JPH0621702A - 誘電体フィルタ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は共振器間のシールド性を向上させ、
誘電体フィルタの電気特性を向上させ、帯域外減衰量及
びスプリアス減衰量を増大させることのできる信頼性に
優れた誘電体フィルタの提供を目的とする。 【構成】 本発明の誘電体フィルタは、金属シャーシ２
と、前記金属シャーシ２に電気的に接続される複数個の
同軸型誘電体共振器１と、前記同軸型誘電体共振器１と
電気的に接続される金属カバー３とを備えた誘電体フィ
ルタであって、前記金属カバー３上に前記同軸型誘電体
共振器１間の各隙間の上部位置に形成された格子部１５
を介して前記同軸型誘電体共振器１を調整するための周
波数調整用穿孔部１４が複数連設された構成からなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は高周波帯における通信機
器等に用いられる誘電体フィルタに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、自動車電話、携帯電話、コードレ
ス電話などの移動通信機器等に誘電体フィルタが盛んに
使用されているが、これらの低原価化、高性能化に伴
い、誘電体フィルタも低原価、高性能のものが求められ
ている。

【０００３】以下に従来の誘電体フィルタについて説明
する。図２は従来の誘電体フィルタの全体斜視図であ
る。１は角筒同軸状の外形を有し外部導体上部面の導体
層を除去した１／４波長同軸型誘電体共振器（以下、共
振器と略す）、２は共振器１と半田等で電気的・機械的
に接続されたリン青銅等からなる金属シャーシ、３は共
振器１と半田等で電気的・機械的に接続されたリン青銅
等からなる金属カバー、４は金属カバー３の共振器１の
開放端側の上部に略長方形の外形で形成された共振器１
の共振周波数を調整するための従来の周波数調整用穿孔
部、５は金属シャーシ２上に配設され両面銅張りプリン
ト基板等をエッチングして形成された結合基板、６は結
合基板５上に実装された受信フィルタ側端子、７は結合
基板５上に実装されたアンテナ端子、８は結合基板５上
に実装された送信フィルタ側端子、９は結合基板５上に
実装されたチップコンデンサ、１０は結合基板５上に実
装され銅線等からなる空心コイル、１１は共振器１の内
部導体部分へ圧入され共振器１の内部導体と結合基板と
を電気的に接続する中心導体、１２は金属カバー３の空
心コイル１０の上部に形成され空心コイル１０のインダ
クタンスを調整するためのインダクタンス調整用孔部、
１３は金属シャーシ２と一体に形成され誘電体フィルタ
を通信機器等に実装する際のアース兼固定部である。こ
の誘電体フィルタは、左側の受信フィルタ部と右側の送
信フィルタ部とからなる共用器となっている。

【０００４】以上のように構成された従来の誘電体フィ
ルタについて、以下その周波数調整方法を説明する。

【０００５】共振器１はあらかじめ各々単体で周波数調
整してあるが、誘電体フィルタ組立て後に、結合基板５
の容量バラツキ、組み立てバラツキ等のため、共振器１
全体を再度周波数調整する必要がある。この場合、周波
数調整は、共振器１の開放端側の外部導体及び誘電体を
削ることにより行う。そのため、金属カバー３の共振器
１の開放端側の上部に、略長方形の外形で周波数調整用
穿孔部４が形成されている。又これに伴って必要となる
空心コイル１０のインダクタンス調整のため、インダク
タンス調整用孔部１２も形成されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
の構成は、共振器の周波数調整用穿孔部が大きな略長方
形の穴からなるために、各共振器間のシールド性が悪
く、各共振器間の隙間を電波が伝播してしまい、その分
誘電体フィルタの電気特性が劣化し、設計値通りの大き
な帯域外減衰量及びスプリアス減衰量を得ることができ
ないという問題点があった。

【０００７】本発明は上記従来の問題点を解決するもの
で、共振器間のシールド性を向上させ、誘電体フィルタ
の電気特性を向上させ、帯域外減衰量及びスプリアス減
衰量を増大させることのできる信頼性に優れた誘電体フ
ィルタを提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に本発明の誘電体フィルタは、金属シャーシと、前記金
属シャーシに電気的に接続される複数個の同軸型誘電体
共振器と、前記同軸型誘電体共振器と電気的に接続され
る金属カバーとを備えた誘電体フィルタであって、前記
金属カバー上に前記同軸型誘電体共振器間の各隙間の上
部位置に形成された格子部を介して、前記同軸型誘電体
共振器を調整するための周波数調整用穿孔部が複数連設
された構成を有している。

【０００９】

【作用】この構成によって、誘電体フィルタ使用時に、
金属カバー上の共振器間の各隙間の上部位置に形成され
た格子部に電流が流れ、各共振器間の隙間部を電波が伝
播するのを防止できるため、誘電体フィルタの電気特性
を向上させ、帯域外減衰量及びスプリアス減衰量を増大
させることができる。

【００１０】

【実施例】以下本発明の一実施例について、図面を参照
しながら説明する。

【００１１】図１は本発明の一実施例における誘電体フ
ィルタの全体斜視図である。１は共振器、２は金属シャ
ーシ、３は金属カバー、５は結合基板、６は受信フィル
タ側端子、７はアンテナ端子、８は送信フィルタ側端
子、９はチップコンデンサ、１０は空心コイル、１１は
中心導体、１２はインダクタンス調整用孔部、１３はア
ース兼固定部であり、これらは従来例と同様なものなの
で同一の番号を付し説明を省略する。１４は金属カバー
３の各共振器１の開放端側の上部に角形状の外形でそれ
ぞれ形成された周波数調整用穿孔部、１５は金属カバー
３の各共振器１の各隙間の上部位置にそれぞれ形成され
た格子部である。

【００１２】本実施例における誘電体フィルタは、左側
の受信フィルタ部と、右側の送信フィルタ部とからなる
共用器となっている。

【００１３】以上のように構成された本実施例における
誘電体フィルタについて、以下その製造方法を説明す
る。

【００１４】図１において、１／４波長同軸型誘電体共
振器１は、ＢａＯ−ＴｉＯ₂−Ｎｄ₂Ｏ₃系粉末を成形・
焼成し、外形３．０mm角で内径０．３φ、長さ１０mmの
角筒同軸状に形成し、その内部及び外部に厚さ５μｍの
銅の導体層を無電解及び電解銅メッキによって形成し、
外部導体上部面の導体層を除去して作成する。中心導体
１１は、厚さ０．１５mmのリン青銅板を加工後、半田メ
ッキして作成し、共振器１の内部導体部分に圧入する。

【００１５】一方、金属シャーシ２は、厚さ０．１５mm
のリン青銅板を加工後、半田メッキして作成する。この
時アース兼固定部１３も一体に形成すれば便利である。
結合基板５は、厚さ０．８mmの両面銅張りプリント基板
をエッチングし導体部分を形成して作成し、金属シャー
シ２上に配設する。

【００１６】次に、各共振器１を半田等を用いて金属シ
ャーシ２に電気的・機械的に接続し、更に中心導体１１
を結合基板５上に半田等を用いて実装する。

【００１７】次に、受信フィルタ側端子６、アンテナ端
子７、送信フィルタ側端子８、チップコンデンサ９、
０．３φの銅線からなる空心コイル１０をそれぞれ結合
基板５上に半田等を用いて実装する。

【００１８】金属カバー３は、厚さ０．１５mmのリン青
銅板を加工後、半田メッキして作成し、金属カバー３上
の各共振器１の各開放端側の上部位置相当部に、３mm角
の角形状の周波数調整用穿孔部１４を、各共振器１間の
各隙間の上部位置相当部に形成される２mm幅の格子部１
５を介して、共振器１と同数個穿孔し、更に金属カバー
３上の空心コイル１０の上部位置相当部に、３mm角の角
形状のインダクタンス調整用孔部１２を、空心コイル１
０と同数個穿孔する。

【００１９】次に金属カバー３を金属シャーシ２に嵌装
し、共振器１と金属カバー３を半田等を用いて電気的・
機械的に接続する。

【００２０】最後に、周波数調整用穿孔部１４を用いて
各共振器１を、インダクタンス調整用孔部１２を用いて
各空心コイル１０をそれぞれ微調整して誘電体フィルタ
を完成させる。

【００２１】上記の誘電体フィルタの製造方法におい
て、以下のような変更を行うことも可能である。

【００２２】共振器１の導体層は、銀ペーストの印刷ま
たは浸せき法によって形成してもよい。結合基板５は、
Ａｌ₂Ｏ₃基板等のセラミック基板上に導体部分を銀ペー
ストの印刷によって形成し、作成してもよい。周波数調
整用穿孔部１４は円形等他の形状でもよいが、角形状の
ものが空間を有効に利用できるため好ましい。

【００２３】次に、前記製造方法で得られた本実施例に
おける誘電体フィルタと、従来の誘電体フィルタについ
て性能比較試験を行った。以下その結果について説明す
る。

【００２４】実験例として、図１に示す本実施例におけ
る誘電体フィルタの送信フィルタ部を用い、比較例とし
て周波数調整用穿孔部４が大きな略長方形の外形に形成
された以外は、本実施例における誘電体フィルタと同様
の構成を有する図２に示す従来の誘電体フィルタの送信
フィルタ部を用い、その電気特性を測定した。

【００２５】図３（ａ）は各周波数における帯域外減衰
量を示すグラフであり、図３（ｂ）は各周波数における
スプリアス減衰量を示すグラフである。

【００２６】ａは実験例の特性曲線、ｂは比較例の特性
曲線である。図３から明らかなように、実験例の特性曲
線ａは、比較例の特性曲線ｂを全周波数において凌駕し
ており、特に図３（ｂ）の２．５ＧＨｚ以上の周波数帯
においては、スプリアス減衰量を飛躍的に向上させるこ
とができた。

【００２７】ここで、図３において、送信フィルタ部の
みの電気特性を示しているが、受信フィルタ部において
も、同様の優れた効果を得ることができる。

【００２８】以上のように本実施例によれば、誘電体フ
ィルタの帯域外減衰量、スプリアス減衰量等の電気特性
を向上させることができる。

【００２９】尚、本実施例においては、受信フィルタ部
と、送信フィルタ部とからなる共用器について述べてい
るが、もちろん単体の誘電体フィルタにおいても同様の
優れた効果が得られる。

【００３０】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、金属カバ
ー上に周波数調整用穿孔部を、各共振器間の隙間の上部
位置に形成された格子部を介して複数連設することによ
り、各共振器間のシールド性を向上させ、帯域外減衰
量、スプリアス減衰量等の電気特性を向上させることが
でき、また各共振器間のシールド性を向上させるために
シールド板等の部品を使用する必要がなく、製造原価、
製造工数を著しく低減させることのできる信頼性、生産
性に優れた誘電体フィルタを実現できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例における誘電体フィルタの全
体斜視図

【図２】従来の誘電体フィルタの全体斜視図

【図３】（ａ）各周波数における帯域外減衰量を示すグ
ラフ （ｂ）各周波数におけるスプリアス減衰量を示すグラフ

【符号の説明】

１ １／４波長同軸型誘電体共振器 ２ 金属シャーシ ３ 金属カバー ４ 従来の周波数調整用穿孔部 ５ 結合基板 ６ 受信フィルタ側端子 ７ アンテナ端子 ８ 送信フィルタ側端子 ９ チップコンデンサ １０ 空心コイル １１ 中心導体 １２ インダクタンス調整用孔部 １３ アース兼固定部 １４ 本発明の周波数調整用穿孔部 １５ 格子部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁵ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｈ０１Ｐ 11/00 Ｌ (72)発明者 米田 毅彦 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 多木 宏光 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】金属シャーシと、前記金属シャーシに電気
   的に接続される複数個の同軸型誘電体共振器と、前記同
   軸型誘電体共振器と電気的に接続される金属カバーとを
   備えた誘電体フィルタであって、前記金属カバー上に前
   記同軸型誘電体共振器間の各隙間の上部位置に形成され
   た格子部を介して、前記同軸型誘電体共振器を調整する
   ための周波数調整用穿孔部が、複数連設されていること
   を特徴とする誘電体フィルタ。