JPH0618476Y2 - 安全キヤビネツト - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 この考案は、主として医薬メーカーや病院或いは大学等
の研究所などで、バクテリアやウイルスなどの遺伝子組
替え或いは各種細菌やビールス・発癌物質などの実験・
研究など、バイオハザード（Ｂｉｏｈａｚａｒｄ）と称
され人体等に有害な生物障害の危険がある生物実験・研
究或いは生産等を行なう場合に用いられる安全キャビネ
ットに関し。特にクラスIIIと称されて外気と完全に隔
離して実験・研究等の作業を行なうことが要求される安
全キャビネットに関する。

〔考案の技術的背景とその問題点〕

近年、上述した遺伝子組替えや各種細菌などの生物障害
の危険のある実験・研究が各所で盛んに行われており、
その安全を確保する為に各種の実験設備が開発されて来
ている。特にクラスIII安全キャビネットと称されるも
のを用いた高い安全度を有するものが開発されて使用さ
れている。

ところで、この種の装置では密閉箱状の作業ボックス内
に各種実験用器具を入れて、外部と完全に隔離した状態
で該ボックスに装着した安全用のグローブを介して外側
から作業員が手を差延べるなどして生物実験作業を行な
い得るが、一つ問題として該ボックス内で使用した各種
器具、例えばビーカーなどの容器類は何等かの理由で外
に取出す場合に、その器具に付着した有害生物が一緒に
出て来てしまう危険があった。この為に一般には上記作
業ボックスの下側にダンクタンクを設置し、そのダンク
タンク内に消毒殺菌作用を有する薬液を収容しておき、
そして作業ボックス内から器具を取出す際には該ボック
スの底部に形成した開口部の蓋を開け、その開口部から
器具を下側のダンクタンク内の薬液中に落とし込んで通
して、その薬液により消毒殺菌した後該ダンクタンクか
ら外に取出すようにしている。なお、そのダンクタンク
は作業ボックスの下側に対して固定式に設けたものと、
引出し可能に前後にスライド式に設けたものとがある。

しかしながら、上述した従来のものでは作業ボックスの
底部開口部とダンクタンク内の薬液との間の気密性が悪
く、そこから器具取出しの際にボックス内の汚染空気が
外に漏れる心配があった。特に上記スライド式のダンク
タンクの場合は器具取出しの際の気密保持が困難であ
り、器具取出しに便利であるが非常に危険であった。ま
た上記ダンクタンクが固定式でもスライド式でも比重の
軽い器具の場合薬液中に沈まず液面に浮いたままで、十
分に消毒殺菌されない状態で外に取出されてしまう恐れ
があった。その為に上記ボックスの内底部の開口部から
器具を下側のダンクタンク内の薬液中に深く強制的に押
し下げて完全に浸して取出す必要があるが、その作業を
うっかり忘れる心配があり、またその作業を例えば手作
業で行なう場合上記グローブに差込んだ手で器具を液中
深く押し下げなければならないので該グローブが薬液で
濡れてしまい次の作業に支障を来たすなどの問題があっ
た。

〔考案の目的〕

この考案は上記事情に鑑みなされたもので、作業ボック
ス下側のダンクタンクを固定式は勿論のことスライド式
にしても、そのボックスとダンクタンクとの間を常に液
封効果により完全に気密保持できて、内部器具の取出し
の際に汚染空気の漏れを確実に防止でき、且つ必ず器具
はダンクタンク内の薬液中深く浸漬されて十分な消毒殺
菌作用を受けてから外に取出される様になり、しかもそ
の器具の薬液中への浸漬取り出し作業を、作業員がグロ
ーブに差し込んだ手を該薬液中に入れずに、簡便且つ確
実に行い得て、非常に作業性並びに安全性に優れ、バイ
オハザードの危険のある生物実験等の作業設置として極
めて有益な安全キャビネットを提供することを目的とす
る。

〔考案の概要〕

この考案の安全キャビネットは、前記目的を達成するた
めに、バクテリヤやウイルス等の生物障害の危険のある
作業を外部と隔離して行うための作業ボックスと、その
下側に消毒殺菌作用を有する薬液を収容した状態で設置
されたダンクタンクを備え、上記作業ボックス内で使用
した容器などの各種器具を該ボックスの底部に設けた開
口部を介しその下側のダンクタンク内の薬液中に通して
消毒殺菌して外部に取り出す構成とした安全キャビネッ
トにおいて、 上記作業ボックスの底部開口部に上部が気密に取り付け
られて該ボックス内に開口し且つ下部が前記ダンクタン
ク内にその内部の薬液の液面より深く突出する筒状の器
具落とし込み用シュートと、この器具落とし込み用シュ
ート内に落とされる器具をダンクタンク内の薬液中に浮
力に抗し押し下げて該シュート下端から抜け出させる器
具押下げ部材とを備え、その器具押下げ部材は、格子状
或いは網状又は多孔板状をなすと共に、前記シュート内
に起倒回動可能に軸支され、且つ前記作業ボックス内か
ら長尺な操作杆を介し手動式にて或いは外部遠隔操作に
よる電動式にて起倒回動せしめられる構成としたことを
特徴とする。

こうした構成の安全キャビネットであれば、作業ボック
ス底部からダウンタンク内の薬液中に深く突出した器具
落とし込み用シュートによる液封効果で、該ボックスと
ダウンタンクとの間の気密保持が図れて、その作業ボッ
クス内から外部への汚染空気の漏れを確実に防止できる
ようになると共に、その作業ボックス内から器具を外部
に取り出す際、その器具は前記落とし込み用シュート内
に落とし、このシュート下端の薬液中を通さない限り外
に取り出せないので、その器具は忘れる事なく必ず薬液
中に深く浸漬されて十分に消毒殺菌作用を受けてから外
に取り出されるようになる。

しかも、その器具を落とし込み用シュート内に落とした
状態で、器具押下げ部材を作業ボックス内から長尺な操
作杆を介し手動式にて或いは外部遠隔操作による電動式
にて倒すように回動させることで、該器具をダンクタン
ク内の薬液中に浮力に抗し強制的に深く押し下げて、該
シュート下端から抜け出させるようにできる。従って、
器具の薬液中への浸漬取り出し作業を、作業員がグロー
ブに差し込んだ手を該薬液中に全く入れずに行い得て、
グローブが薬液に漏れて次の作業に支障を来たすなどの
不都合がなくなると共に、その器具押下げ部材が格子状
或いは網状又は多孔板状をなして流体通過抵抗が少ない
ので、器具押し下げ浸漬作業が楽にかつ確実に行い得
て、安全性と共に作業性の向上が図れるようになる。

〔考案の実施例〕

以下この考案の一実施例を図面に従い説明する。先ず第
１図及び第２図において図中１はバイオハザードの危険
がある生物実験等を外部と完全に遮蔽して行なうための
作業ボックスで、これは密閉箱状を成している。２は上
記ボックス１の下側に配設された前後スライド式のダン
クタンクで、このダンクタンク２は上面解放の箱形状を
なし、その内部に有害なバクテリアやウイルスや各種細
菌等の消毒殺菌作用を有する薬液３が上部からこぼれな
い程度に多量に収容されている。

ここで上記ボックス１にはその前面部にグローブポート
４が設けられ、そのグローブポート４内に基端部を気密
に止め着して合成樹脂フイルム製等の長手袋状をした一
対のグローブ５，５が取付けられ、そのグローブ５，５
にボックス１の外側前方から作業者が左右の手を差込ん
で該ボックス１内方に差延べて各種実験作業が行ない得
るようになっている。また、上記ボックス１の底部前方
寄りには前記ダンクタンク２の真上に位置して開口部６
が形成され、その底部開口部６には上下端開放の角形筒
状形をなす器具落とし込み用のシュート７がその上部を
溶接することにより気密に嵌着して取付け固定されてい
る。、そのシュート７は上端が上記キャビネット１内に
開口し、下部が該ボックス１底部からその下側のダンク
タンク２内の略中間高さまで達する様に下方に長く垂下
して突出されている。つまりそのシュート７は前記ボッ
クス１の内外の気圧差に変動があっても、また上記ダン
クタンク２のスライド移動に伴う薬液３の多少の波立ち
があっても、常に下端開口部７ａが該薬液３中にその液
面３ａより下方に位置して液封効果（水封効果）を持つ
様に設定されている。この実施例ではボックス１内の静
圧が設計値の−１００mmＨ_２Ｏに達しても液封が破れぬ
様にシュート７の突出深さが設定されている。更に、上
記ボックス１内には上記シュート７の開口上端を閉成す
る蓋８が設けられている。この蓋８は平板状をしてお
り、基端が上記シュート７の上部後側のヒンジ９を介し
て起立・転倒方向に回動可能に枢着されて、上記グロー
ブ５に差込んだ手により開閉操作できる様になってい
る。

また、上記シュート７内には器具押下げ部材10が装備さ
れている。これは第３図及び第４図に示す如く比重の軽
い器具Ａを浮力に抗して液中に押し下げてシュート７の
下端開口部７ａから前方に抜け出させるもので、上記薬
液３に対して耐蝕性を有する多数の縦横線材からなる格
子状の押えフレーム10aと、その下端部から左右にクラ
ンク状に屈曲して突出された軸杆10bと、押えフレーム1
0aの上端部の左右寄りにそれぞれ折返し折曲されたフッ
ク10cと、押えフレーム10aの上端部中央に下端部を回動
可能に連結して上方に延出された操作杆10dとから構成
され、その押下げ部材10はその下端の左右軸杆10bを上
記シュート７の両側壁の前端寄りにそれぞれ設けた逆Ｌ
字状の長孔７ｂに摺嵌することで該シュート７内に回動
可能に且つ少し上下及び前後動可能に取付けられて、平
時は上端の左右フック10cを上記シュート３の前壁上端
縁に係合することで該シュート７内の前壁に寄り沿って
立ち上がる状態に保持されている。なおその操作杆10d
は上記蓋８の前端切欠８ａを介し上方に延出してボック
ス１内壁に立掛けておかれる。

また、上記前後スライド式のダンクタンク２は前後方向
に長い長方形箱状をしていて、その上端開口外周縁に断
面逆Ｕ字状のフランジ２ａが一体成形され、その前後に
長尺な左右フランジ２ａが上記ボックス１の底部下面に
取付けた左右ガイドレール11,11相互間に位置して、該
左右ガイドレール11,11にその長手方向に適当間隔を存
してそれぞれ複数個ずつ設けたコロ12上に載架されて前
後動可能に案内支持されている。

而して、上述した構成の安全キャビネットの作用を説明
すると、まず作業ボックス１の内部に所望の生物やその
実験研究等用の各種器具Ａを収納して、該ボックス１の
のドア（図示せず）などを完全に閉じて外部と遮断す
る。その状態で実験作業員が前方から左右の手をグロー
ブポート４内のグローブ５，５に入れてそのままボック
ス１内方に差延べ、そしてそのグローブ５，５をはめた
左右の手でボックス１内の各種器具を用いて目的の生物
実験・研究等の作業を行なう。

この際、ボックス１の底部開口部６のシュート７上端は
蓋８で上から閉成して、器具等を下に誤って落とさない
様にしておく。なおその蓋８は物が落ちない様にするだ
けでシュート７の上端開口部を気密にシールする程の密
閉性は有さ無いが、しかし該シュート７が上下端のみ開
口した筒状形を成し、且つその上部がボックス１底部開
口部に気密に溶接固定され、下部が下側のダンクタンク
２内の薬液３中深く侵入せしめられているので、そのシ
ュート７と薬液３との液封効果により完全にシールされ
てボックス１内の生物障害の危険がある汚染空気が直接
外部に漏れる様な心配は全く無い。なお上記生物実験中
は通常ボックス１内の気圧は−２０mmＨ_２Ｏ程度を基準
値として維持されて、気圧差異常が起きても十分設計値
の範囲内であることから上記液封効果が破れることは無
く、安全に生物実験・研究が行ない得る様になる。

ここで、なんらかの理由によりボックス１内で使用した
器具を外に取出す場合は、まずグローブ５に差込んだ手
で蓋８を第１図想像線の位置に開放し、その状態でボッ
クス１内から目的の器具をシュート７内に落とし込む。
この際比重が大きい器具であればシュート７内から薬液
３中に自然と沈降してその下端開口部７ａから下方に抜
けてダンクタンク２内に沈み込むことから、該器具に付
着して来た細菌等の汚染物質は完全に薬液３に浸されて
十分な消毒細菌が図られ、その後ダンクタンク２をボッ
クス１下側から前方にスライドさせて引出し、そしてダ
ンクタンク２の上方から適当な道具を差し入れて救いあ
げることで簡単に取出せる様になる。

一方、例えば第４図に示すプラスチック製等の比重の軽
い容器などの器具Ａを外に取出す場合は、上記同様蓋８
を開いて、ボックス１内から該器具Ａをシュート７に落
とし込む。これだけでは該器具Ａは第４図（ａ）に示す
如くのシュート７内途中で薬液３の液面３ａ付近に浮い
たまま沈まない。そこでこの場合はグローブ５に差込ん
だ手でボックス１内より押下げ部材10の操作杆10dを持
ち、そのまま上方に引張って上部左右のフック10cをシ
ュート７上端縁から外し、そのまま操作杆10dを持って
格子状フレーム10aを後方に押し倒して行く。これにて
該フレーム10aが左右の軸杆10bを支点に回動して浮いて
いた器具Ａを第４図（ｂ）に示す如く上から押えて液面
下に押し沈める。ここで更に操作杆10dを操作して第４
図（ｃ）に示す様に格子状フレーム10aをシュート７の
下端開口部７ａより下方に後ろ下がり傾斜状態となるま
で押し下げる。これにて器具Ａはシュート７の下端開口
部７ａ下方に押し沈められ、その押下げフレーム10aの
下側からその傾斜に沿って浮力により斜め前方に抜け出
してダンクタンク２の前端寄りの液面３ａに浮上する。
これにて該器具Ａは一旦完全に薬液３中に潜行して十分
消毒殺菌された状態で浮上して来る様になり、そこでダ
ンクタンク２を前方に引出せば該器具Ａを液面上から簡
単に拾い出せる。

従って、作業ボックス１内の器具は、薬液３に対して比
重が重く自然と沈むものは勿論のこと、比重が軽く浮い
てしまうものでも、必ずシュート７内からダンクタンク
２内の薬液３中に深く沈み込ませて十分に消毒殺菌した
後に取出される様になるので、消毒殺菌を忘れると言っ
た問題が無くなる。また、その比重の軽い器具Ａでも薬
液３中に沈めて取出す作業が簡単確実に出来、その際グ
ローブ５を薬液３で濡らしてしまう不都合なことも無
い。

しかも、その器具の取出し時も、上述の様にシュート７
の下部が薬液３中にその液面３ａより下方に突出して液
封効果を維持していることから、作業ボックス１内とダ
ンクタンク２との間の気密シール性は完全で、ボックス
１内の細菌等の汚染空気が外に漏れる心配は全く無い。
また、ダンクタンク２の前後スライド移動に伴い内部薬
液３が波立っても、多少のことではシュート７が該薬液
３中に深く突出しているので上記液封効果が破れること
は無い。

なお、この考案は上記実施例のみに限定されること無
く、例えば前記ダンクタンク２はスライド式以外に固定
式でも可である。また器具押下げ部材10は上述した格子
状のもの以外に、薬液に対して耐蝕性を有する物であれ
ば網状又は多孔板等の流体通過抵抗の少ない物でも良
く、さらにその器具押下げ部材10は手動によらずに電動
式にて遠隔操作できる様に構成しても良い。その他この
考案の要旨を免脱しない範囲であれば種々変更しても可
である。

〔考案の効果〕

この考案は上述した如くなしたから、作業ボックス内と
その下部のダンクタンクとの間を器具落とし込み用シュ
ートによる液封効果で常に完全に気密保持できて、ボッ
クスの内部器具の取出しの際等時の汚染空気の漏れを確
実に防止でき、且つ前記器具は必ずダンクタンク内の薬
液中深く沈み込ませて浸漬して十分に消毒殺菌作してか
ら外に取出すことになり、しかもその器具の薬液中への
浸漬取り出し作業を、作業員がグローブに差し込んだ手
を該薬液中に入れずに、簡便且つ確実に行い得て、非常
に作業性並びに安全性に優れ、バイオハザードの危険の
恐れのある生物実験・研究やその他作業などの安全キャ
ビネットとして極めて有益なものである。

【図面の簡単な説明】

図面はこの考案の一実施例を示すもので、第１図は一部
省略した縦断面図、第２図は第１図のII−II線に沿う断
面図、第３図は器具押下げ部材の斜視図、第４図
（ａ），（ｂ），（ｃ）は比重の軽い器具の取出し操作
状態を順に示す断面図である。 １…作業ボックス、２…ダンクタンク、２ａ…フラン
ジ、３…薬液、３ａ…液面、４…グローブポート、５…
グローブ、６…底部開口部、７…器具落とし込み用シュ
ート、７ａ…下端開口部、７ｂ…長孔、８…蓋、８ａ…
切欠、９…ヒンジ、10…器具押下げ部材、10a…押えフ
レーム、10b…軸杆、10c…フック、10d…操作杆、11…
ガイドレール、12…コロ、Ａ…器具。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】バクテリヤやウイルス等の生物障害の危険
   のある作業を外部と隔離して行うための作業ボックス
   と、その下側に消毒殺菌作用を有する薬液を収容した状
   態で設置されたダンクタンクを備え、上記作業ボックス
   内で使用した容器などの各種器具を該ボックスの底部に
   設けた開口部を介しその下側のダンクタンク内の薬液中
   に通して消毒殺菌して外部に取り出す構成とした安全キ
   ャビネットにおいて、 上記作業ボックスの底部開口部に上部が気密に取り付け
   られて該ボックス内に開口し且つ下部が前記ダンクタン
   ク内にその内部の薬液の液面より深く突出する筒状の器
   具落とし込み用シュートと、この器具落とし込み用シュ
   ート内に落とされる器具をダンクタンク内の薬液中に浮
   力に抗し押し下げて該シュート下端から抜け出させる器
   具押下げ部材とを備え、その器具押下げ部材は、格子状
   或いは網状又は多孔板状をなすと共に、前記シュート内
   に起倒回動可能に軸支され、且つ前記作業ボックス内か
   ら長尺な操作杆を介し手動式にて或いは外部遠隔操作に
   よる電動式にて起倒回動せしめられる構成としたことを
   特徴とする安全キャビネット。