JPH06145808A - 耐衝撃性の優れた複合組織冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

耐衝撃性の優れた複合組織冷延鋼板の製造方法

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JPH06145808A
JPH06145808A JP4326228A JP32622892A JPH06145808A JP H06145808 A JPH06145808 A JP H06145808A JP 4326228 A JP4326228 A JP 4326228A JP 32622892 A JP32622892 A JP 32622892A JP H06145808 A JPH06145808 A JP H06145808A
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Aoshi Tsuyama
青史 津山
Yoshihiro Hosoya
佳弘 細谷
Yasunori Osaki
恭紀 大崎
Yasuyuki Takada
康幸 高田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 衝突時などに生じる衝撃変形に対して強い複
合組織冷延鋼板の製造方法を提供する。 【構成】 wt.%で所定量のC、Si、Mn、P、S、sol.A
l、N、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物より成
る鋼スラブに、仕上げ温度FT及び巻取温度CTを所定式範
囲内とする熱間圧延を施した後、冷間圧延して得られた
鋼板を、Ac1〜Ac3温度域に加熱して20秒〜3分保持し
た後、5〜200 ℃/secの冷却速度で350 〜480 ℃の温度
域まで冷却し、該温度域で30秒〜10分保持後に室温まで
冷却する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐衝撃性の優れた複合
組織冷延鋼板の製造方法に係り、衝突時などに生じる衝
撃変形に対して強い鋼板を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境保全の見地から自動車の
燃費向上が望まれており、その達成を目的として車体を
軽量化しようとする動きが活発になっている。即ちこの
ため、自動車に使用される鋼板を薄くすることにより車
体重量を軽減し、薄肉化にともなう車体強度の低下を鋼
板の高強度化によって補っているわけであるが、一方で
自動車用鋼板に対する高延性化の要求はますますきびし
くなっており、高強度と高延性を兼ね合わせた素材が期
待されている。
【0003】このような要求に対して、残留オーステナ
イトの加工誘発変態を利用することにより、引張強さ8
0 kgf/mm2 以上で30%以上の破断伸びを有する鋼板
が特開昭60−43430公報、特開昭61−2175
29公報などで提案されている。従来から使われている
フェライト・マルテンサイト2相鋼(Dual-Phase鋼)と
比べると、これらの鋼板は同じ強度レベルでもプレス成
形性に優れており、形状がきびしいゆえに高強度材の適
用が不可能であった部材に対してこれらの鋼板を適用す
ることにより、自動車車体の軽量化に貢献しうるもので
ある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、自動車車体の
設計において最優先されるのは乗員の安全を確保するこ
とであり、事故の際に受ける衝撃に対して車体が脆いも
のであったならば、乗員の安全を保証できない。そこ
で、事故の際にフロントやリヤの部分が変形することで
衝撃を吸収するような車体構造が考えられているが、乗
員を取り囲む部材については衝撃に対して強いものでな
ければならない。そのためには車体構造の最適化ととも
に、車体に使われる鋼板自体の耐衝撃性を向上させるこ
とが必須である。
【0005】ところが、残留オーステナイトを含有する
鋼板に関して、耐衝撃性に言及しているのは上記した特
開昭61−217529公報のみであり、清浄かつ細粒
化したフェライト相を存在させることにより局部伸びが
大きくなり、その結果、プレス成形品の耐衝撃性が向上
するとしているが、実際の耐衝撃性に関するデータは開
示されていない。残留オーステナイトを含有する鋼板の
耐衝撃性について本発明者らが検討した結果、このよう
なフェライト相の制御だけでは十分な耐衝撃性を確保す
ることはできないことが判明した。即ち、従来の方法で
は実用的に満足し得る耐衝撃性は得られないことがわか
った。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
残留オーステナイトを含有する鋼板の耐衝撃性を支配す
る組織的因子について検討を重ねた結果、残留オーステ
ナイトの形態が耐衝撃性に大きく影響することを知見し
た。そして、耐衝撃性に対して好ましい残留オーステナ
イトの形態が得られる化学成分および製造プロセスを見
出し、本発明に至ったものであり、その構成は以下のと
おりである。
【0007】(1) wt%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.
6〜2.3%、Mn:0.8〜2.3%、P:0.02%以下、S:
0.01%、 sol.Al :0.02〜0.06%、N: 0.008%以下を
含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼スラ
ブに、仕上温度FTおよび巻取温度CTを下記する式
(1)および式(2)の範囲とする熱間圧延を施した
後、冷間圧延を施して得られた鋼板を、AC1〜AC3の温
度域に加熱して20秒〜3分保持した後、5〜200℃
/sec の冷却速度で350〜480℃の温度域まで冷却
し、この温度域で30秒〜10分保持してから室温まで
冷却することを特徴とする耐衝撃性の優れた複合組織冷
延鋼板の製造方法。 FTmin ≦ FT(℃) ≦ FTmax ・・・・ (1) CTmin ≦ CT(℃) ≦ CTmax ・・・・ (2) ただし、 FTmax = 5{-10C(wt%) + Si(wt%) - 2Mn(wt
%)}+ 893 FTmin = 5{-10C(wt%) + Si(wt%) - 2Mn(wt%)}+ 835 CTmax = 4{-15C(wt%) + 3Si(wt%) + Mn(wt%)}+ 630 CTmin = 4{-15C(wt%) + 3Si(wt%) + Mn(wt%)}+ 564
【0008】(2) wt%で、Ti: 0.005〜0.05%、Nb:
0.005〜0.05%、ただしTiとNbの合計は 0.005〜0.05%
の範囲、B:0.0005〜0.003 %のうちから選ばれる1種
または2種以上の元素を含有することを特徴とする前記
(1)項に記載した耐衝撃性の優れた複合組織冷延鋼板
の製造方法。
【0009】
【作用】上記したような本発明について仔細を説明する
と、本発明者等はwt%(以下単に%という)で、C:0.
08%、Si:0.94%、Mn:1.57%、P: 0.008%、S:0.
004%、 sol.Al : 0.035%、N:0.0032%を含有する
鋼スラブを溶製し、仕上温度(FT)と巻取温度(C
T)を種々に変化させて熱間圧延を行った。さらに冷間
圧延によって1.6mm厚の鋼板とした。
【0010】上述したようにして得られた冷延鋼板に対
して825℃、1分の加熱保持後、冷却速度60℃/se
c で425℃まで冷却し、5分間の等温保持を行った
後、室温まで冷却する連続焼鈍を施した。0.5%の調質
圧延後に得られた製品について、衝撃試験を行った。こ
の衝撃試験には容量5 kgf・m のシャルピー衝撃試験機
を用い、試験片形状は全厚、2mmVノッチとして、室温
(20℃)で試験を行った。なお、プレス成形後の耐衝
撃性を調査する意味で、10%の引張ひずみを与えてか
ら衝撃試験片を採取した。
【0011】上記のようにして得られた結果を図1に示
すが、仕上温度と巻取温度の両方が適正な範囲にあると
きに初めて衝撃値の値が高くなっていることがわかる。
本発明者らは、このように熱間圧延時の仕上温度や巻取
温度によって衝撃値が異なってくる理由についてさらに
調査した結果、マトリックスであるフェライトやベイナ
イトの形態、および残留オーステナイトの形態が強く影
響することがわかった。
【0012】低温巻取によって熱延板中の炭化物を微細
とすることで、焼鈍後の残留オーステナイトも微細に分
散する。このような組織の場合、引張試験程度のひずみ
速度で変形させると加工誘発変態が効果的に生じるた
め、強度・延性バランスの点では好ましい。しかし、衝
撃的な変形を受けた場合には、クラック先端部分の微細
なオーステナイトは容易に硬いマルテンサイトに変態
し、周囲のマトリックスとの界面に新たなクラックを生
じるため衝撃に対してはかえって脆くなってしまう。こ
こで、残留オーステナイトをある程度大きくすると、オ
ーステナイト自体が衝撃を吸収することにより耐衝撃性
は向上する。しかし、巻取温度を高くしすぎると炭化物
が粗大になりすぎて、連続焼鈍時に完全には再固溶しな
いことから、かえって耐衝撃性が劣化する。一方、マト
リックス自体は微細であることが耐衝撃性に対しては好
ましい。したがって、マトリックスが粗大化しないよう
な仕上温度とする必要がある。
【0013】本発明者らは、さらに化学成分の影響につ
いて調査した結果、耐衝撃性を良好なものとする仕上温
度および巻取温度の最適範囲は、C量、Si量、Mn量の関
数となっていることを見いだした。C量、Si量、Mn量を
変化させた鋼について、種々の仕上温度で熱間圧延を施
してから、上記同様に冷間圧延、連続焼鈍、調質圧延を
行なって、衝撃試験を行った結果を図2に示した。
【0014】また、種々の巻取温度で熱間圧延を施した
場合の結果を図3に示すが、仕上温度および巻取温度の
最適範囲は、C量、Si量、Mn量によって異なっており、
例えば、図3で巻取温度が650℃一定であっても、C
量、Si量、Mn量によって衝撃値が高くなる場合とそうで
ない場合があることがわかる。ここで、C:0.05〜0.25
%、Si:0.6〜2.3%、Mn:0.8〜2.3%でない場合で
も、この関数の値が本発明範囲に入ることがあり得る。
しかし、このような場合には後述するように仕上温度や
巻取温度にかかわらず衝撃値が低下する。
【0015】以上説明したように、耐衝撃性を向上させ
るためには、化学成分および熱間圧延時の仕上温度と巻
取温度を適正化することにより、マトリックスと残留オ
ーステナイトの形態を最適なものとすることが非常に重
要であることがわかった。即ち本発明者らは、その他の
元素や連続焼鈍の条件についても検討を行ない、これら
の結果として得られたのが上記したような本発明であっ
て、斯かる本発明の化学成分の限定理由は以下のとおり
である。
【0016】C:0.05〜0.25% Cは、過冷オーステナイトがベイナイトに変態していく
過程オーステナイト中へ濃化し、オーステナイトを安定
化することで残留オーステナイトを生成させる。また、
ベイナイトやマルテンサイトを強化するため、鋼の衝撃
吸収エネルギーが上昇する。これらの効果を発揮するた
めには0.05%以上のC添加を必要とする。一方、0.25%
を越えて添加すると残留オーステナイト量は増えるもの
の、加工誘発変態によって生じるマルテンサイトが硬く
て脆いものになってしまい、本発明による製造方法をも
ってしても耐衝撃性の劣化は避けられない。よってCの
上限を0.25%とする。図4にこのC含有量による衝撃値
の変化を示すが、C量を0.06%以上0.1%未満とするこ
とにより、さらに耐衝撃性を向上させることができる。
【0017】Si:0.6〜2.3% Siは、オーステナイト中へのCの濃化を促進し、残留オ
ーステナイトの生成を容易にする作用があり、強度レベ
ルの上昇による耐衝撃性の向上に効果があることから、
0.6%以上の添加が必要である。しかし、過剰な添加は
かえってフェライトの脆化を招き、耐衝撃性を劣化させ
ることになる。従って添加量を2.3%以下に限定する。
図5にSi含有量による衝撃値の変化を示すが、Si量を0.
8%以上1.6%以下とすることにより、さらに耐衝撃性
を向上させることができる。
【0018】Mn:0.8〜2.3% Mnは、フェライト・パーライト変態のノーズを長時間側
へ移行するため、ベイナイト変態による残留オーステナ
イトの生成には不可欠な元素である。しかも鋼を強化し
て優れた耐衝撃性を得るために必要である。これらの作
用は0.8%未満の添加では発揮されないため、0.8%を
下限とする。一方、過剰に添加するとバンド状組織が生
じ、かえって耐衝撃性が劣化する。よってその上限を2.
3%とする。図6にはこのMn含有量による衝撃値の変化
を示すが、Mn量を1.0%以上1.9%以下とすることによ
り、さらに耐衝撃性を向上させることができる。
【0019】P:0.02%以下 Pは、過剰に添加すると粒界偏析により脆化を引き起こ
し、耐衝撃性を劣化させるため少ない方がよい。従っ
て、本発明では0.02%以下に限定する。
【0020】S:0.01%以下 Sは、MnSのような介在物となって鋼の耐衝撃性を著し
く劣化させるため、できるだけ少ない方が望ましい。従
って、本発明では0.01%以下に限定する。
【0021】sol.Al :0.02〜0.06% sol.Al は、脱酸元素であり、鋼中の酸素による耐衝撃
性の劣化を防ぐためには0.02%以上の添加を必要とす
る。しかし、過剰に添加すると却って耐衝撃性が劣化す
ることから上限を0.06%とする。
【0022】N: 0.008%以下 Nは、鋼の耐衝撃性を劣化させるため、できるだけ少な
い方が望ましい。従って、本発明では 0.008%以下に限
定する。
【0023】本発明における基本元素は以上のとおりで
あるが、更に以下の元素を添加することによって、耐衝
撃性を一層向上させることが可能となる。即ち、Ti、Nb
はいずれも強力な炭窒化物形成元素であって、微細炭窒
化物によってマトリックスを微細化し、Bは鋼に固溶す
ることでマトリックスを微細化するため、耐衝撃性が向
上する。この効果を得るためには、Ti、Nbについては
0.005%以上、Bについては0.0005%以上の添加を必要
とする。しかし、過剰に添加するとTiC 、BNなどの炭
窒化物が多く析出し、この析出物が鋼の耐衝撃性を劣化
させる。従って、Ti、Nbについてはそれぞれ0.05以下、
ただし複合添加する場合には合計で0.05%以下、Bにつ
いては 0.003%以下に限定する。
【0024】なお、Ca、REM はMnS などの介在物の形状
を制御する元素であり、合計で0.02%以下の範囲で添加
することは、鋼の耐衝撃性を向上させる上で好ましいこ
とである。
【0025】次に本発明の製造方法における限定理由に
ついて述べると、上記化学成分を含有する鋼スラブに熱
間圧延を施すにあたって、仕上温度FTおよび巻取温度
CTを下記式(1)および式(2)の範囲とすることが
本発明においては非常に重要である。 FTmin ≦ FT(℃) ≦ FTmax ・・・・ (1) CTmin ≦ CT(℃) ≦ CTmax ・・・・ (2) ただし、 FTmax = 5{-10C(wt%) + Si(wt%) - 2Mn(wt
%)}+ 893 FTmin = 5{-10C(wt%) + Si(wt%) - 2Mn(wt%)}+ 835 CTmax = 4{-15C(wt%) + 3Si(wt%) + Mn(wt%)}+ 630 CTmin = 4{-15C(wt%) + 3Si(wt%) + Mn(wt%)}+ 564
【0026】仕上温度がFTmax を超えると、マトリッ
クスが微細にならないため、耐衝撃性が劣化する。一
方、仕上温度をFTmin 未満とした場合、再結晶時にフ
ェライトが異常粒成長を起こすことがあり、マトリック
スが粗大なものとなるため、耐衝撃性が劣化する。しか
も、圧延時の負荷が大きくなり過ぎることと、目的とす
る巻取温度を確保することが困難になることも、工業的
観点からは問題となる。ここで、仕上温度の上下限には
鋼の変態点が影響しており、C量、Si量、Mn量によって
異なるものである。
【0027】巻取温度をCTmin 未満にすると、熱延板
中の炭化物が微細に分散し、焼鈍後に微細な残留オース
テナイトを含む組織となり、耐衝撃性の点からは好まし
くない。また、巻取温度がCTmax を超えると、熱延板
中の炭化物が粗大になりすぎて、連続焼鈍時に完全には
再固溶しないことから却って耐衝撃性は劣化する。ここ
で、巻取温度の上下限は、C量、Si量、Mn量によって異
なる。例えば、C量が多くなると熱延板中の炭化物が大
きくなりやすいため、巻取温度を低くすることで炭化物
の粗大化を防ぐ必要がある。また、Si量が多くなるとC
の拡散が遅くなり、Mn量が多くなると変態点が下がる。
何れにしても、炭化物が微細化しやすくなるため、巻取
温度を高くすることで炭化物が微細化しすぎないように
する必要がある。
【0028】このようにして得られた熱延板を冷間圧延
した後に連続焼鈍するわけであるが、この連続焼鈍の条
件が適正でないと、耐衝撃性に関して好ましくない組織
となってしまう。焼鈍時の加熱温度がAC1未満であると
オーステナイトへの逆変態が起こらず、残留オーステナ
イト、ベイナイト、マルテンサイトを得ること自体が不
可能であり、強度レベルが大幅に低下して耐衝撃性が劣
化する。一方、AC3を超える場合には、完全にオーステ
ナイト化されてしまうために、熱間圧延時の低温仕上に
よるマトリックス微細化の効果が損なわれてしまう。従
って、焼鈍時の加熱温度をAC1〜AC3に限定する。上述
した温度域での保持時間が20秒より短いと均質な2相
組織が得られず。3分より長いとマトリックスの粗大化
をまねく。従って、焼鈍時の加熱保持時間は20秒〜3
分とする。
【0029】AC1〜AC3の温度域から350〜480℃
の温度域まで冷却するにあたって、冷却速度が5℃/se
c 未満の場合、パーライトが多量に析出する。一方、2
00℃/sec を超えると残留オーステナイトが外力に対
して不安定なものになってしまう。何れにせよ、耐衝撃
性の劣化を招くため、冷却速度を5〜200℃/secに
限定する。なお、この範囲において冷却速度が変化して
も何らさしさわりはない。
【0030】上記の急冷は350〜480℃で終了し保
持をする必要がある。この温度が350℃より低いとC
が拡散しにくいため、過冷オーステナイトへのCの濃化
が困難であり、マルテンサイトの体積率が多くなりすぎ
る。一方、480℃よりも高いと多量に炭化物を析出す
るため、何れにしても耐衝撃性が劣化することとなる。
なお、350〜480℃の範囲であれば保持中に温度が
変化してもさしつかえはない。
【0031】350〜480℃での保持時間が30秒よ
りも短いとベイナイト変態にともなうCの濃化が不十分
であり、マルテンサイトの体積率が多くなりすぎる。一
方、10分よりも長くなると過冷オーステナイトのほと
んどがベイナイトに変態してしまい、強度レベルが低下
する。いずれにせよ耐衝撃性が劣化するため、保持時間
は30秒〜10分に限定する。
【0032】
【実施例】
(実施例1)本発明によるものの具体的な実施例につい
て以下説明する。本発明者らが具体的に採用した本発明
例および比較例による代表的な鋼の化学成分は次の表
1、表2、表3に示すとおりであって、鋼A1〜R2は
本発明例であり、鋼a〜lは比較例である。この中で、
鋼A2〜R2については、基本成分に加えてTi、Nb、
B、Caのうち1種または2種以上の元素を添加してい
る。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】上述した表1、表2、表3のような組成を
もった各鋼スラブを溶製、鋳造し、1200℃に加熱した
後、仕上温度を860℃、巻取温度を620℃として熱
間圧延を施し、3.2mm厚の鋼板とした。なお、上記の仕
上温度、巻取温度はいずれの鋼についても式(1)およ
び式(2)を満たしている。酸洗の後、冷間圧延によっ
て1.2mm厚の鋼板とした。このようにして得られた冷延
鋼板に対して、825℃で60秒加熱した後、60℃/
sec の冷却速度で425℃まで冷却し、引き続き425
℃で5分の保持を行った後に室温まで冷却する連続焼鈍
を施した。0.3%の調質圧延後に得られた製品につい
て、衝撃試験を行なった。衝撃試験には容量5 kgf・m
のシャルピー衝撃試験機を用い、試験片形状は全厚、2
mmVノッチとして、室温(20℃)で試験を行なった。
なお、プレス成形後の耐衝撃性を調査する意味で、10
%の引張ひずみを与えてから衝撃試験片を採取した。
【0037】前記試験片に対する衝撃試験によって得ら
れた衝撃値を次の表4、表5に示す。この結果による
と、本発明による試料 No.1A〜42Aは、衝撃値が2
0 kgf・m /cm2 以上であり、耐衝撃性に優れているこ
とが明らかである。特に、試料No.25A〜42Aは、T
i、Nb、B、Caを添加することにより、耐衝撃性が一層
向上している。例えば、試料 No.6Aと25Aを比較す
ると、Tiの添加により衝撃値が4 kgf・m /cm2 程度大
きくなっていることがわかる。ただし、試料 No.37A
はBの添加量が不十分なため、基本成分は同じでBを添
加していない試料No.21Aと比較すると、衝撃値がほ
とんど変わらないことがわかる。これに対し、鋼の化学
成分が本発明の範囲外である試料 No.1B〜12Bはい
ずれも衝撃値が低くなっており、化学成分のうち1つで
も本発明の範囲から外れると耐衝撃性に問題が生じるこ
とが明らかである。
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】(実施例2)前記した表1、表2、表3に
おける本発明例の鋼スラブのうちいくつかを用いて、12
00℃に加熱した後、種々の仕上温度および巻取温度で熱
間圧延を施し、3.2mm厚の鋼板とした。その後、実施例
1と同じ条件で酸洗、冷間圧延、連続焼鈍、調質圧延を
施してから、実施例1と同様に衝撃試験を行った。この
試験結果を次の表6、表7に示す。なお、表6、表7に
は、熱間圧延時の仕上温度FT、巻取温度CT、化学成
分から決定される仕上温度の上下限および巻取温度の上
下限(それぞれ、FTmax 、FTmin 、CTmax 、CT
min )を併せて示してある。
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】即ち、本発明例である試料 No.43A〜4
8A、および比較例である試料 No.13B〜16Bは、
いずれも鋼 No.H2を素材として仕上温度および巻取温
度を変化させているが、この結果より仕上温度もしくは
巻取温度のいずれか一方でも式(1)、(2)から外れ
た場合には、衝撃値が大幅に低下することがわかる。ま
た、本発明例である試料 No.49A〜51A、および比
較例である試料 No.17Bは、化学成分の異る鋼スラブ
を同一の仕上温度および巻取温度で熱間圧延している。
試料 No.49A〜51Aについては仕上温度が式(1)
を、巻取温度が式(2)を満たしており、何れの試料に
ついても20 kgf・m /cm2 以上の良好な衝撃値が得ら
れている。
【0044】試料 No.17BだけはFT>FTmax とな
っており、式(1)を満たしていないことから、衝撃値
が低下していることがわかる。その他、試料 No.52A
〜62Aおよび試料 No.18B〜20Bの結果より、同
一の仕上温度および巻取温度であってもC量、Si量、Mn
量によって仕上温度または巻取温度の上下限が変化する
ことから、式(1)もしくは式(2)を満たす場合と満
たさない場合が生じ、式を満たさない場合には衝撃値が
低下することがわかる。即ち、耐衝撃性を良好なものと
するためには、式(1)および式(2)を満たすよう
な、鋼の化学成分に応じた最適な仕上温度および巻取温
度で熱間圧延を施すことが非常に重要であることが明ら
かである。
【0045】(実施例3)前記した表1における本発明
例の鋼スラブA1を用いて、1200℃に加熱した後、仕上
温度を860℃、巻取温度を620℃として熱間圧延を
施し、3.2mm厚の鋼板とした。なお、上記の仕上温度、
巻取温度は式(1)および式(2)を満たしている。そ
の後、酸洗、冷間圧延により1.2mm厚の鋼板とした後、
表8に示すような種々の条件で連続焼鈍を施した。例え
ば焼鈍 No.Aの場合は、700℃で60秒加熱した後、
60℃/sec の冷却速度で425℃まで冷却し、引き続
き425℃で5分の保持を行った後に室温まで冷却する
連続焼鈍を施したことを意味する。0.3%の調質圧延後
に得られた製品について、実施例1と同様に衝撃試験を
行った結果は次の表9に示す如くである。
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】本発明に従って連続焼鈍を施した試料 No.
63A〜72Aは、いずれも衝撃値が25 kgf・m /cm
2 以上であり、耐衝撃性に優れていることが明らかであ
る。一方、比較例である試料 No.21B〜31Bは、連
続焼鈍の条件のうちいずれかが本発明に従っていないこ
とから、衝撃値が20 kgf・m /cm2 以下となっており
耐衝撃性に問題があることがわる。
【0049】以上説明した実施例1から実施例3までに
示したように、鋼の化学成分、熱間圧延時の仕上温度と
巻取温度、連続焼鈍の条件のうち一つでも本発明の範囲
から外れる場合には耐衝撃性が劣化することが明らかで
ある。
【0050】
【発明の効果】以上説明したような本発明によるとき
は、耐衝撃性の優れた鋼板の製造が可能となるため、産
業上の利用価値は非常に大きく、特に、自動車などの安
全性向上を図ることができるため極めて有益な発明であ
ることは明かである。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱間圧延時の仕上温度、巻取温度と衝撃値の関
係を示したグラフである。
【図2】C量、Si量、Mn量と熱間圧延時の仕上温度範囲
との関係、および衝撃値との関係を示したグラフであ
る。
【図3】C量、Si量、Mn量と熱間圧延時の巻取温度範囲
との関係、および衝撃値との関係を示したグラフであ
る。
【図4】C量と衝撃値の関係を示したグラフである。
【図5】Si量と衝撃値の関係を示したグラフである。
【図6】Mn量と衝撃値の関係を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大崎 恭紀 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 高田 康幸 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 wt%で、 C:0.05〜0.25%, S
    i:0.6〜2.3%,Mn:0.8〜2.3%, P:
    0.02%以下, S:0.01%以下,sol.Al:0.02〜0.
    06%, N:0.008 %以下 を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋼ス
    ラブに、仕上温度FTおよび巻取温度CTを下記する式
    (1)および式(2)の範囲とする熱間圧延を施した
    後、冷間圧延を施して得られた鋼板を、AC1〜AC3の温
    度域に加熱して20秒〜3分保持した後、5〜200℃
    /sec の冷却速度で350〜480℃の温度域まで冷却
    し、この温度域で30秒〜10分保持してから室温まで
    冷却することを特徴とする耐衝撃性の優れた複合組織冷
    延鋼板の製造方法。 FTmin ≦ FT(℃) ≦ FTmax ・・・・ (1) CTmin ≦ CT(℃) ≦ CTmax ・・・・ (2) ただし、 FTmax = 5{-10C(wt%) + Si(wt%) - 2Mn(wt
    %)}+ 893 FTmin = 5{-10C(wt%) + Si(wt%) - 2Mn(wt%)}+ 835 CTmax = 4{-15C(wt%) + 3Si(wt%) + Mn(wt%)}+ 630 CTmin = 4{-15C(wt%) + 3Si(wt%) + Mn(wt%)}+ 564
  2. 【請求項2】 wt%で、Ti: 0.005〜0.05%、Nb: 0.0
    05〜0.05%、ただしTiとNbの合計は 0.005〜0.05%、
    B:0.0005〜0.003 %のうちから選ばれる1種または2
    種以上の元素をも含有することを特徴とする請求項1に
    記載した耐衝撃性の優れた複合組織冷延鋼板の製造方
    法。
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