JPH0629559Y2 - カートリッジ式ワンコイルダブルメカニカルシール - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は水中ポンプ，エンジン付自吸式ポンプ，温水循
環ポンプおよび家庭用井戸ポンプ等の軸封部に適用され
るカートリッジ式ワンコイルダブルメカニカルシールに
関する。

［従来の技術］ 従来、第５図に示すように、乾式モータ（図示省略）を
収納した水中ポンプ（被軸封機器）において、羽根車Ａ
を取付けた回転軸Ｂは、機内側モータ室Ｃと機外側羽根
車室Ｄの間に形成された油室Ｅに装入されているワンコ
イルダブルメカニカルシールＭによって軸封され、羽根
車Ａの回転によって吸込まれる泥水などの流体が油室Ｅ
に侵入するのを防止するとともに、油室Ｅ内の潤滑油が
機内側モータ室Ｃに侵入するのを封止している。

メカニカルシールＭは、環状パッキンＭ１を介してモー
タハウジングＨに回転不能に保持されている一方の静止
密封環Ｍ２，環状パッキンＭ３を介してカバー部材Ｆに
回転不能に保持されている他方の静止密封環Ｍ４，環状
パッキンＭ５を介して回転軸Ｂと同時回転可能に取付け
られた回転ケースＭ６に回転不能に保持されている一方
の回転密封環Ｍ７および環状パッキンＭ８を介して回転
軸Ｂと同時回転可能に取付けられた回転ケースＭ９に回
転不能に保持されている他方の回転密封環Ｍ１０を有
し、回転ケースＭ６，Ｍ９間に介装されたコイルスプリ
ングＭ１１のばね力によって、一方の回転密封環Ｍ７を
一方の静止密封環Ｍ２側に、また他方の回転密封環Ｍ１
０を他方の静止密封環Ｍ４側に付勢し、それぞれ密封端
面同士を密封して軸封している。

［考案が解決しようとする課題］ 前記従来のメカニカルシールでは、各構成部材Ｍ１〜Ｍ
１１をモータハウジングＨ，回転軸Ｂおよびカバー部材
Ｆに対して順次１個づつ組込むことによってメカニカル
シールＭが構成されるようになっている。

即ち一方の静止密封環Ｍ２が保持されている環状パッ
キンＭ１をモータハウジングＨに圧入固定して静止密封
環Ｍ２および環状パッキンＭ１を回転軸Ｂに外嵌する。

環状パッキンＭ５に回転軸Ｂを圧入嵌合して、回転ケ
ースＭ６および一方の回転密封環Ｍ７を回転軸Ｂに外嵌
させ、一方の回転密封環Ｍ７を一方の静止密封環Ｍ２に
対向接近させる。

コイルスプリングＭ１１の一端を回転ケースＭ６に当
接させる。

環状パッキンＭ８に回転軸Ｂを圧入嵌合して、回転ケ
ースＭ９および他方の回転密封環Ｍ１０を回転軸Ｂに外
嵌させるとともにコイルスプリングＭ１１の他端を回転
ケースＭ９に当接させる。

他方の静止密封環Ｍ４が保持されている環状パッキン
Ｍ３をカバー部材Ｆに嵌合固定する。

カバー部材ＦをモータハウジングＨに取付けて他方の
静止密封環Ｍ４および環状パッキンＭ３を回転軸Ｂに外
嵌させるとともに、静止密封環Ｍ４で他方の回転密封環
Ｍ１０を押圧し、コイルスプリングＭ１１を軸方向に圧
縮して付勢反力を増大させる。これにより一方の回転密
封環Ｍ７を一方の静止密封環Ｍ２側に、また他方の回転
密封環Ｍ１０を他方の静止密封環Ｍ４側に付勢し、それ
ぞれの密封端面同志を密封して軸封することによってメ
カニカルシールＭが構成される。

このようなメカニカルシールでは、組込み工数が多く、
その作業がきわめて煩雑であるため組付および分解作業
性に劣る。つまり、メカニカルシールの着脱作業が困難
である。そして、組付に際して熟練した技術が要求され
るのにもかかわらず組込みミスを生じ易い。その結果、
密封性が損なわれてメカニカルシールの信頼性を低下さ
せる一因になっていた。

特に、前記およびの組込工程においては、環状パッ
キンＭ５，Ｍ８に対して回転軸Ｂを圧入嵌合させるのに
相当強い力を作用させ、しかも慎重に行う必要があるた
め、一層組付作業性を低下させる要因になっている。

また、回転軸Ｂの機外側外周部のｘで示す領域が、羽根
車Ａによって吸込まれる例えば泥水により損傷され易
く、しかも泥水に混入している異物が推積すると、メン
テナンスや修理などの分解時に環状パッキンＭ８，Ｍ５
とともに回転密封環Ｍ１０，Ｍ７を抜取るのに強い引抜
力が必要になって分解作業性を低下させる。したがっ
て、前記ｘで示す領域への泥水の侵入を防止するため
に、オイルシールＧを配置するようにしているけれど
も、そのためにはカバー部材Ｆの中心孔ｆ外端側にオイ
ルシールＧを配置するための座ぐり加工を施さなければ
ならず、それだけ加工工数が増えることになる。

さらに、オイルシールＧを配置することによって、回転
軸Ｂの局部的な損傷および環状パッキンＭ８，Ｍ５の抜
取り作業性が改善されたとしても、モータハウジングＨ
から環状パッキンＭ１とともに一方の静止密封環Ｍ４、
つまり機内側の静止密封環Ｍ４を抜取るのはきわめて困
難であって、分解作業性を悪くしている。

本考案はこのような事情に鑑みなされたもので、組込工
数を低減させることで組付および分解作業性が向上し、
組込ミスを回避することで信頼性が高められるととも
に、自動化による機器への組付を可能にして生産性の向
上を達成でき、かつ低価格化を実現することができるカ
ートリッジ式ワンコイルダブルメカニカルシールの提供
を目的とする。

［課題を解決するための手段］ 前記目的を達成するために、本考案はワンコイルダブル
メカニカルシールが油室内に挿入されて回転側シール要
素を同時回転可能かつ液密に外嵌した内筒および機内側
の固定側シール要素を液密に圧入固定した外筒と油室の
機外側開口を開閉可能に閉塞しかつ機外側の固定側シー
ル要素を液密に圧入固定したカバー部材によって囲まれ
る環状空間に装入され、前記内筒が機外側から前記カバ
ー部材の中心孔を通して回転軸に挿脱可能かつ液密に外
嵌されその機外側端部を回転軸と同時回転する回転部材
に着脱可能に取付け、前記外筒の機内側端部が機内と油
室とを仕切る隔壁に挿脱可能かつ液密に圧入固定され、
機外側端部が前記カバー部材に着脱可能に取付けられる
とともに環状空間に潤滑油を導入する透孔を形成したも
のである。

［作用］ 本考案によれば、ワンコイルダブルメカニカルシール
が、内筒および外筒とカバー部材によって囲まれる環状
空間に装入されたものであるから、内筒を回転軸に対し
て挿脱可能かつ液密に外嵌するとともに、機外側端部が
カバー部材に着脱可能に取付けられている外筒の機内側
端部を、隔壁に挿脱可能かつ液密に圧入固定し、カバー
部材で油室の機外側開口を開閉可能に閉塞し、かつ内筒
の機外側端部を回転軸と同時回転する回転部材に着脱可
能に取付けることによって、ワンコイルダブルメカニカ
ルシールを油室内に組付けることができ、この組付手順
の逆手順によって取外すことができる。

また、回転密封環と固定密封環の密封端面は、外筒の透
孔から環状空間に導入された潤滑油によって潤滑され
る。

［実施例］ 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図は本考案の実施例を示す縦断側面図であり、図に
おいてカートリッジ式ワンコイルダブルメカニカルシー
ル１は水中ポンプ等の被軸封機器（図示せず）の回転軸
２と同時回転する回転側シール要素１０と、被軸封機器
のハウジング３側に固定される固定側シール要素２０を
有し、回転側シール要素１０は、例えばステンレス鋼板
等の非発錆性金属板をプレス加工して形成した板金製内
筒４に同時回転可能かつ液密に外嵌され、固定側シール
要素２０は、例えばステンレス鋼板等の非発錆性金属板
をプレス加工して形成した板金製外筒５とカバー部材６
に軸方向の移動を規制して液密に嵌合固定されている。
即ち、回転側シール要素１０と固定側シール要素２０が
板金製内筒４および外筒５とカバー部材６で囲まれた空
間Ｘに装入されている。

板金製内筒４は、第２図に示すように、機外側端部（図
面右側端部）をつば出し成形（フレア加工）することに
よって、テーパ部４Ａとフランジ部４Ｂが形成され、こ
のフランジ部４Ｂに周方向等間隔で複数の孔もしくはタ
ップ孔４ｂが形成されている。

板金製外筒５は第３図に示すように、中心孔５Ｄを穿設
した機内側端部（図面左側端部）に径小部５Ａを形成
し、機外側端部にフランジ５Ｂを形成するとともに、潤
滑油を導入する多数の透孔５Ｃが形成されている。そし
て、フランジ５Ｂには周方向等間隔で複数の孔５ｂが形
成された構造になっている。

第１図のカバー部材６は中心孔６Ａを形成し、板金製外
筒５の機外側端部に着脱可能に圧入嵌合される環状周壁
部６Ｂと、この環状周壁部６Ｂの内周に凹部６Ｃを形成
し、板金製外筒５におけるフランジ５Ｂの孔５ｂに対応
する位置にねじ孔６Ｄを形成してある。

回転側シール要素１０は、例えばSiC系の硬質材で形成
された１対の回転密封環１１Ａ，１１Ｂ，硬質ゴムによ
ってなる１対の環状パッキン１２Ａ，１２Ｂ，１対の金
属製ケース１３Ａ，１３Ｂおよび１つのコイルスプリン
グ１４とから構成され、バンド１５によって板金製内筒
５に外嵌固定された環状パッキン１２Ａを介して金属製
ケース１３Ａが同時回転可能に取付けられ、この金属製
ケース１３Ａに回転密封環１１Ａが回転不能に保持され
るとともに、バンド１６によって板金製内筒５に外嵌固
定された環状パッキン１２Ｂを介して金属製ケース１３
Ｂが同時回転可能に取付けられ、この金属製ケース１３
Ｂに回転密封環１１Ｂが回転不能に保持されている。そ
して、コイルスプリング１４は金属製ケース１３Ａ，１
３Ｂ間に介装してある。

固定側シール要素２０は、例えばSiC系の硬質材で形成
された１対の静止密封環２１Ａ，２１Ｂおよび硬質ゴム
によってなる１対の環状パッキン２２Ａ，２２Ｂとから
構成され、板金製外筒５の小径部５Ａ内に液密に嵌合さ
れて、機内側端部によって機内方向への軸方向の移動、
つまり図面左方向の移動を規制された環状パッキン２２
Ａに静止密封環２１Ａが回転不能かつ液密に嵌合保持さ
れ、またカバー部材６の凹部６Ｃに液密に嵌合されて、
機外方向への軸方向の移動、つまり図面右方向の移動を
規制されるとともに金属製の補強部材２２ｂをインサー
ト成形によって埋設した環状パッキン２２Ｂに静止密封
環２１Ｂが回転不能かつ液密に嵌合保持されている。

したがって、コイルスプリング１４のばね力によって機
内側の回転密封環１１Ａを機内側の静止密封環２１Ａ側
に、また機外側の回転密封環１１Ｂを機外側の静止密封
環２１Ｂ側に付勢し、それぞれの密封端面同士を密封し
て軸封部３３，３４を形成している。

３５は油室で被軸封機器の機内と機外の中間に形成さ
れ、潤滑油を貯留している。そして板金製内筒４のフラ
ンジ部４Ｂに形成された孔４ｂと回転軸２に取付けられ
ている羽根車２Ａの孔２ａにピン３６を連通して挿入す
るか、もしくは第４図のようにフランジ部４Ｂのタップ
孔４ｂにボルト３７を螺合することによって、板金製内
筒４を羽根車２Ａに着脱可能に取付け、羽根車２Ａのボ
ス部背面と板金製内筒４のテーパ部４Ａの内面および回
転軸２の外周とで形成される空間にＯリング３８を配置
して回転軸２と板金製内筒４との間を液密に封止してい
る。また、板金製外筒５の機内側端部、つまり径小部５
Ａが機内と油室３５とを仕切るハウジング３の隔壁３Ａ
に挿脱可能かつ液密に圧入固定され、フランジ５Ｂの孔
５ｂを貫通してカバー部材６のねじ孔６Ｄにねじ込まれ
たボルト３９によって、板金製外筒５がカバー部材６に
着脱可能に取付けられている。

前記構成において、回転軸２が回転し、その機外側端部
に取付けられている羽根車２Ａにより吸込まれる流体
は、従来のメカニカルシールＭと同様、軸封部３４の密
封力によって油室３５に侵入するのが封止されかつ軸封
部３３によって潤滑油が機内側、つまりハウジング３内
の乾式モータに侵入するのが封止される。また板金製外
筒５とハウジング３のシール性はＯリングによって確保
され、さらに板金製外筒５の内周のシール性は環状パッ
キン２２Ａによって確保される。したがって、水中ポン
プ，エンジン付自吸式ポンプおよび家庭用井戸ポンプ等
の軸封部のメカニカルシールとして適用可能である。

本考案は回転側シール要素１０と固定側シール要素２０
を板金製内筒４および板金製外筒５とカバー部材６で囲
まれた空間Ｘに装入したカートリッジ式ワンコイルダブ
ルメカニカルシールとして構成されているため、組込作
業が簡単である。

即ち、板金製内筒４を回転軸２に対して挿脱可能に外嵌
し、Ｏリング３８を取付けることで液密を確保するとと
もに、機外側端部がカバー部材６に着脱可能に取付けら
れている板金製外筒５の機内側端部を隔壁３Ａに挿脱可
能かつ液密に圧入固定し、カバー部材６で油室３５の機
外側開口を開閉可能に閉塞し、かつ板金製内筒４の機外
側端部を回転軸２と同時回転する回転部材、つまり羽根
車２Ａに着脱可能に取付けることによって、ワンコイル
ダブルメカニカルシールを油室３５内に組付けることが
できる。そして、この逆手順によって分解を行うことが
できるので、当然、分解作業性も向上する。即ち、組付
および分解作業性が向上し、メカニカルシールの着脱作
業がきわめて容易になる。しかも、回転側シール要素１
０と固定側シール要素２０を予め板金製の内筒４および
外筒５とカバー部材６に取付けた状態で組込を行うこと
ができるので、組込に際して熟練した技術を必要とせ
ず、組込みミスを生じるおそれがない。したがって確実
に密封性を確保できる。

また、板金製内筒４を回転軸２に外嵌しているので、回
転側シール要素１０の組込みが簡単になされるから、自
動化による組付が可能になり、組付作業性を一段と向上
させることができる。

さらに、羽根車２Ａのボス部背面と板金製内筒４のテー
パ部４Ａの内面および回転軸２の外周とで形成される空
間にＯリング３８を配置しているから、回転軸２と板金
製内筒４との間の液密が確保されるとともに、回転軸２
の機外側外周部（第５図のｘで示す領域）が羽根車２Ａ
によって吸込まれる例えば泥水により損傷される不都合
を生じない。しかも、従来のようなオイルシールを必要
としないので、カバー部材６に座ぐり加工を施す必要が
ないから、それだけ加工工数を低減できる。

さらにまた、板金製外筒５の機内側小径部５Ａに環状パ
ッキン２２Ａを液密に嵌合し、小径部５Ａを隔壁３Ａに
挿脱可能かつ液密に圧入固定しているので、板金製外筒
５をカバー部材６とともに引抜くことで、機内側の環状
パッキン２２Ａとこの環状パッキン２２Ａに回転不能か
つ液密に嵌合保持されている静止密封環２１Ａを容易に
取出すことができるので、従来と比較して静止密封環２
１Ａの抜取りを簡単に行うことができ、分解作業性を向
上させる。

［考案の効果］ 以上説明したように、本考案によれば、内筒を回転軸に
対して挿脱可能かつ液密に外嵌するとともに、機外側端
部がカバー部材に着脱可能に取付けられている外筒の機
内側端部を隔壁に挿脱可能かつ液密に圧入固定し、カバ
ー部材で油室の機外側開口を開閉可能に閉塞し、かつ内
筒の機外側端部を回転軸と同時回転する回転部材に着脱
可能に取付けることによって、ワンコイルダブルメカニ
カルシールを油室内に組付けることができ、従来のメカ
ニカルシールのように回転側シール要素と固定側シール
要素を構成する部材を回転軸およびハウジング等に対し
て順次１個づつ組込む必要がないために、組込工数が低
減され、組付作業性が向上する。しかも、このような簡
単な組込みの逆手順によって分解を行うことができるの
でメンテナンス等の分解時の作業性も向上する。即ち、
組付および分解作業性が向上し、メカニカルシールの着
脱作業がきわめて容易になる。

また、組込みに際して熟練した技術を必要とせず組込み
ミスの生じるおそれがないので確実な密封性を確保で
き、したがって信頼性が向上する。さらに、自動化によ
る組付が可能であるから生産性の向上を達成でき、かつ
回転軸機外側外周部の損傷を確実に防止することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例を示す縦断側面図、第２図は内
筒の一例を示す縦断側面図、第３図は外筒の一例を示す
縦断側面図、第４図は内筒と羽根車８の取付構造の他の
例を示す縦断側面図、第５図は従来のメカニカルシール
の一例を示す縦断面図である。 １……ワンコイルダブルメカニカルシール ２……回転軸 ２Ａ……羽根車（回転部材） ３……ハウジング ３Ａ……隔壁 ４……内筒 ５……外筒 ５Ｃ……透孔 ６……カバー部材 ６Ａ……中心孔 ８……シールリング（シール部材） １０……回転側シール要素 １１Ａ，１Ｂ……回転密封環 １４……コイルスプリング ２０……固定側シール要素 ２１Ａ，２１Ｂ……静止密封環 ３３，３４……軸封部 ３５……油室 Ｘ……環状空間

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】回転軸の軸方向に変位して配設されそれぞ
   れが回転密封環を有する１対の回転側シール要素と、こ
   の回転側シール要素に対応して設けられそれぞれが静止
   密封環を備えた固定側シール要素を具備し、回転側シー
   ル要素の間に介設されたコイルスプリングのばね力で回
   転密封環を静止密封環側に付勢して両者の密封端面同士
   を摺接させ、被軸封機器の機内と機外の中間に形成され
   た潤滑油の封入される油室内で軸封部を形成して密封す
   るワンコイルダブルメカニカルシールにおいて、該ワン
   コイルダブルメカニカルシールが油室内に挿入されて回
   転側シール要素を同時回転可能かつ液密に外嵌した内筒
   および機内側の固定側シール要素を液密に圧入固定した
   外筒と油室の機外側開口を開閉可能に閉塞しかつ機外側
   の固定側シール要素を液密に圧入固定したカバー部材に
   よって囲まれる環状空間に装入され、前記内筒が機外側
   から前記カバー部材の中心孔を通して回転軸に挿脱可能
   かつ液密に外嵌されその機外側端部を回転軸と同時回転
   する回転部材に着脱可能に取付け、前記外筒の機内側端
   部が機内と油室とを仕切る隔壁に挿脱可能かつ液密に圧
   入固定され、機外側端部が前記カバー部材に着脱可能に
   取付けられるとともに環状空間に潤滑油を導入する透孔
   が形成されていることを特徴とするワンコイルダブルメ
   カニカルシール。