JPH05178114A - 差動調整式前後輪駆動力配分制御装置 - Google Patents

差動調整式前後輪駆動力配分制御装置

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Publication number
JPH05178114A
JPH05178114A JP34584091A JP34584091A JPH05178114A JP H05178114 A JPH05178114 A JP H05178114A JP 34584091 A JP34584091 A JP 34584091A JP 34584091 A JP34584091 A JP 34584091A JP H05178114 A JPH05178114 A JP H05178114A
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JP
Japan
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wheel
clutch
torque
pressure
differential
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Pending
Application number
JP34584091A
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English (en)
Inventor
Kaoru Sawase
薫 澤瀬
Yoshihito Ito
善仁 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Motors Corp
Original Assignee
Mitsubishi Motors Corp
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Publication date
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  • Arrangement And Driving Of Transmission Devices (AREA)
  • Arrangement And Mounting Of Devices That Control Transmission Of Motive Force (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、前輪側と後輪側との間の差動状態
を調整することで前後輪への駆動力配分を制御する差動
調整式前後輪駆動力配分制御装置に関し、適切に前後輪
の駆動力配分を制御できるようにすることを目的とす
る。 【構成】 前輪側と後輪側との間の差動状態を調整する
ことで前後輪への駆動力配分を制御する差動調整式前後
輪トルク配分制御装置において、各車輪の回転速度を検
出する車輪速検出手段40〜46と、車体速度を検出又
は算出する車体速検出手段216と、上記の車輪速検出
手段40〜46からの車輪速情報と車体速検出手段21
6からの車体速情報とに基づいて上記の各車輪がスリッ
プ状態であると上記車輪速値と上記車体速値との差に応
じて差動制限量を制御する制御手段254とを設けるよ
うに構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、前輪側と後輪側との間
の差動状態を調整することで前輪及び後輪への駆動力配
分を制御する差動調整式前後輪駆動力配分制御装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】前輪側への伝達駆動力と、後輪側への伝
達駆動力との比を運転状態に応じて制御するように構成
した自動車の動力伝達装置が種々知られている。例え
ば、4輪スリップ時の制御として、車体に働く前後加速
度に単純に1次比例するように、前後輪の駆動力配分を
制御する手段が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、極低μ路や
砂地,深雪路等の走行抵抗の大きい路面を走行すると、
前後加速度があまり発生しないので、上述のように前後
加速度に応じて前後輪の駆動力配分を制御しようとして
も、適切な制御を行えない場合がある。本発明は、上述
の課題に鑑み創案されたもので、適切に前後輪の駆動力
配分を制御できるようにした、差動調整式前後輪駆動力
配分制御装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】このため、本発明の差動
調整式前後輪駆動力配分制御装置は、前輪側と後輪側と
の間の差動状態を調整することで前輪及び後輪への駆動
力配分を制御する差動調整式前後輪トルク配分制御装置
において、各車輪の回転速度を検出する車輪速検出手段
と、車体速度を検出又は算出する車体速検出手段と、上
記の車輪速検出手段からの車輪速情報と車体速検出手段
からの車体速情報とに基づいて上記の各車輪がスリップ
状態であるときに上記車輪速値と上記車体速値との差に
応じて差動制限量を制御する制御手段とが設けられてい
ることを特徴としている。
【0005】上記の車輪速値と車体速値との差を求める
ための車輪速値を、上記車輪速検出手段で検出された車
輪速のうち2番目に小さい値、又は、上記車輪速検出手
段で検出された車輪速のうち最も小さい値を除いた3つ
の車輪速の平均値とすることが望ましい。
【0006】
【作用】上述の本発明の本発明の差動調整式前後輪駆動
力配分制御装置では、スリップ判断手段により車輪速検
出手段からの車輪速情報と車体速検出手段からの車体速
情報とに基づいて各車輪がスリップ状態であるかどうか
が判断される。そして、各車輪がスリップ状態であるこ
とが判断されると、制御手段が、車輪速(例えば車輪速
検出手段で検出された車輪速のうち2番目に小さい値
と、又は、上記車輪速のうち最も小さい値を除いた3つ
の車輪速の平均値)と上記車体速値との差に応じて、差
動制限量を制御する。
【0007】これにより、前輪側と後輪側との間の差動
状態が調整されて、前輪及び後輪への駆動力配分が制御
される。
【0008】
【実施例】以下、図面により、本発明の一実施例として
の差動調整式前後輪駆動力配分制御装置について説明す
ると、図1はその要部の構成を示すブロック図、図2は
その駆動トルク伝達系の全体構成図、図3はその駆動ト
ルク伝達系の要部を示す断面図、図4はその前後輪トル
ク配分機構の要部断面図、図5はその油圧供給系の模式
的回路図、図6はその油圧供給系の要部回路図、図7は
その油圧設定用デューティの特性を示す図、図8はその
操舵角データ検出手段の詳細を示すブロック図、図9は
その車体速検出手段のの詳細を示すブロック図、図10
はその理想回転数差設定用マップを示す図、図11はそ
の回転差ゲイン設定マップを示す図、図12はその理想
回転数差を説明するための車輪状態を模式的に示す平面
図、図13はその差動対応クラッチトルク設定用マップ
を示す図、図14はその前後加速度対応クラッチトルク
設定手段を示すブロック図、図15はその前後加速度対
応クラッチトルク設定用マップ、図16はそのエンジン
トルクマップの例を示す図、図17はそのトランスミッ
ショントルク比マップの例を示す図、図18はそのエン
ジントルク比例クラッチトルク設定手段の変形例を示す
ブロックず、図19はそのセンタディファレンシャル入
力トルク設定マップ、図20はその保護制御用クラッチ
トルクの特性図、図21その第1の予圧学習を説明する
ための図、図22はその第2の予圧学習にかかる圧力特
性を示す図、図23はその第3の予圧学習を説明するた
めの図、図24はそのトルク配分状態表示手段を示す
図、図25はそのトルク配分状態推定手段によるトルク
配分を説明するための特性図、図26はその装置を含ん
だ車両全体の制御の流れを示すフローチャート、図27
はその前後輪トルク配分制御の流れを示すフローチャー
ト、図28はその差動対応クラッチトルクの設定の流れ
を示すフローチャート、図29はその前後加速度対応ク
ラッチトルクの設定の流れを示すフローチャート、図3
0はそのエンジントルク比例クラッチトルクの設定の流
れを示すフローチャート、図31はその保護制御用クラ
ッチトルクの設定の流れを示すフローチャート、図32
はその第1の予圧学習の流れを示すフローチャート、図
33はその第2の予圧学習の流れを示すフローチャー
ト、第34図はその第3の予圧学習の流れを示すフロー
チャートである。
【0009】まず、図2を参照して、この差動調整式前
後輪駆動力配分制御装置をそなえる車両の駆動系の全体
構成を説明する。図2において、符号2はエンジンであ
って、このエンジン2の出力はトルクコンバータ4及び
自動変速機6を介して出力軸8に伝達される。出力軸8
の出力は、中間ギア10を介して前輪と後輪とのエンジ
ントルク(=駆動トルク又は駆動力)を所要の状態に配
分する作動装置としてのセンタディファレンシャル(以
下、センタデフと略す)12に伝達される。
【0010】このセンタデフ12の出力は、一方におい
て減速歯車機構19,前輪用の差動歯車装置(フロント
デフ)14を介して車軸17L,17Rから左右の前輪
16、18に伝達され、他方においてベベルギヤ機構1
5,プロペラシャフト20及びベベルギヤ機構21,後
輪用の差動歯車装置22を介して車軸25L,25Rか
ら左右の後輪24、26に伝達される。
【0011】センタデフ12は、従来周知のものと同様
にサンギア121、同サンギア121の外方に配置され
たプラネタリギア122と、同プラネタリギア122の
外方に配置されたリングギア123とを備え、プラネタ
リギア122を支持するキャリア125に自動変速機6
の出力軸8の出力が入力され、サンギア121は前輪用
出力軸27および減速歯車機構19を介して前輪用差動
歯車装置14に連動され、リングギア123は後輪用出
力軸29およびベベルギヤ機構15を介してプロペラシ
ャフト20に連動されている。
【0012】また、センタデフ12には、その前輪側出
力部と後輪側出力部との差動を拘束(又は制限)するこ
とにより前輪と後輪とのエンジンの出力トルクの配分を
変更しうる差動制限機構又は差動調整機構としての油圧
多板クラッチ28が付設されている。すなわち、油圧多
板クラッチ28は、サンギヤ121(又はリングギア1
23)とキャリア125との間に介装されており、自身
の油圧室に作用される制御圧力によって摩擦力が変わ
り、サンギヤ121(又はリングギア123)とキャリ
ヤ125との差動を拘束するようになっている。
【0013】なお、この油圧多板クラッチ28は、サン
ギヤ121とリングギヤ123との間に介装してもよ
い。したがって、センタデフ12は、油圧多板クラッチ
28を完全フリーの状態からロックさせた状態まで適宜
制御することにより、前輪側及び後輪側へ伝達されるト
ルクを、前輪:後輪が約32:68程度から前後車輪の
接地荷重に応じた比率(例えば60:40)の間で制御
することができるようになっている。
【0014】完全フリー状態での前輪:後輪の値:約3
2:68は、遊星歯車の前輪側及び後輪側の入力歯車の
歯数比等の設定により規定でき、ここでは、油圧多板ク
ラッチ28の油圧室内の圧力がゼロで完全フリーの状態
のときには約32:68となるように設定されている。
また、この完全フリー状態での比(約32:68)は、
前輪系と後輪系との負荷バランス等によって変化するが
通常はこのような値となる。また、油圧室内の圧力が設
定圧(約9kg/cm2 )とされて油圧多板クラッチ2
8がロック状態にあって、差動制限が実質的にゼロとな
ると、前輪と後輪とのトルク配分は、前後車輪の接地荷
重に応じた比率(例えば60:40)となる。
【0015】また、符号30はステアリングホイール3
2の中立位置からの回転角度、即ちハンドル角(ステア
リングホイール角)θを検出するハンドル角センサ(ス
テアリングホイール角センサ)34a,34bは、それ
ぞれ車体の前部および後部に作用する横方向の加速度G
yf,Gyrを検出する横加速度センサであり、この例で
は、2つの検出データGyf,Gyrを平均して横加速度デ
ータとしているが、車体の重心部付近に横加速度センサ
34を1つだけ設けて、この検出値を横加速度データと
してもよい。
【0016】36は車体に作用する前後方向の加速度G
x を検出する前後加速度センサ、38はエンジン2のス
ロットル開度θtを検出するスロットルポジションセン
サ、39はエンジン2のエンジンキースイッチ、40、
42、46、44はそれぞれ左前輪16、右前輪18、
左後輪24、右後輪26の回転速度を検出する車輪速セ
ンサであり、これらスイッチ及び各センサの出力はコン
トローラ48に入力されている。
【0017】符号50はアンチロックブレーキ装置であ
り、このアンチロックブレーキ装置50はブレーキスイ
ッチ50Aと連動して作動する。つまり、ブレーキペダ
ル51の踏込時にブレーキスイッチ50Aがオンとなる
と、これに連動してアンチロックブレーキの作動信号が
出力されて、アンチロックブレーキ装置50が作動す
る。また、アンチロックブレーキの作動信号が出力され
るときには同時にその状態を示す信号がコントローラ4
8に入力されるように構成されている。また、52はコ
ントローラ48の制御信号に基づき点灯する表示灯であ
る。
【0018】なお、コントローラ48は、図示しないが
後述する制御に必要なCPU、ROM、RAM、インタ
フェイス等を備えている。符号54は油圧源、56は同
油圧源54と油圧多板クラッチ28の油圧室との間に介
装されてコントローラ48からの制御信号により制御さ
れる圧力制御弁系(以下、圧力制御弁と略す)である。
【0019】また、この自動車には自動変速機がそなえ
られており、符合160は自動変速機のシフトレバー1
60Aの選択シフトレンジを検出するシフトレバー位置
センサ(シフトレンジ検出手段)であり、この検出情報
もコントローラ48に送られる。さらに、エンジン回転
数センサ(エンジン回転速度センサ)170で検出され
たエンジン回転数Neやトランスミッション回転数セン
サ(トランスミッション回転速度センサ)180で検出
されたトランスミッション回転数Nt もコントローラ4
8に送られる。なお、油圧多板クラッチ28に関する油
圧系の詳細は後述する。
【0020】また、この例では、トラクションコントロ
ールシステム151もそなえている。つまり、エンジン
2は、アクセルペダル53の踏み込み量に応じて開度が
制御される主スロットル弁152をそなえており、アク
セルペダル53および連結策等とともにアクセルペダル
系エンジン出力調整装置を構成している。そして、アク
セルペダル系エンジン出力調整装置と独立して制御され
るエンジン出力制御手段としての副スロットル弁153
が、エンジン2の吸気通路内において主スロットル弁1
52と直列的に設けられている。この副スロットル弁1
53はモータにより駆動され、このモータは後輪速セン
サ44,46や前輪速センサ40,42やエンジン回転
数センサ170やエンジン負荷センサ172等の検知結
果にもとづき駆動制御される。
【0021】なお、さらにセンサとして、クラッチ28
のピストン141,142に加わる油圧を検出する油圧
センサ304が所定の箇所に設けられている。差動調整
式前後輪トルク配分制御装置の機械部分AMについてさ
らに詳述すると、この部分は、図3,4に示すように、
自動変速機6を通じてエンジンのトルク(駆動力)を入
力される入力部と、センタデフ12と、差動制限機構2
8と、前輪側及び後輪側への出力部とに分けられる。
【0022】入力部は、中間軸10A側と噛合する入力
歯車113と、この入力歯車113がセレーション結合
される入力ケース124とからなり、入力ケース124
は、トランスミッションケース115に固定されるエン
ドカバー115a及びリナーナ115bに、軸受114
a,114bを介して回転自在に装着されている。この
入力ケース124は、前方(第3,4図中の左方向)に
向かって拡径した形状になっており、遊星歯車要素を内
蔵する拡径部とこの拡径部の後方(図4中、右方)に形
成された縮径部とをそなえ、拡径部の前方には開口部が
形成されている。そして、後述する後輪用出力軸29の
後方(第3,4図中の右方向)からこの出力軸29に装
着しうるようになっている。また、開口部の外周には、
複数の溝124dが形成されている。
【0023】センタデフ12は、遊星歯車機構を用いた
遊星歯車式のものであって、サンギヤ121と、このサ
ンギヤ121外方にサンギヤ121を囲むようにして配
置された複数のプラネタリピニオン(プラネタリギヤ)
122と、このプラネタリピニオン122の周りに配設
されたリングギヤ123と、プラネタリピニオン122
を支持するプラネットキャリア125とをそなえてお
り、各ギヤはいずれもすぐ歯ギヤにより構成されてい
る。
【0024】このうち、サンギヤ121は、中空軸部材
27aに一体に設けられており、この中空軸部材27a
及び前輪用出力軸27はいずれも中空軸145とセレー
ション結合しており、この中空軸145を介して、中空
軸部材27aと前輪用出力軸27とが一体に回転しうる
ようになっている。なお、中空軸145には、後述する
ピストン収容部145aが形成されている。
【0025】また、リングギヤ123は、接続部材13
0に固着されており、接続部材130が後輪用出力軸2
9とセレーション結合することにより、後輪用出力部に
連結されている。これにより、リングギヤ123の出力
が、接続部材130,後輪用出力軸29,ベベルギヤ機
構15を介してプロペラシャフト20へ入力されるよう
になっている。
【0026】そして、プラネットキャリア125は、外
周部に入力ケース124の各溝124dに嵌合しうる凸
部125iが形成されており、これらの嵌合により、入
力ケース124と一体回転するように接続されている。
また、サンギヤ121は前輪用出力部に連結され、リン
グギヤ123は後輪用出力部に連結されている。また、
各ピニオンシャフト126を固定するために、ストッパ
134がそなえられている。
【0027】これらのサンギヤ121とリングギヤ12
3との間に介装されるプラネタリピニオン122は、複
数個そなえられるが、これらのプラネタリピニオン12
2はいずれもピニオンシャフト126を介してプラネッ
トキャリア125に装着されている。プラネットキャリ
ア125は、入力ケース124と一体回転するように結
合されるが、鍔状のベースプレート部125aと、これ
よりも後方に形成されたプラネタリピニオン収容部12
5bと、前方に形成された筒状のクラッチディスク支持
部125fとがそなえられている。
【0028】そして、これらの各部材121,122,
123,125は、予めセンタデフユニット12として
単独に組み立てることができ、このようにサブアセンブ
リ化した上で、センタデフユニット12をトランスミッ
ションケース115内に装着できるようになっている。
また、上述の入力ケース124は、ケース115内への
装着後、センタデフユニット12を覆うように装着され
る。
【0029】差動制限機構としての油圧多板クラッチ2
8は、プラネットキャリア125のクラッチディスク支
持部125fに装着された入力側ディスクブレート28
bと、中空軸145を介してサンギヤ121及び前輪用
出力軸27と一体に回転するクラッチケース146に装
着された前輪出力側ディスクブレート28aとが、それ
ぞれ複数交互に並設されている。
【0030】このうち、前輪出力側ディスクブレート2
8aは、第1ピストン141及び第2ピストン142に
よって駆動され、入力側ディスクブレート28bと接合
しうるようになっている。なお、第1ピストン141及
び第2ピストン142は、中空軸145の外周に形成さ
れたピストン収容部145a内にそれぞれ軸方向に移動
できるように納められており、これらの第1及び第2の
ピストン141,142間には、ピストン収容部145
aに固定されて軸方向に移動しない仕切プレート143
が介設されている。
【0031】そして、第1ピストン141とピストン収
容部145aとの間には、第1油室144aが設けら
れ、第2ピストン142と仕切プレート143との間に
は、第2油室144bが設けられており、これらの油室
144a,144b内には、トランスミッションケース
115側に固定された支持部材116内に穿設された油
路117a及び中空軸145内に穿設された油路117
bを通じて、図示しない油圧供給系から適宜油圧を供給
されるようになっている。
【0032】これらの各部材28a,28b,141,
142,143,145,146も、予め油圧多板クラ
ッチユニット28として単独に組み立てることができ、
このようにサブアセンブリ化した上で、油圧多板クラッ
チユニット28にをトランスミッションケース115内
に装着できるようになっている。また、出力部は、前輪
用出力部と後輪用出力部とからなり、前輪用出力部は、
中空軸で形成された前輪用出力軸27と、この前輪用出
力軸27に装着されて前輪用の差動歯車装置(ディファ
レンシャル)14の入力歯車19bに噛合する出力歯車
19aとから構成されており、後輪用出力部は、前輪用
出力軸27内を貫通するように設けられた後輪用出力軸
29と、この後輪用出力軸29の先端部に結合されたベ
ベルギヤ軸15Aと、このベベルギヤ軸15Aに装着さ
れてプロペラシャフト20の先端部のベベルギヤ15b
と噛合するベベルギヤ15aとから構成されている。
【0033】そして、出力歯車19aは軸受114c,
114dを介してトランスミッションケース115側に
支持されており、ベベルギヤ軸15A及びベベルギヤ1
5aは軸受114e,114fを介してトランスファー
ケース115c側に支持されている。また、出力歯車1
9aと入力歯車19bとから減速歯車機構19が構成さ
れ、ベベルギヤ15aとベベルギヤ15bとからベベル
ギヤ機構15が構成されている。
【0034】なお、図3中、101はコンバータハウジ
ング、102はオイルポンプ、103はフロントクラッ
チ、104はキックダウンブレーキ、105はリヤクラ
ッチ、106はローリバースブレーキ、107はプラネ
タリギヤセット、108はトランスファードライブギ
ヤ、109はリヤカバー、112はエンドクラッチであ
る。
【0035】また、図4中、132a,b,cは各シャ
フトを軸方向に支持するプレート、133はサークリッ
プである。一方、油圧多板クラッチ28に関する油圧系
は、図5(模式的な油圧回路図)、図6(要部油圧回路
図)に示すように構成される。即ち、図5に示すよう
に、リザーバ6aは自動変速機6のものを兼用してお
り、同リザーバ6a内のオイルを吸引するポンプ58は
その吐出口からチェック弁60及び圧力制御弁62を介
して油圧多板クラッチ28の油圧室に接続されている。
圧力制御弁62は、油圧多板クラッチ28の油圧室とポ
ンプ58とを連通する第1位置と、ポンプ58と自動変
速機6のリザーバ6aとを連通する第2位置とをとるこ
とができ、この間の位置をコントローラ48により制御
される。
【0036】チェック弁60と圧力制御弁62との間の
通路には設定圧(例えば約9kg/cm2 )で開弁して
オイルを自動変速機6のリザーバへ逃すレデューシング
バルブ165が設けられ、またこの通路にはアキュムレ
ータ66及び圧力スイッチ68が接続されている。圧力
スイッチ68の検出信号はコントローラ48に入力され
ている。なお、ポンプ58を駆動するモータ58aはコ
ントローラ48の制御信号により制御される。
【0037】このうち、圧力制御弁62部分の具体的な
構成は、図6に示すようになっている。この図6におい
て、161は4WDコントロールバルブであって、この
4WDコントロールバルブ161は、スプール弁で、ス
プール本体161a上に設けられた2つの弁体部161
b,161cをそなえている。スプール本体161a
は、その両端部にそれぞれデューティ圧(ソレノイドコ
ントロール圧)Pd及びレデューシング圧Prを受け
て、デューティ圧Pdが下がれば図中左方に進んで開通
状態となり、デューティ圧Pdが上がれば図中右方に進
んで閉鎖状態となる。なお、161dは、スプール本体
161aが上述のように適切に移動できるように、スプ
ール本体161aを適宜の方向に付勢するスプリングで
ある。
【0038】162はデューティソレノイドバルブ(デ
ューティバルブ)であり、このデューティバルブ162
は、ソレノイド162aと、このソレノイド162aと
リターンスプリング162cにより駆動される弁体16
2bとをそなえ、弁体162bは、ソレノイド162a
の作動時に後退して油路169fを開放し、ソレノイド
162aの非作動時にはリターンスプリング162cに
より前進して油路169fを閉鎖するようになってい
る。このレデューティバルブ162は、種々のセンサか
らの情報に基づいて、コントローラ(コンピュータ)4
8によって、電子制御される。
【0039】また、163はオリフィス、164はオイ
ルフィルタ、165はレデューシングバルブであり、オ
リフィス163はレデューシングバルブ165と4WD
コントロールバルブ161との間に、オイルフィルタ1
64はレデューシングバルブ165へ流入する油路16
9bにそれぞれ設けられている。レデューシングバルブ
165は、弁体165aがリターンスプリング165b
によって所定圧で付勢されていて、この付勢力によっ
て、弁体165aが、油圧が設定圧以下になれば油圧を
供給され、油圧が設定圧以上になれば油圧を排出するよ
うに、自動的に移動するようになっている。
【0040】したがって、例えばソレノイド162aが
作動してデューティバルブ162が開放すると、4WD
コントロールバルブ161の左端側の油圧(デューティ
圧)Pdが低下して、リターンスプリング161dによ
り弁体部161b,161cが左方に移動することで、
油路169cと161gとの間が開通し、ライン圧P 1
が作動油圧(4WDクラッチ圧)P4 として油圧多板ク
ラッチ28の各油室144a,144bに供給されるよ
うになって、油圧多板クラッチ28が接続されるように
構成されている。
【0041】また、ソレノイド162aが作動しないで
デューティバルブ162が閉鎖していると、4WDコン
トロールバルブ161の左端側の油圧(デューティ圧)
Pdが上昇して、弁体部161b,161cが右方(図
6中に示す位置まで)に移動して、油路169cと16
9gとが断絶されるとともに4WDクラッチ圧P4 が放
出されるようになって、油圧多板クラッチ28が離隔す
るように構成されている。
【0042】このようなデューティバルブ162の制御
指標であるデューティ(Duty)と4WDクラッチ圧
4 (=制御油圧P)との関係は、例えば図7に示すよ
うになり、図示するように、デューティが低いと4WD
クラッチ圧P4 が低くなり、デューティが高くなるほど
4WDクラッチ圧P4 が高くなっている。なお、この逆
の設定、つまり、特性が右下がりの直線になって、デュ
ーティが低いと4WDクラッチ圧P4 が高くなり、デュ
ーティが高くなるほど4WDクラッチ圧P4 が低くなる
構成も考えられる。
【0043】次に、油圧多板クラッチ28によりセンタ
デフ12の差動を拘束する制御(以下、駆動力配分制御
又はセンタデフ制御と称する。)にかかるコントローラ
の構成要素を、図1のブロック図を参照して説明する。
この制御では、各センサ(車輪速センサ40,42,4
4,46,操舵角センサ30a,30b,30c,横加
速度センサ34,前後加速度センサ36,スロットルポ
ジションセンサ38,エンジン回転数センサ170,ト
ランスミッション回転数センサ180,シフトポジショ
ンセンサ160等)からの検出情報に基づいて、油圧多
板クラッチ28のクラッチトルクを設定し、目標のクラ
ッチトルクを得られるように油圧多板クラッチ28の差
動油圧を制御するようになっている。
【0044】なお、データのうちABS情報,車輪速,
舵角,変速段,ABSのコントロールユニットとエンジ
ンの制御ユニットとの総合通信(SCI通信:SCI=S
erial Communication Interface )等のデータは、デジ
タル入力され、前後加速度,横加速度, アクセル開度,
多板クラッチへの油圧制御,4WDコントロールユニッ
ト制御,後輪用の差動歯車装置(リヤデフ)22の電磁
クラッチへの電流等に関してはアナログ入力される。
【0045】また、油圧多板クラッチ28のクラッチト
ルクの設定は、前輪と後輪との差動状態(回転速度差
であって回転数差とも表現する)に着目して理想の差動
状態となるように制御を行なうための差動対応クラッチ
トルクTv と、車両にはたらく前後加速度に対応して
制御を行なうための前後加速度対応クラッチトルクTb
と、急発進時などに前後輪直結四輪駆動状態として大
きな路面伝達トルクを得られるようにエンジントルクに
比例して設定されるエンジントルク比例クラッチトルク
Ta と、湿式多板クラッチのクラッチ部分を保護する
ための保護制御用クラッチトルクTpcとの中から1つが
選択されるようになっており、これらの各クラッチトル
クTv ,Tb,Ta ,Tpcの設定部について順に説明す
る。
【0046】差動対応クラッチトルクTv は、旋回時に
運転者の意志に沿うように車両を挙動させるようにする
クラッチトルクであり、車体の姿勢制御を行なうには後
輪を駆動ベースとして後輪からスリップするように設定
するのが効果的であるため、差動対応クラッチトルクT
v は、このような状態を実現するように設定されるよう
になっている。
【0047】このため、差動対応クラッチトルクTv の
設定にかかる部分(前後輪回転速度差比例算出手段20
1)は、図1に示すように、前後輪実回転速度差検出部
200と、前後輪理想回転速度差設定部210と、前後
輪実回転速度差ΔVcdと前後輪理想回転速度差ΔVhc
とからクラッチトルクTv ′を設定する差動対応クラッ
チトルク設定部220と、このクラッチトルクTv ′を
横加速度補正する補正部246とから構成されている。
【0048】前後輪実回転速度差検出部200は、フィ
ルタ202a〜202dと、前輪車輪回転速度データ算
出部204aと、後輪車輪回転速度データ算出部204
bと、前後輪実回転速度差算出部206とをそなえて構
成されている。フィルタ202a〜202dは、それぞ
れ車輪速センサ40,42,44,46により検出され
た左前輪16,右前輪18,左後輪26,右後輪28の
回転速度データ信号FL,FR,RL,RRの中から、
外乱等により発生するデータの微振動成分を取り除くた
めのものである。
【0049】また、前輪車輪回転速度データ算出部20
4aでは、前輪の回転速度データ信号FL,FRから求
まる前輪の各車輪速を平均化して前輪回転速度Vfを得
て、後輪車輪回転速度データ算出部204bでは、後輪
の回転速度データ信号RL,RRから求まる後輪の各車
輪速を平均化することで後輪回転速度Vrを得るように
なっている。
【0050】さらに、前後輪実回転速度差算出部206
では、後輪回転速度Vrから前輪回転速度Vfを減じる
ことで前後輪の実回転速度差[前後輪の回転速度差(前
後回転差であってこの回転差はセンタデフにおける回転
差でもある)]ΔVcdを算出する。前後輪理想回転速度
差設定部210は、操舵角データ検出手段としての運転
者要求操舵角演算部(擬似操舵角演算部)212と、車
体速データ検出手段としての運転者要求車体速演算部
(推定車体速演算部又は擬似車体速演算部)216と、
理想作動状態設定部としての理想回転速度差設定部21
8とをそなえて構成されている。
【0051】運転者要求操舵角データ設定手段としての
運転者要求操舵角演算部212は、図8に示すように、
ステアリングハンドルに設置された操舵角センサ30
(第1操舵角センサ30a,第2操舵角センサ30b,
ニュートラル位置センサ30c)からの検出データ
θ1 ,θ2 ,θn に基づいてセンサ対応操舵角δh [=
f(θ1 ,θ2 ,θn )]の値を算出するセンサ対応操
舵角データ設定部212aと、横加速度センサ34a,
34bで検出されたデータGyf,Gyrを平均して横加速
度データGy を算出する横加速度データ算出部212b
と、センサ対応操舵角δh の方向と横加速度データGy
の方向とを比較する比較部212cと、比較部212c
での比較結果に応じて運転者要求操舵角δref を設定す
る運転者要求操舵角設定部(操舵角データ設定部)21
2dとをそなえて構成されている。
【0052】なお、センサ対応操舵角δh を求める関数
δh =f(θ1 ,θ2 ,θn )は、ハンドル角センサの
仕様に応じたものとなる。また、センサ対応操舵角δh
及び横加速度データGy は、いずれも例えば右旋回方向
を正としている。これらのセンサ対応操舵角δh 及び横
加速度データGy の方向を比較するために、検出データ
xに対して、次のように方向に関する関数SIG(x)
を設定する。 x>0の時には、SIG(x)=1 x=0の時には、SIG(x)=0 x<0の時には、SIG(x)=−1 そこで、比較部212cでは、センサ対応操舵角δh の
方向と横加速度データGy の方向との比較を、SIG
(δh )とSIG(Gy )とを比較することにより行な
っている。
【0053】そして、運転者要求操舵角設定部212d
では、センサ対応操舵角δh の方向SIG(δh )と横
加速度データGy の方向SIG(Gy )とが等しい場合
には、センサ対応操舵角δh を運転者要求操舵角(操舵
角データ)δref に設定し、センサ対応操舵角δh の方
向SIG(δh )と横加速度データGy の方向SIG
(Gy )とが等しくない場合には、0を運転者要求操舵
角δref に設定する。
【0054】センサ対応操舵角δh の方向SIG(δh
)と横加速度データGy の方向SIG(Gy )とが等
しくない場合に運転者要求操舵角δref として0を設定
するのは、例えばドライバがカウンタステア等のハンド
ル操作を行なうときには、ハンドルの操舵位置と実際の
車両の操舵角(旋回状態)とが異なるようになる場合が
あり、このような時に、ハンドルの操舵位置から車両の
操舵角を設定すると適切な制御を行ないにくい。
【0055】そこで、このような不具合を排除するため
に、センサ対応操舵角δh の方向SIG(δh )と横加
速度データGy の方向SIG(Gy )とが等しくない場
合には、運転者要求操舵角を0に設定しているのであ
る。推定車体速演算部216は、図9に示すように、車
輪速センサ40,42,44,46により検出された左
前輪16,右前輪18,左後輪26,右後輪28の回転
速度データ信号FL,FR,RL,RRのうち下から
(小さい方から)2番目の大きさの車輪速データを選択
する車輪速選択部216aと、この選択した車輪速デー
タ等から推定車体速を設定する推定車体速算出部216
cとからなっている。
【0056】特に、推定車体速算出部216cでは、車
輪速選択部216aで選択した車輪速データをフィルタ
216bにかけて雑音成分を除去して得られる車輪速デ
ータSVWと、前後加速度センサ36で検出された前後
加速度をフィルタ216dにかけて雑音成分を除去して
得られる前後加速度データGx とに基づいて、ある時点
の両データSVW, Gx から、その後の車速を推定する
ようになっている。つまり、ある時点の車輪速データS
VWをV2 ,前後加速度データGx をa(算出する1時
点の加速度データ)とすると、この時点よりも時間tだ
け後の理論上の車体速Vref は、 Vref =V2 +at で算定でき、時事変化する前後加速度データGx を採用
して、この時点よりも時間tだけ後の理論上の車体速V
ref は、 Vref =V2 +∫Gx dt で算定できる。
【0057】なお、車輪速データSVWとして回転速度
データ信号FL,FR,RL,RRのうち下から2番目
の大きさの車輪速データを採用するのは、各車輪は通常
いずれも過回転側にスリップしている場合が多く本来な
ら最も低速回転の車輪速を採用するのが望ましいが、デ
ータの信頼性を考慮して下から2番目の車輪速を採用し
ているのである。
【0058】そして、理想回転速度差設定部218で
は、運転者要求操舵角演算部212で算出された運転者
要求操舵角δref と、推定車体速演算部216で算出さ
れた推定車体速Vref とから、図10に示すようなマッ
プに対応して、理想回転速度差ΔVhcを設定する。つま
り、車速に関しては、低車速時には、旋回時の前後輪の
軌道半径の差(所謂内輪差)の影響が大きく、後輪の回
転速度Vrは前輪の回転速度Vfよりも小さいが、高車
速になるにしたがって、後輪の回転速度Vrが前輪の回
転速度Vfに対して大きくなるようにすることで、高速
時には後輪がスリップしやすいようにしている。これに
より、高速時ほど要求される車体の姿勢の応答性を確保
している。また、操舵角に関しては、操舵角が大きいほ
ど前後輪に要求される回転差も大きくなるので、操舵角
データδref の大きさ|δref |が大きいほどΔVhcの
値も大きくなる。
【0059】このような前後輪の軌道半径差による前後
輪の回転速度差ΔVhcについて図12(a),(b)を
参照して説明する。なお、図12(a)では、前輪1つ
と後輪1つとからなる2輪車に模式化した図であり、図
12(b)は図12(a)を更に模式化した図である。
図12(a),(b)に示すように、前輪車輪速をV
f、後輪車輪速をVr、車両の重心部分での車速をV、
前輪の回転半径をRf、後輪の回転半径をRr、車両重
心の回転半径をR、車体スリップ角をβ、ホイールベー
スをl、前輪中心と重心との間の距離をlf 、後輪中心
と重心との間の距離をlr とすると、前後輪の回転速度
差ΔVhcは、以下のようにあらわせる。 ΔVhc=Vr−Vf=〔( Rr−Rf) /R〕・ Vref ・・・(1.1) なお、 Rr= {R2+lr2- 2Rlr ・ cos(π/2- β) }1 / 2 Rf= {R2+lf2- 2Rlf ・ cos(π/2+ β) }1 / 2 β=(1-m/2l ・ lf/lr ・ kr ・ V)/(1+A ・ V2)・lr/l・ δ ただし、mは車重、krはリヤコーナリングパワー、A
はスタビリティファクタである。
【0060】また、前輪車輪速Vf及び後輪車輪速Vr
を理論上のものと考えると、Vf:Vr=Rf:Rr、
Vf:V=Rf:Rとなり、さらに、図12(b)に示
す角度βf,βrには、βf−βr=AV2 の関係があ
り、これらの関係と上記の各式より、ΔVhcをVとδの
関数[ΔVhc=fc(V, δ)〕として定義できる。ただ
し、この場合のVには理論上の値即ち推定車体速Vref
が相当し、δにも、理論上の値即ち運転者要求操舵角δ
ref が相当する。このような関数[ΔVhc=fc ( Vre
f,δref )]をマップ化すると、図10に示すようにな
るのである。
【0061】ところで、舵角については、ハンドル角θ
に基づく実舵角(センサ対応操舵角)δh の他に、旋回
時の横加速度(旋回G)Gy から求める旋回G相当舵角
δyがある。この旋回G相当舵角δy は、次式により算
出できる。 δy =〔( 1+ A・ Vref2)/Vref2〕・ l・ Gy ・・・(1.2) ただし、Aはスタビリティファクタ、Vref は後述する
理論上の車体速(推定車体速)、lはホイールベースで
ある。
【0062】このようにして求まる旋回G相当舵角δy
に対して、上述の実舵角(センサ対応操舵角)δh はよ
り運転者の意志を反映した舵角である。つまり、運転者
が現状よりも大きく曲がりたい場合には、|δh |>|
δy |となり、舵角値|δh|を採用することで舵角値
|δy |を採用するよりも理想回転速度差(スリップ目
標値)の大きさを大きくでき、一方、運転者が現状の曲
がりを押えたい場合には、|δh |<|δy |となり、
舵角値|δh |を採用することで舵角値|δy|を採用
するよりも理想回転速度差(スリップ目標値)の大きさ
を小さくできるのである。
【0063】上述のようにして、前後輪実回転速度差検
出部200で検出された前後輪実回転速度差ΔVcdと、
前後輪理想回転速度差設定部210で設定された前後輪
理想回転速度差ΔVhcとは、減算器222で減算(ΔV
cd−ΔVhc)されて、得られた差ΔVc (=ΔVcd−Δ
Vhc)と、前後輪理想回転速度差ΔVhcとが、差動対応
クラッチトルク設定部220にデータとして入力される
ようになっている。
【0064】差動対応クラッチトルク設定部220は、
前後輪実回転速度差ΔVcdと前後輪理想回転速度差ΔV
hcとの差ΔVc (=ΔVcd−ΔVhc)に対応して、クラ
ッチトルクTv ′を設定するが、前後輪理想回転速度差
ΔVhcの正負によって場合分けして、クラッチトルクT
v ′を設定している。 ( i) ΔVhc≧0のとき、この場合は、前輪よりも後輪
の方の速度を速くしたいのであり、以下の〜のよう
にクラッチトルクTv ′を設定する。
【0065】ΔVcd≧ΔVhcならば、後輪が過回転し
てスリップしているので、後輪寄りに大きく配分された
エンジントルクの一部を前輪側へ移すようにして後輪の
スリップを抑制したい。そこで、クラッチトルクTv ′
が差ΔVc (ΔVcd−ΔVhc)の大きさに比例して高ま
るように、 Tv ′=a×(ΔVcd−ΔVhc)=a×ΔVc ・・・(1.3) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0066】ΔVhc>ΔVcd>0ならば、前輪がスリ
ップしているにもかかわらず実回転速度は前輪よりも後
輪の方が高いので、もしもこの時クラッチトルクTv ′
を高めると前輪側へ配分されるエンジントルクが増加し
て前輪のスリップが促進されてしまうことになる。この
ため、差動制限をフリーにして、前輪側へ配分されるエ
ンジントルクを低減したい。そこで、この場合には、ク
ラッチトルクTv ′を0に設定して、いわゆる不感帯領
域を設定する。
【0067】0≧ΔVcdならば、前輪がスリップして
いるので、前輪側へのエンジントルクの配分を減少させ
て前輪のスリップを低減したい。そこで、クラッチトル
クTv ′がΔVcdの大きさに比例して高まるように、 Tv ′=−a×ΔVcd=−a×(ΔVc +ΔVhc) ・・・(1.4) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0068】このようなTv ′とΔVc との関係をマッ
プ化すると、図13(a)のようになり、このマップに
よって、差ΔVc と前後輪理想回転速度差ΔVh c とか
ら差動対応クラッチトルクTv を求めることができる。
なお、ΔVhc=0の時にはΔVhc>ΔVcd>0の不感帯
領域はなくなる。 ( ii) ΔVhc<0のとき、この場合は、後輪よりも前輪
の方の速度を速くしたいのであり、以下の〜のよう
にクラッチトルクTv ′を設定する。
【0069】ΔVcd≧0ならば、後輪が過回転してス
リップしているので、後輪寄りに大きく配分されたエン
ジントルクの一部を前輪側へ移すようにして後輪のスリ
ップを抑制したい。そこで、クラッチトルクTv ′がΔ
Vcdの大きさに比例して高まるように、 Tv ′= a×ΔVcd= a×( ΔVc +ΔVhc) ・・・(1.5) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0070】0>ΔVcd>ΔVhcならば、後輪がスリ
ップしているにもかかわらず実回転速度は前輪よりも後
輪の方が高いので、もしもこの時クラッチトルクTv ′
を高めると後輪側へ配分されるエンジントルクが増加し
て後輪のスリップが促進されてしまうことになる。この
ため、差動制限をフリーにして、後輪側へ配分されるエ
ンジントルクを低減したい。そこで、この場合には、ク
ラッチトルクTv ′を0に設定して、所謂不感帯領域を
設定する。
【0071】ΔVhc≧ΔVcdならば、前輪がスリップ
しているので、前輪側へのエンジントルクの配分を減少
させて前輪のスリップを低減したい。そこで、クラッチ
トルクTv ′がΔVc (ΔVcd−ΔVhc)の大きさに比
例して高まるように、 Tv ′=−a×(ΔVcd−ΔVhc) =−a×ΔVc ・・・(1.6) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0072】このようなTv ′とΔVc との関係をマッ
プ化すると、図13(b)のようになり、このマップに
よって、差ΔVc と前後輪理想回転速度差ΔVh c とか
ら差動対応クラッチトルクTv を求めることができる。
このようにして、差動対応クラッチトルク設定部220
で、マップ[図13(a),(b)]を参照してΔVc
とΔVhcとから求められた差動対応クラッチトルクTv
′は、横加速度補正されるようになっている。
【0073】補正部246では、差動対応クラッチトル
クTv ′に横Gゲインk1 を乗算することで横加速度補
正を施して、差動対応クラッチトルクTv を得るように
なっているが、この横Gゲインk1 は以下のように設定
される。つまり、横加速度センサ34からの検出データ
Gy が、フィルタ242を通じて外乱等により発生する
データの微振動成分を取り除かれた後、横Gゲイン設定
部244に送られるようになっている。この横Gゲイン
設定部244では、図1の設定部244のブロック内に
示すマップにしたがって横加速度データGy から横Gゲ
インk1 を設定する。
【0074】この横Gゲインk1 は、路面の摩擦係数μ
の状態を制御に反映させようとするもので、横加速度G
y が大きくなるほど路面μが大きいものと判断でき、路
面μが大きいほど、エンジントルクの配分を後輪主体と
して車体の回頭性を優先できるようにしたい。そこで、
路面μの大きさ(したがって、横加速度Gy の大きさ)
が大きくなると、横Gゲインk1 を減少させて、設定ク
ラッチトルクTv を減少させる補正を行なうようになっ
ている。なお、路面μが大きい場合でも、車体の回頭性
を特別優先させないならば、この横Gゲインk1 による
補正を省略することも考えられる。
【0075】車輪スリップ対応クラッチトルクTbは、
上記の車輪スリップ対応クラッチトルク制御において、
低μ路(路面摩擦係数μの低い路)の走行時等により、
4輪全てがスリップして、制御のハンチングが発生する
おそがある際に、車両の強アンダーステア化等ステア特
性の悪化を防止して車両がスムースな旋回動作を行なえ
るようにするためのクラッチトルクであり、車輪のスリ
ップ量Evに対応して制御を行なうようになっている。
【0076】この車輪スリップ対応クラッチトルクTb
の設定は、車輪スリップ対応クラッチトルク設定手段2
54で行なわれ、まず、推定車体速Vrefと車輪速S
VWとから車輪のスリップ量Ev(=SVW−Vre
f)を算出して、このスリップ量Evに基づいてクラッ
チトルクTbを設定するようになっている。このため、
車輪スリップ対応クラッチトルク設定手段254は、図
14に示すように、スリップ量算出部254aと、クラ
ッチトルク設定部254bとが設けられている。
【0077】スリップ量算出部254aでは、推定車体
速演算部216の推定車体速算出部216dで算出され
た推定車体速Vrefと、推定車体速演算部216の車
輪速選択部216aで選択された4輪の車輪速の中から
2番目に小さい車輪速SVWとを入力されて、これらの
差(=SVW−Vref)として車輪のスリップ量Ev
を算出するようになっている。
【0078】即ち、車輪にスリップが生じなければ、推
定車体速Vrefは、本来実際の車体速とほぼ等しいと
される2番目に小さい車輪速SVWと等しくなるが、車
輪にスリップが生じれば、車輪速SVWよりも推定車体
速Vrefの方が小さくなる。そして、この車輪速SV
Wと推定車体速Vrefとの差を車輪のスリップ量Ev
と考えることがてきる。
【0079】クラッチトルク設定部254bでは、図1
5に示すようなマップから、スリップ量Evに基づいて
車輪スリップ対応クラッチトルクTbを設定するように
なっている。つまり、図15のマップに示すように、ス
リップが発生すると、このスリップ量Evの増加に比例
してクラッチトルクTbを増加させスリップ量Evが適
当な大きさになったらクラッチトルクTbは最大値(M
AX)になるように設定されている。
【0080】即ち、スリップが発生したら、早急にクラ
ッチを直結して、路面へ確実に駆動力伝達できるように
したいが、いきなりクラッチを直結すると車体の挙動が
急変して走行中にショックや違和感を生じる可能性があ
り、スリップが発生したかどうかの境界線上の状態では
制御のハンチングを生じるおそれもある。そこで、スリ
ップが発生しても、このスリップ量Evに応じて次第に
クラッチトルクTbを高めて、他の制御から滑らかにこ
の車輪スリップ対応クラッチトルク制御に移行して、ク
ラッチを直結するにあたり、ショックや違和感がなくハ
ンチングを生じにくいようにしているのである。
【0081】なお、図15のマップにおける増加時の傾
き(Tb/Ev)は、車両の特性に応じて適当な大きさ
に決定する。つまり、この図15のマップの傾き(Tb
/Ev)を変えるだけで、異なる車種に適用できる。ま
た、1つの車種でも、この傾き(Tb/Ev)を車速等
の他の要素に応じて変更できるようにする(図15中の
鎖線部参照)ことも考えられる。
【0082】また、4輪スリップが続行しているときに
は、スリップ量Evが小さくてもクラッチが常に直結す
るように、図15中、破線で示すような4輪スリップ時
専用マップを用意して、このマップに基づいて、クラッ
チトルクTbを設定することが考えられる。なお、図示
しないが、このように設定された車輪スリップ対応クラ
ッチトルクTbに、前述の補正部246と同様に、横G
ゲインk1 を掛けることで横加速度補正を施して車輪ス
リップ対応クラッチトルクTbを得るようにしてもよ
い。
【0083】この横Gゲインk1 は前述しており、その
ねらいも前述と同様に路面の摩擦係数μの状態を制御に
反映させようとするものなのでここでは説明を省略す
る。また、ここでは、車輪速データSVWとして2番目
に小さい車輪速を車輪速の代表としているが、これは、
少なくとも2番目に小さい車輪速が車体速Vrefより
も大きければ、車輪がスリップしていると判断でき、こ
のスリップ量も少なくともこの2番目に小さい車輪速S
VWに対応する分だけはあるという考えからこのような
2番目に小さい車輪速を採用しているのである。
【0084】これに対して、この車輪速データSVWと
して回転速度データ信号FL,FR,RL,RRのうち
最も小さい車輪速データを除く3つの車輪速データの平
均値を採用することも考えられる。これは、各車輪のス
リップ状態を判断するには、本来、4輪の車輪速データ
の全てに基づいて行なうのがよいが、データの信頼性を
考慮して小さい車輪速データを除いているのである。
【0085】このようにして設定された車輪スリップ対
応クラッチトルクTbが、最大値選択部280へデータ
出力される。エンジントルク比例クラッチトルクTa
は、停止状態からの急発進時などに伝達トルクが大きく
なることが予想される場合に、後輪の初期スリップを防
ぐことができるように、予め直結4輪駆動状態に設定す
るための設定トルクである。
【0086】そこで、このエンジントルク比例クラッチ
トルクTa を設定する部分(エンジントルク比例クラッ
チトルク設定手段)260は、図1の左下部分に示すよ
うに、ある瞬間のエンジントルクTeを検出するエンジ
ントルク検出部264と、その時のトルコントルク比t
を検出するトルコントルク比検出部266と、その時の
トランスミッションの減速比ρm を検出するトランスミ
ッションの減速比検出部276と、エンジントルクTe
と比例関係に設定されたマップに基づいてエンジントル
クTeからエンジントルク比例トルクTa ′を得るエン
ジントルク比例トルク設定部268と、このエンジント
ルク比例トルクTa ′に上述のトルコントルク比t,ト
ランスミッションの減速比ρm ,終減速ρ1 及び回転差
ゲインk 2 を乗算して、エンジントルク比例クラッチト
ルクTa を得るエンジントルク比例クラッチトルク演算
部270と、設定されたエンジントルク比例クラッチト
ルクTa を低速時(例えばVref <20km/h)のみデ
ータとして出力するスイッチ274aとから構成されて
いる。
【0087】エンジントルク検出部264では、スロッ
トルポジションセンサ38から送られてフィルタ262
aを通じて外乱等により発生するデータの微振動成分を
取り除かれたスロットル開度データθthと、エンジン回
転数センサ170から送られてフィルタ262bを通じ
て外乱等により発生するデータの微振動成分を取り除か
れたエンジン回転数データNeとから、例えば図16に
示すようなエンジントルクマップを通じてその時のエン
ジントルクTeを求めるようになっている。
【0088】トルコントルク比検出部266では、エン
ジン回転数センサ170から送られてフィルタ262b
を通じて外乱成分を取り除かれたエンジン回転数データ
Neと、トランスミッション回転数センサ180から送
られてフィルタ262cを通じて外乱成分を取り除かれ
たトランスミッション回転数データNtとから、例えば
図17に示すようなトランスミッショントルク比マップ
を通じて、その時のトランスミッショントルク比tを求
めるようになっている。
【0089】トランスミッションの減速比検出部276
では、シフトレバー位置センサ160からの選択シフト
段情報から、図1のブロック276内に示すようなシフ
ト段−減速比対応マップを参照してトランスミッション
の減速比ρm を求めるようになっている。エンジントル
ク比例トルク設定部268の設定に用いるマップ(図1
のブロック268内参照)では、エンジントルクTeと
エンジントルク比例トルクTa ′とが、サンギヤ及びリ
ングギヤの各歯数Zs,Zr,前輪分担荷重Wf及び車
重Wa等の既知の定数から決定する比例定数に従う直線
関係となっている。
【0090】エンジントルク比例クラッチトルク演算部
270では、上述のようにして決定したエンジントルク
比例トルクTa ′と、トルコントルク比t,トランスミ
ッションの減速比ρm ,終減速ρ1 及び回転差ゲインk
2 とから演算が行なわれるが、回転差ゲインk2 は回転
差ゲイン設定部275で以下のように設定される。つま
り、回転差ゲインk2 は、タイトコーナブレーキ現象を
回避しようとするもので、理想回転速度差設定部218
で設定された理想回転速度差ΔVhcから図11に示すよ
うなマップに従って決定される。このマップにおける回
転差ゲインk2 は理想回転速度差ΔVhcとの関係は、次
式であらわせる。 K2=0.9 ×( |ΔVhcmax ||ΔVhc|)/|ΔVhcmax |+0.1 ・・・(3.1) ただし、ΔVhcmax=MAX |ΔVhc( δ=MAX) | また、係数0.9 及び定数0.1 は、k2 の下限を0.1 にす
るためである。
【0091】このように、理想回転速度差ΔVhcが大き
くなるのに従って回転差ゲインk2 が直線的に小さくな
り、この回転差ゲインk2 を乗算視て補正することによ
り、旋回時等に理想回転速度差ΔVhcが大きくなった場
合に、急発進性能よりも旋回性能(タイトコーナブレー
キ現象を防止できるような性能)を優先させるように、
エンジントルク比例クラッチトルクTa が小さくされる
のである。
【0092】ところで、上述のエンジントルク比例トル
ク設定部268とエンジントルク比例クラッチトルク演
算部270との部分を、図18に示すように、センタデ
フ入力トルク演算部268と、クラッチトルク演算部2
70と、旋回補正部270aとからなる構成に変更する
ことも考えられる。つまり、センタデフ入力トルク演算
部268では、エンジントルク検出部264から送られ
たエンジントルクTeと、トルコントルク比検出部26
6から送られたトルコントルク比tと、トランスミッシ
ョンの減速比検出部276から送られたトランスミッシ
ョンの減速比ρm とから、次式により、センタデフ入力
トルク(トランスミッション出力トルク)Tdを演算す
る。 Td=t・ρm ・ρ1 ・Te ・・・(3.2) ただし、ρ1 は終減速比である。
【0093】なお、このセンタデフ入力トルクTdとエ
ンジントルクTeとの関係は、各設定シフト毎に比例関
係になり、例えばトルコントルク比tを1.5と設定す
ると、図19に示すようになる。ところが、実際には、
この関係は、トルコントルク比tの大きさによって大き
く変わるので、速度比iからトルコントルク比tを求め
て、これに基づきTaとTeとの関係を求めるようにし
たらよい。
【0094】クラッチトルク演算部270では、前後駆
動配分が静荷重配分と等しくなるクラッチトルクTc を
次式から演算する。 Tc=〔( Zs+Zr)/ Zr ・ Wf/Wa-Zs/Zr 〕・ Ta ・・・(3.3) ただし、Zsはサンギヤの歯数,Zrはリングギヤの歯
数,Wfは前輪分担荷重,Waは車重である。
【0095】そして、旋回補正部270aで、このよう
にして得られたクラッチトルクTcを上述の回転差ゲイ
ンk2 で補正することで、エンジントルク比例クラッチ
トルクTa ′が得られる。なお、センタデフ入力トルク
演算部267とクラッチトルク演算部269とを一体化
して、エンジントルクTeとトルコントルク比tとトラ
ンスミッションの減速比ρm とから、次式により、求め
るようにしてもよい。 Tc=〔( Zs+Zr)/ Zr ・ Wf/Wa-Zs/Zr 〕・ t ・ ρm ・ ρ1 ・ Te ・・・(3.4) さらに、スイッチ274aは、判断手段274からの信
号により、低車速時(この例ではVref <20km/h)
にはONとなって、エンジントルク比例クラッチトルク
Ta をデータとして出力できるようにするが、車速がこ
れ以上大きくなる(Vref ≧20km/h)とOFFとな
って、エンジントルク比例クラッチトルクTa のデータ
として出力を停止する。これは、エンジントルク比例制
御は、ある程度の速度での旋回時にタイトコーナブレー
キング現象を発生させたり、スリップ許容が必要な場面
で他の制御速を排除する場合があり、これらを回避する
のに、低車速時のみにこのエンジントルク比例制御を行
なうという条件を設けているのである。
【0096】つぎに、湿式多板クラッチ28のクラッチ
部分を保護するための保護制御用クラッチトルクTpcの
設定について説明すると、このクラッチトルクTpcの設
定は保護制御部230で行なわれるようになっている。
つまり、湿式多板クラッチ28では、一般に、クラッチ
板間の差回転(=ΔN)が大きくなると、クラッチフェ
イシングの焼き付きや摩耗量増大等の損傷を招く畏れが
あり、当然ながら差回転が大きくこの状態の継続時間が
大きいほど損傷を招き易い。このクラッチ板間のスリッ
プは、一般的な走行条件では全く問題ないレベルだが、
特殊な条件、例えば、砂地走行時や異径タイヤ装着時や
タイヤチェーン装着時などの走行抵抗の極端に大きくな
ると大きく生じやすくなって、このような特殊な条件下
にクラッチ28の負担が過大になりやすい。
【0097】そこで、かかる過酷な使用条件では、これ
を検知してクラッチ28を直結状態として、クラッチス
リップを止める制御(クラッチ保護制御)を行なうよう
にしているのである。なお、本装置では、上述の過酷な
条件下でもクラッチ28が直結しうるように、クラッチ
28の最大トルク容量を設定しているので、クラッチ2
8に最大油圧を加えることで、クラッチ28を直結状態
が実現する。
【0098】また、クラッチ保護制御を終了して他の制
御に移行する際に、クラッチ28の接続状態からフリー
への切り換えを瞬時に行なうと、車両の姿勢が急変する
畏れがある。そこで、これらの現象を回避できるよう
に、保護制御部230による保護制御用クラッチトルク
Tpcの設定を行なう必要がある。この保護制御部230
では、まず、差動制限クラッチ28のΔN比例ゲインか
らクラッチ28の使用面圧および走行条件からΔN発生
状況を推定して、クラッチ28の吸収エネルギqを求
め、この吸収エネルギqをベースにしてクラッチ28の
保護制御を行なうようになっている。
【0099】つまり、吸収エネルギq(ここでは、
2 )が閾値q0 〔例えば0.6(kgfm/c
2 )〕以上になると、クラッチ保護制御(即ち、クラ
ッチ28を直結状態とする制御)を実行するようになっ
ている。なお、クラッチ28の吸収エネルギqは、クラ
ッチ28が連続スリップクラッチのため、クラッチ28
の単位吸収エネルギq′から算出する。
【0100】この単位吸収エネルギq′は、クラッチ2
に加わる面圧(単位面積あたりのクラッチトルク)Pと
差回転速度Vとの積の関数〔つまり、q′=f(P・
V)〕として求めらることができる。したがって、単位
吸収エネルギq′は、クラッチトルクTcとクラッチス
リップ速度Δωc(ΔωcはΔVcdから求められる)と
クラッチの総面積Aとから、次式により、求めることが
できる。 q′=Tc・Δωc/A そして、吸収エネルギq2 は、単位吸収エネルギq′を
次式のように時間積分することで求められる。 q2 =∫q′dt なお、この場合の積分は、所定時間(例えば2秒間)分
だけ行ない、例えば、この算出時刻をt0 (秒単位)と
すると時刻(t0 −2)から時刻t0 までの定積分とす
る。
【0101】実際には、このような計算は制御手段とし
てのマイコン等のコンピュータ内で行われるので、例え
ば、以下のような単位吸収エネルギq′の計算を周期的
に行って、車輪速差ΔVと圧力センサの値(クラッチ2
に加わる面圧の測定値)Pと予圧学習値(詳細は後述す
る)Piとから定期的に単位吸収エネルギq′を求め
る。 q′=C・ΔV・(P−Pi) ここで、例えば制御のサンプリング周期をT秒とする
と、次式のように吸収エネルギqが算出される。 q2 =TΣq′ ただし、Σq′は、所定時間(例えば2秒間)の間にサ
ンプリングしたq′の値の合計である。
【0102】このようにして求めた吸収エネルギq
2 が、閾値q0 以上(q2 ≧q0 )になると保護制御を
開始するが、この時の保護制御用クラッチトルクTpc
は、図20のグラフに示すように設定される。つまり、
制御条件が成立したら、保護制御用クラッチトルクTpc
を、まず最大値(例えば40kgfm)に設定してクラ
ッチ28を直結状態として、これを一定時間(この例で
は1秒間)だけ保持した後、クラッチトルクTpcを一定
の傾きで(一定の割合で)イニシャル圧まで減少するよ
う設定している。
【0103】ただし、この減少時に、実際の車輪速度差
Vcdの目標値(目標車輪速度差)Vhcからの偏差ΔVc
(=Vcd−Vhc)を監視しながら、偏差ΔVcの大きさ
が設定値ΔV0 (例えばΔV0 =1.0)以上ならば、
つまり、|ΔVc|≧ΔV0 ならば、もう1度最大圧を
かけるように設定されている。これは、クラッチトルク
Tpcを減少させていくと、クラッチ28の直結が解除さ
れてクラッチ28にスリップが生じうるようになり、こ
の時、路面やタイヤ等がスリップし易い条件にあれば、
クラッチ28のスリップが大きくなる。これでは、この
後に再びクラッチ保護の必要が生じることがあり、クラ
ッチ保護条件(ここでは、q2 ≧q0 になるという条
件)が成立する前に、再び、クラッチトルクTpcを、最
大値に設定してクラッチ28を直結状態とすることで、
クラッチ制御のハンチングを防止して、クラッチ保護を
確実に行なうとともに、安定したクラッチ制御を行える
ようにしているのである。
【0104】なお、ここでは、クラッチ28のスリップ
が大きくなって、このクラッチスリップに対応した車輪
速度差Vcdが目標車輪速度差Vhcよりも設定値(ΔV0
=1.0)以上大きくなった場合(つまり、|Vc|≧
ΔV0 となった場合)に、再び、クラッチトルクTpcを
最大値に設定してクラッチ28を直結状態とするように
している。
【0105】これは、路面やタイヤ等の走行環境が過酷
でなくなって、車輪速度差Vcdを目標車輪速度差Vhcに
近づけることができれば、目標車輪速度差Vhcに応じた
差動対応クラッチトルクTvによる制御を行なって、本
来の車両の走行性向上のための制御を行うように考慮し
ているためである。したがって、クラッチ28の直結解
除後に速やかに車輪速度差Vcdを目標車輪速度差Vhcへ
近づけることができなければ、再びクラッチ保護の必要
があるとして、クラッチ保護条件(ここでは、q2 ≧q
0 になるという条件)の成立前に、クラッチ28を直結
状態にするのである。
【0106】なお、微小な車輪速度差(一定値)を設定
しておき、クラッチトルクTpcの減少中に、車輪速度差
Vcdがこの設定値よりも大きくなると、再びクラッチ2
8を直結状態にするように構成してもよい。ところで、
上述の吸収エネルギの閾値q0 の設定について考察す
る。この閾値q0 があまり小さいとクラッチ保護の制御
が頻繁に行われてしまい、本来の車両の走行性能を高め
るためのクラッチ制御を行なえない。そこで、本当にク
ラッチ保護が必要なときだけクラッチ保護制御を行なう
ように、閾値q0 をできるだけ大きく設定したい。
【0107】このためには、種々の過酷な走行条件下
(例えば、砂地での発進時,低μ路でのドリフト走行
時,低μ路での全開加速時など)での実験等で、吸収エ
ネルギqとクラッチの耐久性(寿命)との関係を見いだ
してこれに基づいて上述の閾値q 0 を設定することがで
きる。なお、この閾値q0 は、上述の過酷な走行条件の
うちの特に重要な1つだけについて設定することも考え
られる。
【0108】前述の差動対応クラッチトルクTv ,車輪
スリップ対応クラッチトルクTb,エンジントルク比例
クラッチトルクTa ,保護制御用クラッチトルクTpcの
各クラッチトルクは、適当なタイミングで繰り返される
各制御サイクルごとに、それぞれ設定され、このように
設定された各クラッチトルクTv ,Tb,Ta ,Tpc
は、最大値選択部280に送られる。
【0109】この最大値選択部280では、各制御サイ
クルごとに、クラッチトルクTv ,Tb,Ta ,Tpcの
中から最大のもの(このクラッチトルクをTc とする)
を選択する。ただし、スイッチ274aがOFFの場合
には、クラッチトルクTa が送られないので、最大値選
択部280では、送られたクラッチトルクの中から最大
値を選択するようになっている。
【0110】このようにして選択されたクラッチトルク
Tc はトルク−圧力変換部282に送られて、ここで、
設定されたクラッチトルクTc が得られるようなクラッ
チ制御圧力Pc が設定されるようになっている。ここで
は、マップ(図1中のブロック282内参照)によっ
て、クラッチトルクTc からクラッチ制御圧力Pc を得
ているが、一般に、クラッチトルクTc とクラッチ制御
圧力Pc とは比例関係にあるためマップも図示するよう
な線形のものになっている。
【0111】さらに、このように設定されたクラッチ制
御圧力Pc には、予圧付与手段としての加減算器284
において、遠心圧補正と、予圧補正とが施されるように
なっている。つまり、補正すべき遠心圧(遠心補正圧)
をPv 、予圧(即ち、リターンスプリングに釣り合う初
期係合圧)をPi 、補正後のクラッチ圧(制御圧)をP
cdとすると、次式にような演算により補正が行なわれ
る。 Pcd=Pc +Pi −Pv 遠心圧補正について説明すると、遠心補正圧設定部28
6と加減算器284の一部(減算部分)とから遠心油圧
補正部285が構成される。
【0112】この遠心圧補正を行なうのは、以下の理由
による。つまり、油室144a,144b等のピストン
室は回転するので、この内部の作動油は回転に伴う遠心
力を受けてこの遠心力分だけピストン141,142を
駆動する油圧(したがって、クラッチ制御圧)が増加す
る。クラッチ制御圧の制御の精度を確保するには、この
遠心力に応じて生じる油圧(つまり、遠心圧)を減算補
正する必要がある。
【0113】そして、クラッチ制御圧力Pc から、遠心
補正圧設定部286で設定された遠心補正圧Pv を減算
することで遠心圧補正を行なっている。なお、遠心補正
圧設定部286では、図1のブロック286内に示すよ
うなマップによって、前輪車輪回転速度データ算出部2
04aで算出された前輪車速Vfから求める。
【0114】これは、ピストン室は前輪側軸と同期して
回転するので、遠心油圧は、前輪車速Vfに対応して生
じる。また、一般に、遠心力はその回転速度の2乗に比
例する。したがって、遠心補正圧Pv は、前輪車速Vf
の2乗に比例するように設定される。また、予圧補正
は、クラッチ制御圧力Pc に、初期係合圧設定部(予圧
設定部)288で設定された初期係合圧(イニシャル
圧)Pi を予圧として加算する補正である。
【0115】この予圧補正の目的は、クラッチ28の各
クラッチ板間を引きづりトルクの出ない程度のぎりぎり
の接触状態(極めてわずかに接触している状態)に保っ
て、制御応答を高めようとするものである。ところが、
クラッチのクラッチ板間のクリアランスは、部品誤差や
組み立て誤差等によって、製造段階から各製品ごとにば
らつきが生じる上に、同一の製品でも経年変化してい
く。特に、クラッチ板のリターンスプリングは一般に強
いものが設置されているので、各部の誤差や経年変化が
クラッチ板間のクリアランス状態に与える影響が大き
い。
【0116】このため、適当なタイミングでクラッチ板
間のクリアランス状態を検知しながら、常に、クラッチ
板間をぎりぎりの接触状態に保つようにする必要があ
る。そこで、予圧設定部288では、どの程度の予圧が
必要であるかを適当な時間間隔で試行(ここでは、学習
という)して、イニシャル圧Pi を設定するようにして
いる。
【0117】この予圧学習(予圧学習値からイニシャル
圧Pi の設定)は、種々の手法があり、ここでは、3種
類の予圧学習について説明する。まず、第1の予圧学習
の手法を説明すると、予圧学習を行なうには、エンジン
が定常の作動状態(エンジンの油温が所定の高さで安定
した温度状態になったことからわかる)、一定のライン
圧が得られ、さらに、他のクラッチ28に関する制御に
影響を与えないような条件のもとに行なう必要がある。
このため、予圧学習の条件を、例えば以下のように設定
する。 イグニッションキーがオン状態になってから30分以
上経過していること。 シフトセレクタが1(1速),2(2速),D(ドラ
イブ),N(ニュートラル)のうちのいずれかに選択さ
れていること。P(パーキング)及びR(後退)のレン
ジがないのは、この例では、P,Rの時には、1,2,
D,Nの場合とは異なる大きな油圧が出力されてしまう
ためである。 Vref =0km/h( 車体速Vref が0) であること。 Tc ≦1kgfm〔クラッチトルクTc が小さな所定値
( 1kgfm) 以下〕であること。
【0118】上述の各条件が同時に満たされると、次の
ように予圧学習を実行する。まず、図21(a)に示す
ように、多板クラッチ28のリターンスプリングの付勢
圧力よりも大きく且つクラッチ28の設計上の初期係合
圧よりも小さい大きさの圧力[例えばP=0.4kgf/
cm2 ]相当のデューティ(duty)を2秒間与えて、この
後、例えば1.5%/sの増加速度で、例えばP=3.
0kgf/cm2 相当のデューティまで、ゆっくりとスイー
プさせる。
【0119】すると、油圧ピストン141,142に加
わる圧力Pは図21(b)に示すように変化する。つま
り、はじめはクラッチ板が離隔しているので、デューテ
ィが緩やかに上昇すると、これに応じて油圧ピストン2
8が移動していくので、圧力Pも緩やかに上昇していく
が、ある位置まで油圧ピストン141,142が移動す
ると、クラッチ板が接触するようになって、圧力Pには
リターンスプリングの力も加わるようになり、圧力Pが
急増するようになる。さらに、油圧ピストン141,1
42が移動していくと、クラッチ板が強く接触してクラ
ッチが完全結合するようになる。この状態は、圧力Pの
増加が上限になることからわかる。
【0120】ここでは、検出された圧力Pを時間により
2階微分した値(差分)P″と、圧力Pを時間により1
階微分した値(差分)P′とを短い周期で時々算出して
いって、2階微分値P″が最大となったときをクラッチ
板の接触開始時と判断して、この時の圧力Pをイニシャ
ル圧と判断し、また、1階微分値P′が最大となったと
きをクラッチ板の完全係合時と判断している。
【0121】具体的には、学習を開始して圧力Pが上昇
していくときに、2階微分値P″の最大値とこの時の圧
力Pとを記憶する。この2階微分値P″の値は短い制御
周期ごと算出されて適宜更新されていく。そして、1階
微分値P′が0となったら(つまり、クラッチが完全結
合したら)、2階微分値P″の算出を打ち切って、この
時点までの期間内で、2階微分値P″の最大値をとった
時の圧力Pをイニシャル圧Pi として記憶する。
【0122】なお、このような予圧学習の実行中に、上
述の予圧学習の条件〜のいずれかが満たされなくな
ったらば、ただちに、予圧学習を中断して通常モードに
戻る。また、上述の予圧学習は、イグニッションキーが
オンとされて一度行なわれると、次に、一旦、イグニッ
ションキーがオフとされた後にオンとされないかぎり実
行されないようになっている。
【0123】次に、予圧設定部288による、第2の予
圧学習の手法を説明する。この予圧学習も、エンジンが
所定の高さで安定した油温状態になって、一定のライン
圧が得られ、さらに、他のクラッチ28に関する制御に
影響を与えないような条件のもとに行なう必要がある
が、この予圧学習は何回も試行して行ないたいので、前
述の予圧学習の条件をやや緩めて、例えば以下のような
予圧学習条件を設定する。 ′イグニッションキーがオンの状態になってから10
分以上経過していること。 シフトセレクタが1(1速),2(2速),D(ドラ
イブ),N(ニュートラル)のうちのいずれかに選択さ
れていること。 Vref =0km/h(車体速Vref が0)であること。 Tc ≦1kgfm〔クラッチトルクTc が小さな所定値
( 1kgfm) 以下〕であること。 前回の試行から所定時間(例えば5分程度又はこれよ
りも短い適当な時間)経過していること。
【0124】上述の各条件が同時に満たされると、次の
ように予圧学習を実行する。まず、予め設定されている
イニシャル圧Pi(=P1 )相当のデューティ(duty)を
所定時間(例えば2秒間)だけ保持して、その後に所定
時間(例えば1秒間)でP=8.8kgf/cm2 相当のデ
ューティ(ほぼ100%のデューティである)まで、ス
イープさせる。
【0125】これによって、油圧ピストン141,14
2に加わる圧力Pは、図22に曲線L1,L2で示すよ
うに、2種類のパターンの変化をする。つまり、イニシ
ャル圧P1 でクラッチが離れていると、曲線L1で示す
ように、デューティをスイープさせていくとある時点
で、クラッチが接触して引きずりをはじめるので、油圧
ピストン141,142がショックを受け、圧力Pは急
増してオーバシュートした後に振動しながらほぼ100
%のデューティに応じた完全係合圧(定常ピーク圧)に
落ち着く。
【0126】そして、圧力Pがオーバシュートすると、
その後の定常最大圧Pc (既知の値で、ここでは8.8
kgf/cm2 程度)よりも一定以上大きなピーク値(最大
値)Pmax が発生する。一方、イニシャル圧P1 でクラ
ッチが接触して引きずり状態にあると、曲線L2で示す
ようにデューティをスイープさせていくとほぼ直線的に
圧力Pが増加して、ある時点で滑らかに完全係合圧(定
常最大圧)Pc に落ち着く。
【0127】このような特性から、圧力Pのピーク値P
max を記憶しておき、この値Pmaxと定常最大圧Pc と
の差α(=Pmax −Pc )が、所定値α0 よりも大きけ
れば、イニシャル圧P1 ではクラッチが離れていると判
断できる。そこで、開始圧Pを初期の値P1 から適宜増
減させながら、上述のような試行を適当な時間間隔(例
えば5分間隔)で繰り返して、適切なイニシャル圧Pi
を検出し設定することができる。
【0128】つまり、この予圧学習は、上述の条件を満
たすかぎり何度も行なうのが望ましく、ある時点(n回
目の学習段階)で設定されるイニシャル学習値及びイニ
シャル圧Piを一般化して表すと、イニシャル学習値を
PINTG(n)及びイニシャル圧PiをPINT
(n)とおける。したがって、前回のイニシャル学習値
はPINTG(n−1)、イニシャル圧はPINT(n
−1)と表せ、n回目の学習段階では、前回のイニシャ
ル圧はPINT(n−1)により、学習を行なうことに
なる。 そして、所定のデューティスイープによって得
られる差α(=Pmax −Pc )と閾値α0 とを比較し
て、今回のイニシャル学習値PINTG(n)及びイニ
シャル圧PINT(n)を以下のように設定する。 α≧α0 の時、 PINTG(n)=PINTG(n−1)+β PINT(n)=PINTG(n−1)+β =PINTG(n) α<α0 の時、 PINTG(n)=PINTG(n−1)−β PINT(n)=PINTG(n−1) つまり、α≧α0 の時には、イニシャル学習値PINT
G(n)については、前回のイニシャル学習値PINT
G(n−1)にβ(=1bit 分の圧力)だけ加えたもの
に設定し、イニシャル圧PINT(n)としては、前回
のイニシャル学習値PINTG(n−1)にβ(=1bi
t 分の圧力)だけ加えたもの、即ち、今回のイニシャル
学習値PINTG(n)に設定する。
【0129】これは、α≧α0 の時には、オーバシュー
トしたと判断できるので、前回のイニシャル圧PINT
(n−1)では、クラッチ28はぎりぎりの接触状態ま
では近づいていないと判断できる。そこで、今回のイニ
シャル学習値PINTG(n)を前回のイニシャル学習
値PINTG(n−1)にβ(=1bit 分の圧力)だけ
加えたものとし、今回のイニシャル圧PINT(n)を
前回のイニシャル学習値PINTG(n−1)にβ(=
1bit 分の圧力)だけ加えたものとしているのである。
なお、1bit は、ピストンに加わる油圧を検出する油
圧センサ信号の分解能によって制限されるが、例えば、
1bit =0.05kgf/cm2 又は1bit=0.1kgf/c
m2 等の適当な値に設定する。
【0130】一方、α<α0 の時には、イニシャル学習
値PINTG(n)については、前回のイニシャル学習
値PINTG(n−1)にβ(=1bit 分)だけ減じた
ものに設定するが、イニシャル圧PINT(n)として
は、前回のイニシャル学習値PINTG(n−1)に設
定する。これは、α<α0 の時には、オーバシュートし
ていないので、前回のイニシャル圧PINT(n−1)
では、クラッチ28はぎりぎりの接触状態又は過度な接
触状態にあると判断できる。そこで、今回のイニシャル
学習値PINTG(n)を前回のイニシャル学習値PI
NTG(n−1)にβ(=1bit 分)だけ減じたものと
するが、イニシャル圧PINT(n)は、前回のイニシ
ャル学習値PINTG(n−1)のままに設定する。
【0131】こうするのは、α<α0 の結果だけでは、
クラッチ28がぎりぎりの接触状態にあるか過度な接触
状態にあるかが判断できず、チャタリングを招く畏れが
あるため、これを回避すべく、今回の学習結果をすぐに
イニシャル圧Pi に採用せずに、前回の学習値を採用し
ているのである。したがって、過度な接触状態にある
と、少なくとも2サイクル連続してα<α 0 の状態が続
くと考えられ、イニシャル圧Pi は1サイクル分だけ遅
れながらも、減少されて、適切なものに近づいていくこ
とになる。
【0132】なお、このような予圧学習の実行中に、上
述の予圧学習の条件′〜のいずれかが満たされなく
なったらば、ただちに、予圧学習を中断して通常モード
に戻る。また、上述の予圧学習は、上述の予圧学習の条
件′〜が満たされる限りは、続行される。
【0133】次に、予圧設定部288による、第3の予
圧学習の手法を説明する。この予圧学習も、第2の予圧
学習と同様に、以下のような予圧学習条件を同時に満た
したときに、予圧学習を実行するように設定されてい
る。 ′イグニッションキーがオンの状態になってから10
分以上経過していること。 シフトセレクタが1(1速),2(2速),D(ドラ
イブ),N(ニュートラル)のうちのいずれかに選択さ
れていること。 Vref =0km/h(車体速Vref が0)であること。 Tc ≦1kgfm〔クラッチトルクTc が小さな所定値
( 1kgfm) 以下〕であること。 前回の試行から所定時間(例えば5分程度又はこれよ
りも短い適当な時間)経過していること。
【0134】上述の各条件(′〜)が同時に満たさ
れると、次のように予圧学習を実行する。まず、図23
(a)に示すような圧力パターンになるようにデューテ
ィ(duty)を調整する。つまり、はじめにデューティを所
定時間(例えば1秒間)だけ0%に保持してから、デュ
ーティを初期イニシャル圧P1 相当のものにしてこれを
所定時間(例えば2秒間)だけ保持して、その後に所定
時間(例えば1秒間)でP=8.8kgf/cm2 相当のデ
ューティ(ほぼ100%のデューティである)までスイ
ープさせ、P=8.8kgf/cm2 相当のデューティを所
定時間(例えば2秒間)保持する。このパターンをイニ
シャル圧Pi を適宜変えながら連続的に繰り返す。
【0135】これによって、油圧ピストン141,14
2に加わる圧力Pは、第2の予圧学習の場合と同様に、
図23(b),(c)に曲線L1,L2で示すように、
2種類のパターンの変化をする。そして、デューティの
スイープを開始した時点t0 (又は圧力Pが上昇を開始
した時点t1 )から、直線L0で示すような定常最大圧
Pc (又はこれに近い程度の一定圧力値)に達するまで
の間、この直線L0と圧力Pの変化状態を描く曲線L1
又はL2とで囲まれた部分(図中斜線を付す)の面積S
1,S2を比較すると、オーバシュートのある曲線L1
の場合の面積S1の方が、オーバシュートのない曲線L
2の場合の面積S2よりも明らかに大きくなる。
【0136】そこで、この第3の予圧学習でも、第2の
予圧学習と同様に、上述のような試行を適当な時間間隔
(例えば5分間隔)で繰り返して、適切なイニシャル圧
Piを検出し設定することができる。つまり、この予圧
学習は、上述の条件を満たすかぎり何度も行なうようし
て、ある時点(n回目の学習段階)で設定されるイニシ
ャル学習値及びイニシャル圧Piを前述と同様に、イニ
シャル学習値をPINTG(n)及びイニシャル圧Pi
をPINT(n)と一般化して表す。
【0137】したがって、前回のイニシャル学習値はP
INTG(n−1)、イニシャル圧はPINT(n−
1)と表せ、n回目の学習段階では、前回のイニシャル
圧はPINT(n−1)により、学習を行なうことにな
る。そして、所定のデューティスイープによって得られ
る面積Sと閾値S0 とを比較して、今回のイニシャル学
習値PINTG(n)及びイニシャル圧PINT(n)
を以下のように設定する。 S≧S0 の時、 PINTG(n)=PINTG(n−1)+β PINT(n)=PINTG(n−1)+β =PINTG(n) S<S0 の時、 PINTG(n)=PINTG(n−1)−β PINT(n)=PINTG(n−1) つまり、S≧S0 の場合は第2の予圧学習のα≧α0
場合に対応して、S<S0 の場合は第2の予圧学習のα
<α0 の場合に対応する。
【0138】即ち、S≧S0 の時には、オーバシュート
したと判断できるので、前回のイニシャル圧PINT
(n−1)では、クラッチ28はぎりぎりの接触状態ま
では近づいていないと判断できる。そこで、今回のイニ
シャル学習値PINTG(n)を前回のイニシャル学習
値PINTG(n−1)にβ(=1bit 分の圧力)だけ
加えたものとし、今回のイニシャル圧PINT(n)を
前回のイニシャル学習値PINTG(n−1)にβ(=
1bit 分の圧力)だけ加えたものとしているのである。
【0139】一方、S<S0 の時には、オーバシュート
していないので、前回のイニシャル圧PINT(n−
1)では、クラッチ28はぎりぎりの接触状態又は過度
な接触状態にあると判断できる。そこで、今回のイニシ
ャル学習値PINTG(n)を前回のイニシャル学習値
PINTG(n−1)にβ(=1bit 分)だけ加えたも
のとするが、イニシャル圧PINT(n)は、前回のイ
ニシャル学習値PINTG(n−1)のままに設定す
る。このようにする理由も、前述のα<α0 の場合と同
様に、S<S0 の結果だけでは、クラッチ28がぎりぎ
りの接触状態にあるか過度な接触状態にあるかが判断で
きず、チャタリングを招く畏れがあるので、これを回避
すべく、今回の学習結果をすぐにイニシャル圧Pi に採
用せずに、前回の学習値を採用しているのである。
【0140】したがって、過度な接触状態にあると、少
なくとも2サイクル連続してS<S 0 の状態が続くと考
えられ、イニシャル圧Pi は1サイクル分だけ遅れなが
らも、減少されて、適切なものに近づいていくことにな
る。なお、このような予圧学習の実行中に、上述の予圧
学習の条件′〜のいずれかが満たされなくなったら
ば、ただちに、予圧学習を中断して通常モードに戻る。
【0141】また、上述の予圧学習は、上述の予圧学習
の条件′〜が満たされる限りは、続行される。な
お、この第3の予圧学習では、直線L0と曲線L1又は
L2とで囲まれた部分の面積S(S1,S2)に変え
て、イニシャル圧程度の一定圧を示す直線L3と曲線L
1又はL2とで囲まれた部分の面積S′(S1′,S
2′)を参照して判定することも考えられる。
【0142】この場合の面積S′の算出の開始は、デュ
ーティのスイープを開始した時点t 0 (又は圧力Pが上
昇を開始した時点t1 )とし、面積S′の算出の終了
は、直線L0で示すような定常最大圧Pc (又はこれに
近い程度の一定圧力値)に達する時点とする。そして、
判定基準値をS0 ′として、S′≧S0 ′の時にはオー
バシュートがあったと判断でき、S′<S0 ′の時には
オーバシュートがなかったと判断できる。
【0143】上述のようにして、有効油圧であるクラッ
チ制御圧力Pc に、遠心補正圧Pvを減算することで遠
心圧補正を施され、イニシャル圧(予圧)Pi を加算さ
れることで予圧付与補正を施された油室供給レベルの制
御圧力Pcd(=Pc −Pv +Pi )は、ピークホルドフ
ィルタ290に取り込まれるようになっている。このピ
ークホルドフィルタ290は、油圧の急変により制御に
ハンチングが起こらないように、油圧の過度な急変を防
止する一種のリミッタであり、油圧の立上がりに対して
は、ある程度高い限界速度(例えば31.4kg/ cm2
/s)を設定し、油圧の立下下がりに対しては、やや低
い限界速度(例えば15.7kg/ cm2 /s)を設定し
ている。
【0144】そして、油圧変化の速度がこのような限界
を超えるような制御圧力Pcdが送られたら、この限界値
に応じた制御圧に留めるようにする。さらに、フィルタ
290を通過した制御圧力Pcd′は、スイッチ292
a,294aを経て、デューティ設定部295に送られ
る。なお、スイッチ292aは、判断手段292からの
信号によって、ABS制御(アンチロックブレーキ制
御)が行なわれていれば(ON状態ならば)OFFとさ
れ、ABS制御が行なわれていなければONとされる。
つまり、ABS制御が行なわれていないことを条件に、
制御圧力Pcd′の信号が送られるようになっている。こ
れは、ABS制御時にはABSを確実に作用させる必要
があり、この時前後輪のトルク配分状態を制御するの
は、ABS制御に干渉したりして好ましくないためであ
る。
【0145】また、スイッチ294aは、判断手段29
4からの信号によって、デューティソレノイドバルブを
保護するための制御スイッチであり、低速時で且つ設定
されたクラッチトルクTc が小さい場合には、デューテ
ィを0にしてしまおうとするものである。低速条件とし
ては、例えばVref ≦5km/h であること、クラッチト
ルクTc の条件としては、例えばTc ≦1kgfmである
こと、などと規定できる。そして、この2つの条件が揃
ったら、スイッチ294aがOFFにされて、制御圧力
Pcd′の信号は送られないようになっている。
【0146】デューティ設定部295は、圧力フィード
バック補正部296と、圧力−デューティ変換部298
とをそなえている。圧力フィードバック補正部296
は、ピストンに作用している実際の圧力を検出する圧力
センサ304からの検出情報を受けて、制御圧力Pcd′
の信号を補正するものであり、油圧回路の特性を補正す
るためのものである。なお、圧力センサ304から圧力
フィードバック補正部296へ送られる信号は、フィル
タ306で外乱等による雑音成分を除去される。
【0147】圧力−デューティ変換部298は、圧力フ
ィードバック補正部296でフィードバック補正された
制御圧力Pに対応する(Duty)を設定するもので、図1の
クラッチ圧力−デューティ変換部298のブロック内に
示すマップのように、デューティは予圧状態から最大圧
状態まで圧力Pに対して直線的に増加する。このような
対応関係から、制御圧力Pに相当するデューティが設定
される。
【0148】制御実行部として機能する油圧回路300
では、このように設定されたデューティに応じて、デュ
ーティソレノイド302が作動して、センタデフの油圧
多板クラッチ28を制御するようになっている。一方、
このようなセンタデフ制御と並行して、前後輪へのトル
ク配分状態が、運転席のインストルメントパネルのメー
タクラスタ内に表示されるようになっている。
【0149】つまり、図1,24に示すように、メータ
クラスタ内には、前輪(又は後輪)へのトルク配分状態
をグラフィック表示(又はメータ表示)するようなトル
ク配分表示部312が設けられており、トルク推定手段
310により、推定された配分トルクの大きさに応じ
て、トルク配分状態が表示されるようになっている。こ
のように、トルク推定手段310によってトルク配分状
態を推定するのは、トルク配分状態を実測するのが困難
なためである。
【0150】このトルク推定手段310は、多板クラッ
チ28で、前後輪間に回転数差が生じている場合の前輪
出力トルク(又は後輪出力トルク)と、前後輪間に回転
数差が生じていない場合の前輪出力トルク(又は後輪出
力トルク)とを算出する演算手段310aと、これらの
各場合における前輪出力トルク(又は後輪出力トルク)
のうち小さい方の前輪出力トルク(又は後輪出力トル
ク)を選択する選択手段310bとをそなえ、これらの
部分310a,310bは、以下のようにしてトルク配
分状態の推定を行なうようになっている。
【0151】つまり、トルク配分を推定する場合、次の
2つの場合が考えられる。1つはタイヤと路面とはスリ
ップしないで歯車の噛み合いと同様な状態になってい
て、センタデフクラッチが必ず滑るものと仮定する場合
である。他の1つは、実際には、タイヤと路面との間に
は必ずスリップが存在するものなので、センタデフクラ
ッチが滑らない場合があるとする場合である。
【0152】そこで、これらの各場合におけるトルク配
分と、その状態がいつ切り換わるかについて考える。ま
ず、前提条件として、この4輪駆動システムのように差
動制限を行なわない場合には、後輪主体(前輪と後輪の
トルク比が例えば32:68)に設定され、さらに、差
動制限クラッチ28は必ず後輪側から前輪側へとトルク
伝達するものとして、簡易化のために、以下のように設
定する。 ρf/rf<ρr・ρt/rr ・・・(5.1) ただし、ρf:フロントデフ比 ρr:リヤデフ比 ρt:トランスファー比 rf:前輪タイヤ半径 rr:後輪タイヤ半径 すると、クラッチが滑らない場合は、直結4輪駆動の配
分となるので、前輪トルクTfと後輪トルクTrは、以
下のようになる。 Tf = Wf/Wa ・ {Tm+kWr ・ rf/ ρ・(rfρr ρt/rrρt-1)} ・・・(5.2) Tr = Wr/Wa ・ {Tm-kWf ・ rr/ ρ・(rfρr ρt/rrρt-1)} ・・・(5.3) ただし、Wf:前輪分担加重 Wr:後輪分担加重 Wa:車重(=Wf+Wr) Tm:ミッション出力トルク(=センタデフ入力トル
ク) k:スリップ比係数 ρ:終減速比[=( ρf+ρr ・ ρt)/2] また、クラッチが滑る場合は、前輪トルクTf′と後輪
トルクTr′は、以下のようになる。 Tf′=( Tm−Tc)・a/(a+ b) +Tc ・・・(5.4) Tr′=( Tm−Tc)・b/(a+ b) ・・・(5.5) ただし、Tc:クラッチ伝達トルク容量 a:サンギヤ歯数 b:リングギヤ歯数 そして、上述のようなクラッチが滑る場合は、荷重配分
やデフ比差等によって生じる前後トルク差をクラッチが
許容しているということである。今、クラッチは、トル
クを後輪側から前輪側へ伝達する場合を考えているの
で、前輪トルクTf,Tf′に関しては、Tf,Tf′
のうち小さい方の値を前輪トルク値と考えることができ
る。
【0153】即ち、Tf<Tf′ならば、クラッチはロ
ック状態で、前輪トルク配分比mは、 m=Tf/(Tf+Tr) ・・・(5.6) Tf>Tf′ならば、クラッチはスリップ状態で、前輪
トルク配分比mは、 m=Tf′/(Tf′+Tr′) ・・・(5.7) と推定できる。
【0154】なお、図25は、センタデフ入力トルクT
mに対する前輪トルク配分比mを示しており、入力トル
ク対応前輪トルク配分比の特性は、クラッチがロック状
態の場合には直結と付した直線状になり、クラッチがフ
リー状態の場合には制御圧Pの大きさに応じて曲線状に
なる。なお、図中では、圧力Pが2kgf/cm2 の場合
(P=2)と8kgf/cm2 の場合(P=8)とを示して
いる。
【0155】そして、特性グラフでは、直結と付した直
線及びある制御圧Pの場合の曲線のうちmの小さい方の
特性線を採用する。例えば、Pが2kgf/cm2 の場合に
は、トルクTeがTe1 よりも小さい領域では、直結と
付した直線の方がP=2の曲線よりも下方にあるので、
この直線に従った前輪トルク配分比mとなる。また、ト
ルクTeがTe1 よりも大きい領域では、P=2の曲線
の方が直結よりも下方にあるので、P=2の曲線に従っ
た前輪トルク配分比mとなる。
【0156】一方、Pが8kgf/cm2 の場合には、この
グラフに示されている領域では、常に直結の直線の方が
下方にあるので、直結と付した直線に従った前輪トルク
配分比mとなる。このようにして、前輪トルク配分比m
が設定されたら、この設定値に対応した信号がトルク配
分表示部312に送られて、トルク配分表示部312で
は、前輪へのトルク配分状態が表示されるようになって
いる。この例では、前輪へのトルク配分は32%〜50
%程度であるから、トルク配分表示部312にはこれに
対応した目盛を付して、対応する目盛まで、ランプを点
灯させたり、指針を動かしたりすることで、判り易く表
示する。
【0157】なお、このトルク配分状態の表示は、後輪
へのトルク配分状態であってもよく、或いは、前後輪へ
の配分状態をグラフ等でアナログ的に表示してもよい。
この差動調整式前後輪駆動力配分制御装置は、上述のよ
うに構成されているので、以下のようにして、差動調整
が行なわれる。まず、駆動系の全体の動作の流れは、図
26に示すように、まず、各制御要素をイニシャルセッ
トして(ステップa1)、各種センサからの情報を入力
して(ステップa2)、舵角中立位置の学習(ステップ
a3)、及びクラッチの予圧学習(ステップa4)を行
ない、続いて、設定されたデューティに応じてクラッチ
28を制御しながら前後輪駆動力配分制御を行ない(ス
テップa5)、さらに、リヤデフの制御を行なう(ステ
ップa6)。
【0158】そして、ステップa7〜a11で、スリッ
プ制御,トレース制御,トルク選択,リタード制御演
算,SCI(Serias Communication Interface)通信制
御といったエンジン出力制御(トラクション制御)を行
なって、トルク配分表示ランプを点灯して(ステップa
12)、ステップa13で故障診断(フェイル・ダイア
グ)を行なう。ステップa14で、所定時間(15mse
c )経過したかどうかを判断して、所定時間(15mse
c )経過したら、ウォッチドッグによる暴走チェックを
行なって(ステップa15)、上述のステップa2へ戻
って、ステップa2〜a13の一連の制御を繰り返す。
【0159】つまり、上述の前後輪駆動力配分制御,リ
ヤデフの制御及びエンジン出力制御が、所定周期(15
msec )で、行なわれるのである。このうち、前後輪駆
動力配分制御に関して、図27のフローチャートを参照
して説明する。図27に示すように、まず、車輪速F
R,FL,RR,RL,舵角θ1 ,θ2 ,θn,横加速
度Gy,前後加速度Gx,スロットル開度θth,エンジ
ン回転数Ne,トランスミッション回転数Nt,選択シ
フト段等の各データを検出してこれを取り込み(ステッ
プb1)、これらのデータから、前輪車輪速Vf,後輪
車輪速Vr,運転者要求車速Vref ,運転者要求舵角δ
ref 等を算出する(ステップb2)。
【0160】そして、運転者要求車速Vref ,運転者要
求舵角δref からマップにしたがい前後輪の理想回転速
度差ΔVhcを求め(ステップb3)、横加速度Gyから
マップにしたがって横Gゲインk1 を設定して(ステッ
プb4)、理想回転速度差ΔVhcからマップにしたがっ
て回転差ゲインk2 を設定する(ステップb5)。さら
に、ステップb6〜ステップb9で、実回転速度差ΔV
c,理想回転速度差ΔVhc,横Gゲインk1 から差動対
応クラッチトルクTvを算出(この例ではマップから換
算して求める)し、車輪速FR,FL,RR,RL及び
前後加速度Gxに基づく車輪のスリップ量Evから車輪
スリップ対応クラッチトルクTbを算出(マップから換
算)し、スロットル開度θth,エンジン回転数Ne,ト
ランスミッション回転数Nt,選択シフト段,回転差ゲ
インk2 からエンジントルク比例クラッチトルクTaを
算出(マップから換算)し、実回転速度差ΔVchの信号
に応じて保護制御用クラッチトルクTpcを設定する。
【0161】そして、ステップb10で、これらの各ク
ラッチトルクTv,Tb,Ta,Tpcから最大のものを
設定クラッチトルクTcとして算出する。さらに、ステ
ップb11で、このようにして決定したクラッチトルク
Tcをマップからクラッチ係合圧力Pcに変換する。続
いて、この圧力Pcに予圧補正(予圧Piを加える)及
び遠心圧補正(遠心圧Pvを減じる)を施して(ステッ
プb12)、センタデフ制御圧Pcdを得る。
【0162】さらに、ピークホールドフィルタを通化さ
せて、圧力Pの過度な変化を抑制できるようにする(ス
テップb13)。そして、ABSが作動中にあるか(ス
テップb14)、ソレノイドバルブの保護条件(Vref
≦5km/h,Tc≦1kgfm)が満たされているかどうか
(ステップb15)の判断を経て、これらのいずれかに
該当すれば、ステップb19で、センタデフ制御圧Pcd
を0にリセットする。
【0163】このようにして設定されたセンタデフ制御
圧Pcdは、ステップb16で、圧力フィードバック補正
を施される。つまり、Pcdの値と圧力センサの実測値と
の差分ΔPを算出して、積分補正ゲインkiとΔP
(i)との積から求まる積分補正圧力Piと、比例補正
ゲインkpΔPとの積から求まる比例補正圧力Ppとに
より、上述のセンタデフ制御圧Pcdを補正して、圧力P
を得る。
【0164】さらに、ステップb17で、圧力Pを相当
するデューティに変換して、センタデフ制御、つまり、
差動制限クラッチの制御を行なう。上述の差動対応クラ
ッチトルクTvの算出は、図28に示すように行なわれ
る。まず、後輪車輪速Vrから前輪車輪速Vfを減算し
た差ΔVcd(=Vr−Vf)を算出し(ステップc
1)、そして、この差(前後輪の実回転速度差)ΔVcd
から、前述のようにして(ステップb3参照)求めた前
後輪の理想回転速度差ΔVhcを減算して、差ΔVc(=
ΔVcd−ΔVhc)を求める(ステップc2)。
【0165】そして、ステップc3で、上述の前後輪の
理想回転速度差ΔVhcが、0以上かどうかを判断して、
ΔVhcが0以上ならステップc4へ、ΔVhcが0未満な
らステップc5へ進む。ステップc4に進むと、マップ
[図13(a)参照]を用いてΔVc からクラッチトル
クTv ′を設定する。
【0166】具体的には、ΔVcd≧ΔVhcならば、ク
ラッチトルクTv ′が差ΔVc (ΔVcd−ΔVhc)の大
きさに比例して高まるように、 Tv ′=a×(ΔVcd−ΔVhc)=a×ΔVc と設定する(ただし、aは比例定数)。 また、ΔVhc>ΔVcd>0ならば、クラッチトルクT
v ′を0に設定して、所謂不感帯領域を設定する。
【0167】さらに、0≧ΔVcdならば、クラッチト
ルクTv ′がΔVcdの大きさに比例して高まるように、 Tv ′=−a×ΔVcd=−a×(ΔVc +ΔVhc) と設定する(ただし、aは比例定数)。 なお、ΔVhc=0の時にはΔVhc>ΔVcd>0の不感帯
領域はなくなる。
【0168】ステップc5に進むと、マップ[図13
(b)参照]を用いてΔVc からクラッチトルクTv ′
を設定する。具体的には、ΔVcd≧0ならば、クラッ
チトルクTv ′がΔVcdの大きさに比例して高まるよう
に、 Tv ′=a×ΔVcd=a×(ΔVc +ΔVhc) と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0169】また、0>ΔVcd>ΔVhcならば、クラ
ッチトルクTv ′を0に設定して、所謂不感帯領域を設
定する。さらに、ΔVhc≧ΔVcdならば、クラッチト
ルクTv ′がΔVc (ΔVcd−ΔVhc)の大きさに比例
して高まるように、 Tv ′=−a×(ΔVcd−ΔVhc)=−a×ΔVc と設定する(ただし、aは比例定数)。
【0170】このように、ステップc4,c5で、求め
られた差動対応クラッチトルクTv′は、補正部246
で横Gゲインk1 を積算されることで横加速度対応補正
され(ステップc6)、差動対応クラッチトルクTv が
得られる。このような差動対応クラッチトルクTv の設
定により、クラッチトルクTv の大きさが無駄なく適切
に設定され、適宜後輪を駆動ベースとして後輪からスリ
ップするように設定しながら車体の姿勢制御を適切に調
整できるようになり、旋回時に運転者の意志に沿うよう
に車両を挙動させることができるようになるのである。
【0171】つまり、センサ対応操舵角δh の方向SI
G(δh )と横加速度データGy の方向SIG(Gy )
とが等しくない場合には、運転者要求操舵角を0に設定
しているので、例えばドライバがカウンタステア等のハ
ンドル操作を行なうときなどに、ハンドルの操舵位置と
実際の車両の操舵角(旋回状態)とが異なるようになっ
ても、不適切なデータが採用させなくなり、制御の性能
向上に寄与する。
【0172】さらに、運転者要求車速Vrefとして、
回転速度データ信号FL,FR,RL,RRのうち下か
ら2番目の大きさの車輪速データを採用しているので、
データの信頼性が確保されている。そして、理想回転速
度差ΔVhcの設定が、低車速時には、旋回時の前後輪の
軌道半径の差(所謂内輪差)の影響が大きく、後輪の回
転速度Vrは前輪の回転速度Vfよりも小さいが、高車
速になるにしたがって、後輪の回転速度Vrが前輪の回
転速度Vfに対して大きくなるようにしている。このた
め、高速時には後輪がスリップしやすくなり、高速時ほ
ど要求される車体の姿勢の応答性が確保される。また、
操舵角に関しては、操舵角が大きいほど前後輪に要求さ
れる回転差も大きくなり、これが適切に許容され、タイ
トコーナブレーキング現象を回避できる利点がある。
【0173】また、上述の車輪スリップ対応クラッチト
ルクTbの算出は、図29に示すように行なわれる。ま
ず、ステップd1において、車輪スリップ対応クラッチ
トルク設定手段254のスリップ量算出部254aで、
推定車体速演算部216の推定車体速算出部216dで
算出された推定車体速Vrefと、推定車体速演算部2
16の車輪速選択部216aで選択された4輪の車輪速
の中から2番目に小さい車輪速(又は、4輪の車輪速の
中から最も小さい車輪速データを除く3つの車輪速デー
タの平均値)SVWとから、車輪のスリップ量Ev(=
SVW−Vref)を算出する。
【0174】次に、ステップd2において、スリップ量
Evが微小な基準スリップ量Ev0 以上かどうかが判断
されて、EvがEv0 以上ならば4輪スリップ状態であ
るとして、ステップd3に進み、現在の車輪スリップ対
応クラッチトルクTbが最大(MAX)になっているか
どうかが判断される。ここで、Tbが最大ならば、4輪
スリップ状態でTbが最大とされている最中であるとし
て、ステップd5に進み、クラッチトルク設定部254
bで、車輪スリップ対応クラッチトルクTbが最大(M
AX)に維持される。
【0175】一方、EvがEv0 以上でないか又はTb
が最大でなければ、ステップd4に進み、クラッチトル
ク設定部254bで、図15に示すようなマップから、
スリップ量Evに基づいて車輪スリップ対応クラッチト
ルクTbを設定する。これにより、図15のマップに示
すように、スリップが発生すると、このスリップ量Ev
の増加に比例してクラッチトルクTbが増加され、スリ
ップ量Evが適当な大きさになったらクラッチトルクT
bが最大値(MAX)となる。
【0176】この結果、他の制御から滑らかにこの車輪
スリップ対応クラッチトルク制御に移行できるようにな
り、制御移行時のショックや違和感を招いたり、制御の
ハンチングを招いたりすることなく、クラッチを直結し
ながら、車輪のスリップを抑制して路面へ効率よく駆動
力を伝達できるようになる。なお、図15に示すマップ
における傾き(Tb/Ev)を変更できるようにして、
傾き(Tb/Ev)を設定した上で、クラッチトルクT
bを設定するような構成や、上述のステップd2,d
3,d5を省いて、常にスリップ量Evに基づいてクラ
ッチトルクTbを設定するような構成も考えられる。
【0177】また、エンジントルク比例クラッチトルク
Ta の算出は、図30に示すように行なわれる。まず、
エンジントルク検出部264で、スロットル開度データ
θthと、エンジン回転数データNeとから、図12に示
すようなエンジントルクマップを通じて、その時のエン
ジントルクTeを読み取る(ステップe1)。
【0178】次に、エンジントルク比例トルク設定部2
68で、エンジントルクTeから、マップを通じて、エ
ンジントルク比例トルクTa ′を読み取る(ステップe
2)。さらに、トルコントルク比検出部266で、エン
ジン回転数データNeと、トランスミッション回転数デ
ータtとから、図13に示すようなトランスミッション
トルク比マップを通じて、その時のトランスミッション
トルク比tを求める(ステップe3)。
【0179】そして、エンジントルク比例クラッチトル
ク演算部270で、このようにして得られたエンジント
ルク比例トルクTa ′と、トルコントルク比tと、トラ
ンスミッションの減速比検出部276でトランスミッシ
ョンの減速比ρm ,終減速比ρ1 及び回転差ゲイン設定
部275で得られた回転差ゲインk2 とから、エンジン
トルク比例クラッチトルクTa( =t・ ρm ・ ρ1 ・ T
e) を演算する(ステップe4)。さらに、ステップe
5で、低車速時(この例ではVref <20km/h)かど
うかが判断され、低車速時であれば、上述のエンジント
ルク比例クラッチトルクTa をそのままデータとして出
力するが、車速がこれ以上大きくなる(Vref ≧20km
/h)と、エンジントルク比例クラッチトルクTa とし
て0を設定し(ステップe6)、これを制御データとし
て出力する。
【0180】このようなエンジントルク比例クラッチト
ルクTa によって、発進時や低速からの急加速時などの
ときに、適宜直結4WD状態とされて、高いトルクを路
面に伝達できるようになって、発進時や急加速時におけ
るタイヤのスリップが防止され、走行性能が向上すると
ともに、駆動系の耐久性向上にも寄与する。さらに、上
述の保護制御用クラッチトルクTpcの算出は、図31に
示すように行なわれる。
【0181】まず、ステップf1で、保護制御用クラッ
チトルクTpcが0であるかどうかが判断される。Tpcが
0であればクラッチ保護制御は行われていないので、ス
テップf2へ進み、2秒前から現在までのクラッチ28
の吸収エネルギq2 を算出する。そして、続くステップ
f3で、吸収エネルギq2 が閾値q0 (0.6)以上か
どうかが判断される。
【0182】q2 が閾値q0 よりも大きくなければ、ク
ラッチ保護制御は不要なので、ステップf13でTpcを
0に設定した上で今回の制御サイクルを終える。一方、
2 が閾値q0 以上なら、クラッチ保護制御を開始す
べく、ステップf4に進んでタイマの値tを0にリセッ
トして、続くステップf5で、Tpcの値を最大(MA
X)に設定する。そして、続くステップf6で、タイマ
の値tが1(秒)以上かどうかが判断される。
【0183】タイマの値tが1よりも小さければ、ステ
ップf7に進んで、タイマの値tを制御周期分(Δt)
だけ加算して、ステップf9以降に進む。そして、ステ
ップf9で、他の制御則によるクラッチトルクの値Tc
がTpcよりも大きいかどうかが判断され、Tc がTpcよ
りも大きくなれば、ステップf13でTpcを0に設定し
た上で今回の制御サイクルで、クラッチ保護制御が自動
的に終了する。ただし、Tpcの値がMAXであれば、T
c がTpcよりも大きくなることはない。
【0184】また、ステップf10に進んだ場合、アク
セル(アクセルペダル)が操作されているかどうかが、
アクセルスイッチがオフ(OFF)状態であるかどうか
で判断され、アクセルペダルが操作されれば、ステップ
f13でTpcを0に設定した上で今回の制御サイクル
で、クラッチ保護制御が自動的に終了する。また、ステ
ップf11に進んだ場合、ブレーキ(ブレーキペダル)
が操作されているかどうかが、ブレーキスイッチがオン
(ON)状態であるかどうかで判断され、ブレーキペダ
ルが操作されれば、ステップf13でTpcを0に設定し
た上で今回の制御サイクルで、クラッチ保護制御が自動
的に終了する。
【0185】さらに、ステップf12に進んだ場合、車
輪速度差ΔVcdと目標車輪速度差ΔVhcとの偏差ΔVc
(=ΔVcd−ΔVhc)が設定値ΔV0 (=1.0km/
h)に対して、ΔVc≧1.0又はΔVc≦−1.0
(つまり、|ΔVc|≧1.0)が成り立つかどうかが
判断されて、これが成り立てば、次回の制御サイクル
で、ステップf4に進む。また、これが成り立たなけれ
ば、次回の制御サイクルで、ステップf1に進む。
【0186】そして、このようなステップf9〜12で
いずれもNoルートをとると、TpcがMAXであって0
でないので、次回の制御サイクルでは、ステップf1か
らステップf6へジャンプして、タイマtが1(秒)以
上かどうかが判断され、タイマtが1(秒)以上でてけ
れば、TpcをMAXとしたままで、タイマtにΔtを加
算して更新する。
【0187】したがって、一旦、クラッチ保護制御が開
始されると、アクセルペダルやブレーキペダルが操作さ
れるまでは、1秒間だけTpcがMAXに保持される。そ
して、この間に、アクセルペダルやブレーキペダルが操
作されると、クラッチ保護制御が終了する。クラッチ保
護制御が開始されて1秒間だけTpcがMAXに保持され
ると、タイマtが1以上になるので、ステップf6から
ステップf7に進んで、Tpcが少量(α)だけ減少され
る。
【0188】そして、この後、図20に示すように、所
定時間(ここでは10秒)かけてTpcがイニシャル圧ま
で線型に減らされる。この時も、この減少途中で、他の
制御則によるクラッチトルクの値Tc がTpcよりも大き
くなれば自動的にクラッチ保護制御から他の制御則へと
滑らかに移行する。また、この間に、アクセルペダルや
ブレーキペダルが操作されると、クラッチ保護制御が終
了する。さらに、この減少途中で、|ΔVc|≧1.0
になると、再びステップ4に戻って、図20に、鎖線で
示すように、TpcをMAXにするクラッチ保護制御が開
始される。
【0189】このような保護制御用クラッチトルクTpc
によるクラッチ保護制御によって、クラッチ板が保護さ
れて、装置の耐久性向上に寄与する。そして、TpcをM
AXとした後にTpcを徐々に減少させていくので、他の
制御への移行が滑らかなに行えるので、制御の安定性、
ひいては車両の挙動の安定性を確保できる。また、クラ
ッチの吸収エネルギを基準にこれが大きくなると保護制
御を開始するのでクラッチ保護が本当に必要なときに保
護制御を行なえるようになり、本来の車両の走行性能を
高めるための他のクラッチ制御をあまり妨げずにクラッ
チ保護を図れる利点かある。
【0190】さらに、Tpcの減少中にも、路面やタイヤ
等がスリップし易いなと走行環境が過酷であれば、クラ
ッチ28のスリップが大きくなって、再びクラッチ保護
の必要が生じるが、このときには、再び、クラッチトル
クTpcが最大値に設定されクラッチ28が直結状態に保
持されるので、クラッチ制御のハンチングが防止される
とともに、クラッチ保護が確実に行なわれ、安定したク
ラッチ制御を行えるようになる。
【0191】特に、車輪速度差Vcdと目標車輪速度差V
hcとの差分に基づいて上述の制御を行っているので、目
標車輪速度差Vhcに応じた差動対応クラッチトルクTv
による制御をできるだけ損なわずに、クラッチ保護を実
行できる。ここで、上述の予圧補正について、第32〜
34図を参照して、説明する。まず、第1の予圧学習の
手法では、図32に示すように、ステップg1〜g4
で、イグニッションキーがオンの状態になってから3
0分以上経過しているかどうか、シフトセレクタが1
(1速),2(2速),D(ドライブ),N(ニュート
ラル)のうちのいずれかに選択されているかどうか、
車体速Vref が0km/h(停止状態)であるかどうか、
クラッチトルクの設定値Tc が小さな所定値( 1kg
fm) 以下であるかどうかが、夫々判断される。
【0192】そして、これらの条件がいずれも満たされ
ると、ステップg5に進み、これらの条件のいずれかを
満たさなければ、学習制御は行なわない。ステップg5
に進むと、イグニッションキーがオンの状態になってか
ら予圧学習を行なったかどうかを判断して、既に予圧学
習を行なっていれば、学習制御は行なわず、予圧学習を
行なっていなければ、ステップg6へ進む。
【0193】ステップg6では、油圧を立ち上げて、油
圧の2階微分値の最大値(MAX)を検出して、その時
の油圧Pをメモリする。つまり、まず、図21(a)に
示すように、例えばP=0.4kgf/cm2 相当のデュー
ティ(duty)を2秒間与えて、この後、例えば1.5%/
sの増加速度で、例えばP=3.0kgf/cm2 相当のデ
ューティまで、ゆっくりとスイープさせる。
【0194】これに対して、図21(b)に示すように
変化する油圧ピストン141,142への圧力Pからこ
の圧力Pを時間により2階微分した値(差分)P″の最
大値とこの時の圧力Pとを記憶する。そして、メモリし
た圧力Pをイニシャル圧に設定するのである。具体的に
は、学習を開始して圧力Pが上昇していくときに、2階
微分値P″の最大値とこの時の圧力Pとを記憶して、こ
の2階微分値P″の値は制御周期ごとに算出されて適宜
更新されていって、1階微分値P′が最大となったら
(つまり、クラッチが完全結合したら)、2階微分値
P″の算出を打ち切って、この時点までの期間内で、2
階微分値P″の最大値をとった時の圧力Pをイニシャル
圧Pi として記憶するのである。
【0195】そして、このような予圧学習の実行中に、
上述の予圧学習の条件〜のいずれかが満たされなく
なったらば、ただちに、予圧学習を中断して通常モード
に戻り、この予圧学習が、イグニッションキーがオンと
されて一度行なわれると、次に、一旦、イグニッション
キーがオフとされた後にオンとされないかぎり実行され
ない。
【0196】また、第2の予圧学習の手法では、図33
に示すように、ステップh1〜h5で、′イグニッシ
ョンキーがオンの状態になってから10分以上経過して
いるかどうか、前回の試行から所定時間(例えば5分
程度又はこれよりも短い適当な時間)経過しているかど
うか、シフトセレクタが1(1速),2(2速),D
(ドライブ),N(ニュートラル)のうちのいずれかに
選択されているかどうか、Vref =0km/hであるか
どうか、Tc ≦1kgfmであるかどうかが、夫々判断
される。
【0197】そして、これらの条件がいずれも満たされ
ると、ステップh6に進み、これらの条件のいずれかを
満たさなければ、学習制御は行なわない。ステップh6
に進むと、油圧を立ち上げて、油圧のオーバシュート値
を検出する。つまり、油圧の立ち上げは、予め設定され
た初期イニシャル圧P1 相当のデューティ(duty)を所定
時間(例えば2秒間)だけ保持して、その後に所定時間
(例えば1秒間)でP=8.8kgf/cm2 相当のデュー
ティ(ほぼ100%のデューティである)までスイープ
させる。
【0198】そして、これに応じて変化する油圧ピスト
ン141,142に加わる圧力Pのオーバシュート値α
を検出する。さらに、次のステップh7で、このαが閾
値よりも大きいかどうかを判定する。即ち、圧力Pのピ
ーク値(最大値)Pmax を検出して、この最大値Pmax
と定常最大圧Pc (ここでは8.8kgf/cm2 程度)と
の差(Pmax −Pc )をオーバシュート値αとして、こ
のαが閾値(α0 )よりも大きいと、オーバシュートが
あった、したがって、初期イニシャル圧P1 ではクラッ
チ28が離れていると判断でき、このαが閾値よりも大
きくなければ、オーバシュートがなかった、即ち、初期
イニシャル圧P1 ではクラッチ28はぎりぎりの接触状
態又は過度な接触状態にあると判断できる。
【0199】そこで、αが閾値よりも大きければ、ステ
ップh8に進んで、 PINTG(n)=PINTG(n−1)+β PINT(n)=PINTG(n−1)+β =PINTG(n) つまり、イニシャル学習値PINTG(n)について
は、前回のイニシャル学習値PINTG(n−1)にβ
(=1bit 分の圧力)だけ加えたものに設定し、イニシ
ャル圧PINT(n)としては、前回のイニシャル学習
値PINTG(n−1)にβ(=1bit 分の圧力)だけ
加えたもの、つまり、今回のイニシャル学習値PINT
G(n)に設定する。
【0200】一方、αが閾値よりも大きくなければ、ス
テップh9に進んで、 PINTG(n)=PINTG(n−1)−β PINT(n)=PINTG(n−1) つまり、イニシャル学習値PINTG(n)について
は、前回のイニシャル学習値PINTG(n−1)にβ
(=1bit 分)だけ減じたものに設定するが、イニシャ
ル圧PINT(n)としては、前回のイニシャル学習値
PINTG(n−1)に設定する。
【0201】なお、このような予圧学習の実行中に、上
述の予圧学習の条件′〜のいずれかが満たされなく
なったらば、ただちに、予圧学習を中断して通常モード
に戻る。また、上述の予圧学習は、上述の予圧学習の条
件′〜が満たされる限りは、続行される。
【0202】また、第3の予圧学習の手法では、第34
図に示すように、第3の予圧学習と同様な条件かどうか
が判断される。つまり、ステップh1〜h5で、′イ
グニッションキーがオンの状態になってから10分以上
経過しているかどうか、前回の試行から所定時間(例
えば5分程度又はこれよりも短い適当な時間)経過して
いるかどうか、シフトセレクタが1(1速),2(2
速),D(ドライブ),N(ニュートラル)のうちのい
ずれかに選択されているかどうか、Vref =0km/h
であるかどうか、Tc ≦1kgfmであるかどうかが、
夫々判断される。
【0203】そして、これらの条件がいずれも満たされ
ると、ステップh16に進み、これらの条件のいずれか
を満たさなければ、学習制御は行なわない。ステップh
16に進むと、油圧を立ち上げて、所定圧と油圧値との
差を積分する。つまり、油圧の立ち上げは、予め設定さ
れた初期イニシャル圧P1 相当のデューティ(duty)を所
定時間(例えば2秒間)だけ保持して、その後に所定時
間(例えば1秒間)でP=8.8kgf/cm2 相当のデュ
ーティ(ほぼ100%のデューティである)までスイー
プさせる。
【0204】そして、これに応じて変化する油圧ピスト
ン141,142に加わる圧力Pと所定圧(最大圧に近
い圧)との差を積分する。即ち、図23(b),(c)
に示すように、デューティのスイープを開始した時点t
0 (又は圧力Pが上昇を開始した時点t1 )から、直線
L0で示すような定常最大圧Pc (又はこれに近い程度
の一定圧力値)に達するまでの間、この直線L0と圧力
Pの変化状態を描く曲線L1又はL2とで囲まれた部分
(図中斜線を付す)の面積S(S1,S2)を算出する
のである。
【0205】さらに、次のステップh17で、この算出
した面積Sが閾値S0 よりも大きいかどうかを判定す
る。つまり、オーバシュートのある曲線L1の場合の面
積S1の方が、オーバシュートのない曲線L2の場合の
面積S2よりも明らかに大きくなるので、面積Sを閾値
0 と比較することで、オーバシュートの有無を判定す
るのである。
【0206】そこで、面積Sが閾値S0 よりも大きけれ
ば、ステップh8に進んで、 PINTG(n)=PINTG(n−1)+β PINT(n)=PINTG(n−1)+β =PINTG(n) つまり、イニシャル学習値PINTG(n)について
は、前回のイニシャル学習値PINTG(n−1)にβ
(=1bit 分の圧力)だけ加えたものに設定し、イニシ
ャル圧PINT(n)としては、前回のイニシャル学習
値PINTG(n−1)にβ(=1bit 分の圧力)だけ
加えたもの、つまり、今回のイニシャル学習値PINT
G(n)に設定する。
【0207】一方、面積Sが閾値S0 よりも大きくなけ
れば、ステップh9に進んで、 PINTG(n)=PINTG(n−1)−β PINT(n)=PINTG(n−1) つまり、イニシャル学習値PINTG(n)について
は、前回のイニシャル学習値PINTG(n−1)にβ
(=1bit 分)だけ減じたものに設定するが、イニシャ
ル圧PINT(n)としては、前回のイニシャル学習値
PINTG(n−1)に設定する。
【0208】このような第3の予圧学習の実行中にも、
上述の予圧学習の条件′〜のいずれかが満たされな
くなったらば、ただちに、予圧学習を中断して通常モー
ドに戻る。また、この場合も、上述の予圧学習の条件
′〜が満たされる限りは、続行される。このような
第1〜3の予圧学習によって、それぞれ、適切なイニシ
ャル圧Piが設定でき、制御のレスポンスの向上に大き
く貢献するようになる。
【0209】特に、第1の予圧学習では、1回の学習で
イニシャル圧Piを設定でき、極めて簡便である利点が
ある。また、第2,3の予圧学習では、何回かの学習で
イニシャル圧Piを設定するが、設定精度が高く、レス
ポンスの向上効果が大きい利点がある。特に、積分値
(面積)を基準にする判定では、イニシャル圧Piが適
切かどうかの判定が比較的適切に行なえ、圧力センサの
能力に大きく頼ることなくイニシャル圧Piを設定しう
る。
【0210】さらに、スイッチ294aを通じて行なわ
れる制御により、デューティソレノイドバルブ及びクラ
ッチ板が保護され、装置の信頼性及び耐久性の向上に寄
与している。さらに、メータクラスタ内にはトルク配分
表示部312が設けられて、前輪(又は後輪)へのトル
ク配分状態をグラフィック表示(又はメータ表示)する
ので、運転者が車両のトルク配分状態を認識しながら運
転でき、運転に有効利用できるとともに、運転をより楽
しいものにでき、商品性が大きく向上する利点がある。
【0211】さらに、この際に行なうトルク配分推定の
結果は、各部の制御にフィードバックして利用すること
も考えられる。
【0212】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の差動調整
式前後輪駆動力配分制御装置によれば、前輪側と後輪側
との間の差動状態を調整することで前輪及び後輪への駆
動力配分を制御する差動調整式前後輪トルク配分制御装
置において、各車輪の回転速度を検出する車輪速検出手
段と、車体速度を検出又は算出する車体速検出手段と、
上記の車輪速検出手段からの車輪速情報と車体速検出手
段からの車体速情報とに基づいて上記の各車輪がスリッ
プ状態であることを判断するスリップ判断手段と、上記
スリップ判断手段により各車輪がスリップ状態であるこ
とが判断されると、上記車輪速(例えば、上記車輪速の
うち2番目に小さい値又は、上記車輪速のうち最も小さ
い値を除いた3つの車輪速の平均値)と上記車体速値と
の差に応じて差動制限量を制御する制御手段とが設けら
れるという構成により、極低μ路や砂地,深雪路等の走
行抵抗の大きい路面を走行したときの4輪スリップ時に
も、十分な差動制限トルクを得ることができて、適切に
前後輪の駆動力配分を制御できるようになり、制御のハ
ンチング防止や車両の走行安定性にも寄与しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪駆
動力配分制御装置の要部の構成を示すブロック図であ
る。
【図2】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪駆
動力配分制御装置の駆動トルク伝達系の全体構成図であ
る。
【図3】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪駆
動力配分制御装置の駆動トルク伝達系の要部を示す断面
図である。
【図4】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪駆
動力配分制御装置の前後輪トルク配分機構の要部断面図
である。
【図5】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪駆
動力配分制御装置の油圧供給系の模式的回路図である。
【図6】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪駆
動力配分制御装置の油圧供給系の要部回路図である。
【図7】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪駆
動力配分制御装置の油圧設定用デューティの特性を示す
図である。
【図8】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪駆
動力配分制御装置の操舵角データ検出手段の詳細を示す
ブロック図である。
【図9】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪駆
動力配分制御装置の車体速検出手段の詳細を示すブロッ
ク図である。
【図10】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の理想回転数差設定用マップを示す
図である。
【図11】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の横加速度ゲイン設定マップを示す
図である。
【図12】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の理想回転数差を説明するための車
輪状態を模式的に示す平面図である。
【図13】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の差動対応クラッチトルク設定用マ
ップを示す図である。
【図14】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の車輪スリップ対応クラッチトルク
設定手段を示すブロック図である。
【図15】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の車輪スリップ対応クラッチトルク
設定用マップである。
【図16】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置のエンジントルクマップの例を示す
図である。
【図17】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置のトランスミッショントルク比マッ
プの例を示す図である。
【図18】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置のエンジントルク比例クラッチトル
ク設定手段の変形例を示すブロック図である。
【図19】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置のセンタデフ入力トルク設定マップ
である。
【図20】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の保護制御用クラッチトルクの特性
図である。
【図21】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の第1の予圧学習にかかる図であ
り、(a)はそのデューティ特性を示し、(b)はその
圧力特性を示す。
【図22】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の第2の予圧学習にかかる圧力特性
を示す図である。
【図23】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の第3の予圧学習にかかる図であ
り、(a)はそのデューティ特性を示し、(b),
(c)はいずれもその圧力特性を示す。
【図24】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置のトルク配分状態表示手段を示す図
である。
【図25】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置のトルク配分状態推定手段によるト
ルク配分を説明するための特性図である。
【図26】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置を含んだ車両全体の制御の流れを示
すフローチャートである。
【図27】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の前後輪トルク配分制御の流れを示
すフローチャートである。
【図28】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の差動対応クラッチトルクの設定の
流れを示すフローチャートである。
【図29】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の車輪スリップ対応クラッチトルク
の設定の流れを示すフローチャートである。
【図30】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置のエンジントルク比例クラッチトル
クの設定の流れを示すフローチャートである。
【図31】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の保護制御用クラッチトルクの設定
の流れを示すフローチャートである。
【図32】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の第1の予圧学習の流れを示すフロ
ーチャートである。
【図33】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の第2の予圧学習の流れを示すフロ
ーチャートである。
【図34】本発明の一実施例としての差動調整式前後輪
駆動力配分制御装置の第3の予圧学習の流れを示すフロ
ーチャートである。
【符号の説明】
2 エンジン 4 トルクコンバータ 6 自動変速機 8 出力軸 10 中間ギヤ(トランスファーアイドラギヤ) 12 センタディファレンシャル(センタデフ) 14 前輪用の差動歯車装置(フロントデフ) 15 ベベルギヤ機構 15A ベベルギヤ軸 15a ベベルギヤ 16,18 前輪 17L,17R 前輪側車軸 19 減速歯車機構 19a 出力歯車 20 プロペラシャフト 21 ベベルギヤ機構 22 後輪用の差動歯車装置(リヤデフ) 24,26 後輪 25L,25R 後輪用車軸 27 前輪用出力軸 27a 中空軸部材 28 油圧多板クラッチ(差動制限機構又は差動調整機
構) 28a 前輪出力側ディスクブレート 28b 入力側ディスクブレート 29 後輪用出力軸 30,30a,30b,30c ハンドル角センサ(ス
テアリングホイール角センサ) 32 ステアリングホイール 34,34a,34b 横加速度センサ 36 前後加速度センサ 38 スロットルセンサ 39 エンジンキースイッチ 40,42,44,46 車輪速センサ 48 コントローラ 50 アンチロックブレーキ装置 50A ブレーキスイッチ 51 ブレーキペダル 52 表示灯 54 油圧源 56 圧力制御弁系(圧力制御弁) 58 ポンプ 60 チェック弁 62 圧力制御弁 64 レデューシングバルブ 66 アキュムレータ 68 圧力スイッチ 68a モータ 113 入力歯車 114a〜114f 軸受 115 トランスミッションケース 115a エンドカバー 115b リテーナ 116 支持部材 117a,117b 油路 121 サンギヤ 122 プラネタリピニオン(プラネタリギヤ) 123 リングギヤ 124 入力ケース 125 プラネットキャリア 125a ベースプレート部 125b プラネタリピニオン収容部 125f クラッチディスク支持部 126 ピニオンシャフト 130 接続部材 141 第1ピストン 142 第2ピストン 143 仕切プレート 144a 第1油室 144b 第2油室 145 中空軸 145a ピストン収容部 160 シフトレバー位置センサ(シフトレンジ検出手
段) 160A 自動変速機のシフトレバー 161 4WDコントロールバルブ 162 デューティソレノイドバルブ(デューティバル
ブ) 163 オリフィス 164 オイルフィルタ 165 レデューシングバルブ 170 エンジン回転数センサ 180 トランスミッション回転数センサ 200 前後輪実回転速度差検出部 202a〜202d フィルタ 204a 前輪車輪回転速度データ算出部 204b 後輪車輪回転速度データ算出部 206 前後輪実回転速度差算出部 210 前後輪理想回転速度差設定部 212 操舵角データ検出手段としての運転者要求操舵
角演算部(擬似操舵角演算部) 212a センサ対応操舵角データ設定部 212b 横加速度データ算出部 212c 比較部 212d 運転者要求操舵角設定部(車速データ設定
部) 216 車体速データ検出手段としての推定車体速演算
部(擬似車体速演算部) 216a 車輪速選択部 216c 推定車体速算出部 216d フィルタ 218 理想作動状態設定部としての理想回転速度差設
定部 220 差動対応クラッチトルク設定部 222 減算器 230 保護制御部 242 フィルタ 244 横Gゲイン設定部 246 補正部 254 車輪スリップ対応クラッチトルク設定手段 254a スリップ量算出部 254b クラッチトルク設定部 264 エンジントルク検出部 266 トルコントルク比検出部 267 センタデフ入力トルク演算部 268 エンジントルク比例トルク設定部 269 クラッチトルク演算部 270 エンジントルク比例クラッチトルク演算部 272 旋回補正部 274a スイッチ 274 判断手段 275 回転差ゲイン設定部 276 トランスミッションの減速比検出部 280 最大値選択部 282 トルク−圧力変換部 285 遠心油圧補正部 286 遠心補正圧設定部 288 初期係合圧設定部(予圧設定部) 290 ピークホルドフィルタ 292a,294a スイッチ 292,294 判断手段 295 デューティ設定部 296 圧力フィードバック補正部 298 圧力−デューティ変換部 300 油圧回路 302 デューティソレノイド 304 圧力センサ 306 フィルタ 310 トルク推定手段 310a 演算手段 310b 選択手段 312 トルク配分表示部 AM 差動調整式前後輪駆動力配分制御装置の機械部分

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 前輪側と後輪側との間の差動状態を調整
    することで前輪及び後輪への駆動力配分を制御する差動
    調整式前後輪トルク配分制御装置において、各車輪の回
    転速度を検出する車輪速検出手段と、車体速度を検出又
    は算出する車体速検出手段と、上記の車輪速検出手段か
    らの車輪速情報と車体速検出手段からの車体速情報とに
    基づいて上記の各車輪がスリップ状態であるときに上記
    車輪速値と上記車体速値との差に応じて差動制限量を制
    御する制御手段とが設けられていることを特徴とする、
    差動調整式前後輪駆動力配分制御装置。
  2. 【請求項2】 上記の車輪速値と車体速値との差を求め
    るための車輪速値を、上記車輪速検出手段で検出された
    車輪速のうち2番目に小さい値とすることを特徴とす
    る、請求項1記載の差動調整式前後輪駆動力配分制御装
    置。
  3. 【請求項3】 上記の車輪速値と車体速値との差を求め
    るための車輪速値を、上記車輪速検出手段で検出された
    車輪速のうち最も小さい値を除いた3つの車輪速の平均
    値とすることを特徴とする、請求項1記載の差動調整式
    前後輪駆動力配分制御装置。
JP34584091A 1991-12-27 1991-12-27 差動調整式前後輪駆動力配分制御装置 Pending JPH05178114A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009208733A (ja) * 2008-03-06 2009-09-17 Fuji Heavy Ind Ltd 駆動系制御装置
US7806218B2 (en) 2006-12-01 2010-10-05 Murata Machinery, Ltd. Running vehicle and running vehicle system, and method for driving running vehicle
DE102014007235A1 (de) 2013-05-17 2014-11-20 Suzuki Motor Corp. Fahrzeugantriebskraftverteilungs-Steuervorrichtung

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