JPH0691824B2 - 逆転写酵素遺伝子を含む新規な組換え体 - Google Patents

逆転写酵素遺伝子を含む新規な組換え体

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JPH0691824B2
JPH0691824B2 JP16401779A JP16401779A JPH0691824B2 JP H0691824 B2 JPH0691824 B2 JP H0691824B2 JP 16401779 A JP16401779 A JP 16401779A JP 16401779 A JP16401779 A JP 16401779A JP H0691824 B2 JPH0691824 B2 JP H0691824B2
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は温血脊椎動物の逆転写酵素遺伝子を含む新規な
組換え体に関する。
逆転写酵素は、TeminとMizutani(文献.Temin,H.M.,Miz
utani,S.,Nature226(1970)1211)およびBaltimoro
(文献.Baltimore,D.,Nature226(1970)1209)により1
970年にRNA腫瘍ウイルス粒子から発見され、RNAに相補
的なDNAを合成する分子量約70,000の酵素である。本酵
素の発見により、遺伝子の転写産物であるメツセンジヤ
ーRNAからそれと相補的DNAを合成することが可能とな
り、遺伝子の構造と機能に関する研究が大きく前進して
きた。以来、本酵素はRNA腫瘍ウイルス粒子を材料とし
て調製されている。即ち、RNA腫瘍ウイルスを培養細胞
に感染して増殖させる実験室規模においてのみ得られて
いる。近年の遺伝子組換え技術を用いた分子腫瘍学の発
展とともに逆転写酵素の需要が激増しているにもかかわ
らず、その入手がきわめて困難かつ高価であり、他の方
法による逆転写酵素の製造が必要とされている。
また1975年にはWangら(文献.Wang,L.H.,Duesberg,P.
H.,Becman,K.,Vogt,P.K.,J.Virol.16(1975)1051)に
よりRNA腫瘍ウイルスのゲノム中に逆転写酵素遺伝子の
存在が報告された。しかし現在でも逆転写酵素はその抽
出材料の入手の困難さから単一のタンパク質として純化
できず、アミノ酸配列等も決定されておらず、この酵素
を特異的に阻害する化学物質の発見などが十分に行われ
ず、RNA腫瘍ウイルスの増殖を特異的に阻止する方法の
研究を通しての新しい制癌剤の開発も著しく遅れている
のが現状であり、本酵素が大量に安価で容易に手に入る
ことが望ましい。このような理由から逆転写酵素を容易
にしかも大量に生産する技術の開発が強く望まれてい
る。
また、全てのタンパク質の生合成は細胞のDNAに含まれ
る遺伝情報によつて制御されている。さらに微生物の培
養によつてこの微生物によつて作られる特定のタンパク
質たとえば酵素を工業的に有利に製造しうることも知ら
れている。しかしこの製法は、所望の酵素を生産する遺
伝子を持つ微生物が見い出される場合にのみ使用できる
が適当な微生物が存在しないため、この方法で多くの有
用な酵素が製造できないのが現状である。それ故、特定
の酵素遺伝子をこの遺伝情報を含んでいない微生物中に
挿入し、目的とする遺伝的機能を有する新しい組換え体
を製造する方法の開発研究が行われている。遺伝子組換
え技術と称するこの方法は、原理的にはあらゆる遺伝子
を微生物に挿入し、それによつて生合成の可能性を決定
的に拡大することが可能である。この方法の原理はいわ
ゆるベクターと称するフアージ、フアージDNAまたはプ
ラスミドDNAに目的とする遺伝子を人工的に挿入し、細
菌たとえば大腸菌に感染させることからなる。このよう
に、新しく宿主細胞としての大腸菌に挿入される遺伝情
報の組込みおよび増殖の方法をクローン化技術と称す
る。しかしこれまで、逆転写酵素遺伝子を含む組換え体
のクローン化については全く知られておらず、またこの
方法による逆転写酵素の製造についても全く知られてい
ない。
本発明者らは、遺伝子組換え技術により逆転写酵素遺伝
子をフアージDNAに挿入して新規な組換え体をつくり、
逆転写酵素を大量に製造することが新しい技術であると
考え、この点に関して研究した結果、本発明を完成する
に至つた。すなわち本発明は、DNA供与体としての温血
脊椎動物のDNAを切断して得た逆転写酵素遺伝子を含むD
NAをベクターDNAに挿入した、逆転写酵素遺伝子を含む
新規な組換え体であつて、その目的は細菌たとえば大腸
菌に逆転写酵素を生産させるのに利用することのできる
新規な組換え体を提供することにある。
従来、このような温血脊椎動物の逆転写酵素遺伝子を含
む新規な組換え体もしくは組換えフアージは存在せず、
本発明者等により始めて得られたものである。この新規
な組換え体は、細菌たとえば大腸菌内で増殖させ大量の
逆転写酵素遺伝子を安価に生産させるのに用いられるも
のであつて非常に有用なものである。従つて本発明によ
れば、逆転写酵素を大規模に製造するため、組換え体の
機能を発現させることもできる。
本発明の新規な組換え体は、温血脊椎動物細胞たとえば
ニワトリ肝細胞またはRNA腫瘍ウイルスたとえばラウス
肉腫ウイルスで形質転換した細胞、もしくはRNA腫瘍ウ
イルス欠損株たとえばラウス肉腫ウイルス欠損株ならび
にRNA腫瘍ウイルス以外のレトロウイルスの感染した細
胞のDNAを制限分解酵素たとえばEcoRI(米国Bethesda R
esearch Lab社より得ることができる)で切断して得ら
れる逆転写酵素遺伝子を含むDNAを遺伝子組換え技術に
よつてベクターDNAたとえば大腸菌のフアージDNAまたは
プラスミドDNAに挿入することによつて得ることが出来
る。
次にこの製法について具体的に説明する。
まず逆転写酵素遺伝子の供与体として用いるDNAは、温
血脊椎動物たとえばニワトリの肝細胞から得ることが出
来る。生体より取出した肝細胞を破壊しSDS−フエノー
ル法(文献.小池克郎.生物化学(II)643頁.新実験
化学講座.日本化学会編.丸善)でDNAを抽出し、さら
に制限分解酵素たとえばEcoRIで切断してDNA断片にす
る。この中に逆転写酵素遺伝子を含むDNA断片が存在す
る。また、温血脊椎動物の代りにRNA腫瘍ウイルス感染
細胞ないしRNA腫瘍ウイルスで形質転換した細胞を用い
上記と同様にDNA断片を得ることが出来る。また、RNA腫
瘍ウイルス欠損株ないしRNA腫瘍ウイルス以外のレトロ
ウイルスに感染した細胞を用いて同様のDNA断片を得る
ことが出来る。
さて、上記制限分解酵素たとえばEcoRIで切断して得たD
NA断片中に含まれる逆転写酵素遺伝子を含むDNA断片は
極めて数が少く効率が悪いので、これを濃縮する操作た
とえば寒天ゲル電気泳動法(文献.Sharp.P.A.,Sugden,
B.,Sambrook,J.,Biochemistry12(1973)3055)またはR
PC−5カラムクロマトグラフイー法(文献.Hardies,S.
C.,Wells,R.D.,PNAS73(1976)3117)を行うことにす
る。供与体DNAを制限分解酵素EcoRIで切断後、寒天ゲル
電気泳動法を用いて生成したDNA断片を十分に分離す
る。逆転写酵素遺伝子を含むDNA断片の検出は、逆転写
酵素遺伝子DNAと共通の塩基配列を持つ腫瘍ウイルスRNA
より調製した相補的DNAを用いるSouthernハイブリダイ
ゼーシヨン法(文献.Southern,E.M.,J.Mol.Biol.98(19
75)503)で行うことが出来る。また目的とするDNA断片
の大きさは分子量の既知のDNAを同時に電気泳動するこ
とで算出できる。この方法の実施により逆転写酵素遺伝
子を含むDNA断片を最初の10倍以上に濃縮することが出
来る。
DNAを制限分解酵素たとえばEcoRIで切断すると、ヌクレ
オチド配列が相補的な2つの末端を有するDNA断片が生
ずる(文献.Hedgpeth,J.,Goodman,H.M.,Boyer,H.W.,PNA
S69(1972)3448)。それ故制限分解酵素EcoRIによつて
切断された上記の細胞およびラムダフアージDNAの切断
部位は夫々に相補的なヌクレオチド配列を示す。即ち、
ヌクレオチド配列が相補的であることは、それと相補的
相手に特異的な親和性を持つことである。そこで上記の
如く制限分解酵素で切断して得た逆転写酵素遺伝子を含
むDNA断片とラムダフアージDNAを適当な条件下で混合す
れば、その相補的末端で組合せることが出来、さらにDN
Aリガーゼ(文献.Modrich,P.,Anraku,Y.,Lehman,I.R.,
J.Biol,Chem.248(1973)7495)として知られる酵素に
よつて組合つたDNA断片同志が共有結合で結合された雑
種DNAが形成される。これらの雑種DNAの中に目的とする
組換え体である逆転写酵素遺伝子を含むラムダフアージ
DNAが存在することになる。
このようにして得られた雑種DNAをカルシウム処理した
大腸菌たとえば大腸菌K−12株(米国National Institu
tes of Healthより得ることができる)にDNA感染させる
DNA感染法(文献.Mandel,M.,Higa,A.,J.Mol.Biol.53(1
970)159)あるいはパツケージ法(文献.Hohn,B.,Murra
y,K.,PNAS74(1977)3259)によりプレートし、生じた
フアージのプラークをプラークハイブリダイゼーシヨン
法(文献.Benton,W.D.,Davis,R.W.,Science196(1977)
180)を用いてスクリーニングすれば、逆転写酵素遺伝
子を含む組換え体フアージによる、プラークを検出する
ことが出来る。このプラークハイブリダイゼーシヨン法
とは次の如きものである。予め逆転写酵素遺伝子DNAと
共通の塩基配列を持つ腫瘍ウイルスRNAより合成した相
補的DNAを用意しておき、生じたフアージのプラークと
直接にハイブリダイゼーシヨンを行うことによつて数千
個のプラークを1回で判定することが可能である。かく
して得られたハイブリダイゼーシヨン陽性のプラークは
逆転写酵素遺伝子を含む組換え体フアージに由来するも
のである。ハイブリダイゼーシヨン陽性のプラークを選
択し、高純度の組換え体が得られるまでこの方法を繰返
すことにより、逆転写酵素遺伝子を含む完全に単一な新
規な組換え体が得られる。
上記のようにして得られた新規な組換え体フアージに挿
入されたDNAが逆転写酵素遺伝子を含むことの確認は次
の如くに行つた。新規な組換え体フアージを大腸菌たと
えば大腸菌K−12株に感染させ大規模に液体培養するこ
とで目的とする組換え体フアージが大量に得られる。培
養液より組換え体フアージを塩化セシウム密度勾配遠心
分離法(文献.Kobayashi,M.,Koike,K.,Gene6(1979)12
3)を用いて精製し、SDS−フエノール法によりDNAを抽
出すれば組換え体DNAが純粋に得られる。この組換え体D
NAを制限分解酵素たとえばEcoRIで切断し、寒天ゲル電
気泳動法を用いて分離すれば逆転写酵素遺伝子を含むDN
A断片のみが得られる。このDNA断片をManiatisらの方法
(文献.Maniatis,T.,Jeffrey,A.,Kleid,D.G.,PNAS72(1
975)1184)により32Pで標識する。別にRNA腫瘍ウイル
スにより形質転換した温血脊椎動物たとえばニワトリの
細胞よりDNAを抽出し、制限分解酵素たとえばEcoRIで切
断して調製した逆転写酵素遺伝子DNAと上記32Pで標識し
たDNA断片との相補性についてSouthernハイブリダイゼ
ーシヨン法により検討し、新規な組換え体中に挿入され
たDNAが逆転写酵素遺伝子を含むことを確認する。
本発明の新規な組換え体は、これを含む大腸菌もしくは
大量培養可能な真核細胞の大量培養により逆転写酵素の
大量生産が出来るので非常に有用である。次に実施例を
示し本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本
発明は制限されるものではない。
実施例 (1)ベクターDNAとして用いるラムダファージDNAの製
造 大腸菌K−12LE392株(米国National Institutes of He
althから得られる)を5mlのラムダトリプトン肉汁(ト
リプトン10g/l,塩化ナトリウム2.5g/l)に50μg/mlチミ
ジンを加えた培地で37℃一晩培養し,翌朝その2.5mlを
分取し,100mlの上記と同じ培地に移植する。37℃で振盪
培養し,610mμでの吸光度が0.15〜0.2に到達したら培養
を止め,6.000回転,5分間の遠心分離を行い菌体を沈澱さ
せる。この菌体を2.5mlの0.01M硫酸マグネシウムに懸濁
してからラムダファージ変異株(λgtWES.λB)(米国
National Institutes of Healthから得られる)を感染
比が0.01で感染後,37℃に十分間放置し十分吸着させ
る。その後200mlのラムダトリプトン肉汁にチミジンを
添加した上記と同じ培地を加え,37℃で約6時間振盪培
養する。ファージが増殖すると大腸菌が溶菌し,培養液
が半透明になる。ここで培養を止め,クロロホルムを2m
l加え,37℃で10分間放置する。クロロホルム処理後20,0
00回転10分間の遠心を行い,ファージを含む上清を分取
する。分取した上清をさらに30,000回転,80分間の超遠
心分離を行い,ファージを沈澱として分画する。
分画したファージの沈澱に少量の緩衝液0.2Mトリス−塩
酸(pH7.8)/10mM硫酸マグネシウムと10μg/ml牛血清ア
ルブミンから成る溶液を加え,0℃で静かに振盪して溶解
させる。得たファージ溶液に塩化セシウムが2g/2.4mlに
なるように加え,10℃,35,000回転20時間の平衡密度勾配
遠心を行う。遠心後,乳白色のファージのバンドを遠心
管から分画し,適当な緩衝液に0℃で透析し,塩化セシ
ウムを除き,ファージDNAの抽出材料とする。
透析した材料(約1ml)に20μ1の25%ドデシル硫酸ソ
ーダ(SDS)を加え,溶液を3分間室温に放置してファ
ージを分解し,緩衝液0.2Mトリス−塩酸(pH7.8)/1mM
EDTAで予め飽和したフェノールを等量加え,室温でゆ
るやかに振盪しながら抽出してから7500回転,10分間,4
℃で遠心分離する。遠心後フェノール層をピペットで取
り出して捨て,フェノール抽出を再度行う。ファージDN
Aを含む水層を透析チューブに移し,これを緩衝液20mM
トリス−塩酸(pH7.8)/0.1mMEDTAに十分透析したもの
をファージDNA試料として用いた。
ラムダファージの製造に用いた宿主大腸菌は,大腸菌K
−12LE392株であるが,大腸菌K−12DP50SupF株も用い
ることができる。ベクターとして製造したラムダファー
ジDNAはゲノムの約15%が欠損した変異体(λgtWES・λ
B)であり,制限酵素EcoRIにより切断される部位を2
ケ所有している。EcoRIによる2ケ所の切断部位の間のD
NA断片の除去は異種のDNA断片を挿入するベクターとし
ての能力を増大し,約1キロ塩基から15キロ塩基のDNA
が挿入可能である(文献,Tiemeier,D.,Enquist,L.,Lede
r,P.,Natuer263(1976)526)。調製したラムダファー
ジDNAをベクターとして用いる場合には,通常上記の如
く制限酵素EcoRIで切断後,中央部のλBDNA断片を寒天
ゲル電気泳動で取り除き、左右の大きなDNA断片のみと
する。
上記の緩衝液に溶けたラムダファージDNA1μg当り,1.5
単位の制限酵素EcoRIを加え,さらに50mM塩化ナトリウ
ム,10mM塩化マグネシウムを加え37℃〜3時間反応させ
完全分解する。25mMEDTAを加え反応停止後,Sharpらの方
法(文献Sharp,P.A.,Sugden,B.,Sambrook,J.,Biochemis
try12(1973)3055)に従い0.5μg/mlエチジウムブロミ
ドを含む0.7%寒天ゲル中で80v,3時間電気泳動を行う
と,DNA断片のサイズに従い紫外線で螢光を発する3本の
DNAバンドに分離する。このうち大きい2本のDNAバンド
を切り出し,0.5M酢酸アンモニウム/0.1%SDS/1mMEDTAの
溶液でホモジナイズしてDNAを抽出する。抽出したDNAは
3倍量のエタノールを加え,−80℃で沈澱させ遠心分離
して回収する。この場合電気泳動での3本のDNAバンド
の分離を十分に行えば中央のλBDNA断片は完全に除去さ
れ,左右の大きなDNA断片(左腕DNAと右腕DNAと称す
る)のみとなる。電気泳動に用いる緩衝液は40mMトリス
−塩酸(pH8.7)/20mM酢酸ナトリウム/20mMEDTAで0.5μ
g/mlエチジウムブロミドを含んでいる。
(2)供与体DNAとして用いるニワトリの細胞核DNAの製
造 白色レグホンの肝臓100gを氷冷後,0.25M庶糖溶液(pH7.
0)中ハサミで切断し十分に洗滌する。これに10倍量の
上記と同じ0.25M庶糖溶液を加え,ポッター型ホモジナ
イザーを用いて約1000回転でホモジナイズする。得たホ
モジネートを3〜4枚のガーゼで濾過し,その濾液を4
℃10分間,1000回転で遠心分離し,上清を捨て,細胞核
を沈澱として分画する。核分画を上記と同様の庶糖溶液
500mlに懸濁させ洗滌後再度遠心分離する。この洗滌操
作を3回行い,最後に核を沈澱として集める。
核の沈澱を100ml緩衝液0.2Mトリス−塩酸(pH7.8)/1mM
EDTAに十分に懸濁させてから4mlの25%SDSを加え,溶液
を5分間室温に放置すると核が分解し粘調の溶液とな
る。これに緩衝液で予め飽和した等量のフェノールを加
え,室温でゆるやかに振盪しながら30分間抽出してから
7,500回転,10分間4℃で遠心分離する。遠心後,フェノ
ール層をピペットで取り出して捨て,フェノール抽出を
再度行う。核DNAを含む水層を透析チューブに移し,次
いでこれを緩衝液20mMトリス−塩酸(pH7.8)/0.1mMEDT
Aに十分透析したものを供与体DNAとして用いる核DNA試
料とした。核DNAの製造に用いた細胞は白色レグホンの
肝臓であるが,培養したニワトリ胎児の線維芽細胞や,
これにRNA腫瘍ウイルスを感染させた細胞も全く同様に
用いられる。
(3)逆転写酵素遺伝子を含むDNA断片の製造 上記(2)により調製した核DNAを供与体として用いる
場合には,制限酵素EcoRIで切断後,寒天ゲル電気泳動
法で分離し,逆転写酵素遺伝子を含むDNA断片の含有量
を10倍以上に上げる。逆転写酵素遺伝子を含むDNA断片
の検出は,この酵素遺伝子と相補的な塩基配列をもつ腫
瘍ウイルスRNAより相補的DNAを合成し,これを指標とし
てSouthernハイブリダイゼーション法(文献Southern,
E.M.,J.Mol.Biol.98(1975)503)により行い,相補的D
NAとハイブリダイズする分画からDNA断片を抽出する。
上記の緩衝液に溶かした核DNA1μg当り1.5単位の制限
酵素EcoRIを加え,さらに5mM塩化マグネシウム,2mM2−
メルカプトエタノール,50mM塩化ナトリウムを加え,37
℃,〜3時間反応させ完全分解する。用いた核DNAの総
量は367μgで反応液は20mlである。25mMEDTAで反応停
止後,0.5μg/mlエチジウムブロミドを含む1%寒天ゲル
(15cm×15cm)を用い20vで一晩電気泳動すると無数の
バンドに分離する。電気泳動に用いる緩衝液は40mMトリ
ス−塩酸(pH8.7)/20mM酢酸ナトリウム/20mMEDTAで0.5
μg/mlエチジウムブロミドを含んでいる。分離した無数
のバンドからの逆転写酵素遺伝子DNAの検出は次のよう
に行う。
電気泳動後,上記の寒天ゲルを横に5mm巾で切り取り合
計24分画に分け,各々に3mlの0.5M酢酸アンモニウム/0.
1mMEDTA/0.5%SDS(pH7.0)を加え,別々にホモジナイ
ズして一晩振盪してDNA断片を抽出する。抽出後11,000
回転,15分間遠心して上清を得,3mlの予め緩衝液で飽和
したフェノールで15分間処理した後,10,000回転,10分間
遠心して上清を分離する。上清に0.3ml3M酢酸ナトリウ
ム(pH5.0)を加え,9mlエタノールを加え,−80℃に放
置後生じたDNAの沈澱を11,000回転,15分間の遠心を行い
分離回収する。最後にDNAの沈澱を各々500μlの水に溶
解し,4℃で保存する。
各々の試料10μlづつを上記と全く同様の1%寒天ゲル
電気泳動を行い分離し、寒天ゲルを取り出し,1.5M塩化
ナトリウム/0.5M水酸化ナトリウムの溶液に2時間浸しD
NAを変性させる。次いで緩衝液3M塩化ナトリウム/0.5M
トリス−塩酸(pH7.0)に1時間浸し中和する。この処
理した寒天ゲルをニトロセルロース膜(西ドイツSchlei
cher and Sch11社から得られる)に密着させ,変性し
たDNAをニトロセルロース膜に移行させる。十分にDNAが
移行したら2倍濃度のSSCで十分に洗滌し,真空デシケ
ーター中で乾燥させた後,80℃3時間の処理を行いDNAを
ニトロセルロース膜に焼付けて室温に戻す。調製したニ
トロセルロース膜を6倍濃度SSC/デンハルト溶液に浸
し,60℃一晩処理した後に下記に詳しく述べる方法で調
製した32Pで標識した相補的DNAを含む溶液2ml(100μl
32P−DNA+100μl2mg/ml仔牛胸線DNA+1ml再留水を90℃
2分間加熱してから600μl20倍濃度SSC+200μl10倍濃
度デンハルト溶液を加える)に浸し,60℃で反応させ
る。反応後2倍濃度SSC/0.1%SDS溶液で5分間3回洗滌
し,1/10濃度SSC/0.1%SDS溶液で50℃30分間数回洗滌
し,乾燥させる。上記の一連の操作によって逆転写酵素
遺伝子を含むDNA断片がこの遺伝子と相補的な塩基配列
を持つ腫瘍ウイルスRNAから合成した32Pで標識した相補
的DNAと特異的にハイブリダイズして,ニトロセルロー
ス膜上の特定の分画に32P−DNAとして残存するので,こ
れをX線フイルム(米国Kodak社より得られる)を用い
て数時間オートラジオグラフィーを行えば,32P−DNAの
存在する部分が放射線に照射され生じた銀粒子により黒
化するので,逆転写酵素遺伝子を含むDNA断片の所在が
完全に検出される。上記の一連の実験操作をSouthernハ
イブリダイゼーション法と称する。なお実験操作に用い
られたSSCとはその組成が0.15M塩化ナトリウム/0.015M
クエン酸ナトリウム溶液である。またデンハルト溶液と
はその組成が0.2%フイコール/0.2%牛血清アルブミン/
0.2%ポリビニルピロリドン/5%SDSの溶液である。上記
の一連の実験操作で逆転写酵素遺伝子を含むと同定され
たDNA断片の分画をラムダファージDNAを用いての雑種DN
A分子製造に用いる。
(4)逆転写酵素遺伝子と相補的な塩基配列を持つ腫瘍
ウイルスRNAから合成した32Pで標識した相補的DNAの製
造 Vogtの方法(文献Vogt,P.K.In Fundamental Techniques
in Virology PP.198 Academic Press)に従いRNA腫瘍
ウイルス(RSV・PR−C・OSOI)(大阪大学微生物研究
所より得ることができる)をニワトリ胎児線維芽細胞に
感染させ培養しウイルス粒子として分離精製し,下記の
反応系を用い逆転写酵素遺伝子と相補的な塩基配列を持
つ腫瘍ウイルスRNAと相補的なDNAを32Pで標識して合成
する。
全量500μl反応液は,50mMトリス−塩酸(pH8.0)/10mM
塩化マグネシウム/100μg/mlアクチノマイシンD/1.4%
2−メルカプトエタノール/1mM ATP(アデノシン三リ
ン酸)/1mMGTP(グアノシン三リン酸)/1mMCTP(シトシ
ン三リン酸)1mMUTP(ウリジン三リン酸)/0.1mMデオキ
シATP/0.1mMデオキシGTP/1mMデオキシTTP/0.025%Norit
P−40/800μci〔α−32P〕dCTP(英国RCC社より得るこ
とができる)の組成で,4.7mg/mlのRNA腫瘍ウイルス粒子
RSV・PR−C・OSOIを加え41℃16時間反応させる。反応
終了後55μl0.2MEDTAと31μl10%SDSと31μl10mg/mlプ
ロナーゼE(科研化学から得られる)を加えて37℃30分
間反応させてから617μl飽和フェノールを加えて2分
間抽出処理し,水層を分取する。このフェノール処理を
繰返してから水層に50μl2μg/ml仔牛胸線DNAを加え,
さらに67μl3M酢酸ナトリウム(pH5.0)を加えてから2m
lエタノールを加え−80℃で核酸を沈澱させる。13,000
回転20分間の遠心分離を行い沈澱を回収し,0.2ml0.3N水
酸化ナトリウムに溶解させ,37℃一晩アルカリ分解す
る。分解後,60μl1N塩酸を加えて中和し,セファデック
スG−50のカラムにかけ緩衝液50mMトリス−塩酸(pH8.
0)/1mMEDTA/50mM塩化ナトリウムで溶出させ32P−DNAの
分画を集め,逆転写酵素遺伝子DNA検出のためのハイブ
リダイゼーションに用いる試料とする。
(5)ラムダファージベクターDNAと逆転写酵素遺伝子
を含むDNA断片から雑種DNA分子の製造 上記(1)の方法で得たラムダファージベクターDNAの2
0μg(900μl)に上記(3)の方法で得た逆転写酵素
遺伝子を含むDNA断片16μg(170μl)を加え,100μl3
M酢酸ナトリウム(pH5.0)を加え,3.2mlエタノールを加
え−80℃でDNAを沈澱させる。生じた沈澱を20,000回転3
0分間の遠心分離で回収し,以下に述べる如く調製した
反応液256μlに溶解させる。反応液は200μl緩衝液1M
トリス−塩酸(pH7.5)に20μl5M塩化ナトリウム,24μl
1M塩化マグネシウム,1μl0.2MEDTA,20μl1MDTT,3μl66.
4mMATP,1332μlH2Oを加えメンブランフイルターで濾過
して調製する。
上記のDNA溶液に6.4μlの2.5mg/ml牛血清アルブミン,3
1.1μlH2O,20μl500単位/mlT4DNAリガーゼ(米国Miles
社より得ることが出来る)を加え24時間10℃で反応させ
雑種DNA分子を作成する。反応終了後DNAの濃度が10μg/
ml位になるように水で希釈し,等量の飽和フェノールに
よる処理を行い,3倍量のエタノールを加え−80℃でDNA
を沈澱させる。DNAの沈澱を20,000回転30分間の遠心分
離で回収し3.2mlの水に溶解しDNA感染実験の試料とす
る。
(6)DNA感染法による逆転写酵素遺伝子を含む組換え
体ファージの製造 上記(1)の方法と同じく大腸菌K−12LE392株を5mlの
ラムダトリプトン肉汁(トリプトン10g/l,Nacl2.5g/l)
に50μg/mlチミジンを加えた培地で37℃−晩培養し,翌
朝2.5mlを分取し100mlのHIT培地に移植する。37℃で振
盪培養し610mμでの吸光度が0.55〜0.58に到達したら培
養を止め,6,000回転5分間の遠心分離を行い菌体を沈澱
させる。この菌体を100ml0.01M酢酸マグネシウムに懸濁
して0℃,30分間放置し,6,000回転5分間の遠心分離を
行い菌体を再沈澱させる。この菌体を50ml50mM塩化カル
シウム溶液(50μg/mlチミジンを添加した)に懸濁して
0℃10〜15分間放置後6,000回転5分間遠心分離し菌体
を集め,さらに10ml50mM塩化カルシウム溶液(50μg/ml
チミジンを添加した)に懸濁して0℃5分間放置後,カ
ルシウム処理した菌体として30分以内に使用する。
カルシウム処理した菌体0.2mlに上記(5)の方法で調
製したDNA溶液0.1mlを加え0℃40分間放置後,45℃2分
間の温度処理を行い,これに別に溶解調製した2.5ml軟
寒天(100mlラムダトリプトン肉汁/5mgチミジン/0.6g寒
天)および2滴のプレート用大腸菌(K−12LE392株)
を加えて予めシャーレに作成した寒天プレート(100ml
ラムダトリプトン肉汁/5mgチミジン/10g寒天)上に展開
する。上層の軟寒天が十分に固まってから37℃で24〜48
時間培養すると組換え体ファージのプラークが出現す
る。上記HIT培地の組成は,0.1Mリン酸カリ緩衝液(pH7.
0)/0.015M硫酸アンモニウム/0.001M硫酸マグネシウム/
1.8×10-6MFeSO4・7H2O/1%グルコース/10%トリプトン
肉汁/50μg/mlチミジンである。
また,プレート用大腸菌K−12LE392株の調製は,上記
(1)の方法と同じく大腸菌K−12LE392株を5mlのラム
ダトリプトン肉汁(トリプトン10g/l,NaCl2.5g/l)に50
μg/mlチミジンを加えた培地で37℃一晩培養し,25mlを
分取し、100mlのトリプトン培地(0.2%マルトース添
加)に移植し32℃で16時間振盪培養する。培養後5,000
回転5分間の遠心分離で集菌し,菌体沈澱を0.01M硫酸
マグネシウム(50μg/mlチミジン添加)で洗滌後,40ml
の0.01M硫酸マグネシウム(50μg/mlチミジン添加)に
懸濁し,32℃45分間処理してから4℃に保存する。この
一滴に1〜2×108個の菌が含まれている。
(7)逆転写酵素遺伝子を含む組換え体ファージのプラ
ークハイブリダイゼーション法による検出 上記(6)の方法で組換え体ファージのプラークが出現
した寒天プレートを30分間4℃に放置し,その後ニトロ
セルロース膜を軟寒天上に20分間密着させ,生じたプラ
ークからファージを吸着させる。取り出したニトロセル
ロース膜を2時間乾燥し,次いで1.5M塩化ナトリウム/
0.2N水酸化ナトリウムで浸した3MM濾紙上にのせ4分間
変性する。次いでこのアルカリ処理した膜を3M塩化ナト
リウム/0.5Mトリス−塩酸(pH7.0)を浸した3MM濾紙上
にのせ中和する。中和後2倍濃度SSCで洗滌し真空デシ
ケータ中で3時間乾燥させ,80℃2時間処理してから室
温に戻す。この操作でプラークからニトロセルロース膜
上に移った組換え体ファージのDNAが膜に吸着すること
になる。この膜を上記(3)の方法に記載したと同様の
操作,即ち,6倍濃度SSC/デンハルト溶液に浸し60℃2時
間処理した後に32Pで標識した相補的DNA溶液(20ml6倍
濃度SSC+デンハルト溶液+1ml2mg/mlサケ精子DNA+70
μl32PDNA)に浸しハイブリダイズする。ハイブリダイ
ゼーション後,2倍濃度SSC/0.1%SDSで5分間3回洗滌
し,1/10濃度SSC/0.1%SDSで50℃30分間の洗滌を数回行
い,ニトロセルロース膜上の逆転写酵素遺伝子を持つ組
換え体DNAにハイブリダイズした32PDNAの放射能をX線
フイルムを用いオートラジオグラフィーにより検出す
る。この一連の操作をプラークハイブリダイゼーション
法(文献Benton,W.D.,Davis,R.W.,Science196(1977)1
80)と称するが,目的とする逆転写酵素遺伝子を含む組
換え体ファージはプラークハイブリダイゼーション陽性
として検出される。
(8)逆転写酵素遺伝子を含む組換え体ファージの培
養,組換え体DNAの抽出と挿入した DNAの同定 上記(7)の方法で陽性と判定した各々のプラークにつ
いて培養を行い,組換え体ファージに挿入されたDNA断
片を抽出し同定した。陽性のプラークを各々5mlのラム
ダトリプトン肉汁(50μg/mlチミジン添加)にサスペン
ドし,上記(6)の方法に従い調製した大腸菌K−12DP
50supF株を2滴加え,37℃一晩培養する。溶菌した培養
液2mlを取り0.4mlの緩衝液0.5Mトリス−塩酸(pH9.0)/
0.25M EDTA/2.5%SDSを加え70℃30分間処理する。さら
に0.5ml8M酢酸カリウムを加え0℃15分間放置後,13,000
回転20分間の遠心分離を行い上清を分取する。分取した
上清に5.6mlエタノールを加え−80℃で核酸を沈澱させ
る。生じた沈澱を20,000回転30分間の遠心分離を行い回
収する。次いで沈澱を0.4ml0.3M酢酸アンモニウムに溶
解させ,0.8mlエタノールで再沈澱させる。遠心分離で核
酸を回収し50μl緩衝液20mMトリス−塩酸(pH7.8)/0.
1mMEDTAに溶解し,上記(1)の方法に従い制限酵素Eco
RIで分解し,0.7%寒天ゲル電気泳動法によって分離し
た。
逆転写酵素遺伝子を含むDNA断片の検出は,この酵素遺
伝子と相補的な塩基配列をもつ腫瘍ウイルスRNAより32P
で標識した相補的DNAを合成し,上記(3)の方法と全
く同じくこれを指標としたSouthernハイブリダイゼーシ
ョン法で行った。この結果プラークハイブリダイゼーシ
ョン陽性の組換え体ファージ12個中の10個に挿入された
DNA断片に一致して32Pで標識した相補的DNAがハイブリ
ダイズした。それらのサイズは約3,500塩基対であっ
た。ちなみにこの塩基対の数は分子量約70,000(文献,F
aras,A.J.,Taylor,J.M.,McDonnell,J.P.,Levinson,W.
E.,Bishop,J.M.,Biochemistry11(1972)2334)の逆転
写酵素をコードする遺伝情報としては十分のものであ
る。
(9)新規な組換え体ファージに挿入されたDNAに逆転
写酵素遺伝子を含むことの証明 上記(8)の方法で得た新規な組換え体ファージ10個の
中から1個(クローン307という)を選び,大腸菌K−1
2DP50SupF株(米国National Institutes of Healthから
得られる)を宿主として上記(1)の方法に従い組換え
DNAを製造した。但し,大腸菌K−12LE392株を使用した
場合と異なるところは培地に50μg/mlチミジンに加えて
50μg/mlのジアミノピメリン酸が添加されている点であ
る。このジアミノピメリン酸の添加は上記(8)の方法
にも適用された。
塩化セシウム平衡密度勾配遠心法(文献,Kobayashi,M.,
Koike,K.,Gene6(1979)123)によりファージ粒子を精
製し,これよりファージDNAをSDS−フェノール法で抽出
して組換え体DNAを純粋に得,さらに制限酵素EcoRIで分
解後0.7%寒天ゲル電気泳動法により目的とする3,500塩
基対のDNA断片を分離し,これを寒天ゲルより抽出しエ
タノール沈澱により回収する。
次いでManiatisらの方法(文献,Maniatis,T.,Jeffrey,
A.,Kleid,D.G.,PNAS72(1975)1184)により上記のDNA
断片を32Pで標識する。0.5〜1μgDNA断片を180pmole
〔α−32P〕dCTPと他3種類の180pmoleデオキシヌクレ
オシド三リン酸の入った100μl緩衝液50mMトリス−塩
酸(pH7.8)/5mM塩化マグネシウム/10mM2−メルカプト
エタノールと50μg/ml牛血清アルブミンの入った溶液に
加え,2単位のDNAポリメラーゼI(米国Miles社より得ら
れる)と共に15℃1時間反応させ,等量の飽和フェノー
ルを加えて反応を停止させる。2分間処理後遠心分離に
より水層を分画し,10μl3M酢酸ナトリウムを加えてから
200μlエタノールを加え−80℃で32P−DNAを沈澱させ
る。13,000回転20分間の遠心分離を行い32P−DNAの沈澱
を回収し,緩衝液50mMトリス−塩酸(pH8.0)1mMEDTA/5
0mM塩化ナトリウムに溶解して後のsouthernハイブリダ
イゼーションに用いる試料とした。
さて,逆転写酵素遺伝子がRNA腫瘍ウイルスのゲノム中
に存在することが知られており(文献Wang,L.H.,Duesbe
rg,P.H.,Becman,K.,Vogt,P.K.,J.Virol.16(1975)105
1),さらにRNA腫瘍ウイルスたとえばラウス肉腫カイル
スで形質転換したニワトリ胎児線維芽細胞の核DNA中に
はこのウイルスゲノムが挿入され,その結果として逆転
写酵素遺伝子も挿入されていることが証明されている
(文献,Hughes,S.H.,Shank,P.R.,Spector,D.H.,Kung,H-
J.,Bishop,J.M.,Varmas,H.E.,Vogt,P.K.,Breitman,M.
L.,Cell15(1978)1397)。上記線維芽細胞の核DNAを制
限酵素EcoRIで切断すると,挿入されたウイルスゲノム
は大きく3つの断片になり,逆転写酵素遺伝子はその中
の1つのDNA断片に局在する。そこで上記(2)の方法
を用いてRNA腫瘍ウイルスで形質転換した細胞の核よりD
NAを抽出し,上記(3)の方法に従い10〜15μgDNAを制
限酵素EcoRIで分解し,1%寒天ゲルで電気泳動してDNA断
片を分離した。また,予め上記(4)の方法により逆転
写酵素遺伝子と相補的な塩基配列を持つ腫瘍ウイルスRN
Aから32Pで標識した相補的DNAを合成しておき,これと
上記で作成した32P−DNA断片とを用いて,上記(3)の
方法にあるSouthernハイブリダイゼーション法によりハ
イブリダイズするDNA断片の同定を行ったところ,逆転
写酵素遺伝子を含むと知られているDNA断片と新規な組
換え体に挿入されたDNAの位置が完全に一致した。以上
の実験結果から,この新規な組換え体DNAは逆転写酵素
遺伝子と特異的にハイブリッドを形成するDNA即ち逆転
写酵素遺伝子を含むDNAを持つことが証明された。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:19)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ニワトリの正常肝細胞の核DNAをEcoRIで切
    断し、得られるDNA断片混合物を電気泳動にかけて各DNA
    断片を分離し、かかるDNA断片群をRNA腫瘍ウイルス由来
    の逆転写酵素遺伝子と相補するcDNAを用いサザンハイブ
    リダイゼーション法により処理し、該処理によりハイブ
    リダイズしたDNA断片を分離することにより濃縮した逆
    転写酵素遺伝子を含むDNA断片を得、次いで該DNA断片を
    EcoRIによる切断部位を2ケ所有するラムダファージDNA
    に挿入して逆転写酵素遺伝子を含む組換え体DNAを製造
    することを特徴とする、逆転写酵素遺伝子を含む組換え
    体DNAの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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Nature263,P.526ー527(1976,10,7)

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