JP7772425B2 - ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nad+)又はニコチンアミドモノヌクレオチド(nmn)を定量する方法、並びにその方法を実施するためのキット及び濾紙 - Google Patents
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nad+)又はニコチンアミドモノヌクレオチド(nmn)を定量する方法、並びにその方法を実施するためのキット及び濾紙Info
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Description
ここで、上記DBS法とは、被験対象に由来する血液を、専用の濾紙に滴下(スポットとも言う)し、乾燥させた後、抽出操作により当該血液中に存在する測定対象物質の濃度等を定量する方法である。当該DBS法によれば、(1)血液をそのまま使用するため、血液から血漿成分を分離する作業等が不要である、(2)従来の血液検査等に比べて少量の採血量で実施できるため、自己採血による採取が可能である、(3)濾紙を使用するため、検査機関等への輸送が容易である、等のメリットがある。そのため、新生児マススクリーニングや、遠隔地での治療薬物モニタリング(Therapeutic Drug Monitoring:TDM)等で実際に使用されており、注目を集めている手法である。
[1]
被験対象のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)又はニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を定量する方法であって、下記工程1及び2を含む、前記方法:
(工程1)前記被験対象に由来する血液が添加された、ラジカル阻害剤又はカオトロピック剤を含浸してなる濾紙と、溶媒とを接触させる工程1、及び
(工程2)前記工程1によって得られた溶媒中の前記ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)又はニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を定量する工程2。
[2]
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を定量する方法である、[1]に記載の方法。
[3]
前記濾紙が、カオトロピック剤を含浸してなるものである、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
前記ラジカル阻害剤が、界面活性剤を含むものである、[1]又は[2]に記載の方法。
[5]
前記界面活性剤が、陰イオン界面活性剤である、[4]に記載の方法。
[6]
前記陰イオン界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウムである、[5]に記載の方法。
[7]
前記カオトロピック剤が、グアニジン塩を含むものである、[3]に記載の方法。
[8]
前記グアニジン塩が、グアニジンチオシアン酸塩である、[7]に記載の方法。
[9]
前記濾紙が、セルロースからなるものである、[1]~[8]のいずれか一つに記載の方法。
[10]
前記溶媒が、水及び/又はアセトニトリルである、[1]~[9]のいずれか一つに記載の方法。
[11]
前記溶媒が、水である、[10]に記載の方法。
[12]
前記工程2における前記定量が、質量分析計を用いた方法又は比色法によりなされる、[1]~[11]のいずれか一に記載の方法。
[13]
[1]~[12]のいずれか一つに記載の方法を実施するためのキットであって、採血器具、及びラジカル阻害剤又はカオトロピック剤を含浸してなる濾紙を含む、前記キット。
[14]
[1]~[12]のいずれか一つに記載の方法を実施するための、ラジカル阻害剤又はカオトロピック剤を含浸してなる濾紙。
本発明のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)又はニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を定量する方法(以下、本発明の定量方法と略記する場合がある。)は、被験対象に由来する血液が添加された、ラジカル阻害剤又はカオトロピック剤を含浸してなる濾紙と、溶媒とを接触させる工程1(以下、本発明にかかる工程1と略記する場合がある。)、及び前記工程1によって得られた溶媒中の前記NAD+又はNMNを定量する工程2(以下、本発明にかかる工程2と略記する場合がある。)を含むものである。
以下、本発明の定量方法について、その詳細を記載する。
本発明の定量方法における、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)とは、上述の通り、エネルギー産生反応に必須な補酵素のことである。また、全ての真核生物、古細菌、真正細菌等における電子伝達系としても知られている。
尚、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドは、生体内において、酸化型と還元型の2つの状態を取り得るが、本発明においては、酸化型のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(即ち、NAD+)を意味する。また、ジホスホピリジンヌクレオチド、補酵素I、コエンザイムI、コデヒドロゲナーゼI等のNAD+を意味する旧名称についても、本発明におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドに含まれるものとする。
本発明の定量方法における、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)とは、上述の通り、種々の生物種に存在しており、ビタミンB3群と総称されるNAD+前駆体のことである。また、NMNは、ミトコンドリアの活性化や、いわゆる長寿遺伝子であるサーチュイン遺伝子の活性化等、種々の機能を有することも知られている。
尚、NMNの構造は、以下の通りである。
尚、本発明における上記「定量」とは、後述の被験対象に由来する血液中のNAD+又はNMNの濃度、質量、モル量等を算出することであることは言うまでもない。
本発明の定量方法における被験対象としては、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウサギ等の哺乳動物等が挙げられ、ヒト、サル、マウス又はラットが好ましく、ヒトがより好ましい。また、かかるヒトとしては、例えば、健常者、NAD+及び/又はNMNの増減に関連する疾患等に罹患している患者、NAD+及び/又はNMNの増減に関連する疾患等に罹患していることが疑われるヒト等が挙げられる。かかる疾患としては、具体的には、例えば、加齢性疾患等が挙げられる。
本発明にかかる工程1は、被験対象に由来する血液が添加された、ラジカル阻害剤又はカオトロピック剤を含浸してなる濾紙と、溶媒とを接触させる工程である。以下、かかる工程1について詳述する。
また、被験対象に由来する血液を、当該被験対象から採取する方法としては、通常この分野で行われている方法によりなされればよく、例えば、自己採血器具による方法等が挙げられる。かかる自己採血器具としては、例えば、MBS微量採血キット(株式会社マイクロブラッドサイエンス)等が挙げられる。被験対象がヒトである場合には、例えば、当該ヒトの手や足の指先から上記自己採血器具により、血液を採取することができる。
特に、本発明にかかる工程1における濾紙がラジカル阻害剤を含浸してなるものである場合、当該濾紙の重量としては、例えば、単位面積あたりの重量(mg/cm2)が5mg/cm2~50mg/cm2であればよく、好ましくは、15mg/cm2~20mg/cm2である。また、本発明にかかる工程1における濾紙がカオトロピック剤を含浸してなるものである場合、当該濾紙の重量としては、例えば、単位面積あたりの重量(mg/cm2)が5mg/cm2~50mg/cm2であればよく、好ましくは、30mg/cm2~35mg/cm2である。
尚、上記単位面積あたりの重量を測定する際は、例えば、ザルトリウス電子てんびん(MSA225S-100-DI)を使用することができる。
尚、上記Whatman FTA DMPK-A Card(GE Healthcare)及びQIAcard FTA DMPK-A Card(QIAGEN)については、後述の実施例に記載の通り、ラジカル阻害剤(ドデシル硫酸ナトリウム)を含浸してなるものであり、濾紙の主成分はセルロースである。また、上記Whatman FTA DMPK-B Card(GE Healthcare)及びQIAcard FTA DMPK-B Card(QIAGEN)については、後述の実施例に記載の通り、カオトロピック剤(グアニジンチオシアン酸塩)を含浸してなるものであり、濾紙の主成分はセルロースである。
また、上記溶媒を調製する際、定量対象物質に応じた内部標準物質を当該溶媒中に添加してもよい。
上記方法としては、より具体的には、例えば、以下の通りになされればよい。先ずは、予め被験対象より当該被験対象に由来する血液を一定量採取し、濾紙の所定の箇所に当該血液1μL~10μLをスポットしておく。その後、濾紙における血液がスポットされた箇所を切り取り、2mLチューブ等のチューブに投与する。次いで、当該チューブに上記溶媒100μL~1000μLを添加することによりなされる。溶媒を添加した後、必要に応じて、マイクロミキサー等のミキサーで室温にて一定時間(10分間~60分間程度)混合してもよい。
また、上記方法を実施する際、必要に応じ、非特許文献1、非特許文献3、特表2015-508493号公報、特表2018-530766号公報、特表2014-503197号公報、特表2011-506922号公報、特表2004-505277号公報、乾燥マトリクススポットの均一性 アプリケーションノート(アジレント・テクノロジー株式会社)等に記載の手法を参考にしてもよい。
本発明にかかる工程2は、本発明にかかる工程1によって得られた溶媒中のNAD+又はNMNを定量する工程である。以下、かかる工程2について詳述する。
かかる発色剤としては、通常この分野で用いられているものであればいずれでもよく、具体的には、例えば、オルトクレゾールフタレインコンプレクソン(OCPC)、アルセナゾ-III、クロロホスホナゾ-III、エリオクロムブラックT、グリオキサール-ビス(2-ヒドロキシアニル)、NN(2-ヒドロキシ-1-(2-ヒドロキシ-4’-スルホ-1’-ナフチルアゾ)-3-ナフトエ酸)、ヒドロキシナフトールブルー等が挙げられる。また、上記比色法の具体的な手法については、通常この分野で行われている方法に従ってなされればよく、例えば、特開2003-262629等を参考にしてなされればよい。
尚、上記比色法により定量を行う場合には、市販のキット等を用いてもよく、かかるキットとしては、具体的には、例えば、NAD/NADH Assay Kit-WST(株式会社同仁化学研究所)や、NAD+/NADH Assay Kit(Colorimetric)(CELL BIOLABS)等が挙げられる。
尚、上記蛍光法により定量を行う場合には、市販のキット等を用いてもよく、かかるキットとしては、具体的には、例えば、NAD+/NADH Assay Kit(Fluorometric)(CELL BIOLABS)等が挙げられる。
本発明のNAD+又はNMNを定量する方法を実施するためのキット(以下、本発明のキットと略記する場合がある。)は、採血器具とラジカル阻害剤又はカオトロピック剤を含浸してなる濾紙とを含むものである。
以下、本発明のキットについて、その詳細を記載する。
上述した本発明の定量方法については、種々の分野への適用可能性も有している。例えば、上述の通り、NAD+やNMNの増減に関連する疾患として、加齢性疾患等が知られている。そのため、本発明の定量方法により得られた定量結果と、上記疾患との関連性を利用した分析(例えば、判定、診断等)を実施することも可能であると考えられる。
被験対象に由来する血液が添加された特定の濾紙から、NAD+及びNMNを含む成分を抽出するために用いる溶媒(即ち、これは、本発明にかかる工程1における溶媒に相当する。以下、抽出液と略記する場合がある。)について、最適なものを探索した。
尚、本実施例1の意図について補足すると、本実施例1では、上記抽出液の最適化に焦点を当てているため、濾紙は使用していない。具体的な手法は以下の通りであるが、血液に種々の候補抽出液を添加し、その後の溶液をそのまま用いて、質量分析計によりNAD+及びNMNを定量する実験系となっている。
6週齢の雄性SDラット(3匹)について、イソフルラン吸入麻酔下で開腹、腹部大動脈から全採血を行い、血液を採取した。採取した個体別血液(即ち、全血)のうち、200μLを1.5mLのマイクロチューブに分注した後、遠心分離(13,200×g、5分、4℃)を行った。遠心後の上清を除き、遠心残渣を血球画分とした。
その後、超純水(Milli-Q integral 5システム/Merck Ltd.)とアセトニトリル(Thermo Fisher Scientific)を100:0、80:20、60:40、40:60、20:80及び0:100の比率でそれぞれ混合した計6種類の抽出液を調製した。
1.5mLのマイクロチューブに個体別血液或いは血球を5μL、内部標準物質(NAD-d4及びNMN-d5 / Toronto Research Chemicals, Inc.)混合水溶液を10μL及び抽出液を295μL添加してボルテックスミキサーで撹拌した後、マイクロミキサー(TOMY MICRO TUBE MIXER MT-400、撹拌速度5)で30分間、室温下で混合した。混合後の血液或いは血球抽出溶液をマイクロチューブに100μLずつ分取し、アセトニトリル200μLを添加してボルテックスで撹拌した後、遠心分離(24,250×g、10分、4℃)を行った。遠心後の上清100μLをバイアルに分取し、最終有機溶媒含量が67%となるように、使用した抽出液に応じて希釈した内部標準物質混合水溶液を0μL~50μL添加して混合した。その後、下記分析条件に従いLC-MS/MSでNAD+及びNMNをそれぞれ測定した。
上記の実験結果を表4に示す。
しかしながら、アセトニトリル含有率を80%以上に調製した場合では、NAD+及びNMNの濃度が大幅に低下することが分かった。また、この結果の傾向は、血球を用いた場合においても同様であった。
実施例1の結果より、血液中のNAD+及びNMNの定量において、これらを血液から最も効率よく抽出し得る溶媒は、水であることが分かった。
本結果について考察すると、定量対象であるNAD+及びNMNは、血球中に存在している。よって、水による浸透圧作用で当該血球成分が破壊されることにより、これらを効率良く検出することができたものと推察される。
被験対象に由来する血液の添加対象である濾紙(即ち、本発明にかかる工程1における濾紙に相当する。)について、被験対象に由来する血液が添加された濾紙を一定期間、冷蔵保存した場合において、NAD+及びNMNを定量するに際し最適なものを探索した。
具体的な実験手法は以下の通りである。
1試験あたり5名の被検者(成人男女)から、MBS微量採血検査キット(株式会社マイクロブラッドサイエンス)を用いた自己採血により血液約120μL(キットの回収容器2本分)を採取し、サンプル処理を行うまで氷上に静置した。被験者は採取日の朝は絶食とし、午前9時頃に採取を行った。試験は計4回実施し、採取血液量不足による欠落1名を除いた延べ人数19名で評価を行った。
採取された血液を被検者別に1.5mLのマイクロチューブに回収し、緩やかなピペッティングにより混合した。血液5μLを4種類の濾紙(Whatman FTA DMPK-A Card/GE healthcare、QIAcard FTA DMPK-B Card/QIAGEN、QIAcard FTA DMPK-C Card/QIAGEN、Whatman 903 protein saver card/Cytiva)に複数箇所スポット(滴下/添加)し、吸湿規格袋(吸湿くん(登録商標)/丸東産業株式会社)に封入した後、冷蔵保存した。次いで、血液スポット後に冷蔵保存した濾紙について、2日間、2週間(14日間若しくは15日間)または1月間(30日間)保存後、血液をスポットした箇所を切り取り、2mLマイクロチューブに回収した。内部標準物質(NAD-d4及びNMN-d4/Toronto Research Chemicals, Inc.)混合水溶液を300μL添加してボルテックスで撹拌した後、マイクロミキサー(TOMY MICRO TUBE MIXER MT-400、撹拌速度5)で30分間、室温下で混合した。血液抽出溶液をマイクロチューブに150μLずつ分取し、アセトニトリル300μLを添加してボルテックスで撹拌した後、遠心分離(24,250×g、10分、4℃)を行った。遠心後の上清40μLをバイアルに分取し、LC-MS/MSで測定した。
一方、初期値用の試料として血液5μLを2mLマイクロチューブに回収し(濾紙スポット無し)、内部標準物質(NAD-d4及びNMN-d4/Toronto Research Chemicals, Inc.)混合水溶液を300μL添加してボルテックスで撹拌した後、マイクロミキサー(TOMY MICRO TUBE MIXER MT-400、撹拌速度5)で30分間、室温下で混合した。血液抽出溶液をマイクロチューブに150μLずつ分取し、アセトニトリル300μLを添加してボルテックスで撹拌した後、遠心分離(24,250×g、10分、4℃)を行った。遠心後の上清40μLをバイアルに分取し、LC-MS/MSで測定した。
尚、上記Whatman FTA DMPK-A Cardについては、以下、DMPK-Aカードと略記する場合がある。QIAcard FTA DMPK-B Card については、以下、DMPK-Bカードと略記する場合がある。QIAcard FTA DMPK-C Cardについては、以下、DMPK-Cカードと略記する場合がある。また、Whatman 903 protein saver cardについては、903カードと略記する場合がある。
上記の実験結果を表8~11に示す。
一方、上記表10から明らかな通り、DMPK-Cカードを用いた場合の2日間、2週間及び1月間保存後のNAD+の濃度が、それぞれ初期値(0日間)の70.1%、66.6%及び54.3%であり、上記表11から明らかな通り、903カードを用いた場合の2日間、2週間及び1月間保存後のNAD+の濃度が、それぞれ初期値(0日間)の74.1%、77.2%及び82.6%であった。この結果より、NAD+については、DMPK-Aカード及びBカード(特に、DMPK-Bカード)が、DMPK-Cカード及び903カードと比較すると、各期間を通して平均的に冷蔵保存安定性の面で優れていることが分かった。
一方、DMPK-Cカードを用いた場合の2日間、2週間及び1月間保存後のNMNの濃度が、上記表10から明らかな通り、それぞれ初期値(0日間)の68.4%、52.9%及びNCであり、903カードを用いた場合の2日間、2週間及び1月間保存後のNMNの濃度が、上記表11から明らかな通り、それぞれ初期値(0日間)の60.1%、64.5%及び56.3%であった。この結果より、NMNについても、DMPK-Aカード及びBカードが、DMPK-Cカード及び903カードと比較すると、冷蔵保存安定性の面で優れていることが分かった。
従って、当該ケミカル剤による処理の有無や、その種類が、冷蔵保存安定性の面に寄与しているものと推察される。
尚、上記ケミカル剤については、DMPK-Aカードでは、ラジカル阻害剤(ドデシル硫酸ナトリウム)のことであり、DMPK-Bカードでは、カオトロピック剤(グアニジンチオシアン酸塩)のことである(Am.J.Trop.Med.Hyg.,99(2),2018,pp.256-265、又はBioanalysis,2013,5,2613-30等)。
被験対象に由来する血液の添加対象である濾紙(即ち、本発明にかかる工程1における濾紙に相当する。)について、被験対象に由来する血液が添加された濾紙を室温保存した場合において、NAD+及びNMNを定量するに際し最適なものを探索した。
具体的な実験手法は以下の通りである。
実施例2で調製した血液スポット濾紙の一部を、吸湿規格袋(吸湿くん(登録商標)/丸東産業株式会社)に封入した後、室温保存した。2日間、1週間(7日間)または2週間(15日間)室温保存後、血液をスポットした箇所を切り取り、2mLマイクロチューブに回収した。実施例2と同様の処理を行った後、実施例2と同様の条件によってLC-MS/MSで測定した。
上記の実験結果を表12~15に示す。
一方、上記表14から明らかな通り、DMPK-Cカードを用いた場合の2日間及び2週間保存後のNAD+の濃度が、それぞれ初期値(0日間)の55.9%及び50.2%であり、上記表15から明らかな通り、903カードを用いた場合の2日間及び2週間保存後のNAD+の濃度が、それぞれ初期値(0日間)の66.2%及び50.3%であった。この結果より、NAD+については、DMPK-Aカード及びBカードが、DMPK-Cカード及び903カードと比較すると、室温保存安定性の面で優れていることが分かった。
一方、上記表14から明らかな通り、DMPK-Cカードを用いた場合の2日間及び2週間保存後のNMNの濃度については、これを定量することができなかった。また、上記表15から明らかな通り、903カードを用いた場合の2日間保存後のNMNの濃度は初期値(0日間)の79.8%であったものの、2週間保存後のNMNの濃度については、これを定量することができなかった。この結果より、NMNについても、DMPK-Aカード及びBカードが、DMPK-Cカード及び903カードと比較すると、室温保存安定性の面で優れていることが分かった。
被験対象に由来する血液の添加対象である濾紙(即ち、本発明にかかる工程1における濾紙に相当する。)について、当該被験対象に由来する血液が添加された濾紙からのNAD+及びNMNの抽出効率の観点から、NAD+及びNMNを定量するに際し最適なものを探索した。
具体的な実験手法は以下の通りである。
濾紙の有無により、NAD+及びNMNの抽出効率を評価した。濾紙なしの試料の調製法については、実施例2と同様である。
一方、濾紙ありの試料の調製法についても、実施例2の方法と同様である。即ち、血液5μLを4種類の濾紙(Whatman FTA DMPK-A Card/GE healthcare、QIAcard FTA DMPK-B Card/QIAGEN、QIAcard FTA DMPK-C Card/QIAGEN、Whatman 903 protein saver card/Cytiva)にそれぞれスポットした後、実施例2と同様の種々の処理を行った後、実施例2や3のような一定期間の冷蔵或いは室温保存はせずに、実施例2と同様の条件によってLC-MS/MSで測定した。
上記の実験結果を表16及び17に示す。
一方、上記表17から明らかな通り、DMPK-Cカード及び903カードを用いた場合、濾紙からのNAD+の抽出効率がそれぞれ72.9%及び77.2%であった。本結果より、NAD+について、DMPK-A及びBカードが、DMPK-Cカード及び903カードと比較すると、抽出効率の面で優れていることが分かった。
一方、上記表17から明らかな通り、DMPK-Cカード及び903カードを用いた場合、濾紙の抽出効率がそれぞれ87.9%及び73.2%であった。本結果より、NMNについても、DMPK-A及びBカードが、DMPK-Cカード及び903カードと比較すると、抽出効率の面で優れていることが分かった。
上記実施例2~4より、DMPK-Aカード及びBカード(即ち、本発明にかかる工程1における濾紙に相当する。)については、上記性質を満たし得ることが示されたと言える。即ち、DBS法を用いた、NAD+及びNMNの定量方法に最適であることが分かった。
被験対象に由来する血液が添加された濾紙と、溶媒(抽出液)とを接触させた後の溶媒(以下、抽出後溶液と略記する場合がある。)の保存安定性について検討した。
具体的な手法については、以下の通りである。
実施例2で得られた濾紙保存後(冷蔵15日)の血液抽出溶液の一部(100%水)及びLC-MS/MS測定用の溶液の一部(67%アセトニトリル含有水)をそれぞれ冷凍保管した。71日冷凍保管後、前者については2倍量のアセトニトリルを添加、混合及び遠心分離(24,250×g、10分、4℃)した後の上清を、後者は保管後の溶液を遠心分離(24,250×g、10分、4℃)した後の上清を実施例2の条件と同様にしてLC-MS/MSで測定した。
上記の実験結果を表18~21に示す。
一方、表20及び21から明らかな通り、各濾紙の抽出液について、抽出液にアセトニトリルを添加した溶液の形態で保存した場合のNAD+の保存安定性は、DMPK-A、C及び903カードについて、それぞれ89.6%、73.6%及び92.1%であり、抽出液の状態(100%水)の時の値からの改善がみられた。
Claims (9)
- 被験対象のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を定量する方法であって、下記工程1及び2を含む、前記方法:
(工程1)前記被験対象に由来する血液が添加された、カオトロピック剤を含浸してなる濾紙と、溶媒とを接触させる工程1、及び
(工程2)前記工程1によって得られた溶媒中の前記ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を定量する工程2。 - 前記カオトロピック剤が、グアニジン塩を含むものである、請求項1に記載の方法。
- 前記グアニジン塩が、グアニジンチオシアン酸塩である、請求項2に記載の方法。
- 前記濾紙が、セルロースからなるものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶媒が、水及び/又はアセトニトリルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記溶媒が、水である、請求項5に記載の方法。
- 前記工程2における前記定量が、質量分析計を用いた方法又は比色法によりなされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットであって、採血器具、及びカオトロピック剤を含浸してなる濾紙を含む、前記キット。
- 請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実施するための、カオトロピック剤を含浸してなる濾紙。
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