JPH06321807A - ロタウイルスワクチンの製造方法 - Google Patents

ロタウイルスワクチンの製造方法

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JPH06321807A
JPH06321807A JP11956594A JP11956594A JPH06321807A JP H06321807 A JPH06321807 A JP H06321807A JP 11956594 A JP11956594 A JP 11956594A JP 11956594 A JP11956594 A JP 11956594A JP H06321807 A JPH06321807 A JP H06321807A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ロータウイルスに対する中和抗体を生成する
ことができ且つ極めて弱毒化されているロータウイルス
ワクチンの製造方法の提供。 【構成】 ロータウイルスを含有する大便からの濾液
を、イン−ビトロ培養された細胞に多量に接種し、イン
−ビトロで継代を反復することを特徴とする方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発生は生弱毒ヒト−ロタウイ
ルス(rotavirus)ワクチン及びこのワクチン
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ロタウイルス粒子は1974年に、電子
顕微鏡観察により大便サンプル中に同定された〔Bishop
等、“急性胃腸炎を有する子供からの便抽出物の電子顕
微鏡観察による新ウイルスの検出”、ランセット(La
ncet)1974,149〕。
【0003】ロタウイルスは現在世界中の小児における
深刻な急性下痢の重要な原因として認識されている。急
性下痢の原因としてロタウイルスが最初に同定された
後、種々の細胞系においてこのウイルスを培養する努力
がなされたが不成功に終った。ヒト−ロタウイルスは、
ゲル電気泳動におけるそのRNAゲノムセグメントの移
動度に基いて広く2つのグループ、すなわち「短いRN
A」(S)パターンを有するものと「長いRNA」
(L)パターンを有するものに分類される。
【0004】1981年、サトー等は、MA−104細
胞のローラー培養を用いて大便試料からのヒト−ロタウ
イルスの培養に成功したことを記載した〔“細胞培養に
おけるヒト−ロタウイルスの分離”アーク.ビロロ.
(Arch. Virol.)69:155−160〕。試料をトリ
プシンによって前処理しそして少量のトリプシンを維持
培地に導入した。この技法は、下痢便からのロタウイル
スを培養するために、他人により好結果をもって使用さ
れた。
【0005】今までに培養された大部分の株が「L」パ
ターンを有するものである。「S」パターン株は培養が
困難であることが証明され、そして「S」パターンを有
するロタウイルスの2株のみが培養されたことが記載さ
れている〔例えば、“クツザワ等、細胞培養におけるヒ
ト−ロタウイルス・サブグループ1及び2の分離”、
J.クリン. ミクロビオル. (J. Clin. Microbiol.)
:727−730〕。
【0006】
【本発明の説明】発明者等は、オーストラリア及びパプ
アニューギニアにおいて疫学的に非常に重要な6株のヒ
ト−ロタウイルスの培養、及びワクチンとして有望な生
弱毒ウイルスの調製に成功した。
【0007】1977年〜1979年にオーストラリ
ア、メルボルンにおいて、そして1979年にパプアニ
ューギニアにおいて下痢を流行させた株はいずれも
「S」パターン株であったが電子顕微鏡的に異ってい
た。発明者等は、「S」パターンウイルスを含有する選
択された6個の試料の内2個の試料から「S」パターン
ウイルスの培養に成功した。他の人は「S」パターンウ
イルスの培養が困難であることを見出していた。
【0008】発明者等は、サトー等の原法と異る培養方
法を用いた。培養の出発のために1.0mlの大便濾液を
使用し、そしてその後のすべての継代のために1.0ml
の組織培養液を使用した。この増加した量の接種物が原
法に比べて好結果をもたらしたことは驚くべきことであ
る。この研究に用いた多量の接種物中の増加した数の感
染性粒子が「S」パターンを有する株の培養に成功する
機会を増加したのかもしれない。
【0009】発明者等は、−70℃で貯蔵された全便か
らの株、PBS中−20℃及び−70℃で貯蔵された便
からの株、並びに−70℃にて貯蔵されたシュークロー
スクッションペレット化ウイルスからの株を培養するこ
とに成功した。培養された株の数が少ないので、ウイル
スの培養のための便試料の最適貯蔵条件について結論を
導くことはまだできない。
【0010】この発明はまた、ヒト−ロタウイルスによ
り惹起される急性下痢に対する免疫学的保護をもたらす
ためのワクチンを提供し、このワクチンはATCC V
R2104としてブダペスト条約に基き国際寄託された
Hu/Australia /10−25−10/77/Lと称され
るウイルスの生弱毒株、又はATCC VR2105と
してブダペスト条約に基き国際寄託されたHu/Australi
a /1−9−12/77/Sと称されるウイルスの生弱
毒株を含んで成る。この発明はさらに、前記ウイルスの
両弱毒株を含んで成る、強化された交差保護をもたらす
ワクチンを提供する。
【0011】ロタウイルスの分離 1973年以来、発明者等は急性下痢を有する小児の便
から同定されたロタウイルス株を貯蔵してきた。これら
の試料のほとんどはオーストラリアの小児から得た。さ
らに、発明者等はインドネシア及びパプアニューギニア
において行われた共同疫学調査により得られた試料を使
用した。
【0012】これら貯蔵された株の多くを、ゲノムRN
Aのゲル電気泳動により試験した〔例えば、Rodger等、
“ゲノムリボ核酸の電気泳動により決定された、197
3〜1979年におけるオーストラリア、メルボルンに
おけるヒト−ロタウイルスの分子疫学”、J.クリン.
ミクロビオル(J. Clin. Mcrobiol.)13:272−2
78〕。
【0013】公知の電気泳動的タイプのロタウイルス粒
子を含有する便試料が発明者等により選択された。この
目的は、オーストラリア及び他の地域において小児に急
性下痢の大きな爆発的流行を生じさせたヒト−ロタウイ
ルス株を培養することであった。
【0014】試料は、全便として、燐酸緩衝化塩溶液
(PBS,pH7.0)中20%便ホモジネートとして、
又はシュークロースクッションペレット化ウイルスとし
て、−70℃又は−20℃において、種々の期間にわた
って貯蔵した。培養のために選択された下痢便のすべて
が主として二重殻のウイルス粒子の多数(電子顕微鏡下
で2−4+又は108 ウイルス粒子/ml以上)を含有し
ていた。試料の詳細は次の通りである。
【0015】1.「R−電気泳動タイプ」を有する8試
料 (Rodger等、上記を参照のこと)。1977年にメルボ
ルンの産科病院の新生児室の小児から集め、そしてPB
S中20%ホモジネートとして−70℃にて貯蔵したも
の。
【0016】2.「M−電気泳動タイプ」を含有する5
試料 (Rodger等、上記を参照のこと)。1977〜1978
年にメルボルンにおいて小児から集め、そしてPBS中
20%ホモジネートとして、又はシュークロースクッシ
ョンペレット化ウイルスとして−70℃にて貯蔵したも
の〔1983年Albert等による報告、“ゲノムのRNA
の電気泳動による、パプアニューギニアのハイランドに
おけるロタウイルス下痢の疫学”、J.クリン.ミクロ
ビオル.(J. Clin. Microbiol) 17:162−16
4〕。
【0017】3.「PA−電気泳動タイプ」を含有する
1試料。1979年にパプアニューギニアのハイランド
においてロタウイルス下痢の流行にかかった子供から集
め、そしてPBS中20%ホモジネートとして−20℃
において貯蔵したもの。 4.「L」パターンのロタウイルスを含有する1試料。
1981年にオーストラリア、クイーンスランドにおい
てロタウイルス下痢の流行にかかった小児から集め、そ
して全便として−20℃で貯蔵したもの。 5.「L」パターンのロタウイルスの支配的な電気泳動
タイプを含有する1試料。1981年にメルボルンにお
いて小児から集め、そしてPBS中20%ホモジネート
として−70℃にて貯蔵したもの。
【0018】培養技法 (i)培養技法は一般にサトウ等の方法に従う。MA−
104細胞〔ミクロビオロジカルアソシエーツ(Microb
iological Associates)(MA) ビオプロダクツ (Bioprodu
cts)、ウオーカービレ、MA、米国〕を、10%のウシ胎
児血清(FCS、フローラボラトリーズ、シドニー、オ
ーストラリア)及び12.5μg/mlずつのネオマイシ
ンサルフェート及びポリミキシンBサルフェートを加え
たドルベコ(Dulbecco)の変形培地(DMM、
フローラボラトリーズ、シドニー、オーストラリア、C
at NO 74−013−54)中に増殖させた。培
養チューブ中3日間のコンフルエントの細胞層をウイル
スの培養のために使用した。
【0019】ロタウイルスを含有する便試料を解凍し、
そして全便サンプルを、PBS中20%懸濁液を形成す
るようにホモジナイズした。次にすべての試料を渦流攪
拌しそして3,000×gにて10分間遠心分離した。
上清を0.45μmメンブランフィルター(ミリポア
社、ベドフォード、MA、米国)を通過せしめることによ
り細胞を除去した。
【0020】接種物を10μg/mlのトリプシン(シグ
マ、トリプシン1X、シグマ社、セントルイス、MO、米
国)により前処理した。ウイルスの増殖中の維持培地
(DMM)には1μg/mlのトリプシンを含有せしめ
た。接種物中のウイルス濃度を電子顕微鏡によりチェッ
クした。ウイルス粒子の濃度が108 個/ml以上の濃度
の場合にのみ接種物を使用した。
【0021】トリプシンで処理された便の1.0mlのア
リコートを、ローラーチューブ中にコンフルエント細胞
単層として増殖したMA−104細胞の2.0mlの細胞
培養物中に接種した。サトー等は0.1mlのアリコート
を使用した。0.1mlのアリコートを用いて他のロタウ
イルスを培養するための他の人の多くの試みは失敗に終
った。1.0mlのアリコートへの変更が幾つかのロタウ
イルス株の培養を成功に導いた。
【0022】各試料を2本ずつのチューブに接種した。
1本のチューブからの細胞を用いて免疫螢光染色(immu
nofluorescent staining) により各継代後にウイルスの
増加を監視した。この場合シミアンウイルスSA−11
に対するラビット抗血清、及びヤギFITC−接合抗−
ラビットIgG(フルオレッセインイソチオシアナート
と接合したヤギ免疫グロブリン、タゴ社、バーリンガ
ム、CA、米国から供給される)を用いた。
【0023】他方の培養チューブは次の継代のために用
いた。各継代において、前継代からの1.0mlの稀釈さ
れない材料を接種物として使用した。この特徴もまたサ
トー等により用いられた技法と対照的である。細胞変性
効果(CPE)が明らかになるまで逐次的に継代を行っ
た。次に、電子顕微鏡を用いてウイルスにつき培養液を
試験した〔Whitby等の報文、1980、“ポリアクリル
アミドヒドロゲルを用いる、電子顕微鏡によるウイルス
粒子の検出”、J.クリン・パソル.(J. Clin. Patho
l.) 33:484−487〕。
【0024】(ii)FRhL2細胞(DBS−FRhL
2 −2,ATCC,ロックビレ、マリーランド、米国)
を最少必須培地(イーグル)中で増殖せしめ、これにE
arles BSS(BME)中非必須アミノ酸、10
%ウシ胎児血清(FCS、フローラボラトリーズ、シド
ニー、オーストラリア)及び12.5μg/mlずつのネ
オマイシンサルフェート及びポリミキシンBサルフェー
トを加えた。
【0025】あらかじめMA−104細胞中に培養され
たRU−3ウイルスを、小プラスチックフラスコ中細胞
の7日目コンフルエント単層に接種した。次に、前記の
培養技法を行った。2〜7日の間隔で逐次継代を行い、
そしてウイルスの増加を酵素免疫測定(EIA)により
監視し、そして後期には免疫螢光染色により監視した。
【0026】ウイルスのRNAゲノムのゲル電気泳動 この方法は記載されている(Rodger等、上記)。要約す
れば、便サンプル又は細胞培養液をドデシル硫酸ナトリ
ウムと共に破砕し、そしてフェノール、クロロホルム及
びイソアミルアルコールの組合わせを用いて脱蛋白し
た。脱蛋白されたRNAの電気泳動を、10%アクリル
アミドスラブゲル中で、Laemmli により1970年に記
載さた不連続緩衝系を用いて行った〔“バクテリオファ
ージT4の頭部の集合中構造蛋白質の開裂”、ネイチュ
アー(Nature)、(ロンドン)227:680−
685〕。まず便からのすべてのウイルスの電気泳動タ
イプを同定し、そして細胞培養物中でのCPEの出現、
すなわち、細胞の層中で増殖するウイルスによる細胞の
損傷をチェックした。
【0027】ウイルスのプラク形成 静置細胞培養への適応の後、ウイルスの量を測定するた
めに、ウイルスをプラーク形成させた〔1981年、ウ
ラサワ等の報文、“MA−104細胞中でのヒト−ロタ
ウイルスの逐次継代”、ミクロビオル.イムノル。(Mi
crobiol Immunol.)25:1025−1035〕。上層
は0.6%の精製寒天(オキソイド、英国)及び2μg
/mlのトリプシンから成る。ニュートラルレッド(0.
067mg/ml)を含有する第2上層を、インキュベーシ
ョン後4〜5日目に適用した。
【0028】結果 検討した16個の便試料からの6種類のヒト−ロタウイ
ルス株を細胞培養に適応させることに成功した。これら
の株の内3株はPBS中に−70℃で貯蔵された便から
分離され、1株は−70℃で貯蔵されたシュークロース
クッションペレット化ウイルスから分離され、1株はP
BS中に−20℃で貯蔵された便から分離され、そして
1株は−70℃で貯蔵された便から分離された。
【0029】これら6株について、第1継代からCPE
の出現まで、特異的細胞質内螢光を観察した。他の1株
は3継代の間初期螢光を示したが、これはやがて消失し
た。残りの9試料は第1継代から第10継代まで細胞質
内螢光を示さず、この段階でウイルスは培養不能である
と断定した。すべての培養可能な株について、第6継代
〜第9継代の間にCPEが出現した。
【0030】CPEの出現は、MA−104細胞単層の
接種後3〜5日目における粒状性の増加、クラスターへ
の球状化、及び極端な腐肉状化(sloughing)
から成る。種々の株の間でCPEの相違は観察されなか
った。CPEが出現した後の細胞培養液の試験により、
単殻ウイルス粒子と二重殻ウイルス粒子の混合物が示さ
れた。
【0031】この明細書においては、6種類のウイルス
を、1979年にRodger及びHolmesにより最初に提案さ
れた命名法〔“ゲル電気泳動によるサル、ウシ及びヒト
−ロタウイルスのゲノムの比較、並びにウシ分離体間の
ゲノムの相違の検出”、J.ビロル.(J. Virol.)
:839−846〕の変法を用いて命名する。この方
法は、次の情報を暗号化したものである。
【0032】a.ロタウイルスが得られた動物の種。 b.ウイルスの地理的由来。 c.実験室における株同定記号。 d.ウイルスが得られた年代。 e.電気泳動パターン、すなわち「S」か「L」か。 血清型及びサブグループの同定のための比較血清が得ら
れる場合には、この情報を各株の暗号に加えることがで
きよう。この発明に従って培養された株の暗号及び実験
室同定記号を次に示す。
【0033】
【表1】
【0034】RV−1,RV−2及びRV−3は同一で
あり、そして「R−電気泳動タイプ」に相当し、RV−
5は「M−電気泳動タイプ」(Rodger等上記)に相当
し、そしてRV−6は「PA−電気泳動タイプ」(Albe
rt等、上記)に相当するようである。この発明に従って
培養されたヒト−ロタウイルスのRNAパターン(Rodg
er等、上記、のゲル電気泳動法を用いる)を、実験室に
おいて日常的に培養したサル由来のウイルスSA11の
RNAパターンと共に第1図に示す。第1図中、左から
右にRV−1,RV−6,RV−5,RV−4及びSA
−11のパターンを示す。もとの便中のウイルスのRN
Aと細胞培養物に適応されたウイルスのRNAとの同時
電気泳動において相異が示されなかった。
【0035】3株、すなわちRV−4,RV−5及びR
V−6は異るサイズ(0.25mm〜3.5mm)のプラー
クを形成した。1株、すなわちRV−3は、細胞単層が
透明化した通常の領域ではなく、細胞の厚化から成るプ
ラークを形成した。このプラークは動物ロタウイルスの
ts変異株についてFaulkner−Valle 等〔“ロタウイル
スIII の分子生物学。ウシ−ロタウイルスの温度感受性
変異株の分離及び特徴付け”、J.ビロロ.(J. Viro
l.)42:669−677〕により1982年に記載さ
れたものと類似している。他の2株RV−1及びRV−
2はプラーク形成に適応することができなかった。プラ
ークを形成することができた株の力価は105 〜106
感染粒子/mlの間で異った。
【0036】第2図に、ヒト−ロタウイルスRV−5
(B)及びRV−3(C)によるプラーク形成を未感染
細胞対照(A)と比較する。透明化領域はBにおいて顕
著であり、そして厚化領域はCにおいて顕著である。ヒ
ト−ロタウイルスRV−3はRNAゲノムのゲル電気泳
動に基いてロタウイルスサブグループ2に属することが
知られ、そしてポリクローナル抗体及びモノクローナル
抗体に対するその反応に基いて血清型3であることが知
られる。
【0037】RV−3はまた特に、Department of Gast
roenterology, Royal children's Hospital メルボル
ン、オーストラリアによって開発されたモノクローナル
抗体によっても同定される。この抗体はMab RV−
3:3(前に101AB5−B8と称された)と称され
る。このものは、試験した他のロタウイルスとよりもR
V−3と1,000倍強く反応する。
【0038】RV−5はRNAゲノムのゲル電気泳動に
よりロタウイルスサブグループ1に属すことが知られ、
そしてポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体との
反応により血清型2であることが知られる。今や、RV
−5のユニークな生化学的構造の部分が知られる〔Dyal
l-Smith M. L. 及びHolmes I. H.、“ヒト及び動物のロ
タウイルス血清型−特異的糖蛋白質の間の配列の相同
性”、ヌクレイックアシドリサーチ(Nucleic Acids Re
search)(1984),12:109〕。
【0039】ワクチンの製造 この発明のワクチンの製造のための好ましい経路は、適
切な変更を伴って、灰白髄炎生ワクチン(経口)につい
ての最近のWHOの標準に従う〔“灰白髄炎ワクチン
(経口)のための要件”、生物学的標準についてのWH
O専門委員会、第33回報告(技術レポートシリーズ6
87)、107−174頁、WHO、ジュネーブ、19
83年〕。
【0040】ワクチンの使用 最初のワクチン経口投与は生後3ヶ月より前に行うのが
好ましく、生後すぐに行うのが特に好ましく、次に3カ
月後、小児の血清中の母体抗体が低レベルに下がったと
きに第2回ワクチン投与を行う。この後で感染が生じた
場合、小児は深刻な臨床的疾患に対して最も傷つきやす
いようである。母親へのワクチン投与は、出生時の小児
において高力価の血清抗体をもたらすが、生後3ヶ月以
後のロタウイルス感染に対する保護をもたらさないよう
である。経口ワクチン中に必要とされるロタウイルスの
株の数はまだ明らかでないが、1つの株による感染が他
の株により惹起される深刻な疾患に対して保護を行うの
に十分であると考えられる。
【0041】しかしながら、好ましいワクチンは、ヒト
又はモンキーの二倍体細胞株の培養物中に増殖した生弱
毒ロタウイルスの1又は複数のセロタイプの懸濁液を含
有する。このようなワクチンが1回又は2回、経口投与
されるであろう。次に、本発明のワクチンの有効性と無
毒性を実験例により説明する。
【0042】実験 この実験の目的は、ヒト−ロータウイルスのRV3株に
対する応答(セロコンバージョン、ウイルス放出、臨床
症状、中和抗体価)を研究することである。このロータ
ウイルス株は、ヒト−ロータウイルスの生弱毒株を代表
する。
【0043】材料及び方法 ウイルス接種物 :4頭のノトバイオート(Gn)ブタ
(Gn5,6,7,8)に、生後3日目に、ヒト−ロー
タウイルスワクチンRV3(クローン2−13−3−A
GMK、ロットC−108V)を経口投与した。細胞培
養免疫螢光測定(CCIF)におけるRV3ワクチンの
力価は6×105 FCFU/mlであった。
【0044】すべてのブタにシミラック子動物用定型飼
料を与え、そしてノトバイオート条件に維持した。生後
3日目に、ブタに4mlの培地中1mlのRV3を経口接種
した。4頭のブタすべての、第一回接種から16日目に
同じ量のRV3を2回目として再接種した(0/16D
PE)。第3回目の投与として第1回接種から32日目
にブタ当り5mlのRV3を経口投与した(0/16/3
2DPE)。すべてのブタを下痢及び臨床症状について
毎日観察した。
【0045】サンプルの収集及び試験: (i)直腸綿棒 接種後0〜10日(DPE)に各ブタから直腸綿棒を集
め、そして細胞培養免疫螢光測定(文献1:Bohl, E.
H. ら、J. Clin. Microbiol. 19:105-111)によりロー
タウイルス放出について測定した。 (ii)粘膜スメア 2頭のブタを35DPE(第3回接種後3DPE)に安
楽死させ、さらに2頭のブタを42DPE(第3回接種
後10DPE)に安楽死させ、そして十二指腸、空腸及
び回腸から粘膜スメアを調製した。固定した組織を、F
ITC−接合抗−ロータウイルス血清を用いる免疫螢光
測定(文献1)によりロータウイルス抗原の存在につい
て試験した。
【0046】(iii)血清サンプル 選択されたブタから血液サンプルをおよそ毎週集め、そ
して血清を分離した。 (iv)血清学的試験 前記のようにして得た血清サンプルについて、(1)グ
ループ抗原として特異的抗ウイルス血清抗体(EIA
Ig)を検出するための酵素免疫測定;並びに(2)同
一ロータウイルス(RV3)、関連セロタイプ3動物ロ
ータウイルス(SA11)並びにセロタイプG1,G2
及びG4を代表する3種類の標準ロータウイルス株、そ
れぞれRV4,RV5及びST3に対するロータウイル
ス血清中和抗体(VN)を検出するための螢光細胞フォ
ーカス測定の阻害;を行った。
【0047】結果 各RV3ワクチン接種後毎日、臨床症状及びロータウイ
ルス放出を分析したが、接種後ウイルス放出は1〜10
日間においてCCIFにより検出されず、そして下痢は
起らず又はわずかな特発性の下痢が起ったのみであっ
た。動物を安楽死させた後に十二指腸、空腸及び回腸か
ら調製した粘膜スメアにおいて、免疫螢光法(文献1)
によるロータウイルス抗原は陰性であった。
【0048】血清学的試験の結果を後の表に示す。すべ
ての4頭のブタはRV3の接種の後セロコンバージョン
を示した。すべてのブタがEIA Ig抗ロータウイル
ス抗体、並びにワクチン株(RV3)及び同セロタイプ
3株(SA11)に対する中和抗体を生産した。セロタ
イプ1,2又は4の異種ウイルスに対して中和抗体は生
じなかった。ロータウイルス抗体(EIA及びVN)
は、RV3の最初の投与の後検出されず又は低い力価で
存在するのみであったが、第2の投与の後4頭の子ブタ
の内3頭において高レベルが達成された。これらの3頭
の子ブタにおいて、このレベルは維持され、又は第3回
投与の後にわずかに低下した。第4の子ブタは、第3回
目のRV3の投与の後にのみ最高力価(EIA及びV
N)を示した。
【0049】
【表2】
【0050】以上の通り、本発明のワクチンは、同系ロ
ータウイルス(G3)に対して高い中和抗体価を示す
が、投与後、内臓粘膜及び便中にロータウイルスは検出
されず、また下痢を起こさず、極めて弱毒化されている
ことがわかる。
【0051】寄託 Hu/Australia /10−25−10/77/Lと称され
るウイルスの生弱毒株がアメリカン・タイプ・カルチュ
アー・コレクション(ATCC)に1985年2月1日
にブダペスト条約に基き国際寄託され受託番号ATCC
VR2104が与えられた。Hu/Australia /1−9
−12/77/Sと称されるウイルスの生弱毒株がAT
CCに1985年2月1日にブダペスト条約に基き国際
寄託され受託番号ATCC VR2105が与えられ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は各種ウイルスのRNAのゲル電気泳動図
であり、レーン1はRV−1、レーン2はRV−6、レ
ーン3はRV−5、レーン4はRV−4、そしてレーン
5はSA−11についてのパターンであり;
【図2】図2はウイルスにより形成されるプラークを示
し、生物の形態を示す図面に代る写真であって、BはR
V−5、CはRV−3、そしてAは対照をそれぞれ示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ルース フランシス ビショップ オーストラリア国,ビクトリア 3186,ブ ライトン,キナーン ストリート 23

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト−ロタウイルスにより惹起される疾
    患に対して免疫学的保護を与えるワクチンの製造方法で
    あって、ヒト−ロタウイルスを含有する大便サンプルか
    ら濾液を調製し、約2mlに匹敵する量の適当な基質のた
    めの接種物として前記サンプル0.1g以上からの濾過
    された材料を含有する量の前記濾液を使用して該基質上
    で前記ウイルスを増殖せしめ、そして該ウイルスを逐次
    的に継代することによりワクチンとして使用するために
    適当な前記ウイルスの生弱毒株を得る、ことを含んで成
    る方法。
  2. 【請求項2】 前記の量の濾液が0.2g以上の前記サ
    ンプルからの濾過された材料を含有する、請求項1に記
    載の方法。
  3. 【請求項3】 第1継代において使用したのと同程度の
    量の接種物を稀釈しないで次の継代に使用する請求項1
    又は2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記基質が細胞系MA−104からの細
    胞を含んで成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の方
    法。
  5. 【請求項5】 前記基質が細胞系FRhL2からの細胞
    を含んで成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の方
    法。
  6. 【請求項6】 前記ウイルスを5回以上逐次的に継代す
    る請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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