JP7846612B2 - ヒノキ花粉抗原Cha o 2に対するモノクローナル抗体及びその用途 - Google Patents
ヒノキ花粉抗原Cha o 2に対するモノクローナル抗体及びその用途Info
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Description
(1) ヒノキ花粉アレルゲンCha o 2に対するモノクローナル抗体であって、Cha o 1に反応しない、前記モノクローナル抗体。
(2)スギ花粉アレルゲンCry j 2に反応しない、(1)に記載のモノクローナル抗体。
(3)スギ花粉アレルゲンCry j 2に反応する、(1)に記載のモノクローナル抗体。
(4) 配列番号2~6に示されるいずれかのアミノ酸配列の全部又は一部をエピトープとして認識する、(1)~(3)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
(5)(2)に記載のモノクローナル抗体と組み合わせたときのCha o 2の最低検出濃度が5ng/mL以下である(3)に記載のモノクローナル抗体。
(6)(3)に記載のモノクローナル抗体と組み合わせたときのCha o 2の最低検出濃度が5ng/mL以下である(2)に記載のモノクローナル抗体。
(7) 変動係数が20%以下の再現性を有する、(1)~(6)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
(8)(1)~(7)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合する抗体。
(9)(1)~(7)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、又は(8)に記載の抗体の断片。
(10)(1)~(7)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
(11)(1)~(7)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体若しくは(8)に記載の抗体、又はこれらの断片と試料とを反応させて、Cha o 2を検出することを特徴とする、Cha o 2の検出方法。
(12)(1)~(7)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体若しくは(8)に記載の抗体、又はこれらの断片を含む、Cha o 2の検出用キット。
本発明によって製造されるCha o 2特異的モノクローナル抗体は,検体中のヒノキ花粉抗原Cha o 2を高感度で認識する特徴を持ち, Western blotting法, ELISA法, Sandwich ELISA法などの免疫学的測定法に広く応用可能であることから,試薬やキットでの使用等,広い利点・有用性を有する。なお、本明細書においてCha o 2などの抗原を「認識する」とは、抗原と「反応する」、抗原と「結合する」と同義で用いることができる。
本発明のモノクローナル抗体(「抗Cha o 2抗体」ともいう)を得る方法としては、まず、Cha o 2抗原タンパク質又はCha o 2タンパク質の部分ペプチドを用いて非ヒト哺乳動物を免疫し、免疫動物から抗体産生細胞(例えばB細胞)を採取する。この抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させ、ハイブリドーマ(融合細胞株)を作製する。そして、このハイブリドーマから産生される抗体を採取することにより、目的のモノクローナル抗体を得る。
本発明においては、Cha o 2の全長タンパク質を免疫抗原として用いる。Cha o 2の全長タンパク質は、ヒノキ花粉の抽出液から各種カラムクロマトグラフィーによる精製方法を組合わせることにより得ることができる。組み換えタンパク質として大腸菌又はその他の宿主細胞で発現させ、その抽出液から各種クロマトグラフィーによる精製方法を組み合わせることにより得ることもできる。また本発明においては、部分ペプチドを合成し免疫抗原として用いることもできる。
抗原として使用できるペプチドは、Cha o 2の全長配列(配列番号1)又は一部の配列を有するペプチドである。一部の配列の場合は、Cha o 2の全長アミノ酸配列のうち、第113番目~第314番目の配列(配列番号2)から選択することができる。本発明の場合は、例えば113番目~132番目の領域のペプチド(配列番号3)、第288番目~307番目の領域のペプチド(配列番号4)、あるいは第295番目~314番目の領域のペプチド(配列番号5)も使用することができる。さらに、上記領域のペプチドのうち、アミノ酸配列が共通する第295番目~307番目のペプチド(配列番号6)を使用することもできる。
ペプチドの化学合成は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の、当業者に公知の方法によって行うことができる。
キャリアタンパク質は、BSA(Bovin serum albumin)、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)、OVA(Ovalbumin)等が挙げられる。
免疫する非ヒト哺乳動物の種類は特に限定されるものではなく、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ヤギ等などが挙げられ、マウスが好ましい。
抗原の動物1匹あたりの投与量は、全体で10~150μgである。抗原を免疫する際は、アジュバントと抗原溶液を混ぜることが一般的であり、アジュバントの種類としては、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、水酸化アルミニウムアジュバント等が挙げられる。免疫は、主として静脈内、皮下、腹腔内、筋中、足蹠皮下等に注入することにより行う。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔、好ましくは2~3週間間隔で、1~10回、好ましくは2~5回免疫を行う。
抗体産生細胞は、免疫した非ヒト哺乳動物の脾臓細胞等又は所属リンパ節等から調製する。リンパ節は、例えば腸骨リンパ節、鼠径部リンパ節などが挙げられる。採取した細胞集団から特に抗体産生細胞の分離操作を行わなくてもよいが、細胞集団の中から抗体産生細胞のみを分離することが好ましい。但し、抗体産生細胞を調製する際には、組織の残骸や赤血球をできる限り除いておくことが好ましい。
細胞融合は、上記の抗体産生細胞と骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)とを融合させ、抗体を産生しながら半永久的に増え続ける細胞(ハイブリドーマ)を作製するために行う作業である。当業者であれば、公知の細胞融合方法を用いて、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることができる。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞として、マウスなどの動物の一般に入手可能な細胞株を使用することができる。使用する細胞株としては、HAT選択培地(ヒポキサンチン、チミジン、アミノプテリンを含む培地)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。ミエローマ細胞としては、例えばSP 2/0、P3U1、NS I、P3-X63-Ag8.653等が挙げられる。
融合後、例えば10~20% FCS含有RPMI1640培地などで作製したHAT培地で細胞を希釈後、96穴培養プレートの各ウェルに0.5~3×105個ずつ細胞を播き込み、CO2インキュベーターで培養する。
次に、細胞融合処理後の細胞から目的とする抗体を産生するハイブリドーマを選別する。細胞融合から10~14日後に、HAT培地で選択された細胞がコロニーを形成する。そのコロニー陽性96穴培養プレートの各ウェルの培養上清を採取して、Cha o 2に対する抗体価を確認する。確認方法としては、酵素免疫測定法(ELISA)や放射性免疫測定法(RIA)等で行う。部分ペプチドとキャリア蛋白質の結合体を免疫抗原とした場合、細胞から産生される抗体にはキャリアタンパク質であるKLHやBSAに対する抗体も含まれるので、KLH等に対する抗体価を測定することで、KLH等に対する抗体価の高いKLH抗体陽性ウェルを除くことができる。
本発明においては、樹立されたハイブリドーマとして11クローンが得られ、「2D6-2C3」「9A11-1F8」「3A8-2F2」「4H5-3C3」「8G10-1H7」「4G6-1D6」「9E12-2B7」「4F6-4B11」「5A8-4B2」「3E1-1C8」「6H5-2F2」と命名した。
樹立したハイブリドーマ株からは、以下の方法によりCha o 2特異的なモノクローナル抗体を精製及び採取する。すなわち、血清の濃度を抑えた培地で培養した培養上清から抗体を調製する方法、市販の無血清培地で培養した培養上清から抗体を調製する方法、動物の腹腔内にハイブリドーマを注入して、腹水を採取し、その腹水から抗体を調製する方法等がある。培養上清は、細胞を0.1~4×105個/mLで調製し、1~2週間培養したものから採取する。腹水の場合は、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種系動物の腹腔内にハイブリドーマを0.1~1×107個投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1~2週間後に腹水を採取する。
本発明の抗Cha o 2抗体のエピトープ(抗原決定基)は、抗原であるCha o 2の少なくとも一部であればよく限定はされないが、例えば、第113番目~第314番目の領域のアミノ酸配列(配列番号2)が挙げられる。本発明においては、配列番号1に示されるCha o 2の全長アミノ酸配列のうち、第113番目~132番目のアミノ酸配列:WWAGQCKVVNGRTVCNDRNR(配列番号3)からなる領域又は当該領域の少なくとも一部、第288番目~307番目のアミノ酸配列(NPILINQFYCTSASACQNQR(配列番号4))からなる領域又は当該領域の少なくとも一部、第295番目~314番目のアミノ酸配列(FYCTSASACQNQRSAVQIQG(配列番号5))からなる領域又は当該領域の少なくとも一部、あるいは第295番目~307番目のアミノ酸配列(FYCTSASACQNQR(配列番号6))からなる領域又は当該領域の少なくとも一部であることが好ましい。なかでも、第295番目~第307番目のアミノ酸配列:FYCTSASACQNQR(配列番号6)からなる領域又は当該領域の少なくとも一部がより好ましい。
本発明のモノクローナル抗体は、Cha o 2に特異的に結合する抗体であるが、クローンによっては、スギ花粉アレルゲンCry j 2と反応する抗体(Cry j 2との交差反応性を有する抗体)やCry j 2と反応しない抗体(Cry j 2との交差反応性を有さない抗体)が存在する。本発明においては、これらの態様の抗体のいずれも包含する。
本発明のモノクローナル抗体は、組換え手段により調製され、発現される遺伝子組換え抗体又は抗原結合断片とすることもできる。例えば、本発明の抗Cha o 2抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体であってもよい。本発明の組換え抗体は、重鎖及び軽鎖の組換え発現によって製造することができる。
遺伝子組換え抗体を発現させるには、例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸を有する組換え発現ベクターを、宿主細胞に導入し、当該ベクターが導入された宿主細胞を培養する。そして、当該宿主細胞の培養物から目的の抗体を回収する。抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子を入手し、これらの核酸を発現ベクターに組み込み、宿主細胞に導入するには、当分野で標準的な組換えDNA方法(Green and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2012)を採用することができる。
重鎖可変領域(VH)をコードする核酸(例えばDNA)は、VHをコードするDNAと重鎖定常領域をコードするDNAと発現可能に結合することによって、完全長の重鎖遺伝子に構築させる。また、軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸(例えばDNA)は、VLをコードするDNAと軽鎖定常領域をコードするDNAと発現可能に結合することによって、完全長の軽鎖遺伝子に構築させる。
完全長の軽鎖VH及びVLをコードする核酸が例えばマウスに由来する核酸であり、重鎖及び軽鎖定常領域をコードする核酸がヒトに由来する核酸であれば、マウス-ヒトキメラの抗体又は抗原結合断片となる。ヒト、マウス等由来の重鎖定常領域の核酸配列は、当分野で公知である。
本発明で使用されるCha o 2に対する抗体の断片は、本発明の抗体の一部分の領域を意味し、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、diabody(dibodies)、dsFv、scFv(single chain Fv)などが挙げられる。上記抗体断片は、本発明の抗体を目的に応じて各種タンパク質分解酵素で切断することにより得ることができる。
例えば、Fabは、抗体分子をパパインで処理することにより、F(ab')2は、抗体分子をペプシンで処理することによりそれぞれ得ることができる。また、Fab'は、上記F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することで得ることができる。
dsFvの場合は、抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築する。このDNAを発現ベクターに挿入し、当該発現ベクターを宿主生物に導入して発現させることにより、dsFvを製造することができる。
Cha o 2は、ヒノキ花粉症のアレルゲンとなるため、本発明の抗Cha o 2抗体を試料と反応させ、試料中のCha o 2を測定することにより、Cha o 2を検出することができる。
従って、本発明は、本発明の抗体又はその断片とCha o 2とを反応させて、Cha o 2を検出することを特徴とする、Cha o 2の検出方法を提供する。
また本発明においては、抗Cha o 2抗体をCha o 2の検出用試薬又はキットとして使用することができる。
本発明の抗体は、前記の通りCha o 2と特異的に結合する(Cha o 2と特異的に反応する)抗体であるが、スギ花粉アレルゲンCry j 2と反応する抗体やCry j 2と反応しない抗体を包含する。
この場合、Cry j 2と反応する抗体とCry j 2と反応しない抗体とを組み合わせたときのCha o 2の最低検出濃度は、例えば5ng/mL以下である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
1.1 材料
1.2 試薬
ヒノキ花粉:ヤミゾ花粉研究会又は鳥居薬品
スギ花粉:鳥居薬品
HiTrap Octyl FF:Cytiva
HiTrap SP HP:Cytiva
HiTrap IMAC HP :Cytiva ADJUVANT COMPLETE FREUND:DIFCO
Hybridoma-SFM:GIBCO
NaHCO3:富士フイルム和光純薬
HCl:富士フイルム和光純薬
NaOH:富士フイルム和光純薬
FBS:Biological Industry
Recombinant human IL-6:R&D Systems
D-MEM:富士フイルム和光純薬
Hypoxanthine:SIGMA-ALDRICH
Aminopterin:SIGMA-ALDRICH
Thymidine:富士フイルム和光純薬
PEG 1500:Roche
ペニシリン-ストレプトマイシン-アムホテリシンB懸濁液:富士フイルム和光純薬
Buffer Kit:プロテノバ
硫酸アンモニウム:富士フイルム和光純薬
Oriole Fluorescent Gel Stain:BIO-RAD
TMB ONE:Kem-en-tec
Goat, anti mouse-HRP:R&D systems
Avidin, Horseradish Peroxidase Conjugated(アビジン-HRP):Pierce
PBS:富士フイルム和光純薬
Tween20:純正化学
BSA:Sigma-Aldrich
Tris-Glycine サンプルバッファー(2X):TEFCO
DTT (1,4-Dithiothreitol) :純正化学
Bullet PAGE One Precast Gel, 5-15% (17 well):ナカライテスク
泳動バッファー:富士フイルム和光純薬
Precision plus Protein Dual color Standard:Bio-RAD
10x トリス/グリシン(転写buffer):Bio-RAD
ブロックエース:KAC
ECL Prime RPN2232 :GEヘルスケア
NH4HCO3:富士フイルム和光純薬
NaCl:純正化学
抗Cry j 2抗体(8D6):鳥居薬品
Zeba Spin Desalting Columns (7K MWCO) :Thermo Scientific
96穴マイクロプレート Maxisorp:NUNC
96穴マイクロプレートIMMULON 2HB:Thermo Scientific
Immoblon-PSQ membrane 7x8.4:Millipore
10% FBS, Hybridoma-SFM培地
Hybridoma-SFMに,非働化したFBS 50 mL,ペニシリン-ストレプトマイシン-アムホテリシンB懸濁液を5 mL, 10 μg/mL IL-6を50 μL添加し,全量を500 mLとした。
Hybridoma-SFMに,ペニシリン-ストレプトマイシン-アムホテリシンB懸濁液を5 mL, 10 μg/mL IL-6を50 μL添加し,全量を500 mLとした。
HypoxanthineとThymidineを水で溶かしたものと,Aminopterinを水と1M NaOHで溶解したものをHybridoma-SFM培地に加えた。その際,10%FBSとIL-6(1 ng/mL)を添加した。
10×PBSを10倍希釈し,Tween 20を最終濃度0.05%になるように調製した。
BSAを最終濃度10%になるようにPBS-Tで調製し,-20℃で保存した。使用前に溶解し,PBS-Tで10倍希釈した。
抽出液水にNH4HCO3及びNaClを加え,それぞれの最終濃度が40 mM及び0.5 Mになるように調製した。
クールインキュベータ:三菱電機エンジニアリング株式会社,CN-40A
パーソナルインキュベーター:EYELA(型式:LTI2000)
マイクロプレートリーダー:Molecular Devices,SPECTRAmaxPLUS 384
パワーサプライ:BIO-RAD,POWER PAC 300
バイオイメージアナライザー:GEヘルスケア,Image Quant LAS 4010
転写装置(セミドライ式):BIO-RAD
サンプルボイル:ヒートブロックDry Thermo Unit(DTU-2B)
1.6.1 ヒノキ花粉からのCha o 2の精製
ヒノキ花粉に20倍量の40 mM NH4HCO3を加え,3時間4℃で撹拌し抽出した。撹拌後,20,000 ×gで30分遠心分離した沈殿に20倍量の40 mM NH4HCO3, 0.5 M NaClを加え,3時間4℃で撹拌しCha o 2を抽出した。20%飽和硫安となるように硫酸アンモニウムを添加,一晩4℃で撹拌した。20,000 ×gで30分遠心分離した上清に80%飽和硫安となるように硫酸アンモニウムを添加,4時間4℃で撹拌した。20,000 ×gで30分遠心分離して得た沈殿を2 M硫酸アンモニウム,50 mM Tris-Cl (pH7.8)に透析でバッファー交換を行った。透析後Octyl FFカラムにアプライした。2 M 硫酸アンモニウム,50 mM トリス塩酸緩衝液(pH7.8)から50 mM トリス塩酸緩衝液(pH7.8)となるようにグラジエントで溶出し,Cha o 2画分を回収した。回収した画分を0.5 M NaCl, 30 mM リン酸緩衝液(pH 7.8)に透析しHiTrap IMAC HPにアプライした。0.5 M NaCl, 30 mM リン酸緩衝液(pH 7.8)から0.5 M NaCl,30 mM 酢酸緩衝液 (pH 4.0)となるようグラジエントで溶出し、Cha o 2画分を回収した。回収した画分を0.2 M NaCl, 30 mM 酢酸緩衝液 (ph 4.0)に透析し、HiTrap SP HPにアプライした。0.2 M NaCl, 30 mM 酢酸緩衝液 (ph 4.0)から1 M NaCl,30 mM 酢酸緩衝液(pH 4.0)となるようにグラジエントで溶出し、Cha o 2画分を回収した。回収した画分を精製Cha o 2とし,使用前まで-20℃で保存した。
1.6.2.1 免疫及びハイブリドーマの作製
抗Cha o 2モノクローナル抗体の作製は,マウス腸骨リンパ節法(特開2007-020547号公報)にて作製した。
ヒノキ花粉から精製したCha o 2とFreund’s Complete Adjuvant(FCA)を体積比1:2で混合し,B6D2F1/Slcマウス(日本エスエルシー株式会社,入荷時8週齢,メス5匹)の尾根部筋肉にCha o 2量を1匹あたり27 μg投与した。初回投与から17日後に,追加免疫として,Cha o 2を1匹あたり16 μg投与した。初回投与から21日後に,腸骨リンパ節を摘出し,マウス骨髄腫由来細胞(ミエローマ細胞)との細胞融合に用いた。
細無菌的に摘出したマウスの腸骨リンパ節をDMEM培地中で懸濁し,ミエローマ細胞(SP2/W)と細胞数が5:1(リンパ球:ミエローマ)となるように混合し,PEGを用いた定法により細胞融合を実施した。HAT培地にリンパ球数として0.9975×106 cells/mLになるよう再懸濁し,96穴プレート8枚に100 μL/wellずつ播種した。5% CO2,37℃にて6日間培養した後,培養上清の一部を回収し,ELISA及びウエスタンブロッティングによるスクリーニングを行なった。Cha o 2に反応性を有したウェルを選択し,限界希釈法にてモノクローナル抗体産生ハイブリドーマをクローニングした。
クローニングしたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを10% FBS, Hybridoma-SFM培地中で一晩培養後,無血清培地に交換し,5~7日培養後,培養上清を回収した。回収した培養上清に50%飽和となるよう硫酸アンモニウムを加え,遠心分離の沈殿をPBSに溶解した。この溶液からアフィニティー精製カラム(Ab-Rapid PuRe EX:プロテノバ)にてモノクローナル抗体を精製した。
ビオチン化モノクローナル抗体は,市販のビオチン標識キット(同仁化学,biotin labeling Kit-NH2)を用いて,ビオチン標識した。
20 μg/mLに調製した精製モノクローナル抗体溶液を96穴マイクロプレートの各ウェルに50 μLずつ加えて25℃で一晩放置した。洗浄後1%BSA/PBS-T溶液にてブロッキングした後,50 ng/mLの精製Cha o 2溶液を50 μLずつ加えて,25℃で1時間放置した。PBS-Tにて洗浄した後,ビオチン化した精製モノクローナル抗体溶液(1 μg/ml)を50 μL加え,25℃にて1時間反応させた。反応後,PBS-Tにて洗浄した後,アビジン-HRPを反応させた。PBS-Tにて洗浄した後,基質であるTMBを加え25℃で5分間反応させた。その後,2 N硫酸で反応を停止し,マイクロプレートリーダーを用いて450 nmの吸光度を測定した。
Cha o 2の全長アミノ酸配列(UniProt No.Q7M1E7:配列番号1)からシグナル配列(-50M~-1H)を除くアミノ酸配列(1S~464P)(上付きの数字はアミノ酸残基の位置、アルファベットは1文字表記のアミノ酸残基を表す。以下同様。)について,7残基が重複する20残基のオーバーラップペプチドライブラリーを作製した(SIGMA-ALDRICH,PEPscreen)。各Cha o 2部分配列ペプチドを20μMに調製し,その溶液を96穴マイクロプレートに100 μLずつ加えて,25℃で一晩放置した。洗浄した後,1%BSA/PBS-T溶液にてブロッキングした。ブロッキングしたプレートの各ウェルに0.5 μg/mLに調製した精製モノクローナル抗体溶液を100 μL加え,25℃で1時間反応させた。PBS-Tにて洗浄後,ヤギ由来ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を反応させた。PBS-Tにて洗浄後,基質であるTMBを加え室温で5分間反応させた後,2 N硫酸で反応を停止し,マイクロプレートリーダーを用いて450 nmの吸光度を測定した。
Cha o 2及びCry j 2をそれぞれ1μg/mLに調製し,その溶液を96穴マイクロプレートに50 μLずつ加えて,37℃で1時間放置した。洗浄した後,1%BSA/PBS-T溶液にてブロッキングした。ブロッキングしたプレートの各ウェルに抗Cha o 2モノクローナル抗体4H5-3C3、9A11-1F8又は抗Cry j 2モノクローナル抗体8D6(1又は10 μg/ml)を50 μL加え,25℃にて1時間反応させた。PBS-Tにて洗浄後,ヤギ由来ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG 抗体を反応させた。PBS-Tにて洗浄後,基質であるTMBをウェルに加え室温で5分間反応させた後,2 N硫酸で反応を停止し,マイクロプレートリーダーを用いて450 nmの吸光度を測定した。
ヒノキ花粉もしくはスギ花粉0.5 gに10 mL(20倍量)の抽出液を加え,一晩4℃で撹拌した。撹拌後,20,000 ×gで30分遠心分離した上清を花粉抽出液とした。
Cha o 2,Cry j 2又はヒノキ花粉抽出液に等量の50 mM DTT / 2×SDSサンプルバッファーを加え95℃で5分間加熱した。冷却後,5-15 %濃度のSDS-ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動し,タンパク質染色及びウエスタンブロッティングを行った。タンパク質染色はOrioleTM Fluorescent Gel Stainにて染色した。ウエスタンブロッティングはゲル上の分離したタンパク質をPVDF膜に電気的に転写後に,1%スキムミルクでブロッキングし,抗Cha o 2モノクローナル抗体4H5-3C3又は抗Cha o 2抗体9A11-1F8を加え室温で1時間反応させた。反応後,PBS-Tにて洗浄し,ヤギ由来ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG 抗体を反応させた。PBS-Tにて洗浄後, ECLprime検出試薬を加え化学発光をバイオイメージアナライザーにて検出した。
1.6.3項にてSandwich ELISAの捕捉抗体として抗Cha o 2モノクローナル抗体4H5-3C3と検出抗体として抗Cha o 2抗体9A11-1F8の組み合わせを選定した。抗Cha o 2モノクローナル抗体4H5-3C3溶液(10 μg/mL)を96穴マイクロプレートに100 μLずつ加えて25℃で一晩放置した。洗浄後,1% BSA/PBS-T溶液にてブロッキングした。ブロッキングしたプレートのウェルに0.625~1000 ng/mLの範囲で調製したCha o 2又は50~3000 ng/mLの範囲で調製した Cha o 1及びCry j 2溶液を100 μLずつ加えて,25℃で2時間放置した。洗浄した後,ビオチン化した抗Cha o 2抗体9A11-1F8溶液(1 μg/ml)を100 μl加え, 25℃にて1時間反応させた。PBS-Tにて洗浄後,アビジン-HRPを反応させた。PBS-Tにて洗浄後,基質であるTMBを加え25℃で5分間反応させた後,2 N硫酸で反応を停止し,マイクロプレートリーダーを用いて450 nmの吸光度を測定した。なお測定は全て2重測定で行った。
0.625,1.25,2.5,5,10,20及び50 ng/mLに調製した精製Cha o 2を検量線とし, 2,4,10,20及び50 ng/mLに調製した精製Cha o 2を検体として,Sandwich ELISAの同時再現性と日差再現性を検討した。検量線の調製は実験毎に行ない,検体は-20℃で保管した同一検体を使用した。検量線及び検体の希釈は1% BSA/PBS-Tで行い,Sandwich ELISA を1.6.8項と同様の方法で行なった。同時再現性は9重測定を行ったときの同一測定時内における変動係数,日差再現性は同一検体を3重測定で日を変えて3回測定したときの測定間における変動係数とした。
ヒノキ花粉抽出物を27倍希釈から,3倍公比で希釈し,Sandwich ELISAによる測定を行った。Sandwich ELISAは1.6.8項と同様の方法で実施した。
ヒノキ花粉抽出液を27~59049倍希釈,スギ花粉抽出液を7.49~1820倍希釈し,Sandwich ELISAによる測定を行った。Sandwich ELISAは1.6.8項と同様の方法で実施した。
2.1 抗Cha o 2モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作製
抗Cha o 2モノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして,「2D6-2C3」「9A11-1F8」「3A8-2F2」「4H5-3C3」「8G10-1H7」「4G6-1D6」「9E12-2B7」「4F6-4B11」「5A8-4B2」「3E1-1C8」「6H5-2F2」の11クローンのハイブリドーマを得た。
作製した11種類の抗Cha o 2モノクローナル抗体においてSandwich ELISAでCha o 2を検出できる抗体の組み合わせを検討した(図1)。110通りのモノクローナル抗体の組み合わせを検討した結果,作製した7種類の抗Cha o 2抗体3A8-2F2,3E1-1C8,4G6-1D6,4H5-3C3,5A8-4B2 ,6H5-2F2及び9A11-1F8を用いた12通りの組み合わせでCha o 2をS/N比10以上の高感度に検出できることが明らかになった。
Sandwich ELISAにてCha o 2を高感度に検出可能であった抗Cha o 2抗体3A8-2F2,3E1-1C8,4G6-1D6,4H5-3C3,5A8-4B2 ,6H5-2F2及び9A11-1F8についてエピトープを同定し報告されている13種類の多型(Tateno M. et al., PLoS ONE 16, e0261327 (2021))をエピトープに含まない2クローン(4H5-3C3及び9A11-1F8)を選んだ(図2)。抗Cha o 2抗体4H5-3C3はペプチドNo. 17(113WWAGQCKVVNGRTVCNDRNR132(配列番号3))を認識した。抗Cha o 2抗体9A11-1F8はペプチドNo. 42(288NPILINQFYCTSASACQNQR307(配列番号4))及びNo. 43(295FYCTSASACQNQRSAVQIQG314(配列番号5))を認識し,他のペプチドには反応しなかった(図2)。抗Cha o 2抗体4H5-3C3及び9A11-1F8はエピトープにアミノ酸多型を含まないため、アミノ酸置換によらずCha o 2を認識できると考えられた。
選出した抗Cha o 2抗体4H5-3C3並びに9A11-1F8の利用方法としてIndirect ELISAによるCha o 2の検出を検討した。抗Cha o 2 抗体4H5-3C3は,ヒノキ花粉の主要アレルゲンであるCha o 2 には反応性を示し,スギ花粉の主要アレルゲンのCry j 2 に対しては反応性を示さなかった。抗Cha o 2 抗体9A11-1F8は,ヒノキ花粉の主要アレルゲンであるCha o 2 とスギ花粉の主要アレルゲンのCry j 2 の両方に同等の反応性を示した。抗Cha o 2抗体9A11-1F8並びに4H5-3C3はIndirect ELISAでCha o 2の検出に利用できることがわかった(図4)。抗Cha o 2抗体4H5-3C3はIndirect ELISAでCha o 2を特異的な検出に利用できることがわかった(図4)。
抗Cha o 2抗体4H5-3C3並びに9A11-1F8の利用方法として,ウエスタンブロッティングによるCha o 2検出を検討した。抗Cha o 2 抗体4H5-3C3は,ウエスタンブロッティングにて精製Cha o 2にのみ反応が認められた(図5-1)。また,高い相同性を有するCry j 2に対する反応性も認められず,高い特異性を有することが明らかとなった。抗Cha o 2 抗体9A11-1F8は,ウエスタンブロッティングにて精製Cha o 2とスギ花粉主要アレルゲンのCry j 2の両方に同等の反応性が認められた(図5-1)。
ヒノキ花粉抽出液のタンパク質染色では,Cha o 2以外に多数のタンパク質が存在するが,抗Cha o 2抗体9A11-1F8並びに4H5-3C3はCha o 2以外のタンパク質への反応性を有さないことから,ウエスタンブロッティングによるヒノキ花粉抽出液中のCha o 2の特異的な検出に利用できることが明らかになった(図5-2)。
抗Cha o 2抗体4H5-3C3並びに9A11-1F8の利用方法としてSandwich ELISAによる反応性を検討した。設定したSandwich ELISAでは,Cha o 2濃度依存的なシグナルの増大が認められ(図7),0.313~50 ng/mLの範囲でR2=1となる4パラメータロジスティック回帰が作成された(図8)。一方,Cha o 1及びCry j 2 には反応性を示さなかった。(図7)。
定量範囲内であった0.625~50 ng/mLの濃度を検量線とし,2~50 ng/mLの精製Cha o 2の含量測定の再現性の検討を行った。その結果,同時再現性の変動係数は3.0%~7.3%,日差再現性の変動係数は7.1%~14.8%と良好な値を示し,抗Cha o 2抗体4H5-3C3並びに9A11-1F8を利用したSandwich ELISAは高い再現性を有するCha o 2定量系であることが明らかとなった(表1)。
抗Cha o 2抗体4H5-3C3並びに9A11-1F8を利用したSandwich ELISAが共雑物質を多く含む花粉抽出液中でのCha o 2の定量にも使用可能か検討した。ヒノキ花粉抽出物を729,2187,6561倍希釈したとき得られた吸光度は検量線範囲内(0.625-50 ng/mL)となった。このときの吸光度よりヒノキ花粉抽出物中のCha o 2濃度を推定するとそれぞれ,6.44, 6.55及び6.40 μg/mLとなり,ほぼ同じ濃度が得られた(CV 1.2 %)。このことより,抗Cha o 2抗体4H5-3C3並びに9A11-1F8を利用したSandwich ELISAは,希釈倍率によらず,共雑物質の影響を受けない定量系であり,花粉抽出液中のCha o 2も測定可能であることがわかった。
構築したELISAがスギ花粉抽出物と交差するのか検討した。ヒノキ花粉抽出物と86倍以上の感度の差があった(図9)。このことより,抗Cha o 2抗体9A11-1F8並びに4H5-3C3を利用したSandwich ELISAは,高い特異性を有し,ヒノキ花粉中にスギ花粉が混入した場合でも,Cha o 2含量のみを測定可能な測定系であることが明らかとなった。
なお、Agresera社から販売されている「Cha o 2 ポリクローナル抗体」はポリクローナルであるため、エピトープに多型が含まれる場合、親和性が変わる可能性が考えられる。さらにポリクローナル抗体は生産量が有限な点で制約がある。これに対し、本願発明のモノクローナル抗体は特異性が高く、Cha o 2多型によらず検出が可能であり、無限に生産できる。
Claims (11)
- ヒノキ花粉アレルゲンCha o 2に対するモノクローナル抗体であって、配列番号3~6に示されるいずれかのアミノ酸配列をエピトープとして認識し、Cha o 1に反応しない、前記モノクローナル抗体。
- スギ花粉アレルゲンCry j 2に反応しない、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
- スギ花粉アレルゲンCry j 2に反応する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
- 請求項2に記載のモノクローナル抗体と組み合わせたときのCha o 2の最低検出濃度が5ng/mL以下である請求項3に記載のモノクローナル抗体。
- 請求項3に記載のモノクローナル抗体と組み合わせたときのCha o 2の最低検出濃度が5ng/mL以下である請求項2に記載のモノクローナル抗体。
- 変動係数が20%以下の再現性を有する、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
- 請求項1に記載のモノクローナル抗体が結合するエピトープに結合する抗体。
- 請求項1に記載のモノクローナル抗体、又は請求項7に記載の抗体の抗原結合断片。
- 請求項1に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
- 請求項1に記載のモノクローナル抗体、又は請求項7に記載の抗体の抗原結合断片と試料とを反応させて、Cha o 2を検出することを特徴とする、Cha o 2の検出方法。
- 請求項1に記載のモノクローナル抗体、又は請求項7に記載の抗体の抗原結合断片を含む、Cha o 2の検出用キット。
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2022
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Non-Patent Citations (4)
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|---|
| Allergol. Int.,2016年,Vol. 65,p. 286-292 |
| Clin. Exp. Allergy,2000年,Vol. 30,p. 546-550 |
| PLoS One,2021年,Vol. 16:e0261327,p. 1-15 |
| 東京慈恵会医科大学雑誌,2013年,Vol. 128, No. 6,p. 195 |
Also Published As
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