JPH06165931A - 自己乳化型ガラス - Google Patents

自己乳化型ガラス

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JPH06165931A
JPH06165931A JP4082388A JP8238892A JPH06165931A JP H06165931 A JPH06165931 A JP H06165931A JP 4082388 A JP4082388 A JP 4082388A JP 8238892 A JP8238892 A JP 8238892A JP H06165931 A JPH06165931 A JP H06165931A
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water
glass
emulsion
oil
self
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JP4082388A
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L Shiburii Merrick
エル. シブリー メリック
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Research Corp Technologies Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】エマルジョンおよび多相エマルジョン調製のた
めの組成物およびその製造方法を提供すること。さらに
詳しくは、十分な量の水相と接触することにより、乳化
攪拌を行わずに、安定なエマルジョンまたは多相エマル
ジョンを形成し得る自己乳化型ガラスである固形物を提
供すること。 【構成】自己乳化型ガラスは、ある種のマトリックス化
合物および油性物質から溶媒法で調製される。ガラス
は、マトリックス化合物、油性物質および実質的に全て
のマトリックス化合物を溶解する溶媒の組合せから、溶
媒を除去することによって調製される。多相エマルジョ
ンは、油相が第一相すなわち油中水型エマルジョンであ
るガラスから形成される。 【効果】本発明により製造されるガラスおよびエマルジ
ョンは、薬学、食品および化粧品の分野において特に有
用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エマルジョン技術の分
野に関する。さらに詳細には、本発明はエマルジョンお
よび多相エマルジョン(multiple emulsion)調製のため
の組成物および方法、およびそのような組成物およびエ
マルジョンの薬学的分野、食品分野または化粧品分野へ
の応用に関する。
【0002】
【従来の技術】毎年、数多くの薬剤が製薬工業において
断念されている。なぜなら、その化合物が活性がないこ
とが分かったというのではなく、患者への送達のための
FDAで認められた溶媒に溶解し得ないためである。こ
の問題は、化学療法剤(無極性であるため水溶性が極め
て低いか水溶性がない)において、極めて共通の問題で
ある。さらに、化粧品、食品、アルコール飲料、写真、
化学あるいはバイオメディカル産業において有用な化合
物が、最近では、溶解もしくは懸濁しておく効果的な方
法がないため使用されていないということもある。その
ような無極性化合物を可溶化もしくは懸濁し得る方法お
よび媒体は、多くの薬剤および産業上への応用が可能で
ある。
【0003】一般に、無極性物質を可溶化するための媒
体の調製方法は、好ましくは単純であるべきである。つ
まり、製造するのに多くのプロセス工程または特別の技
術を含むべきではない。さらに、その方法は、経済的で
あること、例えば多くのエネルギーの投入を必要としな
いこと、が好ましい。
【0004】媒体は送達剤としての有効性を損なうこと
なく長時間の貯蔵が可能でなくてはならない。輸送およ
び貯蔵のコストを低減させるため、媒体はコンパクトな
形で貯蔵することが可能でなければならない。例えば、
媒体を乾燥した固体で貯蔵することができれば、媒体の
重量および容量を減じることが可能であり、このことに
より輸送および貯蔵コストを減じることができる。
【0005】そのような媒体を薬剤、食品または他の食
糧品に使用するには、毒性物質を含有していてはならな
い。さらに、そのような媒体は、それが含まれている食
用製品に不快な、あるいはいやな香りを与えないことが
好ましい。薬物または化粧品における局所的な適用のた
めの媒体は、毒性がなく、刺激性のないものでなければ
ならない。多くの界面活性剤は毒性があり、刺激を引き
起こしたり、あるいは望ましくない香りを与える。従っ
て、それらは薬剤または食用製品においてはその使用が
限られている。
【0006】理想的な媒体は、広く使用され得るため
に、種々のpHおよび温度において、安定でなければな
らない。
【0007】ある種の薬剤の適用においては、薬剤を細
胞に送達するため、媒体は、好ましくは血管系を出て、
細胞内液に入るのが可能であることが好ましい。血管内
皮の細胞間接合部を通り抜けるためには、媒体のサイズ
は約200オングストローム(0.2μm)を下まわるべきで
ある。
【0008】脂質親和性化合物を可溶化する、現在存在
する方法および媒体は、製造に複雑な方法を含み、高度
な作業を必要とし、あるいは多くのエネルギーの投入を
必要とする。現存する方法および媒体はまた、毒性成分
あるいはpHおよび温度の変化に感受性を有する成分を
含有し得る。そのような方法および媒体、特に薬剤の用
途に使用されるものは、界面活性剤を含有するエマルジ
ョンおよび多相エマルジョン、リポソーム、ガラス分散
体および共同沈降物を含む。
【0009】従来のエマルジョンは、水性環境中に疎水
性化合物を可溶化させ、あるいは懸濁させ得るが、製造
するのが高価であり得、不安定であり得、そして通常毒
性のある界面活性剤を含有する。製造が高価であるのは
相を混合して適当な粒子サイズをつくり出すために十分
な剪断力を与える、エネルギー消費型のデバイスを使用
することに多いに起因する(A.Weiner(1990) BioPharm
2:16-21)。剪断応力をつくり出すデバイス、例えばコ
ロイドミル、ロータリーブレードミキサー、バルブ型ホ
モジナイザー、ミクロフルイダイザー(Microfluidize
r)、フレンチプレス圧力システム、超音波浴またはスプ
レー装置、およびメンブレンベースの押出機は、所望の
粒子サイズをつくり出すのに相当のエネルギーを必要と
する。これらのデバイスを操作するには、熟練した労働
力を必要とするのでより高価となる(P. Walstra(1983)
Encyclopedia of Emulsions:Basic Theory, Vol. 1:12
0 (P.Becher 編))。さらに、高い剪断力を生じるデバ
イス、特に、温度制御されていないデバイスにおいて
は、内部相に含まれる化合物が不活性化され得る(A. S
adana(1989) BioPharm 2:14-25; およびA. Sadana(198
9) BioPharm 2:20-23)。
【0010】多相エマルジョンシステムが最近多様な薬
学的用途および産業用途のために記載されている(Davi
s,S.S. およびWalker, J.M. (1987) Meth. Enzy. 149:5
1-64;Davis,S.S. (1981)Chemistry and Industry 3 (Oc
tober):683-687)。例えば、水中油中水型エマルジョン
は水溶性化合物をその内部で保持し、輸送しまたは保護
するために用いることができる。そのような多相エマル
ジョンの内部の油相は油溶性の化合物を溶解させること
ができる。多相エマルジョンは、エマルジョンが一つの
型からもう一つの型に転化する場合に、あるいは第一次
エマルジョンの再エマルジョン化によって作ることがで
きる(Florence,A.T. およびWhitehill,D.(1982) Int'
I.J. Pharmaceutics 11:277-308;Matsumoto (1983) J.
Colloid Interface Sci.94:362-368 ;Frenkel ら(1983)
J. Colloid Interface Sci.94:174-178)。最も頻繁に
薬物用途に使用される現存する方法は、少なくとも二つ
の異なった界面活性剤(一つは高HLBを有し、もう一方
は低HLBを有する)を使用する再エマルジョン化であ
る。しかし、多相エマルジョンの実際の用途は、その固
有の不安定性のために限られたものとなっていることが
報告されている(Omotosho,J.A. ら(1988) J. Microenc
apsulation 6:183-192;Magdassi,S. ら(1984) J.Colloi
d and Interface Sci.97:374-379)。低レベルの界面活
性剤を有し、実質的により安定な多相エマルジョンはそ
のような媒体の有用な用途を大きく拡大するであろう。
【0011】関連したシステム、水中油中ゼラチン球型
多相エマルジョン、が薬物送達への使用の可能性に関連
して記載されている(Yoshioka ら(1982) Chem. Pharm.
Bull.30:1406-1415)。これらのシステムでは、内部の
水滴がゲル化したゼラチンの微小球で置き換えられてい
る。これらの多相エマルジョンでは、S/0型エマルジョ
ンが界面活性剤を含有する油相およびゼラチン水溶液
(20%)の超音波処理によって形成された。S/0/W型エマ
ルジョンがS/0型エマルジョンを別のゼラチン水溶液(1
%)に分散させることによって作られた。S/0/W型エマル
ジョンの凍結乾燥により「油滴のバルキーパイル」が生
じ、このパイルは必要に応じて元のS/0/W型エマルジョ
ンを与えた。
【0012】安定性の改良されたマルチW/0/W型エマル
ジョンが、界面活性膜を形成する重合可能な非イオン界
面活性剤を使用した時に得られたという報告がある(La
w ら、(1984)J. Pharm.Pharmacol.36:50、Law ら(198
4)、Int'l.J. Pharma.21:277-278)。アルブミンのよう
な高分子をW/0/W組成物に加えると、多相エマルジョン
を安定化する界面活性膜を形成することが報告されてい
る。これらの改良されたシステムでもやはり多相エマル
ジョン化剤の使用が必要である。
【0013】エマルジョンの製造では、所望の粒子サイ
ズを作るのに必要なインプットエネルギーを、油相の親
水性と親油性のバランス(HLB)要求をきっちりと満た
す乳化剤を組み合わせて使用することにより低減させる
ことができる。(A. Weiner(1990) BioPharm 2:16-1
7)。不幸にして、これらの薬品のほとんどは刺激性を
有するのでインビボ用途に限界がある(Swarbrick,J.
(1965) J. Pharm. Sci.54:1229)。高濃縮の刺激性の乳
化剤が必要とされることは、薬剤用途への乳化剤含有調
製物の使用を厳しく限定し得る。
【0014】乳化剤含有エマルジョンはまた、pHおよび
温度の変化に対する不安定性を示し得るが、その結果と
して、エマルジョン粒子の合一が起こり、ついには相分
離を起こす(J. Collett & L. Koo(1975) J. Pharm. Sc
i.64:1253;およびP. Elworthy & F. Lipscomb(1968) J.
Pharm. Pharmacol.20:817)。
【0015】リポソームは、熱力学的に安定な分散シス
テムであり(H. Hauser(1984)Biochem.Biophys.Acta 77
2:37)化合物を溶解することができる(A. Janoffら(19
85)Euro.Patent Publ.No.185680)。しかし、リポソー
ムはある条件下では不安定であり得る(L. Guo ら(198
0)、Lipid Res.21:993;C.Alving & R. Richards (1983)
The Liposomes(M.Ostro ed.;D. Papahadjopoulas (19
62) Proc. Soc. Exper.Biol. 111:412)。リポソームは
抗原性/免疫原性となり得(C. Alving (1986)Chem. Ph
ys. Lipids 40:303)、そして血管内皮の細胞間接合部
を通って輸送させるには大きすぎる(少なくとも直径60
0オングストローム)ことがあり得る(N.Simionesu ら
(1975)J. Cell Biol.64:586;G. Gregoriadis (1979) Dr
ug Carriers in Biology and Medicine,pp.287-341)。
さらに、リポソームの製造は特別の技術と装置を必要と
する点で費用がかり、そして、エネルギー集約的であり
得る(F. Defrise-Quertain ら(1984) Liposome Techno
logy,Vol.2,pp.1-17;およびF. Szoka & D. Papahadjopo
ulis (1980) Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467;A. Weiner
(1990) Biopharm 2:17-18;Ostro (1988) Liposomes as
Drug Carriers,p.855(G. Gregoriadis,編.))。
【0016】ガラス分散体は溶融物内に医薬を組み込
み、凝固する際にガラス分散体を形成することによって
形成される固形物である。そのような物質は医薬の溶
解、吸収及び治療効果を増大させるために、錠剤、カプ
セルまたは他の投薬単位で使用される。ガラス固体分散
体は、担体および薬物を溶融または融合し、その後急速
に冷却することによって形成される。担体は溶媒に溶
け;その溶媒との混和により、担体が急速に溶解され担
体のマトリックスの中の薬物が分子分散体となる。この
方法の一つの欠点は、薬物または担体が融合プロセスの
間に分解し、蒸発しまたは酸化され得ることである(W.
Chiou & S. Riegelman (1971) J. Pharm. Sci.60:128
3)。さらなる欠点は、熱エネルギーの投入により負わさ
れる製造費用にある。最後に、ガラス分散体固形物を形
成するためには、融合された担体化合物に薬物が溶解す
るかまたは混和しなければならない。例えば、J. Kanig
(1964)J. Pharm. Sci.53: 188-192,では、研究者はひ
まし油を溶融したマンニトールに分散させるかまたは溶
解させることができなかった。
【0017】担体化合物としての糖を用いるガラス溶液
について記載した文献には、L. Allen ら(1977) J. Pha
rm. Sci.66:494-496;W. Chiou & S. Riegelman(1971)
J. Pharm. Sci.60:1281-1302;および上述のJ. Kanig(19
64)が含まれる。
【0018】共沈する固形物を、溶媒と混合して溶液を
形成させることができる。共沈する固形物は、二つの固
形成分の物理的な混合物を一般的な溶媒に溶解し、次い
で溶媒を蒸発させることにより調製される(W. Chiou &
S. Riegelman(1971)J. Pharm. Sci.60:1283)。共沈物
は種々のポリマーで作成される。そのような共沈物につ
いて記載している文献には、W. Chiou & S. Riegelman
(1971) J. Pharm.Sci.60:1376-80;E. Stupak & E. Bate
s (1972) J. Pharm.Sci.61:400-403;W. Chiou& S. Rieg
elman (1971) J. Pharm.Sci.60:1281-1302;A. Simonell
i ら(1969) J.Pharm.Sci.58:538-549;およびT. Tachiba
na & A. Nakamura(1965) Kolloid-Zeitschrift und Zei
tschriftfur Polymere 203(2):130-133が含まれる。し
かし、これらの文献のいずれも油または脂質成分を含有
する共沈物を報告してはいない。現存する共沈法に関連
した欠点は、薬物と担体の両方に共通の溶媒を探さなけ
ればならないということにある。このことは薬物と担体
の可能な組み合わせを、共通で毒性のない溶媒を持つ組
み合わせに必然的に限定することになる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
問題点を解決するものであり、その目的とするところ
は、前述の方法およびシステムに固有の多くの問題を除
去するエマルジョンシステムおよび多相エマルジョンシ
ステムを提供することにある。
【0020】このようなエマルジョンおよびその製造方
法を確立することにより、選択された水相を加えると、
毒性の界面活性剤を含まない(または、多相エマルジョ
ンの場合には一つの界面活性剤だけを必要とする)エマ
ルジョンを形成する、新規なガラスを提供することがで
きる。さらに、このガラスを製造する簡単な方法を提供
することができる。即ち、ガラスを作り、そのガラスか
らエマルジョンを作る方法に使用される装置では、リポ
ソームおよび界面活性剤含有エマルジョンの製造に必要
なエネルギーよりもはるかに少ないエネルギーしか必要
でない。エマルジョンは、本発明のガラスから、そのガ
ラスを適切な水相(例えば水)と単に接触させることに
よって作ることができ、エマルジョンを形成させるため
の作業は何も必要ではない。結果として得られるエマル
ジョンは、種々のpHおよび温度条件のもとで安定であ
る。このエマルジョンは、約0.2μmより小さい直径の粒
子を持ち、血管内皮の細胞間接合部を通って輸送するこ
とができるように製剤化することができる。従来技術の
方法とは対照的に、多相エマルジョンを、単に選択され
た水相を加えることにより長期にわたる貯蔵安定性を有
する固体物質、ガラス、から作ることができる。現存す
る共沈システムとは対照的に、本発明のエマルジョン
は、疎水性の活性成分を可溶化するために任意に使用さ
れ得る油相を含んでいる。さらに、本発明のエマルジョ
ンには油成分が含まれているために、薬物と担体との組
み合わせが限られるという周知の共沈法に固有の問題を
除去する。現存する溶融−融合技術とは対照的に、本発
明の方法では、可溶化された化合物を不活性化または分
解させ得る高温を用いることは必要ではない。さらに、
本発明の方法は、親油性の化合物を可溶化するために油
相を用いることのできる、固体/油のコンビネーション
に適用することができる。溶融−融合法および共沈法
は、多相エマルジョンの製造のためには記載されていな
い。
【0021】ここに記載される方法および組成物は、広
範囲なエマルジョン用途に有用であり、製薬産業、食品
産業および化粧品産業への適用に特に魅力的である。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明は、安定なエマル
ジョンの調製に有用な方法および組成物を提供する。よ
り詳細には、油性物質および非表面活性水溶性マトリッ
クス化合物を含有する自己乳化型ガラス組成物であっ
て、示差走査型熱量測定装置で測定したときに該ガラス
が約10%から約60%の微晶質であり、該ガラスが充
分な量の水相と接触することによって、安定なエマルジ
ョンが容易に形成され得る組成物を提供する。本発明の
ガラスは、自己乳化型ガラスと呼ばれる。とりわけ水中
油型エマルジョンおよび水中油中水型エマルジョンを含
む、エマルジョンおよび多相エマルジョン組成物を提供
する。種々の水溶性および/または油溶性活性成分を、
以後に記載する方法および組成物を用いて、本発明の自
己乳化型ガラスおよびエマルジョン組成物の中に導入す
ることができる。
【0023】本発明の自己乳化型ガラスは、エマルジョ
ンおよび多相エマルジョン、特に水中油型エマルジョン
および水中油中水型エマルジョンの生成に有用である。
本発明による自己乳化型ガラスは、薬物用途、食品用途
および化粧品用途に於いて、界面活性剤を含まないかま
たは多種類の界面活性剤の使用を避けてエマルジョンを
形成するために、特に有用である。本発明の組成物およ
び方法はまた安定な多相エマルジョンを必要とする用途
に於て特に有用である。本発明によるガラスは適当な保
存条件のもとに長期間エマルジョン形成能を失うことな
く貯蔵することができる。エマルジョンは、必要な場合
には所望の用途に適切な水相と接触させることによりガ
ラスから生成することができる。本発明による自己乳化
型ガラスは、また、薬物送達剤として有用である。すな
わち、ヒトまたは動物への経口投与のために、カプセ
ル、錠剤まはた他の投薬形状物の中に組み込まれて、薬
物または他の活性成分の送達のための手段として有用で
ある。
【0024】本発明の自己乳化型ガラスから製造される
安定な油中水型および水中油型エマルジョンは、当該技
術で認知されている界面活性剤または乳化剤を必要とし
ない。本発明のマトリックス化合物は、表面活性剤、界
面活性剤または乳化剤ではない。本発明の安定な多相エ
マルジョン、例えば、水中油中水型エマルジョンは安定
な油中水型エマルジョンを必要としており、好ましくは
乳化剤を含む油中型エマルジョンを必要としているが、
多相エマルジョンを得るための第2の水溶性界面活性剤
は必要ではない。界面活性剤の使用を避けることは、、
特に薬物用途、食品用途および化粧品用途に於いて、界
面活性剤に毒性、刺激性またはアレルギー作用が潜在す
るために、有益である。多相エマルジョンへの第2の界
面活性剤の使用を避けることは、多相エマルジョンの安
定性に限界を設け得る界面活性剤の混合あるいは移動の
問題を避けることになる。
【0025】本発明による自己乳化型ガラスから製造さ
れるエマルジョン組成物は、エマルジョンまたは多相エ
マルジョンが有用であると認められる用途ならいかなる
用途でも一般的に使用することができる。一般的には、
エマルジョンは、活性成分を運搬し、輸送し、送達し、
あるいは保護するためにか、または他の用途として所望
の成分を混合物から分離し単離するためにか、もしくは
混合物から所望ではない成分を除去するために使用され
る。本発明によるエマルジョンは、エマルジョンおよび
多相エマルジョンのそのようなあらゆる一般的な用途に
於いて有用である。
【0026】単糖類、二糖類およびシクラメート、サッ
カリンのようなノンシュガー甘味料、ならびにポリビニ
ルピロリドン(PVP)、セルロース誘導体およびマルト
デキストリンを含む水溶性ポリマーはとりわけ、本発明
の自己乳化型ガラスの形成に於けるマトリックス化合物
として作用する。ショ糖、果糖およびトレハロースを含
むがそれらには限定されない糖類は、本発明によるガラ
スに於けるマトリックス化合物として作用する。好まし
い非ポリマー性のマトリックス化合物は甘い味のする分
子であり、少なくともほぼショ糖と同程度に甘い分子が
さらに好ましい。糖類、単糖類、二糖類、糖アルコー
ル、および、少なくともほぼショ糖と同程度に甘い塩化
糖のような、糖の誘導体が本発明のマトリックス化合物
として有用である。マトリックス化合物として有用なノ
ンシュガー甘味料には、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ア
スパルテーム(商標)およびその誘導体、ならびにシク
ラメート、サッカリン、アセスルファム(acesulfams)
およびそれらの誘導体を含むスルファメートを含むがそ
れらに限定されない種々の甘い味のする分子が含まれ
る。
【0027】三部構成グルコフォア(tripartite gluco
phore)を有する非ポリマー性の分子であって、三つの
構造上の特徴:極性の結合あるいはプロトンドナー、電
気的に陰性の原子、および疎水性結合あるいは分散的結
合の可能な領域、を含有する分子は、本発明の溶媒法を
用いて調製される自己乳化型ガラスのマトリックス化合
物として有用である。プロトンドナー、電気的に陰性の
原子、および疎水性領域の三つの構造的な特徴を有する
三部構成グルコフォアを有する分子は、本発明のガラス
の溶媒ベースの調製方法に於けるマトリックス化合物と
して特に有用である。そのような三部構成グルコフォア
を有する分子は、溶媒として水を使用するガラスの調製
方法に於いて特に有用である。
【0028】本発明の自己乳化型ガラスに有用なポリマ
ー性マトリックス化合物には、とりわけPVPs、マルトデ
キストリンおよびセルロース誘導体が含まれる。分子量
範囲が約15000から70000の架橋型および非架橋型PVPs
は、ここに記載の方法により処理されて自己乳化型ガラ
スを形成することができる。カルボキシメチルセルロー
ス、ならびにヒドロキシメチルおよびヒドロキシプロピ
ルセルロースを含むヒドロキシアルキルセルロースを含
む水溶性のセルロース誘導体は、ここに記載の方法によ
り処理されて自己乳化型ガラスを形成することができ
る。本発明のマルトデキストリンは、約5から25のデキ
ストロース当量を有するものとして分類される、デキス
トロース(dextrose:右旋糖)とでんぷんとのコポリマ
ーである。マルトデキストリンの塊状の、および塊状で
ない形状物がともに、本発明の組成物および方法に於い
て作用する。
【0029】一般的に、種々のマトリックス化合物が混
合されて本発明のガラスを形成し得る。マトリックス化
合物の混合物を使用して、例えば、高いガラス転移温度
を有する自己乳化型ガラスへと導くことができる。ガラ
ス転移温度が高くなればなるほど、ガラスは運動論的に
より安定になる。より高いガラス転移温度を有するガラ
スは、一般的により安定に保存され、そしてより長期の
貯蔵寿命を持っている。一般的に、ガラス転移温度は、
室温より約20℃以上高いことが好ましい。ショ糖のよう
な非ポリマー性マトリックス化合物と、マルトデキスト
リンのようなポリマー性マトリックス化合物との混合物
は、非ポリマー性マトリックス化合物のみで形成された
ガラスに比較してより高い転移温度を有するガラスを与
える。特に、マトリックス化合物としてショ糖とマルト
デキストリンとの混合物を使用すると、ショ糖ベースの
ガラスより高いガラス転移温度を有するガラスが得られ
る。詳細には、ショ糖と3重量%のマルトデキストリン
との混合物を、鉱油と組み合わせ、ここに記載の溶媒法
によって処理すると、約180℃より高いガラス転移を有
する自己乳化型ガラスが得られる。
【0030】本発明の組成物および方法に有用な油性物
質には、種々の油、特に、室温で液状型の油が含まれ
る。特に、エマルジョンおよびガラスの薬物用途、化粧
品用途あるいは食品用途に有用な油には、フルオロデカ
リン、鉱油(重油あるいは軽油)、植物油、ピーナッツ
油、大豆油、ベニバナ油、コーン油、オリーブ油、それ
らの油成分、およびそれらの混合物が含まれるが、それ
らに限定されるものではない。油性物質には、また、油
中水型エマルジョンが含まれる。すなわち、そのエマル
ジョン中に於いては、油相はエマルジョンの外相であ
り、そのエマルジョンは油のバルク特性を持っているの
である。油中水型エマルジョンの水相は、水溶性の活性
成分を組み入れることができる。油中水型エマルジョン
の油相は脂溶性の活性成分を組み入れることができる。
一般に、任意の周知の方法によって製造され、そのよう
なエマルジョンを製造するために有用な任意の界面活性
剤を含んだ、任意のタイプの油中水型エマルジョンは、
本発明のガラスに於いては、油性物質として作用する。
油中水型エマルジョンの製造に使用される方法は、その
中に組み入れられる任意の活性成分と適合していなけれ
ばならない。好ましい油中水型エマルジョンには適当な
乳化剤が用いられるが、それは、例えば、油中水型エマ
ルジョンを形成するために適当な脂溶性の界面活性剤で
あり、それには約5.5より小さいHLB値を有する界面活性
剤が含まれるがそれらに限定されるものでない。
【0031】マトリックス化合物の油性物質に対する重
量比は、少なくとも約2:1であることが、本発明の自
己乳化型ガラスに於いては好ましい。マトリックス化合
物の油性物質に対する重量比は、より好ましくは約2:
1と20:1の間であり、そしてもっとも好ましくは約
2:1と10:1との間である。
【0032】自己乳化型ガラスは、ここに記載の溶媒法
によって好ましく調製される。この溶媒法には、ここに
定義される非表面活性マトリックス化合物と油性物質と
を十分な量の溶媒と結合させて実質的にすべてのマトリ
ックス化合物を溶解させて安定なエマルジョンではない
コンビネーションを形成させ、続いてそのコンビネーシ
ョンから溶媒を除去してガラスを得るという工程が含ま
れる。使用される溶媒には、水、水性溶媒、水性アルコ
ール、エタノール、および、とりわけクロロホルムを含
むマトリックス化合物を溶解する有機溶媒が含まれる
が、それらに限定されるものではない。水および水性溶
媒および水性アルコールを含む水性溶媒が好ましい。加
えて、クロロホルムは、マトリックス化合物にPVPポリ
マーを使用するために好ましい。クロロホルムのような
有機溶媒が用いられる場合、および、油性物質が油中水
型エマルジョンではない場合には、所望ならば、方法を
変更して、十分な溶媒を加えてマトリックス化合物と油
性物質の両方を溶解させることができる。マトリックス
化合物と油性物質とを好適に合わせて、マトリックス化
合物の油性物質に対する重量比が少なくとも約2:1と
なるようにする。溶媒の除去は、ゆるやかな混合、すな
わち、非乳化性の混合を伴う真空を用いる蒸発によっ
て、最も好適にはロータリーエバポレータによる蒸発に
よって行われる。油中物質が油性水型エマルジョンの場
合に使用される好適な溶媒は水である。溶媒は、みかけ
上乾燥した固体、固体の泡状物あるいはフィルムが製造
されるまで除去する。ある場合には、ロータリーエバポ
レーターにより蒸発させると、コンビネーションのあわ
立ちが生じ、溶媒を除去して得られる固体は固体の泡状
物の外観を有するようになる。
【0033】マトリックス化合物と油性物質とのコンビ
ネーションから溶媒を除去すると、ガラスである固体物
質が形成される。非ポリマー性マトリックス化合物、あ
るいはポリマー性マトリックス化合物と非ポリマー性マ
トリックス化合物との混合物を用いて形成されたガラス
には、示差走査型熱量測定装置(DSC)によって測定さ
れ、ここでは微結晶性と呼ばれる、若干のレベルの短距
離の、あるいは中距離の範囲の分子秩序がしばしば保た
れる。X線回折およびDSCによって完全に非晶質である
ものと測定されるガラスは、ここに記載の溶媒法によっ
て調製することができる。完全に非晶質のガラスは、非
常に吸湿性であり、有意の量の水をガラスの中に吸収す
ることは、その機能性および貯蔵寿命にとって好ましく
ない。ゆえに、若干のレベルの微結晶性、DSCでの測定
により約10%から60%の微結晶性を保つガラスが好まし
い。本発明のガラスは、X線回折での測定により約10%
より多くの長距離の分子秩序を保っていない。
【0034】マトリックス化合物中に非ポリマーが用い
られる場合には、マトリックス化合物の非ポリマー成分
の結晶化による有意の、すなわち約10%より大きい、長
距離の分子秩序の形成を十分に妨げるだけの速度で、溶
媒を除去しなければならない。このことは、溶媒除去の
速度が、任意のマトリックス成分の溶媒溶液からの結晶
化の速度よりも速ければ一般に成し遂げられ得る。
【0035】プロセス工程は、多くの場合およそ室温で
行われ得る。プロセス工程は、乾燥したように見える固
体の生成する、できるだけ低い温度で行われることが好
ましい。プロセス工程は、約50℃よりも低い温度で行わ
れるのがさらに好ましい。この溶媒法に於いては、プロ
セス工程はマトリックス化合物の溶融あるいは分解を避
けて行われるべきである。すなわち、このプロセス工程
は、マトリックス化合物のおよその融点または分解点よ
りも低い温度で行われるべきである。全部ではないにし
ても、多くのマトリックス化合物は、約140℃より低い
融点を持っている。活性成分が自己乳化型ガラスの中に
組み入れられる場合には、製造工程は、活性成分が分解
しないか、あるいは有意に不活性化されないことを保証
する温度で行われるべきである。
【0036】脂溶性の活性成分は、油性物質をマトリッ
クス化合物と合わせるより前に、あるいは同時に、油性
物質に加えられることによって自己乳化型ガラスの中に
組み入れられることができる。水溶性の活性成分は、油
中水型エマルジョン油性物質の水相の中で、本発明の自
己乳化型ガラスの中に組み入れることができる。油中水
型エマルジョンは、それをマトリックス化合物と合わせ
るより前に形成されなければならない。
【0037】エマルジョンおよび多相エマルジョンは、
本発明の自己乳化型ガラスから、十分な量の水相を加え
ることによって調製され、所望のタイプのエマルジョ
ン、例えば、水中油型、油中水型、あるいは水中油中水
型、が形成される。適当な水相には、所望のエマルジョ
ンの用途に依存しており、約1から10の範囲のpHを有す
る酸性あるいは塩基性の水溶液、および約95%(V/V)
より少ないアルコール含量を有する水性アルコールを含
むが、これらに限定されない。本発明のエマルジョン
は、単に自己乳化型ガラスを水相と接触させることによ
って生成される。ガラスからエマルジョンを生成するの
に混合は必要ではない。
【0038】化学反応体、キレート剤、触媒、酸素、生
物細胞、薬物、化粧品、および日焼け止め、発汗防止
剤、低アレルギー剤などを含むパーソナルケアー剤(pe
rsonalcare agents)、および調味量、着色剤、保存料
などを含む食品添加物である活性成分を、本発明の自己
乳化型ガラスおよびエマルジョン組成物の中に導入する
ことができる。本発明の組成物の中で有用な薬物には、
ペプチド、タンパク、ワクチン、治療用酸素、治療用抗
体、ホルモン、抗菌剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、アシ
ルトランスフェラーゼ阻害剤、化学療法剤、抗凝固剤、
血栓溶解剤、あるいはコロニー刺激因子が含まれるがそ
れらに限定されない。
【0039】より詳細には、薬剤には、ジスムターゼ、
エリスロポイエチン、インターフェロン、インターロイ
キン、モノクローナル抗体、腫瘍壊死因子、ヒト成長ホ
ルモン、インスリン、セフトリアキゾーン(ceftriaxon
e)、セファロスポリン、アセトアミノフェン、β−ブ
ロッカー、トランデート(trandate)、ラベトール(la
betol)、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、
塩酸メクロレサミン、ウレアーゼ、LH−RHアナロ
グ、およびゴナドトロピン遊離ホルモンのアナログが含
まれるが、これらに限定されない。本発明の方法および
組成物は、特にこのような薬学的に活性な成分のための
薬送達物質の調製に有用である。
【0040】本明細書に記載の方法および組成物は、例
えば好ましくない味、全身に対する刺激、胃腸に対する
刺激、あるいは毒性の影響などの心身に有害な、薬剤の
影響から患者を保護することによって、薬剤の送達の手
段を改善するのに用いられ得る。本明細書に記載の方法
および組成物はまた、活性成分が分解あるいは不活性化
するのを全体的に防ぐのに用いられ得る。例えば、湿気
に対して不安定な、および/あるいは酸素に対して不安
定な活性成分が保護され得る。水溶性の活性成分は、本
発明のエマルジョンの水相あるいは水の相中に取り入れ
られる。脂質可溶性の活性成分は、対象のエマルジョン
の油性相あるいは油相に取り入れられる。
【0041】本発明の方法では、対象のガラスを製造す
るのに高温度の適用は必要でない。従って、本発明の方
法および組成物は特に、温度に対して不安定なすべての
水可溶性あるいは脂質可溶性の活性成分に対して有用で
ある。本発明の方法は、約50℃を越える温度において
は、部分的にあるいは完全に不活性化するか、あるいは
分解する活性成分に対して、より有用である。
【0042】エマルジョンとは、ある液体が別の混合で
きない液体中で、小滴の形で分散した分散体である。一
般的に、分散している小滴の直径は、0.1ミクロンを
越える(P. Becher (1983) Encyclopedia of Emulsion
Technology Vol.1, p.108を参照)。分散した液体は、
内部相(あるいは不連続相)であり、そしてもう一つの
液体は、外部相である。エマルジョンは、もっとも典型
的には水相および油相に用いられる。油中水型エマルジ
ョンでは、水相が油相中に分散している。水中油型エマ
ルジョンでは、油相が水相中に分散している。エマルジ
ョンは、本質的に不安定である。内部相は、時間が経つ
につれ合一し、そしてエマルジョンは、破壊される。一
般的にエマルジョンを安定化するために乳化剤(界面活
性剤)が必要とされることが認識されている。従って、
従来の安定なエマルジョンには、少なくとも1つの乳化
剤が含まれている。
【0043】エマルジョン(油中水型あるいは水中油
型)の型は、数種類の方法で決定され得る。エマルジョ
ンは、典型的には、おおよそ外部相の見かけをしてい
る。すなわち、W/Oエマルジョンは、見かけは油であ
り、O/Wエマルジョンは、見かけは水である。さらに別
のエマルジョンの型を決定するための定量法は、染料溶
解度試験(水溶性の染料は、O/Wエマルジョンを染色す
るが、W/Oエマルジョンを染色しない)および電導度試
験(W/Oエマルジョンは、一般的に電流を通さない)で
ある。
【0044】多相エマルジョンは、より複雑な型のエマ
ルジョンであり、分散した小滴が、さらにより小さな混
合できない液体の分散した小滴を含む。水中油中水(W/
O/W)エマルジョンは、水性の外相中に油の小滴を含
み、そしてその油の小滴は、内部により小さな小滴の水
相を含む。外部および内部の水相は、同じかあるいは異
なり得る。多相エマルジョンは、第一のO/WあるいはW/O
エマルジョンを乳化することによって調製されている
(Davis およびWalker (1987) Multiple Emulsionsas T
argetable Delivery Systems Meth. Enzymol. 149:51-6
4を参照)。多相エマルジョンの形成は、一般的に、異
なるHLB値を持つ2つの界面活性剤を使用することが必
要であると考えられている(Davis およびWalker, 198
7; FlorenceおよびWhitehill (1981) J. Colloid Inte
r. Sci. 79:243-256; Martin ら、Physical Pharmacy P
hysical Chemical Principles in the Pharmaceutical
Sciences, Lea & Febiger, Philadelphia, PA pp. 553-
565; Frenkelら(1983) J. Colloid Inter. Sci. 94:174
-178; Gartiら(1983) J. Dispersion Sci. Technol. 4:
237-252を参照)。界面活性剤の移動、すなわち2つの
異なるHLB値を持つ界面活性剤の相間を抜ける移動が、
1つ以上の乳化剤を用いて、多相システム中で起こると
考えられている(Frenkelら、1983)。界面活性剤の移
動によって、多相エマルジョンの崩壊が起こる。W/O/W
エマルジョンは、典型的には24時間から48時間安定
である(Florence およびWhitehall, 1981)が、最高の
条件下では、30日まで安定であることができる(Davi
sおよびWalker, 1987 およびGartiら、1983)。
【0045】本発明のエマルジョンおよび多相エマルジ
ョンは、自己乳化型ガラスに選択した水相を加えること
によって作成される。この自己乳化型ガラスは、水溶性
の非界面活性マトリックス化合物をすぐに油相になり得
る油性の材料と組み合せて調製され、随意に溶解した脂
質可溶性の活性成分あるいは第一のエマルジョンを含ま
せる。例えば、油中水滴エマルジョンは、随意、溶解し
た活性成分を含む。
【0046】本発明の自己乳化型ガラスは、十分な量の
水相と接触して、エマルジョンを形成する。エマルジョ
ンの形成は、ほぼ直ちになされ、ほとんどエネルギー投
入を必要としない。エマルジョンは、固体を水相に接触
させるだけで、そのガラスから形成され得る。このガラ
スのこのような性質によって、攪拌、ホモジナイズ、マ
イクロ流動化(microfluidizing)、超音波処理、ある
いはコロイドミル中での処理、などのような乳化混合を
含む処理工程が省略される。従来の技術の自己乳化型シ
ステム(Pouton (1985) Int'l J. Pharmaceutics 27:33
35-348)あるいは乾燥エマルジョンと違って、単純エマ
ルジョンの前駆物質である対象のガラスは、当分野で認
識されている界面活性剤を含まない。多相エマルジョン
の前駆物質である自己乳化型ガラスは、せいぜい第一の
エマルジョンを形成するための1つの界面活性剤を必要
とするのみである。
【0047】単純な二相エマルジョンおよび多相(すな
わち三相)エマルジョンは、本明細書に記載の自己乳化
型ガラスを用いて調製され得る。W/O/Wエマルジョンの
前駆物質である自己乳化型ガラスは、第一の油中水型エ
マルジョンおよび水溶性の非界面活性担体との混合物か
ら調製される。多相エマルジョンは、そのガラスの水相
との接触から形成され得る。
【0048】本発明の自己乳化型ガラスは、薬剤、反応
性の化学物質、染料、香料などのような活性成分を含み
得る。そしてそのような活性成分の送達および可溶化の
ための賦形剤として機能し得る。
【0049】脂溶性の活性成分は、ガラスの油性材料中
に取り込まれ得る。水溶性の活性成分は、自己乳化型ガ
ラスの油中水型エマルジョンの水相内に取り込まれ得
る。
【0050】本発明の自己乳化型ガラスは、固体、好ま
しくは、乾燥した非油性の固体として、調製される。ガ
ラスは、粉末、固体の泡末、あるいは薄膜の形で有り得
る。ガラスは、極端な湿気から保護されれば、エマルジ
ョン形成能の損失無しに長期間保存され得る。
【0051】結晶材料とは対象的に、ガラスおよび液体
は、短距離分子秩序しか有さない。例えば、結晶中で
は、一番近い隣りとの隔離距離と結合角は、正確に一致
するが、ガラス中では、一番近い隣りとの隔離距離は、
2〜3分子にわたる距離とほぼ同じでしかない。実際に
は、このことによって、ガラス中での隣の位置を予想す
ることができない。結果として、X線回折法によって、
結晶化する材料を、ガラスと簡単に区別し得る。ガラス
あるいは液体は、弱い拡散した回折結果しか示し得るこ
とができず、一方、結晶は、強い鋭い回折結果を示し得
る。この意味では、ガラスもまたX線回折では非晶質で
ある(G.O. Jones, "Glass", Wiley, NewYork, NY, 197
1, pp.5-8)。最初に詳細に研究された非晶質材料が溶
融物を冷却して調製されたため、「ガラス」あるいは
「ガラス状の」という言葉は、文献中では、非晶質の固
体と同義語になっている。実際、最近の文献の引用で
は、吹き付け乾燥および凍結乾燥によって調製された場
合でも、非晶質材料のことをガラスと言っている(G.
W. WhiteおよびS. H. Cakebread, J. Fd. Technol., 1:
73-82 (1966))。
【0052】ガラスは、特徴として長距離秩序を欠いて
いるが、微晶質の領域が電子顕微鏡および熱量測定法を
用いて検知されている(M. Mathlouthi, Ind. Aliment.
Agri., 1279 (1975))。これらの結果から、材料が、
X線回折によって非晶質に見える非晶質領域中に分散し
ている、結晶性の数多くの小さな不連続領域(微晶質領
域)を持ち得ることが判る。このような領域の量は、調
製の方法およびそれぞれの材料の物理的な性質に依存す
るようである。
【0053】本発明の自己乳化型ガラスは、X線結晶学
的方法で測定した場合、非晶質材料である。約10%
(重量)あるいはそれより少ない長距離の結晶性を持つ
材料は、X線法では、非晶質に見える。本発明のガラス
のうちあるものは、示差走査熱量測定(DSC)による測
定で、微晶質の領域を含んでいるようである。ガラス中
の微晶質の程度は、実質的に全く微晶質のないものから
約60%(重量)が微晶質であるものに至るまで様々で
有り得る。微晶質の程度は、ガラスのプロセシングの間
にできる成分の結晶化の程度による。例えば、測定し得
る微晶質がほとんどあるいは全くないガラスを、溶媒の
除去の間にシリコン処理したガラス製品を用いた場合、
本発明の溶媒法によって調製し得ることが判っている。
ガラス中の微晶質の程度は、広い範囲に渡って、水相と
の接触でエマルジョンを形成するガラスの能力に影響し
ない。微晶質のレベルが非常に低いガラスは、非常に吸
湿性で有り得ることが判っている。従って、必要な適用
によっては、例えば、自己乳化型ガラスの保存には、少
なくとも低いレベルのある程度の微晶質が、ガラス中に
存在することが好ましい。微晶質を少なくとも約10%
から約60%(重量)有しているガラスが好ましく、約
20%から30%の微晶質を持つガラスがより好まし
い。
【0054】本発明の自己乳化型ガラスは、従来の乾燥
エマルジョンおよび濃縮エマルジョンとは異なってい
る。なぜならば、これらの組成物は、典型的には、少な
くとも1つの乳化剤を含む現存する安定なエマルジョン
からできているからである。従って、現存する乾燥エマ
ルジョン前駆物質は、従来からの界面活性剤を含んでい
る。同様に、現存する乾燥多相エマルジョン前駆物質
は、形成された多相エマルジョンからできる点および少
なくとも2つの界面活性剤を含む点から、本発明のガラ
スとは異なっている。
【0055】本発明のガラスのマトリックス化合物は、
水溶性で、非界面活性化合物である。マトリックス化合
物の2つのクラスが、自己乳化型ガラスを製造するのに
用いられ得ることが確認されている。1つのクラスに
は、ショ糖、トレハロース、および果糖のような、単糖
類および二糖類、シクラメートおよびサッカリンのよう
な、糖類から派生する甘味料および合成甘味料を含む甘
味料を含んでいる。もう1つのクラスのマトリックス化
合物は、ポリビニルピロリドンのような水溶性のポリマ
ー、水溶性のセルロース誘導体、およびマルトデキスト
リンを含んでいる。2あるいはそれ以上の種類のマトリ
ックス化合物の混合物もまた、自己乳化型ガラスを製造
するのに用いられ得る。
【0056】一般的に「甘味料」は、甘い味のする任意
の材料である。本明細書の用語、甘味料は特に、糖、お
よび糖以外の甘い味のする分子、化合物あるいは混合物
を含むことが意図される。甘味料には、特に糖アルコー
ル、アミノ酸、およびスルファメートなど糖類でない甘
味料が含まれる。糖類以外の甘味料は、例えば、糖アル
コールおよびアミノ酸のような天然の化合物、あるいは
塩化糖、アスパルテーム(アスパルチルフェニルアラニ
ンメチルエステルの商標)、シクラメート、あるいはサ
ッカリンの様な合成甘味料で有り得る。本発明の溶媒法
のマトリックス化合物として使用するのに好ましい甘味
料は、少なくともほぼショ糖と同じくらい甘い化合物あ
るいは混合物である。少なくとも薬剤、食物、および化
粧品の分野への適用においては、マトリックス化合物は
毒性でないことが好ましい。
【0057】ポリマーでないマトリックス化合物では、
分子の甘さおよびそのマトリックス化合物を用いた自己
乳化型ガラスをつくる能力との間の実験的な相関関係が
発見された。ショ糖および油(すなわち、鉱油)を用い
てつくったガラスは、甘くないことが判った。このこと
から、自己乳化型し得るガラスの形成は、味の受け止め
方をある程度変えたことが示された。自己乳化型ガラス
は、非常に甘味のある分子、すなわちシクラメートおよ
びサッカリンのような甘味料から本明細書に記載の方法
によって製造され得ることが判った。このことから、甘
味の感覚(ヒトの味覚によってアッセイする)に関連す
る、分子の領域あるいは構造的特徴は、溶媒として水を
用いた本明細書に記載の方法による、自己乳化型ガラス
を形成する能力と相関していることが示唆された。
【0058】自己乳化型ガラスは、溶媒として水を用
い、グルコース、乳糖、麦芽糖、および糖アルコールの
マンニトールおよびソルビトールで容易に形成し得ない
ことが判った。ラクトースは、水中では、十分に溶解し
にくく、そして十分な量のラクトースは、水に溶けず、
ロートエバポレーションを介してガラスの形成を行わせ
ることができない。グルコース、マンニトールおよび糖
アルコールは、十分な水溶性を有するようだが、ロート
エバポレーションを介して乾燥した固体のガラスをつく
ることはできないことが判った。自己乳化ガラスは、ト
レハロースから調製されることが判った。しかし得られ
たトレハロースベースのガラスは、乾燥した固体にはな
らなかった。グルコース、麦芽糖、乳糖、ソルビトー
ル、マンニトール、およびトレハロースはすべて、ショ
糖に比べて甘味が少ないことが報告されている。従っ
て、ショ糖と比較したとき、可能性のあるマトリックス
化合物の甘味の強さと、そのマトリックスを用いた、本
明細書に記載の水溶媒法による自己乳化型ガラスの製造
の能力との間には、明かな相関関係がある。
【0059】甘味の性質に対して分子構造を相関させる
多くの試みがなされてきた(Kier (1972) J. Pharmaceu
tical Sci. 61:1394-1397および最近の総説、Lee (198
7) Adv. Carbohydrate Chem. and Biochem. 45:199-351
を参照:これらは参考としてその全てが本明細書に援用
されている)。直線的な相関関係は、確認されていな
い。なぜならば、甘い分子の型および構造は多様だから
である。甘い分子のクラスおよび甘味の強さの一般的な
ランク付けの簡単な要旨が、Birch (1987) Endeavour 1
1:21-24中に提供されている。甘い分子は、糖;水素
化、デオキシ、無水、および塩化糖を含む、糖の誘導
体;アミノ酸;アスパルテーム(商標)および塩化アミ
ノ酸を含む、アミノ酸誘導体;サッカリン、シクラメー
ト、およびアセサルファム(acesulfams)を含むスルフ
ァメート;アミノニトロベンゼン;ジヒドロカルコン;
イソクマリン;タウマチン(thaumatin)およびヒルナ
ズルチン(hernadulcin)のようなある種のタンパク質
およびペプチドの中に見いだされている。特定の型の全
ての化合物が甘いわけではなく、そして見かけ上類似し
ている化合物中で、甘味の強さはかなり変化し得る。こ
のような場合、鏡像体の一対のうち、一方のみが甘味が
ある。甘味と特定の物理的あるいは化学的分子性質との
間の一般的な相関関係は、確立されていない。甘味の強
さと物理的あるいは化学的性質との間のある程度の相関
関係が、密接に関連している化合物の限られた範囲内で
は確立されている。例えば、糖の甘味は、その水に対す
る溶解度と相関しており、そしてアミノニトロベンゼン
の甘味は、その融点と相関していることが報告されてい
る(Lee (1987) p. 206を参照)。このような狭い範囲
での相関関係から、水素結合あるいは疎水性および親水
性の相互作用のような、弱い相互作用と関連している性
質は、甘味の一部の原因となり得ることが示唆される。
甘味に対する最も最近の理論は、あるタイプの化学成分
が、特定の三次元構造あるいは配列を有する分子に結合
する、甘味のレセプターの概念に基づいている。様々な
甘味のある分子の甘味を合理的に説明し、そして三次構
造と甘味とを関連づける概念には、三部構成グルコフォ
アが包含される(Lee、1987, p. 231 およびKier, 1972
を参照)。この三部構成グルコフォアは、甘味と関連し
た構造上の特徴であり、AHあるいはAと表される極性を
持つ結合、Bと表される負電荷の原子、および第三の特
徴からなる。まず、プロトンドナー、あるいはより一般
的には極性を持つ結合、および約2.5から4.0オングスト
ロームの間隔で隔てられている負電荷の原子という2つ
の構造的特徴が、甘味に最低必要であるとして記載され
た(ShallenbergerおよびAcree (1967) Nature 216:48
0)。AHの例には、シクロアルキル基あるいは芳香族環
のO-H基、N-H基、およびC-H基が含まれる。Bの例には、
酸素原子、オキシム基、ニトロ基、カルボニル基、およ
びS-OあるいはSO2基が含まれる。シクラメートおよびサ
ッカリン甘味料中のAH、Bユニットには、NH-SO2が付与
されている。本明細書ではXと表している第三の特徴
は、甘味の強さの向上に関連している。特徴Xは、特に
脂質親和領域あるいは疎水性結合領域(DeutschおよびH
ansch (1966) Nature 211:75)、あるいはより一般的に
は、分散結合し得る領域、あるいは親電子的な攻撃に感
受性のある領域(Kier、1972)として記載されている。
特徴Xの例には、アルキル基およびアルケニル(alkeny
l)基、シクロアルキル基およびシクロカルケニル基、
芳香族環、アミノニトロベンゼンのC-2置換が含まれ
る。3つの全ての特徴は、レセプターに甘い分子が結合
することに関与していると記載されている。三部構成グ
ルコフォアは、AH-Bの距離が約2.5-4.0オングストロー
ムの範囲、AH-Xの距離が約3.1から5.2オングストローム
の範囲、そしてB-Xの距離が約5.2から7.4オングストロ
ームの範囲の三角形を形成する。三角形の三部構成グル
コフォア構造は、より狭く、AH-Bの距離が約2.6オング
ストローム、B-Xの距離が約5.5オングストローム、そし
てX-AHの距離が約3.5オングストロームとして示され
る。甘味の強さは、レセプター中でより適合することあ
るいは結合が改善されることと関連している。三部構成
グルコファオを有する甘味のある化合物は、本明細書に
記載の水溶媒法による自己乳化型ガラスの調製に有用で
あり、特に特徴Xが疎水結合し得る領域であるものは、
有用である。ショ糖より甘い三部構成グルコフォアを有
する化合物は、本発明の方法および組成物に用いるため
の好ましいマトリックス化合物である。
【0060】甘味は、一般的にショ糖のものと比較され
る。甘味を含めた味を検知しそして比較する方法につい
て、味と香りの技術分野において、多くの文献がある。
特定の化合物の相対的な甘味を試験する方法は、当該分
野で公知である。甘味の質的な評価は、人による固体あ
るいは水溶液の味試験によって、簡単に行われ得る。し
かしこのような味試験をする際には、ある種の甘い化合
物は毒性であり得るので、注意が必要である。一人の人
による味試験は、決定的で有り得ない。なぜならば、個
人の味覚は、標準からして部分的に味覚欠如している場
合あるいは味覚異常の場合があるからである。化合物の
相対的な甘味を比較する質的な試験は、一般的に特別な
試験パネルによってなされる。甘味の強さは、しばしば
ショ糖の既知の濃度の水溶液と同じ甘さの水溶液の濃度
を測定し、ショ糖と比べてランク付される。様々な化合
物の甘味の質的なランクを提供する様々な文献が、容易
に入手できる(例えばGrant and Hatch's Chemical Dic
tionary (1987) 第5版以降、Grant および Grant編 M
cGraw-Hill, New Yord; Andres (1977) Low Calorie an
d Special Dietary Foods, CRC Pressを参照)。
【0061】三部構成グルコフォアの脂質親和性の領
域、あるいはより正確には、ショ糖、サッカリン、ある
いはシクラメートの脂質親和性の表面は、例えば長鎖の
炭化水素などの従来の乳化剤の脂質親和性の領域と混同
されないことが重要である。
【0062】マトリックス化合物の第二のタイプは、甘
味のないポリマーである。これらの材料は、甘味のある
材料のあるものといくらか構造的な類似性をもつように
見えるが、ポリマーの構造とそれらの自己乳化型ガラス
への有用性との間に明確な相関関係が知られていない。
ポリマーのマトリックス化合物には、任意の数のビニル
基を含む群のメンバーを包含する、ポリビニルピロリド
ン、特にカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシ
アルキルセルロースを含む、水溶性のセルロース誘導体
であって、完全なおよび部分的な誘導体、およびデンプ
ン/デキストロースコポリマーである、マルトデキスト
リンが含まれるがこれらに限定はされない。
【0063】水溶性で、非界面活性でありさえすれば、
マトリックス化合物について大きさあるいは分子量の制
限はない。一般的に、マトリックス化合物は、調合物の
油性の材料、溶媒、および水相成分と適合するように選
択される。
【0064】本発明のポリマーマトリックス化合物は、
甘味がないため、甘味および三部構成グルコフォアの存
在およびエマルジョン形成における化合物の機能性との
相関関係は、絶対的なものでないことは明かである。す
なわち、甘味は、自己乳化型ガラスの形成に作用するマ
トリックス化合物の十分条件ではあるが必要条件ではな
い。甘味の強さと本発明のマトリックス化合物としての
機能との相関関係は、本明細書に記載の手順に従って、
本発明の方法に使用するための適合性を簡単に評価し得
る、マトリックス化合物の候補を選択するのに有用であ
る。
【0065】界面活性剤または乳化剤は、界面で選択的
に吸着される分子である。水系では、水/空気の界面で
の乳化剤の吸着または蓄積は、水の表面張力を明らかに
低下させる(Becher,1983,p.111を参照)。界面活性剤
の蓄積は、水/空気の界面がその乳化剤で飽和されるま
で、すなわちプラトー領域まで、表面張力を低下させ
る。表面が乳化剤で飽和された後は、さらに加えられた
乳化剤は会合構造またはミセルの形成をもたらす。乳化
剤は、水/空気の界面で分子の非極性領域が空気(相対
的に非極性である)にさらされるように配向することに
より、表面張力を低下させる。分子の親水性部分は水に
向かって配向する。乳化剤に要求される三つの基本的な
構造は(i)親油性領域、(ii)親水性領域、および(i
ii)親油性および親水性領域間のバランスである。親水
性および親油性領域間にバランスがあることは重要であ
る。例えば、分子の親水性が大きすぎると、水がある部
分、すなわちバルク中にそれは局在する。逆に分子の親
油性が大きすぎると、それは水相から完全に排除されて
しまう。親油性領域は一般に、分子の炭化水素鎖部分と
考えられている。これら親油性領域は飽和または不飽和
炭化水素鎖のどちらかであり得るし、または、あまり一
般的ではないが複素環または芳香族の環状構造であり得
る。実際には、乳化剤は一般に8個から18個のメチレン
基からなる炭化水素鎖を有することが知られている。親
水性領域は、その領域がアニオン性、カチオン性または
非イオン性であるかどうかにより特徴づけられる。
【0066】本発明には、従来の乳化の理論では界面活
性であると予想されなかった、ある種の分子および分子
のクラスの使用について記載されている。これらの分子
および分子のクラスは、本明細書ではマトリックス化合
物と呼ばれており、水溶液の表面張力を著しく低下させ
ることがなく、従って会合構造すなわちミセルを形成す
ると報告あるいは予想されていない。従来の知識に従え
ば、本発明のマトリックス化合物は乳化剤に要求される
三つの構造のうち二つが欠けている、すなわち親油性領
域に欠け、そのため親水性/親油性のバランスに欠けて
いる。従って本発明のマトリックス化合物は、界面およ
びバルクのどちらにも平等に分散することが予想される
(Hemら(1986)、「製薬産業の理論と実際」、第3版、L
achmanら編、Lea & Febiger、フィラデルフィア、ペン
シルバニア州、p.104)。例えばショ糖は、本発明のマ
トリックス化合物の一つである。ショ糖分子は親水性基
とみなされ、界面活性ではない(J. G. Riessら, Bioma
t., Art., Cells, Art., Org., 16:421-430 (1980))。
ステアリン酸(C18362)およびココア酸(cocoaic
acids、C18164)のような、親油性領域を付与
し、従って界面活性を付与する長鎖脂肪酸(炭化水素領
域)でのエステル化(モノおよびジエステル)によっ
て、ショ糖から界面活性剤が調製されることが実証され
た。
【0067】本明細書で使用する用語「自己乳化型」
は、マトリックス化合物および油性物質から形成される
ガラスに適用される。この用語はガラスがエマルジョン
を形成する性質を指し、特にガラスが水相と接触するだ
けでエマルジョンを形成する能力を指す。
【0068】本発明の油性物質は、油、または脂肪酸の
グリセリドおよびエステルを含有する物質である。油性
物質は好ましくは室温付近で液体である。そのような油
は、天然および合成油、鉱油、植物油、ピーナッツ油、
ベニバナ油、オリーブ油、コーン油、大豆油、ひまし
油、亜麻仁油、石油およびその成分、魚油および動物由
来の油、およびパーフルオロデカリンを含むフルオロデ
カリンを包含するが、これらに限定はされない。油性物
質は、スペアミント、ペパーミント、ヒメコウジなどの
油のような香油を包含し得る。しかし、香油は油性物質
の主要な成分でないことが好ましい。油は特定の用途に
適切であるように、そしてエマルジョン調製物の他の成
分と共存できるように選択される。ある種の天然の油
は、乳化剤として作用し得るモノグリセリドまたは他の
成分を少量含有し得るが、これらの物質が本発明のエマ
ルジョンを生成する必要はない。
【0069】油性物質はまた、油中水型エマルジョンを
包含する。このようなエマルジョンは油のようなバルク
特性を有し、特にエマルジョンの油相のようなバルク特
性を有する。W/Oエマルジョンは油相中に分散した水相
を含む。油相は上述の油性物質のいずれをも包含し得
る。水相は水、塩の水溶液、酸性または塩基性水溶液
(pH 1-10)およびアルコール水溶液であり得る。W/Oエ
マルジョンは当該分野で公知のいかなる手法によっても
調製し得、そしてW/Oエマルジョンの安定化に適切な乳
化剤を含有し得る。好ましくはW/Oエマルジョンは、HLB
値が約5.5より低い油溶性界面活性剤を含有する。油中
水型エマルジョンを生成するために加える界面活性剤の
量は、油相および分散される水相に依存する。
【0070】本明細書に記載の方法で用いられる「溶
媒」は、マトリックス化合物を溶解できるいかなる液体
をも意味する。しかし溶媒は、マトリックス化合物/油
性物質のコンビネーションから高温を用いることなく減
圧により除去できなければならないので、揮発性でなけ
ればならない。工程の温度は約50℃より低く維持される
ことが好ましい。溶媒は水、水性アルコール、アルコー
ル、酸性および塩基性水溶液、およびクロロホルムのよ
うな有機溶媒を包含し得るが、これらに限定はされな
い。水および水溶液はすべてのマトリックス化合物につ
いて好ましい溶媒である。さらに、クロロホルムはPVP
について好ましい溶媒である。油中水型エマルジョンを
含有する自己乳化型ガラスの調製には、水が好ましい溶
媒である。溶媒は、自己乳化型ガラスおよび生成物のエ
マルジョンに残存溶媒が保持され得ることに留意して、
所望の用途に適切であるように、そして調製物の他の成
分と共存できるように選択される。
【0071】「水相」は、エマルジョンを生成するため
に自己乳化型ガラスに加えられる。水相はマトリックス
化合物を溶解し得る。水相は水を含有しなければなら
ず、そして好ましくは少なくとも約5重量%が水であ
る。水相は好ましくはpHが1から10の範囲である中性、
酸性および塩基性水溶液、および水溶性または水と混和
性の有機化合物を包含し得るが、これらに限定はされな
い。水相はそれらの有機化合物を単独でまたは混合物と
して、水と共に含有し得る。水相は、所望の用途に基づ
いて、そして調製物の他の成分と共存できるように選択
される。
【0072】本明細書で用いられる「活性成分」は、エ
マルジョンの相の一つに任意に保持または溶解される重
要な化合物を指す。活性成分は水溶性または油溶性であ
り得る。油溶性の活性成分は、油性物質として使用され
る一次エマルジョンの油相を包含する、油性物質に溶解
し得る。水溶性の活性成分は、本発明のエマルジョンの
外部または内部のいずれの水相にも溶解し得る。活性成
分としては化学反応剤、酵素および生物細胞を含む触
媒、インク、染料、キレート剤、錯体形成剤、薬剤、食
品添加物、着香料、着色剤、化粧品などを包含する。薬
剤としてはヒトおよび動物用薬剤、治療用酵素、ペプチ
ド、タンパク、治療用および診断用抗体、ワクチン、組
み換えペプチドまたはタンパク、鎮痛剤、化学療法剤、
および酵素阻害剤などを包含する。エマルジョンまたは
自己乳化型ガラス中の活性成分の量は、所望の用途に適
切であるように選択される。調製物に導入されるその量
は、その成分の水相または油相での溶解度によって限定
される。一般に調製物の他の成分は、活性成分と共存で
きるように選択される。同様に、活性成分を含有するガ
ラスおよびエマルジョンの調製において用いられるいか
なる加工工程も、活性成分の活性を実質的に保持できな
ければならない。
【0073】エマルジョンおよび多相エマルジョンは、
活性成分を保持、輸送、保護または分離するために用い
られる。エマルジョンは湿気または空気に感受性の化合
物を保護するため、そして化学的または生物学的不活性
化から活性成分を保護するために用いられ得る。エマル
ジョンはまた、製薬用または食用エマルジョンの不快な
またはいやな味をマスクし得るし、あるいは、活性成分
の刺激性または毒性の影響から患者を保護し得る。エマ
ルジョンは混合物から所望の成分を単離するため、また
は混合物から望ましくないかまたは不要な生成物を除去
するために用いられ得る。
【0074】特定の説を固守することは望まないが、本
発明の自己乳化型ガラスは、水溶性で非界面活性の化合
物、すなわちマトリックス化合物の全体に油性物質が分
散して形成されたマトリックスを包含すると考えられ
る。本明細書に記載の自己乳化型ガラスを製造するため
の溶媒法は、従って、固体マトリックス中に液状の油が
分散したものを形成させると考えられる。
【0075】本発明は自己乳化型ガラス、エマルジョン
および多相エマルジョンの製造法を提供する。上述のよ
うに、自己乳化型ガラスに水相を加えることにより、安
定なエマルジョンおよび安定な多相エマルジョンが生成
する。エマルジョンは水相との接触により形成され得、
激しい混合または乳化性の混合は必要ではない。(乳化
性の混合という用語は、従来の乳化剤含有エマルジョン
の製造のために典型的に必要とされる激しい混合、ボル
テックス、ホモジナイザー、ブレンダー、ミルなどによ
る混合に関する。)本発明のエマルジョンおよび多相エ
マルジョンは、所望のときにガラスに水相を加えること
によって形成され得る。このガラスは、適切な貯蔵条件
下では長期間(数カ月)にわたって不都合な影響を受け
ることなく貯蔵され得る。
【0076】「安定なエマルジョン」という用語は、ボ
ルテックス、ホモジナイザーによる混合または他の乳化
性の混合によって(乳化剤を用いずに)調製された二液
相からなる分散液よりも、少なくとも破壊または合一
(coalescence)について時間が経ってもより安定な液
−液分散系を指す。含まれる液相しだいで、非安定分散
液は典型的には数分または数時間で合一する。安定なエ
マルジョンは、やはり成分しだいで、数時間から数日間
合一を起こさず安定である。多相エマルジョンに対して
「安定な」という用語を用いるとき、同様な意味が意図
される。本発明の安定な水中油型エマルジョンは、(適
切に貯蔵されたなら)数カ月にわたって合一、相分離お
よび破壊を起こさず安定であることが観察された。本発
明の安定な水中油中水型エマルジョンは、少なくとも約
90日間安定であることが観察された。
【0077】水中油型または油中水型の安定性は、エマ
ルジョンの濁度の変化を追跡することにより実験的にモ
ニターされ得る。そのような測定はエマルジョン中の粒
子サイズを追跡していることになる。肉眼で観察される
相分離を伴う濁度の低下は、エマルジョンの破壊を示
す。多相エマルジョンの安定性の実験的な評価は、より
複雑である。ごく一般的には、安定性は内部の相の外部
の相への流失(loss)、例えばW/O/Wエマルジョンでの
内部の水相の外部の水相への流失として評価され得る。
安定性は油滴の大きさ(Davisら (1976) J. Pharm. Pha
rmacol. Suppl 28:60P)、および油滴および内部の水滴
の大きさの分布(Davis および Burbage (1977) J. Col
loid Interface Sci. 62:361)と相関を示す。多相の内
部の液滴の数および大きさを一定時間測定して安定性を
評価するために、顕微鏡写真法が用いられ得る。安定性
はまた、内部の液滴の崩壊を示す、ある種のマーカー化
合物の放出によって評価され得る(Magdassiら, 1984;
Florence および Whitehill,1982; Davis および Walke
r, 1983)。Kitaら (1977) J. Colloid Interface Sci.
62:87-94は、多相エマルジョンの安定性を評価するた
めに粘度測定を用いた。
【0078】マトリックス化合物としてPVPを含有する
本発明の自己乳化型ガラスは、高温およびオートクレー
ブの圧力にさらされた後でさえ機能することが見いださ
れた。PVPガラスから調製されたエマルジョンもまたオ
ートクレーブ処理に対して安定であった。このことは、
本発明の自己乳化型ガラスの少なくともいくつかは調製
後に、エマルジョン形成機能に対して不都合な影響を与
えず滅菌し得ることを示す。
【0079】自己乳化型ガラスは溶媒法を用いて製造さ
れ、この方法は固体マトリックス中に液状の油が分散し
たガラスを生じると考えられる。この方法は水溶性で非
界面活性のマトリックス化合物を油性物質、およびマト
リックス化合物を溶解しそしてコンビネーションを形成
するために十分な量の溶媒と合わせることを包含する。
次にその溶媒をコンビネーションから、好ましくは減圧
を用いて除去して、ガラスを得る。溶媒の除去は好まし
くはロータリーエバポレーションによって行う。溶媒の
除去に伴って、泡状の固体、フィルムまたは粉末として
ガラスは形成される。ガラスは多少の残留溶媒を保持し
得る。別の方法は、マトリックス化合物および油性物質
を共に溶解する溶媒を加えることを包含する。この方法
は、マトリックス化合物がPVPであり、そしてクロロホ
ルムを溶媒として用いるときに適用し得る。この別の方
法は、油性物質が油中水型エマルジョンであるときは有
用ではない。油中水型エマルジョンをマトリックス化合
物と合わせるときは、水または水溶液の使用が好まし
い。
【0080】自己乳化型ガラスの調製のための本発明の
溶媒法では、マトリックス化合物が油性物質と合わされ
る。マトリックス化合物の油性物質中の油に対する重量
比は、少なくとも約2:1であることが好ましい。二相エ
マルジョン系が望ましい場合は、油性物質は実質的に油
である。油性物質が、例えば油中水型エマルジョンであ
るときは、かなりの量の内部の水相が含有され、それは
約30-40重量%までになり得る。エマルジョンである油
相中の油は、それに対応して減少する。自己乳化型ガラ
スの品質を最適化する上で重要であるのは、油のマトリ
ックスに対する重量比である。油中水型エマルジョンが
油相であるときは、マトリックスの油性物質に対する重
量比は約1.2:1まで低くなり得る。マトリックス化合物
の油に対する重量比が約2:1よりも低いときは、溶媒の
除去により形成されるガラスは残留油でコートされ得
る。この残留油は、ガラスに水相を加えたときに形成さ
れるエマルジョンの中に、必ずしも取り込まれない。残
留油は分離した非分散相として残存し得るが、これはあ
る種の用途には望ましくない。マトリックス化合物の油
性物質に対する重量比は約2:1から20:1であることが
より好ましく、その比が約2:1と10:1との間であるこ
とがさらに好ましい。
【0081】好ましくは溶媒は、生成する固体において
実質的な長距離分子秩序を避けるようにして、コンビネ
ーションから除去される。すなわち、生成する固体はガ
ラスであるべきである。溶媒の除去の速度がマトリック
ス化合物の溶液からの結晶化の速度より速いならば、こ
のことが達成されると考えられる。上述のように、ガラ
ス中の微晶質領域は許容されるし、自己乳化能を損なっ
ていないガラスでは、それはむしろ好ましい。結晶の形
成による実質的な長距離秩序は、自己乳化能に影響し得
る。本発明のガラスは実質的な長距離秩序を含まないこ
とが好ましい。特に、ガラスがX線回折法により非晶質
と判定できること、すなわち結晶質が約10重量%より少
ないことが好ましい。
【0082】溶媒は好ましくは、外観上乾燥した固体、
泡状物質またはフィルムが生成するまで、コンビネーシ
ョンから除去される。場合によっては、例えばマトリッ
クス化合物としてトレハロースを用いるときは、外観上
完全に乾燥した固体を得ることは不可能であり得る。湿
った外観を有するガラスは自己乳化型ガラスとして機能
するものになり得る。長時間の溶媒の除去の後もシロッ
プ状のままである物質は、水相を加えたときエマルジョ
ンを与えない。マンニトールおよびグルコースをこの溶
媒法によって、水を溶媒として用いて加工したとき、こ
のようなシロップが生じた。
【0083】マトリックス化合物と油中水型エマルジョ
ンとのコンビネーションからの溶媒の除去によって生じ
る自己乳化型ガラスは、乾燥した外観を有する。しか
し、このガラスは溶媒の除去の際には除去されない内部
の水相を保持する。
【0084】本発明の加工工程は結果として自己乳化型
ガラスを生じるが、その工程の際には安定なエマルジョ
ンは形成されない。このガラスは、当該分野で慣用的に
用いられる用語としての、乾燥エマルジョンまたはプレ
エマルジョンではない。マトリックス化合物および油性
物質から形成されるコンビネーションは、安定なエマル
ジョンではない。
【0085】典型的には、本発明の溶媒法の加工工程は
室温付近で行い得る。加工は好ましくは約50℃より低い
温度で行う。溶媒法を用いる加工では、マトリックス化
合物、油を分解し、または活性成分を分解もしくは不活
性化し得る高温の使用を避ける。溶媒法では、マトリッ
クス化合物が溶融または分解する温度を避ける。この方
法はマトリックス化合物の融点よりも低い温度で行うべ
きである。本発明のマトリックス化合物のほとんどは約
140℃より高い温度で溶融する。
【0086】上述のように、本発明の方法および組成物
は、温度感受性の活性成分が用いられるとき特に有用で
ある。本明細書で用いられる用語「温度感受性」は、活
性成分への温度による何らかの不都合な影響に関し、部
分的もしくは完全な不活性化、部分的もしくは完全な分
解、または部分的もしくは完全な変性を包含する。ある
種の活性成分、特にある種の生物物質は、室温であって
も感受性である。本発明の方法は、そのような活性成分
がより高い温度にさらされる機会を限定するので、有用
である。
【0087】そのような固−液分散系はまた、液状の油
を固体のマトリックス化合物の溶融物と合わせることに
よって、すなわち溶融融合(melt fusion)法によって
製造され得る。溶融固体と液状の油とのコンビネーショ
ンは、いかなる測定可能な微晶質をも有さない完全な非
晶質物質を生じ得る。糖類、二糖類、甘味料または糖ア
ルコールである、本発明のいずれのマトリックス化合物
も、溶融融合法によって油性物質と合わせたとき自己乳
化型ガラスを生成しなければならない。溶融融合法はま
た、本発明の水ベースの溶媒法によってはうまく加工さ
れなかった、乳糖、グルコース、麦芽糖、マンニトール
およびソルビトールからの自己乳化型ガラスの形成に適
用し得なければならない。溶融法ではマトリックス化合
物を溶融するためにかなり高温(約100℃を越える)を
用いなければならないので、溶媒法に比べて著しい不都
合がある。溶融法はまた、温度感受性の成分を含むガラ
スの調製に使用することは好ましくない。PVP、セルロ
ース誘導体またはマルトデキストリンを包含する、溶融
により(または融点に近い温度で)分解する化合物は、
溶融融合法においてマトリックスとして好ましく用いら
れることはない。溶融法は、温度感受性の活性成分を含
むガラスの製造には好ましくない。多くの薬理活性成分
が、室温より高い温度では(完全にもしくは部分的に)
不活性化され、または分解する。より多くの活性成分
が、マトリックス化合物を溶融するために必要な温度
(糖類および糖アルコールでは約100℃よりも高い)で
は、(完全にもしくは部分的に)不活性化され、または
分解する。しかし、溶融法はマトリックス化合物の範囲
を、少なくとも糖類および糖アルコールにまで広げ、そ
れらから自己乳化型ガラスを調製し得るという点で有用
であり得る。しかし、溶融法は油中水型エマルジョンを
含む自己乳化型ガラスの調製には適用できない。なぜな
ら、これら一次エマルジョンは、必要とされる高温では
安定であり得ないからである。
【0088】本発明のガラスは、薬剤送達、化粧品、食
品および食品添加物、パーソナルケアー製品、有毒およ
び危険な廃棄物の処理、ならびに連続抽出系を包含す
る、多様な用途に用いられ得る。本発明のガラスは、水
溶性がわずかしかない化合物の溶解度を増すために、薬
剤の吸収を高めるために、不快な味をマスクするため
に、湿気に感受性の化合物を保護するために、水溶性化
合物を酸性および塩基性の環境から保護するために、胃
腸への刺激を防ぐために、および種々の化合物の毒性を
低減するために用いられ得る。
【0089】本発明のガラスは、油溶性または水系に可
溶性である多くの活性成分の送達剤として用いられ得
る。ここで活性成分はトランスフェラーゼ阻害剤、セフ
ァロスポリン、化学療法剤、抗凝固剤、血栓溶解剤、コ
ロニー刺激因子、ジスムターゼ、エリトロポイエチン、
ヒト成長ホルモン、酵素、ワクチン、インターフェロ
ン、インターロイキン、モノクローナル抗体、ペプチ
ド、インシュリン、LH-RHアナログ、腫瘍壊死因子、第V
III因子、表皮成長因子、インシュリン様成長因子、rCD
4、および他の薬剤を包含する。
【0090】本発明の実施態様は、薬剤送達剤として有
用であると同時に活性成分を分解から保護し、毒性の制
限に役立ち、さらには不快な味をマスクするものとして
有用である。 本発明のガラスはまた、インシュリンお
よびLH-RHアナログを包含する、ペプチドおよびタンパ
クを経口投与するために用いられ得る。LH-RHアナログ
は、リュープロリド(leuprolide)などの性腺刺激ホル
モン放出ホルモンであって、進行性の前立腺癌の治療に
有用である。本発明は、インシュリンを包含するペプチ
ドを、経口投与し得る安定な固相の薬剤として調製する
ために用いられ得、従って数十万の患者に対する注射の
必要性を解消し得る。
【0091】同様に、本発明はセフトリアキソン(ceft
riaxone)に利用できる安定な固相の経口投与薬を実現
する。セフトリアキソンは淋病に対する選択薬であり、
EnterobacterSerratiaHaemophilus influenzaおよ
び他の細菌に起因する感染症に対してもまた広範囲に用
いられる第三世代のセファロスポリンである。セフトリ
アキソンは水に易溶性(25℃で約40g/10ml)だが、酸
に不安定であるために経口では活性でない。
【0092】本発明はまた、リポキシゲナーゼ阻害剤の
送達のための安定な固相の賦形剤を提供するために用い
られ得る。リポキシゲナーゼ阻害剤は、アラキドン酸の
種々のロイコトリエンへの変換を阻害する水に不溶性の
化合物である。ロイコトリエンはぜん息、アレルギー反
応、痛みなどの媒介物質であり得る。これらの化合物は
通常油溶性であり、そしてバイオアベイラビリティーが
不十分であることが経口投与を妨げている。本発明のガ
ラスは、リポキシゲナーゼ阻害剤の患者の系への容易な
送達を考慮している。
【0093】本発明のガラスはまた、ACATインヒビター
(アシルトランスフェラーゼインヒビター)、例えば、
ベルフォスディル(Belfosdil)を送達するために用いら
れる。ACATインヒビターは、胃腸系からのコレステロー
ル吸収を阻害する新しい種類の化合物である。それらは
通常、油溶性であるが、本発明のガラスは固形で経口送
達される。
【0094】本発明がいやな味を呈する物質をマスクす
るために、いかにして用いられ得るかを示す例として
は、アセトアミノフェンを含有する本発明のガラスの使
用がある。アセトアミノフェンは立証された(documente
d)苦味を有する解熱剤および鎮痛剤である。その溶解度
は水70mlにつき1gであるが、その苦味が経口投与の障害
となる。アセトアミノフェンを含有する、本発明に従っ
て製造されたガラスは、この苦味をマスクする。
【0095】本発明のガラスはまた、種々の薬剤(例え
ば、ラベタロール(labetalol)およびトランデート(tran
date)のようなβ遮断薬を包含する)の吸収を増進する
ために用いられる。ラベタロールは、高血圧症および狭
心症のために用いられる非選択性のαおよびβ遮断薬で
ある。これは水溶性(約20mg/ml)であり、通常経口投与
される。しかし、この経口バイオアベイラビリティー
は、最初の通過経路で大量に代謝されるため、約25%に
すぎない。
【0096】同様に、本発明のガラスは、5FU(5-フルオ
ロウラシル)のような化学療法剤の吸収を増進するため
に用いられる。5FUは抗代謝剤として作用する化学療法
剤である。これは直腸癌の治療において、他の薬剤と組
み合わせて選択される抗腫瘍薬であり、それは乳癌、頭
部および頸部の扁平上皮細胞癌、肺の小さくない細胞(n
on-small cell)の癌、こう丸および前立腺癌およびその
他の治療において第一に選択される化学療法の提供す
る。それは静脈注射にて、かつ局所的に投与される。経
口投与が望ましいが、一次代謝による排出の度合が高い
ために、現在、不可能である。その水溶性は、水80ml中
1gであり、pHの上昇によって水溶液中の溶解度は上昇す
る。
【0097】本発明のガラスは、毒性を有する薬物、例
えば、メトトレキセートおよび塩酸メクロレタミンを投
与するために有用である。メトトレキセート(MTX)は、
抗代謝剤として作用する化学療法剤である。それは急性
リンパ性白血病においてCNS予防法のために選択される
抗腫瘍薬である。それは急性リンパ性白血病、頸部の
癌、乳癌、非ホジキン病リンパ腫およびバーキットリン
パ腫における導入および維持のために第一に選択される
組み合せの成分である。塩酸メクロレタミンは、ナイト
ロジェンマスタードと呼ばれるアシル化剤である。それ
はMOPP(メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバ
ジン、プレドニゾン)およびMOP(プレドニゾンを含ま
ないMOPP)として知られている組み合せにおいて用いら
れる。すなわち、これらはホジキン病のための2つの第
一に選択される治療において用いられる。それは水に非
常に良く溶解するが、強い毒性があるためその使用が制
限され、さらに静脈注射による急な投与もまた制限され
る。
【0098】薬物送達剤として用いられる場合の本発明
のガラスは、乾燥粉末の形態、カプセル化された形態、
圧縮されて錠剤とされた形態、固形の泡沫の形態および
エマルジョンの形態を包含する、種々の形態でヒトまた
は動物に投与され得る。
【0099】本発明の他の使用は血液代替物の分野にあ
る。フルオロデカリン(Fluorodecalins)は、パーフルオ
ロデカリンを包含する血液代替物と共に用いられている
が、それには高レベルの界面活性剤を必要とする不安定
なエマルジョンを形成するという問題がある。パーフル
オロデカリンを用いる本発明のエマルジョンは、より安
定であり、界面活性剤を使用せずに形成される。本発明
によって製造される多数のエマルジョンはヘモグロビン
を可溶化するのに効果的であり、このように、新しい血
液代替物を提供する。
【0100】酵素反応、および有毒および有害な廃棄物
の清浄化を包含する多くの適用において、相の分離には
問題がある。多くの場合、分離は一連のバッチにおいて
行われる。本発明のエマルジョンは連続的な抽出剤とし
て有用である。
【0101】例えば、酵素反応において、本発明のエマ
ルジョンは廃棄物または細胞生成物から酵素または細胞
を連続して分離するのを助ける。本発明のエマルジョン
は重金属を分離する連続抽出システムにおいて有用であ
る。例えば、そのシステムにおいては、勾配が作り出さ
れ、エマルジョンの内部相に重金属が引き込まれること
により分離が行われる。このようなシステムは、例え
ば、内部相においてプロトンシフトまたはキレート技術
を利用し得る。本発明のガラスの関連する使用は、酵素
固定化の分野において行われる。
【0102】
【実施例】
(実施例1)PVPー鉱油自己乳化型ガラスの製造 重鉱油(USP,0.25g)をビーカー中で直鎖状PVP(約30,000
の分子量を有する)1.0gと混合した。分析グレードの(an
alytical grade)メタノールを全てのPVPを溶解するのに
十分な量で加えた。次いで、このメタノールを直立した
冷却器を有するBuchiロータリーエバポレーターを用い
てロータリーエバポレーションを行うことにより、PVPー
油-メタノールから蒸発させた。ロータリーエバポレー
ションフラスコ中の攪拌棒によって、ロータリーエバポ
レーションを行う間にさらなる攪拌が提供された。薄片
状の固形物を得た。2回蒸留した水約2mlをこの固形物
約200mgに加えると、水中油型のエマルジョンが形成さ
れた。
【0103】(実施例2)ショ糖ー鉱油自己乳化型ガラ
スの調製 ショ糖(2.2g)を、それを溶解するのに十分な量の2回蒸
留した水と混合した。次いで、重鉱油(USP,0.5g)をこの
溶液に加えた。緩やかに加熱すること(すなわち、約50
℃を下回る温度)によって、この混合物のロータリーエ
バポレーションを行った。得られた固形物は綿状(fluff
y)の外観を呈していた。2回蒸留した水約2mlをこの固
形物約200mgに加えたとき、水中油型エマルジョンが容
易に形成された。
【0104】ショ糖を取り込んだ、この水中油型エマル
ジョンは、味覚性質試験(qualitative taste test)にお
いて甘味はほとんどないか、または検知されなかった。
【0105】(実施例3)ショ糖ーオリーブ油自己乳化
型ガラスの調製 ショ糖(2.0g)を、オリーブ油0.5gと、ショ糖を溶解する
のに十分な量の2回蒸留した水と混合した。得られた混
合物が乾燥し、フラスコの内壁に一様にコートされた(l
ined)透明のフィルムが得られるまで、該混合物をロー
タリーエバポレートした。十分な量の2回蒸留した水
を、フィルムがコートされたフラスコに加え、水中油型
エマルジョンを得た。
【0106】水中油型エマルジョンを形成するために特
定の自己乳化型ガラスに加える必要がある最少量の水相
は、目視による定性的な観察によって、またはさらに、
定量的な測定によって容易に測定され得る。当該分野に
おいて周知のように、外部相が水または水溶液である水
中油型エマルジョンは、外部の水相の性質のようなある
種のバルク特性を有する。例えば、このエマルジョンは
視覚的に油状ではないか、または油状の触感は得られな
い。水が外部相であるか否かのさらに定量的な分析は、
エマルジョンに水溶性の着色剤の少量を添加することを
伴う。着色剤が外部相中で分散する場合(すなわち、エ
マルジョンが着色される場合)、外部相は水相である。
【0107】水中油型エマルジョンを形成するために加
えられる水相の最少量を越える実際の量は、エマルジョ
ンを何に利用するかに依存する。
【0108】(実施例4)カルボキシメチルセルロース
ー鉱油自己乳化型ガラスの調製 カルボキシメチルセルロース(デラウェア州、ウィルミ
ントンのAqualon)および重鉱油(USP)を4:1の重量比で合
わせた。次いで、カルボキシメチルセルロースを溶解す
るのに十分な量の2回蒸留した水を加えた。このコンビ
ネーションを乾燥状態までロータリーエバポレートし
た。このフィルムに2回蒸留した水約10mlを加えること
によって、粘性の水中油型エマルジョンが形成された。
【0109】(実施例5)プロゲステロンを含有するシ
ョ糖ーベニバナ油自己乳化型ガラスの調製 プロゲステロン(0.5g)をベニバナ油0.5g中に溶解した。
ショ糖(2.0g)をプロゲステロンー油溶液と合わせた。次
いで、2回蒸留した水をショ糖を溶解するのに十分な量
で加えた。攪拌棒を有するフラスコ中で得られたコンビ
ネーションを乾燥状態までロータリーエバポレートし
た。水と合わせた場合、得られた固形物は、油相中にプ
ロゲステロンを有する水中油型エマルジョンを形成し
た。
【0110】同様の調製物をベニバナ油の代わりに鉱油
を用いて製造した。このプロゲステロンは、鉱油中より
ベニバナ油中で、より多く溶解することが認められた。
【0111】(実施例6)PVPー鉱油自己乳化型ガラスの
調製、クロロホルム法 直鎖状PVP(分子量約30,000)および重鉱油(USP)を4:1の
重量比で合わせた。この油およびPVPの両方を溶解する
のに十分な量のクロロホルムを加えた。得られた溶液を
室温で放置して溶媒を蒸発させて乾燥状態の固形物を得
た。2回蒸留した水を乾燥状態の固形物に加えて、水中
油型のエマルジョンを形成した。同様の乾燥状態の固形
物質は、ロータリーエバポレーションを行うことにより
溶媒を除去することによって調製され得る。
【0112】(実施例7)合成甘味料ー鉱油自己乳化型
ガラスの調製 ナトリウムシクラメートを鉱油と3.5:1の重量比で合わ
せた。次いで、ナトリウムシクラメートを溶解するのに
十分な量の2回蒸留した水をこのコンビネーションに加
えた。ロータリーエバポレーションによって、このコン
ビネーションから水を除去した。ガラス状の固形物が得
られた。この固形物に水を加えることにより、水中油型
エマルジョンが形成された。
【0113】可溶性サッカリン、すなわち、サッカリン
ナトリウム二水和物を鉱油と3.5:1の重量比で合わせ、
そして、サッカリンを溶解するのに十分な量の水を合わ
せて、乳化ガラスをロータリーエバポレーションにより
このコンビネーションから水を除去することによって調
製した。得られたガラス状の固形物に水を加えることに
よって、水中油型エマルジョンを製造した。
【0114】シクラメートおよびサッカリンベースのエ
マルジョンは、これらのエマルジョンの味覚性質直接試
験法(qualitative direct tasting)によって、甘味を保
持することがわかった。しかし、これらのエマルジョン
は等量の甘味料それ自身と比べて、極めて低い甘味を有
していた。
【0115】(実施例8)95%エタノール水溶液、1N H
Clおよび1N NaOHによる水中油型エマルジョンの調製 ショ糖と、重鉱油(USP)と2回蒸留した水との混合物を
ロータリーエバポレーションを行うことによって、自己
乳化型ガラスを調製した。この混合物、および得られた
ものおよびガラスにおける鉱油に対するショ糖の重量比
は、4:1であった。
【0116】この固形物の約100mgと約200mgとの間の量
を、95%エタノール水溶液、1N HClおよび1N NaOHのそ
れぞれの約1mlと約2mlとの間の量と混合した。各々の場
合に、安定な水中油型エマルジョンが形成された。
【0117】この95%エタノール、NaOHおよびHClショ
糖ー鉱油エマルジョンを密封容器中にて一週間室温で貯
蔵した。その期間中、これらのいかなるエマルジョンに
おいても相分離は見られなかった。
【0118】自己乳化型ガラス固形物に無水エタノール
を加えることによって同様のエマルジョンを調製する試
みでは、エマルジョンは形成されなかった。このガラス
は無水エタノール中には溶解せず、または水和したよう
には見えなかった。このガラスは容器の底に残存した。
油の放出は見られなかった。
【0119】これらの結果は、本発明の自己乳化型ガラ
スから形成されたエマルジョンが、通常、界面活性剤含
有エマルジョンを分解する条件下(アルコールの添加、
高いpH)で非常に安定であるということを示している。
さらに、水相の水含有量の重大な変化はエマルジョン組
成物を崩壊すること(compromising)以外は許容され得る
が、エマルジョン形成を確実にするために水相には少な
くとも数パーセント(small percentage)の水がなければ
ならないということが明らかである。
【0120】(実施例9)エマルジョンの安定性に関す
る冷凍ー解凍を繰り返すサイクルの影響 ショ糖およびひまし油を2:1の重量比で合わせた。この
ショ糖を溶解するのに十分な量の2回蒸留した水を加え
た。得られた混合物をロータリーエバポレートして乾燥
状態の非油状固形物を製造した。この乾燥状態の固形ガ
ラス約200mgを2回蒸留した水約2mlに加えて水中油型エ
マルジョンを形成した。その後、このエマルジョンを約
-7℃で冷凍し、そして約25℃で解凍することを、少なく
とも40回、連続して行った。このエマルジョンはこの処
理によって破壊されなかった。各冷凍ー解凍サイクルの
後、光の散乱、すなわち、エマルジョンの粒子サイズの
機能をボシュロム分光光度計100(Bausch and Lomb Spec
trophotometer 100)を用いて間接的に測定した。この冷
凍ー解凍を繰り返すサイクルはエマルジョンの粒子サイ
ズには影響を及ぼさなかった。
【0121】(実施例10)ショ糖ー鉱油エマルジョン
の安定性 自己乳化型ガラスをショ糖および鉱油を6:1の重量比で
用いることによって、実施例2に記載のように調製し
た。蒸留水または標準生理食塩水をこのガラスに加え
て、水中油型エマルジョンを製造した。さらに、油とシ
ョ糖と水との物理的な混合物(ガラスから調製されたエ
マルジョンと同様の重量比で)を20分間乳化混合に供し
て、すなわち、激しく攪拌して(vigorous vortexing)分
散液を製造した。2種のエマルジョンおよび分散液の(4
00nmにおける)混濁を時間の関数として比較した(約22
時間まで)。2回蒸留した水3mlを含有する対照チュー
ブを用い、各々の透過の測定値のドリフトを補正した。
サンプルの混濁によって、エマルジョンの粒子サイズが
測定される。さらにサンプルの混濁はエマルジョンの破
壊または分散液の分離(disruption)を減少させる。粒子
サイズの変化は、エマルジョンの破壊とは区別される。
なぜなら、エマルジョンの破壊は目に見える相分離を伴
うためである。
【0122】鉱油およびショ糖を含有するエマルジョン
および分散液における濁度の測定の結果を図1に示す。
ガラスから調製されるエマルジョンは、目に見える相分
離を伴う濁度の低下が5〜10分で見られた分散液よりか
なり安定であることがわかった。水ベースのエマルジョ
ンは、4〜5時間一定の濁度を示し、その後、濁度が時間
とともに緩やかに低下した。これに対して、標準生理食
塩水エマルジョンは、約10分を過ぎると、時間経過によ
りさらに速い濁度の低下を示した。しかし、分散液に比
べると、濁度が低下することによっても、このエマルジ
ョンは破壊されなかった。相分離は実験中、検知されな
かった。濁度において見られる有意な低下は、時間によ
ってエマルジョン中の粒子サイズを縮小する結果をもた
らすと考えられる。標準生理食塩水が水相として採用さ
れるときには、この影響は短時間で(少なくとも速度に
おいて)さらに著しい。
【0123】(実施例11)PVP:鉱油エマルジョンの
安定性 重鉱油(USP)および直鎖状PVP(分子量約30,000)を1:5
の重量比で混合した。PVPを溶解するのに十分な量の分
析グレードのメタノールを、油およびPVPのコンビネー
ションに加えた。得られた混合物をロータリーエバポレ
ートし、メタノールを除去した。得られた固形物(100m
g)を2回蒸留した水約3mlと合わせて、水中油型エマル
ジョンを形成した。
【0124】上記のエマルジョンと比較するために、重
鉱油(USP)と直鎖状PVP(重量比1:5)の蒸留水(エマル
ジョンにおいて用いられるのと同量)中の分散液を、次
のようにして調製した。つまり、合わせた成分をコロイ
ドミル(温度調節条件下)を通すことにより、または最
大濁度(目視によって評価される)が得られるまで攪拌
することにより、調製した。これらの分散液は乳化剤を
含有せず、そして非乳化剤ベースの油/PVPエマルジョ
ンに対して適切な比較を示した。
【0125】エマルジョンの濁度[400nmにおける透過率
(%)]および上述のように製造された2種の分散液を、
実施例10で記載のように約22時間までの時間の関数と
して測定した。そしてそのシステムをいかなる物理的な
変化についても、例えば、相分離について目視観察し
た。PVP:油自己乳化型ガラスから形成されたエマルジ
ョンは、調製された分散液のいずれよりもかなり安定で
あった。攪拌されて得られた分散液およびコロイドミル
で調製された分散液の両方において、速やかな相分離が
ほとんど5分以内で見られた。これに対して、このエマ
ルジョンは、少なくとも約20時間相分離について安定で
あることがわかった。
【0126】PVP:油ベースのエマルジョンの濁度の非
常に緩やかな低下が、約7時間にわたって観察された。
この濁度の低下は、目に見える相分離を伴わず、従っ
て、エマルジョンの顕著な破壊は示されなかった。数日
にわたって緩やかに、エマルジョンは目で見て透明な状
態となった。これは明らかにエマルジョン中の粒子サイ
ズの縮小の結果である。
【0127】(実施例12)ショ糖−鉱油エマルジョン
の導電率 2回蒸留された蒸留水の一部を、実施例2に記載の方法
で調製した自己乳化型ガラス0.4615gに少しずつ
加えた。得られたサンプルの導電率を水を加える度毎に
測定した。導電率は、Fluke 73マルチメーター
で測定した抵抗値から得た。データを図2に要約する。
図2ではサンプルの導電率は、25℃における水の導電
率に比較して示されている。
【0128】自己乳化型ガラスから形成されたエマルジ
ョンから得た導電率の結果は、既知の乳化剤を含む標準
エマルジョンの類似の測定値に比較すると、独特のパタ
ーンを示している。
【0129】図2によれば、導電率は水の重量フラクシ
ョンの関数として増加するといえる。図2の斜線部分
(水約90%〜96%)に示すように、導電率が変動す
る領域が観察される。この領域ではサンプルの導電率
は、導電性を有するか有しないかの間を変動する。本発
明のエマルジョンにおいて導電率がこのように変動する
原因については明らかではない。油中水型エマルジョン
と水中油型エマルジョンとの間の転移に関連して変動が
観察されるわけではない。変動が観察される水の重量フ
ラクションの正確な範囲は、自己乳化型ガラスのマトリ
ックス化合物と油分との相対量によって異なるとみられ
ていた。いくつかの場合においては、多数の変動領域が
水の重量フラクションの関数として観察された。これら
エマルジョンの導電率の変動現象は、充分に特性が明ら
かにされていないが、これらの変動領域は、本発明のエ
マルジョンの液晶相の存在に関連するものと仮定され
る。いずれにせよ、導電率が変動する比較的広い領域が
存在すること、およびある場合においては、そのような
変動の起こる領域が複数個存在することは、自己乳化型
ガラスから形成されるエマルジョンに特有のものである
と考えられている。
【0130】導電率の不連続は、浸出転移(percolatio
n transition)に関連するマイクロエマルジョンで観察
されている(LeguesおよびSauterey (1980) Phys.Chem.
84:3503)。マイクロエマルジョンの浸出は、それが持
続する長さと界面の硬さとに依存することが報告されて
いる。(de GennesおよびTaupin (1982) J.Phys.Chem.
86:2294;Lam ら(1987) J.Colloid Interface Sci. 120:
30; および Guest ら(1985) J.Physique Lett. 46:L-10
55)。
【0131】それとは対照的に、乳化剤を含む通常のエ
マルジョンの油中水型から水中油型エマルジョンへの変
化は、導電率の急速なシフトによって示されるように、
急激であると報告されている(K.Shinoda,H.Arai(1967)
J.Colloid Interface Sci.25:429)。
【0132】本発明のエマルジョンの、「変動」領域を
上まわる部分の相対導電率は、1よりも大きい。すなわ
ち連続相の導電率は、バルク水の導電率よりも大きい。
これは、水の含量の高い場合にはエマルジョン粒子によ
り、恐らくは液晶の形成によって、水の外部相に配列あ
るいは構造上の負担がかかり、それによって水相はより
容易に電流を通すからであると考えられる。変動領域を
下まわる部分の導電率が低いのは、より複雑な構造とエ
ントロピーがより低いことに関連する。
【0133】(実施例13)粘度によって測定されるエ
マルジョン構造の剪断応力の影響 2回蒸留された蒸留水1mlを、実施例2に記載の方法
で調製したショ糖−鉱油の固体552.4mgに加える
ことにより、水中油型エマルジョンを形成した。得られ
たエマルジョンを約60rpmで粘度の読みが最小とな
るまで(約1時間)攪拌した。さらに最小の剪断応力を
加えてエマルジョンの粘度を定期的に測定した。粘度は
Brookfield 円錐/平面粘度計(cone/plate viscomete
r)によりスピンドルの回転を0.3rpmの最小値にセ
ットして測定した。スピンドルは粘度測定ができる程度
に長くして回転させた。その結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】この実験の目的は、ここでの調製時に形成
したエマルジョンの構造が、剪断応力の付与(60rp
m攪拌)後、再生されるかどうかを決定することにあっ
た。表2のデータに示されるように、エマルジョンは時
間と共に粘度がゆっくりと増加し、このことにより破壊
された構造はゆっくりと再生されることがわかる。エマ
ルジョン構造が、ショ糖分子の殻の中に包まれた油核を
包含し、水分子が水酸基に水素結合した状態であると仮
定すれば、表2の結果は以下のように説明され得る。エ
マルジョン粒子は最初の剪断の間に水和作用を失い、従
って粘度が減少する。水和構造がエマルジョン中に再生
され、そのあいだ中、粘度が増加する。剪断応力を加え
ることによって破壊された構造を回復することができる
エマルジョン粒子の能力により観察されるエマルジョン
粒子の安定性、および剪断応力による破壊に対する抵抗
力を合理的に説明することができる。
【0136】(実施例14)温度関数としてのショ糖−
鉱油エマルジョンの粘度 実施例2に記載のように調製されたショ糖−鉱油エマル
ジョンの粘度は、温度の関数として、コントロールのシ
ョ糖溶液の粘度と比較された。エマルジョンは、2回蒸
留した蒸留水1mlを、実施例2に記載の方法で調製し
たガラス0.5224gに加えることにより調製した。
ショ糖溶液は、前記ガラス0.5224g中に存在する
ショ糖の量に等しい量(0.450g)だけ水1mlに
溶解することにより調製した。その後、温度を40℃か
ら5℃に下げていきながら両サンプルの粘度の測定を行
った。すべての粘度は、Brookfield 円錐/平面粘度計
により、スピンドル速度を60rpmにして測定した。
その結果を表2に示す。
【0137】
【表2】
【0138】表2の結果から、エマルジョンの粘度は温
度降下とともにショ糖溶液の粘度よりも速く増加するこ
とがわかる。ショ糖−鉱油エマルジョンの粘度が、温度
降下の関数としてショ糖溶液の粘度に比較して増加する
ことにより、エマルジョンの構造が、ショ糖溶液の構造
よりも複雑であることがわかる。該データは、エマルジ
ョンが冷却すると水和作用の度合がさらに加わるという
理論と一致している。
【0139】(実施例15)剪断率の関数としての油中
水エマルジョンの粘性 ショ糖と鉱油の割合が6:1の自己乳化型ガラスから調製
した水中油エマルジョンの粘度を、25 ± 0.2゜Cで、剪
断率の関数として決めた。この研究の結果を、図3に示
す。粘度は低い剪断率(0.3 rpm)では高く(図3で30 c
ps)、剪断率が増すにつれて減少した。巨大分子は、こ
のショ糖を基礎とするエマルジョン中には全く存在しな
い。従って、チキソトロピー様の挙動を観察することは
期待できない。チキソトロピー様挙動の観察は、エマル
ジョン中での、例えば液体結晶の形成に関連している、
秩序ある構造の結果として、説明し得る。
【0140】(実施例16)PVP-鉱油エマルジョンの粒
子サイズ 重鉱油(UPS、0.25 g)を、1.25 g の直鎖状PVP(分子
量約30,000)および約200 mlの分析グレードのメタノー
ルと混合する。次にこの混合物を、乾燥するまでロータ
リーエバポレーションした。数ミリグラムの得られた固
体へ水を添加して、エマルジョンを作った。エマルジョ
ンの粒子サイズは、Hiac/Royco粒子サイズ分析計で測定
し、約0.5および約5.0μmの間で、平均約4μmであっ
た。
【0141】(実施例17)PVP-鉱油エマルジョンの形
成速度 実施例16の固体からのエマルジョン形成速度を測定す
るため、2回蒸留した水(3 ml)を、0時に固体の試料
(127.5 mg)に混合せずに添加し、試料の濁度を測定し
た。試料の吸光度を定期的に測定した。表3にその結果
をまとめる。
【0142】
【表3】
【0143】時間が経過した後の吸光度のプラトーは、
エマルジョン形成が完結していることを示す。これらの
データは、成分を混合しなくともエマルジョンが形成さ
れることを示している。
【0144】データはまた、400 nmの波長がエマルジョ
ン粒子によるチンダル効果を生じることも示している。
従って、エマルジョン中の粒子サイズが、400 nm(0.4
μm)より大きいものが少なくともいくらかはあるはず
である。エマルジョンは濁っており0.05 μm(肉眼で観
察できる最低限度)より大きい直径の粒子が存在するこ
とを示す。
【0145】上記の測定後、試料は室温で2週間保存し
た。この期間の後、エマルジョンが相分離をしなくと
も、試料が透明となっていることが観察された。このこ
とは、時間が経つにつれてエマルジョンの粒子サイズが
減少し、約0.05 μmより小さい粒子サイズのエマルジョ
ンが形成されることを、さらに示している。
【0146】(実施例18)ショ糖-鉱油混合物および
処理したショ糖-鉱油固体のX線回折 本発明の方法によって製造したショ糖-鉱油固体、およ
びショ糖および鉱油の単純な混合物のX線回折図を得
た。
【0147】各々の試料は、ショ糖および重鉱油(US
P)を3.5:1の重量比で含有していた。試料1では、油と
糖は手動で混合した。試料2では、ショ糖を溶解するの
に充分な量の2回蒸留した水を添加し、そして次に本実
施例に上記したように、ロータリーエバポレーションに
よりその水を除き自己乳化型固体を製造した。次に各試
料を、1 x 3 cmの試料ホールダーに詰め込み、そして米
国 パウダー社のサインタッグ(Scintag/USA Powder)X
線回折計で、Cukα、波長1.54 オングストローム、およ
び3゜C/分の走査率で計測した。図4に、各試料の回折図
を示す。
【0148】この回折図は、単純混合物中のショ糖が予
想通りその結晶構造を維持していることを示す。反対
に、処理したショ糖および鉱油ガラスは、本実験法によ
り非晶質であることが明白となった。X線回折法は、結
晶構造から、約10%より多い長距離分子秩序を検出し得
る。
【0149】ショ糖対油が2.5:1および4:1の重量比であ
るショ糖-鉱油固体エマルジョンの回折も測定した。こ
の自己乳化型固体もまた、X線回折で非晶質であること
が明白となった。
【0150】(実施例19)油の分散および回収のため
のショ糖-鉱油エマルジョンの使用 実施例2の約200 mgのショ糖-鉱油固体エマルジョンに、
約2 mlの2回蒸留した水を添加し、エマルジョンを形成
させた。続いて、2 mlの重鉱油(USP)をそのエマルジ
ョンにさらに添加した。添加した油がその系にただちに
分散するのを観察し、相分離の形跡は全くなかった。そ
の系に仕事(例えば攪拌)を加えることなく、分散がな
された。この実施例により、油が、エマルジョン粒子に
溶け込むために、発明の方法を経る必要はないことが示
される。
【0151】(実施例20)ショ糖-O/Wエマルジョンを
含む自己乳化型ガラスの調製 第1エマルジョンを、脂溶性界面活性剤:Arlacel-C、Sp
an 80あるいはSpan 85(商標ICI Americas Inc.,米国)
を添加した重鉱油と水溶液を乳化することによって、調
製した。その界面活性剤を油に添加し、混合物は小さな
回転刃を付けたブリンクマン ホモジナイザー(Brinkm
an Homogenizer)(Sybron Corporation、米国)で、40
から60秒間ホモジナイズした。次に水相を、ゆっくり添
加した。添加完了後、所望の油中水エマルジョンが得ら
れるまで、ホモジナイズした。70%から79%重量/重量の
重鉱油、5.5%から7.2%重量/重量の界面活性剤(HLB 1.8
から4.3)、および21%から30%の水相のエマルジョンを
調製した。
【0152】ショ糖を、重量比約78:22で第1のW/Oエマ
ルジョンと合わせせた。次に2回蒸留した水を加えショ
糖を溶解させた。このコンビネーションをロータリーエ
バポレーション(約5 mmHgで)に供した。コンビネーシ
ョンを入れたフラスコは、約17から25 rpmでロータリー
エバポレーター上で回転させ、そしてそのフラスコの温
度は約32゜Cに維持した。乾燥した「泡様」物質が生成す
るまで、そのコンビネーションから水を取り除いた。そ
の固体を粉として集め、室温でデシケーター中に保存し
た。この固体自己乳化型ガラスは、その自己乳化の特性
を失わないで、比較的長い時間(数週間あるいは数カ
月)、この方法で保存され得ることが分かった。
【0153】この固体への水相の添加によって、多相の
W/O/Wエマルジョンが形成される。例えば、5 mlの水、1
N HCl、あるいは1 NNaOHを1 gの固体に添加すると、安
定した多相のエマルジョンが形成される。対照的に、そ
の固体は、重鉱油中で分散しない;ガラス固体の密度が
油のそれより大きいため、この固体は鉱油の容器の底に
沈澱する。この結果は、その固体が水あるいは水相(第
1エマルジョンの)の内部小滴を含有していることと矛
盾していない。
【0154】このガラスは、示差走査熱量計を用いて分
析した。その際、本明細書に参考として全て援用され
る、FordおよびTimmins(1989)Pharmaceutical Therma
l Analysis Ellis Horwood Ltd., England、に述べられ
ているような、当該分野で公知の方法で行った(図5、
サーモグラムA参照)。このガラスのガラス転移は、ほ
ぼ57゜Cであることが分かり、ショ糖の再結晶はほぼ120゜
Cで、そして最終的にほぼ185゜Cで全ての結晶ショ糖がガ
ラス融解物となるのを観察した。
【0155】DSC分析は、ショ糖および鉱油を用いて生
成した自己乳化型ガラスで行った。ショ糖-鉱油ガラス
のDSCサーモグラムは、ガラス転移、ショ糖再結晶およ
びショ糖融解の特徴が観察される、図5のサーモグラムA
であるショ糖/第1エマルジョンガラスのサーモグラムと
類似している。結晶ショ糖の融解に関するピークの相対
的なサイズは、ガラス中の微晶質の量に依存して変化す
る。DSC測定は、個々のガラス試料中の微晶質の量を測
定するために実際に容易に用いられ得る。ガラス転移温
度は、そのガラスの正確な組成に依存して変化し得る。
【0156】ショ糖および鉱油の物理的な混合物のDSC
サーモグラムは、ガラス転移を全く示さない。そのサー
モグラムは、約185゜Cで結晶ショ糖の融解に関する特徴
を含んでいるのみである。
【0157】(実施例21)ショ糖-マルトデキストリ
ンおよびW/Oエマルジョンを含有する自己乳化型ガラス
の調製 第1エマルジョンを、実施例20に記載のようにして調
製した。3%(重量/重量)のマルトデキストリンを含む
ショ糖の混合物をそのエマルジョンに約78:22の重量比
で添加し、そして充分に水を加え、ショ糖-マルトデキ
ストリンを溶解させた。ロータリーエバポレーションに
よる水の除去で、乾燥固体を生じ、水相との接触でW/O/
Wエマルジョンを形成することが分かった。例えば、5 m
lの水、1 NHCl、1 N NaOHを1 gの固体へ添加すると、安
定した多相エマルジョンが形成される。
【0158】そのガラスを、示差走査熱量計を用いて分
析した(図5Bを参照)。このガラスのガラス転移温度
は、実施例20のショ糖を含むガラスと比較して、有意
に上昇する(約180゜C以上を超えるまで)。ショ糖の再
結晶化は全く検出せず、そしてガラス中の結晶ショ糖が
融解するのを観察する。ショ糖のキャリアーへのマルト
デキストリンの添加により、ショ糖単独より高いガラス
転移温度を生じる。より高いガラス転移温度は、固体状
態での自己乳化系の安定性の増大と関連し、そしてこれ
らのガラスおよびこれらのガラスを基にした生産物の貯
蔵寿命を延長するようである。
【0159】(実施例22)多相エマルジョンの構造 水溶性および/あるいは脂溶性染料を、これらのガラス
から形成したエマルジョンの構造を調べるために、自己
乳化型ガラスに取り込ませた。
【0160】第1エマルジョンを、重鉱油および界面活
性剤を加え、実施例20に記載のように調製した。脂溶
性染料D&C紫2を油相に添加し、そして水溶性染料FD&C
赤17を内部の水相に添加した。両方の染料を含む、ショ
糖/第1エマルジョンガラスを調製し、そして水をそのガ
ラスに添加して、W/O/Wエマルジョンを形成した。次
に、そのエマルジョンを顕微鏡(400倍率)下で調べ、
視覚的に赤い内相およびブルーグレーの油相を含むこと
が分かった。3つのタイプのW/O/Wエマルジョンの小滴
が、エマルジョン中で観察された。すなわち、1つの大
きな内部小滴を囲んでいる小さな外部小滴を持つ小滴
(タイプA)、より小さな多相の内部小滴を含む、より
大きな外部の相からなる小滴(タイプB)、および数え
きれないほど多くの小さな水滴を含む均一な、より大き
い外部油相を有する小滴(タイプC)である。タイプA、
B、およびCの小滴は、多相エマルジョンとして以前に述
べられている(FlorenceおよびWhitehill(1981)参
照)。調べられたショ糖を基に形成した多相エマルジョ
ンは、ほぼ80%がタイプAの小滴からなっていた。残りは
タイプBあるいはタイプCのどちらかの小滴である。
【0161】これらのショ糖を基に形成したW/O/Wエマ
ルジョンの粒子サイズは、エマルジョン調製後の時間の
関数として測定した。粒子サイズの測定は、調製時、調
製の7日後および調製の30日後に行った。エマルジョン
小滴の外部および内部膜の平均の直径は、エマルジョン
調製直後ではそれぞれ、12.4ミクロンおよび3.9ミクロ
ンであった。これらの直径は、調製の7日後あるいは30
日後では、有意には変化しなかった。エマルジョンはま
た、調製の60日後および90日後で顕微鏡下で視覚的に検
査し、そしてそのままの状態を保っていることが分かっ
た。
【0162】(実施例23)マトリックス化合物-W/Oエ
マルジョンを含む自己乳化ガラスの製造 以下の一般的な手順では、本発明の水溶性非界面活性マ
トリックス化合物(ポリマーあるいは非ポリマー)、お
よび特にショ糖、果糖、トレハロース、シクラメート、
サッカリン、および水溶性ポリマーPVPセルロース誘導
体およびマルトデキストリンを含む、油中水エマルジョ
ンのうち任意のものを用い得る。
【0163】第1の油中水エマルジョンを、脂溶性界面
活性剤を用いる当該分野で公知の従来法によって形成す
る。油中水エマルジョンの形成に適切な界面活性剤、特
にHLB値が約5より小さい界面活性剤が用いられる。陰イ
オン性、陽イオン性あるいは非イオン性界面活性剤が用
いられ得る。水相を、油性の物質および界面活性剤と合
わせ、そして第1 W/Oエマルジョンを、激しく混合(す
なわち、乳化混合)して形成させる。
【0164】第1エマルジョンが製造されると、それを
所望のマトリックス化合物、およびそのマトリックスを
溶解するのに充分な量の水溶液と組合わせる。次に、生
じた化合物から水を取り除き、乾燥した見かけの泡、あ
るいは薄膜をつくる。乾燥した見かけの固体は、自己乳
化型ガラスであると分かる。そのガラスへ充分な量の水
相を添加すると、安定な多相エマルジョン(すなわちW/
O/Wエマルジョン)を形成する。表IVは、油中水エマル
ジョンを含む自己乳化型ガラスの調製物の代表的なリス
トを提供している。様々な植物油あるいは炭化水素の
油、特にトウモロコシ油、ピーナッツ油、オリーブ油、
ベニバナ油、大豆油、ひまし油および鉱油を、これらの
例に用いた。これらの油で有意な差は観察されなかっ
た。用いられた第1エマルジョン中の油対水相の相の割
合(V/V)は、約4:1から2:1の範囲であった。例示した
ガラスで、表示されHLB値を持つ非イオン性界面活性
剤、例えばアルラセルC(Arlacel C)(商標)、を用い
た。特に例示したマトリックス化合物は、ショ糖、PVP
およびショ糖およびマルトデキストリンの混合物であ
る。特に例示したマトリックスとのエマルジョンの重量
比は、約1:1から9:1の範囲であった(マトリックスと油
の代表的な重量比は、約1.2:1から約10:1の範囲であ
る)。
【0165】
【表4】
【0166】表4に挙げた各々のコンビネーションで
は、水相の添加で多相エマルジョンを形成する、自己乳
化型ガラスを生じた。いくつかの例示した系で、活性成
分を第1エマルジョンの水相に混合した。第1の油中水エ
マルジョンの水相は、W/O/Wエマルジョンの内部の水性
の油中水の相(すなわち、第2の水相)となる。例えば
染料および薬剤のような水溶性の活性成分が例示されて
いる。第1エマルジョンの水相は、pH10からpH1の範囲で
あり得、そして無機塩を含み得る。第1エマルジョンの
油相はまた、通常は脂溶性の活性成分をも含み得る。
【0167】(実施例24)カンレノ酸(canrenoic ac
id)を含むW/O/Wエマルジョン 界面活性剤アルラセル-C(HLB 3.7、商標ICI Americas
Inc.,米国)を添加している、重鉱油と水性溶液とを乳
濁して、第1エマルジョンを調製した。水相は、カンレ
ノ酸K+塩で0.0614 Mあるいは0.439 Mのどちらかになる
ように調製した。界面活性剤を油に添加し、その混合物
を小さな回転刃を付けたブリンクマンホモジナイザー
(Sybron Corporation、米国)を用い、40から60秒間ホ
モジナイズした。次に、水相を油相にゆっくり添加し
た。添加完了後、所望の油中水エマルジョンが得られる
まで、ホモジナイズを続けた。第1エマルジョンは、約7
1.4%の鉱油、約21.4%の水相、および約7.1%の界面活性
剤を含んでいた。ショ糖は、第1W/Oエマルジョンと、約
78:22の重量比で合わせた。次に2回蒸留した水を添加
し、ショ糖を溶解した。そのコンビネーションを、ロー
タリーエバポレーションに供し、乾燥した「泡様」固体
を製造した。その固体へ水を添加すると、W/O/Wエマル
ジョンを生じた。エマルジョンの調製後すぐに、赤外分
光計を用いる多相エマルジョンの外部水相を調べると、
外部相にはカンレノン酸を全く検出しなかった。カンレ
ノン酸は、時間に相関して、多相エマルジョンの内部相
よりゆっくり放出された。例示したような多相エマルジ
ョンは、徐放性薬剤送達システムとして機能し得る。
【0168】(実施例25)O/WエマルジョンIの調製 リポキシゲナーゼ阻害剤を、フラスコ内のオリーブ油中
に溶解し、濃縮した溶液を作成した。PVPを8.4:1::PVP:
油溶液の割合で添加する。水をPVPが溶解するまで添加
し、二相系とする。次にその水を、ロータリーエバポレ
ーターを用いて除去し、固体の泡様の物質とする。水あ
るいは他の水相をその固体に添加すると、安定なO/Wエ
マルジョンを生じる。
【0169】(実施例26)O/WエマルジョンIIの調製 リポキシゲナーゼ阻害剤を、フラスコ内でオリーブ油中
に溶解し、濃縮した溶液を作成する。PVPを8.4:1::PVP:
油溶液の割合で添加する。クロロフォルムをPVPが溶解
するまで添加する。次にそのクロロフォルムは、ロータ
リーエバポレーターを用いて除去し、固体の泡様の物質
とする。水あるいは他の水相をその固体に添加すると、
安定なO/Wエマルジョンを生じる。
【0170】(実施例27)O/WエマルジョンIIIの調製 ACAT阻害剤を、フラスコ内のトウモロコシ油中に溶解
し、濃縮した溶液を作成する。PVPを3.5:1::PVP:油溶液
の割合で添加する。水を、PVPが溶解するまで添加し、
二相系とする。次にその水を、ロータリーエバポレータ
ーを用いて除去し、固体の泡様の物質とする。水あるい
は他の水相を再びその固体に添加すると、安定なO/Wエ
マルジョンを生じる。
【0171】(実施例28)O/Wエマルジョンの代用血
液への応用 酸素を溶解し得る油であるペルフルオロデカリン(perf
luorodecalin)、を氷上で二酸化炭素で完全にガス処理
する。次にそれを、PVP(22%ペルフルオロデカリン、78
%PVP)とフラスコ中で混合する。冷水を、PVPが溶解す
るまで添加し、二相系とする。次にその水を、ロータリ
ーエバポレーターを用いて除去し、泡様の固体とする。
NaCl(0.6%)、MgCl2(0.02%)、KCl(0.03%)、乳酸ナ
トリウム(0.31%)、ブドウ糖(0.1%)を含む生理食塩
水より成る水性溶液を添加して、安定なO/Wエマルジョ
ンを形成する。生じた水中油エマルジョンは、代用血液
組成物に用い得る。
【0172】(実施例29)W/O/WエマルジョンIの調製 70%の植物油、7%アルラセルCおよびインシュリン、グリ
セリンおよびm-クレゾール(2.5 mg/ml)を含む水溶液2
3%の第1エマルジョンを、攪拌機中で調製する。それ
を、PVPと3.5:1::PVP:第1エマルジョンの割合でフラス
コ中で混合する。水を、PVPが溶解するまで添加し、二
相系とする。次にその水を、ロータリーエバポレーター
を用いて除去し、固体の泡様の物質とする。水あるいは
他の水相をその固体泡様物質に添加すると、安定なW/O/
Wエマルジョンを生じる。
【0173】(実施例30)W/O/WエマルジョンIIの調
製 70%の大豆油、7%のアルラセルCおよび23%の水溶液(セ
フトリアキゾーン40%をpH6.7で含む)の第1エマルジョ
ンを、ホモジナイザー中で調製する。次にそれを、PVP
と3.5:1::PVP:第1エマルジョンの割合でフラスコ中で混
合する。水を、PVPが溶解するまで添加し、二相系とす
る。次にその水を、ロータリーエバポレーターを用いて
除去し、固体の泡様の物質とする。水あるいは他の水相
をその固体に添加すると、安定なW/O/Wエマルジョンを
生じる。
【0174】(実施例31)W/O/WエマルジョンIIIの調
製 70%の重鉱油、7%のアルラセルCおよび23%の水性溶液
(1.5%のアセトアミノフェンを含む)の第1エマルジョ
ンを、攪拌機中で調製する。それを、PVPと3.5:1::PVP:
フラスコ内の第1エマルジョンの割合でフラスコ中で混
合する。水を、PVPが溶解するまで添加し、二相系とす
る。次にその水を、ロータリーエバポレーターを用いて
除去し、固体の泡様の物質とする。水あるいは他の水相
を再びその固体に添加すると、安定なW/O/Wエマルジョ
ンを生じる。
【0175】(実施例32)W/O/WエマルジョンIVの調
製 70%のピーナッツ油、7%のアルラセルCおよび23%の水性
溶液(20 mg/mlのラベタロールをpH 2からpH 4で含む)
の第1エマルジョンを、ホモジナイザー中で調製する。
次にそれを、PVPと3.5:1::PVP:第1エマルジョンの割合
でフラスコ中で混合する。水を、PVPが溶解するまで添
加し、二相系とする。次にその水を、ロータリーエバポ
レーターを用いて除去し、固体の泡様の物質とする。水
を再びその固体に添加すると、安定なW/O/Wエマルジョ
ンを生じる。
【0176】(実施例33)W/O/WエマルジョンVの調製 70%の鉱油、7%のアルラセルCおよび23%の水性溶液(1.2
5%の5-フルオロウラシル(5FU)pH 8.0で含む)の第1エ
マルジョンを、ホモジナイザー中で調製する。次にそれ
を、PVPと3.5:1::PVP:第1エマルジョンの割合でフラス
コ中で混合する。PVPが溶解するまで水を添加し、二相
系とする。次にその水を、ロータリーエバポレーターを
用いて除去し、固体の泡様の物質とする。水あるいは他
の水相を再びその固体に添加すると、安定なW/O/Wエマ
ルジョンを生じる。
【0177】(実施例34)W/O/WエマルジョンVIの調
製 70%のベニバナ油、7%のアルラセルCおよび23%の水性溶
液(1 mg/mlのメソトレキセート(Methotrexate)(2%
ウシ血清アルブミン)を含む)の第1エマルジョンを、
ホモジナイザー中で調製する。次にそれを、PVPと3.5:
1::PVP:第1エマルジョンの割合でフラスコ中で混合す
る。PVPが溶解するまで水を添加し、二相系とする。次
にその水を、ロータリーエバポレーターを用いて除去
し、固体の泡様の物質とする。水あるいは他の水相を再
びその固体に添加すると、安定なW/O/Wエマルジョンを
生じる。
【0178】(実施例35)W/O/WエマルジョンVIIの調
製 70%の軽鉱油、7%のアルラセルCおよび23%の水性溶液(2
mg/mlの塩酸メクロルエタミン(mechlorethamine HC
l)をpH6で含む)の第1エマルジョンを、攪拌機中で調
製した。次にそれを、PVPと3.5:1::PVP:第1エマルジョ
ンの割合で、フラスコ中で混合する。水を、PVPが溶解
するまで添加し、二相系とする。次にその水を、ロータ
リーエバポレーターを用いて除去し、固体の泡様の物質
とする。水あるいは他の水相を再びその固体に添加する
と、安定なW/O/Wエマルジョンを生じる。
【0179】(実施例36)W/O/WエマルジョンVIIIの
調製;代用血液のためのW/O/Wエマルジョン 70%の植物油、7%のアルラセルCおよび23%の水性溶液(p
H 7.1の等張性の10 MMリン酸塩、1%ヘモグロビン)の第
1エマルジョンを、攪拌機中で調製する。次にそれを、P
VPと3.5:1::PVP:第1エマルジョンの割合で、フラスコ中
で混合する。冷水を、PVPが溶解するまで添加し、二相
系とする。次にその水を、ロータリーエバポレーターを
用いて除去し、固体の泡様の物質とする。NaCl(0.6
%)、MgCl2(0.02%)、KCl(0.03%)、乳酸ナトリウム
(0.31%)、ブドウ糖(0.2%)を含む水性溶液を添加し
て、安定なW/O/Wエマルジョンを形成する。生じた水中
油中水エマルジョンは、代用血液に用い得る。
【0180】(実施例37)W/O/WエマルジョンIXの調
製 70%の軽鉱油、7%のアルラセルCおよび23%の水溶液(0.0
6%のウレアーゼ溶液)の第1エマルジョンを、攪拌機中
で調製する。次にそれを、PVPと3.5:1::PVP:第1エマル
ジョンの割合でフラスコ中で混合する。PVPが溶解する
まで水を添加し、二相系とする。次にその水を、ロータ
リーエバポレーターを用いて除去し、固体の泡様の物質
とする。水を再びその固体に添加すると、安定なW/O/W
エマルジョンを生じる。
【0181】(実施例38)W/O/WエマルジョンXの調製 70%の軽鉱油、7%のアルラセルC、および張度のためにNa
Cl中に溶解した5 mg/mlのLH-RHアナログおよび9 mg/ml
のベンジルアルコールからなる23%の水溶液の第1エマル
ジョンを、ホモジナイザー中で調製する。次にそれを、
ショ糖と3.5:1::ショ糖:第1エマルジョンの割合でフラ
スコ中で混合する。水を、ショ糖が溶解するまで添加
し、二相系とする。次にその水を、ロータリーエバポレ
ーターを用いて除去し、固体の泡様の物質とする。水を
再びその固体に添加すると、安定なW/O/Wエマルジョン
を生じる。
【0182】(実施例39)W/O/WエマルジョンXIの調
製 70%の軽鉱油、7%のアルラセルCおよび23%の2N硫酸の第1
エマルジョンを、攪拌機中で調製する。次にそれを、PV
Pと3.5:1::PVP:第1エマルジョンの割合でフラスコ中で
混合する。水を、PVPが溶解するまで添加し、二相系と
する。次にその水を、ロータリーエバポレーターを用い
て除去し、固体の泡様の物質とする。水を再び添加する
と、安定なW/O/Wエマルジョンを生じ、それは陽イオン
性の毒性物質の連続的なフロー抽出に有用である。
【0183】(実施例40)W/O/WエマルジョンXIIの調
製 70%の軽鉱油、7%のアルラセルCおよび23%の水相(10%ED
TA)を、攪拌機中で調製する。次にそれを、PVPと3.5:
1::PVP:第1エマルジョンの割合でフラスコ中で混合す
る。水を、PVPが溶解するまで添加し、二相系とする。
次にその水を、ロータリーエバポレーターを用いて除去
し、固体の泡様の物質とする。水を再び添加すると、安
定なW/O/Wエマルジョンを生じ、それはキレート剤と複
合体を形成し得る毒性物質の連続的なフロー抽出に有用
である。
【0184】(実施例41)自己乳化型ガラスを用いた
薬剤送達システム 自己乳化型ガラスを、実施例2の方法で、ショ糖および
製薬上の適用および体内投与に好適な、例えば鉱油のよ
うな、油との混合物から調製する。全ての調製は、ヒト
の医薬品の調製に適切な条件下で行う。ショ糖の油に対
する比率は、少なくとも約2:1である。医薬的活性を有
する脂溶性の活性成分、すなわち脂溶性薬剤を、ガラス
を形成する処理より前に、油相に溶解しておく。処理条
件は、薬剤の活性が実質的に影響を受けないようなもの
にする。生じたガラスは、脂溶性活性成分を取り込んで
いる。そのガラスを、ヒトあるいは動物への固体薬剤物
質の投与に適切なカプセルあるいは他の同様な手段に導
入する。カプセルでのガラス固体の量は、所望の投与量
を提供するよう調製する。カプセルはまた、適切な充填
剤を含み得る。あるいはそれに加えて、油相中の活性成
分濃度は、所望の用量の範囲とするために調整し得る。
生じたカプセルを、所望の用量の医薬剤を提供するた
め、ヒトあるいは動物の患者に経口投与する。
【0185】脂溶性薬剤を含む、上記したようにして調
製した自己乳化型ガラスは、経口薬剤投与の錠剤の調製
に用い得る。
【0186】(実施例42)自己乳化型ガラスを用いた
薬剤送達 自己乳化型ガラスを、実施例2の方法で、ショ糖と製薬
上の使用および体内投与に好適な、油中水との混合物か
ら調製する。全ての調製は、ヒトの医薬品の調製に適切
な条件下で行う。油中水エマルジョン内のショ糖の油に
対する比率は、少なくとも約2:1である。医薬的活性を
有する水溶性の活性成分、すなわち水溶性薬剤を、油中
水エマルジョンの形成より前に、水相に溶解する。処理
条件は、薬剤の活性が実質的に影響を受けないようなも
のにする。生じたガラスは、水溶性活性成分を取り込ん
でいる。そのガラスを、ヒトあるいは動物への固体薬剤
の投与に適切なカプセルあるいは他の同様な手段に導入
する。カプセルでのガラス固体の量は、所望の投与量に
を提供するように調製する。カプセルはまた、適切な充
填剤を含み得る。あるいはそれに加えて、油中水エマル
ジョンの水相内の活性成分濃度は、所望の用量の範囲と
するために調整され得る。生じたカプセルを、所望の用
量の医薬剤を提供するため、ヒトあるいは動物の患者に
経口投与する。 水溶性薬剤を含む上記のように調製し
た自己乳化型ガラスは、経口薬剤投与の錠剤の調製に用
いられ得る。
【0187】(実施例43)自己乳化型ガラスを用いた
食品調製 ショ糖を、それを溶解させるのに充分な量の水溶液と混
合する。その水溶液は、バニラ抽出物のような香料を含
む、食品調製に適切な水溶性成分を含む。植物油のよう
な食品調製に用いるのに適切な油が、これに加えられ
る。香料のような脂溶性の成分を、ショ糖溶液と混合す
る前に油に溶解する。ショ糖の油に対する比率は、少な
くとも約2:1である。その混合物を水を除去するために
エバポレーションに供し、ガラス固体とする。そのガラ
ス固体を、粉、さらに加えられる砂糖、重ソウ、香辛
料、およびふくらし粉を含む、他の食品成分と混合す
る。次にこの混合物を、最終食品製造品への調製に必要
となるまで保存する。必要に応じて、その混合物を水と
混合し、ケーキあるいは同様な調製物を焼くのに適切な
バターを作る。卵あるいは他の乳化剤は全く必要でな
い。
【0188】先に明細書および実施例で引用した全ての
文献は、本明細書に参考として全て援用されている。
【0189】エマルジョン技術および薬剤送達の当業者
には、先の実施例に明確に述べたもの(すなわち本発明
のガラス、エマルジョン、多相エマルジョンおよび薬剤
送達物質)以外の代替の技術、手順、方法および試薬
を、目的を達成するのに容易に用い得、あるいは代用し
得ることが、認識される。代替の、しかし機能的には同
等の、試薬、溶媒および方法は、当業者には容易に自明
であり、そして過度の実験を行う事なく本発明へ応用し
得る。代替物、改変体、等価物などは全て、本発明の意
図および範囲に包含されると考えられる。
【0190】
【発明の効果】本発明によって提供される自己乳化型ガ
ラスは、適切な水相(例えば水)と単に接触させること
によって、種々のpHおよび温度条件のもとで安定である
エマルジョンを形成する。このエマルジョンは、界面活
性剤を含まないか、または多種類の界面活性剤を使用し
なくても済み、微細粒子を形成できるため、食品、化粧
品、薬剤用途として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、400nmでの吸光度測定で得られた、時
間(分)の関数で表した濁度のグラフである。グラフで
は、自己乳化型ガラスから作られた2つの水中油滴エマ
ルジョンの濁度を比較している。1つは、外相として水
を含み(黒の菱形)、そしてもう1つは、外相として標
準生理食塩水を含む(白い四角)。同じ成分の物理的混
合物の分散体も示してある(黒の四角)。この自己乳化
型ガラスは、ショ糖および鉱油を6:1の重量比で用い
て調製された。分散体は、エマルジョンと同じ割合の組
成を有するショ糖、鉱油、および水の物理的混合物をボ
ルテックスにかけることによって調製された(20
分)。測定はすべて25℃で行われた。濁度が低下する
ことは、エマルジョンのクラッキングを示すが、これは
相分離により起こるためである。2つのエマルジョンで
は、実験中に相分離はみられなかった。従って、観察さ
れる濁度の低下は、エマルジョン粒子サイズの減少によ
るものである。
【図2】図2は、自己乳化型ガラスから形成されたエマ
ルジョンの導電率を含有重量の関数として表したグラフ
である。水分含有量は、エマルジョン中の水分重量%で
表されている。導電率は、水との相対的導電率として表
している。測定はすべて25℃でなされた。自己乳化型
ガラスは、ショ糖および鉱油を4:1の割合で含んでい
た。
【図3】図3は、ショ糖の鉱油に対する重量の割合が
6:1であるエマルジョンの粘度を25℃で剪断率(r
pm)の関数として表したグラフである。剪断率を増加
させながら(白の四角)および減少させながら(黒の菱
形)測定を行った。
【図4】図4は、本発明の溶媒法によって製造された、
ショ糖−鉱油自己乳化型ガラスのX線回折図である。ガ
ラスの回折図(線B)を、ショ糖と鉱油との物理的混合
物(線A)と比較している。
【図5】図5は、水相と接してW/O/Wエマルジョンを形
成する自己乳化型ガラスの示差走査熱量測定温度記録図
の比較である。温度記録図Aは、マトリックス化合物と
して、ショ糖およびマルトデキストリン(3%重量、ホ
ワイトDi-Pacと命名された混合物)の混合物を用いて調
製したガラスのものである。温度記録図Bは、マトリッ
クス化合物としてショ糖を用いて調製したガラスのもの
である。このグラフでは、標準化した熱流量(ワット/
グラム)を温度(℃)の関数で表してある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 47/26 H 7433−4C B01F 17/00

Claims (95)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 油性物質、および非表面活性水溶性マト
    リックス化合物の混合物を含有する自己乳化型ガラスで
    あって、示差走査型熱量測定装置で測定したときに該ガ
    ラスが約10%から約60%の微晶質であり、該ガラスが十
    分な量の水相と接触すると安定なエマルジョンを形成し
    得る、自己乳化型ガラス。
  2. 【請求項2】 前記マトリックス化合物が、ショ糖、ト
    レハロース、果糖、シクラメート、サッカリン、および
    それらの混合物でなる群から選択される、請求項1に記
    載のガラス。
  3. 【請求項3】 前記マトリックス化合物が、単糖類、二
    糖類、および甘味剤でなる群から選択され、該マトリッ
    クス化合物が少なくともほぼショ糖と同程度に甘い、請
    求項1に記載のガラス。
  4. 【請求項4】 前記マトリックス化合物がショ糖であ
    る、請求項3に記載のガラス。
  5. 【請求項5】 前記混合物がさらにマルトデキストリン
    を含有する、請求項4に記載のガラス。
  6. 【請求項6】 前記油性物質中に脂溶性活性成分をさら
    に含有する、請求項1に記載のガラス。
  7. 【請求項7】 前記脂溶性活性成分が温度感受性活性成
    分である、請求項6に記載のガラス。
  8. 【請求項8】 前記油性物質が油中水型エマルジョンで
    ある、請求項1に記載のガラス。
  9. 【請求項9】 前記油中水型エマルジョンの水相が水溶
    性活性成分を含有する、請求項8に記載のガラス。
  10. 【請求項10】 前記マトリックス化合物の前記油性物
    質に対する重量比が少なくとも約2:1である、請求項
    1に記載のガラス。
  11. 【請求項11】 前記マトリックス化合物の前記油性物
    質に対する重量比が少なくとも約2:1と約20:1との
    間である、請求項2に記載のガラス。
  12. 【請求項12】 粉末状の請求項1に記載のガラス。
  13. 【請求項13】 固体状の請求項1に記載のガラス。
  14. 【請求項14】 前記油性物質が、フルオロデカリン、
    鉱油、ピーナッツ油、植物油、コーン油、大豆油、ベニ
    バナ油、およびオリーブ油でなる群から選択される、請
    求項1に記載のガラス。
  15. 【請求項15】 油性物質、および非表面活性水溶性マ
    トリックス化合物化合物の混合物を含有する自己乳化型
    ガラスであって、該非表面活性水溶性マトリックス化合
    物がポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、マルト
    デキストリン、少なくともほぼショ糖と同程度に甘い甘
    味剤、およびそれらの混合物でなる群から選択され、該
    ガラスが水相と接触すると安定なエマルジョンを形成し
    得る、自己乳化型ガラス。
  16. 【請求項16】 前記マトリックス化合物がポリビニル
    ピロリドンである、請求項15に記載のガラス。
  17. 【請求項17】 粉末状の請求項15に記載のガラス。
  18. 【請求項18】 固体状の請求項15に記載のガラス。
  19. 【請求項19】 前記油性物質中に脂溶性活性成分を含
    有する、請求項15に記載のガラス。
  20. 【請求項20】 前記脂溶性活性成分が温度感受性であ
    る、請求項19に記載のガラス。
  21. 【請求項21】 前記油性物質が油中水型エマルジョン
    を含有する、請求項15に記載のガラス。
  22. 【請求項22】 前記油中水型エマルジョンの水相が水
    溶性活性成分を含有する、請求項21に記載のガラス。
  23. 【請求項23】 前記マトリックス化合物の前記油性物
    質に対する重量比が少なくとも約2:1である、請求項
    15に記載のガラス。
  24. 【請求項24】 前記油性物質が、フルオロデカリン、
    鉱油、ピーナッツ油、植物油、コーン油、大豆油、ベニ
    バナ油、およびオリーブ油でなる群から選択される、請
    求項15に記載のガラス。
  25. 【請求項25】 油性物質、および非表面活性水溶性マ
    トリックス化合物の混合物を含有する自己乳化型ガラス
    であって、該非表面活性水溶性マトリックス化合物の構
    造には、電気的に陰性の原子、極性の結合、および疎水
    性領域を有する三部構成グルコフォア(tripartite gluc
    ophore)が含まれ、該ガラスが十分な量の水相と接触す
    ると安定なエマルジョンを形成し得る、自己乳化型ガラ
    ス。
  26. 【請求項26】 約10%(w/w)から約60%(w/w)の微晶質
    である、請求項25に記載のガラス。
  27. 【請求項27】 前記マトリックス化合物が、ショ糖、
    トレハロース、果糖、シクラメート、サッカリン、およ
    びそれらの混合物でなる群から選択される、請求項25
    に記載のガラス。
  28. 【請求項28】 前記マトリックス化合物が、単糖類、
    二糖類、および甘味剤でなる群から選択され、該甘味剤
    が少なくともほぼショ糖と同程度に甘い、請求項25に
    記載のガラス。
  29. 【請求項29】 前記混合物がさらにマルトデキストリ
    ンを含有する請求項27に記載のガラス。
  30. 【請求項30】 前記油性物質中に脂溶性活性成分をさ
    らに含有する請求項25に記載のガラス。
  31. 【請求項31】 前記脂溶性物質が温度感受性活性成分
    である、請求項30に記載のガラス。
  32. 【請求項32】 前記油性物質が油中水型エマルジョン
    である、請求項25に記載のガラス。
  33. 【請求項33】 前記油中水型エマルジョンの水相が水
    溶性活性物質を含有する、請求項32に記載のガラス。
  34. 【請求項34】 前記化合物の前記油性物質に対する重
    量比が少なくとも約2:1である、請求項25に記載の
    ガラス。
  35. 【請求項35】 粉末状である請求項25に記載のガラ
    ス。
  36. 【請求項36】 固体状である請求項25に記載のガラ
    ス。
  37. 【請求項37】 前記油性物質が、鉱油、ピーナッツ
    油、植物油、コーン油、大豆油、ベニバナ油、およびオ
    リーブ油でなる群から選択される、請求項25に記載の
    ガラス。
  38. 【請求項38】 油性物質および非表面活性水溶性マト
    リックス化合物の混合物を含有する自己乳化型ガラスで
    あって、該非表面活性水溶性マトリックス化合物が、単
    糖類、二糖類、および甘味剤でなる群から選択され、該
    化合物が少なくともほぼショ糖と同程度に甘く、そし
    て、該油性物質が温度感受性の脂溶性活性成分を含有
    し、該ガラスが十分な量の水相と接触するとエマルジョ
    ンを形成し得る、自己乳化型ガラス。
  39. 【請求項39】 前記温度感受性活性成分が薬剤であ
    る、請求項38に記載のガラス。
  40. 【請求項40】 約10%から約60%の微晶質である、請
    求項38に記載のガラス。
  41. 【請求項41】 前記温度感受性活性成分が約140℃よ
    り高い温度で分解する、請求項38に記載のガラス。
  42. 【請求項42】 油性物質および非表面活性水溶性マト
    リックス化合物の混合物を含有する自己乳化型ガラスで
    あって、該非表面活性水溶性マトリックス化合物が、ポ
    リビニルピロリドン、セルロース誘導体、およびマルト
    デキストリンでなるポリマーの群から選択され、該油性
    物質が温度感受性活性物質である脂溶性物質を含有し、
    該ガラスが十分な量の水相と接触すると、エマルジョン
    を形成し得る、自己乳化型ガラス。
  43. 【請求項43】 油中水型エマルジョンおよび非表面活
    性水溶性マトリックス化合物の混合物を含有する自己乳
    化型ガラスであって、該非表面活性水溶性マトリックス
    化合物の構造には電気的に陰性の原子、極性の結合およ
    び疎水性領域を有する、三部構成グルコフォアが含ま
    れ、該ガラスが十分な量の水相と接触すると安定なW/O/
    W型エマルジョンを形成し得る、自己乳化型ガラス。
  44. 【請求項44】 前記マトリックス化合物が、ショ糖、
    果糖、トレハロース、シクラメートおよびサッカリンで
    なる群から選択される、請求項43に記載のガラス。
  45. 【請求項45】 前記マトリックス化合物が、単糖類、
    二糖類、および甘味剤でなる群から選択され、その各々
    が少なくともショ糖と同程度に甘い、請求項43に記載
    のガラス。
  46. 【請求項46】 さらにマルトデキストリンを含有す
    る、請求項43に記載のガラス。
  47. 【請求項47】 前記油中水型エマルジョンの水相が活
    性成分を含有する、請求項43に記載のガラス。
  48. 【請求項48】 油中水型エマルジョンおよび非表面活
    性水溶性ポリマーの混合物を含有する自己乳化型ガラス
    であって、該非表面活性水溶性ポリマーが、ポリビニル
    ピロリドン、セルロース誘導体、およびマルトデキスト
    リンでなる群から選択され、該ガラスが十分な量の水相
    と接触すると安定なW/O/W型エマルジョンを形成し得
    る、自己乳化型ガラス。
  49. 【請求項49】 前記油中水型エマルジョンの水相が活
    性成分を含有する、請求項48に記載のガラス。
  50. 【請求項50】 十分な量の水相と接触したときに安定
    な水中油型エマルジョンを形成し得る自己乳化型ガラス
    を製造する方法であって、次の工程を包含する方法: (a) 油性物質および非表面活性水溶性マトリックス化合
    物、および溶媒を合わせる、安定ではないエマルジョン
    のコンビネーションを形成させる工程であって、該非表
    面活性水溶性マトリックス化合物の構造中には、電気的
    に陰性の原子、極性の結合、および疎水性領域を有す
    る、三部構成グルコフォアが含まれ、そして、該溶媒の
    量が該マトリックス化合物の全てを実質的に溶解させる
    のに十分な量である、工程; (b) ガラスが残留するように、該コンビネーションから
    溶媒を除去する工程。
  51. 【請求項51】 前記非表面活性水溶性マトリックス化
    合物がショ糖、トレハロース、果糖、シクラメートおよ
    び糖類でなる群から選択される、請求項50に記載の方
    法。
  52. 【請求項52】 前記非表面活性水溶性マトリックス化
    合物が、単糖類、二糖類および甘味剤でなる群から選択
    され、その各々が少なくともほぼショ糖と同程度に甘
    い、請求項50に記載の方法。
  53. 【請求項53】 前記溶媒が水性である、請求項50に
    記載の方法。
  54. 【請求項54】 前記非表面活性水溶性マトリックス化
    合物の結晶化の速度よりも速い速度で前記コンビネーシ
    ョンから前記溶媒が除去される、請求項50に記載の方
    法。
  55. 【請求項55】 前記溶媒がロータリーエバポレーター
    を用いて除去される、請求項50に記載の方法。
  56. 【請求項56】 前記非表面活性水溶性マトリックス化
    合物の前記油性物質に対する重量比が少なくとも約2:
    1である、請求項50に記載の方法。
  57. 【請求項57】 前記油性物質に脂溶性活性成分が添加
    される、請求項50に記載の方法。
  58. 【請求項58】 前記脂溶性活性成分が温度感受性であ
    る、請求項57に記載の方法。
  59. 【請求項59】 前記溶媒除去工程が約50℃を下まわる
    温度で行われる、請求項50に記載の方法。
  60. 【請求項60】 前記非表面活性水溶性マトリックス化
    合物の融点を下まわる温度で行われる、請求項50に記
    載の方法。
  61. 【請求項61】 請求項50に記載の方法により製造さ
    れる自己乳化型ガラス。
  62. 【請求項62】 安定な水中油型エマルジョンを調製す
    る方法であって、請求項50に記載の方法により製造さ
    れた自己乳化型ガラスを、十分な量の水相に接触させる
    工程を包含する、方法。
  63. 【請求項63】 前記油性物質が水相および乳化剤を含
    有する、請求項50に記載の方法。
  64. 【請求項64】 十分な量の水相と接触すると安定なエ
    マルジョンを形成し得る自己乳化型ガラスを製造する方
    法であって、次の工程を包含する方法: (a) 油性物質、および非表面活性水溶性ポリマー、およ
    び溶媒を合わせて安定ではないエマルジョンのコンビネ
    ーションを形成させる工程であって、該非表面活性水溶
    性ポリマーが、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導
    体、およびマルトデキストリンでなる群から選択され、
    該溶媒の量が実質的にすべての該ポリマーを溶解させて
    コンビネーションを形成するのに十分な量である、工
    程;および(b) 該自己乳化型ガラスが残留するように、
    該コンビネーションから溶媒を除去する工程。
  65. 【請求項65】 前記溶媒が水性である、請求項64に
    記載の方法。
  66. 【請求項66】 前記溶媒がロータリーエバポレーター
    を用いて除去される、請求項64に記載の方法。
  67. 【請求項67】 前記非表面活性水溶性ポリマーがポリ
    ビニルピロリドンであり、そして前記溶媒がクロロホル
    ムである、請求項64に記載の方法。
  68. 【請求項68】 前記非表面活性水溶性ポリマーの前記
    油性物質に対する重量比が少なくとも約2:1である、
    請求項64に記載の方法。
  69. 【請求項69】 前記油性物質に脂溶性活性成分が添加
    される、請求項64に記載の方法。
  70. 【請求項70】 前記溶媒除去工程が約50℃を下まわる
    温度で行われる、請求項64に記載の方法。
  71. 【請求項71】 前記非表面活性水溶性ポリマーの融点
    を下まわる温度で行われる、請求項64に記載の方法。
  72. 【請求項72】 前記油性物質が水相および乳化剤を含
    有する、請求項64に記載の方法。
  73. 【請求項73】 請求項64に記載の方法により製造さ
    れる自己乳化型ガラス。
  74. 【請求項74】 安定な水中油型エマルジョンを調製す
    る方法であって、請求項64に記載の方法により製造され
    る自己乳化型ガラスを、十分な量の水相に接触させる工
    程を包含する、方法。
  75. 【請求項75】 請求項74の方法により調製されるエ
    マルジョン。
  76. 【請求項76】 十分な量の水相と接触すると、安定な
    水中油中水型エマルジョンを形成し得る自己乳化型ガラ
    スの製造方法であって、次の工程を包含する方法: (a) 非表面活性水溶性マトリックス化合物を有する油中
    水型エマルジョンと、溶媒とを合わせてコンビネーショ
    ンを得る工程であって、該非表面活性水溶性マトリック
    ス化合物の構造中には、電気的に陰性の原子、極性の骨
    格、および疎水性領域を有する、三部構成グルコフォア
    が含有され、該溶媒の量が実質的に全ての該化合物を溶
    解するのに十分な量である、工程;および(b) 該コンビ
    ネーションから該溶媒を除去して、ガラスを残留させる
    工程。
  77. 【請求項77】 前記非表面活性水溶性マトリックス化
    合物が、ショ糖、トレハロース、果糖、シクラメート、
    およびサッカリンでなる群から選択される請求項76に
    記載の方法。
  78. 【請求項78】 前記非表面活性水溶性マトリックス化
    合物が単糖類、二糖類および甘味剤でなる群から選択さ
    れ、その各々が少なくともほぼショ糖と同程度に甘い、
    請求項76に記載の方法。
  79. 【請求項79】 前記溶媒が水である、請求項76に記
    載の方法。
  80. 【請求項80】 前記油中水型エマルジョンに脂溶性活
    性成分が添加される、請求項76に記載の方法。
  81. 【請求項81】 前記油中水型エマルジョンに水溶性活
    性成分が添加される、請求項76に記載の方法。
  82. 【請求項82】 前記溶媒除去工程が約50℃を下回る温
    度で行われる、請求項76に記載の方法。
  83. 【請求項83】 前記非表面活性水溶性マトリックス化
    合物の融点を下まわる温度で行われる、請求項76に記
    載の方法。
  84. 【請求項84】 前記溶媒がロータリーエバポレーター
    を用いて除去される、請求項76に記載の方法。
  85. 【請求項85】 請求項76に記載の方法により製造さ
    れる自己乳化型ガラス。
  86. 【請求項86】 請求項76に記載の方法により製造さ
    れる水中油中水型エマルジョン。
  87. 【請求項87】 十分な量の水相と接触すると安定な水
    中油中水型エマルジョンを形成し得る自己乳化型ガラス
    の製造方法であって、次の工程を包含する方法: (a) ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体およびマ
    ルトデキストリンでなる群から選択される、非表面活性
    水溶性ポリマーを有する油中水型エマルジョンを、実質
    的に全ての該ポリマーを溶解するのに十分な量の水と合
    わせて、コンビネーションを製造する工程;および(b)
    該コンビネーションから該溶媒を除去してガラスを残留
    させる工程。
  88. 【請求項88】 前記溶媒がロータリーエバポレーター
    を用いて除去される、請求項87に記載の方法。
  89. 【請求項89】 前記非表面活性水溶性ポリマーの前記
    油性物質に対する重量比が少なくとも約2:1である、
    請求項87に記載の方法。
  90. 【請求項90】 前記油中水型エマルジョン材料に脂溶
    性活性成分が添加される請求項87に記載の方法。
  91. 【請求項91】 前記工程(a)の油中水型エマルジョン
    の水相に水溶性活性成分が添加される、請求項87に記
    載の方法。
  92. 【請求項92】 前記溶媒除去工程が約50℃を下まわる
    温度で行われる、請求項87に記載の方法。
  93. 【請求項93】 前記非表面活性水溶性ポリマーの融点
    を下まわる温度で行われる請求項87に記載の方法。
  94. 【請求項94】 請求項87に記載の方法により製造さ
    れる自己乳化型ガラス。
  95. 【請求項95】請求項87の方法により製造される水中
    油中水型エマルジョン。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH11506467A (ja) * 1995-06-07 1999-06-08 クアドラント ホールディングス ケンブリッジ リミテッド 乾燥発泡ガラスマトリックス内に物質を安定に配合する方法及びそれによって得られた組成物

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JPH11506467A (ja) * 1995-06-07 1999-06-08 クアドラント ホールディングス ケンブリッジ リミテッド 乾燥発泡ガラスマトリックス内に物質を安定に配合する方法及びそれによって得られた組成物

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