JPH07161312A - 偏向ヨーク装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スリット巻方式のコイルを採用した偏向ヨー
ク装置において、金型巻のコイルの偏向ヨーク装置と同
じ強さの磁場を得るのにより多くの電力を供給しなけら
ばならないという欠点を解消する。 【構成】 電子銃の配列方向に電子ビームを偏向するた
めの水平偏向コイルを巻線するための成形樹脂部品にお
いて、Ｙ軸上の仕切り１０の根元部１０ａを細く形成す
ると共にＸ軸方向に延びる先端部１０ｂを形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、テレビジョン受像機や
モニター装置等に使用される偏向ヨーク装置に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】近年、家庭用テレビジョン受像機におい
ては、文字情報や静止画像の表示が行われたり、コンピ
ュータのモニター装置の画像表示能力が向上するなどの
背景から、これらの機器に用いられる偏向ヨーク装置に
おいては、コンバーゼンスの改良を要求する声が高まっ
ている。

【０００３】偏向ヨーク装置を製造するメーカにおいて
は、この要求に応えるべく様々な試みが成されている
が、その一つとして、電子銃の配列方向（Ｘ軸方向）に
電子ビームを偏向するための水平偏向コイルを、図１６
に示すように成形樹脂部品１に設けたスリット１ａに導
線２を巻き付けて構成したスリット巻方式と呼ばれる方
法がある。この方法で巻線されたコイルが発生する磁場
は、図１７に示すように金型に導線を巻き込み成形して
コイルの形状にした金型巻方式のコイル３の発生する磁
場に比べて安定度が高いことが知られている。

【０００４】上記金型巻方式のコイルは、図１５に示す
内径部３ａと外径部３ｂの形状は、図２０及び図２１で
示される金型４，５によって定められ、図２０のように
巻線を行った後に図２１の如く成形金具６で導線を金型
に押し込み成形し、導線に電流を流して加熱させ、導線
の表面の皮膜を融解させた後に冷却し固着している。こ
のため、コイルの内径寸法を設計時に規定できる。従っ
て、電子ビームの通過する領域の磁場を極力強めるため
に、コイルの内径は略ＣＲＴの外径と一致させることが
出来る。

【０００５】然し、スリット巻方式は図１１乃至図１４
に示すように、コイルの内径側の形状を規制することが
出来ないので、例えば導線がＡで示す如く内径側に膨ら
んでＣＲＴに装着する場合に障害となることを避けるた
めに、コイル２の外径側を規制する成形樹脂部品の径
（図１２のＢ参照）に余裕を持たせ、導線の巻かれる部
分のスペースを大きくする必要がある。また、スリット
とスリットの間の仕切り１ｂの部分が占めるスペースの
分も合わせて図１５のようにスリット巻時の成形樹脂部
品の内径Ｃを金型巻方式と比較して大きくする必要があ
る。

【０００６】このため、スリット巻方式のコイルを採用
した偏向ヨーク装置は、金型巻のコイル採用した偏向ヨ
ーク装置に比べ、同じ強さの磁場を得るのにより多くの
電力を供給しなけらばならないという欠点がある。この
欠点のため、大型ＣＲＴ用あるいは高い周波数で使用さ
れる偏向ヨーク装置においては、発熱が大きくなり過ぎ
たり、偏向ヨーク装置に電力を供給するＩＣの設計変更
が必要となるなどの問題が生じる。

【０００７】尚、前記図１２は図１１で破線で囲んだ部
分を拡大したものであり、図１４及び図１５は図１３で
破線で囲んだ部分を拡大したものである。また、前記図
１１及び図１２は成形樹脂部品を前面から見た状態を示
し、図１３及び図１４は成形樹脂部品を前面から見た状
態を示している。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】従来、電子銃の配列方
向と垂直であるＹ軸方向に電子ビームを偏向する垂直偏
向コイルは、フェライトのコアに直接導線をトロイダル
に巻線したトロイダル巻方式が主流であった。然し、近
年モニター装置においては、モニター装置から漏洩する
磁束を規制する動きがあり、漏洩磁束低減のため偏向ヨ
ーク装置においては、垂直偏向コイルに漏洩磁束の小さ
いサドルコイルと呼ばれる金型で巻線されたコイルが採
用されるようになってきた。

【０００９】垂直偏向コイルがトロイダル方式で巻線さ
れている場合は、フェライトコアの内形が真円であるの
で、それに導線を巻き付けて構成される垂直偏向コイル
の内形も略真円と仮定して、垂直偏向コイルと水平偏向
コイルとを設計すると共に電気的に絶縁するための成形
樹脂部品を設計できた。

【００１０】垂直偏向コイルに水平偏向コイルと同じく
金型巻方式のコイルを採用した場合の従来の設計過程の
概略を述べると次のようになる。図１８は偏向ヨーク装
置の外観を示す図であり、図１９は前記図１８に示す偏
向ヨーク装置を断面ＸーＸ’で切断したときの断面図で
ある。偏向に必要な電力を最小とするため、水平偏向コ
イル７の内径がＣＲＴに装着可能な範囲で最小となるよ
うに決める。必要な磁場の分布から水平偏向コイルの厚
み方向の分布を、水平偏向コイルのインピーダンスなど
から水平偏向コイルの断面積を決めコイルの外形形状を
概略決定する。

【００１１】偏向に必要な電力を最小とし、且つ組み立
て時のバラツキを少なくするため、垂直偏向コイル８の
外形を概略真円とし、その径は垂直偏向コイル８の外側
に取り付けられるフェライトコア９の内径よりも製造上
必要な寸法だけオフセットされた分だけ小さい値とす
る。次に、水平偏向コイルの場合と同じく、必要な磁場
およびインピーダンスなどから垂直偏向コイルの厚み方
向の分布と断面積を決める。最終的には水平偏向コイル
と垂直偏向コイルの双方の形状をお互いに考慮しながら
決定される。

【００１２】その結果、水平偏向コイル７の形状は内径
形状を略真円もしくは後日の導線の密度分布調整のた
め、多少Ｙ軸方向へプラス偏心させた概略円弧とし、外
形形状はＹ軸方向へマイナス偏心させた概略円弧として
構成される。また、垂直偏向コイル８の形状は、外径形
状を略真円もしくは後工程における導線の密度分布調整
のため、多少Ｘ軸方向へマイナス偏心させた概略円弧と
し、内径形状はＹ軸方向へプラス偏心させた概略円弧と
して構成される。

【００１３】水平偏向コイルと垂直偏向コイルの両方を
金型巻とする場合は、上述の考え方で最も少ない電力で
電子ビームを偏向するように設計が出来るが、水平偏向
コイルをスリット巻とした場合は、既に述べたように、
水平偏向コイルの内径側の形状を規制することが出来な
いことと、スリット間の仕切り分だけ水平偏向コイルの
外径側を規制する成形樹脂部品の径を余裕を持たせ導線
の巻かれる部分のスペースを金型巻に比較して大きくす
る必要がある。

【００１４】また、前記図１１乃至図１４のように、従
来はスリット間の仕切り１ｂは、樹脂成形部品の内形側
からＹ軸方向へ向かって設けられていた。この方法だ
と、最もＹ軸近くに巻線される導線は、Ｙ軸付近の仕切
り１ｃの近傍に巻き付き、スリットの奥にはなかなか入
り込まず、スリットの入口付近に導線が集まることにな
る。従って、この部分では所定巻数導線を巻くことが出
来なくなるため、このことを考慮して成形樹脂部品を外
側に更に大きくする必要があった。

【００１５】特に、高い偏向周波数に対応すべくリッツ
線を使用した場合、その外径が太いため一本の線の重な
り具合で大きく内側へ飛び出したり、スリットの奥に線
が入り込みにくいためより大きく成形樹脂部品を設計し
ておく必要があった。このため、垂直偏向コイルやフェ
ライトコアも大きくする必要があり、結果として偏向に
必要な電力はより一層増加してしまうという問題があ
る。

【００１６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明では、成形樹脂部品に設けられた仕切によって形
成されたスリットに巻線されインライン型電子銃の配列
方向に偏向を行う水平偏向コイルと、金型によって巻線
成形されたサドル形状を成して前記配列方向に対して直
行する方向に偏向を行う一対の垂直偏向コイルを供えた
偏向ヨーク装置において、前記成形樹脂部品に設けられ
た仕切りのうち、水平偏向コイルの巻き始めの仕切りの
根元部を細く形成した偏向ヨーク装置を提供せんとする
ものである。

【００１７】また、本発明では、前記水平偏向コイルの
巻き始めの仕切りは、根元部より幅広の先端部を有し、
該先端部の下底端部分までの高さは電子銃側の渡り部の
範囲ｄにに在るように構成した偏向ヨーク装置を提供せ
んとするものである。

【００１８】

【作用】上記の如く構成したので、仕切りによって導線
がＣＲＴ管軸側へ飛び出すことが防止されると共に電子
ビームの偏向に寄与しない渡り部を小さくすることが可
能となる。

【００１９】

【実施例】以下、図面を参照しつつ本発明の一実施例に
ついて詳述する。

【００２０】本発明では、図１及び図２に示す如く成形
樹脂部品に設けたスリットの仕切りのうち、小口径側
（電子銃側）のスリットの仕切りの構成において、最も
Ｘ軸から遠い（最もＹ軸に近い）スリットの仕切り１０
は、その根元部１０ａをＹ軸に近づく方向に細く構成す
ると共に先端部１０ｂはＹ軸から離れる方向に延びるよ
うに構成した点に特徴がある。尚、その他の仕切りにお
いて仕切り１０に近い仕切り１１は従来のものよりもＹ
軸より離れた位置までしか延びていない。

【００２１】次に、前記仕切り１０を図２の矢印Ｄより
見た状態を図５に示す。また、巻線過程を図６乃至図１
０に示す。通常のスリット巻線方式では、巻線はＹ軸に
近いスリットから順に巻線され最後にＸ軸に近いスリッ
トに巻線されるが、本発明においても、最もＸ軸から遠
いスリット１０から巻線される。

【００２２】このとき、巻始めを成形部品の小口径側に
持ってきたとすると、導線２は導線を誘導し成形樹脂部
品に巻き付けるノズル１２によって、先ず、図６に示す
ようにＹ軸付近に仕切り１０の外側を通るように導か
れ、次に図７に示すようにノズル１２の先端は渡り部よ
りも大口径側に下がった位置まで移動する。そして図８
及び図９に示すように左方向に多少移動して導線２を仕
切り１０の根元部１０ａに引っ掛けた後、図１０に示す
ようにノズル１２を大口径側に下げて導線２を仕切り１
０に巻き付ける。尚、前記図６において仕切り１０の先
端部１０ｂの下底部分Ｅが範囲ｄに在るようにしておく
とよい。後は従来のスリット巻との場合と同じく導線が
所定のスリットに入るようにノズルの動きを設定してや
ればよい。

【００２３】このような構成により、図４に示すように
仕切り１０によって導線がＣＲＴ管軸側へ飛び出すこと
が防止されると共に電子ビームの偏向に寄与しない渡り
部を小さくすることが可能となり、偏向電力を低減する
ことが出来る。

【００２４】

【発明の効果】以上、詳述した如く本発明に依れば、成
形樹脂部品に設けられた仕切によって形成されたスリッ
トに巻線されインライン型電子銃の配列方向に偏向を行
う水平偏向コイルと、金型によって巻線成形されたサド
ル形状を成して前記配列方向に対して直行する方向に偏
向を行う一対の垂直偏向コイルを供えた偏向ヨーク装置
において、前記成形樹脂部品に設けられた仕切りのう
ち、水平偏向コイルの巻き始めの仕切りの根元部を細く
形成したので、スリット巻方式の欠点である偏向電力や
発熱量の増大を押えることができると共にコンバーゼン
スのバラツキを大きく緩和することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の偏向ヨーク装置を示す要部正面図。

【図２】本発明の偏向ヨーク装置を示す要部背面図。

【図３】本発明の偏向ヨーク装置を示す要部拡大図。

【図４】本発明の偏向ヨーク装置を示す要部拡大図。

【図５】本発明の偏向ヨーク装置を示す要部拡大図。

【図６】本発明の偏向ヨーク装置における巻線過程を示
す図。

【図７】本発明の偏向ヨーク装置における巻線過程を示
す図。

【図８】本発明の偏向ヨーク装置における巻線過程を示
す図。

【図９】本発明の偏向ヨーク装置における巻線過程を示
す図。

【図１０】本発明の偏向ヨーク装置における巻線過程を
示す図。

【図１１】従来の偏向ヨーク装置を示す要部正面図。

【図１２】従来の偏向ヨーク装置を示す要部拡大図。

【図１３】従来の偏向ヨーク装置を示す要部背面図。

【図１４】従来の偏向ヨーク装置を示す要部拡大図。

【図１５】従来の偏向ヨーク装置を示す要部拡大図。

【図１６】従来の偏向ヨーク装置を示す要部正面図。

【図１７】従来の偏向ヨーク装置を示す要部背面図。

【図１８】従来の偏向ヨーク装置を示す側面図。

【図１９】従来の偏向ヨーク装置を示す要部拡大図。

【図２０】コイルの成型過程を示す図。

【図２１】コイルの成型過程を示す図。

【符号の説明】

１ 成形樹脂部品 １ａ スリット １ｂ 仕切り １ｃ 仕切り ２ 導線 ３ａ 内径部 ３ｂ 外径部 ４ 金型 ５ 金型 ６ 成型金具 ７ 水平偏向コイル ８ 垂直偏向コイル ９ フェライトコア １０ 仕切り １０ａ 根元部 １０ｂ 先端部 １１ 仕切り １２ ノズル

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【手続補正書】

【提出日】平成６年２月７日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】特許請求の範囲

【補正方法】変更

【補正内容】

【特許請求の範囲】

【手続補正２】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１６

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明では、成形樹脂部品に設けられた仕切によって
形成されたスリットに巻線されインライン型電子銃の配
列方向に偏向を行う水平偏向コイルと、金型によって巻
線成形されたサドル形状を成して前記配列方向に対して
直交する方向に偏向を行う一対の垂直偏向コイルを供え
た偏向ヨーク装置において、前記成形樹脂部品に設けら
れた仕切りのうち、水平偏向コイルの巻き始め側の仕切
りの根元部を細く形成した偏向ヨーク装置を提供せんと
するものである。

【手続補正３】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１７

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１７】また本発明では、前記水平偏向コイルの巻
き始め側の仕切りは、根元部より幅広の先端部を有し、
該先端部の下端部分までの高さは電子銃側の渡り部の図
５に示す範囲ｄに在るように構成した偏向ヨーク装置を
提供せんとするものである。

【手続補正４】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００２０

【補正方法】変更

【補正内容】

【００２０】本発明では、図５に示す如く成形樹脂部品
に設けたスリットの仕切りのうち、小口径側（電子銃
側）のスリットの仕切りの構成において、最もＸ軸から
遠い（最もＹ軸に近い）スリットの仕切り１０は、その
根元部１０ａをＹ軸に近づく方向に細く構成すると共に
先端部１０ｂはＹ軸から離れる方向に延びるように構成
した点に特徴がある。尚、その他の仕切りにおいて仕切
り１０に近い仕切り１１は従来のものよりもＹ軸より離
れた位置までしか延びていない。

【手続補正５】

【補正対象書類名】図面

【補正対象項目名】図１６

【補正方法】変更

【補正内容】

【図１６】

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 成形樹脂部品に設けられた仕切によって
   形成されたスリットに巻線されインライン型電子銃の配
   列方向に偏向を行う水平偏向コイルと、金型によって巻
   線成形されたサドル形状を成して前記配列方向に対して
   直行する方向に偏向を行う一対の垂直偏向コイルを供え
   た偏向ヨーク装置において、前記成形樹脂部品に設けら
   れた仕切りのうち、水平偏向コイルの巻き始めの仕切り
   の根元部を細く形成したことを特徴とする偏向ヨーク装
   置。
2. 【請求項２】 前記水平偏向コイルの巻き始めの仕切り
   は、根元部より幅広の先端部を有し、該先端部の下底端
   部分までの高さは電子銃側の渡り部の範囲ｄにに在るよ
   うに構成したことを特徴とする請求項１の偏向ヨーク装
   置。