JPH05320069A - Ifn産生を増強しうる脂質を含有する組成物 - Google Patents

Ifn産生を増強しうる脂質を含有する組成物

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JPH05320069A
JPH05320069A JP4130523A JP13052392A JPH05320069A JP H05320069 A JPH05320069 A JP H05320069A JP 4130523 A JP4130523 A JP 4130523A JP 13052392 A JP13052392 A JP 13052392A JP H05320069 A JPH05320069 A JP H05320069A
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Hironori Murakami
浩紀 村上
Sennosuke Tokumaru
千之助 徳丸
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ヒトおよび動物およびそれらの細胞における
IFN産生を増強できる脂質含有組成物を提供する。 【構成】 燐脂質、スフィンゴ脂質、グリセロ脂質、そ
れらの一部分解産物、およびそれらの誘導体からなる群
から選択される少なくとも1種の脂質、特にケフィア由
来の脂質を含有する。 【効果】 IFNの産生を増強できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は燐脂質、スフィンゴ脂質、グリセ
ロ脂質、それらの一部分解産物、およびそれらの誘導体
からなる群から選択される少なくとも1種の脂質、特に
発酵乳ケフィア由来の脂質を含有することからなる、ヒ
トおよび動物およびそれらの細胞においてIFNの産生増
強剤として使用するための組成物に関する。
【0002】
【産業上の利用分野】インターフェロン(IFN) はウイル
ス感染、抗原的チャレンジおよび種々の化学誘起剤によ
って多くの動物細胞から合成される一群のタンパクおよ
び糖タンパクであり、生体防御を構成する因子としては
侵入した抗原に対して非特異的に作用する非特異的液性
因子の一つである (大沢利昭編:サイトカイン (東京化
学同人))。 IFNは、はじめ抗ウイルス活性を同種細胞に
与える作用をもつ物質として同定され、 IFN自身には抗
ウイルス活性はないがそれを生産した細胞のみならず伝
達を受けた細胞において数種類の抗ウイルスタンパク質
の合成を促進し、生体におけるウイルス感染防御に重要
な役割を担っているとみなされている (S.Pestka, J.
A. Langer, K. C. Zoo, and C. E. Samuel : Annu. Re
v. Biochem., 56, 727(1987))。
【0003】また IFNは抗ウイルス作用の他に免疫系の
活性化などの極めて多様の生理機能がある。例えば抗原
に対するT細胞応答、サプレッサー細胞活性の制御、マ
クロファージ、ナチュラルキラー細胞の活性の誘導また
は増強、および抗腫瘍を行うことが知られており、生体
防御システムの活性化や調節に関連する多面的作用を持
ち他のサイトカインと共にネットワークを形成し複雑に
生体のホメオスタシスを制御していると考えられている
(Y. Koyama, " Proceedings of the Inter-national
Symposium on Interferons", ed. by E. De Maeyer,
H. Schellekens,p.493, Elsevier, Amsterdam(198
3))。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで日常、我々が
摂取している食品には、栄養性、嗜好性に加え生体調節
機能があり、生体の恒常性に関与する物質が機能体とし
て存在している。生体の恒常性が食品成分によって調節
できれば、その調節因子を含む食品を摂取することによ
り生体防御の活性化といった多様な生理作用が発現する
と考えられる。そのため我々は上述のように生体の恒常
性維持に多面的に関与しているIFNに焦点を当て、IFNの
産生を増強する食品成分の検索を行うことを考えた。
【0005】しかしながら食品は通常長期間にわたって
継続的に摂取するものであるから食品中にIFNインデュ
ーサーが含まれていれば、 IFNの生体内レベルが常に高
い状態で維持されることになり恒常性維持機構のバラン
スがくずれてしまうことが予想され、 IFNの生体内レベ
ルが不必要に長期間上昇したままにしておくことは生体
機能の調節に必ずしもプラスに作用しないと考えられ
る。したがって食品中のIFN産生増強物質の探索はINFイ
ンデューサーを見い出すことではなく、それ自身には細
胞のIFN産生誘発能は無くウイルス等のインデューサー
の侵入によって細胞がIFN産生を開始した時にのみその
産生を増強する産生増強物質、すなわちそれ自身が単独
で機能を発現するものではなく生体の防御機能の発現を
調節するような生物機能調節物質 (Biological respons
e modifier;BRM)を検索することが望ましいと考えられ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで我々はこれらの思
想に基づいて、それ自身にはIFN誘発能はないが、イン
デューサーにより誘発されたIFNの産生を高めることが
できる可食性成分を探索し、リゾホスファチジルコリ
ン、リゾホスファチジルイノシトール等の燐脂質、スフ
ィンゴミエリン等のスフィンゴ脂質、アシルグリセロー
ル等のグリセロ脂質またはそれらの一部分解産物および
類似体がIFNの産生を高度に高めることができることを
見出した。
【0007】またこれらの脂質はIFNの産生を誘導され
た培養細胞における IFN産生をも高めることが見出され
た。それゆえ本発明は燐脂質、スフィンゴ脂質、グリセ
ロ脂質、それらの一部分解産物、およびそれらの誘導体
からなる群から選択される少なくとも1種の脂質を含有
することからなる、ヒトおよび動物およびそれらの細胞
においてIFNの産生増強剤として使用するための組成物
に関する。
【0008】本発明組成物中に含有される、 IFNの産生
を増強できる可食性成分としては、燐脂質例えばリゾホ
スファチジルコリン (LPC)、リゾホスファチジルイノシ
トール (LPI)、ホスファチジルエタノールアミン (P
E)、スフィンゴ脂質例えばスフィンゴミエリン (SpM);
その分解産物例えばスフィンゴシン (SpS);グリセロ脂
質およびその分解産物例えばジアシルグリセロールがあ
げられる。
【0009】コーカサス地方の発酵乳であるケフィア(k
efir)、またはその凍結乾燥物中に存在する脂質、特に
スフィンゴミエリンまたはジアシルグリセロールが特に
好ましい。本発明による組成物は、これら脂質をそのま
ま、または食品として受容できる任意の適当な固体また
は液体媒体もしくは希釈剤と混合して含有し、ヒトまた
は動物の摂取用に、および培養細胞によるIFN産生の増
強に使用するために提供される。
【0010】前記媒体もしくは希釈剤は可食性物質であ
ればよく、特に限定されないが、水または水溶液が特に
好ましい。本発明による組成物は日常の食品と同様に摂
取できるので、生体の防御機構を継続的に高めることが
できる。以下に本発明をIFN-βの産生増強を示す実施例
に関して説明するが本発明はそれに限定されるものでは
ない。
【0011】
【実施例】(実験材料と実験方法) 1. 試薬および動物 凍結乾燥発酵乳は日本ケフィアより供与されたものを用
いた。ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノー
ルアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジ
ルセリン、ホスファチジン酸、コリン、ホスホリルコリ
ンおよびグリセロ燐酸は和光純薬社製を、カルジオリピ
ン、オレイン酸、9−オクタデセン酸メチル、ネルボン
酸、ネルボン酸メチル、N−ネルボノイルセレブロシド
は Sigma社製を、その他の脂質はいずれもフナコシ社製
のものを用い、10%エタノール/10mM 燐酸ナトリウム
バッファー (pH 7.0) に溶解して用いた。
【0012】アクチノマイシンD (AMD)、ポリイノシン
酸・ポリシチジル酸 (Poly(I)・Poly(C))は Sigma社製
を、シクロヘキシイミド (CHM)は和光純薬社製を用い
た。そして Poly(I)・Poly(C) とCHMはリン酸緩衝溶液
(pH 7.4) で、 AMDはエタノールで各々1mg/mlの濃度
に調製し用いた。
【0013】マウスは生和実験動物会社より購入した5
〜7週齢のBALB/c系雄性マウスを用いた。 2. 発酵乳ケフィアからの脂質の精製 凍結乾燥発酵乳ケフィアを10倍容のクロロホルム−メタ
ノール (2:1) 混液に懸濁し、4℃で24時間攪はんし
て全脂質を抽出した。そして5000rpm で10分間遠心し、
可溶画分と不溶画分とに分け、可溶画分を回収し減圧下
で濃縮した。回収された脂質をGalanos & Kapoulasの石
油エーテルエタノール分配法を用いておおまかに単純脂
質画分と複合脂質画分に分配した。次に以下の方法によ
りスフィンゴミエリン(SpM) とジアシルグリセロール
(DG) を抽出した。
【0014】SpM : 複合脂質画分をBligh-Dyer法により
分画し下層を回収した。回収された下層に1Nのメタノ
ール性NaOHを等量加え37℃で12時間攪はんした。この反
応液を1N酢酸で中和後、このクロロホルム−メタノー
ル混液に水を加え遠心して2層に分離した。この下層を
クロロホルム−メタノール−水 (3:48:47, V/V)混液
でよく洗ったのち減圧乾固した。次にクロロホルム−メ
タノール−1M アンモニア水 (65:25:4, V/V)の展開
溶媒を用いた薄層クロマトグラフィー(TLC) により更に
分画し (プレート;Kiselgel 60(Merk社) 、発色試薬;
ヨウ素) 、Rf値0.25の箇所をかきとりクロロホルム−メ
タノール (2:1) 混液で4℃、一昼夜抽出を行った。
この抽出液に水を加えて2液層となし、この下層をクロ
ロホルム−メタノール−水 (3:48:47, V/V)混液でよ
く洗ったのちこの溶液を減圧乾固しSpMを精製した。
【0015】DG:単純脂質画分をヘキサン−ジエチルエ
ーテル−酢酸 (80:20:1) の展開溶媒を用いたTLCに
より分画し (プレート;Kiselgel 60(Merk社) 、発色試
薬;ヨウ素) 、Rf値0.10〜0.40の箇所をかきとりクロロ
ホルム−メタノール (2:1) 混液で4℃、一昼夜抽出
を行った。次に石油エーテル−ジエチルエーテル−酢酸
(50:50:1)の展開溶媒を用いた TLCにより分画し (プ
レート;Kiselgel 60(Merk社) 、発色試薬;ヨウ素) 、
Rf値0.57の箇所を各々かきとりクロロホルム−メタノー
ル (2:1) 混液で4℃、一昼夜抽出を行った。各々の
抽出液に水を加えて2液層となし、各々の下層をクロロ
ホルム−メタノール−水 (3:48:47, V/V)混液でよく
洗ったのち溶液を減圧乾固し、DGを精製した。 3. 細胞、細胞培養およびIFN-βの誘導 検定細胞は、IFN-β産生細胞であるヒト骨肉腫細胞株
(Osteosarcoma) MG-63を用い、その細胞を37℃、5%CO
2 /95%空気の条件下、5%ウシ胎児血清(FCS) 添加イ
ーグル最小必須培地 (MEM) (日水製薬) 中で培養した。
IFN-βの産生誘導はTan (Y.H. Tan, J.A. Armstrong,
Y.H. Ke, and M. Ho: Proc. Natl.Acad.Sci., U.S.A.,
64, 464(1970))らの方法で行った。細胞を24ウェル培
養プレート(Falcon) に2×105 の細胞密度でまきこみ
(0.5ml/ウェル) 2日間培養した(これをプレインキュ
ベーションと称する) 。そして培地を Poly(I)・Poly
(C)1μg/ml、CHM 5μg/mlを含む2% FCS/MEM培地
(0.5ml) と交換した。37℃、4時間培養後AMD (終濃度
4μg/ml) を培地に添加し1時間培養を続けた (これを
誘導期と称する) 。培地を除去後、細胞をPBSで2回洗
浄し、2% FCS/MEM培地 (0.5ml) を添加して12時間培
養した (産生期) 。
【0016】またサンプルはプレインキュベーションま
たは誘導期に培地に5%濃度で添加した (図1) 。 4. インビボにおける脂質によるIFN-β産生増強効果 まず脂質を5%アラビアゴム (和光純薬社製) 水溶液に
懸濁した。この懸濁液中に生じた気泡は超音波発生装置
にかけ除去した。
【0017】Balb/c系マウスにこの懸濁液を経口ゾンデ
を用いて一日一回、1週間連続して0.2ml/10gの量を
経口投与した。脂質投与を開始して4日目にイバラキウ
イルス (107.0 ×TClD50/ml) を0.3ml腹腔内に投与し
感染させた。ウイルス感染後3日間連続でマウス眼窩静
脈から採血した。採血した血液は3000r.p.m で10分間遠
心し、得られた血しょうをマウスIFN-β試料とした。 5. IFN-βの力価測定 A) ヒトIFN-βの測定 培養上清中のヒトIFN-β量は、エンザイム リンクト イ
ムノソルベント アッセイ(ELISA) 法(E.Engvall and P.
Perlmann :Immunochemistry, , 871(1917))により測
定した。96ウエルイムノプレートに固相抗体としてマウ
ス抗ヒト−IFN-βモノクローナル抗体 (ヤマサ醤油; 5
0mM 炭酸塩バッファー (pH 9.6) で2000倍希釈) を 100
μl ずつ分注し、4℃で一晩放置した。
【0018】このプレートを3回 0.05% Tween20含有P
BS (TPBS)で洗浄後、ブロッキング溶液のブロックエー
ス (大日本製薬;滅菌水で4倍希釈) 300μl を各ウエ
ルに加え、37℃で1時間保温した。次にTPBSでプレート
を洗浄後、IFN-βを含有する培養上清またはその希釈液
を各ウエルに50μl 加え、37℃で1時間反応させた。TP
BSでプレートを洗浄後、一次抗体としてラビット抗ヒト
−IFN-βポリクローナル抗体 (LEE社製;ブロックエー
スで2000倍希釈) を 100μl 加え、37℃で1時間反応さ
せた。TPBSでプレートを洗浄後、二次抗体としてマウス
抗ラビットIgGペルオキシダーゼ標識抗体 (BIO-RAD 社
製;ブロックエースで2000倍希釈) を100μl 加え、37
℃で1時間反応させた。TPBSでプレートを洗浄後、基質
として0.3mg/ml ABTS 2, 2'−アジノ−ビス (3−エ
チルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸) ジアンモニウ
ム塩 (和光018-10311) -0.006% H2O2−0.2M クエン酸
緩衝液 (pH 4.0) を各ウエルに100μl 加え、37℃で20
分間反応させた。反応停止液1.5%シュウ酸溶液を各ウ
エルに 100μl 加え、ELISA READER (ラボサイエンス社
製;EAR-400) を用いて405-492nm でO.D.を測定した。 B) マウスIFN-βの測定 血中のマウスIFN-βの量もELISA法により測定した。採
血により得られたマウスの血しょうを適宜希釈し、96ウ
エルイムノプレートに直接50μl ずつ分注し、4℃で一
晩放置した。TPBSでプレートを洗浄後、ブロッキング溶
液 (0.2%ゼラチン (Bio-Rad社製) -PBS) 300μl を各
ウエルに加え、37℃で1時間保温した。プレートを洗浄
後、一次抗体としてラビット抗マウス−IFN-β抗体 (パ
ーゼル社製;ブロッキング溶液で1500倍希釈) 100μl
を加え、37℃で1時間反応させた。プレートを洗浄後、
二次抗体マウス抗ラビットIgGペルオキシダーゼ標識抗
体(BIO-RAD社製;ブロッキング溶液で3000倍希釈) を10
0μl 加え、37℃で1時間反応させた。プレートを洗浄
後、0.3mg/ml ABTS-0.006% H2O2−0.2M クエン酸緩
衝液 (pH 4.0) 基質溶液を各ウエルに 100μl 加え、37
℃で20分間反応させた。反応停止液1.5%シュウ酸溶液
を各ウエルに 100μl 加え、ELISA READER (ラボサイエ
ンス社製; EAR-400) を用いてO.D.を405-492nm で測定
した。
【0019】上記測定により得られた結果を以下に示
す。 1) 様々な脂質のIFN-β産生に及ぼす影響 表1は、様々な脂質で処理された細胞のIFN-β産生増強
効果を調べたものである。その結果、0.5〜100μg/ml
の添加濃度範囲内でリゾホスファチジルコリン (LPC)、
リゾホスファチジルイノシトール (LPI)、スフィンゴミ
エリン (SpM)、ホスファチジルエタノールアミン (PE)
等のリン脂質およびジアシルグリセロール(DG)、スフィ
ンゴシン (SpS)等の中性脂質にIFN-β産生増強効果が認
められた。IFNの増加量は、特にSpSと発酵乳ケフィア由
来のSpMに顕著な活性が認められ、それらの産生増加量
はそれぞれ約12.0倍、14倍であった。その他LPCが約3.
2倍、 LPIが約2.0倍、PEが約1.4倍、卵黄由来のSpM
が約1.7倍、DGが約2.5倍の相対活性を示した。
【0020】一方、他の脂質には効果は全く認められな
かった。またIFN-β産生増強効果を示した脂質は、 Pol
y(I)・Poly(C) で処理された細胞のIFN-β産生を増強し
たが、それ自身にはIFN-β誘導能はなかった(示され
ず)。
【0021】 2) LPC、 LPI、 SpM、DGおよびSpSのIFN-β産生増強
効果 表2は、 Poly(I)・Poly(C) に誘導されたIFN-βの産生
増強効果を示した脂質の中で、高い活性が認められた L
PC、 LPI、 SpS、SpM およびDGの添加時期の影響を調べ
たものである。
【0022】その結果、 LPC、卵黄および発酵乳 (ケフ
ィア) 由来のSpMとDGはいずれもプレインキュベーショ
ンおよび誘導期の両方に於いてIFN-βの産生を増強し
た。更に、SpMはプレインキュベーションの際に処理し
た場合の活性と誘導期に処理した場合の活性が卵黄およ
び発酵乳由来のもの両方とも同程度であったが、 LPCは
誘導期に処理した方が約1.5倍、DGは卵黄および発酵乳
由来ともプレインキュベーションの際に処理した方が約
1.8倍高い効果が認められた。一方、 LPIとSpSは誘導
期に処理した場合にのみ活性が認められ、プレインキュ
ベーションの際に処理した場合には活性は現われなかっ
た。
【0023】
【0024】そしてこれらの脂質はいずれもIFN-β産生
期に処理しても活性は認められなかった。次に図2A、
B、C、D、E、FおよびGは添加濃度の影響を調べた
ものである。LPCとLPIはいずれもIFN-β産生に対し5〜
15μg/mlの狭い濃度範囲で活性を示し、一番高い活性を
示す最適条件は12.5μg/mlの濃度で誘導期に処理した場
合であり、その時の活性はそれぞれ約3.2と2.0倍の比
活性を示した。 SpSは誘導期に処理した場合0.2〜15μ
g/mlの濃度範囲で活性が認められ、最適濃度は6μg/ml
で、その条件下で約12倍の比活性が認められた。一方こ
れら LPC、LPI、SpS は、いずれも15μg/ml以上の濃度
では効果が抑制され、20μg/ml以上ではIFN-βの産生を
阻害した。
【0025】SpMは由来により域値が異なり、卵黄由来
のSpMは10〜50μg/mlで活性が認められ、一方発酵乳由
来の SpMは1.8〜100μg/mlの幅広い域値が観測され
た。更に、最適濃度は両方とも25μg/mlであるが発酵乳
由来の方が卵黄由来のSpMに比べて8.2倍もの高い比活
性 (卵黄由来:約1.7倍、発酵乳由来:約14倍) を示し
た。DGは卵黄および発酵乳由来の両方ともプレインキュ
ベーションの際、10〜20μg/mlの濃度範囲で添加した場
合約1.5倍以上の比活性がみとめられ、20μg/mlの時両
方とも約 2.5倍の活性を示した。 SpMとDGも最適濃度
以上の添加濃度ではその効果は抑制されたが、 100μg/
mlまでの濃度範囲ではLPC等に観測されたようなIFN-β
産生の阻害作用は認められなかった。 3) 卵黄由来の LPC、 SpM、DGで処理された細胞のIFN-
β産生の時間的経過 図3は、卵黄由来の LPC、DG、SpM 処理された細胞のIF
N-β産生の時間的経過を示す。IFN-βの誘発が終わり、
産生を開始した時点を0時間とした。大きく2つの活性
機構が観察された。一つはSpMに観察される様に対照細
胞の0−3時間の間に見られる産生速度を対照細胞に比
較し約3倍の時間維持することにより産生を増強する機
構である。もう一つはLPCとDGに観察される様に産生速
度を増加し (0〜3時間の間で LPCは約2倍、DGは約1.
6倍) 、さらにその産生速度を維持する機構である。
【0026】LPCは、産生速度の増強とその維持の両作
用とも高いことが分かる。 4) IFN-β産生増強におけるLPCの作用部位 LPCの作用機構を調べるために、オレイン酸LPCの構成成
分であるコリン、ホスホリルコリン、グリセロ燐酸およ
びオレイン酸各々別々に0.5〜100μg/mlの濃度範囲で
加えた。どの成分にもIFN-β産生増強効果は認められな
かった (表3) 。このことから LPCの活性は LPCの構成
成分が活性本体として活性を示しているのではないこと
が示唆される。
【0027】 5) 構成脂肪酸の影響 表4は、構成脂肪酸が活性に及ぼす影響を調べたもので
ある。
【0028】 1,2−DGの場合、構成脂肪酸により大きく3つの活性様
式が観測された。1,2−ジオレインは、プレインキュベ
ーションの際に処理した方が誘導期に処理するよりも約
1.4倍高い効果が認められた。ところが1,2−ジリノレ
インの場合は、誘導期に処理した時にのみ活性が認めら
れプレインキュベーションの際に処理しても活性は見ら
れなかった。
【0029】一方、1−ステアロイル−2−リノレオレ
ルはプレインキュベーション、誘導期の両方の場合で同
程度の約2.0倍の比活性が認められた。また由来により
活性様式が異なり、卵黄由来のものはプレインキュベー
ション処理の方が誘導期の際の処理よりも約1.8倍高
く、ブタ肝臓由来のものは逆に誘導期に処理した方が約
1.2倍の高い効果を示した。
【0030】1−モノパルミチンと1−モノオレインを
プレインキュベーションの際に処理した場合、1−モノ
パルミチンは約1.7倍の活性を示したが、1−モノオレ
インは活性は認められなかった。一方、誘導期に処理し
た場合1−モノパルミチンと1−モノオレインは両物質
とも、IFN-β産生増強効果を示し、IFN-βの増加量は1
−モノパルミチンが約2.4倍の比活性を示し、特に1−
モノオレインはプレインキュベーション処理では活性は
なかったが誘導期に処理した場合約3.5倍の高い比活性
を示した。
【0031】LPCの場合、カプロン酸、パルミチン酸、
ステアリン酸、オレイン酸およびリノレン酸を構成脂肪
酸として有するLPC はそれぞれ約1.5、1.4、3.5、2.
7および2.0の比活性を示し、アラキドン酸を構成脂肪
酸として有するものには活性は認められなかった。また
炭素数が18の構成脂肪酸を持つLPCの活性が他の構成脂
肪酸を持つものに比べて高く、更に炭素数が同じ18でも
ステアリン酸のような不飽和度が低い脂肪酸を持つ程活
性が高いことが認められた。これらのことよりIFN-β産
生増強効果の発現には、構成脂肪酸も重要な要因である
ことが示唆される。 6) グリセロール誘導体のIFN-β産生に及ぼす影響 図4はオレイン酸グリセロール誘導体を用いてプレイン
キュベーションおよび誘導期に処理し、構造とIFN-β産
生増強効果との関係を調べたものである。
【0032】プレインキュベーションの際に処理した場
合、ジアシルグリセロールは活性を示したが、モノアシ
ルグリセロールおよびトリアシルグリセロールにはIFN-
β産生増強効果は認められなかった。更にモノアシルグ
リセロールにはIFN-β産生阻害効果が認められた (濃度
25μg/mlの時、約0.7の比活性) 。またジアシルグリセ
ロールでも1,3−DGより1,2−DGの方が高い活性を示
し、1,2−DGのほうが域値が広いことが観測された。
【0033】誘導期に処理した場合全てのグリセロール
誘導体に活性が認められ、プレインキュベーション処理
で活性が認められなかったモノアシルグリセロールとト
リアシルグリセロールもIFN-β産生増強効果を示し、特
にモノアシルグリセロールは約3.5倍 (添加濃度50μg/
ml) の高い比活性を示した。また誘導期処理の場合と同
様にジアシルグリセロールは、1,3−DGより1,2−DGの
方が高い活性と広い域値を示した。
【0034】一方、グリセロールは0.5〜100μg/mlの
添加濃度範囲ではIFN-β産生に影響は与えなかった。こ
のようにグリセロール誘導体の活性発現は、構成脂肪酸
の数と脂肪酸の結合する位置つまり構造異性体により異
なることが観測された。 7) 組合せの効果 IFN-β産生増強効果を示したLPC、卵黄由来のDG、卵黄
および発酵乳ケフィア由来の SpMの組合せの効果を調べ
た結果を図6に示す。由来の異なる SpMどうしを組み合
わせた場合と発酵乳ケフィア由来の SpMをLPCおよびDG
と組み合わせた場合いずれも約2.5倍以上の高い活性が
認められた。また発酵乳由来のSpMとDGおよび LPCを組
合せた場合約4倍の活性が認められた。一方DGとLPC を
卵黄由来の SpMと組み合わせた場合両方とも約1.5倍の
活性は示したが、 LPCとDGの活性は抑制された。同様に
発酵乳由来の SpMとDGおよびLPCを含む組合せはいずれ
も効果が抑制された。このようにSpMは由来により異な
った作用を示す事がわかった。以上の事からこれら脂質
によるIFN-β産生増強効果を期待する場合組み合せも重
要な要因であることが示唆される。 8) IFN-β産生に及ぼす O2 濃度の影響 つぎにLPCによるIFN-β産生増強作用に及ぼす O2 濃度
の影響を図5に示す。LPCのIFN-β産生増強能は培養器
中の酸素濃度の違いによって大きく影響を受けた。すな
わち、20%酸素通気下の方が7%酸素存在下よりも LPC
無添加の場合 2.5倍、 LPC添加の場合実に7倍もMG-6
3 のIFN-β産生量は多かった。また比活性で比較した場
合約2.5倍程度、20%酸素下の方が高かった。 LPCのIF
N-β産生増強機構には培養液中の溶存酸素濃度が関与し
ていることが示唆される。 9) LPCとDGのインビボでの効果 インビトロで IFN産生増強活性を有した物質がインビボ
でも IFN増強活性を示すかどうかを知ることはその物質
の実用的な利用可能性を調べる上で重要である。そこで
LPCとDGがマウスを用いたインビボ系で同様な効果を示
すか調べた (表5、図7A, B) 。
【0035】
【0036】通常マウスの血液中におけるIFN-βレベル
は 153±34 IU/mlであるが、イバラキウイルスを感染さ
せて3日後には350 IU/ml と約2.3倍に増加した。これ
はイバラキウイルス感染に対する生体防御機構により、
IFN-βの産生が増加したものである。さらにDGを経口投
与しウイルス感染したマウスの血中IFN-β量は、感染後
1日目は対照のウイルス感染マウスと同程度であった
が、2日目以降は14mg/kg投与の場合420(2日目) およ
び478(3日目) IU/ml のIFN-βを産生し、対照に比較し
て約1.4倍 (3日目) のIFN-βが産生された。また1.4
mg/kg投与の場合でも同等の効果が認められた (426(2
日目) および470(3日目) IU/ml)。一方、LPC (1.4mg
/kg) もDGと同様にウイルス感染後の2日目以降マウス
の血中IFN-β量を増大させた (402(2日目)、440(3日
目))。
【0037】ところでDGおよびLPCを投与しイバキラウ
イルスを感染させていないマウスでも2日目の血中IFN-
β量が、対照に対し約1.2倍増大している。これらの事
実は、食品成分が培養細胞のみでなくインビボでのウイ
ルス感染に伴うIFN-β生産を増強させることを示してい
る。本発明組成物の作用機序について以下にふれる。
【0038】今回 LPC、 SpMなどのリン脂質およびアシ
ルグリセロール、スフィンゴシン等の中性脂質がIFN-β
産生増強活性を有することが示された。これら脂質のイ
ンターフェロン−β生産増強物質は、 Poly(I)・Poly
(C) の作用がなければ効果を示さず、細胞がその核酸と
相互作用をした時にのみ細胞のインターフェロン生産を
増強するもので、そのような相互作用がない通常の状態
ではインターフェロン増強作用を示さない。すなわちそ
れ自身にはIFN-β誘発能はなかった。この結果よりこれ
らの脂質は単独でIFN-β誘導シグナルを誘起したり、産
生されたIFN-βの安定性を増強するのではなく、 Poly
(I)・Poly(C) に誘導されたIFN-βの転写、翻訳、分泌
などの過程に作用してIFN-βの産生量を増加させている
可能性が示唆される。
【0039】また LPC、 SpM、DGは細胞をあらかじめ処
理したのち、それらの存在しない条件下で Poly(I)・Po
ly(C) 処理してもIFN-β生産量が増加した。このことは
細胞の状態を、 Poly(I)・Poly(C) の透過性を高めた
り、IFN-βの分泌を増強するようにあらかじめ変化させ
ている可能性を示している (表2) 。LPCのIFN-β産生
増強能は培養器中の酸素濃度の違いによって大きく影響
を受けることが示される。今回溶存酸素が高いほどIFN-
β産生増強効果が高かった。このことは、培地中の溶存
酸素濃度が高いと細胞膜が酸化されやすいことから、現
段階でははっきりしたことは言えないが、細胞膜の酸化
がLPCのIFN-β産生増強機構になんらかの影響を与えて
いる可能性が考えられる (図5) 。
【0040】オレイン酸LPCの構成成分であるコリン、
ホスホリルコリン、グリセロ燐酸およびオレイン酸に
は、IFN-β産生増強効果はなく、このことから LPCの活
性はLPCの構成成分の一つが活性本体として活性を示し
ているのではなく、 LPCの構造をとってはじめて活性が
現れることが示唆される (表3) 。また LPCおよびアシ
ルグリセロールのIFN-β産生増強活性の発現には構成脂
肪酸が重要な要因であることが示された (表4) 。 LPC
は構成脂肪酸の炭素数が多い程また不飽和度が少ない
程、ミセルを形成しやすくまた細胞膜に対する親和性が
増大する性質があり (K. Matsuzaki, T. Hanada, K. Mi
yajima, Y. Mikura, H. Shimizu, and H.Toguchi : Che
m. Pharm. Bull, 36, 4253(1988)) 、この現象と LPCの
活性発現との間に相関が認められることからこのLPCの
物理的性質が構成脂肪酸による活性の相違の原因の一つ
であると考えられる。このことからLPCは細胞膜に作用
して活性を示すことが推測された。
【0041】同様に1,2−および1−アシルグリセロー
ルも構成脂肪酸によりIFN-β産生増強効果の程度および
活性様式が異なる現象が認められた (図4) 。構成脂肪
酸によりIFN-β産生増強効果が添加処理期間により異な
ったが、これは活性物質の細胞内への取り込み時間の相
違およびその物質の安定性によるものと考えられる。更
に発酵乳由来の SpMが卵黄由来のSpMに比べて約8倍高
い活性を示し (図2−D、E) 、またDGとLPC の活性を
卵黄由来のSpMは抑制し、発酵乳由来のSpM にはそのよ
うな作用は認められなかった (図6) 。更にDGも由来に
より異なった活性様式を示した (表4) 。一般に構成脂
肪酸の組成は由来により大きく異なり、物理的性質は構
成脂肪酸に大きく影響され、また細胞にはアラキドン酸
高親和性ホスホリパーゼA2 のような、構成脂肪酸に特
異的な酵素も存在することから、このような由来による
活性の程度および活性様式の相違も構成脂肪酸によるも
のと推測される。
【0042】グリセロール誘導体の構造とIFN-β産生増
強効果との関係を調べた結果、グリセロール誘導体の活
性発現は、構成脂肪酸の数と脂肪酸の結合する位置つま
り構造異性体により異なることが観測され (図4) 、プ
レインキュベーションの際に様々なアシルグリセロール
誘導体を処理した場合DGのみ活性が認められ、誘導期に
処理した場合はモノおよびトリアシルグリセロールも活
性を示した (図4) 。このことからDGは1−モノアシル
グリセロールまたはトリアシルグリセロールに代謝され
活性を示している可能性も考えられる。また1,2−ジリ
ノレインと1−ステアロイル−2−リノレオイルを比較
した場合、1位の炭素に結合している脂肪酸が活性様式
に大きく影響を与えることがわかる。これまでモノアシ
ルグリセロールはトリアシルグリセロールの一連の吸収
過程での中間体として、またトリアシルグリセロールは
ヒトを含めた哺乳動物でエネルギー源として、また細胞
膜を構成している複合脂質の構成脂肪酸の供給源として
利用されていることはわかっていたが、今回栄養源とし
ての役割以外に細胞に作用して生理作用を持つ機能物質
として細胞機能の調節を行っていることが示唆される。
【0043】IFN-β産生増強効果を有する脂質のうち卵
黄由来のLPCおよびDGはマウスに経口投与しても効力を
示すことが実証された (図7A, B、表5)。DGおよびL
PCのIFN-β増強効果はそれぞれ比活性で約1.40および1.
25倍 (サンプル1.4mg/kg投与、ウイルス感染後3日
目) を示し、DGの場合大量 (14mg/kg) に添加してもそ
の効力はそれ以上は増加しなかった。食品を考えた場
合、食品は基本的に薬物の様にその用量を規定すること
は実際的に困難である。したがって食品成分のIFN-β増
強効果がその用量に比例してIFN-βを大量に生産させる
ようなものであれば、極めて多面的な生理活性を有する
このタンパク質によって生体の恒常性が攪乱される可能
性がある。この点から食品成分のIFN-β増強効果が一定
レベル以上に発現されにくいものであることはそれらを
生体防御を有する食品成分として用いるためには望まし
いことと考えられる。ところでDGおよびLPC投与のみでI
FN-βの産生量が増強されたが、培養細胞を用いた系で
これら2つの脂質にはIFN-β誘発能はないことが確かめ
られており、また今回の実験が無菌的なところで行って
ないため実験の最中に別のウイルスが感染した可能性が
高く、そのためLPCとDGの効果により血中のIFN-βの量
が高くなったことが考えられる。このこともLPCとDGのI
FN-β産生増強効果を支持する結果である。これらの事
実は、食品中の脂質成分が培養細胞のみでなくインビボ
でのウイルス感染に伴うIFN-β生産を増強させることを
示しており、インビトロとインビボで相関が認められた
ことから、インビトロでIFN-β産生増強効果を示した S
pMも同様に効果が期待される。
【0044】近年、脂質に様々な生理活性が認められて
きており、LPCには細胞膜の減極による透過性の増強作
用 (R. L. Gallo, R. P. Wersto, R. H. Notter, and
J. N.Finkelstein : Arch, Biochem. Biophys, 235, 54
4(1984))、細胞融合促進作用(A. R. Poole, J. I. Howe
ll and J. A. Lucy:Nature, 227, 810(1970))、ホスホ
リパーゼA2 (M. K. Jain and G. H. De Hass : Biochi
m. Biophys. Acta, 736, 157(1983))、プロテインキナ
ーゼC (PKC) (K. Oishi, R. L. Raynor, P.A.Charp an
d J. F. Kuo:J. Biol. Chem., 263, 6865(1988)) など
の酵素の活性化作用等が、 SpMの代謝産物であるSpSは
血小板の凝集と分泌、好中球の呼吸バーストと分泌、前
骨髄性白血病 (HL−60) 細胞の分化など、いくつかの細
胞機能に対して作用を及ぼすことが明らかになっている
(Hannun, Y. A., Bell, R.H.:Science, 243, 500(198
5))。これら脂質のIFN-β産生増強機構として、推測の
域を脱しえないが、転写レベルでの増強とIFN-β放出の
促進の2つ考えられる。まず転写レベルでの増強である
がDGのうち1,2−DGは生理的条件下で、細胞の転写を促
進する転写因子の調節に重要な役割を果たしているCa2+
/リン脂質依存性プロテインキナーゼC (PKC)の活性化
に関与している (Barry R. Ganong,Carson R. Loomis,
Yusuf A. Hannun, and Robert M. Bell:Proc. Natl. A
cad.Sci. USA. 83, 1184(1986)) 。ところでIFN-β遺伝
子には転写因子であるNFκBの認識配列が存在し、この
転写因子はIFN-β遺伝子の転写を促進するが、活性PKC
はこのNFκB を活性化する (Hannun, Y. A., Loomis,
C. R., Merrill, A. H., Jr., and Bell, R. M.:J. Bi
ol. Chem., 261, 12604(1986) ; 井上圭三:油化学, 2
6, 12(1977)) 。このことから1,2−DGはPKCを活性化し
転写レベルで増強していることが推測される。また、1,
3−DGはPKC活性化の作用はないが、3位に結合してい
る脂肪酸が2位に転移され1,2−DGに変わり活性を示し
ている可能性がある。
【0045】この PKCの活性化作用は1,2−DG以外に細
胞膜に存在するホスファチジルコリンからホスホリパー
ゼA2 により生じた LPCが PKCの活性を調節している可
能性を示した報告がなされている (J. Biol. Cehm., 26
3, 6865(1988)) 。更に LPCがホスホリパーゼA2 を活
性化するという報告もあり (Biochem. Biophys. Acta,
736, 157(1983))、 LPCによるIFN-β産生増強活性機構
は添加されたLPCが細胞膜に作用し、その作用により活
性化されたホスホリパーゼA2 の作用をうけたホスファ
チジルコリン(PC)がLPCを遊離し、遊離LPCが (もしくは
添加されたLPCが直接) PKC を活性化し転写レベルで増
強されていることが示唆される。また PKC活性はLPI に
も認められている (J. Biol. Chem., 263, 6865(1988))
。一方、SpSは逆にPKC の負の調節作用を示す (J. Bio
l. Chem., 261, 12604(1986))ため別の機構によりIFN-
β産生を増強していると考えられる。
【0046】次にIFN-β放出の増強であるがLPCは細胞
膜に侵入し膜融合を促進することが報告されており、そ
のことにより輸送小胞と細胞膜の融合を促進して分泌を
増強する可能性が指摘されている (Nature 227, 810(1
970) ; 井上圭三:油化学, 26, 12(1977);Kanda, S.,
Inoue, K., Nojima, S., Utsumi, H. and Wiegandt,
H.:J. Biochem., 91, 2095(1982)) 。実際、生理活性
物質の分泌が旺盛ないくつかの腫瘍細胞は比較的LPCの
含量が多く、更に LPCで処理されたクローム親和性細胞
はカテコールアミンの分泌を増強したという報告がある
(Bergelson, L. D., Dyatloritskaya, E. V., Torkhov
skaya, T. I., Sorokina, I. B., and Gorkova, N.
P.:FEBS Letters, 2, 87(1968);Blaschko, H., Firem
ark, H., Smith, A. D., and Winkler, H. : Bioche
m. J., 104, 545)。LPCは転写レベルの増強以外にこのI
FN-β放出の増強も生じている可能性があるため、DG お
よびSpM よりもLPC処理された細胞の方がIFN-βの産生
速度の増強とその維持の両作用とも高い現象が観察され
たと考えられる (図3) 。またLPCと同じように界面活
性を示すLPI、1−モノオレイン−グリセロールも同様
な機構によりIFN-β産生を増強している可能性が考えら
れる。
【0047】このように LPCやLPIなどのリン脂質がIFN
-β産生を増強することは、食品による生体防御を考え
る上で極めて興味深い知見である。ウイルス、微生物等
の環境中の外来のインデューサーの生体への侵襲に対し
細胞はインターフェロンを誘発産生し非特異的な防御機
構を形成して対抗しようとしている。今回示したリン脂
質を含む食品特に発酵乳製品を継続的に摂取すること
は、ウイルス等の感染をIFN-β産生増強により初期段階
で防御できる可能性があり、これらの物質は生物機能調
節物質 (Biological response modifier;BRM)としてIF
N-β増強活性を通しての生体防御に寄与する可能性が示
された。また医学領域への応用を考えた場合、誘導期に
処理して効果を示した即答性の活性脂質はドラッグ・デ
リバリー・システムで用いられるリボソームとして利用
し、Poly(I)・Poly(C) を封入してIFN-β療法に用いる
ことができると考えられる。
【0048】更に今回単独では活性を示しても他の活性
成分との相互作用により活性が抑制される現象が認めら
れたが、食品は様々な成分が共存し相互作用をする複合
系であり、そうした複雑な作用機構を分子レベルで解明
する場合、培養細胞を用いた機能物質の評価法は今後重
要な役割を果たすと考えられる。
【0049】
【発明の効果】燐脂質、スフィンゴ脂質、グリセロ脂
質、それらの一部分解産物、およびそれらの誘導体から
なる群から選択される少なくとも1種の脂質を含有する
組成物は、ヒトおよび動物およびそれらの細胞において
IFNの産生を増強させる作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】アッセイ系プロトコルを示す。
【図2】MG-63 細胞によるIFNの産生に及ぼすそれぞれ
の脂質の濃度の作用を示す。 A…リゾホスファチジルコリン (卵黄) 、B…リゾホス
ファチジルイノシトール (卵黄) 、C…スフィンゴシ
ン、D…スフィンゴミエリン (卵黄) 、E…スフィンゴ
ミエリン (発酵乳) 、F…ジアシルグリセロール (卵
黄) 、G…ジアシルグリセロール (発酵乳) 、を示す。
【図3】卵黄由来の脂質で処理されたMG-63細胞におけ
るIFNの産生の時間的経過を示す。
【図4】MG-63 細胞によるIFNの産生に及ぼすオレイン
酸グリセロール誘導体の処理時期の影響を示す。
【図5】MG-63 細胞によるIFN産生に及ぼす酸素濃度の
影響を示す。
【図6】MG-63 細胞における、脂質の組み合せによるIF
N産生への影響を示す。 L:リゾホスファチジルコリン (卵黄)(12.5μg/ml) ; D
G:1,2−ジアシルグリセロール (卵黄、25μg/ml) ; S
F:スフィンゴミエリン (発酵乳、6μg/ml); SE:スフ
ィンゴミエリン (卵黄、20μg/ml) 、を示す。
【図7】ウイルスの感染下におけるBalb/cマウスによる
IFNの産生に及ぼす卵黄由来の脂質の作用を示す。値は
一群6匹の平均値を示す。 A…イバラキウイルス感染、7B…感染なし、を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 37/20 8314−4C C12N 5/06 C12P 21/02 F 8214−4B //(C12P 21/02 C12R 1:91)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燐脂質、スフィンゴ脂質、グリセロ脂
    質、それらの一部分解産物、およびそれらの誘導体から
    なる群から選択される少なくとも1種の脂質を含有する
    ことからなる、ヒトおよび動物およびそれらの細胞にお
    いてIFNの産生増強剤として使用するための組成物。
  2. 【請求項2】 前記脂質がケフィアまたはその乾燥物中
    に含有される脂質である、請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 前記脂質がスフィンゴミエリンである、
    請求項2記載の組成物。
  4. 【請求項4】 前記脂質がジアシルグリセロールであ
    る、請求項2記載の組成物。
  5. 【請求項5】 前記脂質がリゾホスファチジルコリン、
    リゾホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリ
    ン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴシン
    またはジアシルグリセロールである、請求項1記載の組
    成物。
JP4130523A 1992-05-22 1992-05-22 Ifn産生を増強しうる脂質を含有する組成物 Pending JPH05320069A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005295994A (ja) * 2004-03-19 2005-10-27 Kao Corp 皮膚保湿用食品
US7648714B2 (en) 2004-08-05 2010-01-19 Kao Corporation Food for skin moisture retention

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JP2005295994A (ja) * 2004-03-19 2005-10-27 Kao Corp 皮膚保湿用食品
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