JP7846586B2 - 耐放射線マルチプレクサ - Google Patents

耐放射線マルチプレクサ

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Description

本発明は、耐放射線マルチプレクサに関する。
放射線の環境下における回路装置の保全を図る必要があるものとして、例えば原子力プラントがある。
原子力プラントなどの放射線にさらされる環境では、計測器の電子回路に含まれる半導体素子が放射線の電離作用により劣化するため、特に高放射線環境においては電子回路を用いることが難しい。
例えば、プラント内の膨大なケーブルの集約には、半導体を用いた電子回路であるマルチプレクサを用いて省配線化することが有効であるが、上記の理由により原子力プラントでの適用が困難である。
これら電子回路の放射線による故障要因の一つとして、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)の特性劣化があり、放射線照射によって電荷が蓄積することで、リーク電流の増加等でMOSFETの特性が劣化し、電子回路の故障の主要因となる。
放射線環境で電子回路を正常動作させる方法としては、MOSFETを従来のSi(ケイ素)を用いたSi半導体から、放射線耐性に優れるSiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)素子に変更する手法が有効である。
複数のMOSFETで構成されるマルチプレクサも、上記したようにSiCで構成することで、特許文献1に述べられているように耐放射線性能を向上させることが可能である。
特許文献1の請求項3には、「前記アナログスイッチ回路のpMOSとnMOSは、シリコンカーバイドによる半導体を有して構成される、ことを特徴とする耐放射線回路。」と記載されている。
特開2022-32396号公報
上述したSiCのMOSFETを用いることで、耐放射線性を従来のSi素子よりも格段に向上させることが可能である。しかし、放射線を照射し続けるとSiC素子でも特性が劣化していくことがある。特に、原子力プラントの過酷事故のような急激に放射線量が大きく増加するような環境では、素子の劣化により安定した動作を提供できなくなる可能性がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、耐放射線性に優れ、かつ簡易な構成の耐放射線マルチプレクサを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の耐放射線マルチプレクサは、シリコンのバンドギャップより広いバンドギャップを有するMOSFETで構成されたアナログスイッチ回路と、前記アナログスイッチ回路を出力段に有するマルチプレクサ回路と、前記マルチプレクサ回路の全チャネルをOFFにするゲート信号を印加する動作モードを有するゲート信号制御部と、を備え、前記マルチプレクサ回路は、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用しないダミーチャネルとし、前記ゲート信号制御部は、前記ダミーチャネルに所定のON時間を設けることを特徴とする。
本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
本発明によれば、耐放射線性に優れ、かつ簡易な構成の耐放射線マルチプレクサを提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサの構成を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサのアナログスイッチ回路の構成の一例を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサのマルチプレクサ回路の入力信号の切替順の一例を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサのマルチプレクサ回路の制御信号の一例を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサの耐放射線マルチプレクサの全チャネルOFF機能の線量率に応じた動作を表にして示す図である。 比較例の4入力1出力のマルチプレクサの構成を示す図である。 図6の比較例の4入力1出力のマルチプレクサの放射線照射影響を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサの構成を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサのマルチプレクサ回路の入力信号の切替順の一例を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサのマルチプレクサ回路の制御信号の一例を示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサの構成を示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサのマルチプレクサ回路の制御信号の一例を示す図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限らず、例えば複数の実施形態を組み合わせたり、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で任意に変形したりできる。
また、本明細書において、同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。図示の内容は、図示の都合上、本発明の趣旨を損なわない範囲で実際の構成から変更することがある。
(原理説明)
上述したように、放射線を照射し続けるとSiC素子でも特性が劣化していくことがある。発明者らは、開発したSiC-MOSFETを出力段に用いたマルチプレクサに対して、γ線を用いて通電状態での放射線劣化特性を実験的に確認した。
図6は、比較例の4入力1出力のマルチプレクサ(MUX)1の構成を示す図である。
図6に示すように、比較例の4入力1出力のマルチプレクサ1は、SiC-MOSFETを用いたマルチプレクサ回路10を備える。マルチプレクサ回路10は、4個のアナログスイッチ回路11~14を備え、それぞれの第1端子にチャネル信号CH1,CH2,CH3,CH4を入力している。チャネル信号CH1,CH2,CH3,CH4は、図示しない前段の各マルチプレクサ回路の出力信号、または、PCV(Primary Containment Vessel:原子力発電プラントの格納容器)内部に設置された計測機器の出力信号である。また、アナログスイッチ回路11~14のそれぞれの第2端子は、互い接続され、マルチプレクサ回路10の出力端子となっている。この出力端子から出力信号OUTが出力する。
また、マルチプレクサ回路10は、図示しないデコーダ回路の制御信号A1,A2,Gが入力している。マルチプレクサ10には正電源VDD(不図示)と負電源VSS(不図示)が供給されている。
図7は、図6の比較例の4入力1出力のマルチプレクサ1の放射線照射影響を示す図である。図7の横軸は、積算線量[kGy]を示し、図7の縦軸は、リーク電流を示す。
図7は、4入力1出力のマルチプレクサ1のチャネル信号CH1をON(アナログスイッチ回路11をON)にし、チャネル信号CH2,3,4をOFF(アナログスイッチ回路12,13,14をOFF)にした場合の例である。
試験結果では、SiC製のマルチプレクサ回路10は、ONにしたチャネルCH1のみリーク電流が増加していき、OFFにしているチャネルCH2,3,4はリーク電流がほとんど増加しない特性があることを新たに発見した。
本発明は、この新知見を利用し、SiC製のマルチプレクサ回路に全チャネルのOFF時間を設けることで耐放射線性を向上させる。
SiCおよびマルチプレクサ(MUX)について補足して説明する。
<SiとSiCの違い>
Siは、界面近傍の酸化膜がクリーンなので、欠陥が少ない。
SiCは、界面近傍の酸化膜中に欠陥が存在する。SiCは、窒素終端などで欠陥を低減させているものの、Siよりは多い。
<マルチプレクサ(MUX)の放射線影響>
マルチプレクサは、デジタル素子のため、アナログ素子よりも集積度が約1桁多く、また複数のMOSFETが実装されるため放射線に弱い。
マルチプレクサを構成するアナログスイッチ回路を、SiからワイドバンドギャップのSiCにすることで、放射線による電荷の蓄積影響を低減できる。これにより、放射線による劣化を大幅に低減できることが実験で確認済である。
マルチプレクサを構成するアナログスイッチ回路を、SiCにすることで、積算線量500 [kGy]まで動作可能であることを確認した。ただし、ONしたチャネルは、図7に示すように、リーク電流増加が確認された。測定対象やケーブル長によるが、PCV内の長距離敷設した熱電対では数%の誤差が生じる可能性がある。
(第1の実施形態)
図1は、上記基本原理に基づく、本発明の第1の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサ(MUX)の構成を示す図である。4入力1出力のマルチプレクサを例に説明する。また、放射線は、γ線を例として説明する。
[耐放射線マルチプレクサ100]
図1に示すように、耐放射線マルチプレクサ(MUX)100は、SiC-MOSFET(シリコンのバンドギャップより広いバンドギャップを有するMOSFET)で構成されたマルチプレクサ回路110と、マルチプレクサ回路110の全チャネルのゲート電圧をオフにする動作モードを有するゲート信号制御部120と、を備える。
<マルチプレクサ回路110>
マルチプレクサ回路110は、4個のアナログスイッチ回路101(SW1~SW4)を備え、それぞれの第1端子に入力信号S1,S2,S3,S4を入力している(SW1~SW4を総称する場合は、SWという)。入力信号S1,S2,S3,S4は、PCV内部に設置された計測機器の出力信号である。また、耐放射線マルチプレクサ100が複数段のマルチプレクサ回路の組合せからなる場合、入力信号S1,S2,S3,S4は、前段の各マルチプレクサ回路の出力信号である。
また、アナログスイッチ回路101(SW1~SW4)は、第2端子に出力信号X1,X2,X3,X4を出力する。アナログスイッチ回路101(SW1~SW4)のそれぞれの第2端子は、互い接続され、マルチプレクサ回路110の出力端子となっている。この出力端子から出力信号OUTが出力する。
また、マルチプレクサ回路110は、アナログスイッチ回路101(SW1~SW4)を切替えるための制御信号A1,A2,7Gが入力している。アナログスイッチ回路110には、正電源VDDと負電源VSSが供給されている。
図1では、4入力1出力のマルチプレクサ回路110は、入力信号S1~S4に対応して、出力信号X1~X4のアナログスイッチ回路101が設けられる。そのスイッチを切り替えるための制御信号はA1、A2、Gの3か所から入力される。出力信号はOUTから出力される。
マルチプレクサ回路110は、従来のSiではなくSiCのMOSFETで構成することにより、耐放射線性能を格段に向上させることができる。しかし、SiCで構成したマルチプレクサにおいても、放射線をMGyオーダ以上に照射することでリーク電流が増加し、入力信号の計測誤差に影響を与える可能性があることが実験的に明らかになった(後記比較例の図7参照)。
<アナログスイッチ回路101の構成>
図2は、アナログスイッチ回路101の構成の一例を示す図である。
アナログスイッチ回路101は、p型のMOSFETであるpMOS111と、n型のMOSFETであるnMOS112が並列に接続されて構成されている。pMOS111とnMOS112は、Siよりもバンドギャップの広い(高い)半導体である、例えば、SiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)を用いて構成される。
pMOS111のゲート電極1001には、切替信号Aが入力している。
nMOS112のゲート電極1002には、切替信号A ̄(「 ̄」は、反転信号を表記する)が入力している。
アナログスイッチ回路101は、切替信号Aと切替信号A ̄によって、導通(ON)、もしくは、遮断(OFF)される。なお、アナログスイッチ回路101を導通(ON)する場合には、切替信号Aを低電位(負電位、L)とし、切替信号A ̄を高電位(正電位、H)として、pMOS111とnMOS112を併せて導通(ON)とする。また、アナログスイッチ回路101を遮断(OFF)する場合には、切替信号Aを高電位(正電位、H)とし、切替信号A ̄を低電位(負電位、L)として、pMOS111とnMOS112を併せて遮断(OFF)する。
アナログスイッチ回路101は、放射線の線量が高い放射線領域、例えば原子力発電プラントの格納容器(PCV)内部に設置されている。
<アナログスイッチ回路101の放射線の影響>
次に、アナログスイッチ回路101の放射線の影響について説明する。
アナログスイッチ回路101は、放射線が照射される環境にあるので、アナログスイッチ回路101を構成するpMOS111とnMOS112の半導体素子は、放射線による劣化が起こることがある。この放射線による劣化は、半導体のバンドギャップが低いほど顕著である。そのため、バンドギャップが比較的に低いSi(シリコン)を用いたpMOSとnMOSの半導体素子は、放射線による劣化が起きやすい。
この放射線による劣化を低減するために、半導体のバンドギャップがSiよりも高いSiCを図2のpMOS111とnMOS112に用いている。しかしながら、バンドギャップが相対的に高いSiCを用いたpMOS111とnMOS112でも、ONにしたチャネルCHのみリーク電流が増加していき、放射線による劣化が起こる可能性がある。
SiCを用いたpMOS111とnMOS112においては、放射線が照射され続けると、nMOS(112)よりも先にpMOS(111)の劣化が起こる。具体的には、放射線による電離作用によりリーク電流が増加する。
<ゲート信号制御部120>
ゲート信号制御部120は、SiC-MOSFETで構成したマルチプレクサ回路110に対して、全チャネルをOFFにするゲート信号制御を行う。
図3は、マルチプレクサ回路110の入力信号の切替順の一例を示す図である。
図3の横軸は時間、図3の縦に並べたS1~S4は4入力1出力マルチプレクサ回路110の各入力信号を示している。図3のOFFは、全チャネルをOFFしていることを示している。図3の双方向矢印a~eは、各モードの動作時間を表している。
マルチプレクサ回路110は、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用する有効チャネルとし、ゲート信号制御部120は、マルチプレクサ回路110の全チャネルのOFFの時間を、有効チャネルのON時間よりも長くする。
図3では、各チャネル(有効チャネル)のON時間(図3の双方向矢印a~d)に加えて、全チャネルOFFの時間(図3の双方向矢印e)を設けることで、放射線環境でも劣化の速度を低減でき、長時間安定して使用することが可能となる。
全チャネルOFF機能を動作させている動作モードでは、入力信号の観測が困難である。このため、全チャネルOFF機能を実行している「動作モード」中に、入力信号に急峻な変化があると観測できない可能性がある。そのため、例えば圧力計や温度計などのように急峻は計測値の変化が起こらず、計測間隔がミリ秒、秒オーダでも問題がない計測器への適用のほうがOFF時の影響が少ないことからより適している。しかしながら、上記「動作モード」を制御することにより、常時監視が必要な安全系統や変化が急峻な計測器への適用も可能である。
図3では、S1、S2、S3、S4、全チャネルOFFの順序でマルチプレクサ回路110の切り替えを行っているが、この順序は用途に応じて任意に変えることが可能である。
ここで、全チャネルOFFの時間(図3の双方向矢印e)は長くするほど耐放射線性能を向上させることが可能である。一方で、放射線が低い環境では、全チャネルOFFの時間(図3の双方向矢印e)を0もしくは極力短くすることで各チャネルの計測精度を向上させることができる。全チャネルOFFの時間はマルチプレクサ周囲の放射線量で任意に変えることが望ましい(図5の通常運転、DBA、LOCA、SA参照)。
図4は、マルチプレクサ回路110の制御信号の一例を示す図である。
マルチプレクサは、一般的に1,0のデジタル信号で制御することが多い。このため、本実施形態でも1,0の制御信号を用いて切替動作を説明する。図4のA1、A2は、マルチプレクサ回路110のスイッチを切り替えるための制御信号である。図4のGは、全チャネルOFF機能を動作させるための制御信号である。
図4の最左列は、どのスイッチがON状態かを示しており、OFFは全チャネルがOFFの状態を示している。例えば、(A1、A2、G)=(0、0、0)のときX1がON、X2、X3、X4がOFFということを表している。G=1のときは、A1、A2の信号に関わらず、全チャネルをOFFとする。
ゲート信号制御部120(図1)は、図4のG=1に示すように、マルチプレクサ回路110の全チャネルをOFFにするゲート信号を印加する動作モードを有する。
上記の制御方法は、全チャネルOFF機能動作の一例を示すものであり、制御信号レベルや切替順序、制御信号と切替動作の対応は自由に選択できる。
図5は、耐放射線マルチプレクサ100の全チャネルOFF機能の線量率に応じた動作を表にして示す図である。
図5に示すように、「全チャネルOFF機能」は、通常運転、DBA(Design Basis Accident:設計基準事故)、LOCA(Loss of Coolant Accident:冷却材喪失事故)、SA(Severe Accident:過酷事故)のそれぞれにおいて、「全チャネルOFF機能」をOFFまたはONさせる。
DBAは、発電用原子炉施設の特性を表す想定上の事故であって、従業員および近隣の公衆に対する放射線の影響の観点からみて十分典型的とみなされるものである。
LOCAは、原子炉につながる配管などが破損し、原子炉冷却材が流出する事故である。
SAは、設計基準事象を大幅に超える事象であって、炉心の重大な損傷に至るものである。
なお、図5のDBAの※は、基本は「全チャネルOFF機能」をOFFだが、線量率が通常運転時よりも増加した場合には「全チャネルOFF機能」をONとすることが望ましい、ことを示す。
このように、ゲート信号制御部120(図1)は、「全チャネルOFF機能」の動作モード」を、通常運転、DBA、LOCA、SAのそれぞれにおいて、OFFまたはONさせる。
以下、上述のように構成された耐放射線マルチプレクサ100の動作について説明する。
耐放射線マルチプレクサ(MUX)100は、SiC-MOSFETで構成されたマルチプレクサ回路110と、マルチプレクサ回路110に入力される入力信号の全チャネルのゲート電圧をオフにする動作モードを有するゲート信号制御部120と、を備える。
ゲート信号制御部120は、SiC-MOSFETで構成したマルチプレクサ回路110に対して、全チャネルをOFFにするゲート信号制御を行う。例えば、ゲート信号制御部120は、図3に示すように、各チャネルのON時間に加えて、全チャネルOFFの時間を設ける。
[第1の実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る耐放射線マルチプレクサ100(図1)は、シリコンのバンドギャップより広いバンドギャップを有するMOSFET(本実施形態では、SiC-MOSFET)で構成されたアナログスイッチ回路101と、アナログスイッチ回路101を出力段に有するマルチプレクサ回路110と、マルチプレクサ回路110の全チャネルをOFFにするゲート信号を印加する動作モードを有するゲート信号制御部120と、を備える。
この構成により、SiC製のマルチプレクサ回路110に全チャネルのOFF時間を設けることで、全チャネルOFFにより、アナログスイッチ回路101におけるリーク電流の増加を抑制して放射線劣化の進行を遅延させることができる。放射線環境でも劣化の速度を低減でき、長時間安定して使用することが可能となる。その結果、耐放射線性に優れ、過酷な放射線環境下でも正常なマルチプレクサの切替動作を簡易な構成で実現できる。
原子力プラントなど高放射線環境において、本実施形態に係る耐放射線マルチプレクサ100(図1)は、高い放射線耐性と動作安定性を両立することができる。プラント運転の信頼性向上に寄与できる。
耐放射線マルチプレクサ100A(図1)において、マルチプレクサ回路110は、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用する有効チャネルとし、ゲート信号制御部120は、マルチプレクサ回路110の全チャネルのOFFの時間(図3の双方向矢印e)を、有効チャネルのON時間(図3の双方向矢印a~d)よりも長くする。
こうすることにより、全チャネルOFFにより放射線劣化の進行を遅延させる効果の実効を図ることができ、耐放射線性をより向上させることができる。なお、全チャネルOFF機能を動作させる時間を、短くすることで常時監視が必要な安全系統や変化が急峻な計測器への適用も可能である。
また、シリコンのバンドギャップより広いバンドギャップを有するMOSFETは、SiC-MOSFETが望ましいが、n型、p型MOSFETを製作でき、かつSiよりもワイドバンドギャップ半導体であれば、どの半導体で構成してもよい。
また、本実施形態では、4入力1出力のマルチプレクサ(MUX)を例にとり説明したが、16入力1出力や32入力1出力などのように入力数が増えた場合でも同様である。
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサの構成を示す図である。図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図8に示すように、耐放射線マルチプレクサ(MUX)100Aは、SiC-MOSFETで構成され、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用しないダミーチャネルとするマルチプレクサ回路110と、マルチプレクサ回路110のダミーチャネルに所定のON時間を設ける動作モードを有するゲート信号制御部120Aと、を備える。
図8に示す耐放射線マルチプレクサ100Aが、図1に示す耐放射線マルチプレクサ100と異なるのは、制御信号がA1、A2の2本のみである点と、入力信号の1つをダミーチャネル(GND)としている点の2点である。
耐放射線マルチプレクサ(MUX)100Aは、マルチプレクサ回路110は、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用しないダミーチャネル(GND)とし、ゲート信号制御部120Aは、ダミーチャネル(GND)に所定のON時間を設ける動作モードを有する。
ゲート信号制御部120Aは、ダミーチャネル(GND)のON時間を、有効チャネルのON時間よりも長くする動作モードを有する。
<ダミーチャネル(GND)の目的>
(1)
マルチプレクサ回路110の入力信号のGNDは、使っていないチャネルであり劣化等があっても影響はないチャネルである。そこでGNDをダミーチャネル(GND)とし、劣化による影響をダミーチャネル(GND)側で担うことで、入力信号S1~S3が入力される有効なチャネル(有効チャネル)の放射線劣化の進行を遅延させる。ダミーチャネル(GND)のON時間を長くすることで、耐放射線性能を向上させることが可能である。ただし、ダミーチャネル(GND)のON時間を長くすると、その分、有効チャネルのON時間が減るのでチャネルの計測精度に影響する。
(2)
耐放射線マルチプレクサ100Aは、ダミーチャネル(GND)をパイロット信号とし、放射線によるリーク電流の変化を計測する。パイロット信号は、既知の信号(例えば、固定のDC電圧)である。
ダミーチャネル(GND)に、パイロット信号を入力し、アナログスイッチ回路101は、このパイロット信号を伝達する。
SiCにおいては、pMOSの方がnMOSよりも放射線劣化が速い。この放射線劣化はpMOS111に流れる電流とnMOS112に流れる電流に異なる影響を与える。パイロット信号を入力し、pMOS111とnMOS112の劣化の差により生じる信号歪みを検出する(「劣化度モニタリング」)ことで、アナログスイッチ回路101の放射線による劣化の状態を診断することができる。
図9は、マルチプレクサ回路110の入力信号の切替順の一例を示す図である。図3と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図9に示すように、耐放射線マルチプレクサ100Aは、マルチプレクサ回路110が、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用しないダミーチャネル(GND)とし、ゲート信号制御部120が、ダミーチャネル(GND)にON時間(図9の双方向矢印f)を設けることで、有効チャネル(S1、S2、S3)(図9の双方向矢印a~c)の放射線劣化を低減させることが可能である。
また、耐放射線マルチプレクサ100Aは、有効チャネル(S1、S2、S3)に加えて、ダミーチャネル(GND)を順に切り替えて使用する。この順序は用途に応じて任意に変えることが可能である。
ここで、ダミーチャネルのON時間(図5の双方向矢印d)は、長くするほど耐放射線性能を向上させることが可能である。一方で、放射線が低い環境では、ダミーチャネルのON時間(図9の双方向矢印d)を0もしくは極力短くすることで各チャネルの計測精度を向上させることができる。このダミーチャネルのON時間は、マルチプレクサ周囲の放射線量で任意に変えることが望ましい。
図10は、マルチプレクサ回路110の制御信号の一例を示す図である。図4と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図4と同様に、1、0の制御信号を用いて切替動作を説明する。A1、A2はマルチプレクサのスイッチを切り替えるための制御信号である。
図10の最左列はどのスイッチがON状態かを示しており、例えば、(A1、A2)=(0、0)のときX1がON、X2、X3、X4がOFFということを表している。
上記の制御方法は、全チャネルOFF機能動作の一例を示すものであり、制御信号レベルや切替順序、制御信号と切替動作の対応は自由に選択できる。
以上の構成において、耐放射線マルチプレクサ100Aは、ゲート信号制御部120Aがダミーチャネル(GND)のON時間を設ける。有効チャネル(S1、S2、S3)の劣化を低減させることが可能である。有効チャネルのON時間に対してダミーチャネル(GND)のON時間をより長くすることで、さらなる耐放射線性能の向上が可能となる。
[第2の実施形態の効果]
本発明の第2の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサ100A(図8)は、マルチプレクサ回路110が、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用しないダミーチャネル(GND)とし、ゲート信号制御部120Aは、ダミーチャネル(GND)にON時間を設ける
マルチプレクサ回路110の入力信号のGNDは、使っていないチャネルであり劣化等があっても影響はないチャネルである。劣化による影響をダミーチャネル(GND)側で担うことで、有効チャネル(S1、S2、S3)の放射線劣化を低減させることができる。
また、第1の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサ100(図1)よりも簡易的な構成でマルチプレクサの耐放射線性能を向上させることができる。
耐放射線マルチプレクサ100A(図8)において、マルチプレクサ回路110は、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用する有効チャネルとし、有効チャネルとダミーチャネル(GND)とを順に切り替えて使用する。
このように、有効チャネルとダミーチャネル(GND)とを順に切り替えて使用することで、蓄積的に作用する放射線劣化を、各チャネルにおいて分散させることができる。その結果、放射線劣化の進行を装置全体として遅延させることができ、長時間安定して使用することが可能となる。
耐放射線マルチプレクサ100A(図8)において、ゲート信号制御部120Aは、ダミーチャネル(GND)のON時間(図5の双方向矢印d)を有効チャネルのON時間(図5の双方向矢印a~c)よりも長くする。
このようにすることにより、有効チャネルのON時間に対してGNDのON時間をより長くすることで、さらなる耐放射線性能の向上が可能となる。ダミーチャネル(GND)のON時間は、長くするほど耐放射線性能を向上させることが可能である。放射線が低い環境では、ダミーチャネル(GND)のON時間を0もしくは極力短くすることで各チャネルの計測精度を向上させることができる。
耐放射線マルチプレクサ100A(図8)において、ダミーチャネル(GND)にパイロット信号(例えば、固定のDC電圧などの既知の信号)を入力し、放射線によるアナログスイッチ回路101のリーク電流の変化を計測する。
このようにすることにより、簡易的な構成でマルチプレクサの耐放射線性能を向上させるとともに、放射線照射の影響による劣化を診断(マルチプレクサの劣化度を診断)することができる。
(第3の実施形態)
図11は、本発明の第3の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサの構成を示す図である。図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図11に示すように、耐放射線マルチプレクサ(MUX)100Bは、SiC-MOSFETで構成されたマルチプレクサ回路110Bと、マルチプレクサ回路110Bに入力される入力信号の全チャネルのゲート電圧をオフにする動作モードを有するゲート信号制御部120Bと、を備える。
図11に示す耐放射線マルチプレクサ100Bが、図1に示す耐放射線マルチプレクサ100と異なるのは、各信号線に対応するアナログスイッチ回路が並列で2倍となっている点である。
耐放射線マルチプレクサ100Bは、マルチプレクサ回路110Bが、各チャネルに対応するアナログスイッチ回路SWを2つ以上並列で備える。
マルチプレクサ回路110Bは、8個のアナログスイッチ回路(SW11とSW21、SW12とSW22、SW13とSW23、SW14とSW24)を備え、それぞれの第1端子に入力信号S1,S2,S3,S4を入力している。
アナログスイッチ回路(SW11とSW21、SW12とSW22、SW13とSW23、SW14とSW24)の回路構成は、例えば、図2に示すアナログスイッチ回路101と同様である。
また、アナログスイッチ回路(SW11とSW21、SW12とSW22、SW13とSW23、SW14とSW24)は、第2端子に出力信号X1とY1,X2とY2,X3とY3,X4とY4を出力する。アナログスイッチ回路(SW11とSW21、SW12とSW22、SW13とSW23、SW14とSW24)のそれぞれの第2端子は、互い接続され、マルチプレクサ回路110Bの出力端子となっている。この出力端子から出力信号OUTが出力する。
また、マルチプレクサ回路110は、アナログスイッチ回路(SW11とSW21、SW12とSW22、SW13とSW23、SW14とSW24)を切替えるための制御信号A1,A2,A3が入力している。
図11では、4入力1出力のマルチプレクサ回路110Bは、入力信号S1~S4に対応して、出力信号X1~X4,Y1~Y4のアナログスイッチ回路が設けられる。そのアナログスイッチ回路101を切り替えるための制御信号はA1、A2、A3の3か所から入力される。出力信号はOUTから出力される。
以上の構成において、耐放射線マルチプレクサ(MUX)100Bは、放射線の線量率が低い環境においては、ゲート信号制御部120Bが、スイッチX(アナログスイッチ回路SW11、SW12、SW13、SW14)を用いるようスイッチX(アナログスイッチ回路SW11、SW12、SW13、SW14)に切り替える。また、ゲート信号制御部120Bは、スイッチX(アナログスイッチ回路SW11、SW12、SW13、SW14)が放射線によって劣化した場合には、スイッチY(アナログスイッチ回路SW11、SW12、SW13、SW14)に切り替える。このように、アナログスイッチ回路110Bに冗長性を持たせることで、耐放射線性能を向上させることが可能となる。
なお、スイッチX(アナログスイッチ回路SW11、SW12、SW13、SW14)からスイッチY(アナログスイッチ回路SW11、SW12、SW13、SW14)への切り替えは、一定積算線量を超えた場合に自動で切り替えてもよいし、手動で任意のタイミングで切り替えてもよい。
また、第2の実施形態の耐放射線マルチプレクサ100Bのように、入力信号の1つをGNDもしくはパイロット信号(図8および図9参照)として劣化度をモニタリングし、一定の劣化度を超えたところでスイッチYに切り替える仕組みとしてもよい。
図12は、マルチプレクサ回路110Bの制御信号の一例を示す図である。図4と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図4と同様に、1、0の制御信号を用いて切替動作を説明する。A1、A2、A3はマルチプレクサのスイッチを切り替えるための制御信号である。
図12の最左列はどのスイッチがON状態かを示しており、例えば、(A1、A2、A3)=(0、0、0)のときX1がON、X2、X3、X4、Y1、Y2、Y3、Y4がOFFということを表している。
上記の制御方法は、全チャネルOFF機能動作の一例を示すものであり、制御信号レベルや切替順序、制御信号と切替動作の対応は選択できる。
[第3の実施形態の効果]
本発明の第3の実施形態に係る耐放射線マルチプレクサ100B(図11)は、マルチプレクサ回路110Bが、各チャネルに対応するアナログスイッチ回路SWを2つ以上並列で備える。
このようにすることにより、アナログスイッチ回路110Bに冗長性を持たせることで、耐放射線性能を向上させることが可能となる。すなわち、(1)放射線によって一方のスイッチ群が劣化した場合には、他方のスイッチ群に切り替えることができる。あるいは、(2)一方のスイッチ群と他方のスイッチ群とを順次切り替えることで、蓄積的に作用する放射線劣化を、アナログスイッチ回路において分散させることができる。上記(1)および(2)のいずれの場合でも、放射線劣化の進行を装置全体として遅延させることができ、長時間安定して使用することが可能となる。
なお、本発明は、上記各実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜その構成を変更することができる。SiCは、種々のタイプのものがあるが、どのタイプのものも適用可能である。
上記した各実施形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
100,100A,100B 耐放射線マルチプレクサ(MUX)
110,110A,110B マルチプレクサ回路
101 アナログスイッチ回路
111 pMOS(シリコンのバンドギャップより広いバンドギャップを有するMOSFET)
112 nMOS(シリコンのバンドギャップより広いバンドギャップを有するMOSFET)
120 ゲート信号制御部
SiC-MOSFET シリコンのバンドギャップより広いバンドギャップを有するMOSFET
SW1~SW4 アナログスイッチ回路
S1,S2,S3,S4 入力信号
GND ダミーチャネル

Claims (7)

  1. シリコンのバンドギャップより広いバンドギャップを有するMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)で構成されたアナログスイッチ回路と、
    前記アナログスイッチ回路を出力段に有するマルチプレクサ回路と、
    前記マルチプレクサ回路の全チャネルをOFFにするゲート信号を印加する動作モードを有するゲート信号制御部と、を備え
    前記マルチプレクサ回路は、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用しないダミーチャネルとし、
    前記ゲート信号制御部は、前記ダミーチャネルに所定のON時間を設ける
    ことを特徴とする耐放射線マルチプレクサ。
  2. 前記アナログスイッチ回路のMOSFETは、シリコンカーバイドによる半導体を有して構成される
    ことを特徴とする請求項1に記載の耐放射線マルチプレクサ。
  3. 前記マルチプレクサ回路は、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用する有効チャネルとし、
    前記ゲート信号制御部は、前記マルチプレクサ回路の全チャネルのOFFの時間を、前記有効チャネルのON時間よりも長くする
    ことを特徴とする請求項1に記載の耐放射線マルチプレクサ。
  4. 前記マルチプレクサ回路は、複数の入力チャネルの1つ以上を、入力信号を使用する有効チャネルとし、
    前記有効チャネルと前記ダミーチャネルとを順に切り替えて使用する
    ことを特徴とする請求項に記載の耐放射線マルチプレクサ。
  5. 前記ゲート信号制御部は、前記ダミーチャネルのON時間を前記有効チャネルのON時間よりも長くする
    ことを特徴とする請求項に記載の耐放射線マルチプレクサ。
  6. 前記ダミーチャネルにパイロット信号を入力し、放射線による前記アナログスイッチ回路のリーク電流の変化を計測する
    ことを特徴とする請求項に記載の耐放射線マルチプレクサ。
  7. 前記マルチプレクサ回路は、各チャネルに対応する前記アナログスイッチ回路を2つ以上並列で備える
    ことを特徴とする請求項1に記載の耐放射線マルチプレクサ。
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