JPH06207370A - 人工芝およびその製造方法ならびにゴルフ練習場 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、従来のタフティッド人工芝の転がり
性を著しく改善した人工芝を提供し、もってゴルフ練習
場での集球作業を大幅に改善せんとするものであり、ま
た、かかる人工芝の製造方法を提供せんとするものであ
る。 【構成】本発明の人工芝は、ループパイルからなるタフ
ティッド人工芝の該パイル面が平坦化されていることを
特徴とするものであり、本発明の人工芝の製造方法はル
ープパイルからなるタフティッド人工芝の該パイルをガ
ラス転移点以上の温度に昇温したのち、該パイルを圧縮
して平坦化することを特徴とするものである。また、本
発明のゴルフ練習場は、ループパイルからなるタフティ
ッド人工芝の該パイル面が平坦化されている人工芝をゴ
ルフ練習場の少なくとも傾斜面に敷設したことを特徴と
するものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ゴルフボールの転がり
性に優れた人工芝およびその製造方法ならびにゴルフ練
習場に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ゴルフコース、ゴルフ練習場には
天然の芝が用いられてきた。しかし、特にゴルフ練習場
では近年のゴルフ愛好者の急増により、ゴルフ練習場の
利用頻度は高くなり、ゴルフボールによる直接の打撃や
集球などメンテナンスのため天然芝の維持は極めて困難
な状況に陥っている。。そのため特にゴルフ練習場にお
いては人工物を敷きつめることが一般化してきている。
また近年、労働力不足が定常化し、省力化施設・設備の
導入が一般化し、各種設備・施設が開発されている。そ
の一つとしてゴルフ練習場においては練習ボールの回収
に各種施設及び設備が開発されている。平面部には砂入
り人工芝が敷き詰められ、その上をリモコン操作の集球
用無人自動車が走り回るケースも見られる。しかし、よ
り一般的にはボールの落下地に傾斜を設けるものであ
る。その傾斜上にボールの転がり性の良い人工物を敷き
詰め、重力によるボールの転がりによりボールを溝に落
とし、更に、その溝を通して必要な場所に導きボールを
集めるものである。人工物の代表的例は緑色に染めた不
織布のニードルパンチ品で価格が低い利点で普及してい
る。しかし、これは美観が劣る点や汚れやすい、毛羽立
ち、破れるなど耐久性が低いこと、表面は初期には平滑
であり、ボールの転がり性はよいが、比較的早い時期に
老朽化が進み、平滑性が失われボールの転がり性が悪く
なる問題があった。そこで最近では価格は不織布のニー
ドルパンチ品に比較すれば高いが美観に優れるタフテッ
ド人工芝が多く用いられるようになってきた。ゴルフ練
習場集球用人工芝としてはタフテッド人工芝の中でカッ
トパイルではボールがしずみ転がり性が悪い。ループパ
イルはしっかりした構造になっているため、飛んでくる
ボールの打撃に対しては反撥性があるが、静止したボー
ルに対しては沈みが無いように容易に構成でき、したが
って、かかる沈みによってボールの転がり性が損なわれ
ることは無く、また、耐久性の点からも望ましい素材で
ある。ループパイルは上記のように集球用人工芝として
は優れた素材であるが、その基本的なボールの転がり性
については必ずしも満足できるものではなかった。即
ち、平面的に見えるループパイルでも微細に見るとかな
り凹凸があり、その凹凸がボールの転がりを妨害する問
題であった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のタフ
ティッド人工芝の転がり性を著しく改善した人工芝を提
供し、もってゴルフ練習場での集球作業を大幅に改善せ
んとするものであり、また、かかる人工芝の製造方法を
提供せんとするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために次のような手段を採用する。すなわち、
本発明の人工芝は、ループパイルからなるタフティッド
人工芝の該パイル面が平坦化されていることを特徴とす
るものであり、本発明の人工芝の製造方法は、、ループ
パイルからなるタフティッド人工芝の該パイルをガラス
転移点以上の温度に昇温したのち、該パイルを圧縮して
平坦化することを特徴とするものである。また、本発明
のゴルフ練習場は、ループパイルからなるタフティッド
人工芝の該パイル面が平坦化されている人工芝をゴルフ
練習場の少なくとも傾斜面に敷設したことを特徴とする
ものである。

【０００５】

【作用】一般にループパイル人工芝は、次の構成を有し
ている。すなわち、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポ
リアミド、ポリエステル等の熱可塑性ポリマーからな
る、たとえば、２０００〜３０００デニールのスプリッ
トヤーンを用いるか、あるいは、１００〜４００デニー
ルのモノフィラメントヤーンを５〜３０本集合した糸を
パイル糸として使用して、これを基布にタフティングし
てループパイル人工芝とする。このループパイル人工芝
のパイル高さは、好ましくは４〜１０mmの範囲のものが
使用されるが、必要により、さらに高くしても、低くし
てもよい。かかる人工芝の裏面側の基布面に合成樹脂、
好ましくはエラストマーをバッキングしてパイルを固定
する。さらに必要により該バッキング面にクッション層
を設けることができる。

【０００６】かかるループパイル人工芝は、カットパイ
ル人工芝に比して弾性や耐久性にすぐれていることもあ
って、ゴルフ練習場には好都合に使用されていた。

【０００７】本発明は、かかるループパイルの個々のル
ープのパイル先端が、とんがりのある楕円形態であるこ
とに加えて、微妙に高さが異なるパイル面のために、ボ
ールのひっかかりがあり、それがボールの転がり性を悪
くすることを究明し、その転がりを改善すべく鋭意検討
した。その結果、該ループパイル人工芝を圧縮し、先端
のとんがりを平滑化し、平坦な面を形成することによ
り、著しくボールの転がりを改善することに成功したも
のである。

【０００８】かかるループパイル人工芝のパイル面を平
坦化する方法は、如何なる方法でもよいが、該パイルを
構成する熱可塑性ポリマーのガラス転移点以上融点以下
の温度に該パイルを昇温し、そのパイル面を圧縮または
押圧することにより効率よく形成することができる。

【０００９】具体的には、ループパイルを加熱ローラー
で加圧圧縮する方法、オーブンで加熱後、ローラーで加
圧圧縮する方法、さらに望ましくは、熱可塑性樹脂のメ
ルトラミネーティングによりバッキングする場合に、同
時にパイル面を加圧圧縮する方法を採用することができ
る。後者のバッキング時の圧縮方法では、メルトポリマ
ーの熱を有効に利用することができるので、パイルを加
熱することなく、良好な圧縮賦形を達成することができ
る。なお、圧縮賦形時の加熱はガラス転移点以下でも賦
形は可能であるが、効率が悪く、また大きな加圧力を必
要とする。

【００１０】本発明の圧縮されたループパイル人工芝の
パイル高さは、圧縮前のループパイル人工芝のパイル高
さの０．６〜０．９であることが好ましい。０．６未満
では圧縮し過ぎで反撥性が上がり過ぎ、クッション性が
なくなる。そのためボールが跳ね過ぎ、また打撃に対し
て緩衝性がなくなるため耐久性の悪化が生じる可能性が
出てくる。０．９を越えると、その平滑性が今ひとつ
で、転がり性の改善効果が期待しにくくなる。ここでパ
イル高さとは、基布表面からの高さである。平坦化につ
いて、さらに具体的に言えば、該パイルの先端をピンな
どでひっかけて伸ばして直線状にしたときの基布表面か
らのループパイル高さ（仮想直線の高さ）でいうと、好
ましく３〜１０mm、さらに好ましくは５〜７mmの範囲の
ものが、本発明の人工芝として好適に使用される。この
仮想直線の高さの好ましくは８０％以下、さらに好まし
くは４０〜７５％に圧縮して平坦化することにより、本
発明の人工芝は形成される。

【００１１】パイル面が平坦化した本発明の人工芝は、
ゴルフボールの転がり性が著しく改善され、ゴルフ練習
場の少なくとも傾斜面に敷設することによって、ボール
の落下時の力で止ることなく転がり、集球する手間が省
けるという効果を達成する。本発明を図面を用いて、更
に説明する。図１は、本発明のループパイル人工芝のパ
イル形状の一例を示す模式図であり、すなわち、ループ
パイル１の先端が平坦な形状に屈曲したものやパイル全
体が同一方向に折れ曲って倒伏した形状のものなどが混
在して、人工芝の芝面が平坦化されている。実際は、図
のようにキレイな形で平坦な面が形成されているものは
少ないが、要するにパイル先端部で平坦平面が形成され
ておれば、如何なる形状のもので構成されていてもよ
い。かかる人工芝のパイル面の特徴は、落下したボール
は、その勢を維持したまま転がりボール貯留場所に集球
される。なお、２は基布、３はバッキング層を示す。

【００１２】図２は、従来のループパイル人工芝のパイ
ル形態を示す断面の一例である。すなわち、本発明の平
滑化加工前のループパイル人工芝のものである。かかる
人工芝のパイル面の特徴は、パイル高さに斑があること
である。この斑がボールの転がりを妨げるのである。

【００１３】図３は、本発明の人工芝のボールの転がり
開始角度（θ）を測定する方法を示す概略図である。す
なわち、任意の角度に傾斜設定できるプレート５に測定
用の試料６を貼付け、その上にゴルフボール４を置き、
転がりが起こる最小傾斜角度（θ）を測定する。この傾
斜角度が小さい程、練習場の丘の盛土を少なくすること
ができるので、施工時に極めて大きな意義がある。すな
わちゴルフ練習場のような広い空間では、傾斜角度の大
小が、施工費の高低に極端に影響を与える。また、傾斜
面にはどうしても不陸が避け難いが、転がり性が良けれ
ば少々の不陸があってもボールが止まることはなく、集
球効率もよいという効果を発揮する。

【００１４】

【実施例】次に実施例により、本発明をさらに詳しく説
明する。

【００１５】実施例１、２、比較例１ ポリプロピレンからなるパイル糸を通常の方法によりタ
フティングし、ループパイル人工芝を作成した。次いで
ＳＢＲによりバッキング加工を行った。バッキング材の
乾燥のため、１３０℃に設定した加熱炉通過直後に、加
圧ローラーにより該パイルを圧縮加工した。圧縮加工無
しのループパイルのパイルの高さは５mm（仮想直線の高
さ：５．５mm）であった（比較例１）。圧縮加工を行っ
た実施例１のパイル高さは４．１mmであった。したがっ
て圧縮比は、０．８２（仮想直線高さの７５％）であっ
た。

【００１６】人工芝の転がり開始角度は、圧縮無しの比
較例１のものが６度、実施例１のものは４．５度であっ
た。

【００１７】また、加熱炉通過直後に１６０℃に加熱し
た加圧ローラーにより圧縮加工を行った。その結果、か
なり圧縮が行われ、パイル高さは２．５mmになった（実
施例２）。

【００１８】この人工芝の転がり性は２度と大幅な改善
が見られた。しかし、外観はプラスチックの平面ライク
となり、美観の上からはやや劣るものであった。

【００１９】実施例３、比較例２ ポリプロピレンからなるパイル糸を通常の方法によりタ
フティングし、ループパイル人工芝を作成した。次いで
メルトラミネイティング方法によりポリエチレンをルー
プパイル人工芝裏面よりメルトコートした。メルトコー
ト時のポリマー温度は１７０℃であった。ポリエチレン
側は水冷のローラーに接触させ冷却固化し、ループパイ
ル側はゴムローラーにより加圧圧縮した。

【００２０】その結果、ループパイルの高さは、処理無
しの比較例２のものが６mm（仮想直線高さ：７mm）で、
メルトコートした実施例３のものは４．５mmであった。
圧縮比は０．７５（仮想直線高さの６４％）であった。
転がりの開始角度は、処理無しの比較例２が６．５度
で、メルトコートした実施例３のものは４度であった。

【００２１】

【発明の効果】本発明によれば、ゴルフボールの転がり
性を改善し、そのためゴルフ練習場の自動集球システム
の確実性を向上させるとともに、施工の省力化およびゴ
ルフ練習場の運営面での省力化を実現することができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 この図は、本発明の人工芝を構成するループ
パイルの一例を示す断面図である。

【図２】 この図は、従来の人工芝を構成するループパ
イルの一例を示す断面図である。

【図３】 この図は、転がり開始角度を測定する方法を
説明するための概略図である。

【符号の説明】

１：ループパイル ２：基布 ３：バッキング層 ４：ゴルフボール ５：プレート ６：試料人工芝 θ：転がり開始角度

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ループパイルからなるタフティッド人工
   芝の該パイル面が平坦化されていることを特徴とする人
   工芝。
2. 【請求項２】 パイル面を構成する該ループパイルの先
   端部が、圧縮平滑化されている請求項１記載の人工芝。
3. 【請求項３】 パイル高さが、圧縮しないパイル高さの
   ０．６〜０．９である請求項１の人工芝。
4. 【請求項４】 パイル高さが、該パイルの仮想直線で表
   わしたときの高さの８０％以下である請求項１記載の人
   工芝。
5. 【請求項５】 ループパイルからなるタフティッド人工
   芝の該パイルをガラス転移点以上の温度に昇温したの
   ち、該パイルを圧縮して平坦化することを特徴とする人
   工芝の製造方法。
6. 【請求項６】 圧縮が、ローラーによる方法である請求
   項５記載の人工芝の製造方法。
7. 【請求項７】 平坦化が、該パイルの仮想直線で表わし
   たときの高さの８０％以下に圧縮する方法である請求項
   ５記載の人工芝の製造方法。
8. 【請求項８】 ループパイルからなるタフティッド人工
   芝の該パイル面が平坦化されている人工芝をゴルフ練習
   場の少なくとも傾斜面に敷設したことを特徴とするゴル
   フ練習場。