JPH05288646A - 流体式トルクコンバータの特性シミュレーション方法および装置 - Google Patents

流体式トルクコンバータの特性シミュレーション方法および装置

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JPH05288646A
JPH05288646A JP4116950A JP11695092A JPH05288646A JP H05288646 A JPH05288646 A JP H05288646A JP 4116950 A JP4116950 A JP 4116950A JP 11695092 A JP11695092 A JP 11695092A JP H05288646 A JPH05288646 A JP H05288646A
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fluid torque
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 流体式トルクコンバータの特性シミュレーシ
ョンを高精度に行い、実用的なトルクコンバータの最適
形状の決定が短時間にて行い得るようにする。 【構成】 流体式トルクコンバータの羽根車のブレード
プロフィールから流路角度と流路抵抗とを含む複数のパ
ラメータを求め、該パラメータと角運動量理論に基づく
入出力トルクの関係から流体式トルクコンバータの特性
をシミュレーションする際に、前記流路角度をすべり率
の関数による修正値を用いて修正するものとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の車両の自動
変速機に用いられる流体式トルクコンバータの設計支援
のためのシミュレーション方法および装置に関し、特に
羽根車のブレードプロフィールから求められる各種パラ
メータと角運動量理論に基づく入出力トルクの関係から
流体式トルクコンバータの特性をシミュレーションする
シミュレーション方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車等の車両の自動変速機に用いられ
る流体式トルクコンバータは、車両の燃料経済性、動力
性能に大きな影響を与えるものであり、車両の燃料経済
性、動力性能のより一層の向上のために、車両性能に適
合した流体式トルクコンバータを開発するニーズが高ま
っている。
【0003】この流体式トルクコンバータの設計支援の
ために、コンピュータを用いて流体式トルクコンバータ
のトルク比、容量係数、効率等の特性(性能)をシミュ
レーションすることは従来から行われている。
【0004】従来、この流体式トルクコンバータの特性
をシミュレーションする方法としては、数値流体力学を
用いて三次元的なトルクコンバータ内部の各場所に於け
る流体の速度、圧力を求め、これより流体式トルクコン
バータの各要素に発生するトルクを算出し、これに基づ
いてトルク比、容量係数等の特性をシミュレーションす
る方法や、離散渦法によってステータ翼列の流出角度を
計算し、これと角運動量理論との組み合わせによって特
性をシミュレーションする方法等が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
如きシミュレーション法に於ては、シミュレーションに
よって得られる流体式トルクコンバータの特性が、実機
による実験結果から得られる流体式トルクコンバータの
実際の特性に対してかなり相違し、シミュレーションに
よって得られる流体式トルクコンバータの特性は必ずし
も実際のものの特性とは合致しない。
【0006】このため、流体式トルクコンバータの最適
設計、特にブレードの最適形状を決定するためには、シ
ミュレーションを繰り返し行うなどして試行錯誤を行わ
なければならず、シミュレーションをスーパーコンピュ
ータを用いて行ったとしても時間が掛かるといった問題
がある。
【0007】また流体式トルクコンバータの内部の流体
の流れが閉空間内での循環流であること、特に車両用流
体式トルクコンバータとして一般的なステータ羽根車を
有する三要素一段型の流体式トルクコンバータに於て
は、流路形状、ブレード形状が複雑であることから、上
述の如きシミュレーション法では計算精度に問題があ
り、正確なシミュレーションが行われない。
【0008】本発明は、従来の流体式トルクコンバータ
の特性シミュレーション法に於ける上述の如き問題点に
鑑み、流体式トルクコンバータの特性シミュレーション
を高精度に行い、実用的なトルクコンバータの最適形状
の決定を短時間に行い得るようにする流体式トルクコン
バータの特性シミュレーション方法、およびこの特性シ
ミュレーション方法の実施に使用する特性シミュレーシ
ョン装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の如き目的は、本発
明によれば、流体式トルクコンバータの羽根車のブレー
ドプロフィールから流路角度と流路抵抗とを含む複数の
パラメータを求め、該パラメータと角運動量理論に基づ
く入出力トルクの関係から流体式トルクコンバータの特
性をシミュレーションする流体式トルクコンバータの特
性シミュレーション方法に於て、前記流路角度をすべり
率の関数による修正値を用いて修正することを特徴とす
る流体式トルクコンバータの特性シミュレーション方法
を提供することによって達成される。
【0010】本発明による流体式トルクコンバータの特
性シミュレーション方法は、特に修正対象の流路角度を
ステータに於ける流出角としていることを詳細な特徴と
しているとよい。また、本発明による流体式トルクコン
バータの特性シミュレーション方法に於ては、前記流路
角度を修正する修正値はすべり率を変数とする三次関数
であるとよい。
【0011】上述の如き目的を達成するために、本発明
による流体式トルクコンバータの特性シミュレーション
装置は、流体式トルクコンバータの羽根車のブレードプ
ロフィールのデータを入力するデータ入力部と、前記デ
ータ入力部から羽根車のブレードプロフィールのデータ
を与えられて当該データに基づいて流路角度および流路
抵抗を含む複数のパラメータを演算算出するシミュレー
ション用パラメータ演算部と、流体式トルクコンバータ
のポンプ回転数とタービン回転数との比であるすべり率
の関数として修正値を演算し、前記シミュレーション用
パラメータ演算部にて演算算出された流路角度を前記修
正値に従って修正する流路角度修正部と、前記シミュレ
ーション用パラメータ演算部から各種パラメータを与え
られ、かつ前記流路角度修正部から修正演算後の流路角
度を与えられてこれらと角運動量理論に基づく入出力ト
ルクとの関係から流体式トルクコンバータの特性をシミ
ュレーションするシミュレーション部と、該シミュレー
ション部からシミュレーション結果を与えられて当該シ
ミュレーション結果と目標特性データおよび生産可能性
に関するデータとを比較してブレードプロフィールの適
否判定を行う適否判定部とを有することを特徴としてい
る。
【0012】また本発明による流体式トルクコンバータ
の特性シミュレーション装置に於ては、修正対象の流路
角度はステータに於ける流出角であってよく、更に本発
明による流体式トルクコンバータの特性シミュレーショ
ン装置の前記流路角度修正部は、前記修正値をすべり率
を変数とする三次関数として演算するよう構成されてい
るとよい。
【0013】
【作用】上述の如き構成によれば、ブレードプロフィー
ルから求められた流路角度がすべり率の関数による修正
値を用いて修正され、これによってシミュレーションに
用いられる流路角度がトルクコンバータ内の翼列端に於
ける流体剥離の影響を受けて変動するであろう実際値に
近付くようになり、あるいは実際値に適合するようにな
り、このことによって実機による実験結果から得られる
流体式トルクコンバータの実際の特性に適合した誤差が
少ないシミュレーション結果が得られるようになる。
【0014】
【実施例】本発明による流体式トルクコンバータの特性
シミュレーション方法は、一般的なコンピュータによっ
て実施されるものであり、この特性シミュレーション方
法の実施に使用する特性シミュレーション装置は図1に
示されている。特性シミュレーション装置は、流体式ト
ルクコンバータの羽根車のブレードプロフィールのデー
タを入力するデータ入力部1と、データ入力部1から羽
根車のブレードプロフィールのデータを与えられ、この
データに基づいて流路角度(以下、これを算出流路角度
と称する)および流路抵抗を含む複数のパラメータを演
算算出するシミュレーション用パラメータ演算部3と、
流体式トルクコンバータのポンプ回転数とタービン回転
数との比であるすべり率の関数として修正値を演算し、
この修正値により算出流路角度の修正演算を行う流路角
度修正部5と、シミュレーション用パラメータ演算部3
から各種パラメータを与えられ、また流路角度修正部5
から修正演算後の流路角度を与えられ、これらと角運動
量理論に基づく入出力トルクの関係から流体式トルクコ
ンバータの特性をシミュレーションするシミュレーショ
ン部7と、シミュレーション部7からシミュレーション
結果を与えられ、このシミュレーション結果と目標特性
データおよび生産可能性に関するデータとを比較してブ
レードプロフィールの適否判定を行う適否判定部9とを
含んでいる。
【0015】図2は、本発明による流体式トルクコンバ
ータの特性シミュレーション方法の基本的な実施手順を
示している。このシミュレーション方法の実施に際して
は、先ず流体式トルクコンバータの羽根車、例えばステ
ータのブレードプロフィールのデータを数値化して入
力、あるいはブレードプロフィールのCADデータをデ
ータ入力部1に入力し(ステップ10)、このブレード
プロフィールの入力データから流路角度、例えばステー
タ翼列の出口角度、流路抵抗、その他各種パラメータを
シミュレーション用パラメータ演算部3によって演算に
より算出する(ステップ20)。
【0016】次にすべり率の関数として修正値を演算
し、この修正値により算出流路角度の修正演算を流路角
度修正部5によって行う(ステップ30)。
【0017】次にシミュレーション用パラメータ演算部
3によって算出された各種パラメータ、および流路角度
修正部5によって修正された流路角度と角運動量理論に
基づく入出力トルクの関係から流体式トルクコンバータ
の特性を得るシミュレーションを、シミュレーション部
7により実行する(ステップ40)。
【0018】そしてシミュレーションの完了後、適否判
定部9によってシミュレーション結果と目標特性データ
および生産可能性に関するデータとを比較し、この比較
によりブレードプロフィールの適否判定を行う(ステッ
プ50)。ここでブレードプロフィールが目標特性およ
び生産可能性に関して適合するならば、このブレードプ
ロフィールのデータ出力を行い(ステップ60)、これ
に対してブレードプロフィールが目標特性および生産可
能性に関して不適合であれば、次のシミュレーションの
ために別のブレードプロフィールのデータの入力が行わ
れれば良い。
【0019】次に本発明による流体式トルクコンバータ
の特性シミュレーション方法の具体的手法例について説
明する。
【0020】本発明によるシミュレーション方法は、図
3に示されている如く、入力要素としてのポンプ11
と、出力要素としてのタービン13と、反動要素として
のステータ15とを有する一般的に良く知られている三
要素一段型の流体式トルクコンバータを対象としてい
る。この場合、トルクコンバータ内部を流体が充満状態
にて流れており、この時の流体の流れを代表する一流線
上の状態をもって、所謂平均流線をもって全体の現象を
置き換えるべく、平均流線上に流体が集中して流れてい
るものと仮定する。また、トルクコンバータ内平均流速
の子午面成分C(m/sec)は、平均流線上の何れに
於ても等しいものとする。
【0021】本発明によるシミュレーション方法の特徴
は、トルクコンバータ内翼列端での流体剥離が主たる原
因であると考えられる角運動量理論をベースとするシミ
ュレーションの結果と実験値との相違を修正すべく、ス
テータ翼列出口角にすべり率eを変数とする実験的に求
めたステータ翼列流出角修正値を含めたことにある。
【0022】図3並びに図4に示されている如き三要素
一段型の流体式トルクコンバータに於て、ポンプトルク
をTp、タービントルクをTt、ステータトルクをTs
とすると、 Tp+Ts=Tt …(1) となる。この数式(1)から、タービントルクTtがポ
ンプトルクTpよりも大となり、ポンプ11とタービン
13との間にてトルク増大作用がなされることが解る。
【0023】動力について考えると、トルクコンバータ
レンジに於ては、ステータ15は回転しないので、動力
の発生は零である。従ってポンプ回転角速度をω1 、タ
ービン回転角速度をω2とすると、 ポンプ動力=Tpω1、タービン動力=Ttω2 となる。
【0024】ここで、理想的な効率100%のトルクコ
ンバータと仮定すると、 Tpω1=Ttω2 …(2) となり、また、 Tt/Tp=ω1/ω2 となる。
【0025】ポンプ11とタービン11との間にすべり
がある時には、Tt>Tpとなり、先のようにトルク増
大作用が起こることが解る。
【0026】Tt/Tp=Kはトルク比、Ttω2/T
pω1は効率ηであり、ω1/ω2=eは速度比或はすべ
り率と称される。尚、この明細書に於いては、eはすべ
り率とする。
【0027】流体式トルクコンバータに於ては、実際に
は、流体がポンプ11からタービン13へ、タービン1
3からステータ15へ、更にステータ15からポンプ1
3へと、羽根車から出て次の羽根車に流入する時には、
その入口にて生じる衝突による損失があり、更に流体摩
擦による損失等が必然的に生じる。従って、全損失トル
クをTlossとすると、実際の流体式トルクコンバータの
性能式は下式により示される。 Tpω1−Ttω2=Tloss …(3)
【0028】ここで、発生トルクは、 トルク=(流体が羽根車を流れ出る時に有している角運
動量)−(流体が羽根車に入る時に有している角運動
量)で与えられ、角運動量は下式により示される。 角運動量=(γ/g)Qvr γ/g:流体密度 (kg・s2/m4) Q:流量(m3/sec) v:絶対速度の円周成分 r:回転中心からの半径
【0029】ここで、簡略化のために、図4に示されて
いる如く、r11=r32=r1 、r12=r21=r2 、r22
=r31=r3 と、半径を定義し、また流路断面積S(m
2 )を一定であるとすると、平均流速の子午面成分C
(m/sec)は、平均流線上のどこでも等しいと考え
られ、図4に示されている如き羽根車を想定し、流体が
羽根車に入る時と出る時、その流れの相対流速の方向が
羽根車のなす角と等しいと仮定できるから、トルクに関
する円周成分は、例えば、ポンプ入口に対してはステー
タ出口のジェット流が、タービン入口にはポンプ出口の
ジェット流が、ステータ入口にはタービン出口のジェッ
ト流が作用することになる。このことにより、ポンプト
ルクTp、タービントルクTt、ステータトルクTs
は、各々下式により示される。 Tp=(ポンプ出口でのジェット流)r2 −(ステータ出口からのジェット流)r1 =(γ/g)・Q[(r2ω1−Cα2)r2−(r1ω3−Cα1)r1] …(4) Tt=(タービン出口でのジェット流)r3 −(ポンプ出口からのジェット流)r2 =−(γ/g)・Q[(r3ω2−Cα3)r3−(r2ω1−Cα2)r2] …(5) Ts=(ステータ出口でのジェット流)r1 −(タービン出口からのジェット流)r3 =(γ/g)・Q[(r1ω3−Cα1)r1−(r3ω2−Cα33] …(6)
【0030】r、α(羽根の傾き)は特定のトルクコン
バータではブレードプロフィールより既知の値である。
尚、(3)、(4)、(5)の各式に於て、α(α1
α2,α3)はtanαを略示している。
【0031】ところが、平均流速の子午面成分Cは既知
の値ではなく、流体式トルクコンバータの特性のシミュ
レーションのためには子午面成分Cが必要である。子午
面成分Cを決定するのは(2)式であり、(2)式を解
くためには、損失トルクTlossを知る必要がある。
【0032】トルクコンバータ内部では、羽根車から流
れ出た流体は、滑らかに次の羽根車に流れ込むことは無
く、このため衝突損失が生じる。ポンプ出口−タービン
入口、タービン出口−ステータ入口、ステータ出口−ポ
ンプ入口の各々にて衝突が起こると考え、その各々の衝
突速度を、vp、vt、vsとすれば、衝突損失の原因
となる速度差によるエネルギーEは、 E=(γ/2g)Q・v2 として与えられるから、衝突による損失エネルギーLs
は下式から求められる。 Ls=(γ/2g)Q(vp2+vt2+vs2) =(γ/2g)Q[{(r1ω3 −Cα1)−(r1ω1 −Cα1)}2 +{(r2ω1 −Cα2)−(r2ω2 −Cα2)}2 +{(r3ω2 −Cα3)−(r3ω3 −Cα3)}2] …(7)
【0033】次に、羽根車内を通過する時に相対速度ω
によって生じる摩擦損失について考える。図5に示され
ている如く、流体式トルクコンバータの流路を、ブレー
ド間の空間と考えて曲がり管と仮定してモデル化すれ
ば、曲がり損失水頭hは下式により示される。 h=ζb(v2/2g) =ζ(v2/2g)+λ(lb/d)(v2/2g) …(8) ζ :流れが曲げられることによる損失係数 lb:曲がり流れの中心線に沿う長さ λ :管摩擦係数 ζb:ζ+λ×(lb/d):全損失係数
【0034】(8)式中の全損失係数ζbは、レイノル
ズ数Re、管路半径R、管路構成角θ、円管の直径dに
より表わされるものであり、これは従来に於ても、 ζb=0.00515・β・θ・Re-0.2・(R/d)0.9 β :レイノルズ数と管路直径との関数 で表わされており、本発明に於ては、これを ζb=A・θ・(Re×B)D・(R/d)E …(9) としている。
【0035】尚、式中、B、D、Eは各々実験的に求め
た定数である。
【0036】また、(9)に於けるAは、 A=F+G(R/d)H …(10) とする。
【0037】尚、式中、F、G、Hは、トルクコンバー
タ流路に対し、実験的に求めた定数である。
【0038】先の衝突損失とこの摩擦損失との和が、
(3)式の右辺、Tlossとなり、平均流速の子午面成分
Cについて方程式が立式され、すべり率eを変化させる
ことによって変動する子午面成分Cを算出し、そしてこ
れよりタービントルクTtとポンプトルクTpを逆算
し、トルク比K=Tt/Tp、容量係数τ=Tp/(N
in/1000)2をシミュレーションすることができ
る。但し、Ninはトルクコンバータ入力回転数であ
る。
【0039】次にシミュレーション用のパラメータを導
くことが必要であり、まず翼列出入口角度αについて
は、三次元空間上に展開する3次元座標系の翼列を、二
次元座標系に変換し、二次元座標系に変換された翼列座
標を、最小二乗法により、三次関数y(χ)=aχ3
bχ2+cχ+dを用いて近似計算により求め、局所的
改修の影響を除くことを行う。
【0040】次に摩擦損失に関する流路抵抗は、三次元
空間上に展開する三次元座標系の翼列が構成する流路を
1つずつ曲がり管にモデル化し、各曲がり管に付いてそ
の出入口及び略中央から3点を抽出して仮想曲がり管の
諸元を決定し、これを先の摩擦損失の式(8)に当ては
めることによって求められる。
【0041】次にすべり率eを変数とする実験的に求め
たステータ翼列出口のステータ翼列流出角修正値を求
め、シミュレーションパラメータの一つであるステータ
翼列流出角の修正を行う。
【0042】ここで用いるステータ翼列流出角度修正値
εは下式により求められる。 ε=I・e3 +J・e2 +K・e+L …(11) 但し、I、J、K、Lは各々定数であり、これは実験的
に求められる。
【0043】(11)式から明きらかな如く、ステータ
翼列流出角度修正値εはすべり率eを変数とする三次関
数式によって算出される。
【0044】このステータ翼列流出角度修正値εの算出
定義は、寸法、偏平率、諸元の異なる複数の流体式トル
クコンバータについて、シミュレーションパラメータで
あるステータ翼列流出角度を変化させ、シミュレーショ
ン結果と実験値とが一致するようなステータ翼列流出角
度を求めると云う本発明者による実験的研究により、最
小二乗法三次近似式によってすべり率eを変数とする三
次関数として表現できることを解明したことによるもの
である。
【0045】本発明によるシミュレーション方法に於て
は、シミュレーションパラメータとして実際に使用する
ステータ翼列流出角を、ステータ翼列のブレードプロフ
ィールから算出されるステータ翼列出口角度の算出値θ
csに上述のステータ翼列流出角度修正値εを加算した
ものとする。従ってシミュレーションパラメータとして
実際に使用するステータ翼列流出角θssは、下式によ
り示される。 θss=θcs+ε
【0046】これにより、シミュレーションパラメータ
として実際に使用されるステータ翼列流出角θssは、
流体剥離等による影響を考慮した実際値に適合したもの
になる。尚、上述の如き翼列出口角度の修正は、ステー
タに於いて行われることが最も効果的であるが、この修
正はステータに以外に、ポンプ、タービンについて行わ
れてもよい。
【0047】これにより、流体式トルクコンバータのト
ルク比、容量係数、効率等のコンバータ特性シミュレー
ションが高精度に行われるようになる。
【0048】図6、図7は、各々寸法、偏平率、諸元が
異なり、更には局所的な改修を加えた流体式トルクコン
バータについて、本発明によるシミュレーション方法に
従ってトルク比、容量係数、効率をシミュレーションし
た結果を示している。
【0049】また図8は、翼列出口角度の修正を行わな
い従来法にて流体式トルクコンバータのトルク比、容量
係数、効率をシミュレーションした結果を示している。
【0050】図6〜図8に於て、実線は実験結果を、破
線はシミュレーション結果を各々示しており、Kはトル
ク比を、τは容量係数を、ηは効率を、eはすべり率
(c速度比)各々示しており、従来法による場合は(図
8)、シミュレーション結果と実験結果との間に、本発
明によるシミュレーション方法に従ったシミュレーショ
ンに於ける場合(図6・図7)に比して大きなずれが生
じていることが判る。これの原因は、トルクコンバータ
内部での流体剥離の影響により、各々の翼列流出角がシ
ミュレーションパラメータとして求めた出口角と一致し
ていないからである。
【0051】
【発明の効果】以上の説明から理解される如く、本発明
による流体式トルクコンバータの特性シミュレーション
方法および装置によれば、ブレードプロフィールから求
められたステータ等の流路角度がすべり率の関数、特に
すべり率を変数とする三次元関数による修正値を用いて
修正され、これによりシミュレーションに用いられる流
路角度がトルクコンバータ内翼列端に於ける流体剥離の
影響を受けて変動する実際値に近付くようになり、ある
いは実際値に適合するようになり、このことによって実
機による実験結果から得られる流体式トルクコンバータ
の実際の特性に適合した誤差が少ないシミュレーション
結果が得られるようになる。従って、実用的なトルクコ
ンバータの最適形状の決定がシミュレーションの繰り返
しによる試行錯誤を行うことなく短時間にて行い得るよ
うになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による流体式トルクコンバータの特性シ
ミュレーション装置の一例を示すブロック線図。
【図2】本発明による流体式トルクコンバータの特性シ
ミュレーション方法の基本的な実施手順を示すフローチ
ャート。
【図3】本発明によるシミュレーション方法が適用され
る流体式トルクコンバータの基本的構成を示す概略構成
図。
【図4】本発明によるシミュレーション方法が適用され
る流体式トルクコンバータの流体流路形状を示す説明
図。
【図5】流体式トルクコンバータの流路をブレード間の
空間と考えて曲がり管と仮定してモデル化したことを示
す説明図。
【図6】本発明によるシミュレーション方法に従って流
体式トルクコンバータのトルク比、容量係数、効率をシ
ミュレーションした結果を示すグラフ。
【図7】本発明によるシミュレーション方法に従って流
体式トルクコンバータのトルク比、容量係数、効率をシ
ミュレーションした結果を示すグラフ。
【図8】従来法にて流体式トルクコンバータのトルク
比、容量係数、効率をシミュレーションした結果を示す
グラフ。
【符号の説明】
1 データ入力部 3 シミュレーション用パラメータ演算部 5 流路角度修正部 7 シミュレーション部 9 適否判定部 11 ポンプ 13 タービン 15 ステータ

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 流体式トルクコンバータの羽根車のブレ
    ードプロフィールから流路角度と流路抵抗とを含む複数
    のパラメータを求め、該パラメータと角運動量理論に基
    づく入出力トルクの関係から流体式トルクコンバータの
    特性をシミュレーションする流体式トルクコンバータの
    特性シミュレーション方法に於て、 前記流路角度をすべり率の関数による修正値を用いて修
    正することを特徴とする流体式トルクコンバータの特性
    シミュレーション方法。
  2. 【請求項2】 修正対象の流路角度は、ステータに於け
    る流出角であることを特徴とする請求項1に記載の流体
    式トルクコンバータの特性シミュレーション方法。
  3. 【請求項3】 前記流路角度を修正する修正値は、すべ
    り率を変数とする三次関数であることを特徴とする請求
    項1若しくは2に記載の流体式トルクコンバータの特性
    シミュレーション方法。
  4. 【請求項4】 流体式トルクコンバータの羽根車のブレ
    ードプロフィールのデータを入力するデータ入力部と、
    前記データ入力部から羽根車のブレードプロフィールの
    データを与えられて当該データに基づいて流路角度およ
    び流路抵抗を含む複数のパラメータを演算算出するシミ
    ュレーション用パラメータ演算部と、流体式トルクコン
    バータのポンプ回転数とタービン回転数との比であるす
    べり率の関数として修正値を演算し、前記シミュレーシ
    ョン用パラメータ演算部にて演算算出された流路角度を
    前記修正値に従って修正する流路角度修正部と、前記シ
    ミュレーション用パラメータ演算部から各種パラメータ
    を与えられ、かつ前記流路角度修正部から修正演算後の
    流路角度を与えられてこれらと角運動量理論に基づく入
    出力トルクとの関係から流体式トルクコンバータの特性
    をシミュレーションするシミュレーション部と、該シミ
    ュレーション部からシミュレーション結果を与えられて
    当該シミュレーション結果と目標特性データおよび生産
    可能性に関するデータとを比較してブレードプロフィー
    ルの適否判定を行う適否判定部とを有することを特徴と
    する流体式トルクコンバータの特性シミュレーション装
    置。
  5. 【請求項5】 修正対象の流路角度は、ステータに於け
    る流出角であることを特徴とする請求項4に記載の流体
    式トルクコンバータの特性シミュレーション装置。
  6. 【請求項6】 前記流路角度修正部は、すべり率を変数
    とする三次関数として前記修正値を演算するよう構成さ
    れていることを特徴とする請求項5若しくは6に記載の
    流体式トルクコンバータの特性シミュレーション装置。
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