JPH024568Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は伸縮性を備えた編布、織布、不織布な
どの素材を甲皮全面に用いて成る主として婦人用
に供する靴に関する。

従来より天然皮革、合成皮革或いは麻、木綿の
糸で織成された所謂ズツク製の伸びない甲皮を備
えた靴は周知されるところである。

斯かる従来の靴はスリツプオン形式のものや紐
締括形式の靴が主たるものであるが、いずれも伸
縮性素材を、靴底を皮革製、ゴム製とした靴の甲
皮として用いること自体、靴の形状変化に伴う型
崩れ、足型の外部への露呈、耐久性不良或いは疲
労感等の観点から靴本来の機能を損なうために実
用化に至つておらず、従つて在来の伸縮しない履
き口を有した靴では、足首への食い込みによる靴
擦れが生起し易く、継続して履いた場合には履き
口の締付による疲労感を増大させ、軽快な履心地
が得られぬものであつた。更に足首にフイツトさ
せれば甲皮の性質上必然血行障害が起こり、循環
機能を害する虞れが多いものであつた。

本考案に於いては前記従来の欠陥を防止すると
共に、柔らかく足首を包む如くフイツトさせ、伸
縮性甲皮であるに拘らず安定した、また型崩れの
ない履心地を顕著に向上させた部分的に補強され
た伸縮性甲皮を備えた靴を提供するものであつ
て、すなわち本考案の要旨は、伸縮性素材より成
る甲皮１の裏面両側部に、甲皮１の爪先部４より
甲皮１の踵部５後端に至る補強片２を内張りする
と共に、該補強片２の上縁６が実質的に履き口周
縁３より下方に位置し、少なくとも履き口周縁３
に伸縮性を保持させたことを特徴とする部分的に
補強された伸縮性甲皮を備えた靴に係る。

本考案に於ける実施に際する一例を次ぎに詳説
する。

Ａは靴本体であつて、該靴本体Ａは皮革製、ゴ
ム製或いは合成樹脂製の靴底８と、この靴底８の
上周縁と中底７との間に下縁が吊込貼着或いは縫
着一体化された甲皮１と、該甲皮１の裏面、即ち
足側と接する面の両側部に部分的に形成される補
強片２とによつて構成されている。

前記甲皮１は例えば弾性繊維入りの編布等の伸
縮性を持つた素材で以つて、足の甲部と踵部の全
面を覆う立体的な適宜形状に形成されると共に、
上面には足を挿入する履き口が開口されている。

図示される形状に促われる必要はないが、実施
例では両側部分を夫々放物線状に突出させた伸縮
性素材より成る短冊状片を長手方向中心線で折半
した船形片をヘヤーピン状に弯曲させ、船形片の
直線辺両端部の適当長の直線辺部分を夫々突き合
わせて接合しループ状に作成して甲皮１が形成さ
れている。

而して斯かる伸縮性のある甲皮１の裏面、即ち
足側と接する面の左右両側部に沿つて、補強片２
を配するのであるが、この際、当該補強片２は甲
皮１に於ける爪先部４乃至踵部５の後端までを充
分に覆う長さを備えており、そして補強片２は踵
部５後端より爪先部４の後方部分に向うに従つ
て、漸次広幅状に伸縮性甲皮１が現出するよう
に、補強片２の上縁６が実質的に履き口周縁３よ
り下方に位置する部分に配設されて甲皮１と縫着
およびまたは接着一体化されており、少なくとも
履き口周縁３に沿う広い部分が伸縮性の現れた甲
皮１の部分となさしめ、裏面の補強片２が至つて
いない構成とされている。

そうして当該補強片２は、弾性繊維入りの編
布、織布または不織布などの伸縮性素材、或いは
天然皮革、合成皮革などの非伸縮性素材によるも
の等が適用され、更に第４図に示すように甲皮１
が二つ折り若しくは二枚以上重層されている場合
は、該補強片２を甲皮１間に介在させて一体形成
することも出来る。

第５図に示す実施例では靴主体Ａの中程である
爪先部４と踵部５の中間部位の端面図を表すもの
であるが、補強片２の上縁６は甲皮１に於ける下
端Ｘと履き口周縁３である上端Ｙとの略1/2の高
さを通る構成となつているが、実用上好ましくは
甲皮１の下端Ｘから1/2乃至2/3程度の高さの範囲
が優れており、1/2より下に上縁６が位置すると
室外用靴としては柔らか過ぎて履心地が不安定と
なり、足首を確実にホールドせず疲労感を奏する
ものとなり、また2/3より上に上縁６が位置する
と逆に甲皮１の伸縮性が不足し在来の靴と酷似し
た欠陥が現出するが、甲皮１と任意の補強片２と
の組合わせ方如何でその上縁６の範囲は変動する
ものとなる。

本考案の靴は叙上のように甲皮１全面を伸縮性
素材で製出し、その裏面の爪先部４から踵部５後
端に亘る両側部に補強片２を内張りし、履き口周
縁３を含む甲皮１の上部には補強片２を介在させ
ないものであつて、これがため甲皮１に強度と柔
軟性とが生起することとなり、従つて足首を柔ら
かく而も確実にフイツトさせて保持し、足首の内
転や外転を防止することが出来、更に足指の形状
に沿つて甲皮１が過度に膨隆しないもので保型性
を高め型崩れを阻止するものとなる。また甲皮１
が伸縮すれば靴底８への吊込等に耐久しないが、
補強片２を用いることでこれが解消出来る。

更にまた伸縮性の補強片２を内張りした場合
は、極めて柔軟で軽快且つ甲皮１全体にフイツト
性が現れたソフトな履心地となり、また非伸縮性
の補強片２を内張りした場合は、保型性に優れる
利点があるが、何れも履き口周縁３は足首面と面
状で且つ柔らかく円滑にフイツトする履心地とな
り履き易い利便を有する。

そして靴主体Ａの表面は伸縮性の甲皮１がその
まま全面に現出しているので、段差のない平滑な
甲皮外観となり縫目の露呈も防止出来る。

尚、必要に応じて爪先部内面に先芯９、踵部内
面に月型１０を装入すれば、靴の甲皮側面を強靭
化したフイツト性靴が生まれる。

【図面の簡単な説明】

第１図は平面図、第２図は一部切欠側面図、第
３図は第２図ａ−ａ線端面図、第４図は同他の実
施例による端面図、第５図は補強片の位置関係を
示す説明図、第６図は他の実施例による一部切欠
側面図である。 Ａ……靴主体、１……甲皮、２……補強片、３
……履き口周縁、４……爪先部、５……踵部、６
……上縁、７……中底。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 伸縮性素材より成る甲皮１の裏面両側部に、甲
   皮１の爪先部４より甲皮１の踵部５後端に至る補
   強片２を内張りすると共に、該補強片２の上縁６
   が実質的に履き口周縁３より下方に位置し、少な
   くとも履き口周縁３に伸縮性を保持させたことを
   特徴とする部分的に補強された伸縮性甲皮を備え
   た靴。