JPH064064Y2 - 波力ポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、海洋エネルギーのうち波力を利用する波力ポ
ンプに関する。

〔従来の技術〕

海洋エネルギーの利用の一つとして波力による発電シス
テムが研究されている。この波力発電は一例として、波
が来るとバケツを逆さにしたような空気ピストン室の空
気が圧縮されて、波が引けばふくらむ。この空気の動き
で上部の空気タービンを回し、発電するものである。

このように波力発電はその多くが大掛りな空気室等を用
いたもので、機構が複雑で建造コストが大きいものとな
るため実用化は十分には進んでいない。

一方、海洋は比較的厳しい自然環境にあり、ここに設置
する設備の立地環境を考えると、建設、メンテナンスに
人手がかからず、簡易構造で自然のエネルギーをうまく
利用するものが望まれるが、従来これに関し確立された
技術は存在していなかった。

かかる事情を考慮して、海中に設置したケーソンや管に
フロートを取付け、波浪によりフロートが上下動するこ
とを利用して波エネルギーを位置エネルギーに変換して
海水や空気を送り出すようにした波力ポンプを、出願人
は先に実願昭60-180616号、実願昭60-180617号、実願昭
60-180618号、実願昭60-44151号等として出願した。

しかし、これらのものはいずれもフロートを使用し、し
かもこのフロートにはこれとともに上下動する水室や管
が一体的に取付けられ、この水室または管に他の管を摺
動自在に組合わせる構造のもので、かつ、この摺動部は
水中に位置する。

〔考案が解決しようとする課題〕

このため、設置作業が面倒で、装置全体も構造が複雑と
なり建造コストも大きいものとなる。

本考案の目的は前記従来例の不都合を解消し、構造及び
設置が簡単で、しかも波力を効率よく利用できる耐久性
に富む波力ポンプを提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

本考案は前記目的を達成するため、一側面を波浪による
水の出入口用開口に形成し、この開口に平行に波受板の
下端をケーソン底部に回動自在に軸着し、一方、ケーソ
ンの上方外に設けた給水管内にピストンを水平に設け、
該ピストンと前記波受板の上端とをロッドで水平に連結
し、また、該給水管の途中を分岐してなる分岐部をケー
ソンの壁の適宜個所に設けた送水口に連通し、これら給
水管と分岐部にそれぞれ逆流防止弁を内設し、さらに、
前記開口端にこの開口を閉鎖するゲートを着脱自在に取
付けるための戸当たりを設けたことを要旨とするもので
ある。

〔作用〕

本考案によれば、波浪がよせると波受板が下端を中心軸
としてこのよせる方向に揺動し、これによりロッドが略
水平方向に移動してピストンが給水管内を往復運動し内
部の液体を送り出す。

その際、給水管内の液体はこの給水管内の逆流防止弁を
通って送り出され、一方、分岐部の逆流防止弁は圧力に
よって閉ざされる。

次に波浪が引くと、これにより波受板が波浪が引く方向
へと揺動し、この時給水管内の逆流防止弁は閉ざされ、
一方、分岐部の逆流防止弁が開いてケーソンの壁の適宜
個所に設けた送水口より液体が効率よく取り込まれる。

このように給水管と分岐部によって液体が効率よく補
給、排出を繰り返される。

また、保守点検を行う場合は、ケーソンの開口に設けた
戸当りにゲートを嵌め込み、ケーソン内の水を排水する
とともに海水の流入を阻止してこれを行う。

さらに、陸上でケーソンを製作後にこれを現場に曳航す
る場合も、ゲートを嵌め込み、ケーソンを海上に浮かし
て運搬すればよい。

〔実施例〕

以下、図面について本考案の実施例を詳細に説明する。

第１図本考案の波力ポンプの実施例を示す縦断側面図、
第２図は要部の斜視図で、図中１はコンクリート製もし
しくは鋼製のケーソンを示し、護岸用として配置され
る。

かかるケーソン１の一方の側面には波浪による水の出入
口用開口２を形成した。

そして、このケーソン１内の前記開口２近くに該開口２
に対面させて波受板３の下端を回動自在に軸着する。

この波受板３は下端部ピン結合部の下方とケーソン１底
板との間に取水部４となる隙間を有し、ケーソン１内に
海水が自由に出入りできる。

一方、ケーソン１外に給水間５を設置し、その一方の端
にピストン６を挿入して該ピストンｂを前記波受板３の
上端にロッド８で連結する。

なお、ピストン６と波受板３のロッド８との連結はそれ
ぞれピン結合等の手段によりこれを行い回動自在なもの
としておく。

そして、給水間５の途中を分岐し、この分岐部５ａをケ
ーソン１の壁の適宜個所例えばもう一方の側面に設けた
送水口１ａに連通させた。

図中７ａ，７ｂはそれぞれ給水管５内に設けた逆流防止
弁を示す。

図中９は前記開口２を閉塞するゲートを示し、開口２端
に形成した戸当たり10に着脱自在に取付けられる。

次に使用法及び動作について説明すると、波受板３が波
浪の押寄せ方向と直交するようにケーソン１を波打ち際
などに設置する。

いま、波浪が第１図において右方から押し寄せると、波
浪は開口２を通って波受板３に当たりこれを左方へと押
すので、波受板３はこの水平方向の波力により下端の軸
着部を中心にして上端が左方（鎖線位置）へと揺動す
る。

これにより、波受板３の上端に取付けてあるロッド８が
略水平方向の左方に移動してピストン６を左方へ押しや
り、給水管５内の水は逆流防止弁７ｂを通って送り出さ
れ、一方逆流防止弁７ａは給水管５内の水圧によって閉
じる。

次に波浪が引くと、これにより波受板３が右方へと回動
し、この時、逆流防止弁７ａが開いて給水管５内に送水
口１ａを介して水が取り込まれる。一方逆流防止弁７ｂ
は閉じる。

なお、海水は波受板３下部のピン支点の下方の取水部４
を自由に出入りでき、これにより前記給水管５内に送り
込まれた分だけ、波受板３と送水口１ａの間に補充され
る。

かかる海水の補充取入れを確実にするためには波受板３
に孔を穿設しておいてもよい。

こうして、波浪がある限り、波浪により波受板３が左右
に揺動してピストン６が往復運動を行い、ケーソン１内
の海水を汲み上げる。

かかるポンプの揚水力と揚水量等は波受板３や給水管５
の大きさ、ピストンの挿入容積で決定される。

なお、保守点検を行う場合は、ケーソン１の開口２に設
けた戸当り10にゲート９を嵌め込み、ケーソン１内の水
を排水するとともに海水の流入を阻止してこれを行う。
また、陸上でもケーソン１を製作後にこれを現場に曳航
する場合も、ゲート９を嵌め込み、ケーソン１を海上に
浮かして運搬すればよい。

〔考案の効果〕

以上述べたように本考案の波力ポンプは、水平方向の波
力により揺動する波受板を利用して波力をピストンに伝
えるようにしたので、波エネルギーを効率よく利用で
き、構造及び設置が簡単で、その結果、故障が生ずる可
能性も小さく耐久性に富むものである。

また、ケーソンの壁の適宜個所に設けた送水口からケー
ソン内の液体を汲み上げようにしたので、このケーソン
を取水構造体としても利用でき、ケーソンを護岸に用い
る場合では陸上部への汲み上げが容易となる。

さらに、戸当りにゲートを嵌め込み開口を閉鎖できるの
でケーソン内の水を排水するとともに海水の流入を阻止
して保守点検を行うことができ、陸上でケーソンを製作
後にこれを現場に曳航する場合も、ゲートを嵌め込み、
ケーソンを海上に浮かして運搬することもできる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の波力ポンプの実施例を示す縦断側面
図、第２図はゲートを取付けた状態のケーソンの斜視図
である。 １…ケーソン、１ａ…送水口 ２…開口、３…波受板 ４…取水部、５…給水管 ５ａ…分岐部、６…ピストン ７ａ，７ｂ…逆流防止弁 ８…ロッド、９…ゲート 10…戸当り、11…空気取入口 12…送気管、13…送気口 11ａ，13ａ…逆流防止弁

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】一側面を波浪による水の出入口用開口に形
   成し、この開口に平行に波受板の下端をケーソン底部に
   回動自在に軸着し、一方、ケーソンの上方外に設けた給
   水管内にピストンを水平に設け、該ピストンと前記波受
   板の上端とをロッドで水平に連結し、また、該給水管の
   途中を分岐してなる分岐部をケーソンの壁の適宜個所に
   設けた送水口に連通し、これら給水管と分岐部にそれぞ
   れ逆流防止弁を内設し、さらに、前記開口端にこの開口
   を閉鎖するゲートを着脱自在に取付けるための戸当たり
   を設けたことを特徴とする波力ポンプ。