JPH0721026Y2 - 防振支持装置付骨伝導マイクロホン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、人体の声帯近傍の骨導音をピックアップする
ための防振支持装置付骨伝導マイクロホンに関する。

（従来の技術） 工事現場等の高騒音環境下においては、周囲の騒音を拾
うことなく通話者の通話信号のみをピックアップする変
換器触体として骨伝導マイクロホンが用いられている。
この骨伝導マイクロホンは人体の声帯近傍の皮膚部表面
より直接骨導音をピックアップするため、ヘッドセット
またはハンドセット等に実装され使用されていた。

この骨伝導マイクロホンは一般に使用される空気の粗密
波（音波）をピックアップする「気導音ピックアップ型
マイクロホン」、いわゆる音響−電気変換器とは異な
り、機械的振動をピックアップする振動−電気変換器で
あるため、この骨伝導マイクロホンのもつ特性として
は、「空気振動（音波）に対して鈍感であるが、機械的
振動に対しては敏感である」と云うことが云える。

従来では骨伝導マイクロホンの一部をクロロプレーンゴ
ムを取付け、外部からの機械的振動の伝達を阻止するよ
うにしていた。

（考案が解決しようとする課題） 上述のような、従来の骨伝導マイクロホンの欠点とし
て、 （１）ヘッドセット（またはハンドセット）本体に、衝
撃等の機械的振動を受けると敏感に反応し、「ショック
ノイズ」を発生してしまう。

（２）周囲の騒音に対して、ヘッドセット（またはハン
ドセット）本体の筐体が共鳴体（振動体）のように音響
信号をピックアップし、それが機械的振動として骨伝導
マイクロホンに伝導するため、骨伝導マイクロホン本来
の長所である「外部騒音に対する高遮音性」を損ねるこ
とが、現実的に起こることがある。

本考案は、このような実状に鑑みてなされたもので、そ
の目的とするところは、「ショックノイズ」を遮断し、
「外部騒音に対する高遮音性」を充分に発揮する防振支
持装置付骨伝導マイクロホンを提供することを目的とす
るものである。

（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するため、本考案の防振支持装置付骨伝
導マイクロホンは、台枠によって１面もしくは対応する
２面を封じられるとともに、弾性材料で形成された自己
保形可能な外筐と、この外筐内に充填されるとともに、
前記台枠に印加される荷重を受けるゲル物質とを備え、
前記台枠に印加された荷重を前記ゲル物質の非弾性変形
で分散吸収するべく構成された防振支持装置を設け、こ
の防振支持装置の台枠に骨伝導マイクロホンの背面部を
固着もしくは脱着可能な連結手段により取付けられたこ
とを特徴とするものである。

（作用） 上記のように構成した防振支持装置付骨伝導マイクロホ
ンにあっては、防振支持装置の外筐が自己保形可能の弾
性により内部のゲル物質を常時所定の状態に維持すると
ともに、ゲル物質の変形によって変歪せしめられるた
め、ゲル物質の変形を介してのみ骨伝導マイクロホンに
弾性を作用させる。

これに対して、ゲル物質は外部振動を受けた時には、非
弾性的な変形をして印加された荷重を内部に分散する
が、ゲル物質の特性としては液体的な挙動があるから、
外部からの荷重に対する反発弾性や、外筐の復元で印加
される圧力に対する反発弾性が全くないか、または殆ど
ないという特性がある。

したがって、衝撃力に対する吸収動作や復元動作には、
弾性成分や振動成分を可及的に小さくすることができ
る。

このような防振支持装置をヘッドセットまたはハンドセ
ットに固定し、前記防振支持装置の台枠に封じられた１
面もしくは対応する２面のうちの１面上に、骨伝導マイ
クロホンの背面部を固着もしくは脱着可能に取付けたの
で、外部からの機械的振動を骨伝導マイクロホンには伝
えることなく、「ショックノイズ」の防止、「外部騒音
に対する高遮音性」を十分に保つことができ、明瞭な骨
導音信号を伝達することができる。

（実施例） 以下、本考案の一実施例を第１図ないし第11図によって
説明する。

第１図ないし第４図は防振支持装置付骨伝導マイクロホ
ン１の一部断面図である。この防振支持装置付骨伝導マ
イクロホン１は、防振支持装置２と骨伝導マイクロホン
10とによって構成されている。

防振支持装置２は、第１図および第２図に示すように、
上側台枠３と外筐４とにより構成されたものと、第３お
よび第４図に示すように、上側台枠３と下側台枠５と外
筐６とにより構成されたものがある。

第１図に示す防振支持装置２は、有底の直筒状の外筐４
上に上側台枠３を蓋状に取付け固定したもので、上側台
枠３は硬質材で形成された平板状のもので、上面3aには
後述する骨伝導マイクロホン10を支持する周辺突出部3b
が設けてあって、骨伝導マイクロホン10はこの周辺突出
部3b内に接着剤９により固着される。また、下面には外
筐４の周縁部を被着する溝部3cが形成してあって、これ
も接着剤等によって固定される構成になっている。

外筐はゴム質の弾性材料によるもので、外部からの加圧
に対して変形するが、外部加圧を除去することにより直
ちに復元される自己保形可能に形成された有底直筒状の
容器となっている。この外筐４内にはゲル物質７が充填
され、前記上側台枠３によって密閉されるようになって
いる。このゲル物質７は、例えば商品名トーレシリコー
ンCF5027（トーレシリコーン株式会社製造）や、KE-105
1（信越化学株式会社製造）等を用いるのが望ましく、
外筐４の外部から加えられた荷重や力を非弾性変形で分
散吸収するものがよい。

上述した構成になる防振支持装置２は、外部からの機械
的振動を受けても、上側台枠３上に置かれたものに何等
その振動を伝えることなく印加圧力を均一に全方向に分
散させることができる。

第２図に示した防振支持装置２は、前記上側台枠３の上
面3aに例えば取付ネジ８を設け、この上側台枠３上に取
付られる骨伝導マイクロホン10を取付ネジ８によって脱
着可能に取付けられるようにしたもので、その他の構
成、すなわち外筐４およびゲル物質７は、前記第１図で
説明したものと同じものを用いたものである。

第３図に示した防振支持装置2Aは、直筒状の外筐６の上
下面、すなわち対応する２面にそれぞれ上側台枠３と下
側台枠５とを取付け固定したもので、下側台枠５は硬質
材で形成された平板状のもので、上面5aには外筐６の周
縁部を被着する溝部5bが設けてあって、接着剤等によっ
て外筐６を固定するようになっている。また、上側台枠
３は第１図に示したものと同じものであって、これも外
筐６に接着剤を介して固定される。なお、下側台枠５は
上側台枠３を用いても差支えない。

外筐６はゴム質の弾性材料によるもので、外部からの加
圧に対して変形し、除圧により復元する自己保形可能に
形成された直筒状のものである。そして、この外筐６と
上側台枠３と下側台枠５とによっても囲まれた内部には
前記ゲル物質７が充填されており、上側台枠３の上面3a
に接着剤９を介して固定された骨伝導マイクロホン10に
は外部からの機械的振動等が伝達されない構成になって
いる。

第４図に示した防振支持装置2Aは、前述した第３図の上
側台枠３に骨伝導マイクロホン10を脱着可能に取付ける
ための取付ネジ８を設けたもので、他の構成は全て第３
図のものと同じである。

上記した防振支持装置2Aは弾性変形する部分が外筐６だ
けであるが、前述した防振支持装置２と同様の作用およ
び効果を示すものである。

第５図は骨伝導マイクロホン10の一例である。骨伝導マ
イクロホン10は、中心に貫通孔11aを有し周縁部にリン
グ状突出部11bを有する円形状のヨーク11と、このヨー
ク11上に載置されるリング状のマグネット12と、このマ
グネット12上に配設され前記ヨーク11のリング状突出部
11bとの間に所定空隙14を設けるとともに、その中心に
前記貫通孔11aに連通する連通孔13aを有するポールピー
ス13とにより構成される磁気回路部を有し、この磁気回
路部を収納するフレーム15は、底部中心に２段の段差孔
15aを有する円筒形状で、上部周縁部にも段差部15bを有
している。そして、前記底部の段差孔15aの内部側には
リヤーサスペンション16が取付けられ、上部の段差部15
bにはフロントサスペンション17が設けられている。こ
のリヤーサスペンション16とフロントサスペンション17
とには、前記磁気回路部内を貫通してアマチュア18が取
付けられている。このアマチュア18は絶縁性部材で断面
略Ｔ字状に形成されてあって、アマチュア上部18aは中
凹形の円板部とその外側に外輪部18bが設けてあり、こ
の外輪部18bの外周面に前記フロントサスペンション17
が接続されている。また、アマチュア上部18aの中央下
部にはアマチュア軸部が形成されてあって、アマチュア
下部18cには突起部が設けてあり前記リヤサスペンショ
ン16に接続されている。したがって、アマチュア18はフ
ロントサスペンション17とリヤサスペンション16とに支
持され、アマチュア18の軸部中心は磁気回路部の前記連
通孔13a、貫通孔11aの中心に懸持され、アマチュア18の
外輪部18bの上面は前記フレーム15の上端面と同一面に
保持されるように取付けられている。このアマチュア18
の前記外輪部18bの周辺下方には下方に垂設された円筒
部が形成してあって、この円筒部の外周面にはムービン
グコイル19が設けてあり、このムービングコイル19は磁
気回路部の所定空隙14内に配設されている。このアマチ
ュア18の前記中凹形のアマチュア上部18aの上には、円
板状の接触片20が取付けてある。なお、接触片20の直下
に設けられた21は防塵布であり、磁気回路部内への塵や
湿気の入るのを防いでいる。また、フレーム15の底部の
段差孔15aの下段にはプリント基板22が設けてあって、
前記ムービングコイル19のリード線を介して接続されて
いる。

上述のように構成された骨伝導マイクロホン10は、接触
片20を図のＸ方向より振動を与えると、フロントサスペ
ンション17とリヤサスペンション16とに支持されたアマ
チュア18が上下動する。このアマチュア18の上下動はム
ービングコイル19を上下動させるので、磁気回路部の磁
気作用でムービングコイル19内に誘導電流を発生させ
る。この誘導電流はプリント基板22を介して外部に取出
される構成になっている。

このような骨伝導マイクロホン10は前記接触片20の振動
によってのみ電流を発生するので、外部からの騒音（音
波）には何等反応することはなく、したがって、この骨
伝導マイクロホン10の底部の背面側に、前記防振支持装
置２または2Aを取付けた防振支持装置付骨伝導マイクロ
ホン１にあっては、外部からの振動を防振支持装置で遮
断するので、前記接触片20からの振動だけで応答するマ
イクロホンとなる。

このような、防振支持装置付骨伝導マイクロホン１の無
荷重時の防振特性（防振支持装置の伝搬特性）は、第６
図のＡに示すように、150Hzでピーク値＋14dBを示す
が、230Hzで0dBとなって230Hz以上の周波数に対しては
激減する防振特性を示している。これに対し、従来のク
ロロプレーンゴムを用いた防振特性では、同図Ｂに示す
ように300Hzより搬送レベルは上昇し、約530Hzでは最大
値＋12dBを示し、900Hzで0dB、それ以上の周波数に対し
て漸減する傾向を示している。これは、防振装置を使用
しないものＣを0dBに設定しＡ及びＢを比較測定したも
のであるが、本考案の防振支持装置付骨伝導マイクロホ
ンの防振効果が理解されるであろう。

このような、防振支持装置付骨伝導マイクロホン１は、
第７図ないし第10図に示すヘッドセット23に組込まれ第
11図に示すように使用される。

ヘッドセット23は人体の頭部に取付けられるイヤーホー
ンセットで、頭部に被せられるヘッドバンド24と、この
ヘッドバンド24に回動自在に設けられたイヤーホーン25
とより構成されている。イヤホーン25は内側面が第８図
のように略楕円形に形成された平面部を有し、外側面は
第７図のように平面部を包む偏平球面体で形成され、外
周上には前記ヘッドバンド24に係止される取付金具26が
設けてある。このイヤーホーン25は前記平面部を有する
前部カバー25aと、前記偏平球面体を形成する後部カバ
ー25bとより構成されている。前部カバー25aの中央には
小型スピーカ27が設けてあり、この小型スピーカ27の周
囲には略楕円状にイヤーパッド28が設けてある。このイ
ヤーパッド28はイヤーホーン25を耳に取付けたとき、耳
に接触する部分でポリウレタン等で成形してある。

このイヤーパッド28の周辺で前記小型スピーカ27の斜め
下方向には防振支持装置付骨伝導マイクロホン１が配設
されている。この防振支持装置付骨伝導マイクロホン１
の上面にある接触片20は、第10図に示すように、イヤー
パッド28の面に対して直角方向より約10°程度内方に向
けられており、この接触片20が声帯を形成する喉頭に近
い皮膚面に密接されるようになっている。そして、防振
支持装置２または2Aの底部は、後部カバー25bの内側に
設けた取付部25cに固着され、防振支持装置２または2A
の上部は、前部カバー25aの内側に設けた係止突部25dに
支えられている。

したがって、イヤホーン25を頭部に取付け使用状態に装
着すると、第11図に示すように、防振支持装置2,2Aの外
筐4,6が撓み、上側台枠３がイヤーホーン25の係止突部2
5dから離れるので、前記後部カバー25bおよび前部カバ
ー25aに加えられる機械的振動は完全に遮断され、この
防振支持装置２または2A上に取付けられた骨伝導マイク
ロホン10には伝達されず、声帯から発生される靱帯の骨
導音のみをピックアップし、第９図に示すコード29を介
して増幅器（図示せず）により他の機器との交信が可能
となるように構成されている。なお、この骨伝導マイク
ロホン10の位置設定は、第９図に示すヘッドバンド24
と、第８図に示すイヤーパッド28の耳への接触位置の変
更とによって行われる。

上述したヘッドセット23により、高騒音下における通信
手段としての電気通信端末機器として、周囲の騒音や衝
撃音、タッチノイズ等の本来通信に必要な信号ソース以
外の外部雑音を一切遮断し、明瞭な通信を実現すること
が可能となる。

（考案の効果） 以上詳細に説明したように、本考案の防振支持装置付骨
伝導マイクロホンは、台枠によって１面もしくは対応す
る２面を封じられるとともに、弾性材料で形成された自
己保形可能な外筐と、この外筐内に充填されるととも
に、前記台枠に印加される荷重を受けるゲル物質とを備
え、前記台枠に印加された荷重を前記ゲル物質の非弾性
変形で分散吸収すべく構成された防振支持装置を設け、
この防振支持装置の台枠に骨伝導マイクロホンの背面部
を固着もしくは脱着可能な連結手段により取付けられる
ようにしたので、 （１）衝撃等の機械的振動を完全に遮断することがで
き、「ショツクノイズ」を防止することが可能となり、 （２）周囲の騒音がヘッドセット（またはハンドセッ
ト）本体を共鳴しても、この共鳴による機械的振動はそ
の伝導を阻止され「外部騒音に対する高遮音性」を保つ
ことが可能となる利点がある。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第11図は本考案の一実施例で、第１図は防
振支持装置付骨伝導マイクロホンの一部断面図、第２図
は防振支持装置に連結手段を設けた防振支持装置付骨伝
導マイクロホンの一部断面図、第３図は上側台枠と下側
台枠とを有する防振支持装置付骨伝導マイクロホンの一
部断面図、第４図は上側台枠に連結手段を設けた防振支
持装置付骨伝導マイクロホンの一部断面図、第５図は骨
伝導マイクロホンの断面図、第６図は防振支持装置の伝
搬（防振）特性を示すグラフ、第７図はヘッドセットの
外観図、第８図は同イヤーホーンの平面図（第７図のＡ
矢視図）、第９図はヘッドセットのＢ矢視図、第10図は
ヘッドセットのＣ−Ｃ′断面図、第11図はヘッドセット
の使用状態を示す部分図である。 １……防振支持装置付骨伝導マイクロホン、2,2A……防
振支持装置、３……台枠（上側台枠）、4,6……外筐、
５……下側台枠、７……ゲル物質、８……取付ネジ（連
結手段）、９……接着剤、10……骨伝導マイクロホン。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−79700（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−265699（ＪＰ，Ａ) 実開 昭56−90061（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】台枠によって１面もしくは対応する２面を
   封じられるとともに、弾性材料で形成された自己保形可
   能な外筐と、この外筐内に充填されるとともに、前記台
   枠に印加される荷重を受けるゲル物質とを備え、前記台
   枠に印加された荷重を前記ゲル物質の非弾性変形で分散
   吸収するべく構成された防振支持装置を設け、この防振
   支持装置の台枠に骨伝導マイクロホンの背面部を固着も
   しくは脱着可能な連結手段により取付けられたことを特
   徴とする防振支持装置付骨伝導マイクロホン。