JPH0582795U

JPH0582795U - ブースター付ウォータジェット推進機

Info

Publication number: JPH0582795U
Application number: JP023290U
Authority: JP
Inventors: 廣大西
Original assignee: 川崎重工業株式会社
Priority date: 1992-04-13
Filing date: 1992-04-13
Publication date: 1993-11-09

Abstract

(57)【要約】【目的】巡航時の推力を発生することができる推進機
にブースターを付設することにより、噴出ノズルから噴
出するジェット水流を一時的に加速して推力を増加させ
る。【構成】ウォータジェット推進機１の噴出ノズル４部
壁面に圧縮空気の吹出口８を設けるとともに、この吹出
口８に圧縮空気Ａを供給する圧力タンク１２を設け、上
記吹出口８から圧縮空気Ａを吹出して上記噴出ノズル４
から噴出するジェット水流を一時的に加速する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、一時的に推力を増加させるウォータジェット推進機に関し、更に詳しくは噴出ノズル部に圧縮気体を吹出して一時的に推力を増加させるブースター付ウォータジェット推進機に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

近年、高速域で推進効率が高いという理由から高速船の主推進機としてターボポンプ式のウォータジェット推進機を採用する船が増加している。このウォータジェット推進機は、船体の後端にケーシングが船体と一体的に固定され、このケーシングの船首側が船底に開口した取水口を形成し、船尾側が船尾に開口した噴出ノズルを形成し、これらの中間部分に羽根車とガイドベーンが設けられたものである。そして、船首側に設けられた主機関によケーシング内の羽根車を回転させることにより、船底に設けた取水口から吸い込んだ水を加速して船尾からジェット水流として噴出して推力を発生する推進機である。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

上記従来からのターボポンプ式ウォータジェット推進機では、低速状態では羽根車上流に充分な水の押し込み作用が働かないので主機関を定格回転で回すとキャビテーションを起こしてしまう。従って、低船速の状態では定格回転で回すことができず、推力不足を生じるという問題がある。このことは、船速が増加して羽根車上流に充分な水の押し込み作用が働くまでは定格回転まで回すことができず、例えば、モーターボートであれば、港湾を出てからの加速性能を悪くし、また、水中翼船であれば、港湾を出ても低船速では艇走から翼走に移ることができないという事態を招くことになる。

【０００４】そこで、キャビテーションを起こし難い機構を設けることにより、低速域でも大きな推力を得ることができるようにしたウォータジェット推進機がある。その機構の一つとして、主羽根車の入口側にインデューサと呼ぶ軸流羽根車を主羽根車と同軸に取付けることにより吸い込み性能を改善しようとするものがある。しかし、この場合には、主羽根車とともにインデューサも主機関で駆動するので全体としての効率がダウンしてしまい、主機関自体を大型化する必要を生じてしまう。また、この場合には、推進機自体も高価なものとなってしまう。

【０００５】また、例えば、水中翼船のように船体が揚力により浮上する離水直前の低速域に大きな船体抵抗のピークを持つ船にあっては、このピーク時の推力に見合った推力を発生する馬力を有する主機関とその推進機を設ける必要があり、巡航時の推力に比べて大きな推力を発生する推進機を設けることとなる。このことは、推進機自体も大型化してしまうので重量の増加を伴い、推進性能に悪影響を及ぼすこととなり、特に、高速船においては船体自体を軽量化するという要請にそぐわない。

【０００６】なお、船をジェット推進させる従来技術として、圧縮空気を用いた実開平２− １００９９３号公報記載の考案がある。この公報記載の考案は、高圧エアーを噴射ノズルから噴出させることにより水を加速して前進あるいは後進の推力を得るものであり、本考案のように圧縮空気で一時的に推力を増加させるものではない。また、この装置では、常時圧縮空気を供給する必要があり、通常のウォータジェット推進で羽根車を回す代わりに、空気圧縮機を主機で回さなければならなくなり、空気圧縮機とウォータジェット部との総合効率が充分でないとか、巨大な圧縮機が必要となる等の問題を生じ、一時的な推力を増加を目的とするための装置としては現実的でない。

【０００７】本考案は上記課題に鑑みて、巡航時の推力を発生することができる推進機にブースターを付設することにより、噴出ノズルから噴出するジェット水流を一時的に加速して推力を増加させることができるブースター付ウォータジェット推進機を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために、本考案におけるブースター付ウォータジェット推進機は、ウォータジェット推進機の噴出ノズル部壁面に圧縮気体の吹出口を設けるとともに、該吹出口に圧縮気体を供給する圧縮気体供給手段を設け、上記吹出口から圧縮気体を吹出して上記噴出ノズルから噴出するジェット水流を加速するようにしたことを特徴とするものである。

【０００９】

【作用】

上記構成によって、通常のウォータジェット推進時に噴出ノズル部壁面に設けた吹出口から圧縮気体を吹出すことにより噴出ノズル中で膨張させ、その時のエネルギをジェット水流に転化させてジェット水流を一時的に加速させる。この時、噴出ノズル内のジェット水流中に吹出された圧縮空気が膨張して水の断面積を減少させるので、流体における連続の式の関係から流速が増加する。これにより、噴出ノズルからのジェット流速を増加させて船体に対する推力を一時的に増加させることができる。

【００１０】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では圧縮気体として圧縮空気を用いて説明する。図１は船体に設けたウォータジェット推進機の側断面図であり、船体の後端に設けられたウォータジェット推進機１は、ケーシング２が船体Ｈに固定されて船体と一体的に形成されており、このケーシング２は、船首側が船底に開口した取水口３を形成し、船尾側が噴出ノズル４を形成している。そして、これらの中間部分には羽根車５が設けられており、この後流側にはガイドベーン６が設けられている。また、羽根車５には図示しない主機関から動力を伝達する駆動軸７が連結されている。

【００１１】これらの構成は、従来のウォータジェット推進機と同一の構成であるが、本考案においては、上記ケーシング２の船尾側に形成された噴出ノズル４部に、圧縮空気Ａを高速で吹出すための吹出口８を設けている。この吹出口８は、この実施例では、噴出ノズル４の円周方向外周から内周の後方へ向けて傾斜するように複数個設けられている。また、この吹出口８の外周には円環状の供給環９が設けられており、上部にこの供給環９へ供給する供給孔１０が形成されている。

【００１２】一方、この供給環９に圧縮空気Ａを供給する系統は、空気圧縮機１１により圧縮した空気が圧力タンク１２（貯気槽）に蓄圧され、この圧力タンク１２からの圧縮空気が圧力調整弁１３により調圧されて電磁弁１４に供給され、電磁弁１４からの圧縮空気がチェック弁１５を介して供給環９の供給孔１０に供給されるよう接続されている。なお、この実施例では上記構成により圧縮気体供給手段を構成しているが、吹出口８に圧縮された気体を供給できる構成であればよい。そして、供給環９に供給された圧縮空気は、上記噴出ノズル４に設けられた吹出口８からノズル内の水流中に吹出される。

【００１３】このように構成された本考案のブースター付ウォータジェット推進機１は、以下のように作動する。先ず、空気圧縮機１１により圧力タンク１２の空気が所定の圧力になるよう蓄圧する。そして、船体Ｈをキャビテーションを起こさない程度の船速で航行させ、最も推力を必要とする時、例えば、モーターボートであれば港湾を出て加速する時等であり、水中翼船であれば艇走から翼走に移るための離水（テイクオフ）時に、手動あるいは船速等に連動して自動的に電磁弁１４を切り換えることにより、圧力タンク１２に蓄圧した圧縮空気Ａを吹出口８から吹出す。

【００１４】この時、低圧の噴出ノズル４部に圧縮空気Ａを吹出すと、圧縮空気Ａは下流に流されながら急激に膨張し、その膨張によるエネルギがジェット水流に転化され、ジェット水流を加速させる。また、噴出ノズル４内では、ジェット水流中に混入させた圧縮空気Ａの占める割合だけ水の通過する断面積は減少し、その割合だけ流速が上昇する。これにより、噴出ノズル４から噴出されるジェット水流の流速が増加し、結果としてウォータジェット推進機１の推力が一時的に増加する。

【００１５】このことは、ウォータジェット推進機１によりジェット水流として噴出する水が、断面積が異なる取水口３と噴出ノズル４との間を流れる流体であるので、流体における連続の式を満足していなければならないことから明らかである（ρＡｖ＝一定 ρ；密度、Ａ；断面積、ｖ；速度）。

【００１６】つまり、密度を一定と考えると、取水口３から吸い込まれる流量と噴出ノズル４から噴出される流量が一定であるので、取水口３と噴出ノズル４との断面積が変化していれば、取水口３と噴出ノズル４とでは流速が変化していることになる。すなわち、各断面を一定時間に流れる流量は一定であるので、今、噴出ノズル４に圧縮空気を吹出すことにより、圧縮空気の膨張エネルギをジェット水流に転化するとともに、噴出ノズル４の流体通過面積を減らすと、ジェット水流の流速が増加し、これによってウォータジェット推進機の推力を増加させることができることになる。なお、実際に船体へ作用しているスラストＴは、運動量の時間的変化であり、羽根車５により力を与えられたジェット水流のρＱｖ_Jから取水口のρＱｖ_Sを減じた値、すなわちＴ＝ρＱｖ_J−ρＱｖ_Sとなる。

【００１７】以上のように、本考案によれば、従来のウォータジェット推進機の噴出ノズル４部に圧縮空気Ａを吹出すための吐出口３を設け、この吐出口３から圧力タンク１２に溜めておいた圧縮空気を高速で吹出してジェット水流を一時的に加速することにより、大きな推力を必要とする短時間のピークロードに対処することができるウォータジェット推進機となる。

【００１８】また、本考案におけるウォータジェット推進機１は、定常航行時（巡航時）には羽根車５のみによる運転を行い、圧縮空気によるブーストは、全運航時間から見れば極めて時間の短い急加速時のみとすることにより、特に圧縮空気を作りだすための大型空気圧縮機１１を必要とすることがない。このため、空気圧縮機１１は小さなものでよく、水中翼船のように離水時に最大推力を必要とするような船舶では、圧縮空気を作るための特別な設備を設ける必要もないので非常に都合が良い。また、圧縮空気は極めて短い時間のみ使用するので、港湾に圧縮空気を蓄圧する設備を設け、入港時に蓄圧した圧力タンク１２を取り替えるようにしてもよい。

【００１９】なお、吹出口８に圧縮空気Ａを供給する手段としては、ケーシング２の周囲に設けた複数の吹出口８からの配管を、チェック弁１５からの配管に接続するように構成してもよいが、上記実施例では、吹出口８を噴出ノズル４の壁面に直接穿設し、その外周部に供給環９を設けて吹出口８と供給環９をケーシング２と一体的に形成しているので、チェック弁１５からの配管を供給環９の一箇所に接続するだけでよく、分解・組立及び保守・点検も容易である。

【００２０】また、羽根車により旋回方向速度を与えられた水流は、羽根車の後流側に設けられたガイドベーンにより逆方向に旋回させられて直進化された状態で吐出されるが、圧縮空気を吹出す時点のジェット水流に旋回成分が残っていれば、その旋回成分を取り除く方向に圧縮空気を吹出してもよい。

【００２１】更に、噴出ノズル４の形状は、直線型，末広型，サーキュラ型等の種々な形式に対応することができ、圧縮空気吹出口８の数，向き，位置も種々のケースが考えられ、吹出す気体も必ずしも圧縮空気である必要はなく、窒素ガス等でもかまわない。

【００２２】

【考案の効果】

本考案によれば、噴出ノズル部に圧縮気体を吹出すことによりジェット水流を一時的に加速して、羽根車の回転を上げることなく一時的に推力を増加させることができる。

【００２３】また、一時的に大きな推力を得るための大きな推進機を設ける必要がなくなるので主機関及び推進機を小型化することができ、これにより船体自体を軽量化することができるので、特に水中翼船のように船体が離水する直前の低速域に大きな船体抵抗を持つ船舶にあっては好適なウォータジェット推進機となる。

【００２４】更に、推力を増加させるためにキャビテーションを起こし難い機構を設ける必要もなく安価なウォータジェット推進機となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案のウォータジェット推進機全体を示す側
断面図である。

【符号の説明】

１…ウォータジェット推進機２…ケーシング３…取水口４…噴出ノズル５…羽根車６…ガイドベーン７…駆動軸８…吹出口９…供給環１０…供給孔１１…空気圧縮機１２…圧力タンク（圧縮気体供給手段）１３…圧力調整弁１４…電磁弁（圧縮気体供給手段）１５…チェック弁Ａ…圧縮空気Ｈ…船体

Claims

【実用新案登録請求の範囲】

【請求項１】ウォータジェット推進機の噴出ノズル部
壁面に圧縮気体の吹出口を設けるとともに、該吹出口に
圧縮気体を供給する圧縮気体供給手段を設け、上記吹出
口から圧縮気体を吹出して上記噴出ノズルから噴出する
ジェット水流を加速するようにしたことを特徴とするブ
ースター付ウォータジェット推進機。