JPH058879Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、スクリーニング作業における釣菌作
業を自動化する装置に関し、更に詳しくは従来の
スクリーニング作業全体の作業手順を変えること
なく、容易に導入することができ、又、導入した
ときには大幅な労力と時間の節約が可能となるコ
ロニ釣菌装置に関する。

〔従来の技術〕

生物科学の分野においては、有用微生物の選別
はスクリーニング作業によつて行われる。このス
クリーニング作業とはシヤーレ上で培養した細菌
やバクテリア等の微生物を培地が異なる別のシヤ
ーレに移植して繁殖させ、更にこのシヤーレで繁
殖した微生物を別のシヤーレに移植して繁殖させ
るという一連の作業の繰り返しであり、この反復
作業の過程で徐々にコロニの選別をはかるという
ものである。

そして、この作業には膨大な時間と労力が必要
であることから、従来この作業は分業によつて行
われており、その分業は主としてシヤーレ上に繁
殖したコロニの中から一定の条件を満足するコロ
ニを選び出して当該コロニの所在位置を指定すべ
くシヤーレ下面にインク等で印付けを行うマーキ
ング作業と、このマークに従つて指定されたコロ
ニ（以下、指定コロニと称す）を釣菌して別のシ
ヤーレに移植する釣菌作業とから成立つている。
ところでマーキング作業には、コロニを識別する
必要から一定の専門知識が要求されるが、他方、
釣菌作業は比較的単純であることから専門知識は
要求されず、従つてそれぞれの作業に従事する者
としては、マーキング作業には研究者が、釣菌作
業には一般の作業者が従事している。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら、釣菌作業は膨大な回数反復する
必要があるため、釣菌作業に従事する作業者は必
然的に多くなつて人件費が多額となる問題があつ
た。又、釣菌作業は単調ではあるが作業対象が微
細であることから、細心の注意が必要であり、作
業者を大変疲労させてもいた。加えて釣菌作業に
人手が介在することにより雑菌の混入が避けられ
ないという問題点もあつた。

〔問題点を解決するための手段〕

本願考案はかかる現況に鑑みてなされたもので
あり、熟練研究者が行なつているマーキング作業
は改変することなくそのまま踏襲し、次段階の単
調労働である釣菌作業のみを機械で代替すること
により、高価な装置を用いることなくスクリーニ
ング作業の省力化をはかることを目的とするもの
で、その要旨とするところは、釣菌しようとする
コロニの所在位置を示す指定マークが下面に付さ
れたシヤーレの下方に配置され、前記指定マーク
の概略位置を認識する広視野、低倍率の下部視覚
手段と；前記シヤーレの上方に配置され、前記下
部視覚手段から伝達される情報に基づいて、２次
元若しくは３次元的に移動し、シヤーレ表面を分
割撮像して釣菌対象であるコロニの位置を正確に
特定する狭視野、高倍率の上部視覚手段と；前記
下部視覚手段及び前記上部視覚手段とから伝達さ
れる情報に基づいて３次元的に移動して、指定コ
ロニを釣菌する釣菌部とよりなるコロニ釣菌装置
を構成したことにある。

〔作用〕

このような構成のコロニ釣菌装置の作動態様は
以下の如くである。先づ従来通り研究者によつて
コロニの所在位置がマーキングされたシヤーレを
上部視覚手段と下部視覚手段の中間に介在させ、
下部視覚手段でシヤーレを下面から撮像する。下
部視覚手段としては、広視野なものを用いている
ので、シヤーレ下面の多数のマークは一括して撮
像され、それぞれのシヤーレ下面における位置
や、マーク相互の位置関係は容易に認識される。
次いで各マークの中から次に釣菌すべきコロニの
所在位置を指定しているマークを特定し、このマ
ークの概略位置を検出するとともに、検出した位
置情報に基づいて上部視覚手段を２次元若しくは
３次元的に移動させて、上部視覚手段の視野内の
略中心に指定コロニの像が位置するようにする。
上部視覚手段の分解能は下部視覚手段の分解能よ
りも高く設定されているので、釣菌対象であるコ
ロニの像は高精度に撮像され、又、視野は狭く画
像情報は少ないので画像処理は高速になされ、指
定コロニのシヤーレ上の所在位置は正確且つ高速
に検出することができる。

そして、このようにして確定されたコロニの位
置情報に基づいて釣菌ヘツドを３次元的に移動さ
せ、その採取端部により釣菌を行なうものであ
る。

〔実施例〕

次に本考案の詳細を実施例にもとづき説明す
る。第１図として示したものは、本考案にかかる
コロニ釣菌装置の一実施例の要部説明図である。
図中１は、コロニが培養されたシヤーレであり、
シヤーレ内生育培地の表面には例えば第２図イに
示す如く、コロニａ，ｂ，ｃ，ｄ，ｅが培養され
ており、他方、第２図ロに示す如くシヤーレ１下
面であつて、前記コロニａ，ｂ，ｃ，ｄ，ｅのう
ち釣菌対象となるコロニｂ，ｃ，ｄが存在する部
位の垂直下方位置には、コロニの所在位置を示す
指定マークb′，c′，d′が付されている。この指定
マークb′，c′，d′は従来通り、熟練した研究者に
よつて付されるものであるが、このマークはコロ
ニの概略位置が指示できれば充分であることから
さほどの精度は要求されない。シヤーレ１は透光
性を有するテーブル２に載置されており、該テー
ブル２の下方には反射鏡３が、又、その側方には
下部視覚手段４が配置されており、シヤーレ１下
面の像が下部視覚手段４で撮像できるように構成
されている。図示した実施例では、下部視覚手段
は水平方向に配置されているが、これは限定され
るものではなく、シヤーレ１下面が広範囲に撮像
できる配置であれば他のものも適宜採用され、例
えば反射鏡３を排除して下部視覚手段４をシヤー
レ１下方に直接垂設してもよい。

下部視覚手段４としては、シヤーレ１下面を広
範囲に撮像する必要から広視野、低倍率なものが
用いられる。本実施例では、120mm×90mmの視野
を有するテレビカメラを用い、シヤーレ１の下面
全体を一括撮像することを可能にしている。

一方シヤーレ１上方には上部視覚手段５が、該
上部視覚手段５の水平方向への移動を可能にする
移動手段６に関係づけられて配置されている。上
部視覚手段５は、シヤーレ１の培地表面を分割撮
像して、得られた画像情報から指定コロニを画像
検索するもので、コロニの正確な撮像が必要なこ
とから狭視野、高倍率なものが用いられる。本実
施例では30mm×22.5mmの視野を有したものを用い
ている。移動手段６は下部視覚手段４で得られた
画像情報に基づき上部視覚手段５を水平方向に移
動させるものであり、水平移動が可能であれば任
意の機構が用いられ、更に上下動をも可能として
上部視覚手段５の３次元的に移動を行うこともで
きる。

図中７として示したものは、コロニの釣菌を行
う釣菌部であり、図例のものは採取部にナイロン
系樹脂やビニロン系樹脂よりなる樹脂細線を用い
ている。樹脂細線は上方に配置された収納リール
８に巻回収納されており、各回の釣菌作業毎に牽
引ローラ９によつて下方に繰り出される構成とし
ている。釣菌部７は上部視覚手段５の移動手段６
に関係づけられ、上部視覚手段５の水平移動に伴
つて移動し、上部視覚手段５の視野内に捉えられ
た指定コロニに対する釣菌を可能にしている。
尚、釣菌部の構造は図示したものに限定されず、
各種態様のものが使用可能である。

このような構成のコロニ釣菌装置は、次のよう
にして用いられる。

先ず、マーキングを施したシヤーレ１をテーブ
ル２上に載置してシヤーレ１下面全体を下部視覚
手段により一括撮像し、それぞれの指定マークの
概略位置を認識する。次に、多数の指定マークの
中から釣菌しようとするコロニの指定マークを特
定し、当該指定マークの位置情報を図示しない制
御部を経由して移動手段６へ送出し、該移動手段
６の動きを制御して上部視覚手段５を指定コロニ
の上方位置へ移動させる。この移動は上部視覚手
段５の視野の略中央に当該コロニを位置させるよ
うに行なうことが理想的ではあるが、この移動は
シヤーレ１下面の指定マークに案内されておこな
われるため、指定マークの付け方によつては多少
の誤差が生じることがある。しかしながら、本考
案ではこの指定マークを目印にした上部視覚手段
５の移動の目的は指定コロニを視野内に収めるこ
とにあるので、移動後に指定コロニが撮像可能で
ありさえすれば視野の中央に指定コロニが正確に
位置する必要は全くない。

以上で下部視覚手段４の役割は終わり、次いで
上部視覚手段５により、視野内に捉えられたコロ
ニの中から指定コロニを識別する画像検索が行わ
れる。上部視覚手段５の視野は狭く、特に本実施
例では、下部視覚手段４の視野の1/16程度として
いるので、この範囲内に入るコロニの数は極めて
少なく、従つて画像情報も少ないので、視野の中
から指定コロニを画像検索して、その所在位置を
検出することは比較的容易である。又、画像情報
が少ないので演算も高速に行なえる。上部視覚手
段５によつて指定コロニの正確な所在位置が検出
されれば、この情報に基づいて、釣菌部７を水平
移動させるとともに、樹脂細線を所定長繰り出
し、次いで釣菌部７を垂直降下させて、その端部
でコロニを採取するものである。採取したコロニ
は、例えばシヤーレ１と並設された図示しない移
植用シヤーレに釣菌部７を移動させることによつ
て移植するものである。

このような構成のコロニ釣菌装置は、マーキン
グされたシヤーレをテーブル上に載置するだけ
で、指定コロニを識別して別のシヤーレにコロニ
を移植する作業を自動的に行うので、スクリーニ
ングに要していた時間と労力を大幅に節約するこ
とができる。又、培養シヤーレ及び移植シヤーレ
を大量に収納できるストツカーをそれぞれ設けて
マーキング作業を一括して行い、マーキング後の
シヤーレをストツカーに収納しておいて、順次釣
菌することとすれば、釣菌作業中研究者は他の業
務に専念することができるものである。

〔考案の効果〕

本考案にかかるコロニ釣菌装置は上記のような
構成であり、従来のスクリーニング作業のうち、
専門知識が要求されるマーキング作業は従来通り
研究者にまかせ、単調ではあるが膨大な労力と時
間を費やしていた釣菌作業のみを本装置で行なう
こととしたので、従来から行なわれているスクリ
ーニング作業全体の作業手順を変えることなく、
従来設備を踏襲したまま本装置を導入することが
でき、導入後は従来多大の時間と労力を要してい
たスクリーニング作業は大幅に省力化できるもの
である。又、釣菌作業から人手を排除することに
よつて、雑菌の混入も防止でき、より信頼性の高
いスクリーニング作業が可能となるものである。
更に本考案にかかるコロニ釣菌装置は、機械で構
成した場合、極めて複雑な機構を要求されるマー
キングに相当する部分、即ちコロニの種類や生育
状態等を分析する機構を含まないので、装置構成
が簡略化でき、処理速度の高速化がはかれるとと
もに本装置の製造原価の低減も可能となるもので
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案にかかるコロニ釣菌装置の一実
施例の要部説明図、第２図イは、コロニが培養さ
れたシヤーレの平面図、第２図ロは同シヤーレの
底面図である。 １……シヤーレ、２……テーブル、３……反射
鏡、４……下部視覚手段、５……上部視覚手段、
６……移動手段、７……釣菌部、８……収納リー
ル、９……牽引ローラ。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 釣菌しようとするコロニの所在位置を示す指定
   マークが下面に付されたシヤーレの下方に配置さ
   れ、前記指定マークの概略位置を認識する広視
   野、低倍率の下部視覚手段と、 前記シヤーレの上方に配置され、前記下部視覚
   手段から伝達される情報に基づいて、２次元若し
   くは３次元的に移動し、シヤーレ表面を分割撮像
   して釣菌対象であるコロニの位置を正確に特定す
   る狭視野、高倍率の上部視覚手段と、 前記下部視覚手段及び前記上部視覚手段とから
   伝達される情報に基づいて３次元的に移動して、
   指定コロニを釣菌する釣菌部と、 よりなるコロニ釣菌装置。