JPH0614753A - 低発酵果汁の製造方法 - Google Patents

低発酵果汁の製造方法

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JPH0614753A
JPH0614753A JP19770092A JP19770092A JPH0614753A JP H0614753 A JPH0614753 A JP H0614753A JP 19770092 A JP19770092 A JP 19770092A JP 19770092 A JP19770092 A JP 19770092A JP H0614753 A JPH0614753 A JP H0614753A
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JP
Japan
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yeast
fruit juice
fermentation
bioreactor
porous body
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Application number
JP19770092A
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English (en)
Inventor
Kazuhiro Aso
和博 阿曽
Etsuo Yoshikawa
悦雄 吉川
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Kanebo Ltd
Original Assignee
Kanebo Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 果汁を酵母で、回分操作により発酵せしめる
方法において、果汁と、タンク内に鉛直方向に略平行と
なるよう適宜間隔を隔して装着した複数枚の板状セラミ
ックス多孔体に固定化した酵母とを固液接触反応せし
め、低発酵の段階で、発酵果汁を取り出すことを特徴と
する。 【効果】 連続運転に伴って、発酵タンク内壁に果汁中
の不溶物と酵母との凝集体が付着したり、あるいは、バ
イオリアクター内にこれらの凝集体が蓄積する事なく、
安定に低発酵果汁を生産することが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発酵度の低い果汁を安
定に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、女性向けとして、また、嗜好の多
様化に対応するために、低アルコール飲料の開発が盛ん
である。係る低アルコール飲料の一つの新しい姿として
アルコール濃度1%未満の低発酵果汁飲料が考えられ
る。しかし、この様な低発酵の果汁飲料を製造する場
合、伝統的なワインの製造に用いられている遊離酵母菌
を用いるタンク発酵では種々の問題がある。例えば、エ
タノール濃度1%前後の低発酵度領域では、糖が豊富で
あり、エタノールによる発酵阻害も無いため、発酵速度
が速く、エタノール濃度は刻々と変化する。したがっ
て、低発酵領域(低アルコール領域)で発酵を停止し製
品とする場合、速やかに発酵を停止させなければ、発酵
が進行して発酵物の発酵度が変化してしまい、安定した
発酵度の製品を供給することは極めて困難である。
【0003】発酵を停止させる方法としては、発酵物中
の酵母を濾過,遠心分離等、何らかの方法で除去した
り、加熱等で酵母を失活させたりする方法があるが、タ
ンク発酵の場合、通常、大容量の果汁を一度に発酵する
ため、発酵終了時の発酵度を維持した状態で発酵を停止
させるには、大容量の発酵物を短時間に処理する必要が
あり、発酵停止のための処理設備が大がかりなものとな
ってしまう。上記の理由から、低発酵度の果汁を生産す
るためには、大容量の発酵槽ではなく、比較的小さな発
酵槽を用い、後工程の能力に合わせて小量ずつ処理しな
ければならない。しかしながら、従来のタンク発酵法で
は、発酵初期、つまり酵母接種時の物質生産速度は非常
に遅いため、小さな発酵槽を用いることは生産速度の低
下につながる。
【0004】そこで、生産効率を良好にする手段として
バイオリアクターがある。ここで言うバイオリアクター
とは、酵母を何らかの形で発酵槽内に高密度で保持した
ものであり、目的とする発酵物を従来の遊離の酵母によ
る発酵よりも高効率で生産しようとするものである。こ
のバイオリアクターの安定性や生産効率は、バイオリア
クターの形態,運転方法等の因子によって左右される
が、とりわけ、固定化酵母の性能が最も重要である。こ
の固定化酵母の性能は、使用する担体により変化するの
で、適切なものを選ぶことが重要であり、これまでに多
くの担体が開発されている。例えば、アルギン酸塩ビー
ズ等の天然多糖類もしくは粒状のセラミック等が挙げら
れる。
【0005】しかしながら、果汁、特に混濁果汁等の不
溶物を含む果汁を原料として用いる発酵の場合、従来の
担体では多くの問題があった。すなわち、上記の様な粒
状の担体に酵母を固定化し、これをエレメントとするバ
イオリアクターを用いて、混濁果汁を原料として連続的
に低発酵果汁の製造を行うと、長期連続運転に併い不溶
物が蓄積凝集し、流路を閉塞する。これは、圧力損失や
チャネリングの原因となるばかりでなく、発酵で生成す
るガスがバイオリアクター内に滞留する原因にもなり、
トラブルの発生を招く。更に、不溶物の蓄積がもたらす
ガスの滞留、チャネリングによって発酵効率が低下した
り、逆に、不溶物を構成する酵母によって発酵速度がむ
やみに上昇し、生産の制御が非常に困難となったりし、
工業的生産上好ましくない事態を招く。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、この様な事
情に鑑みなされたものであって、バイオリアクターの性
能決定の重要な因子である担体に着目すると共に、バイ
オリアクターの運転方法について一連の研究を重ねた結
果達成されたものである。本発明の目的とするところ
は、果汁中の不溶物と酵母との凝集体が蓄積することな
く、果汁の発酵物を安定かつ安価に製造する方法を提供
することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、果汁を酵
母で、回分操作により発酵せしめる方法において、果汁
と、タンク内に鉛直方向に略平行となるよう適宜間隔を
隔して装着した複数枚の板状セラミックス多孔体に固定
化した酵母とを固液接触反応せしめ、低発酵の段階で、
発酵果汁を取り出すことを特徴とする低発酵果汁の製造
方法によって達成される。
【0008】次に、本発明を詳しく説明する。本発明で
使用する果汁は、ぶどう,りんご,みかん,グレープフ
ルーツ,いちご,もも,パイナップル等の混濁果汁,濃
縮果汁,もしくは、これらの混合果汁等が挙げられ、目
的に応じて適宜選定すればよい。また、本発明にて使用
する酵母としては、サッカロマイセスに属するアルコー
ル酵母,ビール酵母,パン酵母,清酒酵母等が挙げられ
る。
【0009】本発明の低発酵果汁の製造においては、例
えば、図1に示すようなバイオリアクターシステムを使
用する。図1は、本発明に係るバイオリアクターシステ
ムの一実施態様例を示す説明図である。同図において、
1はバイオリアクター、2はタンク、3は酵母固定化セ
ラミックス多孔体、4は原料供給ライン、5は通気ライ
ン、6は送気ライン、7はエアフィルター、8は電磁弁
である。本発明に係るバイオリアクター1は、タンク2
内に、酵母を固定化した板状セラミックス多孔体3複数
枚を鉛直方向に略平行となるように間隔を設けて装着し
てなるものである。
【0010】本発明において、上記図1に示すようなバ
イオリアクターシステムを用いての操作は、回分操作に
より行うことが必要である。連続通液操作で行った場
合、バイオリアクター1内に、果汁中の不溶物と酵母と
の凝集体が蓄積し、この蓄積した酵母の凝集体は、バイ
オリアクターによる物質生産を不安定にする。
【0011】本発明の回分操作は、例えば、次のように
して実施する。すなわち、まず、電磁弁8bは、通常、
送気ラインと通じているので、電磁弁8bを原料供給ラ
インに切り替え、果汁を原料タンクより原料供給ライン
4を経てタンク2内に供給する。次に、電磁弁8bを再
び切り替え、送気ラインを開く。次に、コンプレッサー
より送気ライン6を介してガスを吹き込み、電磁弁8b
と原料供給口9の間に溜っている果汁をガスによって吹
き飛ばす。電磁弁8bと原料供給口9との間に溜ってい
る原料をガスによって吹き飛ばすことで、たとえバイオ
リアクター内の酵母が原料供給口9に接触したとしても
原料ライン4、および原料タンクにバイオリアクター内
の酵母が漏出しトラブルを引き起こすことがない。吹き
込むガスは、空気や、炭酸ガス或いは窒素等の不活性ガ
ス等、目的に応じて適宜使用すればよい。
【0012】果汁供給後、酵母固定化セラミックス多孔
体3にて固液接触反応(発酵)を行う。発酵時間は発酵
速度及び目的とする発酵度に合わせて適宜設定すればよ
い。発酵終了後、タンク下部より発酵果汁を排出する。
この後、適当な方法で酵母分離を行う。以上の操作を1
サイクルとし、この操作を連続的に繰り返し行うことに
より、連続して、発酵果汁を製造できる。
【0013】このようにして、特定のバイオリアクター
を用い、回分操作により果汁の発酵を行い、低発酵、例
えば、アルコール濃度1%未満の果汁飲料を製造する
と、果汁中の不溶物が、バイオリアクター内に蓄積する
ことなく、目的とする発酵度の果汁飲料を安定して得る
ことができる。
【0014】また、本発明においては、発酵中数回にわ
たって、間欠的にバイオリアクター内を加圧状態とする
と好適である。バイオリアクター内壁の付着物の発生及
び蓄積は、酵母が発生するガスによって生じる発泡に原
因がある。発酵で発生する泡の直径は、液面から離れる
にしたがって、即ち、泡の層の上面ほど大きくなる。こ
の様に泡の大きさに勾配ができるのは、発生した小さな
泡が互いに融合し、時間の経過と共に大きな泡となり、
この大きな泡が次々に発生してくる小さな泡に押し上げ
られるためである。この泡の成長の過程で、原料中の不
溶物も凝集し、不溶物の凝集体は大きな泡の上面に浮遊
する。この浮遊物がバイオリアクター内壁に接触すると
付着物となってへばり付く。浮遊物は果汁中の不溶物で
あるバルブと酵母の凝集体であるため、付着物の蓄積は
バイオリアクター内の酵母濃度を必要以上に上昇させ、
その結果、発酵速度の上昇を招く。
【0015】したがって、バイオリアクター内を加圧状
態とすることは、大きな泡の抑制に非常に効果的であ
り、その結果、バイオリアクター内壁付着物の蓄積を抑
制し、より長期にわたる安定な連続運転を可能なものと
する。加圧状態は、まず、通気ライン5の電磁弁8aを
閉じ、バイオリアクター1を密閉系とした後、コンプレ
ッサーより送気ライン6を介して、ガスを吹き込む事に
よって行う。
【0016】また、バイオリアクター内の加圧の程度
は、圧力として、0.1〜1.0kg/cm2 とするこ
とが望ましい。加圧の程度を上げると、小さな泡の発生
までも抑制することが可能となるが、高圧に耐える装置
が必要となり、そのためコストが高くなる。また、バイ
オリアクター内の加圧は、一定圧に達した後、一定時間
保持しても良いし、保持せずにすぐに除圧してもよい
が、一定時間保持するほうがより効果的である。
【0017】また、本発明に係るバイオリアクターにお
いて、板状セラミックス多孔体3を装着するタンク2
は、板状セラミックス多孔体3を収納できるものであれ
ばよく、その形状,直径,長さはバイオリアクターの規
模に応じて適宜選択すればよい。タンク2の材質は、不
溶物と酵母の凝集体が付着しにくく、これら凝集体が後
述の洗浄操作によって落ち易いものが好適である。例え
ば、ステンレス、なかでも、SUS304,316が好
ましく、表面を鏡面加工した物がより好適である。ま
た、グラスライニングを施したタンクは濡れがよく、特
に好適である。
【0018】また、板状セラミックス多孔体3の材質
は、アルミナ,ジルコニア,コジェライト,ムライト等
が挙げられる。酵母の多孔体への固定化は、酵母と担体
間の疎水的結合、あるいは、酵母は溶液中で帯電してい
ることから静電的結合によってなされるものであり、酵
母の保持量をあげるためには酵母の表面電位と反対の表
面電位を持つ材質のものが好ましい。すなわち、原料と
なる果汁中における酵母の表面電位は負であるため、果
汁中で正の表面電位を有する材質、例えば、アルミナが
好適である。
【0019】板状セラミックス多孔体3の大きさは、使
用するタンク2の大きさに合わせて適宜設定すればよい
が、小さくともその一辺が50mm以上であることが好
ましい。一辺が50mm未満の場合、板状セラミックス
多孔体を鉛直方向に略平行となるよう、タンク内に装着
することが難しくなり、工業規模での生産には適さな
い。また、板状セラミックス多孔体3は、小さい板状の
セラミックス多孔体を数枚連結させて一枚のセラミック
ス多孔体としてもよい。
【0020】板状セラミックス多孔体の厚みは、多孔体
の気孔径及び果汁の粘性に左右されるのでこれらに応じ
て適宜選ぶ必要があるが、一般にその厚みは、10mm
以下が好ましい。厚みが10mmを越えると、果汁及び
発酵果汁の移動および透過性が低下し、多孔体内部に固
定化された酵母が有効に利用されないため、酵母固定化
担体としての性能が低下してしまう傾向にある。例え
ば、50μmの気孔径を有するセラミックス多孔体に酵
母を固定化して果汁の発酵を行う場合、板状セラミック
ス多孔体内部に固定された酵母を有効利用するためには
その厚みは3mm以下であることが好ましく、2mm以
下が更に好ましい。
【0021】セラミックス多孔体3の孔形状は、球状連
通孔であることが好ましい。孔形状が球状であると他の
形状の場合に比べて多孔体強度が高くなる。また、見か
け容積当りの多孔体表面積が大きい、すなわち、酵母の
固定化量が高いという点では連通孔の比率が高い方が好
ましい。独立気孔(閉気孔)の比率が高くなると酵母を
保持できる空間が少なくなり、多孔体当りの酵母保持量
が少なくなるため固定化酵母の性能が低くなる傾向にあ
る。
【0022】板状セラミックス多孔体の気孔率は、50
〜90%であることが好ましい。気孔率が50%未満の
場合、酵母保持能力が低下する傾向にある。一方、気孔
率が90%を越えると、担体の強度が低下し耐久性が悪
くなる傾向にある。また、板状セラミックス多孔体3の
気孔径は、10〜100μmが好適である。気孔径が1
0μmより小さくなると、酵母を多孔体内部まで固定化
することが難しくなる上、果汁の多孔体内部への拡散が
悪くなり生産効率が低下する傾向にある。一方、気孔径
が100μmより大きくなると、体積当りの表面積が低
下し、酵母の捕捉能が低下する傾向にある。この酵母保
持量の低下は物質生産速度の低下につながる。
【0023】この様な板状セラミックス多孔体3は、例
えば、セラミックスと樹脂とから成る顆粒状物を圧縮成
形により板状に成形し、焼成することによって製造され
る。
【0024】酵母の固定化は、予め酵母を高濃度になる
よう培養した液にセラミックス多孔体3を浸漬するか、
または、培地にセラミックス多孔体3を浸漬した状態で
酵母を培養する等により達成できる。また、この固定化
はタンク2の中で行うと、操作が簡便となるので好まし
い。酵母を固定化した板状セラミックス多孔体の様子を
図2に示す。図2に示されるように、板状セラミックス
多孔体3の内部及び外部表面に、酵母が固定化されてい
る。板状多孔体3のタンク2への装着は、板状セラミッ
クス多孔体3の板状面が、鉛直方向に近い程よく、ま
た、板状セラミックス多孔体3を各々間隔をおいて略平
行に装着するのが、不溶物の堆積及び貯留を防ぐのに最
適である。
【0025】多孔体の充填率は高ければ高いほど、物質
生産速度が速くなるので、充填間隔は狭い程よいが、装
着する板状セラミックス多孔体3の間隔は、果汁の性質
等を考慮して適宜設定すればよい。一般に、通常、0.
5〜5mmが好ましい。間隔が、0.5mmよりも狭く
なると、充填率は上がるが、多孔体間に果汁中の不溶物
と酵母の凝集体が蓄積し易くなり、発酵速度の不安定の
原因となる。間隔が5mmより広くなると、バイオリア
クター内に多孔体の占める割合が小さくなり、バイオリ
アクター内の酵母量が低くなる傾向があり、生産能力の
低下につながる。
【0026】また、本発明は、バイオリアクター内壁へ
の付着物の防止または除去のため、バイオリアクター内
壁を洗浄するようにすると好適である。この洗浄は、生
産効率の低下をきたさないという観点から、果汁または
発酵果汁を壁面に噴射し、タンク内壁を流下させながら
万遍なく洗浄する事が適当である。果汁による洗浄の場
合は、果汁注入口に適当なノズルを設置し、これを通し
て果汁を注入することにより可能であり、発酵果汁を用
いる場合には、循環ポンプを用いて発酵果汁を抜き取
り、別途タンク頂上付近に設けたノズルにより噴射する
ことによりなされる。中でも、果汁を用いて行う方が、
装置が簡単である点、液に酵母が含まれておらず洗浄度
が高いという点で好ましい。
【0027】上記ノズルは、果汁がタンク内壁に万遍な
く行き渡るよう、果汁を噴射することが出来るものとす
る。すなわち、ノズルより噴射された原料液がタンク内
壁の付着物発生面より上部から、タンク内壁全面に広が
って流下する様にする。ノズルの一例としては、スプレ
イノズルがあり、中でも、ホロコーン型スプレイノズル
が好適である。スプレイノズルにはフルコーン型スプレ
イノズルもあるが、フルコーン型の場合、ホロコーン型
の場合に比べ、バイオリアクター内壁に接触する果汁の
量が減るため、内壁洗浄効果が低くなる傾向にあり、更
に、果汁の泡立ちが激しくなる傾向にある。
【0028】更に、本発明においては、前述の発酵中、
数回に渡って間欠的にリアクター内を加圧する操作並び
にバイオリアクター内壁を果汁または発酵果汁で洗浄す
る操作の双方を行うと好適である。2つの操作を行うこ
とにより、更に長期に安定した連続運転が可能となる。
【0029】
【発明の効果】以上のように、本発明の製造方法によれ
ば、連続運転に伴って発酵タンク内壁に果汁中の不溶物
と酵母との凝集体が付着したり、あるいは、バイオリア
クター内にこれらの凝集体が蓄積する事なく、安定に低
発酵果汁を生産することが可能となる。また、本発明の
方法は、低コストで行うことができ、かつ、故障やトラ
ブルが発生せず、低ランニングコストで長期間安定に連
続運転を行うことができ、工業生産上有利である。更
に、本発明の方法によれば、不溶物の発生蓄積が無いの
で、連続的に果汁の品種切り替えも可能である。次に、
本発明を実施例を挙げて具体的に説明する。
【0030】
【実施例1】平均粒子径0.5μmのアルミナ粉体10
0重量部(以下、部と記す)、ポリビニルアルコール3
部及びポリカルボン酸系分散剤0.5部より成る水性ス
ラリーより、スプレードライヤーを用いて75μm径の
粒状物を製造した。次に、得られた粒状物とスチレン/
メタクリル酸メチルの共重合樹脂より成る平均粒径10
0μmの樹脂ビーズとを体積分率で25対75となるよ
うに配合し、バインダーと水とを添加しながら攪拌し、
造粒した。これを乾燥させ、粒径が350〜400μm
となる様に整粒して、顆粒とした。この顆粒を1000
kg/cm2 の圧力で乾式プレスにて板状に成型した
後、ガス炉で500℃にて1時間の脱脂を行い、次い
で、同じガス炉で1600℃にて3時間焼成し、板状セ
ラミックス多孔体を得た。この板状セラミックス多孔体
の物性値は表1に示すものであった。
【0031】
【表2】
【0032】次に、前述した図1に示す様なバイオリア
クターシステムを用い、果汁の低発酵を行った。すなわ
ち、先に得た厚さ2mm,高さ50mmのセラミックス
板150mlを適切な幅に切断し、タンク内壁をホーロー
加工した恒温ジャッケット付きの内径110mm,高さ
180mmの円筒型タンク2に、鉛直方向に略平行とな
るように3mm間隔で装着した。タンク2ごと120℃
で15分間滅菌処理を行った後、サッカロマイセスセロ
ビジエOC−2酵母を接種したYM培地400mlを添加
し、30℃で24時間培養し、セラミックス多孔体に酵
母を固定化した。酵母の固定化に用いた培地を排出後、
100%混濁グレープ果汁を送液し、0.7%エタノー
ル含有低発酵グレープ果汁の製造を試みた。
【0033】尚、バイオリアクターの操作法は、反復回
分法とし、発酵のサイクルを44分とした。すなわち、
まず、通気ライン5の電磁弁8bを開いて開放状態と
し、800ml/分で450mlの果汁の供給を行った。次
に、三方電磁弁8cを切り替え、送気ライン側とし、コ
ンプレッサーより空気を吹き込み、原料供給ライン4の
先端に溜っている果汁をバイオリアクター1内に除去し
た。その後、約40分間発酵を行った。
【0034】
【実施例2】発酵中、加圧操作を行い、他は、実施例1
と同様にして100%混濁グレープ果汁の低発酵を行っ
た。すなわち、発酵中は、13分おきに空気を吹き込
み、バイオリアクター内を加圧することで5mm以上の
大きな泡の発生を抑制もしくは消泡した。この空気の送
気は、まず、通気ライン5の電磁弁8bを閉じてバイオ
リアクターを密閉状態とし、その状態でコンプレッサー
より送気ライン6を介して空気を送気した。このとき、
バイオリアクター内の圧力は、0.3kg/cm2 に制
御した。また、加圧時間は30秒間とした。
【0035】
【実施例3】実施例2において、原料供給口9の先端
に、ホロコーン型スプレーノズルを配設して、原料をタ
ンク内壁に噴射するようにした他は、実施例2と同様に
して100%混濁グレープ果汁の低発酵を行った。
【0036】
【比較例1】実施例1で得た厚さ2mm,高さ50mm
のセラミックス板150mlを適切な幅に切断し、タンク
内壁をホーロー加工した恒温ジャケット付きの内径52
mm,高さ60mmの円筒型タンク2に、鉛直方向に略
平行となるように3mm間隔で装着した。タンク2ごと
120℃で15分間滅菌処理を行った後、サッカロマイ
セスセロビジエOC−2酵母を接種したYM培地270
mlを添加し、30℃で24時間培養しセラミックス担体
に酵母を固定化した。酵母の固定化に用いた培地を排出
後、反復回分操作ではなく、連続的に800ml/分で1
00%混濁グレープ果汁を通液し、0.7%エタノール
含有発酵グレープ果汁の製造を試みた。
【0037】上記実施例1,2,3および、比較例1の
方法によって得られた低発酵果汁のエタノール濃度を経
日的に測定した。その結果を図3に示す。曲線A,曲線
B,曲線C,曲線Dはそれぞれ実施例1,実施例2,実
施例3,比較例1の得られた低発酵果汁のエタノール濃
度の経日変化を示している。
【0038】図3から明らかなように、連続通液法(比
較例1)よりも回分法(実施例1,2,3)のほうがよ
り安定な運転ができたことがわかる。ガス送気により間
欠加圧を行った場合(実施例2)、20日以上に渡って
より安定な連続運転を行うことができた。また、ノズル
を配設した場合(実施例3)、更に安定な連続運転がで
きた。また、20日間連続運転を行った後、タンク内壁
に付いた、付着物の重量を測定した。その結果を表2に
示す。
【0039】
【表2】
【0040】表2の結果より、間欠的に加圧を行った場
合のバイオリアクター内壁の付着物量は、そうでない場
合の約1/5であり、間欠的加圧によって、発生する大
きな泡を抑制もしくは消泡することは、バイオリアクタ
ー内壁への付着物の抑制に効果があることは明らかであ
る。また、実施例3の場合、より付着物発生の抑制効果
があった。
【0041】
【実施例4】実施例1で得た2×100×100mmの
セラミックス多孔体の板を4×120×120mmの恒
温ジャッケット付き直方型容器に装着し、実施例1と同
様の方法でバイオリアクターを得た。酵母の固定化に用
いた培地を排出した後、100%混濁グレープ果汁を送
液し0.7重量%発酵グレープ果汁の製造を試みた。
【0042】
【比較例2】実施例1で得たセラミックスを4mm角に
切断しこのセラミックス片150mlを実施例1と同様の
反応器に無秩序に充填し実施例1と同様の方法で酵母固
定化セラミックスをエレメントとするバイオリアクター
を得た。酵母の固定化に用いた培地を排出後100%混
濁グレープ果汁を反応器に連続的に送液し、25℃で
0.7%エタノール含有の発酵グレープ果汁の製造を試
みた。
【0043】実施例4および比較例2の発酵速度を経日
的に測定した。発酵速度は空間速度(1時間当り反応器
容量の何倍量の発酵果汁が生産できるか)で表した。そ
の結果を図4に示す。曲線D,曲線Eはそれぞれ実施例
4,比較例2の発酵速度の経日変化を示している。図4
の結果より、板状セラミックスをリアクターエレメント
とする反応器を用いた場合安定な長期連続運転が可能で
あることがわかる。板状セラミックス多孔体の微細構造
が同じであるにも関わらず安定性に差が生じたのは板状
構造がいかに優れているかを示すものである。
【0044】
【実施例5】表3に示す種々の細孔径,及び気孔率を有
するセラミックス多孔体10mlをサッカロマイセスセロ
ビジエW−3酵母1白金耳を接種した50mlYM培地に
添加し、25℃で48時間培養し酵母を板状セラミック
スに固定化した。この酵母固定化板状セラミックス多孔
体に1.5倍濃縮グレープフルーツ果汁90mlを添加
し、反復回分方式で振とう下、25℃で繰り返し発酵を
行った。各々の発酵は発酵果汁のエタノール濃度が0.
9%になった時終了し、次の発酵を行った。発酵速度
は、5回の繰り返し発酵の平均を取った。その結果を表
3にあわせて記す。この結果より、細孔径が10〜45
μmまでは、発酵速度は細孔径に依存しないが、600
μmを越えると低下する事がわかる。
【0045】
【表3】
【0046】
【実施例6】実施例1で得た厚さ2mmの板状セラミッ
クス多孔体を、充填率を変えて内径52mm高さ180
mmの円筒型タンクに略平行に装着した。板状セラミッ
クス多孔体の充填率は、板状セラミックス多孔体の装着
間隔を、表4に示すように、0.5〜5mmと変化させ
ることにより、変化させた。
【0047】
【表4】 *)充填率=(板状セラミックス多孔体の見かけの体
積)/(原料の体積+板状セラミックス多孔体の見かけ
の体積)
【0048】板状セラミックス多孔体を装着後、タンク
ごと120℃、15分間滅菌処理を行った。ついで、O
C−2酵母を固定化した後、100%混濁グレープ果汁
を通液し、25℃で、0.7重量%エタノール含有の低
発酵グレープ果汁の製造を試みた。それぞれの充填率に
対する発酵速度を図5に示す。
【0049】図5の結果より、発酵速度は、充填率に比
例して上昇しているが、充填率0.49(多孔体の間隔
1mm)から、充填率0.63(多孔体の間隔0.5m
m)への上昇は小さかった。これは、板状セラミックス
多孔体の間隔が0.5mmより小さくなると、バイオリ
アクターに充填した担体当りの発酵速度、すなわち発酵
効率が低下する傾向があることを意味しており、原因
は、ガス抜け性の低下や不溶物の多孔体間への蓄積によ
り、セラミック構造体の有効面積が低下したためと思わ
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るバイオリアクターシステムの一実
施態様例を示す説明図。
【図2】酵母を固定化した板状セラミックス多孔体を示
す拡大説明図。
【図3】実施例及び比較例の低発酵果汁のエタノール濃
度の経日変化を示す説明図。
【図4】発酵速度の経日変化を示した線図。
【図5】発酵速度と充填率の関係を示した線図。
【符号の説明】
1 バイオリアクター 2 タンク 3 酵母固定化セラミックス多孔体 4 原料供給ライン 5 通気ライン 6 送気ライン 7 エアーフィルター 8 電磁弁 9 原料供給口

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 果汁を酵母で、回分操作により発酵せし
    める方法において、果汁と、タンク内に鉛直方向に略平
    行となるよう適宜間隔を隔して装着した複数枚の板状セ
    ラミックス多孔体に固定化した酵母とを固液接触反応せ
    しめ、低発酵の段階で、発酵果汁を取り出すことを特徴
    とする低発酵果汁の製造方法。
JP19770092A 1992-06-30 1992-06-30 低発酵果汁の製造方法 Pending JPH0614753A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2164565A1 (es) * 1999-10-21 2002-02-16 Cazorla Lidia Mingorance Procedimiento para la obtencion de un producto derivado del zumo de naranja que implica la modificacion de su composicion quimica por un proceso de fermentacion dirigida y natural mediante el empleo de levaduras alcoholeras.
CN105441277A (zh) * 2015-12-09 2016-03-30 燕山大学 一种红景天樱桃酒及其制备方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2164565A1 (es) * 1999-10-21 2002-02-16 Cazorla Lidia Mingorance Procedimiento para la obtencion de un producto derivado del zumo de naranja que implica la modificacion de su composicion quimica por un proceso de fermentacion dirigida y natural mediante el empleo de levaduras alcoholeras.
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