JPH06257003A - 温度調節衣服 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 個人冷却方法として冷熱源(氷や蓄冷材等)の
人体面への直接接触は、安価・軽量・取扱いの簡便さか
ら容易に行なわれている。最も一般的には衣服のポケッ
トにアイスパックを入れて用いられるが、この方法では
アイスパック表面温度は氷の融点付近に限定されるため
人体には非常に冷たく、また同パック表面で水蒸気が結
露するために皮膚に不快感をもたらす。そこで、該欠点
を解決する。 【構成】 冷熱ブロック部を温度依存性形状記憶樹脂の
多層構造とし、記憶温度を内層から外層へ向かって順次
上げて行き、冷熱ブロック部最内層の蓄冷材から外層へ
の温度分布を段階的に設定する。ブロック部最外層温度
は各人の快適温度に任意に設定することができる。そし
て、蓄冷材として例えば水蒸気吸収物質である塩化マグ
ネシウムなどを利用して人体からの発汗をも吸収する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本願発明は、人体に対して温度調
節の可能な温度調節衣服に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】例えば原子力施設などの高温環境下で作
業する作業者は、一般に放射線防護用のシール性の高い
作業衣を着用する関係で、非常に暑く発汗度も高い。従
って、例えば該防護衣の下に、さらに多数の氷冷ブロッ
クを形成した人体冷却用の温度調節衣服を着用すること
によって人体を冷却する氷冷システムが採用されてい
る。

【０００３】そして、該温度調節衣服(以下、単に温調
衣服という)の上記氷冷ブロックは、例えば、水又は蓄
冷材などの冷熱源を収納した収納袋により形成されてい
て、上記温調衣服を冷凍庫などに収納することによって
該収納袋内の水を氷結させ又は蓄冷材を冷却凍結するこ
とにより、アイスパック化して冷却熱源として使用する
ようになっている。

【０００４】該構成によれば、比較的簡単な方法で容易
に人体の冷却が図れ、しかも繰り返し使用できるので便
利である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、該従来の温
調衣服の構成では上記氷等冷却熱源(以下、冷熱源とい
う)の収納袋が単にビニール等液体シール性のある素材
によりパック状に形成されていて、該パック状の収納袋
部が直接人体の肌に触れるようになっているだけであ
る。この場合、上記冷却熱源収納袋の表面温度は氷の融
点プラス数℃に限定されるために人体には非常に冷た
く、またその表面で水蒸気が結露するために肌に不快感
がもたらされる。そこで、通常衣服の上から当該アイス
パックを当てることで上記のような冷たさと湿りを防い
でいるが、その場合人体との接触面を最適な温度に維持
するための適当な衣服(素材)の選択は難しいのが実情で
ある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本願の請求項１〜４各項
記載の発明は、各々上記の問題を解決することを目的と
してなされたもので、それぞれ次のように構成されてい
る。

【０００７】(１) 請求項１記載の発明の構成 該発明の温度調節衣服は、冷熱源の人体面側に記憶温度
を異にする複数枚の温度依存性の形状記憶樹脂素材を配
設する一方、同冷熱源の外部空間側に断熱性素材を配設
することにより、上記冷熱源から人体面側にかけて複数
レベルの温度設定層を形成して構成されている。

【０００８】(２) 請求項２記載の発明の構成 該発明の温度調節衣服は、冷熱源の人体面側に記憶温度
を異にする複数枚の温度依存性の形状記憶樹脂素材を配
設する一方、同冷熱源の外部空間側に断熱性素材を配設
することにより、上記冷熱源から人体面側にかけて複数
レベルの温度設定層を有する冷熱ブロックを多数設けて
構成されている。

【０００９】(３) 請求項３記載の発明の構成 該発明の温度調節衣服は、上記請求項２記載の発明の構
成を基本とし、同構成において、冷熱ブロックが衣服本
体に一体化されていることを特徴とするものである。

【００１０】(４) 請求項４記載の発明の構成 該発明の温度調節衣服は、上記請求項２記載の発明の構
成を基本とし、同構成において、衣服本体に多数のポケ
ットが形成されているとともに、冷熱ブロックが個々に
独立した単体構造よりなり、該単体構造の冷熱ブロック
が上記各ポケット内に着脱可能に収納されていることを
特徴とするものである。

【００１１】

【作用】したがって、上記請求項１〜４各項記載の発明
は、同構成に基いて各々次のように作用する。

【００１２】(１) 請求項１記載の発明の作用 すなわち、該発明の温度調節衣服では、衣服それ自体
が、冷熱源の人体面側に衣服の素材である記憶温度を異
にする複数枚の温度依存性の形状記憶樹脂素材を配設
し、さらに同冷熱源の外部空間側に断熱性素材を配設す
ることにより、外部空間側との熱伝達を遮断した上で上
記冷熱源から人体面側にかけて複数レベルの温度設定層
を形成するようになっている。

【００１３】従って、上記設定された複数の温度設定層
の各設定温度に応じて上記各形状記憶樹脂素材が冷熱源
側から冷気を通し、冷熱源の冷却機能が存続している限
り、上記各形状記憶樹脂素材部が上記予じめ定めた設定
温度層に保たれる。

【００１４】その結果、人体面と接する最外層の形状記
憶樹脂素材を人体の快適温度、例えば２０℃程度の記憶
温度のものにすると、人体面側は常に最適な冷却温度に
維持されるようになり、冷たすぎることもなく、また結
露を生じることもない。

【００１５】(２) 請求項２記載の発明の作用 すなわち、該発明の温度調節衣服の構成では、上記のよ
うな、冷熱源の人体面側に記憶温度を異にする複数枚の
温度依存性の形状記憶樹脂素材を配設する一方、同冷熱
源の外部空間側に断熱性素材を配設することにより、上
記冷熱源から人体面側にかけて複数レベルの温度設定層
を有する衣服素材の重合部をブロック化し、該冷熱ブロ
ックを衣服自体に多数設けて上記請求項１記載の発明と
同様の作用を実現するようにしている。

【００１６】したがって、衣服全体が同一構造体となっ
ているものよりも、可撓性が高く、かつ屈伸性が高い。

【００１７】(３) 請求項３記載の発明の作用 該発明の温度調節衣服の構成では、上記請求項２記載の
発明の冷熱ブロックが衣服本体に一体形成されて、上記
請求項１および２記載の発明と同様の作用が実現され
る。

【００１８】(４) 請求項４記載の発明の作用 該発明の温度調節衣服の構成では、上記請求項２記載の
発明の冷熱ブロックが衣服自体とは別体の独立した単体
ブロックに形成されていて、それらが衣服本体のポケッ
トに着脱自在に収納されて、上記請求項１,２,３記載の
発明と同様の作用が実現される。

【００１９】また冷熱ブロックが衣服と自由に分離でき
るようになっている結果、冷熱源の冷凍再製が、冷熱ブ
ロック単体で行えるようになるので便利となる。

【００２０】

【発明の効果】従って、本願発明によると、先ずパック
表面温度を自由に設定することができるため、着用者個
人別に快適温度が達成できる。また、パック表面温度が
従来より高く保てるようになるため、結露を減らす効果
も期待される。さらにパック内の熱の対流が減るため冷
熱の持続時間が延長される。しかも、特に上記冷熱源と
して塩化マグネシウムなどの水蒸気吸収物質を蓄冷材と
して用いるようにすれば、同時に水蒸気の除去も行うこ
とができ、衣服内の蒸れが低減できるメリットが伴う。

【００２１】

【実施例】

(１) 第１実施例 図１および図２は、本願発明の第１実施例に係る温度調
節作業衣服(以下、単に温調衣服と称する)１の構成を示
している。

【００２２】該温調衣服１は、例えば図１に示されるよ
うに、原子力施設などにおいて作業者Ｍが放射線防護服
２の下部に直接地肌ＭＦに接触する形で着用するように
なっている。

【００２３】そして、該温調衣服１は、例えば図２に示
すように、当該作業者Ｍの地肌ＭＦ側から外部空間にか
けて各々形状記憶樹脂をコーティングして形成した断熱
性の高い第１〜第４の衣服素材１１〜１４を重合し、さ
らに、それらの外側に所定の大きさのブロック状にパッ
ケージされた冷熱源１５を介して特に断熱性の高い断熱
性素材１６が重ね合わせされており、上記ブロック状の
各冷熱源１５を単位として周囲を縫い合わせることによ
り衣服１上に多数の冷熱ブロック部１Ａ,１Ａ・・・を
形成して図１のように構成されている。符号３は、それ
らの間の縫合せ部を示している。

【００２４】上記第１〜第４の衣服素材１１〜１４は、
それぞれ記憶温度が異なる形状記憶樹脂がコーティング
されており、例えば第１の衣服素材のコーティング層は
２０℃でその空孔部が開孔する形状記憶樹脂で、第２の
衣服素材１２のコーティング層は１５℃で空孔部が開孔
する形状記憶樹脂で、第３の衣服素材１３のコーティン
グ層は１０℃で空孔部が開孔する形状記憶樹脂で、第４
の衣服素材１４は５℃で空孔部が開孔する形状記憶樹脂
で各々形成されている。その結果、該冷熱ブロック部１
Ａの冷熱源１５を中心とする温度分布を模式化して示す
と図５のようになり、最内層から人体の肌ＭＦ側にかけ
て次第に温度が高くなる。そして、人体の肌ＭＦのとこ
ろで、丁度快適温度２０℃に固定される(氷の場合)。

【００２５】したがって、該構成では、先ず上記冷熱源
１５の外層部が断熱材により形成されているので、冷熱
の伝達面が人体の肌ＭＦ面側だけに限られることにな
り、冷却効果が長期間保持されるようになるとともに、
また上記冷熱源１５からの冷熱が上記作業者Ｍの人体の
肌ＭＦ面側に伝達されてゆく場合において、その人体側
からの熱との熱交換による図５のような逆方向の温度分
布、２０℃→１５℃→１０℃→５℃に応じて対応する衣
服素材の水蒸気透過性が確保される。その結果、人体側
から冷熱源１５側への発汗吸収性能が確保されるととも
に当該単位冷熱ブロック全体での熱の対流が少なくな
り、冷熱源１５の融解が生じにくくなり、長期の冷却作
用が実現される。

【００２６】また、人体の肌ＭＦに接する冷熱ブロック
部１Ａ表面での結露が生じにくくなり、快適性が向上す
る。該結露は、また上記冷熱源１５に水を凍結した氷に
代えて水蒸気吸収物質である塩化マグネシウムなどの蓄
冷材を使用すると、より生じにくくすることができる。

【００２７】(２) 第２実施例 次に図３および図４は、本願発明の第２実施例に係る温
調衣服の構成を示している。

【００２８】この実施例では、上記図２に示される第１
実施例の単位冷熱ブロック部１Ａと同様の冷熱ブロック
(第１〜第４の衣服素材４１〜４４、冷熱源４５、断熱
性素材４６、縁止め４７よりなる)４１Ａを直接衣服自
体に一体化して形成するのではなく、例えば図４に示さ
れるような独立した単体構造に形成する一方、ベースと
なる衣服側に該単体の冷熱ブロック４１Ａを着脱可能に
任意に収納し得る蓋３２a付きのポケット３２を多数設
けて、該多数のポケット３２,３２・・・内に各々着脱
可能に収納するようにしたことを特徴とするものであ
る。

【００２９】このような構成にしても、図５の冷却メカ
ニズムにより上記第１実施例と全く同様の長時間の冷却
効果を得ることができる。該構成の場合には、冷熱源１
５を再製するのに第１実施例のように衣服全体を冷凍庫
に入れる必要がなく、冷熱ブロック４１Ａのみを取り出
して冷凍庫に入れて冷熱源１５を冷凍氷結化することが
できることから、取扱上も非常に便利となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本願発明の第１実施例に係る温度調節
作業衣服の着用状態を示す斜視図である。

【図２】図２は、同意服の冷熱ブロック部の構成を示す
断面図である。

【図３】図３は、本願発明の第２実施例に係る温度調節
作業衣服の着用状態を示す斜視図である。

【図４】図４は、同衣服の単体構造の冷熱ブロックの構
成を示す断面図である。

【図５】図５は、上記第１、第２各実施例の温調衣服の
温調原理を示す模式図である。

【符号の説明】

１は温調衣服、１Ａは冷熱ブロック部、２は放射線防護
服、３は縫合せ部、１１は第１の衣服素材、１２は第２
の衣服素材、１３は第３の衣服素材、１４は第４の衣服
素材、１５は冷熱源、１６は断熱性衣服素材、４１は第
１の衣服素材、４１Ａは冷熱ブロック、４２は第２の衣
服素材、４３は第３の衣服素材、４４は第４の衣服素
材、４５は冷熱源、４６は断熱性衣服素材、Ｍは作業
者、ＭＦは作業者の肌である。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 冷熱源の人体面側に記憶温度を異にする
   複数枚の温度依存性の形状記憶樹脂素材を配設する一
   方、同冷熱源の外部空間側に断熱性素材を配設すること
   により、上記冷熱源から人体面側にかけて複数レベルの
   温度設定層を形成したことを特徴とする温度調節衣服。
2. 【請求項２】 冷熱源の人体面側に記憶温度を異にする
   複数枚の温度依存性の形状記憶樹脂素材を配設する一
   方、同冷熱源の外部空間側に断熱性素材を配設すること
   により、上記冷熱源から人体面側にかけて複数レベルの
   温度設定層を有する冷熱ブロックを多数設けたことを特
   徴とする温度調節衣服。
3. 【請求項３】 冷熱ブロックが衣服本体に一体化されて
   いることを特徴とする請求項２記載の発明の温度調節衣
   服。
4. 【請求項４】 衣服本体に多数のポケットが形成されて
   いるとともに、冷熱ブロックが個々に独立した単体構造
   よりなり、該単体構造の冷熱ブロックが上記各ポケット
   内に着脱可能に収納されていることを特徴とする請求項
   ２記載の温度調節衣服。