JPH05119033A - 牛肉の熟度測定方法 - Google Patents

牛肉の熟度測定方法

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JPH05119033A
JPH05119033A JP3308289A JP30828991A JPH05119033A JP H05119033 A JPH05119033 A JP H05119033A JP 3308289 A JP3308289 A JP 3308289A JP 30828991 A JP30828991 A JP 30828991A JP H05119033 A JPH05119033 A JP H05119033A
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ripeness
mfi
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beef
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JP3308289A
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Haruo Negishi
岸 晴 夫 根
Motoi Matsuura
浦 基 松
Sumio Yoshikawa
川 純 夫 吉
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Meiji Dairies Corp
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Meiji Milk Products Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 肉片中のイノシン酸含量、ヒポキサンチン含
量、イノシン+ヒポキサンチン含量、K値、筋原線維の
小片化率、30KD含量のいずれか1つ以上、そして必
要あれば、さらに、剪断力価を測定することを特徴とす
る牛肉の熟度測定方法。 【効果】 熟成期間の不明な牛肉の熟度を幅広い期間で
的確に判定することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、牛肉の熟成状態(以
下、「熟度」ということもある)を的確に判断するため
の熟度測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鳥獣肉類の食味性を向上させるために
は、死後一定期間の熟成が必要であるが、市場には種々
の熟度の肉類が流通しており、食味性にも非常に大きな
バラツキがみられる。また冷凍技術の発展に伴ない、冷
凍肉が大量に製造されるようになった昨今では凍結前の
熟成状態が把握できないことが多く、正確な熟度を簡便
に測定する方法の開発が食肉業界において強く望まれて
いる。
【0003】また、牛肉は、消費されるまでの期間も他
の畜肉に比べ長いので、市場には種々の熟成状態の肉が
流通していると考えられる。特に輸入冷凍牛肉の場合、
取引先パッカーとの間に熟成期間の取り決めがない限
り、凍結前の熟成日数が不明であることが多く(肉の科
学,30:107−112,1989)、凍結前の熟成
不足が原因で、輸入牛肉が国内産牛肉に比べ不味いと評
価されることもある(日畜会報,61:990−99
7,1990)。牛肉が自由化され、今まで以上に輸入
牛のブランドの多様化が進むと考えられるため、ますま
す様々な熟度の原料肉の輸入が予想される。このような
状況の中で牛肉を最良の状態で提供するためには、熟度
の適切な管理が重要で、熟成不足の原料肉の場合には追
加熟成処置を施して、品質上の欠点を改善し(上掲「日
畜会報」誌)、使用することが好ましい。そのために
は、牛肉の熟度を適切に判断するための指標が必要であ
る。
【0004】これに対して肉類の熟度を簡便に且つ正確
に判断する指標は、未だ開発されておらず、特に、牛肉
等大型の畜肉において問題となっている長期間に亘って
貯蔵した場合の適切な熟度指標は見出されていない。
【0005】一方、魚介類や畜肉類の官能性の表示とし
て、熟度のほかに鮮度があり、この鮮度の指標として、
ATP関連化合物(ATP、ADP、AMP、IMP、
HxRおよびHx)の全量に対するHxR(イノシシ)及
びHx(ヒポキサンチン)の量を百分率で表示したK値
が知られている(特公平3−33319号)。しかしな
がら、このK値は、鮮度(新しさ、生きの良さ)の指標
であって本発明に係る熟度(熟成状態)とは全く逆のも
のであるし、測定対象は魚介類や鶏肉などの品質の劣化
の速いものであり、結局、これらの点からも明らかなよ
うに、K値について、これを牛肉の熟度の指標として利
用するという技術思想は知られておらず、ましてや本発
明において解明された他の指標については全く未知のま
まである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、牛肉の熟度
を幅広い期間で的確に判定することができる指標を新た
に開発し、新規な牛肉の熟度測定方法を開発する目的で
なされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に各種の物理化学的性質について検討した結果、筋原線
維の小片化率(MFI)が貯蔵中に増加し、また、3
0,000ダルトン成分(30KD)が貯蔵数日後に出
現し、その濃度は貯蔵中(熟成前期及び熟成後期全般に
亘って)変化する(次第に増加する)ことをはじめて見
出した。さらに、ATP関連化合物のうち、ヒポキサン
チン(Hx)、イノシン酸(1MP)、K値も貯蔵中の
全期間に亘って変化し、Hx、K値は次第に増加し、I
MPは次第に減少することを見出した。
【0008】すなわち、これらの物理化学的性質は、熟
成期間中同じ値を示すことがなく、しかも時間の経過に
よる数値の変化が大きいため、熟度の指標として非常に
すぐれていることを発見したのである。さらに、MFI
は顕微鏡観察により、30KDはSDS−PAGE(ド
デシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳
動)により、ATP関連化合物はHPLC(高速液体ク
ロマトグラフィー)によって効率的に測定することが可
能であることも併せ確認し、これら3つの特性が牛肉の
熟度を幅広く且つ的確に推定するための指標として最適
であるとの確信を得、更に研究の結果、本発明の完成に
至ったものである。
【0009】また上記した基本的技術思想に基づき更に
検討の結果、各種の物理化学的性質の内、剪断力価(S
FV)も、熟成前期においては非常にすぐれた熟度指標
であることを確認し、上記した基本発明と有機的に結合
することによって更に正確な熟度測定が可能となること
も発見した。本発明に係る肉類の熟度測定方法は、この
点も包含するものである。なお、ここに記する熟成前期
とは肉質に及ぼす熟成の効果が最大となる時期で、死後
の2週間位までの期間を指し、熟成後期とはそれ以降の
期間を指す。
【0010】したがって本発明を実施するに当っては、
肉の種類、凍結の有無、肉の産地、測定機器等により、
熟成期間全般に亘ってMFI、ATP関連化合物のうち
のIMP、Hx、K値及び30KDを指標としてチェッ
クする方法;熟成前期はMFI、IMP、Hx、K値、
30KD以外の指標、例えばSFV等を利用し、熟成後
期はMFI、IMP、Hx、K値、30KDを利用する
方法;熟成期間全般の指標としてMFI、ATP関連化
合物のうちのIMP、Hx、K値、及び30KDを利用
し、更に熟成前期はMFI、ATP関連化合物のうちの
IMP、Hx、K値、及び30KD以外の指標、例えば
SFV等を平行して利用する方法;こ(れら)の方法
に、特定の熟成期間を測定するのに特に適した指標を選
択しておき、これを加味して利用する方法;その他各種
の態様が適宜選択利用される。また、各指標は、単独で
もあるいは2種以上併用してもよく、必要あれば複数回
くり返して利用してもよい。
【0011】以下、本発明について具体的に説明する
が、各指標の測定法は下記する例示法のみにとどまら
ず、当該指標を測定し得る方法であればすべての方法が
適宜使用される。
【0012】〔1.試料及び熟成〕牛を屠殺・解体後、
枝肉を0〜2℃に3日間保管して各部分肉に分割した。
各部分肉は脂肪をカット整形した後、PVDC(ポリ塩
化ビニリデン)フィルムで真空包装して低温で貯蔵熟成
した。
【0013】〔2.官能評価〕各部分肉から約10mm
の厚さのステーキ状肉を調製し、これを200℃のホッ
トプレート上に載せて、表を2分間、裏返して1分間加
熱したものを直ちに官能評価した。評価は、あらかじめ
熟度の異なる牛肉を供して訓練した専門パネル5名によ
り、Cross,H.R.,et al.,“Guid
elinesfor cookery and sen
sory evaluation of meat”、
American Meat Science Ass
ociation(AMSA)、1978、にしたがっ
て、柔らかさ(Tenderness:8=きわめて柔
かい(extremely tender)、1=きわ
めて固い(extremely tough))、液汁
性(Juiciness:8=きわめてジューシー(e
xtremely juicy)、1=きわめてドライ
(extremely dry)、及び、香味(Fla
vor Intensity:8=きわめて強い(ex
tremelyintense)、1=きわめて弱い
(extremely bland)の各項目につい
て、8点尺度で採点し行った。
【0014】〔3.SFV(剪断力価)〕肉を筋線維と
平行に厚さ5mmにスライスし、プラスチックフィルム
(k・PET/PE80μ)の袋に入れヒートシールし
た。これを130×130mmの大きさの2枚のステン
レス板の間に、間隔を5mmに調節してはさみ、スライ
ス肉片を固定し、80℃の恒温水槽で40分間加熱し
た。加熱終了後、直ちに流水で冷却してから内部の試料
を取り出した。次に、この試料表面の水気を十分にふき
取ってサランラップ(旭化成社製)で包み、一夜冷蔵し
た。翌日、この冷蔵肉を筋線維と平行に5.0×5.0
×25mmの大きさにカットし、Warner−Bra
tzler切断試験機で剪断力価を測定した。1試料に
ついて10回測定し、その平均値を剪断力価(g)(S
FVと略)として表した。但し、k:ポリ塩化ビニリデ
ンコート、PET:ポリエステル、PE:ポリエチレン
(厚さ80μ)。
【0015】〔4.ATP関連化合物とK値〕肉から脂
肪、結合組織を十分に除去して細切後、1gを採取し、
1N−HClO44mlを加え、ヒスコトロン(日音医
理科機械(株)model:NS−50)を用いて、氷
冷下で1分間粉砕した。この液を20,000×g、1
5分間(0〜2℃)遠心分離後、得られた上澄みを回収
した。さらに遠沈管の沈殿に1N−HClO4を3.5
ml加えて洗浄後、同様に遠心分離し、得られた上澄み
を先の上澄みと合わせた。これを炭酸カリウムで中和
後、ワットマンNo.1のろ紙でろ過し、50mlとし
た。この一部を0.45μmのメンブレンフィルターで
ろ過したものを、ATP関連化合物の分析に供した。な
お、試料は分析時まで−35℃に保存しておいた。抽出
試料のATP関連化合物の分析は、高速液体クロマトグ
ラフィー(日本分光製)を用いて行った。カラムはSh
im−pack CLC−ODS(M)(4.6mm×
15cm)(島津製)を用い、移動相は第一液として
0.1M KH2PO4(pH4.0)、第二液として1
0%メタノールを含む0.1M KH2PO4(pH4.
0)を用い、2液による濃度勾配グラジエントで、流速
を1.0ml/minとして溶出した。試料は20μl
を用い、検出波長は254nmとし、溶出時のカラム温
度は室温(25〜30℃)とした。ピークの同定と定量
は、既知濃度のアデノシン三リン酸(ATP)、アデノ
シン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AM
P)、IMP、HxR、Hxの各標準物質のリテンショ
ンタイムの比較とピーク面積の比を求めて行った。
【0016】〔5.筋原線維の調製と形態観察〕筋原線
維は次のようにして調製した。すなわち、あらかじめ脂
肪、結合組織を除去した筋肉を細切後、4g採取し、1
00mM KCl、20mM KH2PO4、5mM E
DTA・2Na、1mM MgCl2、1mM NaN3
緩衝液(pH7.0)を40ml添加し、ワーリングブ
レンダー(AM−3型日本精機製)を用い、氷冷下で1
分間ホモジナイズ(15,000rpm)をした。この
懸濁液を1,000×g(0℃)で15分間遠心分離
後、上澄みを捨て、さらに沈殿部を洗浄するため上記緩
衝液を40ml添加して再懸濁後、遠心分離する操作を
2回繰り返した。このようにして得た沈殿に同緩衝液を
10ml加えて懸濁後、18meshのフィルターで濾
過した。さらにフィルターを同緩衝液10mlで洗浄
し、結合組織を除去した筋原線維懸濁液を以下の分析に
供した。
【0017】筋原線維の形態観察用試料は、筋原線維懸
濁液1mlに抽出用緩衝液を3ml加え、泡立てないよ
うに静かに混合し調製した。すなわち、この希釈懸濁液
をスライドグラスに1滴落とし、カバーグラスを載せ、
油浸用レンズを用いて位相差顕微鏡で1,000倍で観
察し、写真撮影を行った。
【0018】〔6.MFI(筋原線維の小片化率)〕以
下に記する2つの方法で小片化率の測定を行った。すな
わち、第5項で調製した筋原線維懸濁液のタンパク質濃
度を、牛血清アルブミン(BSA)を標準物質としてビ
ュウレット法で測定し、タンパク質濃度をBSA 0.
5±0.05mg/mlに希釈した。この希釈液を10
×10mmのセルに入れ、ミクロ攪拌子で攪拌しながら
540nmで濁度を測定した。得られた吸光度を100
倍したものをMFIとした(以下、この方法を濁度法と
呼ぶ)。もう1つの方法としては、第5項で撮影した写
真中の全筋原線維数に占める1〜4個のサルコメアから
なる筋原線維数のパーセントを求め、これをMFIとし
た(以下、個数法と呼ぶ)。
【0019】〔7.SDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動〕タンパク質のサブユニット組成は、LAEMM
LI法(Nature,227:680−685,19
70)によるドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動法(SDS−PAGEと略)により分
析した。すなわち、第5項で得た筋原線維に8M Ur
ea、2.5%SDS、1mM DTT、10mM T
ris−HCl緩衝液(pH8.0)を等量添加し、沸
騰水中で2分間の変性処理を行った。ゲルは濃縮ゲル濃
度5.0%、分離ゲル濃度12.5%とし、タンパク質
量30μgをゲルに挿入した。泳動は、最初10mAで
約1時間、次に40mAで約3時間行った。染色はCo
omassie BriliantBlue−R250
を用いて行った。染色終了後のゲルを10%酢酸と8%
メタノールの混合溶液で十分に脱色して、デンシトメー
ター(島津2波長クロマトスキャナ CS−930)で
各バンドの濃度比を測定し、アクチンに対する割合から
30KDを算出し、定量した。
【0020】後記する実施例からも明らかなように、こ
れら各種の物理化学的特性は何れも貯蔵11日目までは
比較的顕著に変化し、SFVとIMPは減少し、MF
I、Hx及びK値は増加の傾向を示した。さらにSDS
−PAGEの結果、30KDも貯蔵4日目から認めら
れ、その濃度は貯蔵中、次第に増加する傾向を示した。
これらの変化は食味性が良好となる時期と一致するた
め、このときに熟成効果は最大に達していると考えられ
た。SFV以外の特性は何れも、後期熟成中も同様な傾
向で変化し続けることから、これらの特性は、由来不明
の牛肉の熟度を幅広く推定するための指標として最適で
あることが判明した。
【0021】以下、実施例により本発明を更に詳しく説
明する。
【0022】〔実施例1〕 〔A.試料と熟成条件〕生体重が741kg(個体N
o.I)と745kg(No.II)の2頭のホルスタイ
ン種去勢牛をと殺し、枝肉を0〜2℃に3日間保管後、
ロイン部(サーロインとリブロースを含む)をそれぞれ
の個体から左右合わせて2本ずつ採取した。採取肉は背
脂肪を10〜15mmの厚みに整形後、約40mmの厚
さにカットし、すべてPVDC(ポリ塩化ビニリデン)
製フィルム(厚さ80μ)の袋で真空包装した。このよ
うにして調製した試料を2℃で31日間貯蔵して熟成
し、貯蔵中の肉の諸性質の変化を、4、11、14、及
び31日目に測定した。
【0023】〔B.結果〕本実施例において使用した牛
の肥育期間は2頭とも同じ399日間で、生体重もほと
んど一緒であった。枝肉解体後の供試肉は、実施例開始
時にはすでに死後4日を経過していた。本実施例では、
これを更に2℃で31日間貯蔵し、前記したところにし
たがい、熟成中の肉のSFV(剪断力価)、MFI(筋
原線維の小片化率)、30KD、及びATP関連化合物
の変化を分析し、熟成肉の食味評価を前提に、長期熟成
における熟度指標として、何れの特性が有効であるかを
明らかにした。各分析値の結果は、2個体の測定値を平
均して示した。
【0024】〔1.官能評価〕2℃で貯蔵中の牛肉の食
味性の変化を、図1に示した。2個体とも貯蔵11〜1
4日までは、熟成の進行と共に柔らかさ(Tender
ness)と香味(Flavour)の向上がみられた
が、液汁性(Juiciness)はこれら官能特性の
変化と異なり、貯蔵の進行に伴う変化がはっきりと検出
されず、評価にもバラツキが見られた。
【0025】〔2.SFV(剪断力価)〕牛肉のSFV
は図2に示したように、貯蔵中に低下し、熟成により肉
の軟化が進んでいることを示していた。特に貯蔵11日
目までのSFVの低下は顕著であったが、14日以降に
なると、その変化は少なくなり、ほぼ一定値を示すよう
になった。この結果は、図1の官能評価による貯蔵中の
肉の柔らかさの変化とよく一致した。
【0026】〔3.ATP関連化合物とK値〕2℃で貯
蔵中のATP関連化合物の変化を、それぞれ図3に示し
た。貯蔵期間中、IMP(イノシン酸)が減少傾向にあ
ったのに対して、Hx(ヒポキサンチン)とK値(全A
TP関連化合物総量に対するHxR(イノシン)とHx
(ヒポキサンチン)の合計量の百分率)は増加傾向にあ
った。
【0027】〔4.筋原線維の形態観察とMFI(小片
化率)〕牛肉貯蔵中の筋原線維の形態変化を図4に示し
た。筋原線維は貯蔵日数の進行に伴い、小さな断片に分
かれ、サルコメアが4個以下の細かな筋原線維が数多く
見られるようになり、更に貯蔵31日目になると、小片
化した筋原線維の割合が著しく増した。
【0028】次に、顕微鏡観察した筋原線維の小片化の
程度を濁度法と個数法とで測定してMFI(筋原線維の
小片化率)を求め、図5に示した。何れの方法で測定し
たMFIも、貯蔵11日目まではMFIの上昇が見ら
れ、図4の筋原線維の形態変化とよく対応していた。し
かし、その後31日目までの変化を見ると、濁度法によ
るMFIはほとんど変化せず横ばいとなるため、この方
法では図4で観察した熟成後半の筋原線維の顕著な小片
化の状態を表せないことが分かった。一方、個数法で求
めたMFIは、熟成後半も増加し続け、実際の筋原線維
の形態観察の結果と良く一致しているため、後期熟成中
も含め幅広い範囲で貯蔵中のMFIを表すためには、個
数法による方法が濁度法よりも好ましいことが明らかと
なった。
【0029】〔5.筋原線維のタンパク質サブユニット
組成と30KD〕貯蔵中の牛肉の筋原線維のタンパク質
サブユニット組成の変化をSDS−PAGEで分析し、
泳動バンドの結果を図6に示した。貯蔵4日目に分子量
29Kダルトン付近に新しいバンドが出現した。貯蔵日
数が進むにつれて、このバンドは鮮明になったが、逆に
分子量37Kダルトンのトロポニン−Tのバンドは薄く
なって行く傾向にあった。この新しく出現した成分は分
子量マーカーの位置から推定して、30KDと考えられ
た。そこで、30KDをデンシトメーターで定量し、貯
蔵中の変化を求めた。牛肉貯蔵中、アクチン含量は変化
せず一定であることから、30KDはアクチンのピーク
濃度に対する割合から定量した。その結果、図7に示す
ように、熟成中、30KDはほぼ直線的に増加して行く
ことが分かった。
【0030】本実施例から明らかなように、本発明に係
る熟度指標の内、特に、SFVと濁度法によるMFI
は、食味適期になり始める貯蔵前半(熟成前期:本実施
例においては貯蔵11日(死後15日)までの期間)ま
ではすぐれた熟度指標となり得ることが判る。一方、前
期のみならず後期熟成中もIMFは減少、Hx、K値、
個数法によるMFI及び30KDは増加傾向にあるた
め、これらの特性は熟成後期の熟度指標として最適であ
り、また、熟成期間全般に亘る熟度指標としても非常に
すぐれていることが判る。
【0031】以上のことから、本発明によれば、由来が
不明の牛肉の熟度判定には、例えばIMP含量、Hx含
量、K値、MFI、30KD含量の少なくとも一つ以上
の定量が好ましく、これにSFVの測定を付け加えると
熟成前期の熟度もさらに詳細に判定できることが実証さ
れた。なおATP関連化合物の中で、ATP、ADP及
びAMPの含量が少ないことから、ATP、ADP及び
AMPを考慮せずに、K値を簡略化した指標としてK1
値=(HxR+Hx)×100/IMP+HxR+H
x、更にHxRも考慮せずに表わしたK2値=Hx×1
00/IMP+Hxが容易に求められるが、これらの特
性もK値同様に有効な熟度指標となることは言うまでも
ない。
【0032】
【発明の効果】本発明によって、牛肉の熟度判定という
きわめて官能的な領域において、熟度をIMP含量、H
x含量、K値、MFI、30KD含量のいずれか一つ以
上の測定という科学的な方法によって的確に判断するこ
とがはじめて可能となった。そのうえ本発明によれば、
非常に長い貯蔵熟成期間中の熟度も科学的に正確に且つ
簡便に判定することができる。
【0033】したがって本発明によれば、熟成期間の不
明な牛肉の熟度を幅広い期間で的確に判定することがで
き、従来熟成度が不明な場合が多かった輸入冷凍牛肉に
も的確に対応することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】牛肉を2℃で31日間貯蔵した場合の官能評価
(柔らかさ、香味の強さ、液汁性)の変化を示したグラ
フである。
【図2】図1と同期間貯蔵した貯蔵期間の経過に伴う剪
断力価(SFV)の変化を示したグラフである。
【図3】図1と同期間貯蔵した貯蔵期間の経過に伴うイ
ノシン酸(IMP)、ヒポキサンチン(Hx)及びK値
(全ATP関連化合物総量に対するイノシン(HxR)
とヒポキサンチン(Hx)の合計量の百分率)の変化を
示したグラフである。
【図4】2℃で31日間貯蔵中の牛肉サーロインから調
製した筋原線維(MF)の位相差顕微鏡写真(×100
0)である。写真中、(a)〜(e)は個体No.Iの
サーロインから調製した筋原線維で、(a)は貯蔵0日
後(と殺4日後);(b)は貯蔵4日後(と殺8日
後);(c)は貯蔵11日後(と殺15日後);(d)
は貯蔵14日後(と殺18日後);(e)は貯蔵31日
後(と殺35日後)における筋原線維の位相差顕微鏡写
真である。
【図5】上図4で調製した筋原線維の貯蔵期間の経過に
伴う筋原線維の小片化率(MFI)の変化を示したグラ
フである。なお、MFIは濁度法と個数法によって測定
した。
【図6】上図4で調製した筋原線維の貯蔵期間の経過に
伴う蛋白質サブユニット組成の変化をSDS−PAGE
で測定し、その結果得られた泳動バンドのパターンを図
示したものである。なお、(a)〜(e)は個体No.
I、(f)〜(j)は個体No.IIのサーロインから調
製した筋原線維で、(a)〜(e)の各符号は図4と同
じ意味を表し、(f)〜(j)もこれらの記号に対応す
る。MHCはミオシン重鎖、Actinはアクチン、T
N−Tはトロポニン−T、及び30KDは30,000
ダルトン成分を表わし、分離ゲル濃度5.0%、濃縮ゲ
ル濃度12.5%として調製し、蛋白質量30μgをゲ
ルに挿入し、電気泳動を実施した。
【図7】2℃で31日間貯蔵中の牛肉サーロインから調
製した筋原線維の貯蔵期間の経過に伴う30KD成分の
変化を図示したグラフである。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 牛肉の肉片中の筋原線維の小片化率(M
    FI)、ATP関連化合物、30キロダルトン成分(3
    0KD)のいずれか1つ以上を測定することを特徴とす
    る牛肉の熟度測定方法。
  2. 【請求項2】 ATP関連化合物として、イノシン(I
    MP)、ヒポキサンチン(Hx)、これらの値から算出
    されるK値(全ATP関連化合物総量に対するイノシン
    (HxR)とヒポキサンチン(Hx)の合計量の百分
    率)のいずれか1つ以上を測定することを特徴とする請
    求項1の方法。
  3. 【請求項3】 請求項1の測定を熟成期間全般に亘って
    行うことを特徴とする熟成期間全般における牛肉の熟度
    測定方法。
  4. 【請求項4】 牛肉の熟成前期において該肉片中の剪断
    力価(SFV)を測定することを特徴とする請求項1の
    方法。
  5. 【請求項5】 牛肉の熟成後期において該肉片中のMF
    I、ATP関連化合物、30kDのいずれか1つ以上を
    測定することを特徴とする請求項1の方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017031119A (ja) * 2015-08-05 2017-02-09 学校法人北里研究所 豚肉の熟成中に生成する生理活性ペプチドを含む血圧降下剤及び食品、並びにペプチドを指標とする豚肉の熟成評価法
WO2020009183A1 (ja) * 2018-07-05 2020-01-09 ダイキン工業株式会社 庫内環境制御システム

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