JPH0560670A - スタツド溶接の強度判定方法及び装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 母材に溶接されたスタッドの溶接強度を直接
確認し、所定強度以下のスタッドはその場で切除し、確
認した各スタッドの溶接強度を連続記録できるスタッド
溶接強度判定方法及び装置を提供すること。 【構成】 母材２に溶接されたスタッド１に、液体圧操
作の引き抜き治具を着脱可能に取付けの上、その引き抜
き治具への液体圧の加圧によりスタッド１に対し所定の
引張力を与えること。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、母材に対して溶接され
たスタッド、特に水中の母材に水中溶接されたスタッド
が、所定の強度のもとで溶接されているかどうかを直接
判定し、確認するためのスタッド溶接の強度判定方法及
び装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】母材に対するスタッド溶接は、通常の連
続溶接と異なり、通電アークを瞬間に発し、スタッド先
端部と母材溶接部をアーク熱で溶融させ、その溶接池に
スタッドを押し込み、通電アークを切り、溶接を完了す
る等の操作を0.６秒程度で行うため、少しの誤作動や周
囲の影響で、溶接不良が発生しやすい溶接技術である。

【０００３】したがって、その溶接品質の良否は、溶接
条件の設定や、外観目視では判定することが不可能であ
る。また、溶接への期待としては、構造物を形成する構
造材料同志の接合と、構造物にかかる荷重の力の確実な
伝達がある。一方、従来の溶接は気中で発達した技術で
あり、溶接にとって水は最大の敵とされ、その水の環境
下で気中と同等の品質を得たいとするスタッドの水中溶
接においては、各種の要因で溶接不良が発生することは
当然であり、その溶接品質の良否の判定が大変重要とな
り、その良否の判定としては、母材に溶接されたスタッ
ドに対する引張強度を直接確認することが絶対的な方法
とされている。

【０００４】そこで、水中スタッド溶接の品質の良否を
判定する従来技術には２種類あり、その１つは溶接時の
電流、電圧及び溶接時間をビジグラフの波形で目視し、
記録して、その溶接品質の良否を判定するものである。
しかしながら、この方法においては、実際面でビジグラ
フの波形が良好な波形であっても、溶接ずみのスタッド
をハンマーテストによりハンマーで叩くと切除する場合
や、不良波形であっても、ハンマーで叩いても強固に溶
着されている場合もあるなど、不確実な面が多いという
問題があった。

【０００５】すなわち、この方法は、スタッド溶接中に
おける溶接条件を波形で判定するものであり、スタッド
の母材に対する溶接後の溶接結果の確認ではないことが
問題である。一方、他の方法として、溶接後のスタッド
頭部へのハンマーの打撃により溶接強度を直接確認し、
不良溶接のスタッドはその場で叩き落として切除するハ
ンマーテストの方法が一般に用いられている。

【０００６】しかしながら、この方法は、溶接後の打撃
による溶接強度の確認のため、不良溶接スタッドの切除
が目的の方法であるため、ハンマーでスタッド頭部を強
く打ちおろしたり、軽く打ちおろすのでは、正確な溶接
強度は判定できず、しかも、スタッドを下向きに曲げる
などの変形を伴うという問題がある。すなわち、ハンマ
ー打撃の時に、切除しない溶接部は、一方向からの衝撃
曲げを生じ、傷を残すという問題点もあった。

【０００７】特に、水中の金属溶接中においては、その
水自身、また、海水中でアークする際は海水の電気分解
により多量に発生する水素が、その欠陥溶接の要因とな
ると共に、低温及び水による焼入れ冷却などもその要因
となる。さらに、水蒸気によるブローホールは、それが
溶融金属内部に発生する場合は欠肉となり、それが表面
上に発生した場合はノッチとなり、また、水素により、
溶融金属自体の脆弱化をおこす水素脆性が発生したり、
急熱急冷による焼入れで金属質が粗悪組織となって粘り
がなくなるなど水中は最悪な溶接環境である。

【０００８】このような条件で、母材に対して溶接され
る多数のスタッドの水中溶接強度をそれぞれ正確に、し
かも容易に、直接確認判定でき、それらの各溶接強度の
データを連続して記録することのできる方法及び装置は
現在見当らないのが実情である。

【０００９】

【発明の解決しようとする課題】本発明は、前記従来の
問題点を解決するためになされたものであり、母材に溶
接されたスタッドの溶接強度を直接確認し、所定強度に
達しないスタッドはその場で切除すると共に、確認した
各スタッドの溶接強度を連続記録することのできるスタ
ッド溶接の強度判定方法及び装置を提供することを解決
課題としたものである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めの手段として、本発明のスタッド溶接の強度判定方法
は、母材に対してスタッド溶接などにより溶接されたス
タッドに、油圧または水圧などの流体圧操作の引き抜き
治具を着脱可能に取付け、その引き抜き治具への流体圧
の加圧によりスタッドに対し所定の引張力を与えること
により、そのスタッドの母材に対する溶接強度を判定す
るものであり、特にこの強度判定方法が水中の母材に水
中溶接されたスタッドに対して適用されることが、水中
溶接されたスタッドの信頼性を向上する上で好ましい。

【００１１】また、上記の方法を適用するスタッド溶接
の強度判定装置としては、母材に溶接されたスタッドの
ねじ部に螺合により着脱可能なねじ穴を有するボルトホ
ルダーと、そのボルトホルダーを上記母材に対して引き
離す方向に作動して、スタッドボルトに張力を与える油
圧または水圧等の流体圧操作のピストン及びシリンダー
とからなるスタッドの引き抜き治具、ならびに上記ピス
トン及びシリンダーを所定の流体圧に加圧する流体圧供
給源を設けることにより構成されるが、その引き抜き治
具のピストン及びシリンダーに加圧する流体圧を電気的
数値に変換し、かつビジグラフに連続記録する手段を設
けたり、または上記のごとく電気的数値に変換し、かつ
コンピュータに自動的にそのデータを入力させて連続記
録する手段を設けることが、各スタッドの溶接強度の記
録データを具体的な形で保存することができるので好ま
しい構成である。

【００１２】さらに、母材に溶接されたスタッドのねじ
部にボルトホルダーを螺合により着脱させる動力又は人
力によるエアレンチを設けることは、そのエアレンチの
正転及び逆転によりボルトホルダーとスタッドのねじ部
との螺合による着脱を迅速に行うことができるので好ま
しい。

【００１３】

【実施例】以下図面を参照して本発明の実施例を説明す
るが、図１は本発明のスタッド溶接の強度判定方法を実
施する強度判定装置の一実施例の部分断面で示す側面
図、図２は図１のボルトホルダーの側断面図、図３は母
材に溶接される前の水中スタッドの側面図、図４は母材
に溶接され、ナット取付後の水中スタッドの側面図であ
る。

【００１４】まず、この実施例の強度判定装置は、図３
における左端に溶接用のフラックス１Ａを、右側にねじ
部１Ｂを有するボルトからなるスタッド１を、図４のご
とく、水中にある母材２に対し、図示されていない水中
スタッドガンなどで直角方向に、溶接した後、そのねじ
部１Ｂにナット４を螺合させてなるスタッド１が所定の
強度を有する溶接がなされたかどうかを直接確認し、判
定するための装置である。

【００１５】そこで、図１に示すごとく、母材２に溶接
されたスタッド１のねじ部１Ｂに螺合により着脱可能な
ねじ穴５Ａを有する図２に示す筒状のボルトホルダー５
が設けられ、このボルトホルダー５のねじ穴５Ａを有す
る端部と反対の端部にはインパクト用こま５Ｂが固設さ
れており、このインパクト用こま５Ｂには図１で示すご
とく、エアモータ駆動のピストル形のエアレンチ６が設
けられており、このエアレンチ６をエアモーターで正転
させると、ボルトホルダー５のねじ穴５Ａにスタッド１
のねじ部１Ｂが螺合して挿着され、一方、エアレンチ６
を逆転させると、ボルトホルダー５のねじ穴５Ａとスタ
ッド１のねじ部１Ｂとの螺合が外れ、ボルトホルダー５
はスタッド１のねじ部１Ｂから離脱するようになってい
る。

【００１６】次に、上記ボルトホルダー５の外周にはコ
イルスプリング９により絶えず図１の母材２側に押圧す
るように付勢されたピストン７が遊嵌されており、その
ピストン７はシリンダー８内に内蔵され、シリンダー８
とピストン７との間隙部分の上下のシールリング１０で
かこまれた空間内に、油圧または水圧などの液体圧をか
けることにより、ボルトホルダー５を上記母材２に対し
て引き離す方向に作動するスタッド１の引き抜き治具を
構成している。

【００１７】上記の引き抜き治具のピストン７及びシリ
ンダー８を所定の液体圧で加圧してボルトホルダー５を
介してスタッド１に所定の引張力をかけるための液体、
例えばこの実施例の油圧の供給源として、図１では油圧
ホース１１を接続している。なお、図１の１２で示すの
はスプリング押え、また、１３で示すのはボルトホルダ
ー固定ナットであり、油圧ホース１１からの油圧により
ピストン７とシリンダー８との上下２個のシールリング
１０で囲まれた空間内が加圧されると、ピストン７はコ
イルスプリング９のばね力に抗して、シリンダー８内を
母材２に対して引き離す矢印Ｘの方向に押し上げられ、
それと同時に、ピストン７はボルトホルダー固定ナット
１３を介してボルトホルダー５を押し上げるので、スタ
ッド１に対して矢印Ｘ方向の引張力が与えられることに
なる。

【００１８】そこで、このスタッド１の母材２に対する
所要の溶接強度に対応した所定の油圧をピストン７に加
えることにより、スタッド１にも所定の引張力が与えら
れることになる。次に、上記の構成からなる引き抜き治
具のピストン７及びシリンダー８に加圧する油圧を電気
的数値に変換し、かつビジグラフに連続記録する適宜な
手段を設ければ、この強度判定装置により溶接強度の判
定を行なった多数のスタッド１の溶接品質を明確、かつ
具体的な形のデータとして残すことができる。

【００１９】また、上記のように加圧する油圧を電気的
数値に変換し、かつコンピュータに自動的にデータをデ
イジタルで入力させて連続記録する適宜な手段を設けて
も、同様に具体的なデータを残すことができる。以上の
構成からなる強度判定装置を水中スタッド溶接に適用す
るには、その引き抜き治具のボルトホルダー５をスタッ
ド１のねじ部１Ｂにエアモータ駆動のエアレンチ６の正
転により嵌着したことをダイバーなどが確認し、油圧ホ
ース１１経由、ピストン７及びシリンダー８に対し油圧
供給源のバルブ操作により所定の油圧をかけることによ
って、スタッド１には所定の引張力が与えられ、スタッ
ド１の溶接部に所定の強度があるかどうかが直接に確認
され、若し、強度が不充分の場合は、溶接部分の分離音
とともにスタッド１が母材２から除去されることにな
る。

【００２０】なお、充分な溶接強度があることが確認さ
れた場合は、油圧供給源のバルブ操作により、スタッド
１への引張力は緩められた後、エアレンチ６の逆転によ
りボルトホルダー５がスタッド１から離脱し、その強度
判定装置は次のスタッド１の強度確認のために移動され
ることになる。

【００２１】また、上記の実施例における図１及び図２
に示すボルトホルダー５と固定用ナット１３のかわり
に、図５の他の実施例のごとく、下端部にスタッド１の
ねじ部１Ａに嵌合、離脱自在なねじ穴１４Ａを有し、か
つ座金１５を介してスタッド１の引き抜き治具に装着す
るボルトホルダー１４を設けることも可能である。この
場合、スタッド１の母材２に対する溶接不良などのた
め、加圧時に母材２から破断されると同時に、このボル
トホルダー１４が油圧により加圧されたピストン７によ
り押し出され、スタッド１と螺合状態のまま飛び出すの
で、図示のごときストッパー１４Ｂをこのボルトホルダ
ー１４に予め取り付けておくことにより、その飛び出し
が防止できる。また、このボルトホルダー１４は、ボル
ト状になっているので、スタッド１に対する取り付けも
手動で螺合させたり、図示１に示すようなエアレンチ６
により螺合させることもできる。

【００２２】上記と同様に、図１及び図２の実施例のボ
ルトホルダー５および固定用ナット１３のかわりに、図
６及び図７の他の異なる実施例に示す形状のボルトホル
ダー１６の採用も考えられる。この場合のねじ穴１６Ａ
のスタッド１のねじ部１Ａへの取付時には、上方向に突
き出した横棒１６Ｂを手で回し、梃子の原理を利用し
て、容易に正転、逆転することにより、この装置のスタ
ッド１への嵌合、離脱が容易に行われることになる。

【００２３】

【発明の効果】本発明のスタッド溶接の強度判定方法及
び装置によれば、母材に対して溶接したスタッドにおい
て、必要な溶接強度の有無を直接に確認でき、しかも本
発明によれば、強度確認されたスタッドには、従来のハ
ンマー打撃によるテスト方法のようなスタッドの変形が
なく、溶接部にも傷が残らないという効果がある。

【００２４】また、本発明によれば、強度判定をうける
各スタッドには一定の静的な引張力が与えられ、均等な
強度確認が行なわれ、安定品質のスタッドが得られると
いう効果がある。さらに、それぞれのスタッドに対する
溶接強度の確認結果は、連続的なデータとして、明確か
つ具体的な形で記録保存できるという利点がある。

【００２５】なお、本発明では、その装置自体をコンパ
クトに形成できるので、水中での操作が容易となり、迅
速な確認作業が行なわれ得るので、特に水中スタッド溶
接の強度判定用に有効に適用することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のスタッド溶接の強度判定方法を実施す
る強度判定装置の一実施例の部分断面で示す側面図であ
る。

【図２】図１のボルトホルダーの側断面図である。

【図３】母材に溶接される前の水中スタッドの側面図で
ある。

【図４】母材に溶接され、ナット取付後の水中スタッド
の側面図である。

【図５】本発明のスタッド溶接の強度判定装置の他の実
施例のボルトホルダーの部分断面で示す側面図である。

【図６】本発明のスタッド溶接の強度判定装置の他の異
なる実施例のボルトホルダーの部分断面で示す側面図で
ある。

【図７】図示６のボルトホルダーの平面図である。

【符号の説明】

１ スタッド １Ｂ ねじ部 ２ 母材 ５Ａ ねじ穴 ５ ボルトホルダー ６ エアレンチ ７ ピストン ８ シリンダー １１ 油圧ホース

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 母材に溶接されたスタッドに、引き抜き
   治具を着脱可能に取付け、その引き抜き治具への流体圧
   の加圧によりスタッドに対し所定の引張力を与えるスタ
   ッド溶接の強度判定方法。
2. 【請求項２】 水中の母材に水中溶接されたスタッドに
   適用する請求項１のスタッド溶接の強度判定方法。
3. 【請求項３】 母材に溶接されたスタッドに、嵌合、離
   脱自在なねじ穴を有するボルトホルダーと、そのボルト
   ホルダーを上記母材に対して引き離す方向に作動する流
   体圧操作のピストン及びシリンダーとからなるスタッド
   の引き抜き治具、ならびに上記ピストン及びシリンダー
   を所定の流体圧で加圧する流体圧供給源を有するスタッ
   ド溶接の強度判定装置。
4. 【請求項４】 引き抜き治具のピストン及びシリンダー
   に加圧する流体圧を電気的数値に変換し、かつビジグラ
   フに連続記録する手段を設けた請求項３のスタッド溶接
   の強度判定装置。
5. 【請求項５】 引き抜き治具のピストン及びシリンダー
   に加圧する流体圧を電気的数値に変換し、かつコンピュ
   ータに自動的にそのデータを入力させて連続記録する手
   段を設けた請求項３または４のスタッド溶接の強度判定
   装置。
6. 【請求項６】 母材に溶接されたスタッドのねじ部に、
   ボルトホルダーを螺合により着脱させるエアレンチが設
   けられている請求項３, ４または５のスタッド溶接の強
   度判定装置。