JPH0646842A - クローン化増幅可能遺伝子の真核細胞内導入法及びタンパク性産物の産生方法 - Google Patents

クローン化増幅可能遺伝子の真核細胞内導入法及びタンパク性産物の産生方法

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JPH0646842A
JPH0646842A JP5150890A JP15089093A JPH0646842A JP H0646842 A JPH0646842 A JP H0646842A JP 5150890 A JP5150890 A JP 5150890A JP 15089093 A JP15089093 A JP 15089093A JP H0646842 A JPH0646842 A JP H0646842A
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JP
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dna
aprt
dnaii
cells
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JP5150890A
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English (en)
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Richard Axel
リチヤード・アクセル
James M Roberts
ジエイムズ・マイケル・ロバーツ
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Columbia University in the City of New York
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Publication date
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    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/85Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for animal cells

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Abstract

(57)【要約】 【構成】 選択又は識別可能な形質をコードする機能欠
除増幅可能遺伝子を含む外来DNAIIと選択又は識別が
可能な別の形質をコードする機能性増幅可能遺伝子を含
む外来DNAIII とを含むデオキシリボ核酸分子と、所
望のタンパク性産物を産生するための遺伝情報をコード
する機能性増幅可能遺伝子を含む外来DNAIとを、共
に用いて適切な真核細胞を同時形質転換することによ
る、DNAIのマルチコピーを真核細胞内に導入する方
法、並びに、この方法を利用するmRNA転写体および
有用タンパク質の産生方法。 【効果】 有用タンパク質の産生量の増大を可能にす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、タンパク性産物をコー
ドする遺伝子を含むデオキシリボ核酸分子(DNA)
の、真核細胞内導入及び発現に係る。本発明は、動植物
界の生体を含め、高等生物界(Super Kingdom )の真核
生物(Eucaryotes)として分類される生体由来又はこれ
ら生体に関連した細胞の遺伝的構成を変更するのに使用
し得る。より特定的には、本発明は、クローン化した増
幅し得る遺伝子を真核細胞内に導入し、それによってコ
ードされている産物を産生するための改良DNA媒介遺
伝子移入法に係る。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】外来
DNAを真核細胞内に導入するのに同時形質転換(co-t
ransformation )を使用することは既に記載されてい
る。1981年 9月 3日公開のPCT国際公開第WO81/02
425 号及び第WO81/02426 号並びにそこに記載されて
いる科学文献。高度の遺伝子発現を得る手段としての遺
伝子増幅についても既に記載がある。Alt, F. W.他、J.
Biol. Chem., 253, 1357-1370(1978) 及びWahl, G.
M. 他、J. Biol. Chem., 254, 8678-8689(1979) 。真
核遺伝子プロモータは既に公知である。Mc Knight, S.
L.他、Cell, 25, 385-398(1981) 。そして、クローン化
した増幅し得る遺伝子についても既に記載されている。
Lee, D. E.他、 Nature,294, 228-232(1981) 。
【0003】増幅の選択が可能な公知のクローン化した
増幅し得る遺伝子には、その産物が、(a)細胞成長阻
害剤と直接的又は間接的に相互作用してその阻害剤を無
効にするか、又は、(b)細胞の生存に必要で且つ外因
性供与物質により阻害され得るものがある。どちらの場
合でも増幅プロセスは、細胞が生存するために、ますま
す多量の産物が増大する阻害剤の存在下で産生されてい
かなければならないという性質を有する。
【0004】前述の(b)タイプの遺伝子産物には、ジ
ヒドロホレートレダクターゼ(dihydrofolate reductas
e =DHFR)とアスパラギン酸トランスカルバモイラ
ーゼ(aspartate transcarbamoylase =ATCase)
とがあり、これらの酵素は、夫々、高濃度のメトトレキ
セート(methotrexate)とPALAとに対して耐性をも
つ細胞内で増幅される。ATCase遺伝子は既にクロ
ーン化されているが、動物細胞に形質転換されたことは
なく増幅されたこともない。完全なDHFR遺伝子がク
ローン化されたことはない。DHFRを発現する cDN
Aが構築され且つクローン化されているが、増幅したこ
とはない。
【0005】(a)タイプの遺伝子産物にはクローン化
した細菌性ネオマイシン耐性遺伝子(bacterial neomyc
in resistance gene)がある。この産物は真核生物内に
おいて発現することが示されているが、増幅することは
いまだに示されていない。
【0006】本発明は予想もつかないような別の増幅法
を開示する。選択し得る又は識別(同定)し得る生化学
的マーカーをコードする遺伝子に特異突然変異を導入す
ることができ、その結果これらの遺伝子の機能は欠除す
る。形質転換後、前記突然変異遺伝子の発現を大幅に増
幅しその結果正常遺伝子に特徴的なレベルで発現するよ
う稀にある変異株細胞サブクローンを識別することがで
きる。
【0007】より特定的には、哺乳類細胞中で突然変異
遺伝子の活性化に係る遺伝子再配列(genetic rearrang
ement )の性格を研究すべく、遺伝子転移(gene trans
fer)に関連したシステムが開発された。完全なアデニ
ンホスホリボシルトランスフェラーゼ(adenine phosph
oribosyltransferase =aprt)遺伝子をプロモータ配列
の欠けた切頭チミジンキナーゼ(thymidine kinase=t
k)遺伝子と共に含んでいるプラスミドのシングルコピ
ーを、aprt- tk- マウス細胞内に導入するには同時形質
転換が使用されてきた。このプラスミドを含む細胞はap
rt+ 表現型に形質転換されるがtk- のままである。tk+
表現型に突然変異する稀変異株はある種のDNA再配列
を示すであろうと考えられた。分析された全てのtk+
異体は、かなり長いフランキング配列と共にプロモータ
を欠いたtk遺伝子を大幅に増幅した結果生じている。テ
ストにかけた40以上のtk+ 突然変異体では別の再配列原
因は全く観察されない。
【0008】これらの増幅したaprt+ tk+ クローンの顕
著な特徴の1つは、aprt- tk+ 変異体の出現率にある。
増幅したDNAの構造を調べると、所与のaprt- 細胞内
の全ての増幅した単位は同一の突然変異を受けているこ
とが確認される。これらのデータは、反復する遺伝子エ
レメント内の配列の等質性(sequence homogeneity)を
維持するようにデザインされている補正進行(correcti
on procession )が高い頻度で生じることを示唆してい
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明の概要 所望のタンパク性産物を産生するための遺伝情報をコー
ドする機能性増幅可能遺伝子を含むDNAIのマルチプ
ルコピーを真核細胞内に導入し得る。適当な真核細胞
を、外来DNAIと選択又は識別可能な形質(trait )
をコードする機能欠除増幅可能遺伝子を含む外来DNA
IIとで、同時形質転換する。この同時形質転換は、タン
パク産物を産生せしめるがDNAIIによりコードされた
形質は発現せしめない適切な条件下で遂行する。所望の
産物を産生する同時形質転換された真核細胞を回収し、
DNAIIによりコードされた形質を発現せしめる適当な
条件下でクローン化する。クローン化した同時形質転換
細胞はこの形質の発現に基づいて選択又は識別されて回
収される。回収された細胞はDNAIのマルチプルコピ
ーを含んでおり、メッセンジャーRNA転写体又はタン
パク性産物を産生するのに使用され得る。
【0010】本発明の好ましい具体例では、選択又は識
別可能な形質をコードする機能欠除増幅可能遺伝子を含
む外来DNAIIと選択又は識別が可能な別の形質をコー
ドする機能性増幅可能遺伝子を含む外来DNAIII とを
含むデオキシリボ核酸分子と、DNAIとを、共に用い
て適切な真核細胞を同時形質転換することにより、DN
AIのマルチプルコピーをこれら細胞内に導入する。同
時形質転換は、DNAIII によりコードされた形質は発
現せしめるがDNAIIによりコードされた形質は発現せ
しめない適切な条件下で遂行される。DNAIII により
コードされた形質を発現する同時形質転換された真核細
胞を回収し、DNAIIによりコードされた形質を発現せ
しめる適切な条件下でクローン化される。同時形質転換
され且つクローン化された細胞はDNAIIによりコード
された形質の発現に基づいて選択又は識別されて回収さ
れる。回収された細胞はDNAIのマルチプルコピーを
含んでおり、メッセンジャーRNA転写体又はタンパク
性産物の産生に使用され得る。
【0011】外来DNAを適切な真核細胞内に導入する
のに使用し得る形質転換ベクターも開示されている。
【0012】詳細な説明 タンパク性産物の産生をコードする機能性増幅可能遺伝
子を含む外来DNAIのマルチプルコピーは適切な真核
細胞内に導入し得る。この結果はDNAIと、その発現
が選択又は識別し得る表現型の形質に基づいている機能
欠除増幅可能遺伝子を含む外来DNAIIとで、共に細胞
を同時形質転換させることにより達成される。真核細胞
の同時形質転換は、タンパク産物を産生せしめるがDN
AII上の遺伝子によりコードされた形質は発現せしめな
いような適切な条件下で行う。所望の産物を産生する同
時形質転換された真核細胞は、例えば選択などにより識
別して回収され、次いでDNAII上の遺伝子によりコー
ドされた形質を発現する真核細胞の選択と識別とを可能
にする適切な条件下でクローン化される。機能欠除遺伝
子を発現する同時形質転換された細胞を回収すれば、D
NAIのマルチプルコピーを含み且つ発現する細胞が同
様に得られる。
【0013】本発明の実施に使用される適切な真核細胞
は、一般には、DNAI上の増幅可能遺伝子によりコー
ドされたタンパク性産物を産生せず、且つDNAII上の
機能欠除増幅可能遺伝子によりコードされた選択又は識
別し得る形質を発現しない細胞である。しかし乍ら本発
明は、細胞によって発現される産物の生産量を高めるた
めに使用し得る。但しその量はDNAIのマルチプルコ
ピーが細胞内に導入された場合に得られる量よりは少な
い。
【0014】同様に、本発明は、関連した選択又は識別
し得る形質ではなく遺伝子が細胞により発現される場合
に、選択又は識別可能な形質と関連した遺伝子の発現を
高めるために使用し得る。
【0015】従って、タンパク質IがDNAIでコード
されたタンパク質であり、形質IIがDNAIIでコードさ
れた形質であれば、適切な細胞は通常タンパク質I陰
性、形質II陰性の細胞ということになり、DNAIのマ
ルチプルコピーを含む細胞はタンパク質I陽性、形質II
陽性の細胞ということになろう。
【0016】DNAI及びDNAIIは、単一分子の一部
もしくはセグメントであり、又は物理的且つ化学的に結
合していない別々の分子であり得る。本発明のこの具体
例では、DNAI及びIIは単一の分子であることが好ま
しい。更に、現在一般的に理解されている同時形質転換
システムに鑑みて考察すると、別個の分子を使用して
も、こられ分子は受容体細胞の染色体内に組込まれる前
に同時形質転換の過程で相互に結合されるものと思われ
る。
【0017】DNAIに保有されている遺伝子はヒト又
は動物成長ホルモン、インシュリン、インターフェロン
タンパク質部分、凝血因子、インフルエンザウイルス抗
原、肝炎ウイルス抗原、ヒト血清アルブミン、抗体又は
他の任意のタンパク質もしくはタンパク性物質を産生す
るための遺伝情報をコードし得る。勿論、DNAI上の
遺伝子がこのような産物をコードすれば、その産物を含
み且つ発現する形質転換された細胞の選択又は識別は困
難になり得る。逆に、DNAI遺伝子が選択又は識別し
得る形質に関連したタンパク質をコードしていればプロ
セスはより容易に実施されることになる。従ってタンパ
ク質産物、例えばアデニンホスホリボシルトランスフェ
ラーゼ(aprt)、単純ヘルペスウイルス由来チミジンキ
ナーゼ(tk)、ジヒドロホレートレダクターゼ(DHF
R)、キサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ
(xprt)又はアスパラギン酸トランスカルバモイラーゼ
(ATCase)等選択又は識別し得る表現型に関連した産物
をコードする遺伝子は、DNAI上の遺伝子であり得
る。また、G418 もしくはネオマイシン耐性などの薬剤
耐性か又は受容体細胞内での形態学的変化の如き表現型
に関連したタンパク質産物を産生する他の遺伝子も使用
し得る。
【0018】DNAIIに保有されている遺伝子は、機能
を欠除した増幅し得る遺伝子である。適切な遺伝子とし
ては、初期プロモータ(primary promoter)が除去され
た遺伝子と構造的突然変異を含む遺伝子とがあり、例え
ば、プロモータが欠除しているか或いは機能が欠除して
いる遺伝子で、チミジンキナーゼ、アデニンホスホリボ
シルトランスフェラーゼ、ジヒドロホレートレダクター
ゼ、キサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、ア
スパラギン酸トランスカルバモイラーゼを産生するため
の遺伝情報をコードするか、又はネオマイシンもしくは
G418 耐性の如き薬剤耐性を得るための情報をコードす
る遺伝子が挙げられる。
【0019】DNAI及びDNAIIは担体のない(carr
ier-free)クローン化した遺伝子であるのが好ましい。
その場合には、所望でない産物の産生が回避され且つ所
望の産物の単離と精製とが容易になるという利点が得ら
れる。これらの利点は、DNAI及びDNAIIが同一の
デオキシリボ核酸分子のセグメンドであれば極めて容易
に実現される。
【0020】ここで用いられているように、外来DNA
とは、該DNAが導入される受容体細胞に固有ではない
DNAを意味する。このようなDNAは受容体と同一の
細胞タイプである種々の細胞を含む様々な細胞に由来し
得、例えば正常なマウスセルラインより得られる染色体
DNAは突然変異マウス系に導入される。該DNAはウ
イルス性または細菌性染色体DNA、プラスミドDNA
もしくはバクテリオファージDNAからも派生し得る。
DNAはまた、塩基添加又は酵素的方法により、cDN
A合成の如く化学的に合成し得る。種々のDNAが種々
の源から又は種々の方法により派生し得、例えばDNA
Iはヒトのセルラインより派生し得、DNAIIはウイル
ス由来でもよい。
【0021】同時形質転換の適切な条件は当業者には公
知であり、前掲の文献の幾つかに記載されているが、本
明細書中実験の詳細な説明に記載する。好ましい方法で
は、細胞の同時形質転換に使用する前に、DNAI及び
DNAIIをリン酸カルシウムで処理する。DNAI対D
NAIIのモル比は広範囲の値をとり得、例えば、100
0:1乃至1:1であってよい。DNAI及びDNAII
が同一DNA分子のセグメントであれば、この比は勿論
1:1になる。更に、現在の所、DANI及びDNAII
の双方が細菌性プラスミド又はファージDNAをも含む
DNA分子、より好ましくは単一DNA分子に担持され
ていることが好ましい。最後に、現在理解されている同
時形質転換メカニズムによれば、DNAIとDNAIIと
は同時形質転換された受容体細胞の染色体DNA内に安
定した状態で組込まれるものと推測される。
【0022】本発明の実施には、動物又は植物に由来す
る細胞と酵母細胞とを含む種々のタイプの真核細胞を使
用し得る。ヒト成長ホルモン又はヒト血清アルブミンの
如き特定産物の産生には哺乳類の細胞が特に適している
と思われる。
【0023】同時形質転換した細胞の回収法と、このよ
うな細胞のクローニング法及びサブクローニング法と、
表現型形質又は遺伝子型形質に基づく同時形質転換細胞
の選択又は識別法とは、適切な条件をも含めて当業者に
は公知である。
【0024】前述の方法により適切な条件下で外来DN
Aのマルチプルコピーを導入した真核細胞を維持してお
くと、メッセンジャーRNA転写体とタンパク質産物と
が産生され且つ回収され得る。このような転写とタンパ
ク質産生との適切な条件は当業者には公知である。
【0025】DNAI及びDNAIIのみを使用する真核
細胞内への外来DNAIマルチプルコピーの導入法は、
特定の産物を産生するのに使用し得る。しかし乍ら、商
業的に重要な種々のタンパク質又はタンパク性産物の産
生をコードする外来DNAのマルチプルコピーを真核細
胞内に導入したい場合は、DNAIIでコードされた形質
とは異なる選択又は識別可能な形質をコードする機能性
増幅可能遺伝子を含む外来DNAIII も使用することが
好ましい。
【0026】即ち、所望の産物をコードする機能性増幅
可能遺伝子を含む外来DNAIのマルチプルコピーを真
核細胞内に導入する好ましい方法は、適切な真核細胞
を、DNAIの他に、選択又は識別し得る第1表現型形
質をコードする機能欠除増幅可能遺伝子を含む外来DN
AIIと、第1表現型形質とは異なる選択又は識別可能な
第2表現型形質をコードする機能性増幅可能遺伝子を含
む外来DNAIII と、を含有するDNA分子と共に同時
形質転換させることである。この同時形質転換は、DN
AIII に担持された遺伝子の発現とその関連形質に基づ
く同時形質転換細胞の選択又は識別とを可能にするが、
DNAIIに担持された遺伝子又はその関連形質の発現は
可能にしない適切な条件下で実施する。DNAIII 上の
遺伝子に関連した形質を発現する同時形質転換された細
胞を回収し、DNAIIに保有された遺伝子を発現する真
核細胞を選択または識別せしめる適切な条件下でクロー
ン化する。前記の如き細胞を識別して回収することによ
り、DNAIのマルチプルコピーを含有する細胞が識別
されて回収される。適切な真核細胞は前述の通りであ
る。本発明のこの具体例では、DNAII上の遺伝子に関
連した形質又はDNAIII 上の遺伝子に関連した形質の
いずれをも発現しない二重突然変異細胞も使用し得る。
好ましくは、突然変異セルラインを使用する必要がない
ように、形質の一方又は双方が優性活動遺伝子と関連し
ているとよい。即ち、例えば、ネオマイシン耐性に関連
した遺伝子を使用すると、正常の細胞では発現されない
形質が受容体細胞に付与され、突然変異セルラインの使
用は不要となる。
【0027】DNAIと、DNAII及びDNAIII を保
有する分子とは、クローン化した担体なしの遺伝子であ
ると共に、同時形質転換に先立ちリン酸カルシウムで処
理された2つの別個の分子であることが望ましい。クロ
ーン化したDNAI対クローン化したDNAII及びDN
AIII 担持分子、例えばプラスミド、の比は広範囲の値
をとり得るが、好ましくは約650:1乃至25:1の
範囲内である。
【0028】外来DNAIは、タンパク質又はタンパク
質含有産物を産生するための遺伝情報をコードする遺伝
子を含んでいる。その例としては、ヒト及び動物の成長
ホルモン、インシュリン、インターフェロン、凝血因
子、インフルエンザウイルス抗原、肝炎ウイルス抗原、
ヒト血清アルブミン、抗体又は酵素が挙げられる。
【0029】DNAII上の機能欠除増幅可能遺伝子とD
NAIII 上の機能性増幅可能遺伝子とは広範囲に亘り得
る。適切なDNAIIの例は既に挙げた通りである。適切
なDNAIII の例も一般には同一の群より選択される
が、相違点としてDNAIII 上の遺伝子は機能欠除とい
う特徴をもたない。
【0030】他の点に関しては、DNAI,IIおよびII
I を使用する方法は、DNAI及びIIを使用する方法と
同じである。如何なる変形又は変更も当業者には明白で
あろう。DNAI及びDNAIIを用いる方法と同様に、
DNAI,IIおよびIII を用いる方法はDNAのメッセ
ンジャーRNA転写体とそれによってコードされたタン
パク性産物とを産生し且つ回収するのに使用し得る。
【0031】本発明を実施する際、デオキシリボ核酸分
子は形質転換ベクターとして使用される。このような分
子には、2種の外来DNA、即ち外来DNAIIと、pB
R322の如き細菌性プラスミドなどの非真核源に由来
する補助的DNAとを保有するものがある。本発明の好
ましい具体例では、これらの分子は環状で、外来DNA
III と、外来DNAIIと、細菌性プラスミド又はバクテ
リオファージの如き非真核源に由来するDNAとを含ん
でいる。このようなベクターの1例は図1に示されてい
る。
【0032】本発明の一用途として、ヒト成長ホルモン
のクローン化した担体のない遺伝子のマルチプルコピー
を、ネズミLtk- aprt- 細胞内に導入する場合がある。
このような細胞をクローン化したヒト成長ホルモン遺伝
子とプラスミドpdLAT−3とで同時形質転換し、次
いで前述の方法によりLtk+ aprt+ 細胞を回収すると、
ヒト成長ホルモン遺伝子のマルチプルコピーを含み且つ
発現する細胞が得られ、従って、ヒト成長ホルモンの一
産生方法が提供される。
【0033】本発明の別の用途として、pdLAT−3
に類似しているが、G418 耐性をコードするプロモータ
を欠いた機能欠除増幅可能遺伝子がtk遺伝子にとって代
わっているという点で異なるプラスミドのマルチプルコ
ピーを真核細胞内に導入する場合が挙げられる。
【0034】本発明は、更に、クローン化した担体なし
のヒト成長ホルモン遺伝子とG418耐性をコードするプ
ロモータを欠いた機能欠除増幅可能遺伝子と機能性増幅
可能aprt遺伝子とを保有するプラスミドとを、同時形質
転換することにより、この遺伝子のマルチプルコピーを
真核細胞内に導入する場合にも使用し得る。
【0035】
【実施例】実験計画 哺乳動物細胞における遺伝子再配列を研究するためのシ
ステムは、次の2つの予知に基づいて開発された;1)
プロモータを欠く遺伝子は、カルチャー内の細胞に導入
しても機能しないであろう;2)切頭された遺伝子(tr
uncated gene)を発現する稀細胞突然変異体は、何らか
の形で遺伝子再配列を受けているであろう。
【0036】ヘルペスウイルスチミジンキナーゼをコー
ドする構造遺伝子の転写制御領域は既に正確にマップ
(遺伝地図)化されている[Mc Knight, S. L., Gavis,
E. R., Kingsbury, R. 及びAxel, R., Cell, 25, 385-
398(1981年)]。転写開始部位に直接隣接する5′フラ
ンキングDNAの110個のヌクレオチドはtk遺伝子の
発現に必須である。この領域に及ぶ欠失は、特異的転写
の著しい減少とこれに付随する形質転換効率の低下との
原因となる。最初にハムスターaprt遺伝子を含む7.8
kb HindIII 断片を完全なtk遺伝子を含むプラスミド
内に挿入した。独特なBglII部位が、tk遺伝子の5′
非翻訳領域内で、イニシエータATGに対し50ヌクレ
オチドだけ5′側にある。aprt−tkクローン内の第2B
glII部位は、ハムスターDNA内に位置し、aprt発現
に必要な全ての配列に対し5′側にある。これら2つの
部位で両端が規定されるBglII断片を切除し、バクテ
リオファージλDNAの2.6kb断片で置換した。この
置換の結果、tk遺伝子のプロモータ要素と5′キャップ
部位とが除去され、一方コード領域とポリA付加部位と
が完全な形で残る。このプラスミドは、結合した突然変
異tk遺伝子のマウスLtk- aprt- 細胞内への導入を可能
にする選択可能マーカーたる機能性aprt遺伝子を含んで
いる。このプラスミドにはaprt遺伝子とtk遺伝子とが逆
の極性をもつように導入されており、そのためaprtプロ
モータからのtk転写体の連続読取り(read-through)転
写体が阻止される。このプラスミドを用いて構成された
形質転換体はaprt+ tk- 表現型である。aprt+ tk- 形質
転換体から発生するtk+ 変異体は、塩基配列の局所的変
更よりむしろ全体的再配列の結果であると推測される。
【0037】Aprt+ Tk+ 表現型への突然変異 aprt-tk プラスミドを、aprt+ 表現型を選択する条件下
で、リン酸カルシウム沈殿物としてマウスLtk- aprt-
細胞内に導入した[Wigler, M., Sweet, R., Sim, G.
K., Wold, B., Pellicer, A., Lacy, E., Maniatis,
T., Silverstein,S.及びAxel, R., Cell, 16, 777-785
(1979) ]。aprt+ クローンは全てtk- のままであっ
た。少なくとも1つのaprt-tk プラスミドコピーを取込
んだ8個のクローンが識別された。これら特徴づけられ
たクローンを別個に単離して、これらクローンからtk+
変異体サブクローンが発生する頻度のテストにかけた。
8個のクローンはいずれもアデニン−アザセリン−BU
dR中で増殖させた。これは細胞集団(cell populatio
n )のaprt+ tk- 表現型を維持する成長条件である。次
いで各セルラインを中性培地(neutral medium,アデニ
ンを補足したにすぎない)内で3世代に亘り成長させ、
その後tk- 表現型を選択する成長培地中に置いた。8個
の親クローンはいずれも細胞分裂当り1.6×10-5
至1.8×10-7の独自の割合でtk- 後代を産生した。
これらtk- 後代は全てaprt+ に留まった。
【0038】増幅はTk+ 表現型を誘起する aprt+ tk- 親株と44個のtk+ 突然変異サブクローンの
aprt遺伝子とtk遺伝子の構造をブロットハイブリダイゼ
ーション(blot hybridization)により調べた。ブロッ
ティングにより、8個のtk- 親クローンがaprt-tk プラ
スミドの組込みコピー(integrated copies )を1つか
数個含んでいることが判明した。各クローン毎に、細胞
DNAを酵素PvuIIで消化すると、aprt遺伝市内から
スペーサ配列を通して伸長し且つtk構造遺伝子全体を含
む特徴的5kb結合断片が生じる(図1参照)。aprt配列
に対してのみ相同的である。2.0kb断片も発生する。
第3断片はaprt遺伝子からフランキングDNA内へと伸
長する。DNAフランキングからtkコード配列へと伸延
する最後のバンドが細胞DNA中に観察される。tk遺伝
子又はaprt遺伝子のいずれかに特異的なプローブでハイ
ブリダイゼーションすると、44個のtk+ クローンのい
ずれにおいてもtk遺伝子と、結合aprt遺伝子とのコピー
数が20乃至40倍に増加したことがわかる。PvuII
切断DNAをtk遺伝子配列でプローブした結果、tk-
株中に、5.0kb結合断片のシングルコピーとtk遺伝子
のシングルコピーとが存在することが判明した。この断
片の強度(intensity )は、tk+ サブクローン中では、
2.4kbフランキング断片と同様に、急激に増大してい
た。増幅の規模は約20乃至40倍であった。不完全な
tk遺伝子を含む第3断片も該増幅単位内に含まれる。ブ
ロットハイブリダイゼーションによって判断されるよう
に、結合したaprt遺伝子の付随的増幅が全てのtk+ 突然
変異体に見られた。増幅されたDNA単位は、tk−aprt
プラスミドのみならず40から200kbを上回る範囲の
フランキングDNAを含む(下記参照)。テストしたク
ローンの90%に、全体的再配列を伴わない増幅プロセ
スが生じたことに留意されたい。aprt遺伝子とtk遺伝子
との間の結合はフランキング断片の変化のない完全な形
に維持されていた。
【0039】異常Tk mRNAの増幅された発現 増幅によって細胞がtk+ になるメカニズムを確認すべ
く、親tk- セルラインと増幅したtk+ セルラインとに存
在するRNA転写体の分析を行った。野生型tk遺伝子で
形質転換された細胞のコントロール集団では、野生型tk
酵素を合成せしめる主1.3kb転写体が発現される。こ
のメッセージの5′末端と3′末端との正確な遺伝子地
図はS−1ヌクレアーゼによるマッピンクアッセイを用
いて既に作製されている[Mc Knight, S. L.及びGavis,
E. R., Nucl. Acids Res., 8, 5931-5948(1980) ]。
野生型tk遺伝子のシングルコピーを含むいくかつの形質
転換体は、より小さい0.9kb転写体をも発現する。2
つの転写体を含む1つのこのようなコントロール形質転
換体からのRNAを、Northernブロットハイブリダイゼ
ーションによって調べた。切頭tk遺伝子プラスミドのシ
ングルコピーを含む細胞は、0.9kbRNA転写体を発
現する。より少ない1.1kb第2RNAも発現される。
tkプローブでハイブリダイゼーションすると、転写体が
双方共にtk構造遺伝子の一部をコードすることが判明す
る。増幅した1つのtk+ 突然変異体からのtk転写体は、
切頭tk遺伝子の増幅レベルに比例して0.9kb転写体を
過剰に生産した。第2tk+ 突然変異体は、最初極めて低
いレベルでtk- 親株中に存在する1.1kbRNAを同程
度まで過剰生産した。
【0040】これらの結果から明らかなように、tk遺伝
子の周りには多数の択一的転写開始部位が存在してお
り、その中の幾つかは第1プロモータが欠失した後に初
めて使用される。このことは、異常な形で開始された
0.9kbメッセージが高コピー数で細胞質中に存在する
時のみ十分なtk酵素を産生し得ることを示唆している。
この短い択一性転写体は、野生型タンパク質の70%に
当たる同様に短縮されたtk酵素をコードするものと推定
される。tk遺伝子配列を調べると、このメッセージの前
述の5′末端に近い3つの同位相翻訳開始コドンが観察
される。この短い酵素は機能が乏しく、豊富に存在しな
い限り十分に蓄積された酵素活性を発揮してtk+ 表現型
に転換させることはないと推測される。
【0041】増幅されたセルラインがtk+ 表現型を示す
もう1つのメカニズムでは1.1kb転写体の相対的過剰
生産が行なわれる。このRNAはaprt+ tk- 細胞中に極
めて低いレベルで存在するが、その合成は増幅により促
進される。これらの結果は、この異常転写体が、tk遺伝
子が高コピー数で存在する時にのみ十分なmRNAを発
生させる弱いプロモータにより調節されることを示唆し
ている。
【0042】増幅したDNAの物理的構造 形質転換用DNAを増幅させる能力は、増幅した遺伝子
の程度と配列を研究する簡単な実験システムを実現せし
める。同時形質転換の結果、単一の選択可能遺伝子から
成る形質転換用DNAの結合体(concatenates)は、染
色体の単一の座で1乃至2,000kb の担体DNAに組込ま
れる[Robins, D. M., Ripley, S., Henderson, A. S.
及びAxel, R., Cell, 23, 29-39(1981) ;Perucho, M.,
Hanahan, D.及びWigler, M., Cell, 22, 309-317(198
0) ]。担体DNAが充分に規定されたクローン化DN
A配列集合体から成る場合は、形質転換用要素における
これら配列の長さと順序とを正確な遺伝子地図化し得
る。
【0043】そのためにpBR322誘導体たるpAT
153に挿入されたランダムヒトDNA配列の5−15
kbインサートを含む20個のプラスミドクローンで全体
が構成された担体DNAを用いてaprt+ tk- セルライン
を構成した。このようにして構成されたセルラインは、
独自に識別し得るpBR配列が5−15kbの間隔をおい
て両側に配置されているtk−aprtプラスミドのシングル
コピーを含んでいる。tk+ 突然変異体サブクローンをこ
れらセルラインから誘導し、且つ増幅したpBR配列の
数と編成とを調べることにより増幅したDNAの機構
(organization)を確認した。
【0044】ゲノムDNAをtk- 親株から単離し、別個
に誘導された8個のtk+ 突然変異体サブクローンを分割
し、ブロットし且つpBR配列をプローブした。組込ま
れた各pBRがブロットハイブリダイゼーションの際に
単一のバンドとして表示されるよう、前記DNAを、p
BRは切断しない2種の酵素BglIIとXbaIとで切断
した。未増幅tk- 親株はシングルコピーの強度の多数の
pBRバンドを示す。8個のtk+ サブクローンはいずれ
も、pBRバンドのサブセットを増幅していた。
【0045】この実験から4つの結論を導くことができ
る。第1に、増幅単位のサイズは可変性であって40kb
から200kbを上回るまでの範囲内の値をとる。増幅し
たpBRバンドの数を数えるだけで、この増幅単位のサ
イズが直接推定される。
【0046】第2に、共通の遺伝的背景にも拘らず、各
増幅単位は独特である。2個のtk+サブクローンが同一
のpBRバンドサブセットを増幅したことは決してな
い。
【0047】第3に、この異質性にも拘らず、全てのク
ローンにおいて共通のバンドコアが増幅され、且つ1つ
の突然変異体がこのコアのみを増幅した。このコアの存
在は、全てのクローンにおいて、増幅が共通の一点で開
始され、種々の間隔をおいて外側へ進みフランキングD
NAまで及ぶことを示唆している。この共通点は増幅し
た単位の複製オリジンであり得る。増幅した単位は全体
が既に識別され且つ回収されているpBRクローンから
成るため、このオリジンは容易に単離し得る。
【0048】最後に、増幅中には拡大再配列(extensiv
e rearrangement )は起こらない。一般に、増幅した各
バンドはシングルコピーバンドとしてtk- 親株中に存在
する増幅したセルラインの10%に、tk遺伝子とaprt遺
伝子とに関する再配列が検出された。これらの再配列は
親株の遺伝子機構と共存していたが、このことは、増幅
プロセス中に遺伝子変異体が時折発生することを示唆す
る。これら変異体遺伝子は増幅した遺伝子コピーの一分
画にすぎない。
【0049】増幅したDNAの遺伝的作用(genetic ba
havior) 増幅単位内の2つの選択可能なマーカー即ちaprt及びtk
の存在は、増幅したDNAの遺伝的作用の研究を可能に
した。問題は、マルチプルaprt遺伝子を含む増幅したク
ローンが単一世代でaprt- tk+ 表現型に突然変異し得る
か否かという点にあった。これらの表現型に関する要求
は、増幅したaprt遺伝子が全て不活性化される一方でtk
遺伝子は、増幅したままでなければならないというよう
なものである。
【0050】最初に、aprt- tk+ 突然変異体を次の如く
単離した。単一の未増幅tk- 親株から誘導した約100
個のaprt+ tk+ コロニーのプールを集団培養(mass cul
ture)で成長させ、三世代に亘り中性培地内に放置した
後、aprt- tk+ 表現型の選択にかけた。この集団から誘
導したaprt- tk+ 突然変異体を1.3×10-5の頻度で
単離した。更に、14個の独立したaprt+ tk+ クローン
を別個に分析してaprt- tk+ 表現型への突然変異率を調
べた。14個のラインの中12個が3×10-4乃至4×
10-7の率でaprt- tk+ 突然変異体を産生した。このよ
うな率は、結合した単一の野生型aprt及び野生型tk遺伝
子を含む細胞がaprt- tk+ 表現型突然変異する時の頻度
に近い。これら突然変異体の単離は従ってかなり意外な
ことであった。各aprt遺伝子が他の全ての増幅したaprt
遺伝子とは独立に突然変異していたとすれば、40個の
突然変異aprt遺伝子を含む細胞を単離する確率は検出し
得ない程低かったであろう。
【0051】aprt- への突然変異率をより正確に測定す
べく、増幅した1つのセルラインを彷徨分析(fluctuat
ion analysis)[Luria, S. E.及びDelbruck, M., Gene
tics, 28, 491-511(1943) ]にかけた。表1にこの実験
の結果が要約されている。平均に対する分散の比はコン
トロール培養においては約1であるが、この値はポアソ
ン分布の場合に予想される値である。実験を続けていく
とこの比は大幅に大きくなるが、これは選択剤の導入に
先立ち中性培地内での成長中に突然変異がランダムに発
生した場合に得られるであろう結果である。突然変異の
全くない培養分画により計算したaprt- への突然変異率
[Lea, D. E.及び Coulson, C. A., J.Genet., 49, 264
-285(1949) ]は、細胞分裂当り1.41×10-4の突
然変異体で示される。最後に、この分析は、aprt- への
突然変異能力は全ての細胞の特性であって、このセルラ
インの誘導時に派生し得たような異常な変異体独自の特
性ではないことを示している。
【0052】aprt- 表現型のへ突然変異における遺伝子
型変化 aprt+ tk+ クローン集団から誘導した7個のaprt- tk+
突然変異体のブロットハイブリダイゼーションによりtk
及びaprt遺伝子の構造を調べた。
【0053】
【表1】
【0054】*彷徨実験を実施すべく、aprt+ tk+ セル
ラインの30個の複製カルチャー(replicate culture
)を、プレート毎に約20個の細胞で、接種した後、
中性培地中でコンフルエントになるまで成長させた。各
プレート毎に5×104 のの割合で細胞を重複して再び
接種し、次いでaprt- tk+ 表現型を選択した。RAの集
団培養も中性培地中に接種し、アリクォットを同様にap
rt- tk+ 表現型の選択にかけた。突然変異率をLea, D.
E.及び Coulson, C. A., J. Genet., 49, 264-285(194
9) に記載の方法で算出した。F0 計算はコロニーのな
いプレートの分画に基づいている。メジアン計算はプレ
ート毎のaprt- tk+ コロニーのメジアンに基づいてい
る。
【0055】先ず、aprt遺伝子内からtk遺伝子を通して
伸張する5.0kbPvuII断片の組込みを調べることに
より、aprt遺伝子とtk遺伝子との間の結合再配列を確認
した(図1)。次に、完全なaprt遺伝子を含む4.3kb
HindIII /BglII断片の組込みに基づきaprt遺伝子
自体の構造を確認した。
【0056】この分析の結果2種類の突然変異体が判明
した。一方の種類は全てのaprt遺伝子を欠失していた。
4.3kbHindIII /BglII断片は存在せず、aprtに
対して相同の情報はゲノム内に全く残存していなかっ
た。tk遺伝子は予想通り増幅したままであった。前述の
如くaprt+ tk+ 増幅クローンは、ドナープラスミド中に
存在するaprt及びtk間の結合を反映する特徴的5kbPv
uII断片を示す。単一aprt遺伝子の欠失は、欠失の程
度以上にtk遺伝子からフランキングDNA内へと伸張す
る新しい単一のPvuII結合断片を生ずるものと推測さ
れる。従って、全てのaprt遺伝子を除去するのに必要な
多数の独立した欠失現象は、数個の新しいPvuII断片
を発生させる筈である。全てのaprt遺伝子の欠失の結果
生じる各aprt- tk+ 突然変異クローンにおいて、元来の
結合断片とはサイズの異なる増幅したPvuII断片が1
つしか観察されないのは驚くべきことである。独立した
aprt- tk+ 突然変異サブクローンはいずれも別の単一増
幅PvuII断片を示す。欠失は独立した突然変異現象で
はなかったように思われる。増幅した系列(array )の
全メンバーにおいて単一の欠失現象が反復された。
【0057】第2の、より稀な種類のaprt- tk+ 突然変
異体はtk又はaprt遺伝子の構造又は編成(arrangement
)の変化を全く示さない。特徴的PvuII結合断片と
共にaprt遺伝子を含む4.3kb断片は変化しない。更
に、tk及びaprt遺伝子の増幅程度はaprt+ 親株及びaprt
- 突然変異体で同じである。
【0058】これらのセルラインのaprt- 表現型は、D
NAの伝達可能な変化の結果得られるのか、又は付随的
DNA変化を伴わないaprt発現の表現型変調(modulati
on)に起因するのかを確認すべく、形質転換アッセイを
使用した。高分子量DNAを、aprt遺伝子を保持する増
幅したaprt+ セルラインと3つのaprt- 突然変異体とか
ら単離した。aprt- 細胞を4つのDNAサンプルの各々
にさらし、各サンプルがaprt+ コロニーを発生させる効
率を測定した。各aprt- 突然変異ラインからの60μg
のDNAはコロニーを全く生じさせなかった。これらの
データは、この種の突然変異体がブロット分析では容易
に検出し得ないDNAの遺伝性変化に起因して発生する
ことを示している。
【0059】突然変異Aprt遺伝子により産生された
異常転写体 これらの突然変異遺伝子からのRNA転写体を分析する
と、各aprt- セルラインでは増幅したaprt遺伝子の全て
が同一の突然変異を有するという考えに合致するapr
t mRNAの変化が確認される。野生型ハムスターap
rt遺伝子のシングルコピーを含むセルラインは細胞性ポ
リA+ RNA全体で唯一の1kb転写体を発現する。切頭
tk遺伝子と共に同時増幅されたaprt遺伝子を含むaprt+
tk+ セルラインでは、このmRNAの量が増幅の度合に
比例して増加する。増幅したaprt- ラインはサザンブロ
ッティング(Southern blotting )の変化は全く示さな
いが、いずれもRNA転写体のパターンの変化は示す。
1つのセルラインではこれが特に良く示された。このラ
インは野生型1kb aprt mRNAを発現する代りに、2
つの異常転写体を産生する。これら転写体はいずれも増
幅したレベルで存在する。これら2つの転写体は野生型
パターンのスプライシング(splicing)を変化させる突
然変異の結果生じると思われる。第2突然変異ラインは
2つの類似した異常転写体を極めて少量産生する。第3
aprt- 系では適切なサイズの1kb mRNAが、増幅の程
度とはもはや合致しない低レベルで存在する。これら突
然変異の性格、又はこれら突然変異がaprt- 表現型を生
じさせる方式は、現在のところ解明されていない。しか
し乍ら、この種の突然変異体では、欠失突然変異体の場
合同様、独特のaprt突然変異が単一のaprt遺伝子内に生
じ、補正プロセス(correction processes)を通して増
幅したaprt系列(array )の全メンバーに伝達されたと
推測される。
【0060】aprt- 突然変異体における増幅したDNA
の物理的構造 補正プロセスの原因となり得るメカニズムを考察する上
で重要なのは、観察される配列変化がaprt遺伝子周辺の
局部的領域に限定されているのか、又は全体的な再配列
(reorganization)が増幅した系列全体に広がっている
のかを認識することである。そこで、規定されたプラス
ミドのみで構成されたセルラインの補正に際して生じる
増幅単位の物理的変化を調べた。前述の如く、これらの
クローン化したセルラインは、クローン化したプローブ
を使用し得るプラスミド配列から成る形質転換エレメン
トを維持する。このようにして、遺伝子地図に示された
増幅系列を補正が生じる前と後とで分析することができ
る。
【0061】プラスミドpBR322の誘導体を含む3
つのaprt+ tk- ラインをaprt+ tk+表現型の選択により
増幅させた。合計14個の増幅したサブクローンを取出
して膨脹させた。予想通り、これらの各ラインではaprt
遺伝子がtk遺伝子に結合したままであり、且つ形質転換
用DNAの有効長(significant lengths) が20乃至4
0倍に増幅していた。これら14のラインの中12個が
検出し得る頻度でaprt- tk+ 突然変異体を産生した。こ
こで強調すべきは、これらラインの各々でaprt遺伝子と
tk遺伝子とが忠実に増幅したことである。このセルライ
ンセットでは増幅プロセス中に変異体遺伝子が発生した
形跡は全く見当らなかった。
【0062】先ず、これらaprt- tk+ セルライン毎にブ
ロットハイブリダイゼーションを行うことによりaprt遺
伝子の構造を調べた。いずれの突然変異体でもaprt情報
が欠失していた。増幅した系列を含む単位全体において
単一の欠失が反復されていた。欠失は各セルライン毎に
異なる。また、これら突然変異体の中10個では、aprt
遺伝子自体内部に欠失遺伝子地図の一つのブレイクポイ
ントが生じる。このことは繰り返しpBR配列間の組換
えが欠失のメカニズムではないことを意味する。
【0063】増幅単位のフランキングDNAの機構を調
べるべくpBR322配列をプローブとして使用した。
調査の結果、増幅単位は補正時も本質的に変化しないこ
とが判明している。各突然変異体はaprt+ 親株により表
示された唯一のプラスミド配列系列を保持する。親株内
で増幅された2つのバンドはaprt- 突然変異体には存在
しない。aprt遺伝子プローブでハイブリダイゼーション
すると、これらのバンドの中一方がaprt- 突然変異体で
は欠失しているaprt遺伝子を含んでいることがわかる。
第2バンドはフランキングDNAの欠失の一つのブレイ
クポイントを反映し得る。このように、補正プロセスは
極めて保存的であると思われる。再配列は増幅した系列
の全ての単位において同等と思われるaprt遺伝子の周囲
の唯一の変化に限定される。
【0064】増幅したDNAの染色体編成 これらのセルラインの増幅したDNAが、染色体内に存
在するのか、又は二重微小染色体(double minute chro
mosomes )の如き小さな染色体外エレメントとして存在
するのかを確認すべくインシチュ(in situ)ハイブリ
ダイゼーションを使用した[Kaufman, R. J., Brown,
P. C 及びSchimke, R.T., Proc. Nat. Acad. Sci. USA,
76, 5669-5673(1979) ]。一つのaprt+ tk+ セルライ
ンRA中の増幅したDNAの位置と、補正されたaprt-
tk+ 突然変異体RA- とをインシチュハイブリダイゼー
ションにより確認した。これらの増幅したtk+ セルライ
ンは約600pBR配列を含んでいるためインシチュハ
イブリダイゼーションによる検出が容易になる。コルセ
ミド処理した細胞(colcemid-treated cells)から分裂
中期増殖体(metaphase spreads )を調製し、 125I標
識されたpBR322によりインシチュハイブリダイゼ
ーションにかけた。
【0065】pBR322でのハイブリダイゼーション
に続いてaprt+ tk+ ラインRNAの分裂中期プレートを
調べた。標識化は小さな中部動原体染色体に局在化され
ていた。25以上の分裂中期プレートを調べた結果、増
幅したDNAは独自の染色体領域を占めるらしいことが
判明した。RAのaprt- 誘導体からの分裂中期プレート
も調べた。ハイブリダイゼーション後、標識化はやはり
小さな中部動原体染色体に局在化されていた。約50の
分裂中期プレートを検査した結果、aprt- への突然変異
後も増幅したDNAは染色体内に留まることが判明し
た。
【0066】考 察 遺伝子増幅 2つの遺伝子、即ちプロモータを欠くtk遺伝子に結合し
た野生型aprt遺伝子、を含むプラスミドを用いてaprt-
tk- 細胞を形質転換した。該プラスミドのシングルコピ
ーを取込んだ形質転換体は、aprt+ 表現型を示すが依然
としてtk- である。tk+ 変異体は、かなりの長さのフラ
ンキングDNAと共に結合プラスミドを20乃至50倍
に増幅すると出現する。或る種の細胞では、突然変異tk
遺伝子が短い転写体を産生しており、この転写体は、酵
素活性の低下した切頭タンパク質をコードすると推定さ
れる。別の細胞では、異常型転写体が、明らかに弱いプ
ロモータの認識によって生じる。いずれの場合にも、細
胞をtk+ 表現型に転換すべく十分な酵素を生成するに
は、マルチプル遺伝子が必要である。
【0067】このような実験計画は、無プロモータtk遺
伝子を活性化する遺伝子再配列を含む突然変異を起すた
めに選択されたものである。挿入、欠失又は増幅の如き
再配列による突然変異は、正常細胞プロセス実行中の細
胞のゲノム認識能力を反映する。或る種の遺伝子に於け
る突然変異の原因となる再配列メカニズムを利用して別
の遺伝子の適正な機能を確保し得る。例えば、欠失は免
疫グロブリン遺伝子の活性化に於ける必然的現象である
[H. K. Sakano, G. Heinrich 及び S. Tonegawa (197
9), Nature, 280, 288-294 ]。より複雑な転位(trans
position )は、酵母の交配型を決定する不活動配列の
発現を生じる[J. B. Hicks 及びJ. Herskowitz (197
7), Genetics, 85, 373-393 ]。逆位は、原核生物の表
面抗原のサブセットの賦活及び失活の双方を生じさせ得
る[J. Zeing, M. Hilmen,及び M. Simon (1978), Cel
l, 15, 237-244 ]。最後に、絨毛膜遺伝子の増幅はシ
ョウジョウバエ(Drosophila)の幼虫発育過程で生じ絨
毛膜タンパク質の産生を増加する[A. C. Spradling (1
981), Cell, 27, 193-203 ]。
【0068】増幅の原因となる現象を説明するために2
つの普遍的メカニズムが考察された。姉妹染色分体間の
不等乗換の如き緩増幅プロセスは、酵素活性の特異的阻
害剤に耐性の増幅セルラインを生成するに必要な緩徐な
段階式選択を説明すると考えられている[F. W. Alt.,
R. E. Kellems, J. R. Bertino及びR. T. Schimke(197
8), J. Biol, Chem. 253, 1357-1370 ]。急増幅現象
は、正常コントロールメカニズムから逸脱した局在的な
複製の発生を含んでおり、世代当り2回以上の複製過程
で配列の認識及びコピーを行なわせるであろう。本発明
に係る研究では、tk+ 表現型が単一段階選択により生じ
ておりDNAの急増幅メカニズムを示唆する。
【0069】少数のクローン配列のみから成る形質転換
エレメントの増幅により、増幅単位の物理的構造の特性
決定を行なうことが可能である。現在ではまだ、クロー
ンプローブを得ることができない配列中に増幅が進行す
るかも知れないので、増幅された内因性遺伝子の構造の
解析は、多くの場合難しい。単一母体(親株)由来のい
くつかの独立tk+ セルライン中の増幅遺伝子の構造及び
従って共通の遺伝的背景を検討すると、各増幅単位が独
特(unique)であることが判明する。増幅単位のサイズ
は40から200kbを超える範囲まで可変である。この
不均質性(heterogeneity )に関わり無しに、全てのク
ローン中でバンドの共通コアが増幅される。最後に、増
幅されたバンドの各々は母体中のシングルコピー中にも
存在しており、拡大的(extensive )再配列が増幅プロ
セスに必ずしも伴なわないことを示す。
【0070】単一母体由来の全てのtk+ ラインに於いて
共通する4つのコアバンドのセットが増幅されることが
観察されるので、増幅が固定点即ちオリジンから進行す
るであろうと思われる。従って、これら4つのバンドの
1つは複製オリジンを含んでおり単離が容易な筈であ
る。しかし乍ら、同胞セルライン中の増幅単位のサイズ
はまったく不定であり、このため終了部位も不定であろ
う。複製及びその後の増幅は、独自のオリジンから種々
の長さまで進行するであろう。
【0071】絨毛膜遺伝子増幅の検討[A. C. Spradlin
g (1981), Cell, 27, 193-203 ]によって、推定される
染色体複製オリジンに近位の配列は、この座に遠位の配
列よりも高度に増幅されることが判明した。ここで報告
される結果はこの知見に一致する。更にここで報告され
る結果は、前記の如き増幅勾配(amplification gradie
nt)が個々の細胞の特性ではなく、構成細胞の各々が染
色体DNAの多少とも広い領域を均一に増幅しているよ
うな細胞集団の特性であることを示唆する。
【0072】活性低下を生じるが失活は生じないように
in vitro突然変異された選択可能遺伝子はin vivoでの
適性選択によって増幅し得ると考えられる。不能(disa
bled)遺伝子を用い別のクローン配列と共に同時形質転
換及び続いて増幅を行なうと、同時形質転換遺伝子によ
りコードされた多量のタンパク産物を産生し得るであろ
う。同時形質転換DNAを増幅する細胞を選択できるの
で、受容セルゲノムから同時形質転換DNAをクローニ
ングする作業は大いに簡単になる[M. Perucho, D. Han
ahan, L. Lipsich及び M. Wigler (1980), Nature, 28
5, 207-210 ;I.Lowy, A. Pellicer, J. Jackson, G.
K. Sim. S. Silverstein 及び R. Axel (1980), Cell,2
2, 817-823 ]。
【0073】遺伝子補正(correction) aprt+ tk+ ラインは突然変異型tk遺伝子と野生型aprt遺
伝子とから成る増幅系列を維持する。aprt- tk+ 変異体
の選択には増幅tk遺伝子を維持するための圧力が作用す
るが、20を超える野生型aprt対立遺伝子の失活が必要
である。aprt-tk+ 変異体は極めて高い頻度で生じる。
彷徨分析から10-4の突然変異率を算出し得る。従っ
て、20個の増幅aprt遺伝子の失活率は単一aprt遺伝子
の失活率とほぼ等しい。彷徨検定の結果によれば、この
特性、aprt- 表現型に突然変異する能力は、集団中の全
ての細胞に先天的に存在しており、変異細胞の小集団に
限定されない。
【0074】aprt- 表現型の選択作用は単一世代中で生
じる。しかしながら、aprt- 表現型の原因となるマルチ
プル遺伝子的現象は、1つの世代では生じないかも知れ
ないが、表現型に影響を与えること無く時間と共に累積
し、結局全部の遺伝子を失活させるであろう。
【0075】増幅DNAとaprt mRNAとの構造の解析
により、所与のaprt- 細胞内で全ての増幅単位が等しい
突然変異を担うことが判明する。これは、突然変異が1
つのaprt遺伝子内で発生し以後増幅系列内部の全ての他
のaprt遺伝子に伝達される2段階プロセスを示唆する。
このプロセスを補正(correction)と指称する。aprt-
変異体の総出現頻度は測定可能であるが、2つの構成段
階、即ち突然変異と補正との率を直接測定することはで
きない。単一aprt遺伝子の突然変異率を考慮に入れる
と、現在のデータは、補正が記載の実験条件下で極めて
有効なプロセスであり得ることを示唆する。
【0076】A.収縮及び再膨脹(re-expansion) 2つの基本的メカニズム、即ち収縮:再膨脹と遺伝的組
換とによって補正プロセスが説明されると考えられてき
た。最も簡単な形での収縮:再膨脹には、単一aprt遺伝
子の突然変異と、残存遺伝子の欠失と、tk+ 表現型を維
持するに十分な数のtk遺伝子を与えるための以後の再増
幅とが関与するであろう。これらの現象は、作用する選
択条件下で生存すべく1つの世代又は数世代に於いて発
生する必要があろう。この説明及びこれに類似の説明は
真実から遠いと考えられる。第一には、aprt- tk+ 突然
変異体中の増幅バンドのパターンはaprt+ tk+ 母体に実
質的に等しい。このことは、単一aprt+ tk- クローンの
全てのaprt+ tk+ 誘導体が異なる増幅単位を示す元来の
増幅プロセスと対照的である。再膨脹が発生するなら
ば、母体で観察されるプロフィルに似た新しい増幅バン
ドパターンが予想されない筈である。第二には、このプ
ロセスでの個々のステップ、即ち突然変異、欠失、再増
幅の予想頻度が10-9以下であり、これは観察された頻
度より5桁も小さい値である。
【0077】収縮:再膨脹の1つのモデルとしては、ダ
ブルミニッツ(double minutes)の如きマルチプル染色
体外エレメント上に増幅単位の存在を含む場合が考えら
れる。突然変異は1つのエレメント内で発生し、以後、
ランダム不等分離によって1つの細胞内に累積するであ
ろう。本発明に係る研究では増幅DNAがaprt+ 細胞及
びaprt- 細胞の双方の染色体上に存在することが観察さ
れるので、この説明には適合しない。
【0078】現在のデータに一致する収縮:再膨脹のま
た1つのモデルとしては、増幅DNAの以後の組込みを
伴なわない単一染色体座での多複製サイクルを含む場合
が考えられる。この“ローカル・ポリテナイゼーショ
ン”プロセスではオニオンスキンに似た構造が発生する
であろう。[M. Botchan, W. Topp 及び J. Sambrook
(1978), Cold, Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 43,
709-719 ]。このプロセスは、ショウジョウバエ絨毛
膜遺伝子の特異的発生増幅[A. C. Spradling (1981),
Cell, 27, 193-203 ]のように、組込みウイルス遺伝子
の増幅を説明するために考え出されたものである[M. B
otchan, W. Topp 及びJ. Sambrook (1978),Cold Spring
Harbor Symp. Quant. Biol. 43, 709-719 ]。このモ
デルを本発明に係る研究に当てはめると、aprt+ tk+
体中での増幅のためには組込みaprt−tkプラスミドの近
傍に突然変異体複製オリジンが存在する必要があろう。
この突然変異体オリジンの特性が、DNAの局在領域を
正常発育コントロールから免除し、単一細胞サイクル内
で多数回の複製を繰返させるであろう。次の世代では全
ての非組込み増幅DNAが廃棄され、突然変異体オリジ
ンは、継続する各サイクル中に“オニオンスキン”を再
生する。注目すべきは、突然変異体オリジンが関与する
場合、継続する各細胞サイクルに伴なって増幅配列の指
数累積が生じないように増幅DNAが各世代毎に廃棄さ
れる必要があることである。このようなモデルでは、ap
rt+ tk+ からaprt- tk+ への突然変異のためには、単一
組込みaprt遺伝子内部での突然変異が必要なだけであ
る。野生型非組込みaprtDNAは次の世代で廃棄され、
突然変異を生じた組込みDNAが増幅状態まで複製を行
なう。注目すべきこのような推測は現在のデータとも一
致しており、実験テストも可能である。
【0079】B.遺伝的組換え 考察が必要な最後の補正メカニズムは遺伝子組換えに関
与する。真核生物ではタンデム系列の個々の反復単位は
多くの場合、顕著な均質性(homogeneity )を示す。配
列均質性が維持されるのは、不等乗換現象又は遺伝子変
換に由ると考えられている[G. P. Smith (1976). Scie
nce, 191, 528-535; J. W. Szostak及びR. Wu (1980).
Nature, 284, 426-430 ;H. L. Klein 及びJ. D. Pete
s (1981). Nature, 289, 144-148 ]。有糸酵母細胞中
の反復DNA配列間の不等姉妹染色分体交換の頻度を直
接推定した値からは、このメカニズムが観察された均質
性を維持し得ることが示唆される[J. W. Szostak 及び
R. Wu (1980). Nature,284, 426-430 ]。不等乗換
は、2つの理由で突然変異型aprt遺伝子の固定の説明に
用いることができないと考えられる。第一に、これらの
セルライン中の高度に反復されたpBR配列間の不等乗
換は該配列の互いの関係を混乱させ、サザンブロットバ
ンドパターンの変化を生じる。従って本発明の場合とは
異なっている。第二に、これらセルラインの創成とaprt
- 表現型の選択作用との間には僅か30世代しか経過し
ない。不等乗換プロセスのコンピュータシミュレーショ
ンによれば、このような少ない世代で30個の野生型遺
伝子の系列中で突然変異型対立遺伝子が固定される確率
は、世代当り1回の姉妹染色分体交換が生じると仮定す
ると10-8未満である。
【0080】遺伝子変換は不完全相同の配列間の染色分
体(strand)交換の際に生じるであろう。次に、非相同
の領域が多くの場合不可逆的に補正される。酵母での遺
伝子複製の遺伝的挙動に関する最近の分析によれば、複
製エレメント間で最も多く見られる組換えメカニズムは
転換であることが示唆されている[H. L. Klein, J.D.
Petes (1981). Nature, 289, 144-148 ;J. A. Jackso
n, G. E. Fink (1981). Nature, 292, 306-311 ]。従
って、aprt- 状態への補正は、突然変異型遺伝子と野生
型aprt遺伝子との間の反復ストランド対合(pairing )
が生じ引続いて全ての野生型遺伝子の突然変異表現型へ
の変換が生じたことの結果であろう。観察された補正の
説明となるためには、このメカニズムが高頻度で作用し
ていなければならない。
【0081】遺伝子変換は、酵母の交配型相互変換の発
生プロセス[J. E. Haber, D. T.Rogers及びJ. H. Mc C
usker (1980), Cell, 22, 277-289 ;A. J. Klar, J. M
cIndoo, J. W. Strathern及びJ. B. Hicks (1980). Cel
l, 22, 291-298 ]、及び、反復遺伝子間の配列の一致
の維持[J. L. Sleightom, A. E. Blechl 及びO. Smith
ies (1980). Cell, 21, 627-638 ;S. Scherer及びR.
W. Davis (1980). Science, 209, 1380-1384 ;J. A. J
ackson 及びG. R. Fink (1981). Nature, 292, 306-311
]に関与していた。従ってこのメカニズムは、体細胞
での別の必然的プロセスの維持に重要であろうが適当な
選択が作用したときにのみ明らかになる。本発明に係る
研究に於いては、増幅aprt遺伝子の補正メカニズムがい
かなるものであっても、分析された形質転換体が反復遺
伝的エレメント間で配列均質性を維持すべく設計された
精巧なメカニズムを有することは明らかである。
【0082】実験手順 セルカルチャー(細胞培養) ネズミのLtk- aprt- 細胞を、10%の仔牛血清(M.
A. Bioproducts )と50μg/mlのジアミノプリン
(DAP)とを加えたダルベッコ変性イーグル培地(D
ME)に維持した。DME、10%仔牛血清、4μg/
mlのアザセリン、15μg/mlのアデニン(DME+A
zAd)[M. Wigler, R. Sweet, G. K. Sim, B. Wold,
A. Pellicer, E. Lacy, T. Maniatis, S. Silverstein
及び R. Axel, (1979). Cell, 16, 777-785 ]中でaprt
+ tk- 形質転換体を選択した。aprt+tk- 形質転換体を
DME+AzAdに30μg/mlのBUdRを加えた培
地に維持した。DME,10%仔牛血清、15μg/ml
のヒポキサンチン、1μg/mlのアミノプテリン、5μ
g/mlのチミジン(DME+HAT)[M. Wigler, S.S
ilverstein, S. L. Lee, A. Pellicer, Y. Cheng 及び
R. Axel (1977). Cell,11, 223-232 ]の中でaprt+ tk
+ 突然変異体を選択した。aprt+ tk+ セルラインを引続
き、DME、10%仔牛血清、15μg/mlのアデニ
ン、1μg/mlのアミノプテリン、5μg/mlのチミジ
ン(DME+AAT)中に維持した。aprt-tk+ 突然変
異体を選択し、DME+HATに100μg/mlのジア
ミノプリンを加えた培地(DME+HAT+DAP)中
に維持した。
【0083】Ltk- aprt- 細胞の形質転換 Ltk- aprt- 細胞を、先行文献[F. L. Graham及び A.
J. van der Ed (1973). Virology, 52, 456-467 ;M. W
igler, S. Silverstein, S. L. Lee, A. Pellicer, Y.
Cheng 及びR. Axel (1977). Cell, 11, 223-232 ]に記
載のように、(SalIで直線化した)20ngのaprt−
tk構築体たるプラスミドpdLAT−3で形質転換し
た。いくつかのセルラインを、pBR322誘導体、p
AT−153にヒトDNAを挿入して構築された異なる
20種のヒトDNAランダムクローンのみから成る1μ
gの担体DNAを用いて同時形質転換した。
【0084】tk+ aprt+ 突然変異体サブクローンの選択 aprt+ tk- 形質転換体をDME+AzAd+BUdR中
で増殖(膨脹)させた。次に中性培地中(DME+アデ
ニン)で細胞を3世代成長させ、DME+AAT中でプ
レート当り細胞5×105 個に分割した。公式:
【0085】
【数1】
【0086】を用いて突然変異率を算出した。但し、式
中のMは単離された突然変異体コロニーの数、Nは選択
に用いられた細胞数、Gは中性培地中での世代成長数を
示す。
【0087】aprt- tk+ 突然変異体の選択 aprt+ tk+ 表現型の選択によってaprt+ tk- クローンを
増幅した。このようなクローンを捕集し選択性培地(D
ME+AAT)上で約20世代に亘り増殖した。次に細
胞をプレート当り5×105 個で再度プレートし、中性
培地(DME+ヒポキサンチン+アデニン+チミジン)
中で3日間成長させ、次にaprt- tk+ 表現型の選択に用
いた(DME+HAT+DAP)。前記同様に突然変異
率を算出した。
【0088】ブロットハイブリダイゼーション 細胞DNAを2uヌクレアーゼ/μgDNAで2時間消
化した。サンプルを40mM Tris,4mM酢酸ナ
トリウム、1mM EDTA,pH7.9中で0.8%
の平板アガロースゲルの電気泳動にかけた(スロット当
り10μgDNA)。DNA断片をニトロセルロースペ
ーパーに移し[E. M. Southern (1973).J. Mol. Biol.
98, 503-517]、フィルタを先行文献に準じてハイブリ
ダイズし、洗浄し、X線フィルムに感光させた[R. Wei
nstock, R. Sweet, M. Weiss, H.Cedar及び R. Axel (1
979). Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 75, 1299-1303 ;
M.Wigler, R. Sweet, G. K. Sim. B. Wold, A. Pellice
r, E. Lacy, T. Maniatis, S. Silverstein及びR. Axel
(1979). Cell, 16, 777-785 ]。tk遺伝子のDNAプ
ローブは[A. Pellicer, D. Robins, B. Wold, R. Swee
t, J. Jackson, I.Lowy, J. M. Roberts, G. K. Sim,
S. Silverstein及び R. Axel (1980). Science, 209,
1414-1422 ]、3.6kbのBamHI断片は1.9kbのH
inf断片を含んでおり、aprt遺伝子のDNAプローブは
[I. Lowy, A. Pellicer, J. Jackson, G. K. Sim. S.
Silverstein 及び R. Axel (1980) Cell, 22, 817-823
]2.0kbのHincII断片を含んでいる。プローブを
α−32Pデオキシヌクレオチドトリホスフェートで0.
5−1×109 cpm/μg の特異活性にニックトランスレ
ーションした[R. Weinstock, R. Sweet, M. Weiss, H.
Cedar及び R. Axel (1979). Proc, Nat, Acad, Sci. U
SA, 75, 1299-1303 ]。
【0089】グアニンジチオシアネートと高温フェノー
ル抽出とを用いる手順で全細胞RNAを調製した。60
mlの組織培養皿当り0.5−1.0mlの4Mグアニジン
チオシアネートを添加した。細胞をダウンス(dounce)
に滴下し60℃に加熱した。細胞を次に均質になるまで
ダウンスした。10mlの高温フェノールを溶解物に添加
し60℃で5分間混合した。10mlのクロロホルムを添
加し10mlの0.1M酢酸ナトリウム、pH5を添加し
た。60℃で10乃至15分間振盪し、5分間氷冷し
て、遠心(spin)した。水相を除去し、フェノール及び
クロロホルムで抽出を繰返した。次に60℃で振盪し、
冷却し、遠心して抽出をもう一度繰返した。上清をエタ
ノール沈殿させた。
【0090】H. Aviv 及びP. Leder (1979), Proc. Na
t. Acad. Sci. USA, 69, 1408-1412に記載の如くポリA
選択を実施した。アガロース−ホルムアルデヒドゲル
[H. Lehrach, D. Diamond, J. M. Wozney及びH. Boedt
ker (1977). Biochemistry, 16, 4743-4751 ]を使用
し、 D. Goldberg (1980), Proc. Nat. Acad. Sci. US
A,77, 5794-5798 ]に記載の条件下でニトロセルロース
上のRNAブロッティングを実施した。
【0091】コンピュータシミュレーション n個の野生型対立遺伝子の系列中の単一突然変異体対立
遺伝子が姉妹染色分体交換によりm世代後に完全系列を
含み得る確率を決定するためにコンピュータプログラム
を設計した。変数は、反復系列中の遺伝子コピーの初期
数と、系列中での突然変異対立遺伝子の初期位置と、不
等乗換現象の結果たる系列の最小許容サイズと姉妹染色
分体対合中の誤対合(misregister )の最大の割合とで
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、Tk及びAprt遺伝子配列を含む組換型プ
ラスミドpdLAT−3の制限マップを示す。より特定
的には、プラスミドpdLAT-3 はベクターpBR322の
BamHI部位に挿入された単純ヘルペスウイルスゲノム
の2.8kb BglII/BamHI断片を含んでいる。こ
の断片は、1.6kbの3′フランキングDNA(斜線部
分)の他、チミジンキナーゼ遺伝子の完全コード配列
(黒塗り部分)を含んでいるが、プロモータと5′フラ
ンキングDNA配列を欠いている。イニシエータAUG
はBglII部位に対し50ヌクレオチド3′側に配置さ
れている。更に同位相(in-phase)のAUGコドンも示
されている。このプラスミドは約700bpの5′フラン
キングDNAの他ハムスターaprt遺伝子全体を含むハム
スターDNAの4.3kb HindIII /BglII断片
(白抜き部分)をも含んでいる。ファージゲノムの位置
36489 から38935 までに由来するバクテリオファージλ
DNA(λ)の2.4kb BglIIインサートはハムス
ターDNA配列とヘルペスウイルスDNA配列とを分断
している。tk遺伝子とaprt遺伝子とは逆の極性(方向
性,polarity)をもつように挿入されている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12P 21/00 C 8214−4B //(C12P 21/00 C12R 1:91) (72)発明者 リチヤード・アクセル アメリカ合衆国、ニユー・ヨーク・10025、 ニユー・ヨーク、リヴアーサイド・ドライ ヴ・410 (72)発明者 ジエイムズ・マイケル・ロバーツ アメリカ合衆国、ニユー・ヨーク・10032、 ニユー・ヨーク、ヘヴン・アヴエニユー・ 134

Claims (44)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)所望のタンパク性産物の産生をコ
    ードする機能性増幅可能遺伝子を含む外来DNAIと初
    期プロモータが除去された選択可能又は識別可能な機能
    欠除増幅可能チミジンキナーゼ又はアデニンホスホリボ
    シルトランスフェラーゼ遺伝子を含む外来DNAIIとを
    用い、DNAI上の遺伝子によりコードされる所望産物
    を産生せしめるがDNAII上の遺伝子によりコードされ
    る選択可能又は識別可能な形質を発現せしめない条件下
    で、適当な真核細胞を同時形質転換し、但し前記機能性
    増幅可能遺伝子と前記機能欠除増幅可能遺伝子は互いに
    異なるものであり、(b)所望タンパク性産物を産生す
    る同時形質転換真核細胞を回収し、(c)DNAII上の
    遺伝子によりコードされる選択可能又は識別可能な形質
    を発現する細胞の選択又は識別を可能にする条件下で、
    回収された同時形質転換細胞をクローニングし、(d)
    得られたクローン化細胞を回収することによって得られ
    ることを特徴とする外来DNAIのマルチプルコピーが
    導入された真核細胞。
  2. 【請求項2】 真核細胞が哺乳動物細胞であることを特
    徴とする請求項1に記載の真核細胞。
  3. 【請求項3】 (a)所望のタンパク性産物の産生をコ
    ードする機能性増幅可能遺伝子を含む外来DNAIと初
    期プロモータが除去された選択可能又は識別可能な機能
    欠除増幅可能チミジンキナーゼ又はアデニンホスホリボ
    シルトランスフェラーゼ遺伝子を含む外来DNAIIとを
    用い、DNAI上の遺伝子によりコードされる所望産物
    を産生せしめるがDNAII上の遺伝子によりコードされ
    る選択可能又は識別可能な形質を発現せしめない条件下
    で、適当な真核細胞を同時形質転換し、但し前記機能性
    増幅可能遺伝子と前記機能欠除増幅可能遺伝子は互いに
    異なるものであり、(b)所望タンパク性産物を産生す
    る同時形質転換真核細胞を回収し、(c)DNAII上の
    遺伝子によりコードされる選択可能又は識別可能な形質
    を発現する細胞の選択又は識別を可能にする条件下で、
    回収された同時形質転換細胞をクローニングし、(d)
    得られたクローン化細胞を回収し、これにより、DNA
    Iのマルチプルコピーを含む真核細胞を得、(e)DN
    AIをメッセンジャーRNAに転写すべく適当な条件下
    に細胞を維持するステップを含む外来DNAIに相補的
    なメッセンジャーRNA転写体の産生方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の方法を用いて転写体を
    産生し、該産生された転写体を回収するステップを含む
    メッセンジャーRNA転写体の取得方法。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載の方法を用いて外来DN
    AIに相補的なメッセンジャーRNA転写体を真核細胞
    中で産生し、転写体をタンパク性産物に翻訳するための
    適当な条件下に細胞を維持するステップを含むことを特
    徴とするタンパク性産物の産生方法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の方法を用いてタンパク
    性産物を産生し、該産生された産物を回収するステップ
    を含むタンパク性産物の取得方法。
  7. 【請求項7】 真核細胞内に外来DNAIのマルチプル
    コピーを生じさせるための方法であって、 (a)所望のタンパク性産物の産生をコードする機能性
    増幅可能遺伝子を含む前記外来DNAIと、初期プロモ
    ータが除去された第1の選択可能又は識別可能な機能欠
    除増幅可能チミジンキナーゼ又はアデニンホスホリボシ
    ルトランスフェラーゼ遺伝子を含む外来DNAII及び優
    性の第2の選択可能又は識別可能な表現型形質をコード
    する機能性増幅可能遺伝子を含む外来DNAIII の双方
    を含むデオキシリボ核酸分子とを用い、前記優性の第2
    の表現型形質を発現するがDNAII上の遺伝子によりコ
    ードされた前記第1の選択可能又は識別可能な形質を発
    現しない同時形質転換細胞の選択又は識別を可能にする
    ための条件下で、適当な真核細胞を同時形質転換し、但
    し前記機能性遺伝子と前記機能欠除遺伝子は互いに異な
    るものであり、 (b)前記優性の第2表現型形質を発現する同時形質転
    換真核細胞を回収し、 (c)DNAII上の遺伝子によりコードされる前記第1
    の選択可能又は識別可能な形質を発現する細胞の選択又
    は識別を可能にさせる条件下で、回収された同時形質転
    換細胞をクローニングし、 (d)得られたクローン化細胞を回収し、これによりD
    NAIのマルチプルコピーを含む真核細胞を得る、こと
    を包含する方法。
  8. 【請求項8】 適当な真核細胞が、DNAIIに保有され
    た機能欠除増幅可能遺伝子によりコードされた第1の選
    択可能又は識別可能形質を発現しないことを特徴とする
    請求項7に記載の方法。
  9. 【請求項9】 適当な真核細胞が、DNAIII に保有さ
    れた機能性増幅可能遺伝子によりコードされた第2の選
    択可能又は識別可能遺伝子を発現しないことを特徴とす
    る請求項7に記載の方法。
  10. 【請求項10】 適当な真核細胞が、第1又は第2の形
    質を発現しないことを特徴とする請求項7に記載の方
    法。
  11. 【請求項11】 DNAIとDNAIIとDNAIII と
    が、同じデオキシリボ核酸分子に保有されていることを
    特徴とする請求項7に記載の方法。
  12. 【請求項12】 DNAIが、DNAIIとDNAIII と
    を保有する分子とは別の非結合デオキシリボ核酸分子に
    保有されていることを特徴とする請求項7に記載の方
    法。
  13. 【請求項13】 DNAIの遺伝子が、ヒト又は動物の
    成長ホルモン、インシュリン、インターフェロン、凝血
    因子、インフルエンザウイルス抗原、肝炎ウイルス抗
    原、ヒト血清アルブミン又は抗体の産生をコードしてい
    ることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  14. 【請求項14】 DNAIIに保有された機能欠除増幅可
    能遺伝子が、チミジンキナーゼ又はアデニンホスホリボ
    シルトランスフェラーゼの産生をコードする遺伝子から
    誘導されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  15. 【請求項15】 DNAIIに保有された機能欠除増幅可
    能遺伝子が、初期プロモータが除去された単純ヘルペス
    ウイルス由来のチミジンキナーゼ遺伝子であることを特
    徴とする請求項7に記載の方法。
  16. 【請求項16】 DNAIII に保有された遺伝子が、チ
    ミジンキナーゼ、アデニンホスホリボシルトランスフェ
    ラーゼ、ジヒドロホレートレダクターゼの産生又はネオ
    マイシン耐性をコードする遺伝子に由来することを特徴
    とする請求項7に記載の方法。
  17. 【請求項17】 DNAIとDNAIIとDNAIII とが
    無担体のクローン化遺伝子であることを特徴とする請求
    項7に記載の方法。
  18. 【請求項18】 DNAIとDNAIIとDNAIII とが
    無担体のクローン化遺伝子であることを特徴とする請求
    項11に記載の方法。
  19. 【請求項19】 DNAIIとDNAIII と細菌性プラス
    ミド又はファージDNAとが同じDNA分子に保有され
    ていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  20. 【請求項20】 細胞の同時形質転換に使用する前に前
    記外来DNAIをリン酸カルシウムで処理することを特
    徴とする請求項7に記載の方法。
  21. 【請求項21】 細胞の同時形質転換に使用する前にD
    NAIIとDNAIIIとをリン酸カルシウムで処理するこ
    とを特徴とする請求項7に記載の方法。
  22. 【請求項22】 適当な真核細胞が哺乳動物細胞である
    ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
  23. 【請求項23】 DNAIが、同時形質転換細胞の染色
    体DNAに組み込まれていることを特徴とする請求項7
    に記載の方法。
  24. 【請求項24】 DNAIIとDNAIII とが、細胞の染
    色体DNAに組み込まれていることを特徴とする請求項
    7に記載の方法。
  25. 【請求項25】 請求項7に記載の方法を使用してDN
    AIが導入された真核細胞。
  26. 【請求項26】 真核細胞が哺乳動物細胞であることを
    特徴とする請求項25に記載の真核細胞。
  27. 【請求項27】 請求項7に記載の方法を使用して外来
    DNAIのマルチプルコピーを真核細胞に導入し、DN
    AIをメッセンジャーRNAに転写すべく適当な条件下
    に細胞を維持するステップを含む外来DNAIに相補的
    なメッセンジャーRNA転写体の産生方法。
  28. 【請求項28】 請求項27に記載の方法を用いて転写
    体を産生し、該産生された転写体を回収するステップを
    含むメッセンジャーRNA転写体の取得方法。
  29. 【請求項29】 請求項27に記載の方法を用いて外来
    DNAIに相補的なメッセンジャーRNA転写体を真核
    細胞中で産生し、転写体をタンパク性産物に翻訳するた
    めの適当な条件下に細胞を維持するステップを含むこと
    を特徴とするタンパク性産物の産生方法。
  30. 【請求項30】 請求項29に記載の方法を用いてタン
    パク性産物を産生し、該産生された産物を回収するステ
    ップを含むタンパク性産物の取得方法。
  31. 【請求項31】 所望タンパク性産物の産生をコードす
    る機能性増幅可能遺伝子を含む外来DNAIと選択可能
    又は識別可能な形質をコードする機能欠除増幅可能遺伝
    子を含む外来DNAIIと非真核生物ソース由来のDNA
    とを含むことを特徴とする、真核細胞内への外来DNA
    I導入用形質転換ベクターとして有用なデオキシリボ核
    酸分子。
  32. 【請求項32】 前記所望産物が、DNAII上の遺伝子
    によりコードされた形質とは異なる選択可能又は識別可
    能な形質の発現と関連していることを特徴とする請求項
    31に記載の分子。
  33. 【請求項33】 非真核生物DNAが細菌性DNAであ
    ることを特徴とする請求項31に記載の分子。
  34. 【請求項34】 非真核生物DNAがpBR322由来
    であることを特徴とする請求項31に記載の分子。
  35. 【請求項35】 産物が、アデノシンホスホリボシルト
    ランスフェラーゼであることを特徴とする請求項32に
    記載の分子。
  36. 【請求項36】 産物が、ジヒドロホレートレダクター
    ゼであることを特徴とする請求項32に記載の分子。
  37. 【請求項37】 産物が、チミジンキナーゼであること
    を特徴とする請求項32に記載の分子。
  38. 【請求項38】 選択可能又は識別可能な形質がネオマ
    イシン耐性であることを特徴とする請求項32に記載の
    分子。
  39. 【請求項39】 機能欠除増幅可能遺伝子がアデノシン
    ホスホリボシルトランスフェラーゼの産生をコードする
    ことを特徴とする請求項31に記載の分子。
  40. 【請求項40】 機能欠除増幅可能遺伝子がジヒドロホ
    レートレダクターゼの産生をコードすることを特徴とす
    る請求項31に記載の分子。
  41. 【請求項41】 機能欠除増幅可能遺伝子がチミジンキ
    ナーゼの産生をコードすることを特徴とする請求項31
    に記載の分子。
  42. 【請求項42】 機能欠除増幅可能遺伝子がネオマイシ
    ン耐性をコードすることを特徴とする請求項31に記載
    の分子。
  43. 【請求項43】 環状である請求項31に記載の分子。
  44. 【請求項44】 プラスミドpdLAT−3である請求
    項43に記載の分子。
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