JPH06330387A - アルミニウム系金属材料のカチオン電着塗装前処理方法 - Google Patents

アルミニウム系金属材料のカチオン電着塗装前処理方法

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JPH06330387A
JPH06330387A JP14150593A JP14150593A JPH06330387A JP H06330387 A JPH06330387 A JP H06330387A JP 14150593 A JP14150593 A JP 14150593A JP 14150593 A JP14150593 A JP 14150593A JP H06330387 A JPH06330387 A JP H06330387A
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純 川口
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 アルミニウム系金属材料のカチオン電着塗装
前処理において、前記金属材料表面を6価クロムイオン
及び/又は3価クロムイオンを含有する酸性水溶液中に
て陰極電解処理することを特徴とするアルミニウム系金
属材料のカチオン電着塗装前処理方法。 【効果】 カチオン電着塗装後の性能、すなわち塗膜密
着性、塗装後耐食性が極めて良好である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウム系金属材
料にカチオン電着塗装を行う際の塗装前処理方法に関す
る。より具体的には、該金属材料表面を6価クロムイオ
ン及び/又は3価クロムイオンを含有する酸性水溶液中
にて陰極電解処理することにより、カチオン電着塗装後
の性能、すなわち塗膜密着性、塗装後耐食性が極めて良
好な新規な塗装前処理方法に関する。
【0002】ここで、アルミニウム系金属材料とは純ア
ルミニウム材料、アルミニウム合金材料、もしくは他の
素材表面にこれらアルミニウム系金属をめっきした材料
を示すものである。
【0003】
【従来技術】従来、自動車工業、家庭電化製品製造業等
の工業生産活動においては、冷延鋼板、各種亜鉛めっき
鋼板、表面処理鋼板等の鉄系金属材料が主に使用されて
きたが、近年多くの点で有益であるアルミニウム系金属
材料の使用頻度が高まってきた。例えば自動車において
は、一般に冷延鋼板、各種亜鉛めっき鋼板、表面処理鋼
板等の鉄系金属材料が、必要性能に応じて車体の各部位
に使い分けられている。しかし、一方では近年の環境対
策のひとつとして自動車の燃費削減が要求され、その手
法のひとつとしての自動車の軽量化を目的にアルミニウ
ム系金属材料の利用が増加しつつある。さらに、このよ
うな動向を受けて、現在既に自動車の車体全てをアルミ
ニウム化した例も見られる。
【0004】ところで、このようなアルミニウム系金属
材料に塗装を行う場合には、良好な塗膜密着性、塗装後
耐食性を付与するための塗装前処理として主にクロメー
ト処理が古くから実施されている。しかし、現在自動車
塗装分野においてプライマーの主流となっているカチオ
ン電着塗装を対象とした場合には、従来のクロメート処
理は最適な塗装前処理方法とはいえない。何故なら、ク
ロメート処理を塗装下地としたカチオン電着塗装アルミ
ニウム材料は、リン酸塩処理を塗装下地としたカチオン
電着塗装冷延鋼板もしくは亜鉛系めっき鋼板(現在の自
動車外板には主にこれらの材料が用いられている)に比
べて、塗装後耐食性並びに密着性が劣ること、さらには
クロメート処理皮膜は化学的に十分安定とはいえず、ク
ロメート処理後の乾燥工程や経時時間の影響を微妙に受
けることによって特に塗膜密着性が著しく劣化する等の
現象がみられるからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明ではア
ルミニウム系金属材料にカチオン電着塗装を行う場合の
前処理として、従来のクロメート処理法が有する塗膜密
着性不良の問題点を解決し、かつより塗装後耐食性の優
れる、カチオン電着塗装に最適な新規な塗装前処理方法
を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルミニウム系
金属材料をクロムを含有する酸性水溶液中で陰極電解す
ることがカチオン電着塗装の前処理として最適であると
の結論に至り本発明を完成させた。
【0007】すなわち本発明はアルミニウム系金属材料
のカチオン電着塗装前処理において、前記金属材料を6
価クロムイオン及び/又は3価クロムイオンを含有する
酸性水溶液中にて陰極電解処理することを特徴とするア
ルミニウム系金属材料のカチオン電着塗装前処理方法を
提供する。
【0008】以下本発明の構成を詳述する。本発明にお
けるクロムイオンを含有した陰極電解処理液は6価クロ
ムイオンを用いる場合と、3価クロムイオンを用いる場
合の二つに大きく分けられるので、以下各々について具
体的に説明する。
【0009】最初に6価クロムイオンを含有する溶液に
より陰極電解処理する場合について述べる。このような
電解液では処理を継続すると皮膜として生成される3価
クロムを主体とするクロメート皮膜の一部が溶解して浴
中に3価クロムイオンが蓄積するため、結局この例は6
価と3価のクロムイオンが混存する場合についても同時
に論じられることになる。まず、陰極電解処理液として
6価クロムイオンを含有する場合は、その供給源は特に
限定しないが無水クロム酸を用いるのがより好ましく、
その濃度をクロムとして4〜300g/lとし、pH
2.0以下の酸性溶液とするのが好適である。さらに、
電解効率を向上させるために硫酸、フッ化水素等の無機
酸、あるいはケイフッ化水素酸、ホウフッ化水素酸、ジ
ルコンフッ化水素酸、チタンフッ化水素酸等の錯フッ化
物を添加するのがより好ましい。
【0010】電解条件については、被処理物となるアル
ミニウム系金属材料を陰極として電解処理する以外は特
に限定しないが、電解時の浴温を40℃〜60℃とし、
電流密度を0.5〜60A/dm2の範囲で行うのがよ
り好ましい。電解時間は、アルミニウム系金属材料の表
面に析出するクロムの量により決定されるが、クロムの
析出量は20〜300mg/m2が好適であり、上記6
価クロム浴を用いた場合、電流密度が1〜2A/dm2
の場合は、30〜120秒の電解時間で所定のクロム析
出量を得ることが可能である。
【0011】なお、陰極電解処理における対極(陽極)
は、クロムめっき処理で用いられている鉛系の電極を用
いるのが好ましい。ただし、鉄やステンレス、炭素のよ
うな不溶性電極を用いることも可能である。鉄やステン
レスを用いた場合、鉄、ニッケル等のイオンが溶出する
がこれらのイオンが電解液中に数g/lまで混入しても
許容可能である。さらに、ステンレスの場合は3価クロ
ムイオンの溶出も起こり得るが、3価クロムイオンにつ
いては陰極であるアルミニウム系金属材料の表面におい
てクロムが析出する過程でも生成し浴中に蓄積する。従
って、6価クロム浴といっても実際の稼働状態において
は3価クロムイオンとも共存状態にあり、3価クロムイ
オンも電解液中に数g/lまで混入しても許容可能であ
る。ただし、不純物として、酸化性の強い硝酸イオンや
3価クロムイオンとの溶解度積が小さなリン酸イオンな
どは皮膜の生成効率を低下させるために混入は避けるべ
きである。
【0012】次に3価クロム浴について説明する。3価
クロム浴では、硫酸クロム(Cr2(SO43)や塩化
クロム(CrCl3)をクロム供給源とし、それらを蓚
酸、ギ酸、グリシン、オキシカルボン酸等の有機錯化剤
を用いて錯化した浴を用いる。電解電流密度と電解時間
を適当に制御することにより、6価クロム浴と同様の皮
膜を得ることが可能である。ただし、析出効率が劣るた
め同じ電流密度で処理を行った場合に長い電解時間を必
要とする。また、3価クロムを用いた浴では、対極とし
て鉛系の電極を使用すると、浴中の3価クロムイオンが
6価クロムイオンに酸化されてしまうので、カーボンの
ような不溶性電極を用いる必要がある。
【0013】本発明のクロムを含有した酸性水溶液を用
いて陰極電解処理されたアルミニウム系金属材料は、そ
の後のカチオン電着塗装により極めて良好な塗膜密着性
と塗装後耐食性を示す。本発明による方法はカチオン電
着塗装前であればどの段階で行ってもよいが、電解処理
を行なう関係上その設備を簡単にするために素材製造段
階で行うのがより好ましい。例えば、軽圧メーカーにお
ける圧延工程後に行えば、アルミニウム系金属材料は平
板状なので陰極電解処理により付着するクロムを均一に
するための設備が簡単で済み、さらには対象素材の形状
が単純な方が電解処理液の次工程への持ち出しが減少
し、廃水処理設備への負担が軽減されるためである。し
かも、このような方法により高付加価値化された表面処
理アルミニウム系金属材料は、そのまま塗装することが
可能なので材料ユーザー(自動車、家電メーカー等)の
塗装工程に対する負担を著しく軽減できるのである。さ
らに、本発明の陰極電解処理法により形成された皮膜は
化学的に安定なので、従来の鉄系金属材料の塗装前処理
として広く利用されているりん酸塩処理工程(アルカリ
脱脂→水洗→りん酸塩処理→水洗)を通してもその効果
に影響はなく、ユーザーは従来の鉄系金属材料と組み合
わせて同時に塗装することも可能であり、従来のクロメ
ート処理において必要であったアルミ専用塗装前処理工
程を新たに増設する必要もない。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例とともにあ
げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施
例により限定されるものではない。なお、本実施例にお
いては次の要領で試験を実施し、その結果を表2に示し
た。 (a)供試アルミニウム合金素材 A5052(JIS規格) 70mm(縦)×150mm(横)×1.0mm(厚
さ)
【0015】(b)陰極電解処理 A5052材をアルカリ脱脂(例えば日本パーカライジ
ング製ファインクリーナー4327の2%水溶液を60
℃に加温して5分間浸漬する)洗浄して表面を清浄にし
た後、下記条件にて陰極電解処理を行い、水洗、脱イオ
ン水水洗を行った後、100℃にて温風乾燥した。 ・電解液組成:表1参照 ・電解条件 :表1における電解液No.1及び2には
陽極として鉛電極を、電解液No.3には陽極として炭
素電極を用い、クロム付着量は電解時間で調整した。 浴温 40℃ 電流密度 2A/dm2
【0016】(C)電着塗装 関西ペイント製カチオン電着塗料エレクロン2000を
用い、下記電着条件で塗装を行った。 ・電着条件 :塗装膜厚は20μmを目標とした。 浴温 :29℃ 電圧 :220V 通電時間:120秒 ・水洗 :水道水を20秒間スプレーした。 ・焼付け :オーブン中で温度を170℃とし20分
間キープした。
【0017】(d)中塗りおよび上塗り塗装 自動車外板を想定してカチオン電着塗装後さらに下記に
示す中・上塗り塗装を行った。 ・中塗り:関西ペイント製TP−37を目標膜厚30μ
mでスプレー塗装。 ・上塗り:関西ペイント製ネオアミラック6000を目
標膜厚30μmでスプレー塗装。
【0018】以下に示す方法により、評価試験を行っ
た。 (1)陰極電解処理皮膜のクロム付着測定 蛍光X線分析法により測定した。 (2)塩水噴霧試験(カチオン電着単独耐食性評価) カチオン電着塗装後の試料表面に鋭利なカッターデ素地
に達するようにクロススクラッチを入れた後、塩水噴霧
試験(JIS−Z2731)を1000時間行った場合
のクロススクラッチからの片側最大膨れ幅(mm)を測
定した結果を下記判定基準で評価した。 ○:1.5mm以下 △:1.6〜4mm未満 ×:4mm以上
【0019】(3)複合サイクルテスト(3コート耐食
性評価) カチオン電着塗装後さらに中・上塗り塗装を行った試料
に鋭利なカッターで素地に達するようにクロススクラッ
チを入れ、以下に示すa→b→c→のサイクルを12サ
イクル繰り返し、サイクル後のクロススクラッチからの
片側最大膨れ幅(mm)を測定した結果を下記判定基準
により評価した。 a.塩水噴霧試験(JIS−Z2371):24時間←c b.湿潤試験(40℃、85%RH):120時間 c.室内放置:24時間 →a ○:1.5mm以下 △:1.6〜4mm未満 ×:4mm以上
【0020】(4)耐水二次密着試験 (3)の評価試験で用いた3コート塗装試料を40℃の
脱イオン水に240時間浸漬後、鋭利なカッターを用い
て、素地に達するように2.0mm角のゴバン目を10
0個切り、セロテープ剥離を行った後のゴバン目剥離個
数を下記判定基準で評価した。 ○:剥離個数0個 △:剥離個数1〜5個 ×:剥離個数6個以上
【0021】実施例1 表1の電解液No.1を用いてアルミニウム素材にクロ
ム付着量50mg/m2を目標に陰極電解処理を行った
後、塗装試験に供した。このときの電解時間は15秒と
した。
【0022】実施例2 表1の電解液No.1を用いてアルミニウム素材にクロ
ム付着量150mg/m2を目標に陰極電解処理を行っ
た後、塗装試験に供した。このときの電解時間は30秒
とした。
【0023】実施例3 表1の電解液No.1を用いてアルミニウム素材にクロ
ム付着量300mg/m2を目標に陰極電解処理を行っ
た後、塗装試験に供した。このときの電解時間は60秒
とした。
【0024】実施例4 表1の電解液No.2を用いてアルミニウム素材にクロ
ム付着量150mg/m2を目標に陰極電解処理を行っ
た後、塗装試験に供した。このときの電解時間は30秒
とした。
【0025】実施例5 表1の電解液No.3を用いてアルミニウム素材にクロ
ム付着量100mg/m2を目標に陰極電解処理を行っ
た後、塗装試験に供した。このときの電解時間は300
秒とした。
【0026】実施例6 表1の電解液No.1を用いてアルミニウム素材にクロ
ム付着量150mg/m2を目標に陰極電解処理した後
(電解時間は30秒)、さらに以下の工程にてりん酸塩
処理を行い塗装試験に供した。この例は、本発明に基づ
いて陰極電解処理したアルミニウム素材が、鉄系材料と
共にりん酸塩処理工程を通過することを前提とし、この
場合において陰極電解処理により形成された皮膜のりん
酸塩処理工程(脱脂、化成)による影響を調査するため
のものである。 (1)脱脂 :ファインクリーナーL4480
(日本パーカライジング製アルカリ脱脂剤)温度42℃
で120秒間スプレー処理を行った。 (2)水洗 :水道水を常温にて30秒間スプレ
ーした。 (3)表面調整 :プレパレンーZTH(日本パーカ
ライジング製表面調整剤)常温にて20秒間スプレー処
理を行った。 (4)りん酸塩処理:パルボンドL3080(日本パー
カライジング製りん酸亜鉛処理剤)温度42℃にて12
0秒間浸漬処理を行った。 (5)水洗 :水道水を常温にて30秒間スプレ
ーした。 (6)脱イオン水洗:脱イオン水を常温にて20秒間ス
プレーした。 (7)水切り乾燥 :温度110℃のオーブン中で18
0秒間放置した。
【0027】比較例1 アルミニウム素材を脱脂した後、陰極電解処理を行わず
に直接塗装を行い試料を作製した。
【0028】比較例2 アルミニウム素材に、陰極電解処理を行う代わりに、目
標クロム付着量を50mg/m2として下記に示すクロ
メート処理を行った後、塗装し、試料を作製した。クロ
メート処理は、アルカリ脱脂により素材表面を清浄にし
た後、日本パーカライジング製反応クロメート処理剤ア
ルクロム713を濃度7%で建浴し、温度40℃にて6
0秒間浸漬処理した。処理後、水道水による水洗および
脱イオン水洗を行い温風乾燥した。
【0029】比較例3 アルミニウム素材に、陰極電解処理を行う代わりに、目
標クロム付着量を150mg/m2としてクロメート処
理を行った後、塗装し、試料を作製した。クロメート処
理は比較例2と同様であるが、処理時間を120秒間と
した。
【0030】表2の結果より次のことが言える。 実施例1〜5に示すように、本発明による陰極電解
処理を施したものはカチオン電着塗装に対して極めて良
好な塗装性能を付与する。しかも、実施例6に示すよう
に陰極電解処理後、従来の鉄系材料の塗装前処理として
行われているりん酸塩処理工程を通過してもその効果は
何等変わらない。 一方、比較例1に示すように塗装前処理を施さない
ものは、実使用環境を想定した複合サイクルテストにお
いて極めて劣る結果となった。 さらに、比較例2〜3に示すように、従来技術であ
るクロメート処理を施したものは、クロム付着量により
若干の差異はあるものの、耐食性においても密着性にお
いてもカチオン電着塗装前処理としては十分満足し得な
い結果となった。
【0031】
【発明の効果】アルミニウム系金属材料を対象としてカ
チオン電着塗装を行う場合の塗装前処理として、本発明
の陰極電解処理を行うことにより、極めて良好な塗装性
能を得ることが可能となり、カチオン電着塗装の利点を
十分に発揮することができる。しかも、アルミニウム系
金属材料に予め本発明の陰極電解処理を行っておくこと
により、材料ユーザーは該金属材料に直接塗装が可能と
なるだけでなく、このように陰極電解により皮膜が形成
されたアルミニウム系材料をさらに鉄系材料の塗装前処
理工程、すなわちりん酸塩処理工程を通過させても前記
皮膜の性能に影響を及ぼさないことから、本発明に基づ
いて処理されたアルミニウム系金属材料を鉄系材料と組
み合わせて同時にりん酸塩処理、並びに塗装を行うこと
が可能となり、クロメート処理の場合に必要なアルミ専
用の塗装前処理工程の新設が不要となる等の利益をもた
らす。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウム系金属材料のカチオン電着塗
    装前処理において、前記金属材料表面を6価クロムイオ
    ン及び/又は3価クロムイオンを含有する酸性水溶液中
    にて陰極電解処理することを特徴とするアルミニウム系
    金属材料のカチオン電着塗装前処理方法。
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