JPH06124022A - 自己診断機能を有する画像形成装置 - Google Patents

自己診断機能を有する画像形成装置

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JPH06124022A
JPH06124022A JP4273219A JP27321992A JPH06124022A JP H06124022 A JPH06124022 A JP H06124022A JP 4273219 A JP4273219 A JP 4273219A JP 27321992 A JP27321992 A JP 27321992A JP H06124022 A JPH06124022 A JP H06124022A
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area
sensor
diagnosis
virtual
value
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Application number
JP4273219A
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English (en)
Inventor
Yoshiki Shimomura
芳樹 下村
Sadao Tanigawa
貞夫 谷川
Yasushi Umeda
靖 梅田
Tetsuo Tomiyama
哲男 冨山
弘之 ▲吉▼川
Hiroyuki Yoshikawa
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyocera Mita Industrial Co Ltd
Original Assignee
Mita Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】画像形成装置の自己診断システムを、センサの
検出精度も確認可能な実用的な機械取込み型自己診断シ
ステムとする。 【構成】各センサ値がファジイメンバーシップ関数に基
づいてファジイ定性値化されたものと、仮想事例とを比
較することにより故障診断を行う。故障を診断すると、
その故障を修復するための修復操作を作業スクリプトテ
ーブル15から読出す。この場合、修復操作情報は、装
置のとり得る状態空間を複数の領域に分割し、各領域に
対応して記憶されている。また、修復操作情報には、ア
クチュエータの操作内容および操作によって遷移可能な
領域が含まれている。よって、修復操作情報をすべて実
行することにより、センサ感度等の低下がないことを確
認して、正しい故障診断が行える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自己診断機能を有す
る画像形成装置に関し、特に、画像形成装置のセンサか
ら得られる検出値を定性値に変換し、変換した定性値を
予め求めて記憶しておいた仮想事例と比較することによ
り、装置に故障が生じたか否かを自己診断し、また、セ
ンサ出力が正確か否かを自己診断することのできる画像
形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】精密機械や産業機械等の開発分野におい
ては、補修作業の省力化や自動運転の長期化を実現する
ために、最近、人工知能(Artificial Intelligence:い
わゆるAI)技術を利用したエキスパートシステムの研
究が盛んに行われている。エキスパートシステムの中に
は、装置に故障が生じたか否かを自己診断し、また生じ
た故障を自己修復するものが見受けられる。
【0003】ところが、従来のエキスパートシステム
(自動調節システムや故障診断システム)は、基本的に
は、或るセンサの出力に基づいて対応するアクチュエー
タを作動させるだけであったので、自己修復機械として
は完全なものとは言えなかった。そこで、本願出願人
は、定性物理に基づく対象モデル上での診断/修復推論
を用いた機械制御法を見出し、係る機械制御法を利用し
て、画像形成装置のための新規な自己診断および自己修
復システムを発明し、特許出願を行った(たとえば特開
平4−130459号参照)。
【0004】この先願に係る画像形成装置のための自己
診断および自己修復システムは、次の特徴を備えてい
る。すなわち、 (1)画像形成装置に備えられたセンサの検出値を定性
値に変換して制御に用いること。 (2)画像形成装置の構造および特性を、画像形成装置
の性質を表わすパラメータの因果関係ネットワーク(パ
ラメータモデル)を用いて定性的に表現していること。
【0005】(3)定性値に変換されたセンサ値を、パ
ラメータモデルにあてはめ、故障診断および故障修復推
論のための定性シミュレーションを行っていること、で
ある。つまり、定性モデルベースドシステム(Qualitat
ive Model Based System(QMS))による故障診断お
よび故障修復を行っていることである。
【0006】このような特徴を有する本願出願人の先願
に係る自己診断および自己修復システムによれば、万一
画像形成装置がその構造変更等を伴うような故障を生じ
たとしても、それに柔軟に対応可能である。なぜなら
ば、定性シミュレーションを利用することにより、対象
機械の制御点や制御ループを動的に変更することが可能
だからである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記先願に
係る自己診断および自己修復システムを実用的な機械組
み込み型システムとして運用するためには、故障診断に
関してシステムの規模の小形化を図るとともに、故障修
復に関して実行速度を向上させる必要がある。そのため
の一方法として、本願発明者および出願人は、先に、仮
想的な事例知識を用いて故障診断を行う制御装置につい
て提案し、特許出願を行った(特願平4−66439号
〜特願平4−66445号の7件参照)。係る仮想的な
事例知識、すなわち仮想事例を用いると、故障診断時
に、画像形成装置から得られた定性値をパラメータモデ
ルにあてはめて定性シミュレーションを行わなくてよく
なることから、故障診断部とシミュレーション部とを分
離することが可能となり、画像形成装置に仮想事例を記
憶した故障診断部を設けるだけでよい。したがって、画
像形成装置に搭載する故障診断のためのシステム容量を
縮小することが可能である。
【0008】本願発明者および出願人の先願に係る発明
は、このような特徴を有しているが、今般、本願発明者
は、仮想事例を用いた故障診断法をさらに拡張して、仮
想事例を用いて装置全体の故障診断のみでなく、センサ
出力等が正しいか否かの診断も行えるようにした画像形
成装置を提供するものである。つまり、この発明の目的
は、予め定性シミュレーションによって求められた仮想
事例をメモリに記憶しておき、該仮想事例を用いて正確
な故障診断ができ、かつ装置に備えられたセンサ出力が
正しいか否かの診断も可能な画像形成装置を提供するこ
とである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
自己診断機能を有する画像形成装置であって、装置の予
め定める部位に設けられ、所定の物理量または物理量の
変化を検出するためのセンサ手段、装置の予め定める部
位に設けられ、所定の操作を行うためのアクチュエータ
手段、前記センサ手段の検出値をファジイメンバーシッ
プ関数を用いてファジイ定性値に変換するための変換手
段、装置に故障症状が生じたときの装置のとり得る状態
が定性値で表わされた複数の仮想事例が記憶された事例
記憶手段、前記変換手段で変換されたファジイ定性値
と、前記事例記憶手段に記憶された複数の仮想事例とを
比較することによって、装置の現在の状態を診断する診
断手段、装置のとり得る定性量空間が複数の領域に分割
され、各領域に対応して、修復のための操作情報として
前記アクチュエータ手段の操作内容と、その操作によっ
て遷移可能な領域とが記憶された操作情報記憶手段、お
よび前記診断手段で診断された装置の現在の状態が前記
分割された複数の領域のいずれの領域に属するかを判断
し、属する領域の操作情報を前記操作情報記憶手段から
読出して、操作情報に含まれるアクチュエータ手段の操
作を全て実行し、その結果操作情報に記憶された遷移可
能な領域に矛盾なく装置状態が遷移するか否かを判別す
る判別手段、を含むことを特徴とするものである。
【0010】
【作用】この発明によれば、装置の現在の状態がファジ
イ定性値で表わされ、それが定性値で表わされて予め記
憶された複数の仮想事例と比較される。複数の仮想事例
は予め定性シミュレーションにより求められて記憶され
ている。それゆえ、ファジイ定性値と仮想事例との比較
は、仮想事例を事例記憶手段から読出すだけでよく、短
時間で比較ができ、装置の現在の状態を短時間で診断で
きる。
【0011】また、診断の結果、装置に故障が生じてい
る場合は、操作情報が操作情報記憶手段から読出され
る。操作情報記憶手段には、装置のとり得る定性量空間
が複数の領域に分割されて、各領域ごとに対応した操作
情報が予め求められて記憶されている。操作情報には、
アクチュエータの操作内容と、操作によって遷移可能な
領域とが含まれている。それゆえ、装置の現在の状態が
どの分割された領域に属するかを判別し、次にどの領域
に遷移すべきかを操作情報として得ることができる。そ
れゆえ、装置の現在の状態がどの分割された領域に属す
るかを判別したときに、その判別結果が正しいか否かが
確認される。つまり、その領域の操作情報に含まれるア
クチュエータの操作が行われ、領域遷移が操作情報通り
に行われるかが確認される。この確認は、センサ感度の
低下等がないかを確認するものである。
【0012】
【実施例】以下には、図面を参照して、自己診断および
自己修復が可能な小形の電子写真複写機を一実施例とし
て説明する。図1は、この発明が適用された小形の電子
写真複写機の機械構成図であり、この発明に関係する部
分のみが図解的な示された図である。図1において、1
は感光体ドラム、2はメインチャージャ、3は原稿照明
用のハロゲンランプ、4は現像装置、5は転写・分離チ
ャージャである。
【0013】メインチャージャ2には、メインチャージ
ャの放電電圧を変化させるためのメインチャージャコン
トローラ2Cが接続されている。また、ハロゲンランプ
3には、ハロゲンランプ3の光量を制御するためのハロ
ゲン光量コントローラ3Cが接続されている。さらに、
転写・分離チャージャ5には、このチャージャ5による
放電電圧、すなわち感光体ドラム1とコピー用紙間の転
写電圧を制御するための転写チャージャコントローラ5
Cが接続されている。
【0014】電子写真複写機では、得られたコピー画像
が美しく仕上がっている(正常)か否かが最も重要なこ
とである。そこでこの実施例では、得られたコピー画像
が正常か、画像かぶりを生じているか、または、画像が
薄いかを自動的に検出し、得られたコピーが画像かぶり
を生じていたり、薄い場合には、係る症状を引き起こし
ている原因、すなわち故障を診断し、その故障を自己修
復することのできる電子写真複写機を例にとって説明す
る。
【0015】この実施例には、たとえば4つのセンサが
設けられている。すなわち、感光体ドラム1を露光する
光の量、換言すればハロゲンランプ3の光量、を測定す
るための光量センサX、露光後の感光体ドラム1の表面
電位を測定するための表面電位センサVs、感光体ドラ
ム1上のトナー濃度を検出するためのトナー濃度センサ
Ds、および、コピー濃度センサOsである。
【0016】コピー濃度センサOsは、この電子写真複
写機によって形成されたコピー画像の濃度を検出するた
めのものである。コピー濃度センサOsの検出出力Os
に基づいて、電子写真複写機が正常か、故障症状として
画像かぶりが生じているか、または画像が薄いか、が判
別される。すなわち、図3に示すように、コピー濃度セ
ンサOsの検出出力Osが、たとえば2.5(V)未満
の場合は、コピー濃度が低下していると判別される。ま
た、検出出力Osが2.5(V)以上2.9(V)未満
の場合はコピー濃度は正常であると判別される。さら
に、検出出力Osが2.9(V)以上の場合はコピーに
画像かぶりが生じていると判別される。この判別は、電
子写真複写機に備えられたたとえばマイクロコンピュー
タで構成される診断/修復推論部11(後述する)にお
いてなされる。
【0017】図2は、図1に示す小形の電子写真複写機
の機能ブロック図であり、この発明に関係する部分のみ
が示されている。図2において角の丸まったブロックは
いわゆるハードウェアによる機能を表わしており、角の
尖ったブロックは、いわゆるソフトウェアによる機能
(コンピュータ内で実行されるプログラム処理)を表わ
している。なお、ハードウェアによる機能およびソフト
ウェアによる機能の区分けは一例であり、ソフトウェア
の機能をハードウェアにより実現するようにしてもよ
い。
【0018】図2の機能ブロックと、図1の機械構成と
の対応関係は、次のとおりである。すなわち、図2のセ
ンサには、図1の光量センサX、表面電位センサVs、
トナー濃度センサDs、およびコピー濃度センサOsが
含まれている。図2のアクチュエータコントローラに
は、図1のメインチャージャコントローラ2C、ハロゲ
ン光量コントローラ3Cおよび転写チャージャコントロ
ーラ5Cが含まれている。図2のアクチュエータには、
図1のメインチャージャ2、ハロゲンランプ3および転
写・分離チャージャ5が含まれている。
【0019】図2において、電子写真複写機に組み込ま
れたソフトウェア部、すなわちソフトウェアによる機能
ブロックには、たとえば5つの機能ブロックが含まれて
いる。すなわち、診断/修復推論部(推論エンジン)1
1、仮想事例保持部12、メンバーシップ関数生成部1
3、疑似故障発生部14、および、作業スクリプトテー
ブル15である。
【0020】仮想事例保持部12には、外部のコンピュ
ータ等に備えられた仮想事例コンパイラ16によって生
成された仮想事例が予め記憶されている。ここに仮想事
例とは、この電子写真複写機に起こる得るすべての故障
およびすべてのアクチュエータ操作に対して、予め定性
物理に基づいた挙動シミュレーションを実行した結果得
られた仮想的な状態事例である。
【0021】仮想事例を仮想事例コンパイラ16によっ
て予め求め、求められた仮想事例を仮想事例保持部12
に記憶させるようにすると、仮想事例コンパイラ16を
電子写真複写機組み込みのソフトウェア部から切り離す
ことができる。つまり、仮想事例を記憶させることで、
電子写真複写機に組み込まなければならない故障診断部
と、電子写真複写機に組み込まなくてもよいシミュレー
ション部(仮想事例コンパイラ16)とを分離すること
ができ、この電子写真複写機に搭載されるシステム容量
の縮小化を実現できる。
【0022】なお、仮想事例コンパイラ16における仮
想事例の生成に関しては、たとえば本願出願人の先願
(特開平4−130459号)等で説明した定性シミュ
レーションを用いて行えばよい。念のために定性シミュ
レーションの仕方を簡単に説明しておく。この電子写真
複写機を物理的な視点から捉えて複数個の要素の結合と
して表現し、各要素の挙動および属性ならびに各要素間
の結合関係をパラメータを用いて定性的に表わすと、た
とえば図4に示すパラメータモデルが得られる。なお、
この図4に示すパラメータモデルは、コピー濃度パラメ
ータOsに関するパラメータのみを取り出した簡略化モ
デルである。
【0023】図4に示すパラメータモデルにおいて、H
lはハロゲンランプ3の光量パラメータ、Dは原稿の光
学濃度パラメータ、Xは感光体ドラム1を露光する光量
のパラメータ、βは感光体ドラム1の感度パラメータ、
Vnはメインチャージ後の感光体ドラム1の表面電位パ
ラメータ、Vsは露光後の感光体ドラム1の表面電位パ
ラメータ、Vbは現像バイアスのパラメータ、γ0 はト
ナー感度のパラメータ、Dsはドラム上での画像濃度
(トナー濃度)のパラメータ、Vtは転写電圧のパラメ
ータ、ζは用紙感度のパラメータ、を示している。これ
らパラメータのうち、D、β、γ0 およびζは変動する
可能性が小さいので固定値とみなすことができる。それ
ゆえ、コピー濃度パラメータOsが変化する原因は、H
l、Vn、Vb、または、Vtのいずれかが変化したこ
とに起因すると推測できる。そしてこれら4つのパラメ
ータHl、Vn、Vb、またはVtが変化してOsが変
化するとき、その変化は必ず3つのセンス対象パラメー
タH、VsまたはDs(図4において〇で囲ったもの)
を変化させる(但し、Vtの変化に起因するときのみ、
X,Vs,Dsはいずれも変化しない。)。
【0024】仮想事例を生成するための定性シミュレー
ションは、図4に示すパラメータモデル上において、コ
ピー濃度パラメータOsの変化と、Osの変化が生じた
ときの4つのパラメータHl、Vn、VbおよびVtな
らびにセンス対象パラメータX、VsおよびDsの変化
をシミュレーションして、センス対象パラメータX、V
s、Dsの状態を把握するとともに、原因となる4つの
パラメータHl、Vn、VbおよびVtの状態を把握す
るものである。
【0025】次に、上記定性シミュレーションに基づく
仮想事例の生成の仕方について、図4のパラメータモデ
ルを用いて具体的に説明する。コピー濃度が異常にな
り、たとえば画像かぶりが生じたとする。すなわち、O
sがハイ(+)になったとする。図4のパラメータモデ
ルにおいて、Osがハイ(+)になる原因は、定性シミ
ュレーションにより、Hl:ロー(−)、Vn:ハイ
(+)、Vb:ロー(−)もしくはVt:ハイ(+)に
変化することまたはそれらの変化の組合せに起因するこ
とがわかる。そして、これらのパラメータHl、Vn、
Vb、Vtの変化は、パラメータモデル上でセンス対象
パラメータであるX、Vs、Dsに影響を及ぼす。なぜ
ならば、影響を及ぼさない程度のパラメータの変化であ
れば、その結果としてOsも変化しないからである。
【0026】それゆえ、各パラメータがどのように変化
したかの組合せは、センス対象パラメータX、Vs、D
sに変化をもたらす。パラメータ変化に基づいてセンス
対象パラメータX、Vs、Dsがどのように変化するか
をシミュレーションした結果が仮想事例であり、この仮
想事例を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】表1は、画像かぶりが生じた場合の8つの
仮想事例a,b,c,d,e,f,g,hを表わしてい
る。なお、表1における3つのセンサパラメータ状態に
それぞれ付加された「1.0」の数値は、後述するファ
ジイ理論のメンバーシップ関数におけるグレードを示し
ている。このファジイ理論のメンバーシップ関数を導入
したことの利点等については後述する。
【0029】上記表1に例示した仮想事例は、故障症状
別に、仮想事例コンパイラ16において予め定性シミュ
レーションにより生成されたものであり、上述したよう
に、これらは仮想事例保持部12に記憶されている。診
断/修復推論部11では、コピー濃度センサOsの検出
出力Osを、前述したように図3に示す故障判別基準値
と比較し、画像濃度が正常か否かを判断する。そしても
し画像濃度に異常が生じていると判別した場合、たとえ
ば画像かぶりが生じていると判別した場合には、故障症
状「画像かぶり」の原因を推測する。つまり、故障診断
を行う。故障診断においては、3つのセンサX,Vs,
Dsから与えられる検出値が診断/修復推論部11にお
いて定性値に変換され、変換された定性値が表1に示す
故障症状「画像かぶり」に列挙されたセンサグレードと
比較され、最も一致度の高い仮想事例が検索される。
【0030】ところで、3つのセンサX,Vs,Dsの
検出値を定性値に変換する場合、定性量空間上に境界標
(ランドマーク)を定義する必要がある。境界標は正し
く定められなければならず、もし、この境界標が正しく
定められていなければ、正しくない境界標に基づいて検
出値の定性値化が行われることになり、その後の故障診
断等を正しく行うことができない。
【0031】そこでこの実施例では、境界標の決定に疑
似故障法(Imitation Fault 法:IF法)を導入すると
ともに、定性値をファジイ化することにより、境界標を
動的に決定するという方法が採用されている。まず、定
性値化する際に用いるメンバーシップ関数について説明
をする。このメンバーシップ関数は、図2に示すメンバ
ーシップ関数生成部13に記憶されており、該メンバー
シップ関数は、後述するように、疑似故障発生部14に
より更新される。
【0032】メンバーシップ関数生成部13には、図5
に例示する故障症状「画像かぶり」時に用いるトナー濃
度センサDs、表面電位センサVsおよび光量センサX
の検出値を定性値化するためのファジイメンバーシップ
関数が記憶されている。ファジイメンバーシップ関数
は、公知のとおり、ファジイ理論において、或る要素が
或る集合に属する度合い(グレード)を規定する関数で
ある。
【0033】診断/修復推論部11において、コピー濃
度センサOsの検出出力は図3に示す故障判別基準値と
比較され、Osがたとえば2.9(V)以上の場合に
は、コピーに画像かぶりが生じていると判別される。そ
して画像かぶりが生じている判別されると、その時のト
ナー濃度センサDs、表面電位センサVsおよび光量セ
ンサXの各検出値が、メンバーシップ関数生成部13に
記憶された図5に示すファジイメンバーシップ関数に基
づいて定性値化される。
【0034】たとえばトナー濃度センサDsの検出値が
定量値で2.33(V)未満では、Ds(N:1.0、
+:0.0)に定性値化される。トナー濃度センサDs
の検出定量値がたとえば2.82(V)では、Ds
(N:0.7、+:0.3)に定性値化される。また、
トナー濃度センサDsの検出定量値が3.97(V)以
上では、Ds(N:0.0、+:1.0)に定性値化さ
れる。
【0035】表面電位センサVsの検出定量値および光
量センサXの検出定量値も、同様に、図5に示すVsの
ファジイメンバーシップ関数およびXのファジイメンバ
ーシップ関数に基づいて、それぞれ定性値化される。次
に、このファジイメンバーシップ関数の生成の仕方につ
いて説明をする。一般に、センサの検出定量値を定性値
に変換するためには、前述したように、量空間上に境界
標を定義する必要がある。ところが、電子写真複写機の
使用に伴う状態の変化やセンサの測定精度の限界を考慮
すると、境界標を静的なものとして決定することは容易
ではない。もし、境界標を静的なものとして決定し、そ
の決定に誤りがあれば、この実施例にかかる故障診断お
よび故障修復制御の前提をなすセンサ値の定性値化が正
確に行われないこととなり、故障診断や故障修復におい
て、誤診や誤修復が行われる可能性が大きくなる。
【0036】そこでこの実施例では、故障症状ごとに境
界標を定義し、かつ、境界標をファジイ理論のメンバー
シップ関数を用いて定義した。故障症状に応じたメンバ
ーシップ関数を用いてセンサの検出定量値を定性値化す
るようにすると、センサの読取誤差や、使用環境の変化
等によるセンサ出力の変動に柔軟にかつ好適に対処でき
る。
【0037】また、センサの検出定量値を定性値化する
場合に、ファジイ理論のメンバーシップ関数を導入する
と、センサの測定精度や使用環境の変化等に依存する実
測定量値と定性値との対応づけに関する問題に柔軟に対
処することができ、センサ値を定性値化する際に、誤り
が生じにくくなる。具体的な境界標の決定は、疑似故障
法(IF法)と呼ばれる定性値をファジイ化し境界標を
動的に決定する方法により行われる。IF法は、電子写
真複写機を出荷する前の初期時、故障修復後、またはマ
ニュアル入力に基づく任意のタイミングで、アクチュエ
ータを操作することにより電子写真複写機に故障を強制
的に引き起こし、故障を引き起こす前の正常時および故
障時のセンサ情報を用いて境界標を動的に決定するとい
う方法である。
【0038】IF法を用いれば、実際の制御対象である
電子写真複写機ごとに、センサの検出定量値を定性値化
するために必要な量空間上の境界標を動的に決定できる
から、定性値化の基礎をなす境界標を装置ごとに精度良
く定義することができる。また、IF法を用いれば、装
置が初期状態のときに定義した境界標を、たとえば故障
修復が完了するごとに修正できるから、装置の経年的変
化や使用環境の変化等に合わせて、量空間上の境界標を
常に最適な値に更新していくことができる。
【0039】IF法は、図2に示す疑似故障発生部14
により実行される。次に、IF法の処理内容について、
図6を参照して具体的に説明する。まず、診断/修復推
論部11において、トナー濃度センサDs、表面電位セ
ンサVsおよび光量センサXの検出値が読取られる(ス
テップS1)。このとき読取られた各センサの検出値
は、たとえば、Ds:2.33(V)、Vs:0.44
(v)、X:3.87(v)であったとする。
【0040】次いで、疑似故障発生部14により、ハロ
ゲン光量コントローラC3が操作され、ハロゲンランプ
3の光量が強制的に下げられる(ステップS2)。そし
て、ハロゲンランプ3の光量を微小量ずつ下げるごと
に、電子写真複写機にコピー動作をさせ、そのとき得ら
れるコピーの濃度がコピー濃度センサOsで検出され、
その検出値が診断/修復推論部11によって読取られる
(ステップS3)。コピー濃度センサOsの検出値は、
先に述べた図3に示す故障判別基準値に照らされ、Os
の値が画像かぶりが発生する基準値に達したとき、ハロ
ゲンランプ3の光量を下降する処理は中止さる(ステッ
プS4)。
【0041】そして、画像かぶりが発生するまでハロゲ
ンランプ3の光量を下げたときのトナー濃度センサD
s、表面電位センサVsおよび光量センサXの検出値が
読取られる(ステップS5)。読取られた検出値は、た
とえば、Ds:3.97(V)、Vs:0.76
(v)、X:3.24(v)であったとする。ステップ
S1で読取られたDs,Vs,Xの検出値およびステッ
プS5で読取られた画像かぶりが発生した時点でのD
s,Vs,Xの検出値は、メンバーシップ関数生成部1
3へ与えられ、画像かぶり時のメンバーシップ関数が生
成される。つまり、ステップS1で検出された値が正常
時の境界標、ステップS5で読取られた値が画像かぶり
発生開始時の境界標とされ、画像かぶり時のファジイメ
ンバーシップ関数として、前述した図5に示すものが得
られる(ステップS6)。
【0042】IF法を用いると、たとえば故障修復の都
度、電子写真複写機の境界標を動的に更新できるから、
修復後の電子写真複写機に合った境界標を定義すること
ができる。また、電子写真複写機が長期の使用により経
年変化を生じても、境界標を経年変化に合わせて動的に
更新させることができるから、常に最適な境界標に基づ
いて、各センサにより検出された定量値の定性値変換が
行える。
【0043】ところで、仮想事例に基づく故障診断にお
いては、その結果は仮想事例に対する一致順位として与
えられる。たとえば、故障症状「画像かぶり」が生じた
場合は、上述した表1に示す8つの仮想事例a,b,
c,d,e,f,g,hに対する順位づけが行われる。
8つの仮想事例a〜hは、3つのセンサパラメータD
s,Vs,Xのグレードの3次元量空間で表現すること
ができる。この3次元量空間を図7に示す。図7におい
て、立方体の8つの頂点が、それぞれ、表1に示す8つ
の仮想事例の状態を表わしている。仮想事例に基づく故
障診断の結果は前述したように、8つの仮想事例に対す
る一致順位として与えられるから、各仮想事例に対する
一致順位、つまり事例順位で電子写真複写機のとり得る
状態空間を領域分割することが可能である。
【0044】表2に、故障症状「画像かぶり」における
電子写真複写機のとり得る状態空間を96の領域に分割
した時の領域および事例順位の一覧を示す。
【0045】
【表2】
【0046】各領域の事例順位は、電子写真複写機の機
能発現状態を表現している。すなわち、故障診断の結果
として得られた電子写真複写機の機能状態が、どの仮想
事例に最も近く、次にどの仮想事例に近く、さらに次に
どの仮想事例に近く、…、どの仮想事例から最も遠ざか
っているかがわかる。したがって、この領域情報を修復
計画に用いることで、電子写真複写機の機能の発現状態
に応じて修復の目標状態を設定できる。そして、修復に
おいては、注目機能を発現させればよいから、注目機能
が発現したが、それ以外の機能については発現しなくて
も妥協できるか否かを検討することができる。すなわ
ち、修復に関する機能トレードオフを実現することがで
きる。
【0047】表2に示す分割領域および事例順位の一覧
も図2の仮想事例保持部12に予め記憶されている。画
像かぶり以外の故障症状についても、同様に、予め領域
分割がされて事例順位が求められ、記憶されている。領
域分割数は、センス対象パラメータの数によって決定さ
れ、さらに、各仮想事例に対する故障診断の結果の一致
順位の何位までを有効とみなすかによって決定される。
この有効とみなす仮想事例の順位は修復成功の可否に直
接影響するため、修復に先立って予めシステムのセンサ
精度等に応じて決めておく必要がある。この実施例で
は、この有効順位を「診断の分解能」と呼ぶことにす
る。たとえば、対象機械にn個のセンサが備えられてお
り、仮想事例に対する一致順位がすべて有効とみなした
場合の最大領域分割数Nは、同時に考慮すべき定性値を
2つに限定した場合(2つの定性値とは、たとえば定性
値が+/N、あるいは−/Nということである)、下記
の式(1)で与えられる。
【0048】
【数1】
【0049】具体的にこの実施例では、3つのセンサD
s,Vs,Xがあり、その3つのセンサの定性量空間
は、2つの定性値(+/N、あるいは−/N)に限定す
れば、最大分割数が96となり、表2に示すように、領
域A−1〜A−96に領域分割を行える。この領域分割
において、96の領域に分割されることを、より具体的
に説明する。
【0050】図7に示す3次元量空間の立方体を考えた
場合、8つの仮想事例は立方体の各頂点に位置する。そ
れゆえ、第1位の仮想事例は立方体の8つの頂点に位置
するいずれかの仮想事例から選ばれるから、8通りであ
る。たとえば今、仮想事例aが第1位の仮想事例に選ば
れたとする。すると、第2位の仮想事例は、第1位の仮
想事例aから近い頂点に位置する3つの仮想事例b,
d,eのいずれかから選ばれることになるから3通りの
選び方がある。さらに、第3位の仮想事例は、上述した
第2位の仮想事例として選ばれる可能性のあった仮想事
例b,d,eのうちの選ばれなかった残りの2つから選
ばれる。さらに、第4位の仮想事例は上記3つの仮想事
例b,d,eの選ばれなかったもの、または仮想事例c
から選ばれる。
【0051】そして、第1位の仮想事例がたとえばaに
決まると、その仮想事例aに対向する頂点の仮想事例g
が第8位の仮想事例に決まり、同様に第2位〜第4位の
仮想事例が決まれば第7位〜第5位の仮想事例も決ま
る。よって、結局、8×3×2×2=96という96通
りの領域に分割できるのである。次に、作業スクリプト
テーブル15(図2)に記憶されている作業スクリプト
について説明をする。
【0052】事例順位によって分割された各領域の間に
は、対象機械の性質に基づく遷移可能な場合と、遷移不
可能な場合とがある。この遷移則は、対象機械である電
子写真複写機のパラメータの因果関係と、アクチュエー
タの構成とから導出可能であり、電子写真複写機の修復
計画に用いることができる。図8は、図7に示す3次元
量空間を2次元量空間として平面的に表わした模式図で
あり、修復過程における上述の遷移則と、パスとの関係
を表わす図解図である。図8を参照して説明すると、現
在の電子写真複写機の状態領域がたとえばA−1であ
り、修復の目標とするゴール領域がA−19とすれば、
現在の状態領域A−1からゴール領域A−19までのパ
スを探索し、そのパスを通って状態が遷移するように仮
想事例の一致順位を監視しながらアクチュエータ操作を
すればよい。このアクチュエータ操作の内容と、領域変
化の関係を表わす知識が作業スクリプトである。実際の
修復は、この作業スクリプトを最小単位操作として行わ
れる。
【0053】表3、表4、表5、および表6に、作業ス
クリプトの例を表わす。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】表3〜表6に示すように、作業スクリプト
は、領域ごとに設定されており、或る操作と、その操作
によって遷移可能な領域とが表わされている。たとえ
ば、表3に示す領域A−1の作業スクリプトでは、操作
として、ハロゲン光量(パラメータHl)を上昇させる
と、領域A−4に遷移する可能性があることが記述され
ている。また、ハロゲン光量(パラメータHl)を下降
させると、光量パラメータXのグレードが最大になる
か、トナー濃度パラメータDsのグレードが最大になる
かのどちらかである。
【0059】さらに、操作として、主帯電電圧(パラメ
ータVn)を上昇させた場合は、領域A−3に遷移可能
か、またはパラメータDsが最大になる可能性があるこ
と、主帯電電圧(パラメータVn)を下降させた場合、
領域A−4に遷移可能であること、現像バイアス電圧
(パラメータVb)を上昇させた場合、領域はA−2に
遷移可能であること、現像バイアス電圧(パラメータV
b)を下降させた場合、パラメータDsが最大になる可
能性のあることが、それぞれ、作業スクリプトに記述さ
れている。
【0060】さらに、作業スクリプトには、操作の種
類、たとえばハロゲン光量(パラメータHl)を上昇さ
せる、ということだけでなく、その操作量が記述されて
いてもよい。操作量は、好ましくは、後述する領域遷移
を行う場合に、1回の操作によって領域遷移が生じる操
作量が記述されているのがよい。なお、図8で説明した
修復過程においては、まず領域A−1において、表3に
示す作業スクリプトA−1に基づいて、たとえばハロゲ
ン光量(パラメータHl)を上昇させ、その結果、状態
領域がA−4に遷移した場合は、表4に示す作業スクリ
プトA−4に基づく操作が行われる。
【0061】以上のように、作業スクリプトテーブル1
5(図2参照)には、分割された領域ごとに、対応する
作業スクリプトが記憶されている。この作業スクリプト
テーブル15に記憶された作業スクリプトは、図4に示
すパラメータモデルに基づいて、シミュレーションによ
り作成されたものである。作業スクリプトテーブル15
を設けて予め作業スクリプトを記憶しておくと、電子写
真複写機内で故障が生じるごとに、パラメータモデルに
基づいて作業スクリプトを生成しなくてよく、電子写真
複写機の小形化を図ることができる。また、故障修復ご
とに作業スクリプトを生成しなくてよいから、故障修復
時間の短縮を図ることができる。
【0062】図9は、図2に示す機械組み込みソフトウ
ェア部、特に、診断/修復推論部11において行われる
制御の手順を表わすフローチャートである。次に、図9
の流れに沿って、この電子写真複写機における故障診断
および故障修復処理について説明をする。図9に示すフ
ローチャートには、予め定められたプログラムに基づい
て自動的に行われるのではなく、人的に処理されるもの
も混じっている。具体的には、ステップS11に示す分
解能の設定処理、ステップS13に示すゴール空間の設
定処理、ステップS22に示すゴール空間がトレードオ
フできるか否かの判断およびステップS23に示すゴー
ル空間の再設定処理は、人的に行われる。
【0063】処理が開始されると、まず、「診断の分解
能」が設定される(ステップS11)。診断の分解能の
設定とは、先に説明したように、状態空間を領域分割す
る際の根拠となる仮想事例の一致有効順位を決めること
である。この実施例では、8つの仮想事例a〜hに一致
順位が付された場合に、第3番目ないし第6番目の仮想
事例の順位は考慮しないことにする。それゆえ、状態空
間は、8つの仮想事例の順位のうち、第1番目、第2番
目、第7番目および第8番目の順位の仮想事例に基づ
き、表7に示すように24の領域に分割される。
【0064】
【表7】
【0065】表7において、*を付した仮想事例は、順
位を考えない事例である。なお、分解能の設定は前述し
たようにシステムのセンサ精度等に応じて決めればよ
く、この実施例では上述のように分解能を設定した結
果、状態空間が24の領域に分割されたが、最大分割数
96以内であれば、分解能の設定の仕方により領域分割
の数を増減させることができる。
【0066】分解能が設定されると、次に、故障判定が
される(ステップS12)。故障判定は、コピー濃度セ
ンサOsの検出値が診断/修復推論部11によって読取
られ、読取られたコピー濃度Osが、図3に示す故障判
別基準値と比較されることによりなされる。このステッ
プS12の故障判定処理は、この実施例では診断/修復
推論部11において自動的に行われるが、手動によって
行うようにしてもよい。
【0067】手動により故障判定を行う場合は、コピー
濃度センサOsを設けなくてよい。手動による処理で
は、電子写真複写機から出力されるコピーを見て、サー
ビスマン等が、コピーがたとえば画像かぶりを生じてい
ると判断すればよい。そしてこの場合、故障症状として
画像かぶりが生じていることが装置へ入力される。故障
症状の入力は、たとえば電子写真複写機を故障診断モー
ドに変え、電子写真複写機に通常備えられているテンキ
ー等によって入力できるようにすればよい。
【0068】ステップS12において、故障症状が判定
され、たとえば故障症状として「画像かぶり」が発生し
ていると判別されると、次に、ゴール領域が設定される
(ステップS13)。ゴール領域の設定とは、ステップ
S11における分解能の設定により分割されたたとえば
24の領域のうち、いずれかの領域を遷移の最終目的領
域として設定することである。このゴール領域の設定は
人的になされる。
【0069】そして次に、故障診断がされる(ステップ
S14)。ステップS14における故障診断処理の詳細
なサブルーチンを、図10に示す。次に、図10を参照
して故障診断処理について具体的に説明をする。まず、
診断/修復推論部11において、トナー濃度センサD
s、表面電位センサVsおよび光量センサXの検出値が
読取られる(ステップS31)。今、読取られた各セン
サの検出定量値が、それぞれDs:4.00(V)、V
s:0.625(V)、X:3.418(V)であった
とする。読取られた各センサ定量値は、メンバーシップ
関数生成部13に記憶された画像かぶり時のファジイメ
ンバーシップ関数(図5)にあてはめられ、ファジイ定
性値に変換される(ステップS32)。
【0070】この具体例では、Ds:4.00、Vs:
0.625、X:3.418が、それぞれ、図5のファ
ジイメンバーシップ関数にあてはめられ、Ds:+1.
00、Vs:+0.58、X:−0.72、が得られる
(ステップS32)。次に、得られたファジイ定性値が
ニュートラルスペースに存在しているか否かが判別され
る(ステップS33)。
【0071】ここに、ファジイ定性値がニュートラルス
ペースに存在しているとは、図11に示すように、3つ
のファジイ定性値Ds、Vs、Xのうち、2つ以上のフ
ァジイ定性値のグレードが、予め定める中間領域(ニュ
ートラルスペース)に存在している場合を言う。ファジ
イ定性値がニュートラルスペースに存在している場合に
は、故障診断結果が正確に求めにくい。より具体的に言
えば、ファジイ定性値がニュートラルスペースに存在し
ている場合は、3次元量空間における多数の領域が集中
しているところにセンサ値が入っている場合を意味して
いる。それゆえ、このような多数の領域が集中している
ところにセンサ値が入った場合、センサ検出値の誤差や
センサ精度によって属する領域が異なってしまう。それ
ゆえ、装置状態が属する領域が正しく求め難く、その後
の修復操作が正確に行えないおそれがある。そこで、こ
の実施例では、アクチュエータ操作を行い(図10のス
テップS34)、ファジイ定性値がニュートラルスペー
スに存在しないように処理を行うことにした。
【0072】図12にニュートラルスペースを3次元量
空間で視覚化した図を示す。図13に示す3次元量空間
において、立方体の中心部に位置する1点鎖線で示す3
次元十字空間内がニュートラルスペースである。ファジ
イ定性値化された各センサ値のグレードの大小関係だけ
に着目すれば、ニュートラルスペースに存在する各セン
サ値の存在パターンは、図13に示すパターン1〜パタ
ーン6の6通りがある。また、ニュートラルスペースに
存在しているという条件は、2つ以上のセンサ値がニュ
ートラルスペース幅に存在していることであるから、図
13の各パターンごとに、3通りの状態が考えられる。
したがって、ニュートラルスペースに存在するセンサ値
の組合せは、6×3=18通りある。この実施例では、
図10のアクチュエータ操作(ステップS34)におい
て、最も早くニュートラルスペースから抜け出るように
処理を行っている。
【0073】図10のステップS34のアクチュエータ
操作の一例を示せば、次のとおりである。たとえば、セ
ンサ値のグレードが図13のパターン1の形であって、
かつニュートラルスペース幅に属しているのがDsとV
sとである場合には、アクチュエータ操作として、Vs
(メインチャージャ出力電圧)を下げる。
【0074】センサ値グレードが図13のパターン1の
形であって、かつニュートラルスペース幅に属している
のがXとVsである場合には、アクチュエータ操作とし
て、Hl(ハロゲンランプ光量)を下げる。さらに、セ
ンサ値グレードが図13のパターン1であって、かつニ
ュートラルスペース幅に属しているのはDsとVsとX
とである場合には、アクチュエータ操作として、Hl
(ハロゲンランプ光量)を下げる。
【0075】これらのアクチュエータ操作は、図4で表
わしたパラメータモデル等に基づいて決めた。図10に
戻って、ステップS33において、ファジイ定性値がニ
ュートラルスペースに存在していない場合、あるいはス
テップS34のアクチュエータ操作を行い、再びセンサ
値を読取ってファジイ定性値に変換した結果(ステップ
S31,S32)、それらファジイ定性値がニュートラ
ルスペースに存在していない場合には、求められたファ
ジイ定性値と仮想事例との一致度Cが算出される(ステ
ップS35)。この一致度Cの算出は、次のようにして
行われる。
【0076】まず、ステップS32で求められた定性値
Ds:+1.00,Vs:+0.58,X:−0.72
は、図7の3次元量空間において、黒丸で示す位置pに
位置する。そこで次に、点pから各仮想事例a〜h(図
7の3次元量空間における立方体の頂点)までの距離D
(Da〜Dh)を計算し、計算した各距離Dが正規化さ
れて、一致度Cが算出される。一致度Cの算出は、下記
の式(2),(3)および(4)によりなされる。
【0077】
【数2】C=1−D/√n …(2) (但し、nはセンスパラメータの数:この場合n=3)
【0078】
【数3】 C=1−√{C(p1)2 +C(p2)2 +…+C(pn)2 }/√n …(3)
【0079】
【数4】C(pn)=Gm(qn)−Gs(qn) …(4) (但し、 C:モデル全体の一致度、pn:測定可能な
変数、C(pn):変数pnに対する一致度、qn:変数p
nが取り得る定性値、Gm(qn):故障モデルにおける定
性値qnのグレード、Gs(qn):測定値における定性値
qnのグレード) 計算の結果、ステップS32で求められた定性値と8つ
の仮想事例a〜hとの一致度C(Ca〜Ch)が算出さ
れる。算出の結果は、 Ca:0.709 Cb:0.628 Cc:0.313 Cd:0.353 Ce:0.519 Cf:0.466 Cg:0.214 Ch:0.248 となる。そこでこれらを一致度の大きい順位に並べるこ
とにより、現在の状態領域の決定が行われる(ステップ
S36)。領域決定では、図9で説明したように、分解
能が設定されているから、具体的には一致度の最も大き
なもの、一致度の2番目に大きなもの、一致度の2番目
に小さなもの、および一致度の最も小さなものの4つの
一致度に基づいて領域が決定される。
【0080】この実施例の場合には、一致順位は「ab
****hg」となるので、領域はA−1に決定され
る。図9に戻って、ステップS14で上述の故障診断が
なされ、領域が決定されると、次に、その領域に対応し
た作業スクリプトが、作業スクリプトテーブル15(図
2参照)から読出される。この実施例の場合、領域A−
1に対応する作業スクリプトA−1(表3参照)が読出
される(ステップS15)。
【0081】そして、読出された作業スクリプトA−1
に基づいて修復操作が行われる(ステップS16)。次
に、このステップS16で行われる修復操作の具体的な
処理について、図14のサブルーチンに基づいて説明を
する。図14を参照して、まず、図9のステップS15
で読出した作業スクリプトA−1(表3参照)から遷移
可能領域をすべて導出する。この場合、作業スクリプト
A1には、遷移可能な領域として、領域A−2、A−
3、A−4が記述されている。そこでこれら3つの領域
A−2、A−3、A−4および、現在所属している領域
A−1を導出する(ステップS41)。
【0082】次いで、カウンタNをN=1とした後(ス
テップS42)、ゴール領域において順位N、つまり第
1順位の仮想事例から、遷移可能領域のゴール領域への
近さを仮決定する(ステップS43)。具体例を表7お
よび図8を参照しながら説明する。今、ゴール領域は領
域A−19であり、その事例順位はA−19:gc**
**ea、であるから、この領域A−19の順位1の仮
想事例はgである。
【0083】一方、作業スクリプトA−1に記述されて
いる遷移可能な領域とその領域の事例順位は次のとおり
である。 A−2:ab****fg A−3:ae****cg A−4:ba****gh さらに、現在所属している領域は A−1:ab****hg であり、現在所属している領域A−1から領域が遷移せ
ずにそのままA−1の領域に留まることも考えられる。
したがって、遷移可能な領域は、A−2,A−3,A−
4および現在所属しているA−1である。
【0084】ところで、これら4つの遷移可能な領域に
おける上記仮想事例gの順位を検出すれば、 A−2:8位 A−3:8位 A−4:7位 A−1:8位 である。このとき、目標領域において順位1の仮想事例
が遷移可能な領域において順位が高いほどゴール領域に
近づく領域である。それゆえ、この場合は、領域A−4
がゴール領域に最も近づく領域であり、遷移すべき領域
であると決定される。
【0085】次いで、ステップS44において、すべて
の遷移可能領域の近さの順位が決定できたか否かの判定
がされる。上述の具体例の場合は、領域A−4が最も近
いと判定されたが、領域A−1,A−2,A−3のゴー
ル領域への近さの順位は決定されていないから、次にゴ
ール領域において順位N=2の仮想事例、つまりこの具
体例では仮想事例cに基づいて、遷移可能領域のゴール
領域への近さが仮決定される(ステップS43)。
【0086】以上のようにして、すべての遷移可能領域
間のゴール領域への近さが決定される。なお、遷移可能
領域が複数ある場合であって、いずれか1つの遷移可能
領域がゴール領域に最も近いと決定された段階で、すな
わち上述の具体例においては、ゴール領域において順位
1位の仮想事例gに基づいて領域A−4が最もゴール領
域に近いと判定された時点で、遷移可能領域のゴール領
域への近さの決定を終えるようにしてもよい。
【0087】その後、ステップS46において、最も近
い遷移可能領域を領域Zとし(上述の具体例では、領域
Zは領域A−4である)、現在所属している領域から領
域Zに遷移するためのアクチュエータ操作が、作業スク
リプトA−1から導出される(ステップS47)。そし
てそのアクチュエータ操作が実行される(ステップS4
8)。
【0088】ステップS48におけるアクチュエータ操
作では、作業スクリプトにアクチュエータの操作量が記
述されていない場合には、予め定める単位量の操作が行
われる。もし、前述したように作業スクリプトに操作す
べき操作内容であるアクチュエータの種類だけでなく、
操作量も記述されている場合には、記述された操作量が
操作される。この操作量は、1回の操作で領域遷移を生
じ得る操作量にされているのが好ましい。
【0089】以上の説明は、表7に示す分解能、つまり
分割領域が24の場合を例にとって説明したが、より一
般的な例として、分解能が96の場合の例を次に説明し
ておく。説明をわかりやすくするために、前提として、 ゴール領域:A−40(gfhcebda) 現在所属している領域:A−2(abedfchg) A−2から遷移可能な領域:A−1(abdecfh
g) A−5(aedbfhcg) A−7(bacfdegh) A−8(bafcedgh) A−2自身 としておく。
【0090】次に、ゴール領域で順位1の仮想事例を調
べる。この場合は仮想事例gである。そこで、上述の遷
移可能領域での仮想事例gの順位を調べる。その結果
は、 A−1:8位 A−5:8位 A−7:7位 A−8:7位 A−2(self):8位 である。このとき、仮想事例gの順位がA−2(sel
f)よりも上であれば、ゴール領域に近づく遷移可能領
域であると言え、下であれば、ゴール領域から遠ざかる
遷移可能領域であると言える。よって、上述の場合は、
A−1,A−5に関しては不明、A−7,A−8に関し
ては現在よりもゴール空間に近づく空間であることがわ
かる。
【0091】よってこの時点における遷移可能領域のゴ
ール空間への近さの仮決定では、次のようになる。 A−7,A−8<A−1,A−5,A−2(self) 次に、ゴール領域A−40で順位2の仮想事例を調べ
る。この場合は仮想事例fである。
【0092】そこで、遷移可能領域での仮想事例fの順
位を調べると次のとおりになる。 A−1:6位 A−5:5位 A−7:4位 A−8:3位 A−2(self):5位 上述のゴール空間への近さの仮決定にこの時点における
順位を勘案すれば、遷移可能領域のうち最もゴールに近
づくのはA−8、次に近づくのはA−7、であることが
わかり、領域A−1はゴール領域から遠ざかる領域であ
ることがわかる。したがって、遷移可能領域のゴール空
間への近さの仮決定は次のように詳しくなる。
【0093】 A−8<A−7<A−5,A−2(self)<A−1 次に、ゴール領域A−40で順位3の仮想事例を調べ
る。この場合は仮想事例hである。そこで、遷移可能領
域での仮想事例hの順位を調べる。その結果は次のとお
りである。
【0094】A−1:7位 A−5:6位 A−7:8位 A−8:8位 A−2(self):7位 ところでこの時点で、ゴール領域への距離の順位がわか
っていない領域は、A−5,A−2である。そこで仮想
事例hの順位から、A−5はA−2よりもゴール領域に
近づく領域であることがわかる。したがって、遷移可能
領域のゴール領域への近さの最終決定は次のようにな
る。
【0095】 A−8<A−7<A−5<A−2(self)<A−1 以上の一般的な処理が、図14に示すステップS42→
S43→S44→S45→S43→S44のルーチンに
おいて行われる。また、この処理のイメージ図を図15
に示す。図15において、現在所属している領域からそ
の周囲の遷移可能領域が導き出され、それにゴール領域
までの近さが順位づけされているのがわかる。
【0096】再び図9に戻って、全体の制御処理の説明
を続ける。ステップS16において上述のアクチュエー
タ操作により修復操作が行われた後、故障診断がされる
(ステップS17)。この故障診断は、ステップS14
で説明した内容と同じ内容である。すなわち、図10に
示すサブルーチンに従って故障診断が行われる。
【0097】その後、故障判定がされる(ステップS1
8)。故障判定は、ステップS12で行ったのと同じよ
うに、コピー濃度センサOsの出力が図3に示す値と比
較されることにより行われる。そして、故障判定の結
果、故障症状が発生しない状態、すなわちコピー濃度セ
ンサOsの出力値が故障判別基準値(図3)の正常画像
範囲内になった場合は修復処理が成功したとして処理は
終わる。
【0098】一方、故障判定の結果、未だ故障症状が発
生していると判別されると、ステップS17で行われた
故障診断により決定された領域は、ステップS14で決
定された領域から変わったか否かの判別がされる(ステ
ップS19)。もし、所属領域が変化していないのであ
れば、たとえば上述の具体例の場合は、所属領域が領域
A−1のまま変化していないのであれば、次いで修復操
作に関係したアクチュエータの操作領域が判定される
(ステップS20)。そしてアクチュエータの操作領域
が操作限界内にあれば、再度ステップS16に戻り修復
操作が行われる。
【0099】このことを図解的に表わしたのが上述の図
8であり、図8において、1つの矢印は1回の修復操作
で変化した変化量を示している。修復に関係するアクチ
ュエータは、その操作領域内では複数回操作が行われ、
複数回の操作により領域が変化することがあることがわ
かる。ステップS20において、アクチュエータが操作
限界外になったときには、それ以上のアクチュエータ操
作は不可能であるから、その場合はゴール領域がトレー
ドオフできるか否かの判別がされる(ステップS2
2)。このゴール領域のトレードオフとは、ステップS
13で設定されたゴール領域、たとえば上述の具体例で
は領域A−19を他の領域、たとえば領域A−18に変
更するということである。もしゴール領域がトレードオ
フできないのであれば、この修復操作は失敗したとして
処理が終わる。
【0100】ステップS19において、領域が変わった
か否かが判定され、領域が変わった場合には、その変わ
り方が遷移則に矛盾しているか否かの判別がされる(ス
テップS21)。遷移則に矛盾しているか否かの判別
は、作業スクリプトに記述された遷移可能領域に領域が
変わったか否かに基づいてなされる。すなわち、或る作
業スクリプトに記述された修復操作を行った結果、その
作業スクリプトに記述された遷移可能領域ではなく異な
る領域に遷移した場合には、遷移則に矛盾していると判
定される。矛盾していなければ、再度ステップS14に
戻り故障診断が行われて処理が繰り返される。
【0101】ステップS21において、もし、遷移則に
矛盾する領域に遷移したと判定された場合には、たとえ
ばセンサ感度の低下等によって診断の分解能が変化した
と考えられるから、そのような状態で修復作業を継続す
るのは危険である。したがって、その場合は作業を強制
的に中断して終了してもよい。あるいは、このフローチ
ャートに示すように、ゴール領域がトレードオフできる
か否かの判別がされ(ステップS22)、トレードオフ
できる場合は、ゴール領域を再設定して(ステップS2
3)、ステップS14の故障診断からの処理を繰り返せ
ばよい。
【0102】さらに、上述した図9におけるステップS
14またはS17の故障診断において、図16に示すよ
うな処理を行い、診断精度の向上を図ってもよい。図1
6のフローチャートを参照して説明すると、まず故障診
断をし(ステップS51)、作業スクリプトの検索をし
(ステップS52)、その作業スクリプトに記述されて
いる修復操作を実行する(ステップS53)。
【0103】そして作業スクリプトに記述された修復操
作を実行した結果遷移則に矛盾した領域遷移がないか否
かの判別がされる(ステップS54)。そして作業スク
リプトの修復操作をすべて実行したか否かが判別され
(ステップS55)、すべて実行していなければ、残り
の作業スクリプトの修復操作を実行する(ステップS5
3)。
【0104】このようにして、作業スクリプトに記述さ
れた全ての修復操作を実行して、作業スクリプトに記述
されている領域遷移が生じた場合には、故障診断は成功
したと判定される。もし遷移則に矛盾した領域遷移が生
じたときには故障診断は失敗したと判定される。たとえ
ば、故障診断の結果、現在の所属領域がA−1とすれ
ば、各操作によりA−4,A−2,A−3に遷移するは
ずである。これらすべての遷移が生じる場合には、セン
サ出力に基づいて判定された診断結果、すなわち現在の
所属領域がA−1であるとした故障診断は正しいと確認
できる。
【0105】もし、この図16に示す処理で診断失敗と
判定された場合は、センサ出力が正しくなく、たとえば
センサ感度の低下等による誤診断と判定できる。上述の
説明では、この図16に示す処理は、図9におけるフロ
ーチャートのステップS14またはS17の故障診断に
おいて行うことができる旨述べたが、この図16に示す
処理は、図9に示すフローチャートの処理とは全く独立
して、任意のタイミングで故障診断を行い、センサ出力
の正しいことを確認するものであってもよい。
【0106】以上説明したこの実施例にかかる自己診断
および自己修復機能を備えた電子写真複写機は、機械組
み込みソフトウェア部を構成するマイクロコンピュータ
等からなるシステムとして、MS−DOS上のC++言
語を用いて記述し、システム容量は約280KBで具体
的に構成することができた。また、このシステムを用い
て実際に故障診断および故障修復の処理、すなわち図9
に示すフローチャートの処理を行わせたところ、修復に
要する時間は故障発生時の対象の状態によっても変動す
るが、数分以内で完了することが実験によって確認され
た。
【0107】なお、作業スクリプトにおけるアクチュエ
ータ操作量は、固定値としてもよいし、操作の結果にお
じて可変としてもよく、アクチュエータ操作量を可変と
すれば修復処理の効率を向上させることができる。次
に、この発明の他の実施例について説明をする。上述の
実施例では、仮想事例保持部12(図2参照)には、故
障症状ごとに仮想事例が記憶されており、かつ、故障症
状ごとの分割領域が定められており、各領域に対応し
て、修復時のアクチュエータ操作内容と領域変化との関
係を表わす知識である作業スクリプトが、作業スクリプ
トテーブル15(図2参照)に設定されていると説明し
た。
【0108】しかし、作業スクリプトテーブル15を設
けずに、分割された領域ごとに、表8に示すように、そ
の領域における事例順位だけでなく、その領域における
修復方法が記述されていてもよい。
【0109】
【表8】
【0110】表8において、記述された修復方法におけ
るHl、Vn 、Vbは操作すべきアクチュエータパラ
メータごとの操作量を示しており、操作量の前に付され
た+はそのアクチュエータを上昇させることを意味し、
−はそのアクチュエータを下降させることを意味してい
る。表8が予め記憶されている場合には、次のような展
開案1または展開案2の処理を行うことができる。
【0111】すなわち、展開案1として、表8に示すよ
うに、予め各領域に修復方法が記述されているから、故
障発生時において、所属領域が判定されると、その所属
領域に記述されている修復方法を、修復方法に記述され
ている比率で故障症状が直るまで行うことができる。つ
まり、領域がどのように遷移していくかの修復過程は扱
わずに、故障発生時に所属している領域から一気にゴー
ル領域に向けて修復を行うことができる。
【0112】また、展開案2として、次のように修復処
理を行うことができる。まず、故障発生時に所属してい
る領域に記述されている修復方法を行い、領域遷移が起
こるまで修復を行う。そして領域遷移が起こった場合に
は、その遷移した領域に記述されている修復方法を行
い、領域遷移を生じさせる。このようにして、ゴール領
域まで修復過程を扱いながら領域を遷移させていくこと
ができる。
【0113】上述した展開案1および展開案2のイメー
ジ図を図17に示す。上記展開案1および展開案2は、
最初に説明した実施例に比べて簡易な修復処理を行う実
施例であるが、さらにより簡易な修復処理を行う実施例
として次のような実施例を作成することができる。図4
に示すパラメータモデルに基づいて仮想事例を生成する
場合に、次のような限定を付す。すなわち、たとえばコ
ピー濃度パラメータOsが異常を示す場合、その原因
は必ず単一パラメータの変化に起因すると限定し、か
つ、パラメータ変化はセンス対象パラメータ(図4に
おいて〇で囲ったパラメータ)に必ず影響を与えてい
る、と仮定するのである。そうすると、,の条件下
で仮想事例を生成すれば、たとえば故障症状「画像かぶ
り」における仮想事例は、表1に示すように8つになら
ず、表9に示す仮想事例a,e,f,gの4つになる。
【0114】
【表9】
【0115】そこで、この4つの仮想事例に対して、そ
れぞれ修復方法を予め記述しておく。そして故障診断結
果に応じて一致度が最も高い仮想事例に記述された修復
方法を実行する。そして修復が実行される度に、故障診
断を行い、最も一致度が高い仮想事例を検出して、その
仮想事例に記述された修復方法を実行する。このような
実施例によれば、仮想事例記憶部の容量が少なくても処
理が行える装置を提供することができる。
【0116】なお、この発明は、以上説明した実施例に
具体的に限定されるわけではなく、請求の範囲に基づい
て種々の具体例が考えられるものである。
【0117】
【発明の効果】この発明によれば、画像形成装置に故障
症状が生じたときに、その原因である故障を仮想事例に
基づいて短時間で自己診断することができる。また、自
己診断の結果、予め記憶されている操作情報であるアク
チュエータの操作内容および操作によって予測される遷
移可能な領域に装置状態が移るか否かが確認される。よ
って、装置に備えられたセンサの感度等の低下がないか
を確認しながら、正しい自己診断が可能な画像形成装置
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係る小形の電子写真複写
機の機械構成図である。
【図2】図1に示す小形の電子写真複写機の機能ブロッ
ク図である。
【図3】上記小形の電子写真複写機における故障判別基
準値の一例を示す図である。
【図4】図1に示す小形の電子写真複写機の簡略化した
パラメータモデルの図である。
【図5】画像かぶり時に用いるDs,Vs,Xのファジ
イメンバーシップ関数の一例を示す図である。
【図6】疑似故障法(IF法)の処理の一例を表わすフ
ローチャートである。
【図7】故障症状「画像かぶり」において、電子写真複
写機の現在の状態位置pから各仮想事例a〜hまでの距
離を表わすイメージ図である。
【図8】修復過程における遷移則とパスとの関係を表わ
す図解図である。
【図9】この実施例にかかる電子写真複写機における診
断/修復推論部において行われる制御の全体の手順を表
わすフローチャートである。
【図10】故障診断処理の具体的な内容を表わすフロー
チャートである。
【図11】ファジイ定性値におけるニュートラルスペー
スを説明するための図である。
【図12】ファジイ定性値におけるニュートラルスペー
スを3次元量空間で視覚化した図である。
【図13】ファジイ定性値におけるニュートラルスペー
スに存在する各センサ値の存在パターンを表わす図であ
る。
【図14】修復操作の具体的な処理内容を表わすフロー
チャートである。
【図15】遷移可能な領域間のゴール領域への近さを決
定するための処理を表わすイメージ図である。
【図16】診断精度の向上を図るための処理内容を示す
フローチャートである。
【図17】この発明の他の実施例にかかる展開案1およ
び展開案2のイメージを表わす図である。
【符号の説明】
1 感光体ドラム 2 メインチャージャ 3 ハロゲンランプ 4 現像装置 5 転写・分離チャージャ 2C メインチャージャコントローラ 3C ハロゲン光量コントローラ 5C 転写チャージャコントローラ 11 診断/修復推論部 12 仮想事例保持部 13 メンバーシップ関数生成部 14 疑似故障発生部 15 作業スクリプトテーブル 16 仮想事例コンパイラ X 光量センサ Vs 表面電位センサ Ds トナー濃度センサ Os コピー濃度センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 冨山 哲男 千葉県千葉市花園町1035 東大宿舎2− 203 (72)発明者 ▲吉▼川 弘之 東京都千代田区四番町8四番町住宅804

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】装置の予め定める部位に設けられ、所定の
    物理量または物理量の変化を検出するためのセンサ手
    段、 装置の予め定める部位に設けられ、所定の操作を行うた
    めのアクチュエータ手段、 前記センサ手段の検出値をファジイメンバーシップ関数
    を用いてファジイ定性値に変換するための変換手段、 装置に故障症状が生じたときの装置のとり得る状態が定
    性値で表わされた複数の仮想事例が記憶された事例記憶
    手段、 前記変換手段で変換されたファジイ定性値と、前記事例
    記憶手段に記憶された複数の仮想事例とを比較すること
    によって、装置の現在の状態を診断する診断手段、 装置のとり得る定性量空間が複数の領域に分割され、各
    領域に対応して、修復のための操作情報として前記アク
    チュエータ手段の操作内容と、その操作によって遷移可
    能な領域とが記憶された操作情報記憶手段、および前記
    診断手段で診断された装置の現在の状態が前記分割され
    た複数の領域のいずれの領域に属するかを判断し、属す
    る領域の操作情報を前記操作情報記憶手段から読出し
    て、操作情報に含まれるアクチュエータ手段の操作を全
    て実行し、その結果操作情報に記憶された遷移可能な領
    域に矛盾なく装置状態が遷移するか否かを判別する判別
    手段、を含むことを特徴とする自己診断機能を有する画
    像形成装置。
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