JPH0542671A - インクジエツトプリントヘツド及びそれを備える電子機器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】印字の高密度化且つ高品質化を実現する低廉な
インクジェットプリントヘッド、並びにこのプリントヘ
ッドを備える電子機器を提供することである。 【構成】ヘッド基台１に、この表面と側端面に開口する
個別インク路１１を一定間隔を置いてアレイ状に且つア
レイ方向に対して傾斜させて形成し、個別インク路１１
の輪郭となる壁面のうち、側壁面１３ａと、頂壁面１３
ｃと、底壁面１３ｄには、共通電極１４、圧電体１５、
及び個別電極１６で構成される側壁変位手段を設け、側
壁面１３ｂには側壁変位手段を設けず、更にヘッド基台
１の表面にカバー２を取付けた。 【作用】共通及び個別電極１４、１６に電圧を印加する
と、圧電体１５の分極の電荷と電圧の極性とから、電界
を加えた圧電体１５がアレイ方向に変位し、これに伴っ
て対応側壁１２が当初の傾斜状態からアレイ方向に変位
する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、側壁変位手段の変位を
利用して個別インク路のインク容積を変化させてインク
を吐出させる新規なインクジェットプリントヘッド、並
びにそれを備える、プリンタ、ワープロ、ファクシミ
リ、プロッタ等の電子機器に関する。

【０００２】

【従来の技術】インクジェットプリントヘッドの一つ
に、圧電体を使用したものがある。このプリントヘッド
は、一般には共通インク路から分岐する個別インク路の
一部に圧電体を貼り付け、圧電体に電界を加えて圧電体
を変位させて、個別インク路のインク容積を変化させる
ことにより、個別インク路のインクを個別インク路の先
端口から押し出すものである。又、ヘッド自体をその走
査方向に対して傾斜させて、印字ドットを高密度化、高
品質化することも行われている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようなプリントヘッドを含めて一般のインクジェットプ
リントヘッドに採用する印字機構では、これまで以上に
印字ドットを高密度化すると共に印字を高品質化するの
は構造的に至難である。例えば、カイザー方式では、こ
れ以上印字密度を高めることは難しく、バブルジェット
方式では、熱によるバブルを利用しているため、バブル
の発生条件や焦げ付きを考慮するとインクの選択自由度
が低く、印字品質に限界がある。

【０００４】従って、本発明の目的は、印字の高密度化
且つ高品質化を実現する低廉なインクジェットプリント
ヘッド、並びにこのプリントヘッドを備える電子機器を
提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明のインクジェットプリントヘッドは、ヘッド
基台に、このヘッド基台の表面と側端面に開口する個別
インク路を一定間隔を置いてアレイ状に且つアレイ方向
に対して傾斜させて形成し、個別インク路の輪郭となる
壁面のうち、少なくとも個別インク路を仰ぐ様態の側壁
面には、圧電体を共通電極と個別電極で挟んでなる側壁
変位手段を設けると共に、個別インク路に伏する様態の
側壁面には側壁変位手段を設けず、個別インク路が開口
するヘッド基台の表面に開口を塞ぐカバーを取付けたこ
とを特徴とする。

【０００６】本発明のプリントヘッドは、アレイ状に配
列した個別インク路によって形成される側壁を側壁変位
手段によってアレイ方向に変位させて、個別インク路の
インク容積を変化させ、個別インク路のインクを押し出
す新しい印字機構を取り入れたものである。この印字機
構について詳述すると、側壁変位手段の圧電体は、例え
ばアレイ方向に分極しており、この分極状態で、例えば
圧電体の一方側（側壁面側）に在る共通電極に適当な極
性の電圧を印加すると共に、圧電体の他方側（個別イン
ク路側）に在る個別電極に前記極性とは反対の極性の電
圧を印加すると、分極の正負電荷と電圧の正負極性に応
じて、電界を加えた圧電体がアレイ方向に変位し、結果
的に側壁変位手段の変位に伴って対応側壁もアレイ方向
に変位し、個別インク路の容積が変化する。

【０００７】即ち、もう少し具体的に述べると、例えば
圧電体の側壁面側を正電荷に、その反対側（個別インク
路側）を負電荷に分極させた場合、共通電極に負の電圧
を、個別電極に正の電圧を印加すると、圧電体がアレイ
方向に伸張し、この圧電体を持つ側壁変位手段によって
対応側壁のアレイ方向に対する傾斜度合が大きくなる。
側壁が更に深く傾けば、その傾いた側に在る個別インク
路のインク容積が減少すると共に、反対側の個別インク
路のインク容積は増加する。このインク容積の増減を適
宜実行することで、容積減少に転化した個別インク路の
インクが押されて、個別インク路の先端口（ノズル）か
ら噴出される。このように、本発明のプリントヘッド
は、圧電体のアレイ方向への変位に伴って側壁をアレイ
方向に大きく変位させて、インク容積を変化させること
により、個別インク路のインクを押し出すという作用を
有する。

【０００８】本発明のプリントヘッドで、側壁変位手段
を構成する圧電体としては、既知のものを使用すればよ
く、例えばＰＺＴ、ＺｎＯからなるものを使用する。圧
電体は個別インク路の側壁面においてはアレイ方向に分
極しているものであるが、この分極化は側壁に側壁変位
手段を設けた後に行うのが妥当である。本発明のプリン
トヘッドに用いるヘッド基台は、個別インク路によって
形成される側壁が上記圧電体の変位を受けてアレイ方向
に変位する限り、素材に限定はない。しかし、実際には
アレイ状の個別インク路の易形成性、側壁の変位容易性
等から、素材としては感光性ガラス等が最良である。

【０００９】

【実施例】以下、本発明のインクジェットプリントヘッ
ド、及びこれを備える電子機器を実施例に基づいて説明
する。図１はプリンタ、ワープロ等の電子機器に搭載す
るプリントヘッドの一実施例の一部分解斜視図を、図２
はその要部断面図を示す。プリントヘッド以外の電子機
器の構造については通常と大差なく、ここではプリント
ヘッドを中心に述べる。図１に示すプリントヘッドは、
ヘッド基台１と、ヘッド基台１上に取付けたカバー２
と、ヘッド基台１の前端面に付設したノズルプレート３
とを備える。

【００１０】図１と図２において、ヘッド基台１には、
複数（この実施例では５つ）の個別インク路１１が一定
間隔を置いてアレイ状に形成されている。この個別イン
ク路１１は、ヘッド基台１の表面と前端面に開口すると
共に、アレイ方向に対して傾斜しており、ヘッド基台１
のほぼ中央から前端面に向かって延びる（図１参照）。
この個別インク路１１によって、個別インク路間に複数
（この実施例では４つ）の側壁１２が形成され、当然な
がら側壁１２も個別インク路１１と同様にアレイ方向に
傾斜する。又、個別インク路１１と側壁１２は平面及び
断面とも矩形を呈する。

【００１１】図２から分かるように、個別インク路１１
の輪郭となる壁面のうち、個別インク路１１を仰ぐ様態
の側壁面１３ａと、頂壁面１３ｃと、底壁面１３ｄとに
は、共通電極１４、圧電体１５、及び個別電極１６が順
に設けられ、これら３つの要素１４、１５、１６で側壁
変位手段を構成している。この側壁変位手段は、個別イ
ンク路１１に伏する様態の側壁面１３ｂには設けられて
おらず、共通電極１４、圧電体１５、及び個別電極１６
はこの側壁面１３ｂで不連続になっている。

【００１２】共通電極１４と圧電体１５は、図１を参照
して、個別インク路１１がアレイ状に配列された領域だ
けでなく個別インク路１１が存在しない領域の一部まで
を覆うように設けられており、更に共通電極１４は、図
１に示すようにヘッド基台１の両端に沿ってその背面側
に棒状電極１４’として導かれている。一方、個別電極
１６は、それぞれ個別インク路１１に沿って分断されて
おり、共通電極１４と同様に個別インク路１１の延在方
向に沿ってヘッド基台１の背面側に棒状電極１６’とし
て導かれる。従って、ヘッド基台１の背面側には、２つ
の共通電極１４’と５つの個別電極１６’が存在するこ
とになる。

【００１３】個別インク路１１が開口するヘッド基台１
の表面に取付けたカバー２は、個別インク路１１をこの
表面側から閉塞するものであり、側壁１２の頂壁面に設
けた個別電極１６に緊密に接しているが、側壁１２の変
形を妨げるものではない。又、ヘッド基台１の前端面に
取付けたノズルプレート３は、ヘッド基台１の個別イン
ク路１１に対応する数（５つ）のノズル３１を有する。
更に、ヘッド基台１の一対の側壁には、インク供給路１
８が設けられ、インク供給路１８はヘッド基台１の内部
で個別インク路１１に連通する。従ってインクは、イン
ク供給路１８を経て、個別インク路１１に分流し、ノズ
ル３１から噴出される。

【００１４】次に、このように構成したプリントヘッド
の作用について述べる。要部の拡大断面図を示す図２に
おいて、仮に圧電体１５の各側壁面１３ａに沿う部分が
それぞれ側壁面１３ａ側を正電荷、その反対側（個別イ
ンク路１１側）を負電荷として分極しているものとす
る。この分極状態で、例えば個別インク路１１ａに係る
共通電極１４に負極性の電圧を、個別電極１６に正極性
の電圧をそれぞれ印加すると、圧電体１５は、側壁面１
３ａ側においては正電荷の分極と共通電極１４の負極性
の電圧との関係から、及び個別インク路１１ａ側におい
ては負電荷の分極と個別電極１６の正極性の電圧との関
係から、アレイ方向（図面の左右方向）に伸張する。こ
の圧電体１５の伸張により、側壁１２が図面の左方向に
押され、当初の傾斜状態から更に深く傾斜する。この
時、カバー２と個別電極１６との緊密な接触状態は維持
されたままである。この結果、側壁１２の左隣に在る個
別インク路１１ｂのインク容積が実質上減少するため、
この個別インク路１１ｂのインクが押され、ノズルプレ
ート３の対応ノズル３１からインクが噴出される。

【００１５】インク噴出後に、印加電圧を遮断するか、
若しくは印加電圧の極性を反転すると、電圧遮断の場合
には、圧電体１５が元の状態に戻る。電圧極性反転の場
合には、圧電体１５には上記の作用とは逆の作用が生ず
る。即ち、圧電体１５は、側壁面１３ａ側における正電
荷の分極と共通電極１４の正極性の電圧とにより、及び
個別インク路１１ａ側における負電荷の分極と個別電極
１６の負極性の電圧とにより、アレイ方向に縮小する。
この圧電体１５の縮小によって、側壁１２が図面の右方
向に変位し、元の傾斜状態に戻る。同時に、インク容積
が元通りになった個別インク路１１ｂにインクが新たに
充足される。

【００１６】なお、上述の実施例では、側壁１２のアレ
イ方向に対する傾斜度合を大きくして、個別インク路１
１ｂのインク容積を減少させることで、インクを押し出
す作用について説明してあるが、側壁１２を一旦左方向
に深く傾斜させた後に、右方向に戻すことによる反動に
よって、側壁１２の右隣の個別インク路１１ａのインク
を押し出すようにしてもよい。この場合、先の実施例と
同様に、まず共通電極１４に負極性の電圧を、個別電極
１６に正極性の電圧を印加して、側壁１２を左方向に更
に深く傾ける。すると、個別インク路１１ａのインク容
積が増加するので、この個別インク路１１ａにインクを
満たす。次いで、共通電極１４に正極性の電圧を、個別
電極１６に負極性の電圧を印加すると、側壁１２が元の
傾斜状態に向かって右方向に変位するので、個別インク
路１１ａのインク容積が減少する。インク容積が減少に
転化すれば、インクが押されて、対応ノズル３１から押
し出される。

【００１７】このように、本発明のプリントヘッドで
は、側壁１２に設けた共通及び個別電極１４、１６と圧
電体１５からなる側壁変位手段の変位を利用して、側壁
１２を変位させることで、個別インク路１１のインク容
積を増減し、インクを噴出させるものである。従って、
側壁１２を動かすための側壁変位手段が作用上重要であ
る。この側壁変位手段を側壁１２に設けるには、共通及
び個別電極１４、１６と圧電体１５を必要最低限の厚さ
に各々成膜することが肝要である。その成膜に際して
は、スパッタ、蒸着等を用いて、個別インク路を形成し
たヘッド基台の上方から垂直に成膜材を個別インク路の
壁面に向かって進入させる。この時、図３に示すよう
に、個別インク路１１が傾斜している場合、ヘッド基台
１に垂直に進行してきた成膜材に対して、個別インク路
１１の側壁面１３ａと垂直面とがなす角度をαとする
と、成膜材の入射角度αと成膜材中の入射分子数Ｎとの
関係は図４に示すグラフのようになる。

【００１８】ここで、傾斜する個別インク路１１に対し
ては、その深さｈまでは入射角度αにおける入射分子数
（図４の０〜α、又は−α〜０までの斜線領域）の成膜
材が、ｈ／２の深さまでは入射角度２αにおける入射分
子数（図４の−α〜αまでの斜線領域）の成膜材が到達
する。従って、特にｈ／２の深さまでは成膜に寄与する
入射分子数が多く、側壁面１３ａに厚膜を容易に形成す
ることができる。又、側壁１２が傾いているため、側壁
面１３ｂには成膜し難く、側壁面１３ａだけに効果的に
側壁変位手段を設けることができる。

【００１９】参考までに、垂直の個別インク路１１’を
有するヘッド基台１’を図５に示す。この場合、当然な
がら側壁１２’も垂直になるため、個別インク路１１’
の深さｈまでは、入射角度αにおける入射分子数（図６
の０〜αまでの斜線領域）の成膜材は上記傾斜側壁の場
合と大して変わらないが、ｈ／２の深さまでの入射角度
２αにおける入射分子数（図６の０〜２αまでの斜線領
域）の成膜材は、相当減少することになる。このことか
ら、垂直な個別インク路に比べて、傾斜する個別インク
路は、厚膜の易形成性、成膜の容易性、膜のパターンニ
ングの容易性等の点で有利であり、しかも側壁も傾斜す
ることになるので、側壁がアレイ方向に変位し易くな
る。

【００２０】

【発明の効果】本発明のインクジェットプリントヘッド
は、以上説明したように構成されるので、側壁変位手段
の共通及び個別電極に適当な極性の電圧を印加すること
で、圧電体における分極の正負電荷と印加電圧の正負極
性とに応じて、電界を加えた圧電体がアレイ方向に変位
し、それに連れて対応側壁も当初の傾斜状態からアレイ
方向に大きく変位し、結果的に個別インク路のインク容
積が変化（増減）し、容積が減少に転じた個別インク路
のインクが押し出されるという画期的なものである。

【００２１】従って、本発明のプリントヘッドは、印字
の高密度化、高品質化を容易に実現できる。又、既存の
技術、製造工程を用いて量産できるので、生産性が非常
に高く廉価である。これらにより、上記プリントヘッド
を具備する電子機器でも、高品質な印字、印字性能の向
上等の効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のプリントヘッドの一実施例に係る一部
分解斜視図である。

【図２】図１に示すプリントヘッドの要部拡大断面図で
ある。

【図３】本発明のプリントヘッドにおいて、ヘッド基台
の傾斜側壁に対する成膜材の入射角度αを説明するため
の図である。

【図４】図３に示す入射角度αと成膜材中の入射分子数
Ｎとの関係を示すグラフである。

【図５】比較のために、ヘッド基台の垂直側壁に対する
成膜材の入射角度αを説明するための図である。

【図６】図５に示す入射角度αと成膜材中の入射分子数
Ｎとの関係を示すグラフである。

【符号の説明】

１ ヘッド基台 ２ カバー ３ ノズルプレート １１ 個別インク路 １２ 側壁 １３ａ、１３ｂ 側壁面 １４ 共通電極 １５ 圧電体 １６ 個別電極

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ヘッド基台に、このヘッド基台の表面と側
   端面に開口する個別インク路を一定間隔を置いてアレイ
   状に且つアレイ方向に対して傾斜させて形成し、個別イ
   ンク路の輪郭となる壁面のうち、少なくとも個別インク
   路を仰ぐ様態の側壁面には、圧電体を共通電極と個別電
   極で挟んでなる側壁変位手段を設けると共に、個別イン
   ク路に伏する様態の側壁面には側壁変位手段を設けず、
   個別インク路が開口するヘッド基台の表面に開口を塞ぐ
   カバーを取付けたことを特徴とするインクジェットプリ
   ントヘッド。
2. 【請求項２】請求項１記載のインクジェットプリントヘ
   ッドを具備してなることを特徴とする電子機器。