JPH05333003A - 被検体の超音波減衰量測定方法及び装置 - Google Patents

被検体の超音波減衰量測定方法及び装置

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JPH05333003A
JPH05333003A JP4141607A JP14160792A JPH05333003A JP H05333003 A JPH05333003 A JP H05333003A JP 4141607 A JP4141607 A JP 4141607A JP 14160792 A JP14160792 A JP 14160792A JP H05333003 A JPH05333003 A JP H05333003A
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JP
Japan
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attenuation
ultrasonic
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amount
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JP4141607A
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English (en)
Inventor
Yukimichi Iizuka
幸理 飯塚
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 被検体1に超音波を送波して被検体での超音
波減衰の周波数特性を定量的に測定する場合に、被検体
以外の各要因での超音波減衰を正確に求めて、被検体で
の真の超音波減衰の周波数特性の測定精度を向上させ
る。 【構成】 被検体表面減衰量記手段7,減衰補正量演手
段8,減衰補正量記憶手段9を設け、被検体表面、被検
体境界,超音波拡散における各減衰αs(f),αi(f),α
d(f)を定量的に求め、これらの和を減衰補正量αc(f)と
して記憶保持する。超音波送受信手段4,ゲート手段
5,超音波パルス減衰演算手段6によって測定演算され
た超音波パルスの減衰αm(f)から減衰補正量αc(f)を減
算して被検体での超音波減衰α(f) の周波数特性を得
る。また、超音波減衰近似手段12によって、測定され
た超音波減衰α(f) の近似式αa(f)を算出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、被検体での超音波減衰
の周波数特性を正確に測定する超音波減衰量測定方法及
びその方法を適用した超音波減衰量測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば超音波探傷や超音波厚み測定にお
いては、被検体内を伝搬される超音波はその伝搬過程に
おいて減衰する。この被検体の超音波減衰量は被検体の
結晶粒径や損失係数などの材料特性と密接な関係があ
る。したがって、この減衰の度合いや減衰の周波数特性
から被検体の材料特性を求めることができる。このた
め、被検体の超音波減衰量を精度良く測定することは工
業的に極めて重要である。
【0003】従来、種々の超音波減衰量測定方法が提唱
されている。例えば、超音波探触子をバッファ等の遅延
材を介して被検体表面に取付け、被検体に対して超音波
パルスを送波し、被検体表面で反射される表面(S)エ
コーと被検体底面で反射される底面(B)エコーとを測
定する。表面エコーと底面エコーとの間の強度差、また
は多重反射エコーの強度が減衰していく度合から、エコ
ーの減衰量を求める。そして、その超音波パルスの減衰
量に含まれている超音波拡散減衰を差し引いて、被検体
での超音波減衰量を求める。
【0004】この超音波拡散減衰量を求める方法とし
て、予め超音波減衰量が測定されている対比試験片を用
いて測定する方法と、遠距離音場では超音波拡散減衰量
が距離の対数にほぼ比例しているという近似関係を利用
する方法とがある。(日本非破壊検査協会規格、NDI
S 2415−87、超音波パルス反射法による固体の
超音波減衰係数の測定及び表示方法)
【0005】しかしながら、既知の超音波減衰量を有す
る対比試験片を用いる方法は、被検体と同じ形状の対比
試験片を準備する必要があるので、対比試験片の作成に
多大の費用と時間が必要となり、実用的でない。さら
に、対比試験片を測定する時と被検体を測定する時にお
いて、超音波探触子の音響接触状態を同一に揃えること
が困難であるため、正確な測定が困難である。
【0006】また、超音波拡散減衰量を遠距離音場で測
定する方法は、探触子径や被検体との距離を適切に選択
する必要があるために制限が多ので、測定の自由度が小
さく、実用的な方法ではない。例えば,1/2インチ厚
の鋼板で10MHz,振動子の直径が10mmの測定条件に
おいては、遠距離恩場と見なせるのは2次の反射波より
高い次数の反射波である。しかし、高次の反射波は減衰
が大きいので、高いS/Nを得ることができない。さら
に、得られた超音波拡散減衰の補正量は近似値であるた
め、前記超音波パルスの減衰量を正確に補正できない。
【0007】さらに、超音波パルスの減衰量を補正する
場合、周波数の問題がある。すなわち、一般に、被検体
の超音波減衰量は周波数に依存しているため、前記被検
体の超音波減衰量は、ある特定の周波数における値とし
て定義されている。したがって、上述した各手法におい
ては、超音波エコーのスペクトル半値周波数の中間点の
周波数でもって超音波減衰量を定義している。
【0008】しかしながら、超音波エコーのスペクトル
は様々な周波数成分を有するので、上述した手法で得ら
れた超音波減衰量は、スペクトル形状の影響を受けたも
のであり、理想的な単一周波数の超音波減衰量を表して
いない。その他に、測定結果に大きな影響を及ぼす表面
粗さの影響による被検体表面での減衰を考慮していな
い。以上のような様々な問題のため、上述した各手法で
は被検体の超音波減衰量を精度良く求めることができな
い。
【0009】このような不都合を解消するために、超音
波拡散減衰と被検体表面での減衰および超音波の周波数
を考慮して被検体の超音波減衰量を求める方法が提唱さ
れている(特開昭58−160865)。
【0010】すなわち、この方法においては、超音波パ
ルスを被検体に印加して、被検体からの各超音波エコー
を周波数解析し、3つの周波数特性上における3周波数
における各超音波減衰量から、超音波拡散減衰の周波数
特性と被検体表面での減衰の周波数特性を考慮して、被
検体の超音波減衰量と超音波拡散減衰量と被検体表面で
の減衰量とを連立方程式を解くことによりそれぞれ独立
して求めている。
【0011】なお、被検体の超音波減衰量は周波数の2
乗または4乗に比例し、超音波拡散減衰量は周波数のほ
ぼ−1乗に比例し、表面での減衰量は周波数のほぼ1/
2乗に比例するという関係を用いている。
【0012】その他に、超音波拡散減衰について近距離
音場も含めて考察し、超音波の周波数も考慮して被検体
の超音波減衰量を求める方法が提案されている(日本非
破壊検査協会第2分科会資料2902、1982/1/
28)。
【0013】この方法においては、被検体表面からの反
射である表面エコーと底面からの反射である底面エコー
とをそれぞれ周波数解析して、それぞれのスペクトルの
差を求める。そして、この差からAVGダイヤグラム
(またはDGS線図)から求めた超音波拡散減衰の周波
数特性を減算して、その減算値を被検体の超音波減衰量
とする。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た各手法においても、まだ解消すべき次のような課題が
あった。
【0015】すなわち、3つの周波数における各超音波
減衰量から求める手法においても、超音波拡散減衰につ
いての取り扱いは、あくまでも遠距離音場での近似法で
あるので、得られた計算結果には誤差が含まれる。ま
た、被検体での減衰についての取り扱いは減衰の要因と
して散乱減衰だけを考慮したものである。しかし、実際
には様々な要因がある。被検体表面での減衰についても
必ずしも周波数の1/2乗に比例するものばかりでなく
様々な場合があるため、これらの点からも計算結果には
誤差が含まれる。このため、この方法でも、被検体の超
音波減衰量を精度良く求めることができない。
【0016】また、AVGダイヤグラムを用いる手法に
おいては、超音波拡散減衰量をAVGダイヤグラムから
読取るためにAVGダイヤグラムに近似した2本の直線
の式を用いてる。このため超音波拡散減衰の周波数特性
を正確に求められず、被検体の超音波減衰量を正確に求
めることができない。
【0017】さらに、上述した各手法においては、被検
体の超音波減衰量の周波数特性を求めるだけである。被
検体での減衰は結晶粒界での反射に起因した散乱減衰や
磁壁の移動に起因する減衰など様々な要因からなるが、
これら様々な要因の寄与分を把握できない問題もある。
【0018】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、被検体境界および被検体表面における各減
衰および超音波拡散減衰等の被検体以外の減衰要因の各
周波数特性を予め求めておくことによって、測定された
超音波パルスの減衰に対して、超音波減衰量測定の大き
な誤差原因となる超音波エコーの周波数特性の影響,超
音波拡散減衰の影響,被検体表面での減衰の影響等を精
度良く補正して、被検体での真の減衰量の周波数特性を
高速かつ精度よく測定できる被検体の超音波減衰量測定
方法およびその装置を提供することにある。さらに、様
々な減衰の要因の寄与分をも定量的に把握できる被検体
の超音波減衰量測定方法及び装置を提供することを目的
とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記課題を解消するため
に本発明の被検体の超音波減衰量測定方法においては、
被検体透過前の超音波パルスと被検体透過後の超音波パ
ルスとをそれぞれ周波数解析して超音波パルスの減衰の
周波数特性を求め、測定系と前記被検体との位置関係を
用いて超音波拡散減衰の周波数特性を算出し、この算出
された超音波拡散減衰と被検体境界での超音波減衰と被
検体表面での超音波減衰とを加算して減衰補正量の周波
数特性を算出し、超音波パルスの減衰の周波数特性から
前記算出された減衰補正量の周波数特性を減算して最終
的な被検体での減衰の周波数特性を求める。また、別の
発明においては、上述した発明における被検体表面での
減衰の周波数特性を予め実験にて求める。さらに、別の
発明においては、被検体での減衰の周波数特性を近似す
る多項式の係数を最小自乗法により求める。
【0020】さらに、本発明の被検体の超音波減衰量測
定装置においては、被検体に超音波パルスを送波し反射
波を検出する超音波送受信手段と、この超音波送受信手
段の出力信号に含まれる被検体透過前の超音波エコーと
被検体透過後の超音波エコーとを抽出するゲート手段
と、このゲート手段により抽出された被検体透過前の超
音波エコーと被検体透過後の超音波エコーとをそれぞれ
周波数解析して超音波パルスの減衰の周波数特性を求め
る超音波パルス減衰量演算手段と、被検体表面での超音
波減衰の周波数特性を記憶する被検体表面減衰量記憶手
段と、被検体境界での超音波減衰の周波数特性と超音波
拡散減衰の周波数特性とを演算し、この演算された各周
波数特性に被検体表面減衰量記憶手段に記憶された周波
数特性を加算して減衰補正量を得る減衰補正量演算手段
と、この算出された減衰補正量を記憶する減衰補正量記
憶手段と、この減衰補正量記憶手段の記憶内容を超音波
パルス減衰量演算手段の演算結果から減算して被検体で
の減衰の周波数特性を求める超音波減衰量演算手段と備
えたものである。
【0021】また、別の発明においては、上記発明の装
置に対して、超音波減衰量演算手段の演算結果を近似す
る多項式を最小自乗法により求める求める超音波減衰量
近似手段が付加されている。
【0022】
【作用】以下、上述した構成の被検体の超音波減衰量測
定方法を用いることによって、被検体の超音波減衰の周
波数特性を精度よく測定できることを理論的背景も含め
て説明する。
【0023】被検体に超音波パルスを送波し、被検体透
過前の超音波パルスと被検体透過後の超音波パルスとの
強度差を測定することによって、超音波パルスが被検体
を透過するときの減衰が得られる。このとき、各超音波
パルスをそれぞれ周波数解析して、各周波数における強
度差を得れば、任意の周波数における減衰を求めること
ができる。
【0024】しかし、この減衰には、被検体での減衰の
他に、被検体境界での減衰、超音波拡散減衰、被検体表
面での減衰等の他の要因の減衰が含まれている。そこ
で、これらの各減衰を定量的に把握して、被検体を透過
するときの減衰からそれらの減衰を減算すれば、被検体
での正しい減衰量を求めることができる。
【0025】この測定原理は周知であるが、発明者は、
周波数解析や音響理論などの種々の計算方手法を組合わ
せることによって、上述した被検体以外の要因の減衰を
正確に定量的に把握し、被検体での正しい超音波減衰量
を得ることができることを発見した。
【0026】先ず、被検体透過前の超音波パルスU1(t)
を周波数解析して周波数特性U1(f)を求め、被検体透過
後の超音波パルスU2(t)を周波数解析して周波数特性U
2(f)を求める。但し、tは時間であり、fは周波数であ
る。次に、被検体透過前の超音波パルスの周波数特性U
1(f)と被検体透過後の超音波パルスの周波数特性U2(f)
との比を対数化して求めると、超音波パルスが被検体を
透過するときの減衰量すなわち超音波パルスの減衰αm
(f)[dB]の周波数特性は(1) 式となる。 αm(f)=20・Log{U1(f)/U2(f)} =20・Log{U1(f)} −20・Log{U2(f)} [dB] …(1)
【0027】超音波パルスの減衰αm(f)の周波数特性に
は被検体での減衰α(f) [dB]の他に、(2) 式に示すよ
うに、被検体以外の要因での減衰αc(f)[dB]が含まれ
ている。 αm(f)=α(f) +αc(f) [dB] …(2)
【0028】ここで、被検体以外の減衰αc(f)[dB]に
は、被検体境界での減衰αi(f)[dB]と、超音波拡散減
衰αd(f)[dB]と、被検体表面での減衰αs(f)[dB]と
が含まれる。 αc(f)=αi(f)+αd(f)+αs(f) [dB] …(3) 次に (3)式の各減衰αi(f),αd(f),αs(f)を順番に説
明する。
【0029】被検体境界での減衰αi(f)は、被検体の測
定面に他の超音波伝搬媒質が接触しているときに、音響
インピーダンスの違いにより生ずる減衰であり、計算で
求めることができる。例えば、圧電素子による超音波探
触子から遅延材を介して超音波を被検体に送波し、被検
体透過前の超音波パルスとして被検体の表面で反射する
表面(S)エコーを用い、被検体透過後の超音波パルス
として被検体の底面で反射する底面(B)エコーを用い
る場合を考える。この場合、(4) 〜(6) 式に示すよう
に、入射超音波に対する表面(S)エコーの音圧Pr と
底面(B)エコーの音圧Pt から被検体境界での減衰α
i(f)が求まる。 Pr =(Zt −Zd )/(Zt +Zd ) …(4) Pt =1−Pr 2 …(5) αi(f)=20・Log(|Pr /Pt |) [dB] …(6) 但し、ここで、Zt は被検体の音響インピーダンスであ
り、Zd は遅延材の音響インピーダンスである。
【0030】超音波拡散減衰αd(f)は、超音波の回折で
超音波ビームが広がることにより生ずる減衰であり、従
来手法においては近似方法を使って求めていた。しか
し、本発明では、この超音波拡散減衰αd(f)を計算によ
って求める。すなわち、超音波を送波した位置から、被
検体透過前の超音波パルスが反射する位置までの距離を
X1 [mm]、被検体透過後の超音波パルスが反射する位
置までの距離をX2 [mm]とし、超音波を送波する面の
直径をD[mm]、超音波音速をC[ m/s]、周波数をf
[MHz]とし、かつパラメータX0 ,N1 ,N2 ,P1
,P2 を以下に示す(7)〜(10)式のように定義する。 X0 =D2 /4×10-3/(C/f) [mm] …(7) N1 =X1 /X0 …(8) N2 =X2 /X0 …(9) P1 =|1−[cos(−π/N1 )+jsin(−π/N1 )] ×[J0 (π/N1 )+jJ1 (π/N1 )]| …(10) P2 =|1−[cos(−π/N2 )+jsin(−π/N2 )] ×[J0 (π/N2 )+jJ1 (π/N2 )]| …(11)
【0031】但し、J0 ,J1 は、それぞれ0次及び1
次のベッセル関数(円柱関数)であり、jは虚数単位で
ある。そして、前記超音波拡散減衰αd(f)は(12)式で算
出される。 αd(f)=20・Log(P1 /P2 ) [dB] …(12)
【0032】最後の被検体表面での減衰αs(f)は、表面
粗さに起因する超音波パルスの散乱によって生ずる減衰
である。そして、本発明においては、この減衰αs(f)を
実験で求める。まず、被検体と同じ表面粗さで、超音波
減衰量αref(f)が既知である標準試験片を用意する。こ
の標準試験片を、表面での減衰が無いものとして超音波
減衰量αtest(f) を求める。αref(f)とαtest(f) との
差は、被検体表面での減衰αs(f)と見なすことが可能で
あるので、(13)式を用いて、被検体表面での減衰αs(f)
を求めることができる。 αs(f)=αtest(f) −αref(f) [dB] …(13) このようにして求めた各減衰αi(f),αd(f),αs(f)を
加算すると、前述したように、被検体以外の要因での減
衰αc(f)が求まる。 αc(f)=αi(f)+αd(f)+αs(f) [dB] …(3)
【0033】そこで、被検体以外の要因での減衰αc(f)
を減衰補正量として、超音波パルスの減衰αm(f)からこ
の減衰補正量αc(f)を減算すると、(14)式に示すよう
に、被検体での減衰α(f) が求まる。この減衰α(f) は
周波数fの関数であるので、被検体での減衰の周波数特
性を求めることができる。 α(f) =αm(f)−αc(f) [dB] …(14)
【0034】以上の手順にて、被検体における真の超音
波減衰量α(f) を求めることができる。なお、この測定
が有効である周波数範囲は、測定に用いた超音波パルス
のスペクトル範囲に対応する周波数範囲である。次に、
被検体での減衰の周波数特性を近似する多項式を求める
減衰量測定方法を説明する。
【0035】被検体が鉄鋼材料である場合、被検体での
超音波減衰は、主に結晶粒界での反射に起因した散乱減
衰や磁壁や転位の移動に起因する減衰であり、被検体が
高分子材料のような粘性体である場合、主に緩和現象に
起因する減衰である。このように、被検体での超音波減
衰は様々な要因にて発生する。これらは、それぞれ減衰
のメカニズムが異なるため、減衰の周波数特性も異なっ
ている。例えば、レイリー散乱領域での散乱減衰におい
ては、減衰は周波数の4乗に比例する。また、磁壁の移
動に起因する減衰や緩和現象に起因する減衰において
は、減衰は周波数の1乗に比例する。
【0036】このような現象は周知事項であるが、本願
発明者は、種々の実験を行うことにより、被検体が磁性
体である鉄鋼材料の場合、散乱減衰と磁壁の移動による
減衰が前記超音波減衰の大部分を占め、非磁性体である
鉄鋼材料においては、散乱減衰が前記超音波減衰の大部
分を占め、さらに、高分子材料においては、緩和現象に
よる減衰が前記超音波減衰の大部分を占めることを発見
した。そして、本願発明者は被検体の減衰の周波数特性
を多項式で近似することにより各減衰要因の分離を行な
う方法を発明した。
【0037】まず、被検体の種類に応じて、減衰量を近
似する多項式を準備する。例えば、鉄鋼材料でレイリー
散乱が起こる周波数範囲で測定する場合は、散乱減衰が
周波数の4乗に比例し、磁壁の移動による減衰が周波数
の1乗に比例するので、多項式により近似する被検体の
減衰量をαa(f)とすると、減衰量αa(f)は(15)式で示す
ことが可能である。 αa(f)=c1 ・f4 +c2 ・f [dB] …(15) 但し、c1 、c2 は係数である。同様に、鉄鋼材料でス
トカスティック散乱が起こる周波数範囲で測定する場
合、減衰量αa(f)は(16)式で示される。また、高分子材
料の場合は(17)式となる。 αa(f)=c1 ・f2 +c2 ・f [dB] …(16) αa(f)=c1 ・f [dB] …(17)
【0038】そして、被検体での減衰α(f) の周波数特
性に対して以上(15)(16)(17)式を最小自乗法を用いて各
係数c1 、c2 を求めることによって近似させる。な
お、最小自乗法の評価関数Eは次の(18)式を用いる。
【0039】
【数1】 ここで、周波数範囲(f1 〜f2 )は、減衰量を測定し
た時の超音波の周波数特性(スペクトラム)における周
波数範囲で選択される。
【0040】以上のようにして、(15)〜(17)の多項式の
各係数c1 、c2 を求めることにより、被検体の減衰に
含まれる各要因の寄与分を定量的に求めることができ
る。図2は上述した各計算処理手順を例えばコンピュー
タで実施する場合におけるデータ読取処理及び計算処理
を示す流れ図である。
【0041】図示するように、事前処理ととして、最初
に探触子径D,遅延材音速Cd 等の測定系と被検体との
位置関係等を含む各測定条件を読込んだ後(P1)、
(3) 式で示される減衰補正量αc(f)を求める(P2)。
そして、一旦記憶保持する(P3)。
【0042】その後の測定演算処理として、被検体透過
前と透過後の2つの超音エコーを測定し(P4)、各超
音波エコーの周波数特性(スペクトラム)を計算する
(P5)。次に超音波エコー(パルス)の減衰am(f)の
周波数特性を(1) 式で算出する(P6)。そして、前記
測定された減衰am(f)から記憶保持されている減衰補正
量αc(f)を減算して、被検体での超音波の減衰α(f) を
(14)式を用いて算出する。(P7)。
【0043】その後、前述した被検体の材質等の測定条
件に対応した近似式(15)〜(17)を選択して、最小自乗法
演算を用いて、選択した近似式における各係数c1 、c
2 を求める(P8)。しかして、被検体に対する最終的
な超音波減衰量を決定する(P9)。次に、本発明によ
る超音波減衰量測定装置の作用について説明する。
【0044】超音波送受信手段は被検体に超音波パルス
を送波し反射波を検出する。ゲート手段は超音波送受信
手段の出力信号から被検体透過前の超音波パルスと被検
体透過後の超音波パルスを抽出する。超音波パルス減衰
量演算手段は、ゲート手段により抽出された被検体透過
前の超音波パルスと被検体透過後の超音波パルスとを周
波数解析しそれぞれの周波数特性を求める。そして、
(1) 式を用いて超音波パルスの減衰αm(f)の周波数特性
を算出する。
【0045】被検体表面減衰量記憶手段は予め実験で求
めた被検体表面での減衰αs(f)の周波数特性を記憶す
る。減衰補正量演算手段は(4) 〜 (13) 式を用いて各減
衰αi(f),αd(f),αs(f)を演算し、さらに(3) 式を用
いて減衰補正量αc(f)を求める。減衰補正量記憶手段は
(3) 式で算出された減衰補正量αc(f)を記憶する。
【0046】超音波減衰量演算手段は、(14)式を用い
て、測定によって得られた超音波パルスの減衰αm(f)か
ら記憶されている減衰補正量αc(f)を減算して、被検体
での超音波の減衰量α(f) を求める。
【0047】また、超音波減衰量近似手段は、前記測定
された被検体での超音波の減衰量α(f) に近似する多項
式を最小自乗法を用いて特定する。この場合、(18)式を
用いる。このように、被検体での超音波減衰量α(f) の
周波数特性が正確かつ高速に測定可能となる。
【0048】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面を用いて説明す
る。図1は実施例の被検体の超音波減衰量測定方法を適
用した超音波減衰量測定装置の概略構成を示すブロック
図である。
【0049】被検体1の表面1a上に遅延材2を介して
超音波探触子3が取付けられている。遅延材2は厚さt
d =16mm、音速Cd =2730m/s のアクリル板で構
成されている。また、超音波探触子3は、公称周波数1
0MHzで広帯域型であり、直径D=10mmである。
【0050】例えばパルサーレシーバ−等で構成された
超音波送受信器4は超音波探触子3へパルス信号を送出
するとともに、超音波探触子3からのエコー信号を受信
し、検出信号aとして次のゲート部5へ送出する。ゲー
ト部5は例えばデジタルオシロスコーブを用いて構成さ
れ、25MHzのサンプリング周波数を有する。そして、
一つのエコー波形に対するサンプリング点数は512点
である。そして、ゲート部5は、図3に示すように、超
音波送受信器4からの検出信号aに含まれる被検体1の
表面1aで反射された表面(S)エコー(透過前)と被
検体1の底面1bで反射された底面(B)エコーとを抽
出する。具体的には、各エコーの波形を前述したサンプ
リング周期でもってサンプリングしてその各サンプル値
をデジタル的に読取る。読取られた各波形データは次の
超音波パルス減衰量演算部6へ送出される。
【0051】超音波パルス減衰量演算部6は、例えばF
FT(高速周波数変換装置)を内蔵しており、図4に示
すように、入力した被検体1を透過する前の表面(S)
エコーと、被検体1を透過した後の底面(B)エコーと
のそれぞれの周波数特性を算出する。さらに、図5に示
すように、各周波数敷特性の各周波数fにおける差で示
される超音波パルスの減衰αm(f)の周波数特性を算出す
る。
【0052】被検体表面減衰量記憶部7は、被検体1の
表面1aでの超音波減衰αS(f)の周波数特性を記憶す
る。この減衰αS(f)は表面粗さに起因する減衰であり、
表面粗さのランク毎に予め測定されて設定されている。
【0053】減衰補正量演算部8は、被検体1境界での
超音波減衰αi(f)を(4)(5)(6) 式を用いて算出し、ま
た、超音波拡散減衰αd(f)を(7) 〜 (12) 式を用いて算
出する。次に、減衰補正量演算部8は(3) 式を用いて各
減衰αS(f),αi(f),αd(f)を加算して、減衰補正量α
c(f)を算出する。算出された減衰補正量αc(f)は次の減
衰補正量記憶部9へ格納される。なお、図5(a)は算
出された減衰補正量αc(f)の周波数特性と測定値に基づ
いて算出された超音波パルスの減衰αm(f)の周波数特性
との比較を示す図てある。
【0054】超音波減衰量演算部10は、超音波パルス
減衰量演算部6から測定値に基づいて算出された超音波
パルスの減衰αm(f)が入力されると、入力した超音波パ
ルスの減衰αm(f)から、減衰補正量記憶部9から読出し
た減衰補正量αc(f)を減算して、被検体1での超音波減
衰α(f) の周波数特性を算出する。算出された被検体1
での超音波減衰α(f) の周波数特性は、図5(b)に示
すように、例えばCRT表示装置で構成された表示部1
2に表示される。
【0055】超音波減衰量近似部12は、超音波減衰量
演算部10から入力した被検体1での超音波減衰α(f)
の周波数特性の近似式を求める。具体的には、測定者が
被検体1の材質や測定条件等を考慮して、(15)(16)(17)
式のうちどの多項式αa(f)を採用するかを選択して、実
行指令を入力すると、(18)式の評価関数Eを用いて選択
された多項式の各係数c1 ,c2 を算出する。そして、
該当超音波減衰α(f)に対する最終的な近似式αa(f)を
決定して、その周波数特性を、図5(b)に示すよう
に、表示部11に先に求めた超音波減衰α(f) の周波数
特性と共に表示する。なお、図1に示す各部5,6,
7,8,9,10,12は一種のコンピュータで構成さ
れている。次に、各種の被検体1での超音波減衰α(f)
を測定した場合の測定結果を図を用いて説明する。
【0056】まず、表面1aでの減衰がほとんど無視で
きる厚さt=25mmのステンレス鋼板を被検体1とし
た場合の結果について説明する。また、減衰補正量演算
部8における被検体境界での減衰αi(f)を算出する場合
の被検体1および遅延材2の音響インピーダンスZt ,
Zr をZt =45.4kg・s/m2 ,Zd =3.2k
g・s/m2 としている。また、上述したように、被検
体1の表面1aでの減衰を無視している(αs(f)=
0)。
【0057】同じく、減衰補正量演算部8における超音
波拡散減衰αd(f)を算出する場合、(7) (8) (9) 式で算
出される各パラメータX0 、N1 、N2 は、この場合、
遅延材3における音速(Cd =2730 m/s )と、被検体
1における音速(Ct =5750m/s)とが異なることを考
慮して、以下の計算で求めている。 X0 =D2 /4λ=D2 /4×10-3/(Ct /f) =(10)2 /4×10-3/(5750/f) [mm] …(19) X1 =td /Ct ・Cd =16/5750・3230 =8.988 [mm] …(20) X2 =td /Ct ・Cd +t=16/5750・2730+25 =33.988 [mm] …(21) このような条件で測定および算出された超音波パルスの
減衰αm(f)および減衰補正量αc(f)が図5(a)に示さ
れる。
【0058】図5(b)は、上述した測定錠件におい
て、超音波減衰量演算部10により被検体での超音波減
衰α(f) の周波数特性図である。同図中、黒丸で示され
ている点は超音波減衰量近似部12により多項式の係数
1 ,c2 を算出する時に用いる評価点である。また、
算出された多項式の近似式αa(f)の周波数特性も同時に
示されている。
【0059】図示するように、被検体1での超音波減衰
α(f) を近似した近似式αa(f)は、実測値を良く表して
おり、被検体1での超音波減衰量が精度良く測定できて
いることが理解できる。
【0060】なお、上記条件下で算出された多項式αa
(f)の係数はC1 =2.2×10-3、C2 =4.3×1
-2であり、周波数の1乗の項は4乗の項と比べると非
常に小さい。このことは、非磁性体であるステンレス材
の場合、超音波の減衰要因がほとんど散乱減衰であるこ
とを示している。次に、同じ材質の材料で、表面が粗
く、被検体表面での減衰αs(f)が大きい被検体1での超
音波減衰を測定した場合の結果を説明する。
【0061】図6(a)に、この条件下における超音波
パルスの減衰αm(f)と減衰補正量αc(f)との関係を示
す。図5(a)と比べて超音波パルスの減衰αm(f)が大
きく、また減衰補正量αc(f)も大きいことが理解でき
る。図6(b)は同一被検体1での超音波減衰α(f) の
周波数特性図である。被検体1の材質が同じなので、図
5(b)に示す超音波減衰α(f) とほぼ同じ値を示して
いる。このことから、被検体1の表面での減衰を精度良
く補正して、被検体での超音波減衰が精度よく測定され
ることが理解できる。
【0062】図7は、表面1aでの減衰がほとんど無視
できる厚さt=25mmの磁性体の鋼板での測定された
超音波減衰α(f) と、近似式(多項式)αa(f)との関係
を示す図である。この場合、算出された多項式の係数は
1 =2.61×10-2,C2 =6.3×10-1であ
り、周波数fの1乗の項C2 がステンレスの場合に比べ
て1桁大きいことが理解できる。このことは、磁性体で
ある鋼板は磁壁の移動による減衰が存在することを示し
ており、実施例装置によって被検体1の種々の減衰要因
の寄与分を定量的に把握することが可能である。
【0063】図8は本発明の他の実施例に係わる超音波
減衰量測定装置の概略構成を示すブロック図である。図
1に示す実施例と同一部分には同一符号が付してある。
したがって、重複する部分の詳細説明は省略されてい
る。
【0064】この実施例装置においては、非接触超音波
計測法であるレーザー超音波法が採用されている。そし
て、被検体1に対して超音波を送受波する超音波送受信
器4aとして、例えば非破壊検査第39巻第10号P8
34〜850に詳述されている送受信装置を用いてい
る。すなわち、超音波送受信器4aは、パルスレーザー
を被検体1の表面に照射して被検体1内に超音波を送波
し、レーザー干渉計により被検体を透過した超音波を検
出する。
【0065】このような構成の超音波減衰量測定装置に
おいて、例えば、表面1aでの減衰がほとんど無視でき
る厚さt=10mmのステンレス鋼板の被検体1の超音
波減衰をを測定した場合の測定結果を図を用いて説明す
る。
【0066】図9は超音波送受信器4aにて検出された
被検体1からの超音波エコーを示す波形図である。本実
施例の場合、被検体1透過前の超音波パルスとして被検
体1を1回往復したB1エコーを採用し、被検体1透過
後の超音波パルスとして被検体1を2回往復したB2エ
コーを採用する。ゲート部5は被検体透過前の超音波パ
ルスと被検体透過後の超音波パルスを抽出する。
【0067】超音波パルス減衰量演算部6は抽出された
各エコーの周波数解析を行う。図10(a)はB1エコ
ーとB2エコーの周波数特性図である。さらに、超音波
パルス減衰量演算部6は、被検体透過前の超音波パルス
(B1エコー)と被検体透過後の超音波パルス(B2エ
コー)との強度差から超音波パルスの減衰αm(f)を算出
する。
【0068】また、減衰補正量演算部8は減衰補正量α
c(f)を演算する。この被検体1の場合、被検体境界での
減衰αi(f)と被検体表面での減衰αs(f)はほとんで無視
できるので、この減衰補正量αc(f)は主に超音波拡散減
衰αd(f)に基づいて算出される。この場合、(7)(8)(9)
式で算出される各パラメータX0 、N1 、N2 は、超音
波を発生させるパルスレーザービームの径D=5[m
m]、被検体1内での音速Ct =5750[m/s]、被検
体1の板厚t=10[mm]を考慮し、以下の計算で算出
される。 X0 =D2 /4λ=D2 /4×10-3/(Ct /f) =(5)2 /4×10-3/(5750/f) [mm] …(22) X1 =t=10 [mm] …(23) X2 =2・t=20 [mm] …(24) 図10(b)に、測定された超音波パルスの減衰αm(f)
と算出された減衰補正量αc(f)との周波数特性を示す。
【0069】超音波減衰量演算部10は超音波パルスの
減衰αm(f)と減衰補正量αc(f)とから被検体1での超音
波減衰α(f) の周波数特性を算出する。また、超音波減
衰量近似部12は、超音波減衰量演算部10にて算出さ
れた被検体1での超音波減衰α(f) の周波数特性図に近
似する多項式で示される近似式αa(f)を算出する。図1
1は測定によって得られた被検体1での超音波減衰α
(f) の周波数特性と最小自乗法にて算出された近似式α
a(f)との関係を示す図である。同図中、黒丸で示されて
いる点は前記多項式を近似するときに用いる評価点であ
る。図示するように、被検体1の減衰量を近似した結果
は、実測値を良く表しており、被検体1の超音波減衰量
が精度良く測定できていることが理解できる。
【0070】なお、本発明は上述した実施例に限定され
るものではない。実施例では、ゲート部5以降をデジタ
ルデータに変換して演算処理を計算機で行ったが、アナ
ログ回路による演算も可能である。また、図8に示す実
施例で非接触超音波計測法としてレーザー超音波法を示
したが、電磁超音波法でも実施可能である。さらに、被
検体透過前の超音波パルスと被検体透過後の超音波パル
スは上述の実施例で述べたエコーに限定されるものでな
く、種々選択可能である。その他、本発明は、上記し、
かつ図面に示した実施例に限定されるものでなく、その
要旨を変更しない範囲で種々変形実施できるものであ
る。
【0071】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の超音波減
衰測定量測定方法によれば、被検体透過前の超音波パル
スと被検体透過後の超音波パルスとを周波数解析して超
音波パルスの減衰の周波数特性を求め、さらに被検体以
外の要因での減衰分を差し引くようにしている。したが
って、任意の周波数における減衰量を求めることがで
き、超音波のスペクトル形状の影響を受けないで、被検
体での超音波減衰の周波数特性を正確に求めることが可
能となる。また、近距離音場での理論も考慮して各要因
の減衰を算出しているので、測定範囲を拡大できる。
【0072】特に、被検体以外の減衰要因のうち、被検
体境界での減衰と超音波拡散減衰については計算で正確
に周波数特性を求め、被検体表面での減衰については実
験で周波数特性を求めるようにしている。したがって、
被検体以外の要因での減衰を正確に補正でき、被検体以
外の減衰要因の影響を受けないで、被検体でのより正確
な真の超音波減衰を求めることが可能となる。
【0073】また、被検体での超音波減衰の周波数特性
を近似する多項式を求めているで、被検体の様々な減衰
要因を多項式の項として分離でき、減衰要因の寄与分を
定量的に把握することが可能である。
【0074】また、超音波減衰量測定装置においては、
被検体表面減衰量記憶手段と減衰補正量演算手段と減衰
補正量記憶手段とを備えて、予め被検体以外の要因での
各減衰を加算した減衰補正量を記憶保持している。した
がって、超音波送受信手段とゲート手段によって2種類
の超音波パルスが得られた後は、FFT処理を2回と周
波数特性の引き算処理を2回実施するのみで、最終的な
被検体での超音波減衰の周波数特性が得られる。よっ
て、測定開始から最終結果である被検体の超音波減衰の
周波数特性が得られるまての時間が短縮され、測定装置
としての測定能率を大幅に向上できる。さらに、被検体
の超音波減衰が精度良く測定できるので、被検体の結晶
粒径や損失係数の測定が可能となる。
【0075】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係わる超音波減衰量測定
装置の概略構成を示すブロック図、
【図2】 超音波減衰量測定方法の手順を示す流れ図、
【図3】 実施例装置の超音波送受信器の出力信号波形
図、
【図4】 表面(s)エコーと底面(B)エコーの周波
数特性図、
【図5】 測定及び算出された各減衰の周波数特性図、
【図6】 測定及び算出された各減衰の周波数特性図、
【図7】 測定及び近似演算された各減衰の周波数特性
図、
【図8】 本発明の他の実施例に係わる超音波減衰量測
定装置の概略構成を示すブロック図、
【図9】 同実施例装置の超音波送受信器の出力信号波
形図、
【図10】 同実施例装置における各エコーの周波数特
性図と各減衰の周波数特性を示す図、
【図11】 同実施例装置における測定及び近似演算さ
れた各減衰の周波数特性図。
【0076】
【符号の説明】
1…被検体、2…遅延材、3…超音波探触子、4,4a
…超音波送受信器、5…ゲート部、6…超音波パルス減
衰演算部、7…被検体表面減衰量記憶部、8…減衰補正
量演部、9…減衰補正量記憶部、10…超音波減衰量演
算部、11…表示部、12…超音波減衰近似部。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年2月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、被検体での超音波減衰
の周波数特性を正確に測定する超音波減衰量測定方法及
びその方法を適用した超音波減衰量測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば超音波探傷や超音波厚み測定にお
いては、被検体内を伝搬される超音波はその伝搬過程に
おいて減衰する。この被検体の超音波減衰量は被検体の
結晶粒径や損失係数などの材料特性と密接な関係があ
る。したがって、この減衰の度合いや減衰の周波数特性
から被検体の材料特性を求めることができる。このた
め、被検体の超音波減衰量を精度良く測定することは工
業的に極めて重要である。
【0003】従来、種々の超音波減衰量測定方法が提唱
されている。例えば、超音波探触子をバッファ等の遅延
材を介して被検体表面に取付け、被検体に対して超音波
パルスを送波し、被検体表面で反射される表面(S)エ
コーと被検体底面で反射される底面(B)エコーとを測
定する。表面エコーと底面エコーとの間の強度差、また
は多重反射エコーの強度が減衰していく度合から、エコ
ーの減衰量を求める。そして、その超音波パルスの減衰
量に含まれている超音波拡散減衰を差し引いて、被検体
での超音波減衰量を求める。
【0004】この超音波拡散減衰量を求める方法とし
て、予め超音波減衰量が測定されている対比試験片を用
いて測定する方法と、遠距離音場では超音波拡散減衰量
が距離の対数にほぼ比例しているという近似関係を利用
する方法とがある。(日本非破壊検査協会規格、NDI
S 2415−87、超音波パルス反射法による固体の
超音波減衰係数の測定及び表示方法)しかしながら、既
知の超音波減衰量を有する対比試験片を用いる方法は、
被検体と同じ形状の対比試験片を準備する必要があるの
で、対比試験片の作成に多大の費用と時間が必要とな
り、実用的でない。さらに、対比試験片を測定する時と
被検体を測定する時において、超音波探触子の音響接触
状態を同一に揃えることが困難であるため、正確な測定
が困難である。
【0005】また、超音波拡散減衰量を遠距離音場で測
定する方法は、探触子径や被検体との距離を適切に選択
する必要があるために制限が多ので、測定の自由度が小
さく、実用的な方法ではない。例えば,1/2インチ厚
の鋼板で10MHz,振動子の直径が10mmの測定条件に
おいては、遠距離恩場と見なせるのは2次の反射波より
高い次数の反射波である。しかし、高次の反射波は減衰
が大きいので、高いS/Nを得ることができない。さら
に、得られた超音波拡散減衰の補正量は近似値であるた
め、前記超音波パルスの減衰量を正確に補正できない。
【0006】さらに、超音波パルスの減衰量を補正する
場合、周波数の問題がある。すなわち、一般に、被検体
の超音波減衰量は周波数に依存しているため、前記被検
体の超音波減衰量は、ある特定の周波数における値とし
て定義されている。したがって、上述した各手法におい
ては、超音波エコーのスペクトル半値周波数の中間点の
周波数でもって超音波減衰量を定義している。
【0007】しかしながら、超音波エコーのスペクトル
は様々な周波数成分を有するので、上述した手法で得ら
れた超音波減衰量は、スペクトル形状の影響を受けたも
のであり、理想的な単一周波数の超音波減衰量を表して
いない。その他に、測定結果に大きな影響を及ぼす表面
粗さの影響による被検体表面での減衰を考慮していな
い。以上のような様々な問題のため、上述した各手法で
は被検体の超音波減衰量を精度良く求めることができな
い。
【0008】このような不都合を解消するために、超音
波拡散減衰と被検体表面での減衰および超音波の周波数
を考慮して被検体の超音波減衰量を求める方法が提唱さ
れている(特開昭58−160865)。
【0009】すなわち、この方法においては、超音波パ
ルスを被検体に印加して、被検体からの各超音波エコー
を周波数解析し、3つの周波数特性上における3周波数
における各超音波減衰量から、超音波拡散減衰の周波数
特性と被検体表面での減衰の周波数特性を考慮して、被
検体の超音波減衰量と超音波拡散減衰量と被検体表面で
の減衰量とを連立方程式を解くことによりそれぞれ独立
して求めている。
【0010】なお、被検体の超音波減衰量は周波数の2
乗または4乗に比例し、超音波拡散減衰量は周波数のほ
ぼ−1乗に比例し、表面での減衰量は周波数のほぼ1/
2乗に比例するという関係を用いている。
【0011】その他に、超音波拡散減衰について近距離
音場も含めて考察し、超音波の周波数も考慮して被検体
の超音波減衰量を求める方法が提案されている(日本非
破壊検査協会第2分科会資料2902、1982/1/
28)。
【0012】この方法においては、被検体表面からの反
射である表面エコーと底面からの反射である底面エコー
とをそれぞれ周波数解析して、それぞれのスペクトルの
差を求める。そして、この差からAVGダイヤグラム
(またはDGS線図)から求めた超音波拡散減衰の周波
数特性を減算して、その減算値を被検体の超音波減衰量
とする。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た各手法においても、まだ解消すべき次のような課題が
あった。
【0014】すなわち、3つの周波数における各超音波
減衰量から求める手法においても、超音波拡散減衰につ
いての取り扱いは、あくまでも遠距離音場での近似法で
あるので、得られた計算結果には誤差が含まれる。ま
た、被検体での減衰についての取り扱いは減衰の要因と
して散乱減衰だけを考慮したものである。しかし、実際
には様々な要因がある。被検体表面での減衰についても
必ずしも周波数の1/2乗に比例するものばかりでなく
様々な場合があるため、これらの点からも計算結果には
誤差が含まれる。このため、この方法でも、被検体の超
音波減衰量を精度良く求めることができない。
【0015】また、AVGダイヤグラムを用いる手法に
おいては、超音波拡散減衰量をAVGダイヤグラムから
読取るためにAVGダイヤグラムに近似した2本の直線
の式を用いてる。このため超音波拡散減衰の周波数特性
を正確に求められず、被検体の超音波減衰量を正確に求
めることができない。
【0016】さらに、上述した各手法においては、被検
体の超音波減衰量の周波数特性を求めるだけである。被
検体での減衰は結晶粒界での反射に起因した散乱減衰や
磁壁の移動に起因する減衰など様々な要因からなるが、
これら様々な要因の寄与分を把握できない問題もある。
【0017】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、被検体境界および被検体表面における各減
衰および超音波拡散減衰等の被検体以外の減衰要因の各
周波数特性を予め求めておくことによって、測定された
超音波パルスの減衰に対して、超音波減衰量測定の大き
な誤差原因となる超音波エコーの周波数特性の影響,超
音波拡散減衰の影響,被検体表面での減衰の影響等を精
度良く補正して、被検体での真の減衰量の周波数特性を
高速かつ精度よく測定できる被検体の超音波減衰量測定
方法およびその装置を提供することにある。
【0018】さらに、様々な減衰の要因の寄与分をも定
量的に把握できる被検体の超音波減衰量測定方法及び装
置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記課題を解消するため
に本発明の被検体の超音波減衰量測定方法においては、
被検体透過前の超音波パルスと被検体透過後の超音波パ
ルスとをそれぞれ周波数解析して超音波パルスの減衰の
周波数特性を求め、測定系と前記被検体との位置関係を
用いて超音波拡散減衰の周波数特性を算出し、この算出
された超音波拡散減衰と被検体境界での超音波減衰と被
検体表面での超音波減衰とを加算して減衰補正量の周波
数特性を算出し、超音波パルスの減衰の周波数特性から
前記算出された減衰補正量の周波数特性を減算して最終
的な被検体での減衰の周波数特性を求める。
【0020】また、別の発明においては、上述した発明
における被検体表面での減衰の周波数特性を予め実験に
て求める。
【0021】さらに、別の発明においては、被検体での
減衰の周波数特性を近似する多項式の係数を最小自乗法
により求める。
【0022】さらに、本発明の被検体の超音波減衰量測
定装置においては、被検体に超音波パルスを送波し反射
波を検出する超音波送受信手段と、この超音波送受信手
段の出力信号に含まれる被検体透過前の超音波エコーと
被検体透過後の超音波エコーとを抽出するゲート手段
と、このゲート手段により抽出された被検体透過前の超
音波エコーと被検体透過後の超音波エコーとをそれぞれ
周波数解析して超音波パルスの減衰の周波数特性を求め
る超音波パルス減衰量演算手段と、被検体表面での超音
波減衰の周波数特性を記憶する被検体表面減衰量記憶手
段と、被検体境界での超音波減衰の周波数特性と超音波
拡散減衰の周波数特性とを演算し、この演算された各周
波数特性に被検体表面減衰量記憶手段に記憶された周波
数特性を加算して減衰補正量を得る減衰補正量演算手段
と、この算出された減衰補正量を記憶する減衰補正量記
憶手段と、この減衰補正量記憶手段の記憶内容を超音波
パルス減衰量演算手段の演算結果から減算して被検体で
の減衰の周波数特性を求める超音波減衰量演算手段と備
えたものである。
【0023】また、別の発明においては、上記発明の装
置に対して、超音波減衰量演算手段の演算結果を近似す
る多項式を最小自乗法により求める求める超音波減衰量
近似手段が付加されている。
【0024】
【作用】以下、上述した構成の被検体の超音波減衰量測
定方法を用いることによって、被検体の超音波減衰の周
波数特性を精度よく測定できることを理論的背景も含め
て説明する。
【0025】被検体に超音波パルスを送波し、被検体透
過前の超音波パルスと被検体透過後の超音波パルスとの
強度差を測定することによって、超音波パルスが被検体
を透過するときの減衰が得られる。このとき、各超音波
パルスをそれぞれ周波数解析して、各周波数における強
度差を得れば、任意の周波数における減衰を求めること
ができる。
【0026】しかし、この減衰には、被検体での減衰の
他に、被検体境界での減衰、超音波拡散減衰、被検体表
面での減衰等の他の要因の減衰が含まれている。そこ
で、これらの各減衰を定量的に把握して、被検体を透過
するときの減衰からそれらの減衰を減算すれば、被検体
での正しい減衰量を求めることができる。
【0027】この測定原理は周知であるが、発明者は、
周波数解析や音響理論などの種々の計算方手法を組合わ
せることによって、上述した被検体以外の要因の減衰を
正確に定量的に把握し、被検体での正しい超音波減衰量
を得ることができることを発見した。
【0028】先ず、被検体透過前の超音波パルスU1(t)
を周波数解析して周波数特性U1(f)を求め、被検体透過
後の超音波パルスU2(t)を周波数解析して周波数特性U
2(f)を求める。但し、tは時間であり、fは周波数であ
る。次に、被検体透過前の超音波パルスの周波数特性U
1(f)と被検体透過後の超音波パルスの周波数特性U2(f)
との比を対数化して求めると、超音波パルスが被検体を
透過するときの減衰量すなわち超音波パルスの減衰αm
(f)[dB]の周波数特性は(1) 式となる。
【0029】 αm(f)=20・Log{U1(f)/U2(f)} =20・Log{U1(f)} −20・Log{U2(f)} [dB] …(1) 超音波パルスの減衰αm(f)の周波数特性には被検体での
減衰α(f) [dB]の他に、(2) 式に示すように、被検体
以外の要因での減衰αc(f)[dB]が含まれている。
【0030】 αm(f)=α(f) +αc(f) [dB] …(2) ここで、被検体以外の減衰αc(f)[dB]には、被検体境
界での減衰αi(f)[dB]と、超音波拡散減衰αd(f)[d
B]と、被検体表面での減衰αs(f)[dB]とが含まれ
る。
【0031】 αc(f)=αi(f)+αd(f)+αs(f) [dB] …(3) 次に (3)式の各減衰αi(f),αd(f),αs(f)を順番に説
明する。
【0032】被検体境界での減衰αi(f)は、被検体の測
定面に他の超音波伝搬媒質が接触しているときに、音響
インピーダンスの違いにより生ずる減衰であり、計算で
求めることができる。例えば、圧電素子による超音波探
触子から遅延材を介して超音波を被検体に送波し、被検
体透過前の超音波パルスとして被検体の表面で反射する
表面(S)エコーを用い、被検体透過後の超音波パルス
として被検体の底面で反射する底面(B)エコーを用い
る場合を考える。この場合、(4) 〜(6) 式に示すよう
に、入射超音波に対する表面(S)エコーの音圧Pr と
底面(B)エコーの音圧Pt から被検体境界での減衰α
i(f)が求まる。
【0033】 Pr =(Zt −Zd )/(Zt +Zd ) …(4) Pt =1−Pr 2 …(5) αi(f)=20・Log(|Pr /Pt |) [dB] …(6) 但し、ここで、Zt は被検体の音響インピーダンスであ
り、Zd は遅延材の音響インピーダンスである。
【0034】超音波拡散減衰αd(f)は、超音波の回折で
超音波ビームが広がることにより生ずる減衰であり、従
来手法においては近似方法を使って求めていた。しか
し、本発明では、この超音波拡散減衰αd(f)を計算によ
って求める。すなわち、超音波を送波した位置から、被
検体透過前の超音波パルスが反射する位置までの距離を
X1 [mm]、被検体透過後の超音波パルスが反射する位
置までの距離をX2 [mm]とし、超音波を送波する面の
直径をD[mm]、超音波音速をC[ m/s]、周波数をf
[MHz]とし、かつパラメータX0 ,N1 ,N2 ,P1
,P2 を以下に示す(7)〜(10)式のように定義する。
【0035】 X0 =D2 /4×10-3/(C/f) [mm] …(7) N1 =X1 /X0 …(8) N2 =X2 /X0 …(9) P1 =|1−[cos(−π/N1 )+jsin(−π/N1 )] ×[J0 (π/N1 )+jJ1 (π/N1 )]| …(10) P2 =|1−[cos(−π/N2 )+jsin(−π/N2 )] ×[J0 (π/N2 )+jJ1 (π/N2 )]| …(11) 但し、J0 ,J1 は、それぞれ0次及び1次のベッセル
関数(円柱関数)であり、jは虚数単位である。そし
て、前記超音波拡散減衰αd(f)は(12)式で算出される。
【0036】 αd(f)=20・Log(P1 /P2 ) [dB] …(12) 最後の被検体表面での減衰αs(f)は、表面粗さに起因す
る超音波パルスの散乱によって生ずる減衰である。そし
て、本発明においては、この減衰αs(f)を実験で求め
る。まず、被検体と同じ表面粗さで、超音波減衰量αre
f(f)が既知である標準試験片を用意する。この標準試験
片を、表面での減衰が無いものとして超音波減衰量αte
st(f) を求める。αref(f)とαtest(f) との差は、被検
体表面での減衰αs(f)と見なすことが可能であるので、
(13)式を用いて、被検体表面での減衰αs(f)を求めるこ
とができる。
【0037】 αs(f)=αtest(f) −αref(f) [dB] …(13) このようにして求めた各減衰αi(f),αd(f),αs(f)を
加算すると、前述したように、被検体以外の要因での減
衰αc(f)が求まる。
【0038】 αc(f)=αi(f)+αd(f)+αs(f) [dB] …(3) そこで、被検体以外の要因での減衰αc(f)を減衰補正量
として、超音波パルスの減衰αm(f)からこの減衰補正量
αc(f)を減算すると、(14)式に示すように、被検体での
減衰α(f) が求まる。この減衰α(f) は周波数fの関数
であるので、被検体での減衰の周波数特性を求めること
ができる。
【0039】 α(f) =αm(f)−αc(f) [dB] …(14) 以上の手順にて、被検体における真の超音波減衰量α
(f) を求めることができる。なお、この測定が有効であ
る周波数範囲は、測定に用いた超音波パルスのスペクト
ル範囲に対応する周波数範囲である。
【0040】次に、被検体での減衰の周波数特性を近似
する多項式を求める減衰量測定方法を説明する。
【0041】被検体が鉄鋼材料である場合、被検体での
超音波減衰は、主に結晶粒界での反射に起因した散乱減
衰や磁壁や転位の移動に起因する減衰であり、被検体が
高分子材料のような粘性体である場合、主に緩和現象に
起因する減衰である。このように、被検体での超音波減
衰は様々な要因にて発生する。これらは、それぞれ減衰
のメカニズムが異なるため、減衰の周波数特性も異なっ
ている。例えば、レイリー散乱領域での散乱減衰におい
ては、減衰は周波数の4乗に比例する。また、磁壁の移
動に起因する減衰や緩和現象に起因する減衰において
は、減衰は周波数の1乗に比例する。
【0042】このような現象は周知事項であるが、本願
発明者は、種々の実験を行うことにより、被検体が磁性
体である鉄鋼材料の場合、散乱減衰と磁壁の移動による
減衰が前記超音波減衰の大部分を占め、非磁性体である
鉄鋼材料においては、散乱減衰が前記超音波減衰の大部
分を占め、さらに、高分子材料においては、緩和現象に
よる減衰が前記超音波減衰の大部分を占めることを発見
した。そして、本願発明者は被検体の減衰の周波数特性
を多項式で近似することにより各減衰要因の分離を行な
う方法を発明した。
【0043】まず、被検体の種類に応じて、減衰量を近
似する多項式を準備する。例えば、鉄鋼材料でレイリー
散乱が起こる周波数範囲で測定する場合は、散乱減衰が
周波数の4乗に比例し、磁壁の移動による減衰が周波数
の1乗に比例するので、多項式により近似する被検体の
減衰量をαa(f)とすると、減衰量αa(f)は(15)式で示す
ことが可能である。
【0044】 αa(f)=c1 ・f4 +c2 ・f [dB] …(15) 但し、c1 、c2 は係数である。
【0045】同様に、鉄鋼材料でストカスティック散乱
が起こる周波数範囲で測定する場合、減衰量αa(f)は(1
6)式で示される。また、高分子材料の場合は(17)式とな
る。
【0046】 αa(f)=c1 ・f2 +c2 ・f [dB] …(16) αa(f)=c1 ・f [dB] …(17) そして、被検体での減衰α(f) の周波数特性に対して以
上(15)(16)(17)式を最小自乗法を用いて各係数c1 、c
2 を求めることによって近似させる。なお、最小自乗法
の評価関数Eは次の(18)式を用いる。
【0047】
【数1】 ここで、周波数範囲(f1 〜f2 )は、減衰量を測定し
た時の超音波の周波数特性(スペクトラム)における周
波数範囲で選択される。
【0048】以上のようにして、(15)〜(17)の多項式の
各係数c1 、c2 を求めることにより、被検体の減衰に
含まれる各要因の寄与分を定量的に求めることができ
る。
【0049】図2は上述した各計算処理手順を例えばコ
ンピュータで実施する場合におけるデータ読取処理及び
計算処理を示す流れ図である。
【0050】図示するように、事前処理ととして、最初
に探触子径D,遅延材音速Cd 等の測定系と被検体との
位置関係等を含む各測定条件を読込んだ後(P1)、
(3) 式で示される減衰補正量αc(f)を求める(P2)。
そして、一旦記憶保持する(P3)。
【0051】その後の測定演算処理として、被検体透過
前と透過後の2つの超音エコーを測定し(P4)、各超
音波エコーの周波数特性(スペクトラム)を計算する
(P5)。次に超音波エコー(パルス)の減衰am(f)の
周波数特性を(1) 式で算出する(P6)。そして、前記
測定された減衰am(f)から記憶保持されている減衰補正
量αc(f)を減算して、被検体での超音波の減衰α(f) を
(14)式を用いて算出する。(P7)。
【0052】その後、前述した被検体の材質等の測定条
件に対応した近似式(15)〜(17)を選択して、最小自乗法
演算を用いて、選択した近似式における各係数c1 、c
2 を求める(P8)。しかして、被検体に対する最終的
な超音波減衰量を決定する(P9)。
【0053】次に、本発明による超音波減衰量測定装置
の作用について説明する。
【0054】超音波送受信手段は被検体に超音波パルス
を送波し反射波を検出する。ゲート手段は超音波送受信
手段の出力信号から被検体透過前の超音波パルスと被検
体透過後の超音波パルスを抽出する。超音波パルス減衰
量演算手段は、ゲート手段により抽出された被検体透過
前の超音波パルスと被検体透過後の超音波パルスとを周
波数解析しそれぞれの周波数特性を求める。そして、
(1) 式を用いて超音波パルスの減衰αm(f)の周波数特性
を算出する。
【0055】被検体表面減衰量記憶手段は予め実験で求
めた被検体表面での減衰αs(f)の周波数特性を記憶す
る。減衰補正量演算手段は(4) 〜 (13) 式を用いて各減
衰αi(f),αd(f),αs(f)を演算し、さらに(3) 式を用
いて減衰補正量αc(f)を求める。減衰補正量記憶手段は
(3) 式で算出された減衰補正量αc(f)を記憶する。
【0056】超音波減衰量演算手段は、(14)式を用い
て、測定によって得られた超音波パルスの減衰αm(f)か
ら記憶されている減衰補正量αc(f)を減算して、被検体
での超音波の減衰量α(f) を求める。
【0057】また、超音波減衰量近似手段は、前記測定
された被検体での超音波の減衰量α(f) に近似する多項
式を最小自乗法を用いて特定する。この場合、(18)式を
用いる。
【0058】このように、被検体での超音波減衰量α
(f) の周波数特性が正確かつ高速に測定可能となる。
【0059】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面を用いて説明す
る。
【0060】図1は実施例の被検体の超音波減衰量測定
方法を適用した超音波減衰量測定装置の概略構成を示す
ブロック図である。
【0061】被検体1の表面1a上に遅延材2を介して
超音波探触子3が取付けられている。遅延材2は厚さt
d =16mm、音速Cd =2730m/s のアクリル板で構
成されている。また、超音波探触子3は、公称周波数1
0MHzで広帯域型であり、直径D=10mmである。
【0062】例えばパルサーレシーバ−等で構成された
超音波送受信器4は超音波探触子3へパルス信号を送出
するとともに、超音波探触子3からのエコー信号を受信
し、検出信号aとして次のゲート部5へ送出する。ゲー
ト部5は例えばデジタルオシロスコーブを用いて構成さ
れ、25MHzのサンプリング周波数を有する。そして、
一つのエコー波形に対するサンプリング点数は512点
である。そして、ゲート部5は、図3に示すように、超
音波送受信器4からの検出信号aに含まれる被検体1の
表面1aで反射された表面(S)エコー(透過前)と被
検体1の底面1bで反射された底面(B)エコーとを抽
出する。具体的には、各エコーの波形を前述したサンプ
リング周期でもってサンプリングしてその各サンプル値
をデジタル的に読取る。読取られた各波形データは次の
超音波パルス減衰量演算部6へ送出される。
【0063】超音波パルス減衰量演算部6は、例えばF
FT(高速周波数変換装置)を内蔵しており、図4に示
すように、入力した被検体1を透過する前の表面(S)
エコーと、被検体1を透過した後の底面(B)エコーと
のそれぞれの周波数特性を算出する。さらに、図5に示
すように、各周波数敷特性の各周波数fにおける差で示
される超音波パルスの減衰αm(f)の周波数特性を算出す
る。
【0064】被検体表面減衰量記憶部7は、被検体1の
表面1aでの超音波減衰αS(f)の周波数特性を記憶す
る。この減衰αS(f)は表面粗さに起因する減衰であり、
表面粗さのランク毎に予め測定されて設定されている。
【0065】減衰補正量演算部8は、被検体1境界での
超音波減衰αi(f)を(4)(5)(6) 式を用いて算出し、ま
た、超音波拡散減衰αd(f)を(7) 〜 (12) 式を用いて算
出する。次に、減衰補正量演算部8は(3) 式を用いて各
減衰αS(f),αi(f),αd(f)を加算して、減衰補正量α
c(f)を算出する。算出された減衰補正量αc(f)は次の減
衰補正量記憶部9へ格納される。なお、図5(a)は算
出された減衰補正量αc(f)の周波数特性と測定値に基づ
いて算出された超音波パルスの減衰αm(f)の周波数特性
との比較を示す図てある。
【0066】超音波減衰量演算部10は、超音波パルス
減衰量演算部6から測定値に基づいて算出された超音波
パルスの減衰αm(f)が入力されると、入力した超音波パ
ルスの減衰αm(f)から、減衰補正量記憶部9から読出し
た減衰補正量αc(f)を減算して、被検体1での超音波減
衰α(f) の周波数特性を算出する。算出された被検体1
での超音波減衰α(f) の周波数特性は、図5(b)に示
すように、例えばCRT表示装置で構成された表示部1
2に表示される。
【0067】超音波減衰量近似部12は、超音波減衰量
演算部10から入力した被検体1での超音波減衰α(f)
の周波数特性の近似式を求める。具体的には、測定者が
被検体1の材質や測定条件等を考慮して、(15)(16)(17)
式のうちどの多項式αa(f)を採用するかを選択して、実
行指令を入力すると、(18)式の評価関数Eを用いて選択
された多項式の各係数c1 ,c2 を算出する。そして、
該当超音波減衰α(f)に対する最終的な近似式αa(f)を
決定して、その周波数特性を、図5(b)に示すよう
に、表示部11に先に求めた超音波減衰α(f) の周波数
特性と共に表示する。
【0068】なお、図1に示す各部5,6,7,8,
9,10,12は一種のコンピュータで構成されてい
る。
【0069】次に、各種の被検体1での超音波減衰α
(f) を測定した場合の測定結果を図を用いて説明する。
【0070】まず、表面1aでの減衰がほとんど無視で
きる厚さt=25mmのステンレス鋼板を被検体1とし
た場合の結果について説明する。また、減衰補正量演算
部8における被検体境界での減衰αi(f)を算出する場合
の被検体1および遅延材2の音響インピーダンスZt ,
Zr をZt =45.4kg・s/m2 ,Zd =3.2k
g・s/m2 としている。また、上述したように、被検
体1の表面1aでの減衰を無視している(αs(f)=
0)。
【0071】同じく、減衰補正量演算部8における超音
波拡散減衰αd(f)を算出する場合、(7) (8) (9) 式で算
出される各パラメータX0 、N1 、N2 は、この場合、
遅延材3における音速(Cd =2730 m/s )と、被検体
1における音速(Ct =5750m/s)とが異なることを考
慮して、以下の計算で求めている。
【0072】 X0 =D2 /4λ=D2 /4×10-3/(Ct /f) =(10)2 /4×10-3/(5750/f) [mm] …(19) X1 =td /Ct ・Cd =16/5750・3230 =8.988 [mm] …(20) X2 =td /Ct ・Cd +t=16/5750・2730+25 =33.988 [mm] …(21) このような条件で測定および算出された超音波パルスの
減衰αm(f)および減衰補正量αc(f)が図5(a)に示さ
れる。
【0073】図5(b)は、上述した測定錠件におい
て、超音波減衰量演算部10により被検体での超音波減
衰α(f) の周波数特性図である。同図中、黒丸で示され
ている点は超音波減衰量近似部12により多項式の係数
1 ,c2 を算出する時に用いる評価点である。また、
算出された多項式の近似式αa(f)の周波数特性も同時に
示されている。
【0074】図示するように、被検体1での超音波減衰
α(f) を近似した近似式αa(f)は、実測値を良く表して
おり、被検体1での超音波減衰量が精度良く測定できて
いることが理解できる。
【0075】なお、上記条件下で算出された多項式αa
(f)の係数はC1 =2.2×10-3、C2 =4.3×1
-2であり、周波数の1乗の項は4乗の項と比べると非
常に小さい。このことは、非磁性体であるステンレス材
の場合、超音波の減衰要因がほとんど散乱減衰であるこ
とを示している。
【0076】次に、同じ材質の材料で、表面が粗く、被
検体表面での減衰αs(f)が大きい被検体1での超音波減
衰を測定した場合の結果を説明する。
【0077】図6(a)に、この条件下における超音波
パルスの減衰αm(f)と減衰補正量αc(f)との関係を示
す。図5(a)と比べて超音波パルスの減衰αm(f)が大
きく、また減衰補正量αc(f)も大きいことが理解でき
る。図6(b)は同一被検体1での超音波減衰α(f) の
周波数特性図である。被検体1の材質が同じなので、図
5(b)に示す超音波減衰α(f) とほぼ同じ値を示して
いる。
【0078】このことから、被検体1の表面での減衰を
精度良く補正して、被検体での超音波減衰が精度よく測
定されることが理解できる。
【0079】図7は、表面1aでの減衰がほとんど無視
できる厚さt=25mmの磁性体の鋼板での測定された
超音波減衰α(f) と、近似式(多項式)αa(f)との関係
を示す図である。この場合、算出された多項式の係数は
1 =2.61×10-2,C2 =6.3×10-1であ
り、周波数fの1乗の項C2 がステンレスの場合に比べ
て1桁大きいことが理解できる。このことは、磁性体で
ある鋼板は磁壁の移動による減衰が存在することを示し
ており、実施例装置によって被検体1の種々の減衰要因
の寄与分を定量的に把握することが可能である。
【0080】図8は本発明の他の実施例に係わる超音波
減衰量測定装置の概略構成を示すブロック図である。図
1に示す実施例と同一部分には同一符号が付してある。
したがって、重複する部分の詳細説明は省略されてい
る。
【0081】この実施例装置においては、非接触超音波
計測法であるレーザー超音波法が採用されている。そし
て、被検体1に対して超音波を送受波する超音波送受信
器4aとして、例えば非破壊検査第39巻第10号P8
34〜850に詳述されている送受信装置を用いてい
る。すなわち、超音波送受信器4aは、パルスレーザー
を被検体1の表面に照射して被検体1内に超音波を送波
し、レーザー干渉計により被検体を透過した超音波を検
出する。
【0082】このような構成の超音波減衰量測定装置に
おいて、例えば、表面1aでの減衰がほとんど無視でき
る厚さt=10mmのステンレス鋼板の被検体1の超音
波減衰をを測定した場合の測定結果を図を用いて説明す
る。
【0083】図9は超音波送受信器4aにて検出された
被検体1からの超音波エコーを示す波形図である。本実
施例の場合、被検体1透過前の超音波パルスとして被検
体1を1回往復したB1エコーを採用し、被検体1透過
後の超音波パルスとして被検体1を2回往復したB2エ
コーを採用する。ゲート部5は被検体透過前の超音波パ
ルスと被検体透過後の超音波パルスを抽出する。
【0084】超音波パルス減衰量演算部6は抽出された
各エコーの周波数解析を行う。図10(a)はB1エコ
ーとB2エコーの周波数特性図である。さらに、超音波
パルス減衰量演算部6は、被検体透過前の超音波パルス
(B1エコー)と被検体透過後の超音波パルス(B2エ
コー)との強度差から超音波パルスの減衰αm(f)を算出
する。
【0085】また、減衰補正量演算部8は減衰補正量α
c(f)を演算する。この被検体1の場合、被検体境界での
減衰αi(f)と被検体表面での減衰αs(f)はほとんで無視
できるので、この減衰補正量αc(f)は主に超音波拡散減
衰αd(f)に基づいて算出される。この場合、(7)(8)(9)
式で算出される各パラメータX0 、N1 、N2 は、超音
波を発生させるパルスレーザービームの径D=5[m
m]、被検体1内での音速Ct =5750[m/s]、被検
体1の板厚t=10[mm]を考慮し、以下の計算で算出
される。
【0086】 X0 =D2 /4λ=D2 /4×10-3/(Ct /f) =(5)2 /4×10-3/(5750/f) [mm] …(22) X1 =t=10 [mm] …(23) X2 =2・t=20 [mm] …(24) 図10(b)に、測定された超音波パルスの減衰αm(f)
と算出された減衰補正量αc(f)との周波数特性を示す。
【0087】超音波減衰量演算部10は超音波パルスの
減衰αm(f)と減衰補正量αc(f)とから被検体1での超音
波減衰α(f) の周波数特性を算出する。また、超音波減
衰量近似部12は、超音波減衰量演算部10にて算出さ
れた被検体1での超音波減衰α(f) の周波数特性図に近
似する多項式で示される近似式αa(f)を算出する。図1
1は測定によって得られた被検体1での超音波減衰α
(f) の周波数特性と最小自乗法にて算出された近似式α
a(f)との関係を示す図である。同図中、黒丸で示されて
いる点は前記多項式を近似するときに用いる評価点であ
る。図示するように、被検体1の減衰量を近似した結果
は、実測値を良く表しており、被検体1の超音波減衰量
が精度良く測定できていることが理解できる。
【0088】なお、本発明は上述した実施例に限定され
るものではない。実施例では、ゲート部5以降をデジタ
ルデータに変換して演算処理を計算機で行ったが、アナ
ログ回路による演算も可能である。また、図8に示す実
施例で非接触超音波計測法としてレーザー超音波法を示
したが、電磁超音波法でも実施可能である。さらに、被
検体透過前の超音波パルスと被検体透過後の超音波パル
スは上述の実施例で述べたエコーに限定されるものでな
く、種々選択可能である。その他、本発明は、上記し、
かつ図面に示した実施例に限定されるものでなく、その
要旨を変更しない範囲で種々変形実施できるものであ
る。
【0089】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の超音波減
衰測定量測定方法によれば、被検体透過前の超音波パル
スと被検体透過後の超音波パルスとを周波数解析して超
音波パルスの減衰の周波数特性を求め、さらに被検体以
外の要因での減衰分を差し引くようにしている。したが
って、任意の周波数における減衰量を求めることがで
き、超音波のスペクトル形状の影響を受けないで、被検
体での超音波減衰の周波数特性を正確に求めることが可
能となる。また、近距離音場での理論も考慮して各要因
の減衰を算出しているので、測定範囲を拡大できる。
【0090】特に、被検体以外の減衰要因のうち、被検
体境界での減衰と超音波拡散減衰については計算で正確
に周波数特性を求め、被検体表面での減衰については実
験で周波数特性を求めるようにしている。したがって、
被検体以外の要因での減衰を正確に補正でき、被検体以
外の減衰要因の影響を受けないで、被検体でのより正確
な真の超音波減衰を求めることが可能となる。
【0091】また、被検体での超音波減衰の周波数特性
を近似する多項式を求めているで、被検体の様々な減衰
要因を多項式の項として分離でき、減衰要因の寄与分を
定量的に把握することが可能である。
【0092】また、超音波減衰量測定装置においては、
被検体表面減衰量記憶手段と減衰補正量演算手段と減衰
補正量記憶手段とを備えて、予め被検体以外の要因での
各減衰を加算した減衰補正量を記憶保持している。した
がって、超音波送受信手段とゲート手段によって2種類
の超音波パルスが得られた後は、FFT処理を2回と周
波数特性の引き算処理を2回実施するのみで、最終的な
被検体での超音波減衰の周波数特性が得られる。よっ
て、測定開始から最終結果である被検体の超音波減衰の
周波数特性が得られるまての時間が短縮され、測定装置
としての測定能率を大幅に向上できる。
【0093】さらに、被検体の超音波減衰が精度良く測
定できるので、被検体の結晶粒径や損失係数の測定が可
能となる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係わる超音波減衰量測定
装置の概略構成を示すブロック図、
【図2】 超音波減衰量測定方法の手順を示す流れ図、
【図3】 実施例装置の超音波送受信器の出力信号波形
図、
【図4】 表面(s)エコーと底面(B)エコーの周波
数特性図、
【図5】 測定及び算出された各減衰の周波数特性図、
【図6】 測定及び算出された各減衰の周波数特性図、
【図7】 測定及び近似演算された各減衰の周波数特性
図、
【図8】 本発明の他の実施例に係わる超音波減衰量測
定装置の概略構成を示すブロック図、
【図9】 同実施例装置の超音波送受信器の出力信号波
形図、
【図10】 同実施例装置における各エコーの周波数特
性図と各減衰の周波数特性を示す図、
【図11】 同実施例装置における測定及び近似演算さ
れた各減衰の周波数特性図。
【符号の説明】 1…被検体、2…遅延材、3…超音波探触子、4,4a
…超音波送受信器、5…ゲート部、6…超音波パルス減
衰演算部、7…被検体表面減衰量記憶部、8…減衰補正
量演部、9…減衰補正量記憶部、10…超音波減衰量演
算部、11…表示部、12…超音波減衰近似部。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被検体透過前の超音波パルスと被検体透
    過後の超音波パルスとをそれぞれ周波数解析して超音波
    パルスの減衰の周波数特性を求め、測定系と前記被検体
    との位置関係を用いて超音波拡散減衰の周波数特性を算
    出し、この算出された超音波拡散減衰と被検体境界での
    超音波減衰と被検体表面での超音波減衰とを加算して減
    衰補正量の周波数特性を算出し、前記超音波パルスの減
    衰の周波数特性から前記算出された減衰補正量の周波数
    特性を減算して前記被検体での減衰の周波数特性を求め
    る被検体の超音波減衰量測定方法。
  2. 【請求項2】 前記被検体表面での減衰の周波数特性を
    予め実験にて求めることを特徴とする請求項1記載の被
    検体の超音波減衰量測定方法。
  3. 【請求項3】 前記被検体での減衰の周波数特性を近似
    する多項式の係数を最小自乗法により求めることを特徴
    とする請求項1記載の被検体の超音波減衰量測定方法。
  4. 【請求項4】 被検体に超音波パルスを送波し反射波を
    検出する超音波送受信手段と、この超音波送受信手段の
    出力信号に含まれる被検体透過前の超音波エコーと被検
    体透過後の超音波エコーとを抽出するゲート手段と、こ
    のゲート手段により抽出された被検体透過前の超音波エ
    コーと被検体透過後の超音波エコーとをそれぞれ周波数
    解析して前記超音波パルスの減衰の周波数特性を求める
    超音波パルス減衰量演算手段と、被検体表面での超音波
    減衰の周波数特性を記憶する被検体表面減衰量記憶手段
    と、被検体境界での超音波減衰の周波数特性と超音波拡
    散減衰の周波数特性とを演算し、この演算された各周波
    数特性に前記被検体表面減衰量記憶手段に記憶された周
    波数特性を加算して減衰補正量を得る減衰補正量演算手
    段と、この算出された減衰補正量を記憶する減衰補正量
    記憶手段と、この減衰補正量記憶手段の記憶内容を前記
    超音波パルス減衰量演算手段の演算結果から減算して被
    検体での減衰の周波数特性を求める超音波減衰量演算手
    段と備えた被検体の超音波減衰量測定装置。
  5. 【請求項5】 前記超音波減衰量演算手段の演算結果を
    近似する多項式を最小自乗法により求める超音波減衰量
    近似手段を備えたことを特徴とする請求項4記載の超音
    波減衰量測定装置。
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