JPH0216030Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案は、渦流燃焼室式デイーゼル機関に係
り、特に、アイドリング時において着火遅れに伴
つて発生する騒音を可及的に低減すると共に、炭
化水素の発生をも低減できる渦流燃焼室式デイー
ゼル機関に関するものである。

〔考案の技術的背景とその問題点〕

一般に渦流燃焼室式デイーゼル機関にあつて
は、第１図に示す如くシリンダボデーｄ上部に載
置されたシリンダヘツド１内に形成され、ピスト
ンＰが嵌装されて主燃焼室となるシリンダ室２と
連通された渦流室３を有し、この渦流室３内に燃
料を噴射すべく燃料噴射ノズル４がこれに臨んで
設けられている。また、冷間時の始動性を促進さ
せるためのグロープラグ５も設けられている。渦
流室３は、これに噴射された燃料を圧縮空気と充
分に混合させるため、その室内に圧縮空気の渦流
Ｓを生じさせるように構成されている。

ところで、一般にデイーゼル機関では着火遅れ
が長いと急激な燃焼が起こり、騒音の発生、及び
未燃焼や不完全燃焼による排ガス中の炭化水素成
分の濃度が高くなるという問題がある。特にアイ
ドリング時では機関全体の温度も低くなつている
ため、燃料自体の着火性が悪く、その傾向が顕著
となる。

そこで、上述の如き渦流燃焼室式デイーゼル機
関ではその対策として、小量の予行噴射を行う副
噴口ノズルを採用し、その着火性を高めるものが
知られている。

この予行噴射は、渦流室の側壁の、副噴口に近
い箇所に向けて、これに衝突させるように行われ
る。

しかし乍ら、従来ではその予行噴射の方向に対
して上述の如き衝突面が比較的傾斜した状態に形
成されており（第２図に仮想線で図示）、衝突面
に衝突した燃料はその噴射勢い（貫撤力）が充分
減衰されずに反射して前述の圧縮空気の渦流の中
に巻き込まれ、充分に霧化されないという問題が
あつた。即ち、着火遅れが充分に短縮されず、従
つて騒音、特にアイドリング時の騒音が低減され
ず、また排ガス中の炭化水素成分の濃度も充分に
低減されないという問題があつた。

このような問題を克服するために第２図に示す
ような渦流燃焼室式デイーゼル機関が試みられて
いる。即ち、第２図において、シリンダヘツド１
内に渦流室３が形成され、シリンダ室２に連通し
ている。

渦流室３に臨んで設けられる副噴口付燃料噴射
ノズル４はシリンダヘツド１に形成されたノズル
孔６内に挿入され、渦流室３の側壁７の熱から保
護されるよう、遮熱部材（ヒートシールド）８及
びガスケツト８ａを介してシリンダヘツド１に支
持されている。

噴射ノズル４は、針弁４１の摺動により燃料供
給、遮断を行なうものであり、その軸方向に沿つ
て主噴口９を有し、副噴口１０は主噴口９よりも
小さな口径で上記軸方向に対して傾斜した方向に
向つて開口されている。

副噴口１０からの噴射方向（第２図で軸線Ｘ−
Ｘで示す）には渦流室３からノズル孔６へと側壁
７が連続する境界部分が位置し、そこに上記噴射
方向に対して略垂直な平面で衝突面１１が形成さ
れている。尚、５は始動性促進のためのグロープ
ラグである。

上述のように構成された渦流燃焼室式デイーゼ
ル機関においてはピストンの上昇に伴つて渦流室
３内に、その側壁７に沿つて圧縮空気の強い渦流
が生ずる。この渦流中に主噴口９から燃料が噴射
される寸前に、副噴口１０から小量の予行噴射を
行う。この予行噴射は、副噴口１０の口径が小さ
いので粒径の小さな液滴群となつて衝突面１１に
吹き付けられる。衝突面１１は、予行噴射の方向
に対して略垂直な面に形成されているので、その
燃料は反射した後に二次飛散による微粒子化が進
み、着火しやすくなる。更にその分布は、渦流の
影響が比較的少ないノズル孔６側に集中するので
渦流内に巻き込まれる量も少なく、着火性を維持
したままノズル孔６と渦流室３の境界部周辺に存
在することになる。

この状態で主噴口１０から渦流室３内、乃至グ
ロープラグ５周辺に主な燃料が噴射される。この
燃料は強い渦流により圧縮空気との混合が充分に
行われ、渦流室３内で略均一に分布する。

従つて、予行噴射によつて噴射された燃料は着
火性が高められて着火遅れを短縮し、主噴口９か
ら噴射された大部分の燃料は均質で緩かな完全燃
焼をすることになり、騒音は低減され、且つ炭化
水素成分の濃度も低減されることになる。

以上の説明より明らかなように、第２図におけ
る渦流室を有する渦流燃焼室式デイーゼル機関で
は、 (1) 着火遅れに伴つて発生する騒音特にアイドリ
ング時の騒音を可及的に低減することができ
る。

(2) 未燃焼乃至不完全燃焼により発生する排ガス
中の炭化水素成分の濃度を可及的に低減するこ
とができる。

という利点がある反面、シリンダヘツド１の構造
が複雑となり、量産性が低下すると共に、価格が
上昇するという欠点がある。尚、関連する技術と
して、「渦流室式燃焼室」（実開昭55−39338号公
報）が提案されている。

なお、関連技術として「エンジンのうず流室式
燃焼装置」（実開昭57−176622号公報）の提案が
ある。

この提案は、主燃焼室と渦流室とを連通させる
連通孔から燃料噴射ノズルに至る流入空気の中間
にグロープラグを設け、そのグロープラグに向け
て副噴口を開口したものである。しかし、副噴口
からグロープラグまでの距離が長くなるために燃
料噴霧が拡散し、直接グロープラグで蒸発される
燃料の総量が減少する課題がある。つまり、副噴
口から噴射された燃料の大部分が渦流によつて下
流へ運ばれるためにグロープラグ付近に着火性、
火炎伝播性の良い混合気を分布（滞留）させてお
くことが困難になり、燃焼未燃焼物、燃焼騒音の
大巾な低減が期待しにくいという問題がある。

本考案は、上述の如き問題点に鑑みて、これら
を有効に解決すべく創案されたものである。

本考案の目的は、渦流燃焼室の構造が極めて簡
単で、量産に適し且つ安価であるという条件のも
とに着火遅れに伴つて発生する騒音、特にアイド
リング時の騒音を可及的に低減すると共に、排ガ
ス中の炭化水素成分の濃度をも低減することがで
きるという渦流燃焼室式デイーゼル機関を提案す
ることにある。

〔課題を解決するための手段〕

この考案は上記課題を解決するために、シリン
ダヘツド内に渦流室を形成すると共に、渦流室の
外方に渦流室内に連通させてノズル孔を形成し、
該ノズル孔上部にノズル孔を通じて渦流室内へ燃
料を噴射する主噴口及びノズル孔内に燃料を予行
噴射する副噴口を有した副噴口ノズルを設け、上
記ノズル孔の渦流室側に副噴口の軸線と略垂直に
グロープラグを対向配設したものである。

〔作用〕

ノズル孔の渦流室側に副噴口の軸線と略垂直に
グロープラグを配設すると、ノズル孔を渦流室内
に連通させつつも渦流室内を旋回する渦流に対し
てノズル孔が個別の空間を形成する。つまりノズ
ル孔は渦流の外方にあり、渦流の影響を受けにく
くなるのである。この結果、副噴口から微粒子化
されて噴射された燃料は、グロープラグへ到達す
るまでの距離が、上記従来例（実開昭57−176622
号）に対して大巾に短縮され、グロープラグに対
する噴霧の広がりは相対的に小となる。これゆえ
噴霧のほとんどがグロープラグに衝突する。グロ
ープラグは、副噴口からの燃料の一部分をノズル
孔内の上方、つまり副噴口側へ反射させ、残部を
蒸発する。この結果、ノズル孔内には、衝突によ
つてさらに細かく微粒子化され、ノズル孔および
渦流室内雰囲気そしてグロープラグの加熱によつ
て蒸発された燃料の蒸気が分布することになる。
即ちノズル孔内には、着火と火炎伝播に優れた混
合気が分布（滞留）することになる。またグロー
プラグがノズル孔の渦流室側に副噴口の軸線と略
垂直に配設されると、渦流室内の渦流によどみを
生じさせることができるからノズル孔内に生成さ
れた混合気が渦流に巻込まれることがない。

他方主噴口は、上記副噴口に対し時間的に遅れ
てノズル孔を通じて渦流室に噴射され、その燃料
は渦流室内の渦流に巻込まれつつ蒸発し、渦流室
内に混合気として分散分布する。

このようにノズル孔内に、着火及び火炎伝播の
良い混合気を生成すると共に、渦流室内に、機関
の出力を得るに適した量の混合気を生成し、そし
て渦流室、ノズル孔の間に混合気の生成を促進し
かつ、安定した火炎核の形成に寄与するグロープ
ラグを配設したから、燃焼に着火遅れがなくな
り、良好な火炎伝播燃焼が行われて燃焼未燃焼物
の排出量が大巾に低減し、燃焼騒音が大巾に低減
するようになる。

〔考案の実施例〕

以下に本考案の好適一実施例について、第３図
に従つて説明する。

第３図は、本考案に係るデイーゼル機関の渦流
室を示すが、第２図の従来試みられている渦流室
３と異なるところは、副噴口１０からの噴射方向
（第３図で軸線O₁−O₁で示す）に対して略垂直な
方向（同図で軸線O₂−O₂で示す）に、グロープ
ラグ５を配設した点にある。

従つて、シリンダヘツド１が複雑な構造になら
ず、単に、グロープラグ５の配設位置を変更する
のみで良いので、第２図の従来試みられている渦
流室３の利点及び効果を全て備えると同時に、燃
焼室（シリンダヘツド）の構造が簡単で量産に適
し、価格が低減されるという効果がもたらされる
ものである。

〔考案の効果〕

以上の説明より明らかなように本考案によれば
次の如き優れた効果が発揮される。

(1) シリンダヘツド内に渦流室を形成すると共
に、渦流室の外方に渦流室内と連通するノズル
孔を形成し、このノズル孔上部にノズル孔を通
じて渦流室内へ燃料を噴射する主噴口及びノズ
ル孔内に燃料を予行噴射する副噴口を有した副
噴口ノズルを設け、上記ノズル孔の渦流室側に
副噴口の軸線と略垂直にグロープラグを対向配
設した結果、ノズル孔内に、渦流室内へ流出す
ることのない着火及び火炎伝播性の良い混合気
を生成でき、渦流室内に機関の出力を得るに適
した混合気を生成できるから、燃焼に着火遅れ
がなくなる。この結果良好な火炎伝播燃焼が行
われて燃焼未燃焼物の排出量を大巾に低減で
き、燃焼騒音を大巾に低減できる。

(2) 構造が簡単で量産に適し、価格が低減でき
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、渦流燃焼室式デイーゼル機関の概略
構成図、第２図は従来試みられている渦流室を示
す側断面図、第３図は本考案の一実施例を示す側
断面図である。 尚、図中１はシリンダヘツド、２はシリンダ
室、３は渦流室、４は副噴口付燃料噴射ノズル、
５はグロープラグ、６はノズル孔、７は渦流室の
側壁、８は遮熱部材、１０は副噴口、１１は衝突
面である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダヘツド内に渦流室を形成すると共に、
   渦流室の外方に渦流室内と連通するノズル孔を形
   成し、該ノズル孔上部にノズル孔を通じて渦流室
   内へ燃料を噴射する主噴口及びノズル孔内に燃料
   を予行噴射する副噴口を有した副噴口ノズルを設
   け、上記ノズル孔の渦流室側に副噴口の軸線と略
   垂直にグロープラグを対向配設した渦流燃焼室式
   デイーゼル機関。