオリフィス板で区画された各空間の真
空排気を行なうと、各オリフィス板の排気抵抗によりビ
ームダクト側から反応槽側に向けて各空間毎に真空度が
段階的に低下していく。すなわち、連接する各空間およ
び反応槽が差動排気構造をなすことにより真空度が段階
的に低下していく。そして、オリフィス板の入射孔の径
寸法、厚さ寸法、枚数、または各真空排気手段の排気量
を適宜調節することで各空間の真空度をそれぞれ個別に
設定でき、ひいては反応槽内の真空度を自由に設定でき
ることになる。したがって、上記と同様にターゲット物
質の沸騰を抑制することができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の第1の実施例を図1を参照し
て説明する。図1は本実施例の中性子発生装置の概略構
成を示す側断面図であるが、図5および図6に示した従
来のものと共通の部分には同一符号を付して詳細な説明
は省略する。本実施例の装置の基本構成は、図5および
図6に示したものと同様に、反応槽4内においてターゲ
ット物質である液体リチウム1を膜状態で流下させつ
つ、ビームダクト7から入射孔8を通して反応槽4内に
重陽子ビームdを入射させることにより、その重陽子ビ
ームdを液体リチウム1に打ち込んで核反応を生ぜし
め、中性子ビームnを反応槽4の前方に出射させるとい
うものである。
【0011】そして、上述した従来の装置においては、
ビームダクト7に接続されている真空ポンプ9によって
ビームダクト7から真空排気を行なうとともに、反応槽
4からの真空排気は入射孔8を通して直接的に行なうこ
とにより、ビームダクト7内および反応槽4内をいずれ
も1×10-6Torr程度の同等の真空度に維持するように
していたのであるが、本実施例の装置においては、図1
に示すようにオリフィスパイプ10を入射孔8に接続
し、反応槽4からの真空排気はそのオリフィスパイプ1
0を通して行なうようにしている。
【0012】上記のオリフィスパイプ10は、断面が円
形とされ、両端が開放された単なるパイプ材であって、
その素材としてはたとえばステンレスが好適に用いら
れ、その肉厚はたとえば3mm程度とすることが良い。
そして、本実施例においては、オリフィスパイプ10
は、ビームダクト7内においてそのビームダクト7と同
軸状態で配置されてその先端が入射孔8に接続されてお
り、反応槽4への重陽子ビームdの入射はそのオリフィ
スパイプ10を通して行なわれるようになっている。し
たがって、オリフィスパイプ10の内径寸法は重陽子ビ
ームdの入射に支障を来さないような寸法に設定されて
いる。なお、オリフィスパイプ10の断面形状は必ずし
も円形に限るものではなく、重陽子ビームdの広がりの
状態等を勘案してたとえば横方向に若干膨らんだレース
トラック形や楕円形の断面としても良い。
【0013】上記のようにオリフィスパイプ10を通し
て反応槽4から真空排気を行なうことにより、本装置に
おいてはオリフィスパイプ10の排気抵抗によってビー
ムダクト7内と反応槽4内とには自ずと差圧が生じ、反
応槽4内の真空度はビームダクト7内の真空度より自ず
と低くなる(圧力が高くなる)ものである。そして、オ
リフィスパイプ10の排気抵抗はその径寸法および長さ
寸法によって決定されるものであり、径寸法を小さくす
るほど、また長さ寸法を大きくするほど、排気抵抗が増
大して(コンダクタンスが低下して)その前後の差圧が
大きくなるから、それらを調節することで反応槽4とビ
ームダクト7との間に所望の差圧を確保できることにな
り、それ故、本装置では反応槽4内の真空度をビームダ
クト7内の真空度に比して低下させる限りにおいて所望
の真空度に設定できるものとなっている。
【0014】そして、本実施例の装置においては、ビー
ムダクト7内の真空度は従来と同様に1×10-6Torr程
度に維持するのであるが、上記オリフィスパイプ10の
径寸法および長さ寸法を調節してその排気抵抗を調節す
ることにより、反応槽4内の真空度をたとえばビームダ
クト7内の真空度に比して102倍程度低下させた1×
10-4Torr程度に設定するようにしている。この場合、
オリフィスパイプ10の径寸法は、上述したように重陽
子ビームdの通過に支障が生じないように自ずと限界が
あって余り小さくすることができないから、上記のよう
な排気抵抗の調節は主としてオリフィスパイプ10の長
さ寸法を調節することで行なうことが良い。
【0015】上記構成の装置にあっては、入射孔8に所
定径寸法、所定長さ寸法のオリフィスパイプ10を接続
することのみで反応槽4内の真空度を低下させることが
でき、したがって、反応槽4内における液体リチウム1
の沸点温度を上昇せしめてその沸騰を抑制できるもので
ある。例えば、上記のように反応槽4内の真空度を1×
10-4Torr程度に設定した場合には、反応槽4内におけ
る液体リチウム1の沸点温度は400℃程度となり、真
空度がビームダクト7内と同等の1×10-6Torr程度に
設定されていたために沸点温度が300℃程度であった
従来の場合に比して100deg程度も上昇することにな
り、その分、液体リチウム1の沸騰を十分に防止できる
ものとなる。
【0016】そして、本装置は、従来の装置に対して単
なるパイプ材であるオリフィスパイプ10を入射孔8に
接続した構成のものであって他に格別な装置類や制御機
構等は一切不要であるので、従来のものに比して設備費
や運転費の大幅な増大を招くようなことはなく、極めて
有効なものである。
【0017】なお、図1に示しているように、オリフィ
スパイプ10の内径寸法をD(円形以外の場合は等価径
寸法)、長さをL、コンダクタンスをCとすると、 C=K・D3/L(Kは定数)……(1) の関係が成立つ。また、真空ポンプ9の排気速度をS、
ビームダクト7内の真空度をP、反応槽4内の真空度を
0とすると、 S・P=C・(P0−P)……(2) の関係が成立つ。したがって、これら両式から、反応槽
4を所望の真空度P0とするに必要なオリフィスパイプ
10の内径寸法Dや長さ寸法Lを演算により容易に決定
することができる。
【0018】ところで、上記実施例ではオリフィスパイ
プ10の全体をビームダクト7内に配置してその先端を
入射孔8に接続するようにしたが、例えばオリフィスパ
イプ10の所要長さが十分に長くなるような場合等にお
いては、第2の実施例として図2に示すように、オリフ
ィスパイプ10を入射孔8に挿通させてその中間部を入
射孔8に対して接続することにより、オリフィスパイプ
10をビームダクト7と反応槽4に跨がるような形態で
取り付けるようにしても良い。
【0019】以下、本発明の第3の実施例を図3および
図4を参照して説明する。図3は本実施例の中性子発生
装置の概略構成を示す側断面図であり、反応槽4および
ビームダクト7からなる基本構成は図1および図2で示
した上記第1、第2の実施例と同様であり、これらと共
通な部分は同一符号を付して説明を省略する。そして、
本実施例が上記実施例と異なる点は、ビームダクト7の
内部に複数のオリフィス板11が設けられたことにより
ビームダクト7が複数の空間12a、12b、12cに
区画され、区画された空間の各々にこれら空間12a、
12b、12cおよび反応槽4内を真空排気するための
真空ポンプ13、13、13が接続されている点であ
る。
【0020】すなわち、本第3実施例の装置において
は、オリフィス板11、11、11が反応槽4とビーム
ダクト7との接続部からビームダクト7側に向けて一定
間隔おきに3枚設置されている。各オリフィス板11は
ビームダクト7の内壁に沿って固定された円盤状の部材
であって、その中心部には円形の入射孔14が形成され
ており、反応槽4への重陽子ビームdの入射はその入射
孔14を通して行なわれるようになっている。したがっ
て、入射孔14の径は重陽子ビームdの入射に支障を来
たさないような寸法に設定されている。なお、入射孔1
4の形状は必ずしも円形に限るものではなく、重陽子ビ
ームdの広がり等を勘案して、例えば横方向に若干長い
レーストラック形状や楕円形としてもよい。
【0021】したがって、ビームダクト7はこれらオリ
フィス板11、11、11により3つの空間12a、1
2b、12cに区画された形となっており、これら空間
12a、12b、12cを真空排気するための真空ポン
プ13、13、13が各空間12a、12b、12cに
対してそれぞれ接続されている。そして、反応槽4から
の真空排気はこれら真空ポンプ13、13、13を作動
させることによりオリフィス板11の入射孔14を通し
て行なうようになっている。
【0022】このように本実施例の装置は、3枚のオリ
フィス板11、11、11で区画された各空間12a、
12b、12cにそれぞれ真空ポンプ13が接続された
ことで、各空間12a、12b、12cおよび反応槽4
が差動排気構造をなすものである。すなわち、各真空ポ
ンプ13を作動させたときに各オリフィス板11の排気
抵抗によってビームダクトの空間12c、空間12b、
空間12a、反応槽4の順に真空度が段階的に低下して
いくため、反応槽4内の真空度はビームダクト7内の真
空度より充分に低くなる(圧力が高くなる)ものであ
る。そして、オリフィス板11の排気抵抗は入射孔14
の径寸法および板厚寸法によって決定されるものであ
り、径寸法を小さくするほど、また板厚寸法を大きくす
るほど、排気抵抗が増大して(コンダクタンスが低下し
て)その前後の差圧が大きくなるから、それらを調節す
ることで反応槽4とビームダクト7との間に所望の差圧
を確保できることになり、本装置では反応槽4内の真空
度をビームダクト7内の真空度に比して低下させる限り
において所望の真空度に設定できるものとなっている。
【0023】すなわち、上記構成の装置においては、ビ
ームダクト7に3枚のオリフィス板11、11、11を
設け、これにより区画された空間12a、12b、12
cに真空ポンプ13、13、13をそれぞれ接続するこ
とで差動排気により反応槽4内の真空度を低下させるこ
とができ、したがって、反応槽4内における液体リチウ
ム1の沸点温度を上昇せしめてその沸騰を抑制できるも
のである。
【0024】ここで、上記第1、第2実施例のオリフィ
スパイプを用いた場合と本第3実施例のオリフィス板を
用いた場合における装置設計の具体例について図4を用
いて説明する。ここでは、前提条件として反応槽4内の
真空度を1×10-3Torr、ビームダクト7内の真空度を
1×10-6Torrと設定する。
【0025】(a)オリフィスパイプを用いた場合 ビームダクト7内および反応槽4内の真空排気を行なう
ターボ分子ポンプ9の排気量を1000l/sとし、重
陽子ビーム幅20mmを考慮してオリフィスパイプ10
の内径寸法を30mmと設定したときのオリフィスパイ
プ10の必要長さLを求める。前記(2)式に示したと
おり、ポンプ9の排気量をS、オリフィスパイプ10の
コンダクタンスをC、反応槽4の真空度をP0、ビーム
ダクト7の真空度をPとすると、 S・P=C・(P0−P)……(2) ∴ C={P/(P0−P)}・S ={1×10-6/(1×10-3−1×10-6)}・1000 =1.001 (l/s)……(3) 一方、オリフィスパイプ10の内径をD(cm)、必要
長さをL(cm)とすると、 C=1/{1/(9.1×D2)+L/(12.1×D3)}……(4) 上記(3)、(4)式より、 1.001=1/{1/(9.1×32)+L/(1
2.1×33)} L=322.4(cm)=3224(mm) すなわち、長さ3224mmのオリフィスパイプ10が
必要となる。
【0026】(b)オリフィス板を用いた場合 3枚のオリフィス板11、11、11を用いるとともに
ビームを通過させる入射孔14の径を(a)と同様に3
0mmとし、ビームダクト7内および反応槽4内の真空
排気を行なう3台のターボ分子ポンプ13、13、13
の排気量をそれぞれ500l/sと設定したときのオリ
フィス板11の必要板厚tを求める。ポンプ13の排気
量をS、オリフィス板11のコンダクタンスをC、反応
槽4内の真空度をP0、空間12a、空間12b、空間
12c内の真空度をそれぞれP1、P2、P3とすると、
前記(2)式より C・(P0−P1)=S・P1+C・(P1−P2)……(5) C・(P1−P2)=S・P2+C・(P2−P3)……(6) C・(P2−P3)=S・P3 ……(7) S=500(l/s)、P0=1×10-3(Torr)、P3
=1×10-6(Torr)であるから上記(5)、(6)、
(7)式より、 C=59.5(l/s) ……(8) P1=9.7×10-5(Torr) ……(9) P2=9.4×10-6(Torr) ……(10) 上記(4)式と同様に、オリフィス板11の板厚をt
(cm)とすると、 C=1/{1/(9.1×D2)+t/(12.1×D3)}……(11) 上記(8)、(11)式より、 59.5=1/{1/(9.1×32)+t/(12.
1×33)} t=1.5(cm)=15(mm) すなわち、板厚15mmのオリフィス板11が必要とな
る。また、両端のオリフィス板11、11間の距離は約
600mmとなる。
【0027】以上、具体的な設計の手順を示したが、上
記(a)と(b)の計算結果を比較すると明らかなよう
に、同一設定条件のもとでオリフィスパイプ10を用い
た場合とオリフィス板11を用いた場合とでは寸法的に
大きな差異が生じる。すなわち、オリフィスパイプ10
を用いる場合には長さ3000mmもの非常に長尺なオ
リフィスパイプ10を必要とするのに対して、オリフィ
ス板11を用いる場合には板厚15mmのオリフィス板
11をビームダクト7における600mm程度の部分に
3枚設置すれば足りることになる。したがって、本第3
実施例の装置は上記第1、第2実施例の装置に比べて装
置全体の小型化を図ることができる。
【0028】さらに、本実施例の装置は、差動排気構造
を構成するべく3台の真空ポンプ13、13、13が必
要になるわけであるが、上記具体例に示したように1台
当たりの排気量が小さいもので済むため、3台の真空ポ
ンプ13、13、13を使用することにより装置全体が
大型化したり、コストが大幅に高くなるというような恐
れはない。なお、各真空ポンプ13の排気量は異なるよ
うにしてもよい。
【0029】また、上記全ての実施例において例示した
反応槽4内やビームダクト7内の真空度の設定例は一例
に過ぎず、それらは中性子を有効に発生させるために必
要な諸条件を満たしたうえで液体リチウムが沸騰してし
まうことを防止し得るように適宜設定すれば良い。さら
に、上記全ての実施例では液体リチウムをターゲット物
質としてそれに重陽子を打ち込むものとしたが、荷電粒
子が打ち込まれると核反応を生じて中性子を放出するも
のであれば液体リチウムに限らず他の物質をターゲット
物質として採用することができる。
【0030】
【発明の効果】以上で説明したように、本発明は、ビー
ムダクトから反応槽への荷電粒子の入射孔にオリフィス
パイプを接続し、そのオリフィスパイプを通して反応槽
からの真空排気を行なう構成であるので、オリフィスパ
イプの径寸法や長さ寸法を調節することのみで反応槽内
の真空度をビームダクト内の真空度に比して低く設定す
ることができ、したがって、反応槽内の真空度を従来よ
り低下させることで反応槽内におけるターゲット物質の
沸点温度を従来より上昇せしめることができ、以て、タ
ーゲット物質の沸騰を抑制し得て中性子を安定に発生さ
せることができ、しかも、オリフィスパイプ以外は他に
何等の装置類や制御機構が不要であるのでコスト増を招
くこともない、といった優れた効果を奏する。
【0031】また、前記オリフィスパイプを備えた構成
に代えて、ビームダクトを複数のオリフィス板により区
画し、その区画した各空間に真空排気手段を接続して差
動排気構造を構成すれば、オリフィス板の入射孔の径寸
法や板厚寸法、枚数、もしくは真空排気手段の排気量を
調節することによりビームダクトから反応槽に向けて段
階的に真空度を低下させて、反応槽内の真空度をビーム
ダクト内の真空度に比して低く設定することができる。
これにより上記と同様、ターゲット物質の沸騰を抑制し
得て中性子を安定に発生させることができる。さらに、
本構成の場合にはオリフィス板相互の間隔を小さくして
も充分大きな差圧を得ることができるので、装置全体の
小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例である中性子発生装置の
要部を模式的に示す側断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例である中性子発生装置の
要部を模式的に示す側断面図である。
【図3】本発明の第3の実施例である中性子発生装置の
要部を模式的に示す側断面図である。
【図4】オリフィスパイプを用いた場合とオリフィス板
を用いた場合とで上記実施例を比較した具体例を示す図
である。
【図5】中性子発生装置の概要を示す斜視図である。
【図6】同装置の要部側断面図である。
【符号の説明】
d 重陽子(荷電粒子)ビーム n 中性子ビーム 1 液体リチウム(ターゲット物質) 4 反応槽 7 ビームダクト 8、14 入射孔 9、13 真空ポンプ(真空排気手段) 10 オリフィスパイプ 11 オリフィス板 12a、12b、12c 複数の空間

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体状のターゲット物質に対して加速し
    た荷電粒子を打ち込むことによって、それらターゲット
    物質と荷電粒子とによる核反応により中性子を発生させ
    る構成の装置であって、 前記ターゲット物質を膜状態で流下させるための反応槽
    と、該反応槽に接続されてその接続部に設けられている
    入射孔を通して前記荷電粒子を反応槽内に入射させるた
    めのビームダクトと、該ビームダクトに接続されていて
    このビームダクトおよび前記入射孔を通して前記反応槽
    内の真空排気を行なうための真空排気手段とを具備し、 前記入射孔には、前記荷電粒子を通過させ得る径寸法と
    されているとともに反応槽内とビームダクト内に差圧を
    保持し得る長さ寸法とされたオリフィスパイプを接続し
    てなることを特徴とする中性子発生装置。
  2. 【請求項2】 前記オリフィスパイプは、その先端が前
    記入射孔に接続されて前記ビームダクト内に設けられて
    いることを特徴とする請求項1に記載の中性子発生装
    置。
  3. 【請求項3】 前記オリフィスパイプは、前記入射孔を
    挿通してその中間部が入射孔に対して接続されて前記ビ
    ームダクト内と前記反応槽内に跨がって設けられている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の中性子発生
    装置。
  4. 【請求項4】 液体状のターゲット物質に対して加速し
    た荷電粒子を打ち込むことによって、それらターゲット
    物質と荷電粒子とによる核反応により中性子を発生させ
    る構成の装置であって、 前記ターゲット物質を膜状態で流下させるための反応槽
    と、該反応槽に接続されてその接続部に設けられている
    入射孔を通して前記荷電粒子を反応槽内に入射させるた
    めのビームダクトと、前記荷電粒子を通過させ得る径寸
    法の入射孔がそれぞれ設けられ前記ビームダクトを複数
    の空間に区画する複数のオリフィス板と、前記複数の空
    間の各々に接続されて前記反応槽と離間した空間側から
    該反応槽側に向けて段階的に真空度を低下させるように
    各空間内もしくは前記入射孔を通して前記反応槽内を真
    空排気するための複数の真空排気手段とを具備してなる
    ことを特徴とする中性子発生装置。
  5. 【請求項5】 前記ターゲット物質は液体リチウムであ
    り、前記荷電粒子は重陽子であることを特徴とする請求
    項1ないし4のいずれかに記載の中性子発生装置。
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