本明細書に記載または引用される手法および手順は、概して充分に理解されており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., (2003));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney), ed., 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)に記載された広範に利用されている技法などの従来の技法を用いて、当業者により一般的に使用される。
I. 定義
別途定義しない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994)、およびMarch, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)は、本出願において使用される用語の多くに対する一般的指針を当業者に提供する。特許出願および刊行物を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義が適用され、該当する場合はいつでも、単数形で使用された用語は複数形をも含み、その逆もまた同様である。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定を意図したものではないことが、理解されるべきである。下記の定義のいずれかが、参照により本明細書に組み入れられた任意の文書と矛盾する場合には、下記の定義が優先するものとする。
本明細書の趣旨での「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義するヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン (VL) フレームワークまたは重鎖可変ドメイン (VH) フレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでもよいし、またはアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸の変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
「アフィニティ」は、分子(例えば、抗体)の結合部位1個と、分子の結合パートナー(例えば、抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。別段示さない限り、本明細書で用いられる「結合アフィニティ」は、ある結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する、固有の結合アフィニティのことをいう。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離定数 (KdまたはKD) により表すことができる。アフィニティは、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において知られた通常の方法によって測定され得る。結合アフィニティを測定するための個々の具体的な実例となるおよび例示的な態様については、後述する。「アフィニティ」、「結合アフィニティ」、「結合能」、および「結合活性」は、相互に交換可能に用いられ得る。用語「結合活性」は、ある分子(例えば、抗体)の単一または複数の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。本明細書において、結合活性は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1の相互作用を反映する活性に厳密に限定されるものではない。結合対のメンバーが一価結合および多価結合の両方の様式で相互に結合し得る場合、結合活性は、これらの結合の合計の強度である。そのパートナーYに対する分子Xの結合活性は、通常、解離定数(KD)により表され得る。あるいは、結合速度および解離速度(KonおよびKoff)が、結合の評価に使用され得る。結合活性は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で公知の一般的方法によって測定され得る。結合アフィニティを測定するための具体的な実例となるおよび例示的な態様については、後述する。
「アフィニティ成熟」抗体は、改変を備えていない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域 (hypervariable region: HVR) 中に抗体の抗原に対するアフィニティの改善をもたらす1つまたは複数の改変を伴う、抗体のことをいう。
用語「抗C1s抗体」、「C1sに結合する抗体」、または「C1sに対する結合活性を有する抗体」は、充分なアフィニティでC1sと結合することのできる抗体であって、その結果その抗体がC1sを標的化したときに診断剤および/または治療剤として有用であるような、抗体のことをいう。一態様において、無関係な非C1sタンパク質への抗C1s抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法 (radioimmunoassay: RIA) により測定したとき、抗体のC1sへの結合の約10%未満である。特定の態様において、C1sに結合する抗体は、1マイクロモル濃度 (μM) 以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。特定の態様において、抗C1s抗体は、異なる種からのC1s間で保存されているC1sのエピトープに結合する。
本明細書において用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限りは、これらに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含む、種々の抗体構造を包含する。
「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてその参照抗体が自身の抗原への結合を50%以上、阻止する抗体のことをいい、かつ逆にいえば、参照抗体は、競合アッセイにおいて前述の抗体が自身の抗原への結合を50%以上、阻止する。例示的な競合アッセイが、本明細書で提供される。
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なった供給源または種に由来する抗体のことをいう。
抗体の「クラス」は、抗体の重鎖に備わる定常ドメインまたは定常領域のタイプのことをいう。抗体には5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。そして、このうちいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられ得る。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。
本明細書でいう用語「細胞傷害剤」は、細胞の機能を阻害するまたは妨げる、および/または細胞の死または破壊の原因となる物質のことをいう。細胞傷害剤は、これらに限定されるものではないが、放射性同位体(例えば、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212Pb、およびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);増殖阻害剤;核酸分解酵素などの酵素およびその断片;抗生物質;例えば、低分子毒素または細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素的に活性な毒素(その断片および/または変異体を含む)などの、毒素;および、以下に開示される、種々の抗腫瘍剤または抗がん剤を含む。
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する、抗体のアイソタイプによって異なる生物活性のことをいう。抗体のエフェクター機能の例には次のものが含まれる:C1q結合および補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity:CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity: ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;および、B細胞活性化。
ある剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効である、必要な用量におけるおよび必要な期間にわたっての量のことをいう。
用語「エピトープ」は、抗体によって結合され得る任意の決定基を含む。エピトープは、抗原を標的とする抗体によって結合される該抗原の領域であり、抗体に直接接触する特定のアミノ酸を含む。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基などの化学的に活性な表面分子群を含むことができ、かつ特異的な三次元構造特性および/または特定の電荷特性を備えることができる。一般的に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複雑な混合物中でその標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
本明細書で用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列Fc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン(Lys447)またはグリシン-リジン(残基446-447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、FRおよびHVRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
用語「全長抗体」、「完全抗体」、および「全部抗体」は、本明細書では相互に交換可能に用いられ、天然型抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体のことをいう。
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を備える抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を、明確に除外するものである。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択群において最も共通して生じるアミノ酸残基を示すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。通常、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一態様において、VLについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループκIである。一態様において、VHについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループIIIである。
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体のことをいう。ある態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、当該可変領域においては、すべてのもしくは実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、かつ、すべてのもしくは実質的にすべてのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化された形態」は、ヒト化を経た抗体のことをいう。
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」(complementarity determining region))、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む、すなわち、VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)の、計6つのHVRを含む。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
別段示さない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の異種の分子にコンジュゲートされた抗体である(異種の分子は、これに限定されるものではないが、細胞傷害剤を含む)。
「個体」または「対象」は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の態様では、個体または対象は、ヒトである。
「単離された」抗体は、そのもともとの環境の成分から分離されたものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点分離法 (isoelectric focusing: IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で測定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の総説として、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007) を参照のこと。
「単離された」核酸は、そのもともとの環境の成分から分離された核酸分子のことをいう。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
「抗C1s抗体をコードする単離された核酸」または「抗C1r抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。
本明細書でいう用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいう。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、生じ得る変異抗体(例えば、自然に生じる変異を含む変異抗体、またはモノクローナル抗体調製物の製造中に発生する変異抗体。そのような変異体は通常若干量存在している。)を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるものである、という抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を求めるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含んだトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な手法によって作成されてよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
「裸抗体」は、異種の部分(例えば、細胞傷害部分)または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体のことをいう。裸抗体は、薬学的製剤中に存在していてもよい。
「天然型抗体」は、天然に生じる様々な構造を伴う免疫グロブリン分子のことをいう。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VH) を有し、それに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VL) を有し、それに定常軽鎖 (CL) ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κおよびλと呼ばれる、2つのタイプの1つに帰属させられ得る。
用語「添付文書」は、治療用品の商用パッケージに通常含まれ、そのような治療用品の使用に関する、適応症、用法、用量、投与方法、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む使用説明書のことをいうために用いられる。
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign (DNASTAR) ソフトウェア、またはGENETYX (登録商標) (Genetyx Co., Ltd.) などの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。
ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (U.S. Copyright Office, Wasington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
用語「薬学的製剤」および「薬学的組成物」は、相互に交換可能に用いられ、その中に含まれた有効成分の生物活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤が投与される対象に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない、調製物のことをいう。
「薬学的に許容される担体」は、対象に対して無毒な、薬学的製剤および薬学的組成物中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
本明細書で用いられる語句「特異的に結合する」は、抗体が、バックグラウンド結合(すなわち、非特異的結合)を含むが有意な結合(すなわち、特異的結合)を含まない結合レベルで関心対象ではない抗原に結合する、活性または特徴のことをいう。言い換えると、「特異的に結合する」は、抗体が、バックグラウンド結合(すなわち、非特異的結合)に加えてまたはそれに代えて有意な結合(すなわち、特異的結合)を含む結合レベルで関心対象の抗原に結合する、活性または特徴のことをいう。特異性は、本明細書で言及されているまたは当技術分野で公知の任意の方法によって測定され得る。上記の非特異的結合またはバックグラウンド結合のレベルは、ゼロであり得、またはゼロではなくゼロ付近であり得、または当業者によって技術的に無視される程度に非常に小さいものであり得る。例えば、当業者が適当な結合アッセイにおいて抗体と関心対象ではない抗原との間の結合に関して有意な(または相対的に強い)シグナルを検出または観察できない場合、その抗体が関心対象ではない抗原に「特異的に結合しない」と言うことができる。逆に、当業者が適当な結合アッセイにおいて抗体と関心対象の抗原の間の結合に関して有意な(または相対的に強い)シグナルを検出または観察できる場合、その抗体が関心対象の抗原に「特異的に結合する」と言うことができる。
本明細書でいう用語「C1s」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型C1sのことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないC1sも、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態のC1sも包含する。この用語はまた、自然に生じるC1sの変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。例示的なヒトC1sのアミノ酸配列を、配列番号:1に示す。例示的なカニクイザルC1sのアミノ酸配列を、配列番号:3に示す。
本明細書でいう用語「C1r」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型C1rのことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないC1rも、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態のC1rも包含する。この用語はまた、自然に生じるC1rの変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。例示的なヒトC1rのアミノ酸配列を、配列番号:2に示す。例示的なカニクイザルC1rのアミノ酸配列を、配列番号:4に示す。
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原へと結合させることに関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインのことをいう。天然型抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、通常、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む、類似の構造を有する(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007) 参照。)。1つのVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を与えるに充分であろう。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体は、当該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれVLまたはVHドメインの相補的ライブラリーをスクリーニングして、単離されてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991) 参照。
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されたもう1つの核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
II. 抗体
一局面において、本発明は一部には、抗原結合領域および抗体定常領域を含む抗体に基づく。特定の態様において、C1sに結合する抗体が提供される。特定の態様において、C1sに特異的に結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、例えば補体介在性の疾患または状態の診断または治療に有用である。
一態様において、C1sの種は一つまたは複数の種から選択できる。特定の態様において、種は、ヒトおよび非ヒト動物である。特定の態様において、種は、ヒト、ラット、およびサル(例えば、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、チンパンジー、およびヒヒ)である。特定の態様において、種は、ヒトおよびサル(例えば、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、チンパンジー、およびヒヒ)である。特定の態様において、種は、ヒトおよびカニクイザルである。
本態様において、抗体は、抗体断片、キメラ抗体およびヒト化抗体、ヒト抗体、ライブラリー由来抗体、ならびに多重特異性抗体を含む、様々な種類の抗体を包含する。本態様において、抗体は全長抗体であってもよく、例えば、完全IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4抗体、または本明細書で定義される他の抗体クラスもしくはアイソタイプであってもよい。
(抗体断片)
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片は、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fv、および scFv断片、ならびに、後述する他の断片を含む。特定の抗体断片についての総説として、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) を参照のこと。scFv断片の総説として、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp.269-315 (1994);加えて、WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みin vivoにおける半減期の長くなったFabおよびF(ab')2断片についての論説として、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
ダイアボディは、二価または二重特異的であってよい、抗原結合部位を2つ伴う抗体断片である。例えば、EP404,097号; WO1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993) 参照。トリアボディ (triabody) やテトラボディ (tetrabody) も、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) に記載されている。
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516 B1号参照)。
抗体断片は、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、完全抗体のタンパク質分解的消化、組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌 (E. coli) またはファージ)による産生を含む、種々の手法により作ることができる。
(キメラ抗体およびヒト化抗体)
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;および、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984) に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、親抗体のものからクラスまたはサブクラスが変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片も含む。
特定の態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティを維持したままでヒトへの免疫原性を低下させるために、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は1つまたは複数の可変ドメインを含み、当該可変ドメイン中、HVR(例えばCDR(またはその部分))は非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置換されている。
ヒト化抗体およびその作製方法は、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において総説されており、また、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域 (specificity determining region: SDR) グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (リサーフェイシングを記載); Dall'Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (FRシャッフリングを記載);ならびに、Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングのための「ガイドセレクション」アプローチを記載)において、さらに記載されている。
ヒト化に使われ得るヒトフレームワーク領域は、これらに限定されるものではないが:「ベストフィット」法(Sims et al., J. Immunol. 151:2296 (1993) 参照)を用いて選択されたフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992) および Presta et al., J. Immunol., 151:2623 (1993) 参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008) 参照);および、FRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) および Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996) 参照)を含む。
(ヒト抗体)
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られる種々の手法によって製造され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5:368-74 (2001) および Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008) に、概説されている。
ヒト抗体は、抗原チャレンジ(負荷)に応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより、調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または、染色体外にもしくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7,041,870号;ならびに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を、併せて参照のこと。このような動物によって生成された完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法でも作ることができる。ヒトモノクローナル抗体の製造のための、ヒトミエローマおよびマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は、既に記述されている(例えば、Kozbor, J. Immunol. 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol. 147: 86 (1991) 参照。)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006) に述べられている。追加的な方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、および、Ni, Xiandai Mianyixue 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology 20(3):927-937 (2005) およびVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択する手法を、以下に述べる。
(ライブラリー由来の抗体)
本発明の抗体は、所望の1つまたは複数の活性を伴う抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリーの生成や、所望の結合特性を備える抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするための、様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al., Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) において総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2):299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5):1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004); およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132 (2004) に記載されている。
特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングされ、無作為にファージライブラリー中で再結合され、当該ファージライブラリーは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol. 12: 433-455 (1994) に述べられているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv (scFv) 断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築することを要さずに、免疫源に対する高アフィニティ抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993) に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化することなしに、広範な非自己および自己抗原への抗体の単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリーは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol. 227: 381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変CDR3領域をコードしかつin vitroで再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載した特許文献は、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに、米国特許出願公開第2005/0079574号、2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なす。
(多重特異性抗体)
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。特定の態様において、結合特異性の1つは、C1sに対するものであり、もう1つは他の任意の抗原へのものである。特定の態様において、二重特異性抗体は、C1sの異なった2つのエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体は、C1sを発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するために使用されてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体としてまたは抗体断片として調製され得る。
多重特異性抗体を作製するための手法は、これらに限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組み換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、WO93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991) 参照)、および「knob-in-hole」技術(例えば、米国特許第5,731,168号参照)を含む。多重特異性抗体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果 (electrostatic steering effect) を操作すること (WO2009/089004A1);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(米国特許第4,676,980号およびBrennan et al., Science 229: 81 (1985)参照);ロイシンジッパーを用いて2つの特異性を有する抗体を作成すること(Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992) 参照);「ダイアボディ」技術を用いて二重特異性抗体断片を作製すること(Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993) 参照);および、単鎖Fv (scFv) 二量体を用いること(Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994) 参照);および、例えばTutt et al., J. Immunol. 147: 60 (1991) に記載されるように三重特異性抗体を調製すること、によって作製してもよい。
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を伴う改変抗体も、本明細書では含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576 A1号参照)。
本明細書で抗体または断片は、C1sと別の異なる抗原とに結合する1つの抗原結合部位を含む、「デュアルアクティングFab」または「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号参照)。
A. 単離された抗体
特定の態様において、抗体は単離された抗体である。本態様において、単離された抗体は、抗原結合領域および抗体定常領域を含む。
本態様において、単離された抗体は、C1sに特異的に結合してC1qrs複合体からのC1qの解離を促進させる解離促進機能を有してもよい。本態様において、単離された抗体は、C1sに特異的に結合してC1qのC1r2s2への結合を阻害するように、ブロッキング機能を有してもよい。単離された抗体は、解離促進機能およびブロッキング機能のいずれか一方または両方を有してもよい。好ましくは、抗体は、これらの機能の両方を有する。
一態様において、単離された抗体は、pH依存的にC1sに特異的に結合する。本態様の具体例として、ヒトおよび/またはカニクイザルC1sに対する該抗体の結合活性を表面プラズモン共鳴によって測定する場合、
i)中性pH領域における解離定数(KD)値は信頼性をもって計算することができ、かつ酸性pH領域でのKD値は、結合活性が無いかもしくは結合活性が非常に低いために信頼性をもって計算することができない、または
ii)中性pH領域および酸性pH領域の両方でのKD値を信頼性をもって計算することができるという条件で、中性pH領域でのKD値に対する酸性pH領域でのKD値の比(酸性KD/中性KD比)は10より大きい。
そのような抗体は、患者における用量および投与頻度を減らすことができ、結果としてその総用量を減らすことができるため、医薬品として特に優れていると予想される。抗C1s抗体は、血漿から(C1sへの結合を通じて)C1r2s2を除去するのみであり、血漿からC1qを除去しないため、C1qrs複合体に結合してこれを血漿から除去する抗体と比較して優れた安全性プロファイルを有すると予想される。その結果、C1q欠乏に関連する副作用が回避され得る。加えて、C1qの高速解離促進能を有する抗体は、補体活性のより速い中和を示すと予想され、これは、治療効果のより速い発生につながり得る。
(a1)BIACORE(登録商標)/解離促進のコンセプト
一態様において、C1qとC1r2s2複合体との間の相互作用を阻害する単離された抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイ用のチップ(例えばBIACORE(登録商標)チップ)上のC1qrs複合体に結合してC1qrs複合体からのC1qの解離を促進させる抗体である。いくつかの態様において、上記のC1qrs複合体に結合してC1qrs複合体からのC1qの解離を促進させる機能は、本明細書において「解離促進機能/活性」または「C1q解離促進機能/活性」と呼ばれる。この機能/活性は、表面プラズモン共鳴アッセイ、例えば本明細書に記載されるBIACORE(登録商標)アッセイを用いて定性的にまたは定量的に適切に評価され得る。さらなる態様において、抗体は、十分な時間経過後に、表面プラズモン共鳴アッセイ、例えばBIACORE(登録商標)アッセイにより決定される、その抗体の存在下での応答単位(RU)の値がその抗体の非存在下での応答単位(RU)の値よりも低い場合に、解離促進機能を有する抗体であると判定され得る。そのようなアッセイから得られるセンサーグラムにおいて、C1qおよび抗体の存在下での曲線の、C1qの存在下かつ抗体の非存在下での曲線への近接が特定されうる。さらなる態様において、C1qの存在下かつ抗体の非存在下での曲線がC1qおよび抗体の存在下での曲線と交差する「クロスオーバー時点」が特定され得る(詳細については実施例を参照のこと)。厳密に言うと、ノイズ、または前者の曲線と交差するときの後者の曲線の振動が原因で、一つのセンサーグラムにおいてさえも複数のクロスオーバー時点が観察され得る。そのような例において、複数のクロスオーバー時点のうちのいずれかが「クロスオーバー時点」として選択され得る。「十分な時間経過」は、測定の目的上、応答単位(RU)の値の測定時点が「クロスオーバー時点」よりも十分に後であることを意味する。いくつかの態様において、応答単位(RU)の値の測定時点は、抗体注入開始時点の少なくとも60秒後、100秒後、150秒後、200秒後、500秒後、700秒後、1000秒後、1500秒後、または2000秒後である。あるいは、測定時点は、クロスオーバー時点の少なくとも100秒後、200秒後、300秒後、400秒後、500秒後、600秒後、700秒後、800秒後、900秒後、1000秒後、3000秒後、5000秒後、7000秒後、または10000秒後であり得る。
一態様において、C1qとC1r2s2複合体との間の相互作用を阻害する単離された抗体は、例えば「C1r2s2複合体およびC1qの捕捉量が、それぞれ200共鳴単位(RU)および200共鳴単位(RU)であり、アナライトとして500 nMの抗体を10マイクロリットル(μL)/分で注入する」という条件を用いるBIACORE(登録商標)アッセイによって決定される場合の(例えば、BIACORE(登録商標)アッセイにおける)クロスオーバー時点が抗体注入開始時点の後60秒以内、100秒以内、150秒以内、200秒以内、500秒以内、700秒以内、1000秒以内、1500秒以内、または2000秒以内である場合に、解離促進機能を有する抗体であると判定され得る。
一態様において、C1qとC1r2s2複合体との間の相互作用を阻害する単離された抗体は、例えば「C1r2s2複合体およびC1qの捕捉量が、それぞれ200共鳴単位(RU)および200共鳴単位(RU)であり、アナライトとして500 nMの抗体を10μL/分で注入する」という条件を用いるBIACORE(登録商標)アッセイによって決定される場合、抗体注入開始時点の後100秒以内、300秒以内、500秒以内、700秒以内、1000秒以内、1500秒以内、2000秒以内、3000秒以内、5000秒以内、7000秒以内、または10000秒以内に、C1qのほぼすべて(またはすべて)がC1qrs複合体から解離する場合に、解離促進機能を有する抗体であると判定され得る。例えば、そのようなアッセイから得られるセンサーグラムにおいて、C1qおよび抗体の存在下での値(RU)が抗体の存在下かつC1qの非存在下での値(RU)に近いまたはその値に達する場合に、「C1qのほぼすべて(またはすべて)がC1qrs複合体から解離する」と判定され得る。本明細書において、「(C1qの)ほぼすべて」は、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高い割合を表し、「(C1qの)すべて」は、割合100%を表す。解離するC1qの割合は、本明細書に記載される任意のアッセイによって定量的に決定され得る。いくつかの態様において、本発明は、C1r2s2複合体からのC1qの解離を促進させる抗体のスクリーニング方法であって、そのような抗体の「解離促進機能/活性」を測定する上記方法を用いる、スクリーニング方法を提供する。一態様において、このスクリーニング方法は、C1qとC1r2s2複合体との間の相互作用を阻害する抗体を選択する工程、すなわち、C1qrs複合体に結合してC1qrs複合体からのC1qの解離を促進させる抗体を選択する工程を含む。解離促進機能/活性を有する抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイ、例えば本明細書に記載されるBIACORE(登録商標)アッセイを用いて適切に選択され得る。いくつかの態様において、このスクリーニング方法は、十分な時間経過後に、表面プラズモン共鳴アッセイ、例えばBIACORE(登録商標)アッセイによって、(i)抗体の存在下での応答単位(RU)の値および(ii)抗体の非存在下での応答単位(RU)の値を決定する工程を含む。このスクリーニング方法は、上記(i)の値と上記(ii)の値を比較する工程を含み得る。このスクリーニング方法は、上記(i)の値が上記(ii)の値よりも低い場合に、その抗体を選択する工程を含み得る。このスクリーニング方法は、C1qの存在下かつ抗体の非存在下での曲線がC1qおよび抗体の存在下での曲線と交差する「クロスオーバー時点」を特定する工程を含み得る。上記のように、一つのセンサーグラムにおいてさえも複数のクロスオーバー時点が観察され得、複数のクロスオーバー時点のいずれかが、「クロスオーバー時点」として選択され得る。いくつかの態様において、このスクリーニング方法は、抗体注入開始時点の少なくとも60秒後、100秒後、150秒後、200秒後、500秒後、700秒後、1000秒後、1500秒後、または2000秒後に応答単位(RU)の値を測定する工程を含み得る。あるいは、このスクリーニング方法は、クロスオーバー時点の少なくとも100秒後、200秒後、300秒後、400秒後、500秒後、600秒後、700秒後、800秒後、900秒後、1000秒後、3000秒後、5000秒後、7000秒後、または10000秒後に応答単位(RU)の値を測定する工程を含み得る。いくつかの態様において、このスクリーニング方法は、C1qとC1r2s2複合体との間の相互作用を阻害する抗体または解離促進機能を有する抗体を選択する工程であって、例えば「C1r2s2複合体およびC1qの捕捉量が、それぞれ200共鳴単位(RU)および200共鳴単位(RU)であり、アナライトとして500 nMの抗体を10マイクロリットル(μL)/分で注入する」という条件を用いるBIACORE(登録商標)アッセイによって決定される場合のその抗体のクロスオーバー時点が抗体注入開始時点の後60秒以内、100秒以内、150秒以内、200秒以内、500秒以内、700秒以内、1000秒以内、1500秒以内、または2000秒以内である場合にその抗体を選択する工程を含み得る。いくつかの態様において、このスクリーニング方法は、C1qとC1r2s2複合体との間の相互作用を阻害する抗体または解離促進機能を有する抗体を選択する工程であって、例えば「C1r2s2複合体およびC1qの捕捉量が、それぞれ200共鳴単位(RU)および200共鳴単位(RU)であり、アナライトとして500 nMの抗体を10μL/分で注入する」という条件を用いるBIACORE(登録商標)アッセイによって決定される場合、抗体注入開始時点の後100秒以内、300秒以内、500秒以内、700秒以内、1000秒以内、1500秒以内、2000秒以内、3000秒以内、5000秒以内、7000秒以内、または10000秒以内に、C1qのほぼすべて(またはすべて)がC1qrs複合体から解離する場合にその抗体を選択する工程を含み得る。上記のように、「(C1qの)ほぼすべて」は、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高い割合を表し、「(C1qの)すべて」は100%を表し、解離するC1qの割合は、BIACORE(登録商標)アッセイを含む本明細書に記載される任意のアッセイによって定量的に決定され得る。
(a2)BIACORE(登録商標)/ブロッキングのコンセプト
一態様において、本発明は、C1qとC1r2s2複合体との間の相互作用を阻害する単離された抗体を提供し、この抗体は、この抗体がC1r2s2に結合してC1r2s2に対するC1qの結合を阻害するようなブロッキング機能を有する。さらなる態様において、抗体は、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれより高いブロッキング比率を有する。このブロッキング機能/活性またはブロッキング比率は、BIACORE(登録商標)アッセイを用いることによって決定され得る。C1qブロッキングのレベルを評価するために、以下の条件が使用され得る:C1r2s2の捕捉量は、50、100、200、400共鳴単位(RU)を目標とする。250、500、1000、2000 nMの抗体変異体を注入して抗体結合を飽和させ、続いて、250、500、1000、2000 nMの抗体変異体と共にまたはそれなしで50、100、200 nMのヒトC1qを注入する。ブロッキング比率は、次の式により算出する:[1-(抗体変異体の存在下でのヒトC1q結合応答/抗体変異体の非存在下でのヒトC1q結合応答)]×100%。
(a3)pH依存性
一態様において、単離された抗体は、pH依存的にC1sに特異的に結合する。好ましい態様において、酸性pH領域(例えばpH6.0)でのC1sに対する抗体の結合活性は、中性pH領域(例えばpH7.4)での結合活性よりも低い。
本態様において、抗体は、結合活性を表面プラズモン共鳴によって測定し、そのデータに基づいて解離定数(KD)値を計算する場合、酸性pH領域でのKD値の信頼性が低いか、または酸性pH領域においてC1sに対する結合活性を測定できない程に、酸性pH領域においてC1sに対して非常に低い結合性を有してもよい。すなわち、ヒトおよび/またはカニクイザルC1sに対する抗体の結合活性を表面プラズモン共鳴によって測定する場合、
i)中性pH領域でのKD値は信頼性をもって計算することができ、かつ酸性pH領域でのKD値は、結合活性が無いかもしくは結合活性が非常に低いために信頼性をもって計算することができない、または
ii)中性pH領域および酸性pH領域の両方でのKD値が信頼性をもって計算することができるという条件で、中性pH領域でのKD値に対する酸性pH領域でのKD値の比(酸性KD/中性KD比)は10より大きい。
本態様において、上記ii)の酸性KD/中性KD比は、好ましくは14以上、44以上、45以上、72以上、99以上、100以上、107以上、110以上、117以上、120以上、138以上、181以上、209以上、225以上、278以上である。本態様において、上記ii)の酸性KD/中性KD比は、より好ましくは44以上、45以上、72以上、99以上、100以上、107以上、110以上、117以上、120以上、138以上、181以上、209以上、225以上、278以上である。
本事例における用語「信頼性をもって」が意味するところを以下に記載する。各サンプルのpH7.4およびpH6.0におけるKD値は、37℃でBIACORE(登録商標)T200機器(Cytiva)を用いて決定される。精製マウス抗ヒトIgκ軽鎖(GE Healthcare)は、アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いてCM5センサーチップのすべてのフローセル上に固定化され得る。20 mM ACES、150 mM NaCl、1.2 mM CaCl2、1 mg/mL ウシ血清アルブミン(BSA)(IgG非含有)、1mg/mL CMD(CM-デキストランナトリウム塩)、0.05% Tween(登録商標)20、および0.005%NaN3(pH7.4またはpH6.0)を含む緩衝液が、ランニングバッファーとして使用される。各抗体は、抗ヒトIgκ軽鎖を介してセンサー表面上に捕捉され得る。抗体捕捉量は50共鳴単位(RU)に調整される。pH7.4でのKD値については、ヒトC1r2s2複合体を、0、25、40、100、200、400 nM、0、12.5、25、40、100、200 nM、または0、6.3、12.5、25、50、100 nMの当該タンパク質複合体を30μL/分にて注入できるように、調製する。pH6.0でのKD値については、ヒトまたはカニクイザルC1r2s2複合体を、例えばグリシンpH2.0(GE Healthcare)を用いて、0、200、400、800、1600、3200 nM、または0、50、100、200、400、800 nMの当該タンパク質複合体を30μL/分にて注入できるように、調製する。サイクルごとに、例えばグリシンpH2.0(GE Healthcare)を用いてセンサー表面を再生する。BIACORE(登録商標)T200評価ソフトウェア、バージョン2.0(Cytiva)を用いて、KD値を取得する。pH6.0でのKD値を、pH7.4でのKD値と比較する(酸性KD/中性KD比)。BIACORE(登録商標)ソフトウェアの精度管理(quality control)結果が、抗体について「速度定数を一意的に決定できない」("kinetics constants cannot be uniquely determined")と記述した場合、当該抗体のKD値は信頼性をもって計算できないとみなした。
本事例の一態様において、表面プラズモン共鳴による結合活性の測定は、ヒトIgκ軽鎖を介して50共鳴単位の各抗体が捕捉されたセンサーチップと、20 mM ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、150mM NaCl、1.2mM CaCl2、1mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)、1mg/mL CM-デキストランナトリウム塩(CMD)、0.05%ポリソルベート20、0.005%NaN3を含むランニングバッファーとを用いて37℃にて行われる。
本態様において、前記抗体には、結合活性が無いかまたは結合活性が非常に低いために中性pH領域でのKD値を信頼性をもって計算することができない抗体は包含されない。
pH依存的な様式でのC1sへの結合に加えて、C1sに対するpH依存的抗体のアフィニティに対するカルシウムの影響が、別の重要な特性であり得る。C1sは、高カルシウム濃度下で二量体を形成するが、低カルシウム濃度下では単量体へと解離する。C1sが二量体状態にあるとき、二価抗体は、複数のC1s分子を架橋することによって免疫複合体を形成することができる。これにより、抗体は、アフィニティ型およびアビディティ型の両方の相互作用によって複合体内のC1s分子に結合することができ、それによってその抗体の見かけのアフィニティが増加する。これに対して、C1sが単量体状態にあるとき、抗体はアフィニティ型相互作用によってのみC1sに結合する。これは、pH依存的C1s抗体は血漿中の二量体C1sと免疫複合体を形成することができるが、酸性のエンドソーム内に入るとC1sは単量体へと解離することを意味する。これにより、免疫複合体が解体され、それが抗原からの抗体のpH依存的解離を増強する。
一局面において、単離された抗C1s抗体について、中性pHおよび酸性pHの両方において高カルシウム濃度下で測定された場合、中性pHでのそのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのそのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))は10より大きい。一局面において、単離された抗C1s抗体について、中性pHにおける高カルシウム濃度下および酸性pHにおける低カルシウム濃度下で測定された場合、中性pHでのそのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのそのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))は10より大きい。いくつかの態様において、単離された抗C1s抗体について、中性pHおよび酸性pHの両方において低カルシウム濃度下で測定された場合、中性pHでのそのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのそのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))は10より大きく、ここで該抗C1s抗体は二量体状態のC1sに結合する。
特定の理論に縛られるわけではないが、1)抗体によって結合されるC1sのエピトープ構造がカルシウムの非存在によって立体構造的に変化し得、それによって抗体のアフィニティが変わる場合、または2)抗体の相互作用(アフィニティ型もしくはアビディティ型)がC1sの状態(単量体状態もしくは二量体状態)に依存して変化し得る場合、KD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))を評価するために、特定の条件(中性pHにおける高カルシウム濃度下および酸性pHにおける低カルシウム濃度下)を使用する測定が使用され得る。
換言すると、抗体は、以下の(i)または(ii)に記載されるように酸性pHよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC1sに結合する:
(i)中性pHおよび酸性pHの両方において高カルシウム濃度下で測定された場合、中性pHでのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))が10より大きい、
(ii)中性pHにおける高カルシウム濃度下および酸性pHにおける低カルシウム濃度下で測定された場合、中性pHでのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))が10より大きい。
より一般的には、特定の理論に縛られるわけではないが、1)抗体によって結合される特定の抗原のエピトープ構造がカルシウムの非存在によって立体構造的に変化し得、それによって抗体のアフィニティが変わる場合、または2)抗体の相互作用(アフィニティ型もしくはアビディティ型)が抗原の状態(単量体状態もしくは二量体状態)に依存して変化し得る場合、KD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))を評価するために特定の条件(中性pHにおける高カルシウム濃度下および酸性pHにおける低カルシウム濃度下)を使用する測定が使用され得る。
したがって、抗体は、以下のように酸性pHよりも中性pHにおいて高いアフィニティで抗原に結合する:中性pHにおける高カルシウム濃度下および酸性pHにおける低カルシウム濃度下で測定された場合、中性pHにおける抗原結合活性のKD値に対する酸性pHにおける抗原結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))が10より大きい。
上記のKD比、すなわちKD(酸性pH)/KD(中性pH)は、親抗体(すなわち、本発明の改変前の元の抗体)と当該元の(親)抗体に対して1つまたは複数のアミノ酸変異(例えば、付加、挿入、欠失または置換)が導入された抗体との間で比較され得る。元の(親)抗体は、それがC1sに特異的に結合する限り、任意の公知の抗体または新たに単離された抗体であり得る。したがって、一局面において、単離された抗C1s抗体について、中性pHでのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))は、その元の(親)抗体の中性pHでのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))よりも少なくとも1.2倍、1.4倍、1.6倍、1.8倍、2倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、8倍、10倍高い。換言すると、本発明は、親(元の)抗体に1つまたは複数のアミノ酸変異(例えば、付加、挿入、欠失または置換)が導入され、以下の(ii)に対する(i)の比が少なくとも1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.5、3、3.5、4、5、8または10である、単離された抗C1s抗体を提供する:(i)単離された抗C1s抗体の中性pHでのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH));(ii)親(元の)抗体の中性pHでのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))。これらのKD比は、任意の(高または低)カルシウム濃度下で測定され得る、例えば、中性pHおよび酸性pHの両方において高カルシウム濃度下で測定され得る、または中性pHにおける高カルシウム濃度下および酸性pHにおける低カルシウム濃度下で測定され得る。
一局面において、抗体は、細胞内条件と細胞外条件の間で異なる抗原結合活性を有する。細胞内条件および細胞外条件は、細胞の内部と外部の間の異なる条件のことをいう。条件のカテゴリーには、例えば、イオン濃度、より具体的には金属イオン濃度、水素イオン濃度(pH)およびカルシウムイオン濃度が含まれる。「細胞内条件」は、好ましくは、エンドソーム内の環境に特徴的な環境のことをいい、「細胞外条件」は、好ましくは、血漿中の環境に特徴的な環境のことをいう。イオン濃度に応じて変化する抗原結合活性を有するという特性を持つ抗体は、そのような特性を有するドメインについて多数の抗体をスクリーニングすることによって取得され得る。例えば、上記の特性を有する抗体は、その配列が相互に異なる多数の抗体をハイブリドーマ法または抗体ライブラリー法によって産生し、異なるイオン濃度下でそれらの抗原結合活性を測定することによって取得され得る。B細胞クローニング法は、そのような抗体をスクリーニングする方法の例の1つである。さらに、後述のように、イオン濃度に応じて変化する抗原結合活性を有するという特性を抗体に付与し得る少なくとも1つの特徴的なアミノ酸残基が特定され、当該特徴的なアミノ酸残基を共通構造として共有しつつ異なる配列を有する多数の抗体のライブラリーが調製される。そのようなライブラリーは、上記の特性を有する抗体を効果的に単離するためにスクリーニングされ得る。
一局面において、本発明は、酸性pHよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC1sに結合する抗体を提供する。別の局面において、本発明は、C1sに対してpH依存的結合を示す抗C1s抗体を提供する。本明細書で使用される表現「pH依存的結合」は、「中性pHでの結合と比較して低下した、酸性pHでの結合」を意味し、両表現は交換可能であり得る。例えば、「pH依存的結合特性を有する」抗C1s抗体には、酸性pHよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC1sに結合する抗体が含まれる。
特定の態様において、中性pHおよび酸性pHの両方において高カルシウム濃度下で測定された場合、中性pHでのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))は、10より大きい。特定の態様において、抗体は、中性pHにおいて、酸性pHにおけるよりも少なくとも11、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれより高いアフィニティでC1sに結合する。
特定の態様において、中性pHにおける高カルシウム濃度下および酸性pHにおける低カルシウム濃度下で測定された場合、中性pHでのC1s結合活性のKD値に対する酸性pHでのC1s結合活性のKD値の比(KD(酸性pH)/KD(中性pH))は、10より大きい。特定の態様において、本発明の抗体は、中性pHにおいて、酸性pHにおけるよりも少なくとも11、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれより高いアフィニティでC1sに結合する。
上記の例において、例えば、酸性pHは6.0であり、中性pHは7.4であり、したがってKD(酸性pH)/KD(中性pH)は、KD(pH 6.0)/KD(pH 7.4)である。これに関して、酸性pHおよび中性pHの例が、本明細書において詳細に後記されている。いくつかの態様において、KD(酸性pH)/KD(中性pH)、例えばKD(pH 6.0)/KD(pH 7.4)は、11~10,000であり得る。
抗原が可溶性タンパク質である場合、抗体が抗原自身よりも血漿中で長い半減期を有し得かつ抗原のキャリアとして機能し得るため、抗体の抗原への結合は、抗原の血漿中半減期の延長(すなわち、血漿からの抗原のクリアランスの低減)をもたらし得る。これは、細胞内のエンドソーム経路を介したFcRnによる抗原-抗体複合体のリサイクルに起因する(Roopenian and Akilesh (2007) Nat Rev Immunol 7(9): 715-725)。しかし、中性の細胞外環境下では抗原に結合するが細胞内への侵入後は酸性のエンドソーム区画内に抗原を放出する、pH依存的結合特性を有する抗体は、pH非依存的様式で結合する対応物に比べて抗原の中和およびクリアランスの点で優れた特性を有すると予想される(Igawa et al (2010) Nature Biotechnol 28(11); 1203-1207; Devanaboyina et al (2013) mAbs 5(6): 851-859; 国際特許出願公開番号:WO 2009/125825)。
一局面において、本発明は、低カルシウム濃度条件下よりも高カルシウム濃度条件下において高いアフィニティでC1sに結合する抗体を提供する。
一態様において、好ましい金属イオンには、例えば、カルシウムイオンが含まれる。カルシウムイオンは、筋肉、例えば骨格筋、平滑筋および心筋の収縮;白血球の運動、食作用等の活性化;血小板の形状変化、分泌等の活性化;リンパ球の活性化;ヒスタミンの分泌を含むマスト細胞の活性化;カテコールアミンアルファ受容体またはアセチルコリン受容体により媒介される細胞応答;エクソサイトーシス;ニューロン末端からの伝達物質の放出;ならびにニューロンにおける軸索流を含む、多くの生物学的現象の調整に関与する。公知の細胞内カルシウムイオン受容体には、トロポニンC、カルモジュリン、パルブアルブミンおよびミオシン軽鎖が含まれ、これらは、いくつかのカルシウムイオン結合部位を有し、分子進化の点で共通起源から派生していると考えられている。また、多くのカルシウム結合モチーフが公知となっている。そのような周知のモチーフには、例えば、カドヘリンドメイン、カルモジュリンのEFハンド、プロテインキナーゼCのC2ドメイン、血液凝固タンパク質第IX因子のGlaドメイン、アシアロ糖タンパク質受容体およびマンノース結合受容体のC型レクチン、LDL受容体のAドメイン、アネキシン、トロンボスポンジン3型ドメインならびにEGF様ドメインが含まれる。
一態様において、金属イオンがカルシウムイオンの場合には、高カルシウムイオン濃度条件下における抗原結合活性よりも低カルシウムイオン濃度条件下における抗原結合活性の方が低いことが望ましい。一方、細胞内カルシウムイオン濃度は、細胞外カルシウムイオン濃度よりも低い。逆に、細胞外カルシウムイオン濃度は、細胞内カルシウムイオン濃度よりも高い。一態様において、低カルシウムイオン濃度は、好ましくは0.1μM~30μMであり、より好ましくは0.5μM~10μMであり、特に好ましくは生体内の早期エンドソーム内のカルシウムイオン濃度に近い1μM~5μMである。一方、一態様において、高カルシウムイオン濃度は、好ましくは100μM~10μMであり、より好ましくは200μM~5 mMであり、特に好ましくは血漿中(血中)のカルシウムイオン濃度に近い0.5 mM~2.5 mMである。一態様において、低カルシウムイオン濃度がエンドソーム内のカルシウムイオン濃度であり、高カルシウムイオン濃度が血漿中のカルシウムイオン濃度であることが好ましい。抗原結合活性のレベルを低カルシウムイオン濃度下と高カルシウムイオン濃度下で比較した場合、抗体の結合は、低カルシウムイオン濃度下よりも高カルシウムイオン濃度下で強いことが好ましい。換言すると、抗体の抗原結合活性は、高カルシウムイオン濃度下よりも低カルシウムイオン濃度下で低いことが好ましい。結合活性のレベルを解離定数(KD)で表す場合、KD(低カルシウムイオン濃度)/KD(高カルシウムイオン濃度)の値は1より大きく、好ましくは2以上であり、さらにより好ましくは10以上であり、さらにより好ましくは40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、またはそれより大きい。KD(低カルシウムイオン濃度)/KD(高カルシウムイオン濃度)の値の上限は特に限定されず、当業者の技術において作製可能な限り、100、400、1000、または10000等、いかなる値でもよい。KDの代わりに解離速度定数(kd)を用いることも可能である。KD値を計算することが困難である場合は、BIACORE (登録商標)において同じ濃度でアナライトを流したときの結合反応性のレベルに基づいて活性を評価してもよい。抗体を固定化したチップ上に抗原を流した場合、低カルシウム濃度下での結合反応性は、高カルシウム濃度下での結合反応性の好ましくは1/2以下であり、より好ましくは1/3以下であり、さらにより好ましくは1/5以下であり、特に好ましくは1/10以下である。一般に、生体内の細胞外(例えば血漿中)のカルシウムイオン濃度は高く、細胞内(例えばエンドソーム内)のカルシウムイオン濃度は低いことが知られている。そのため一態様において、細胞外条件が高カルシウムイオン濃度であり、細胞内条件が低カルシウムイオン濃度であることが好ましい。細胞外のカルシウムイオン濃度条件下に比べて細胞内のカルシウムイオン濃度条件下では抗原結合活性が低いという特性を抗体に付与する場合、細胞外で抗体に結合した抗原は細胞内で抗体から解離し、それによって細胞外から細胞内への抗原の取り込みが増強される。そのような抗体を生体に投与する場合、血漿中の抗原濃度を低下させ、生体における抗原の生理活性を低減させることが可能となるので、抗体は有用である。高カルシウムイオン濃度条件に比べて低カルシウムイオン濃度条件下で抗原結合活性が低い抗原結合領域または抗体をスクリーニングする方法には、例えばWO2012/073992(例えば、段落0200~0213)に記載の方法が含まれる。高カルシウムイオン濃度条件に比べて低カルシウムイオン濃度条件下で抗原に弱く結合する特性を抗原結合領域に付与する方法は特に限定されず、いかなる方法によって行われてもよい。具体的には、その方法は、例えば、抗原結合領域において、少なくとも1つのアミノ酸残基を、金属キレート作用を有するアミノ酸残基に置換する方法、および/または金属キレート作用を有する少なくとも1つのアミノ酸残基を抗原結合ドメインに挿入する方法を含む。抗原結合領域の少なくとも1つのアミノ酸残基が金属キレート作用を有するアミノ酸残基に置換されている、および/または金属キレート作用を有する少なくとも1つのアミノ酸残基が抗原結合ドメインに挿入されている抗体は、抗体の好ましい態様の1つである。
金属キレート作用を有するアミノ酸残基は、好ましくは、例えば、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。また、カルシウムイオン濃度に応じて抗原結合領域の抗原結合活性を変化させるアミノ酸残基は、好ましくは、例えば、カルシウム結合モチーフを形成するアミノ酸残基を含む。カルシウム結合モチーフは、当業者に周知であり、詳細に報告されている(例えば、Springer et al., (Cell (2000) 102, 275-277); Kawasaki and Kretsinger (Protein Prof. (1995) 2, 305-490); Moncrief et al., (J. Mol. Evol. (1990) 30, 522-562); Chauvaux et al., (Biochem. J. (1990) 265, 261-265); Bairoch and Cox (FEBS Lett. (1990) 269, 454-456); Davis (New Biol. (1990) 2, 410-419); Schaefer et al., (Genomics (1995) 25, 638 to 643); Economou et al., (EMBO J. (1990) 9, 349- 354); Wurzburg et al., (Structure. (2006) 14, 6, 1049-1058))。トロポニンC、カルモジュリン、パルブアルブミン、およびミオシン軽鎖のEFハンド;プロテインキナーゼCのC2ドメイン;血液凝固タンパク質第IX因子のGlaドメイン;アシアロ糖タンパク質受容体およびマンノース結合受容体、ASGPR、CD23、およびDC-SIGNのC型レクチン;LDL受容体のAドメイン;アネキシンドメイン;カドヘリンドメイン;トロンボスポンジン3型ドメイン;ならびにEGF様ドメインが、カルシウム結合モチーフとして好適に使用される。
抗原結合領域には、前記の金属キレート作用を有するアミノ酸残基やカルシウム結合モチーフを形成するアミノ酸残基などのカルシウムイオン濃度に応じて抗原結合活性を変化させるアミノ酸残基が含まれ得る。抗原結合領域内でのそのようなアミノ酸残基の位置は特に限定されず、カルシウムイオン濃度に応じて抗原結合活性が変化する限り、どのような位置であってもよい。また、カルシウムイオン濃度に応じて抗原結合活性を変化させる限り、そのようなアミノ酸残基が単独で含まれていてもよいし、二つ以上組み合わされて含まれていてもよい。そのようなアミノ酸残基としては、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸およびグルタミン酸が好適に例示される。抗原結合領域が抗体の可変領域である場合、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域にそれらのアミノ酸残基を含むことができる。好ましい態様において、それらのアミノ酸残基が重鎖可変領域のCDR3に含まれていてもよく、より好ましくは重鎖可変領域のCDR3のKabatナンバリングで表される95位、96位、100a位および/または101位に含まれていてもよい。
別の好ましい態様において、それらのアミノ酸残基が軽鎖可変領域のCDR1に含まれていてもよく、より好ましくは軽鎖可変領域のCDR1のKabatナンバリングで表される30位、31位および/または32位に含まれていてもよい。また別の好ましい態様において、それらのアミノ酸残基が軽鎖可変領域のCDR2に含まれていてもよく、より好ましくは軽鎖可変領域のCDR2のKabatナンバリングで表される50位に含まれていてもよい。また別の好ましい態様において、それらのアミノ酸残基が軽鎖可変領域のCDR3に含まれていてもよく、より好ましくは軽鎖可変領域のCDR3のKabatナンバリングで表される92位に含まれていてもよい。
さらに、前記の態様は組み合わせられてもよく、例えば軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3から選択される2つまたは3つのCDRに当該アミノ酸残基が含まれていてもよく、より好ましくは、軽鎖可変領域のKabatナンバリングで表される30位、31位、32位、50位および/または92位のいずれか1つ以上に含まれていてもよい。
前記のようなカルシウムイオン濃度に応じて抗原結合活性を変化させるアミノ酸残基を共通の構造として有しつつ互いに配列の異なる多数の抗原結合領域をライブラリーとして作製し、そうしたライブラリーの中からスクリーニングを行なうことによって、所望の抗原に対する結合活性を有し、なおかつカルシウムイオン濃度に応じて抗原結合活性が変化する抗原結合領域を効率的に取得することができる。
C1sに対する抗体の「アフィニティ」は、本開示の目的では、その抗体のKDで表される。抗体のKDは、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。その抗原に対する抗体の結合のKD値が大きいほど、当該特定の抗原に対するその結合アフィニティは弱い。したがって、本明細書で使用される表現「酸性pHによりも中性pHにおいて高いアフィニティ」(または同等の表現「pH依存的結合」)は、酸性pHでの抗体のKDが中性pHでの抗体のKDよりも大きいことを意味する。例えば、本発明の文脈において、酸性pHでの抗体のC1sへの結合のKDが中性pHでの抗体のC1sへの結合のKDと比べて10倍より大きい場合、当該抗体は、酸性pHよりも中性pHにおいて高いアフィニティでC1sに結合するとみなされる。したがって、本発明は、中性pHでの抗体のC1sへの結合のKDよりも少なくとも11、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上大きいKDで酸性pHにおいてC1sに結合する抗体を含む。別の態様において、中性pHでの該抗体のKD値は、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 M、またはそれ未満であり得る。別の態様において、酸性pHでの該抗体のKD値は、10-9 M、10-8 M、10-7 M、10-6 M、またはそれ以上であり得る。
特定の抗原に対する結合特性はまた、抗体のkdで表され得る。抗体のkdは、特定の抗原に対する抗体の解離速度定数を指し、秒の逆数(すなわち、sec-1)の単位で表される。kd値の増加は、抗体のその抗原への結合がより弱いことを意味する。したがって、本発明は、中性pHよりも酸性pHにおいて高いkd値でC1sに結合する抗体を含む。本発明は、中性pHにおけるC1sに対する抗体の結合のkdよりも少なくとも11、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上大きいkdで酸性pHにおいてC1sに結合する抗体を含む。別の態様において、中性pHでの抗体のkd値は、10-2 1/s、10-3 1/s、10-4 1/s、10-5 1/s、10-6 1/s、またはそれ未満であり得る。別の態様において、酸性pHでの抗体のkd値は、10-3 1/s、10-2 1/s、10-1 1/s、またはそれ以上であり得る。
特定の例において、「中性pHでの結合と比較して低下した、酸性pHでの結合」は、中性pHでの抗体のKD値に対する酸性pHでの抗体のKD値の比(またはその逆)で表される。例えば、抗体が10以上の酸性/中性KD比を示す場合、本発明の目的に関して、その抗体は「中性pHでのC1sへの結合と比較して低下した、酸性pHでのC1sへの結合」を示すとみなされ得る。特定の例示的な態様において、抗体における酸性/中性KD比は、11、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上であり得る。別の態様において、中性pHでの抗体のKD値は、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 M、またはそれ未満であり得る。別の態様において、酸性pHでの抗体のKD値は、10-9 M、10-8 M、10-7 M、10-6 M、またはそれ以上であり得る。
特定の例において、「中性pHでの結合と比較して低下した、酸性pHでの結合」は、中性pHでの抗体のkd値に対する酸性pHでの抗体のkd値の比(またはその逆)で表される。例えば、抗体が2以上の酸性/中性kd比を示す場合、目的上、その抗体は「中性pHでのC1sへの結合と比較して低下した、酸性pHでのC1sへの結合」を示すとみなされ得る。特定の例示的な態様において、抗体における酸性/中性kd比は、11、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000倍、またはそれ以上であり得る。別の態様において、中性pHでの抗体のkd値は、10-2 1/s、10-3 1/s、10-4 1/s、10-5 1/s、10-6 1/s、またはそれ未満であり得る。別の態様において、酸性pHでの抗体のkd値は、10-3 1/s、10-2 1/s、10-1 1/s、またはそれ以上であり得る。
本明細書で使用される表現「酸性pH」は、pH 4.0~6.5を意味する。表現「酸性pH」には、pH値4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、および6.5が含まれる。特定の局面において、「酸性pH」は6.0である。
本明細書で使用される表現「中性pH」は、pH 6.7~約10.0を意味する。表現「中性pH」には、pH値6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、および10.0が含まれる。特定の局面において、「中性pH」は7.4である。
本明細書で使用される表現「高カルシウム濃度条件下」または「高カルシウム濃度下」は、100μM~10 mM、より好ましくは200μM~5 mM、特に好ましくは血漿中(血中)のカルシウムイオン濃度に近い0.5 mM~2.5 mMを意味する。表現「高カルシウム濃度条件下」または「高カルシウム濃度において」は、100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、800μM、900μM、0.5 mM、0.7 mM、0.9 mM、1 mM、1.2 mM、1.4 mM、1.6 mM、1.8 mM、2.0 mM、2.2 mM、2.4 mM、2.5 mM、3 mM、4 mM、5 mM、6 mM、7 mM、8 mM、9 mMおよび10 mM Ca2+のカルシウム濃度値を含む。特定の局面において、「高カルシウム濃度条件下」または「高カルシウム濃度下」は1.2 mM Ca2+を表す。
本明細書で使用される表現「低カルシウム濃度条件下」または「低カルシウム濃度下」は、0.1μM~30μM、より好ましくは0.5μM~10μM、特に好ましくは生体内の早期エンドソーム内のカルシウムイオン濃度に近い1μM~5μMを意味する。表現「低カルシウム濃度条件下」または「低カルシウム濃度において」は、0.1μM、0.5μM、1μM、1.5μM、2.0μM、2.5μM、2.6μM、2.7μM、2.8μM、2.9μM、3.0μM、3.1μM、3.2μM、3.3μM、3.4μM、3.5μM、4.0μM、5.0μM、6.0μM、7.0μM、8.0μM、9.0μM、10μM、15μM、20μM、25μMおよび30μM Ca2+のカルシウム濃度値を含む。特定の局面において、「低カルシウム濃度条件下」または「低カルシウム濃度下」は、3.0μM Ca2+を表す。
本明細書で表されるKD値およびkd値を、表面プラズモン共鳴に基づくバイオセンサを用いて決定して、抗体-抗原相互作用を特徴づけることができる(例えば、本明細書の実施例5を参照されたい。)。KD値およびkd値は、摂氏25度(℃)または37℃で決定され得る。この決定は、150 mM NaClの存在下で実施され得る。いくつかの態様において、この決定は、抗体を固定化し、抗原をアナライトとして用い、以下の条件を使用する表面プラズモン共鳴技術を用いて実施され得る:摂氏37度(℃)で20 mM ACESおよび150 mM NaCl。
一局面において、本発明は、個体における血漿からのC1sのクリアランスを増強する方法を提供する。いくつかの態様において、この方法は、血漿からのC1sのクリアランスを増強するのに有効な量の抗C1s抗体を個体に投与する工程を含む。本発明はまた、個体における血漿からのC1rおよびC1sの複合体のクリアランスを増強する方法を提供する。いくつかの態様において、この方法は、血漿からのC1rおよびC1sの複合体のクリアランスを増強するのに有効な量の抗C1s抗体を個体に投与する工程を含む。いくつかの態様において、この方法は、血漿からのC1r2s2のクリアランスを増強するのに有効な量の抗C1s抗体を個体に投与する工程を含む。いくつかの態様において、この方法は、血漿からのC1qのクリアランスを増強せずに血漿からのC1r2s2のクリアランスを増強するのに有効な量の抗C1s抗体を個体に投与する工程を含む。
別の局面において、本発明は、血漿からC1sを除去する方法であって、(a)その血漿からC1sを除去する必要のある個体を同定する工程;(b)C1sに結合する抗体を提供する工程であって、該抗体が、該抗体の抗原結合(C1s結合)ドメインを通じてC1sに結合し、かつ11~10,000であるKD(pH 6.0)/KD(pH 7.4)値を有し、ここでKD(pH 6.0)/KD(pH 7.4)は、KDが表面プラズモン共鳴技術を用いて決定された場合のpH 6.0におけるC1sに対するKDとpH 7.4におけるC1sに対するKDとの比と定義され、該抗体が、生体内の血漿中のC1sに結合し、生体内のエンドソーム内に存在する条件下では、結合したC1sから解離し、該抗体がヒトIgGまたはヒト化IgGである、工程;および(c)該抗体を個体に投与する工程を含む方法を提供する。さらなる局面において、そのような表面プラズモン共鳴技術は、37℃および150 mM NaClで使用され得る。さらなる局面において、そのような表面プラズモン共鳴技術、抗体を固定化し、抗原をアナライトとして使用し、かつ条件「37℃で20 mM ACES、および150 mM NaCl」を用いて、使用され得る。
別の局面において、本発明は、対象において血漿からC1sを除去する方法であって、(a)第1の抗体を同定する工程であって、第1の抗体が第1の抗体の抗原結合領域を通じてC1sに結合する、工程;(b)第2の抗体を同定する工程であって、第2の抗体が、(1)第2の抗体の抗原結合(C1s結合)ドメインを通じてC1sに結合し、(2)第1の抗体の可変領域の少なくとも1つのアミノ酸がヒスチジンで置換されていること、および/または第1の抗体の可変領域に少なくとも1つのヒスチジンが挿入されていることを除いて、第1の抗体とアミノ酸配列が同一であり、(3)第1の抗体のKD(pH 6.0)/KD(pH 7.4)値よりも高くかつ11~10,000であるKD(pH 6.0)/KD(pH 7.4)値を有し、ここでKD(pH 6.0)/KD(pH 7.4)は、KDが表面プラズモン共鳴技術を用いて決定された場合のpH 6.0におけるC1sに対するKDとpH 7.4におけるC1sに対するKDとの比と定義され、(4)生体内の血漿中のC1sに結合し、(5)生体内のエンドソーム内に存在する条件下では、結合したC1sから解離し、かつ(6)ヒトIgGまたはヒト化IgGである、工程;(c)血漿中C1sレベルを減少させる必要のある対象を特定する工程;ならびに(d)対象の血漿中C1sレベルが減少するように第2の抗体を対象に投与する工程を含む方法を提供する。さらなる局面において、そのような表面プラズモン共鳴技術は、37℃および150 mM NaClで使用され得る。さらなる局面において、そのような表面プラズモン共鳴技術は、37℃および150 mM NaClで使用され得る。さらなる局面において、そのような表面プラズモン共鳴技術は、抗体を固定化し、抗原をアナライトとして使用し、かつ以下の条件「37℃で20 mM ACESおよび150 mM NaCl」を用いて、使用され得る。
別の局面において、本発明は、対象において血漿からC1sを除去する方法であって、(a)第1の抗体を同定する工程であって、第1の抗体が、(1)第1の抗体の抗原結合領域を通じてC1sに結合し、(2)第1の抗体の少なくとも1つの可変領域が、第2の抗体の対応する可変領域よりも少なくとも1つ多いヒスチジン残基を有することを除いて、第2の抗体の抗原結合(C1s結合)ドメインを通じてC1sに結合する第2の抗体とアミノ酸配列が同一であり、(3)第2の抗体のKD(pH 6.0)/KD(pH 7.4)値よりも高くかつ11~10,000であるKD(pH 6.0)/KD(pH 7.4)値を有し、ここでKD(pH 6.0)/KD(pH 7.4)は、KDが表面プラズモン共鳴技術を用いて決定された場合のpH 6.0におけるC1sに対するKDとpH 7.4におけるC1sに対するKDとの比と定義され、(4)生体内の血漿中のC1sに結合し、(5)生体内のエンドソーム内に存在する条件下では、結合したC1sから解離し、かつ(6)ヒトIgGまたはヒト化IgGである、工程;(b)血漿中C1sレベルを減少させる必要のある対象を特定する工程;ならびに(c)対象の血漿中C1sレベルが減少するように第1の抗体を対象に少なくとも1回投与する工程を含む方法を提供する。さらなる局面において、そのような表面プラズモン共鳴技術は、37℃および150 mM NaClで使用され得る。さらなる局面において、そのような表面プラズモン共鳴技術は、37℃および150 mM NaClで使用され得る。さらなる局面において、そのような表面プラズモン共鳴技術は、抗体を固定化し、抗原をアナライトとして使用し、かつ条件「37℃で20 mM ACESおよび150 mM NaCl」を用いて、使用され得る。いくつかの例において、抗体は古典的補体経路の成分を阻害し、いくつかの例において、古典的補体経路の成分はC1sである。
(a4)単離された抗体のpI
一態様において、単離された抗体の等電点(pI)は、定常領域の改変により低下する。本態様において、pIが低下した単離された抗体は、定常領域において、その親定常領域と比べて少なくとも一つのアミノ酸改変(例えばアミノ酸の付加、挿入、欠失または置換)を含む。さらなる態様において、各アミノ酸改変は、定常領域の等電点(pI)を親定常領域と比べて低下させる。さらなる態様において、当該アミノ酸は当該領域の表面に露出していてもよい。pIは、親抗体(本発明の改変前の元の抗体)と、当該元の(親)抗体の抗体定常領域(親定常領域)に対して1つまたは複数のアミノ酸変異(例えば、付加、挿入、欠失または置換)が導入された改変後の本発明の抗体との間で比較され得る。該アミノ酸改変が、変異定常領域の等電点(pI)を親定常領域のそれと比較して低下させる。すなわち、本発明の抗体は、少なくとも1つのアミノ酸改変を含む変異定常領域を有し、該アミノ酸改変が、変異定常領域の等電点(pI)を親定常領域のそれと比較して低下させる、抗体である。元の(親)抗体は、それがC1sに特異的に結合する限り、任意の公知の抗体または新たに単離された抗体であり得る。一局面において、改変された抗C1s抗体のpIは、その元の(親)抗体のpIよりも、少なくとも、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2.0低い。改変された抗C1s抗体のpIはその元の(親)抗体のpIよりも、好ましくは、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0低く、より好ましくは、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5低く、さらに好ましくは1.6、1.7、1.8、1.9、または2.0低い。さらなる態様において、単離された抗体は、定常領域および抗原結合ドメインを含む。さらなる態様において、抗原結合ドメインの抗原結合活性はイオン濃度条件によって変化する。
さらなる態様において、本発明のpIが低下した定常領域は、EUナンバリングによる137、268、274、285、311、312、315、318、333、335、337、341、342、343、355、384、385、388、390、399、400、401、402、413、419、420、422、および431からなる群より選択される少なくとも一つの位置における少なくとも一つのアミノ酸改変を含む。好ましくは、pIが低下した変異定常領域は、EUナンバリングによる位置137、268、274、355、および419のうち少なくとも一つの位置にアミノ酸改変を含む。さらなる態様において、pIが低下した定常領域は、選択された各位置においてアミノ酸がアルギニン、グルタミン酸、セリン、グルタミンのいずれかに置換されている。
特定の態様において、pIが低下した定常領域は、137、268、274、355、419のアミノ酸がアルギニン、グルタミン酸、セリン、グルタミンのいずれか(いずれの番号もEUナンバリングシステムによる)に置換されている。
一態様において、単離された抗体の等電点(pI)は、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域の改変によっても低下し得る。本態様において、pIが低下した単離された抗体は、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域において、その親領域と比べて少なくとも一つのアミノ酸改変を含む。当該重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域の改変によるpIの低下、ならびに/あるいは定常領域の改変によるpIの低下は、単離された抗体のPKの改善に寄与し得る。
単離された抗体の一態様において、抗体のpIは7.8以下であるか、7.7以下であるか、7.6以下であるか、または7.5以下である。好ましくは、pIは7.7以下であり、より好ましくは7.6以下であり、さらに好ましくは7.5以下である。pIがこれらいずれの点以下である場合、抗体の血中半減期は延長される。一方、pIの可能な最低値は通常4.28以上である。
一態様において、抗体のpIは、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)によって測定し得る。本態様の一例として、cIEFは、フッ化炭素でコーティングされたキャピラリーカートリッジを用いて、プロテインシンプルiCE3ホールキャピラリーイメージングシステム上で実施される。陽極液および陰極液は、それぞれ、0.1%m/vメチルセルロース(MC)中の0.08 Mリン酸、および0.1%m/v MC中の0.1 M水酸化ナトリウムである。分析されるすべてのサンプルは、作用0.2 mg/mL抗体、0.35% m/v MC、6 mM IDA(イミノ二酢酸)、10 mMアルギニン、0.5w/v%pIマーカー5.85および0.5w/v%pIマーカー9.99、ならびに2vol% pharmalyte 8-10.5及び2vol% pharmalyte 5-8、を含有する。すべてのサンプルは、オートサンプラーのコンパートメントに入れられる前にボルテックスされ、短く遠心される。サンプルは、測定開始前にオートサンプラー内で2時間インキュベートされる。1分間1.5 kVに続く各7分間3.0 kVの条件にて集束される。オートサンプラーのコンパートメントは、10℃に維持される。各サンプルについて測定を2回繰り返し、n=2の測定値の平均を計算することによって、各サンプルのpI値を得た。
あるいは、一態様において、抗体のpIは、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)によって測定し得る。本態様の一例として、cIEFは、フッ化炭素でコーティングされたキャピラリーカートリッジを用いて、プロテインシンプルiCE3ホールキャピラリーイメージングシステム上で実施される。陽極液および陰極液は、それぞれ、0.1%m/vメチルセルロース(MC)中の0.08 Mリン酸、および0.1%m/v MC中の0.1 M水酸化ナトリウムである。分析されるすべてのサンプルは、作用0.35% m/v MC、4 mM IDA (イミノ二酢酸)、10 mMアルギニン、pIマーカー(3.21または4.22または4.65または5.12または5.85または6.14または6.61または7.05または7.65または8.40または8.79または9.46または9.77または10.1)、ならびに、以下のv/v混合物のうちの一つ:4% pharmalyte 3-10を含有する。すべてのサンプルは、オートサンプラーのコンパートメントに入れられる前にボルテックスされ、短く遠心される。1分間1.5 kVに続く各8分間3.0 kVの条件にて集束される。オートサンプラーのコンパートメントは、10℃に維持される。各サンプルについて測定を2回繰り返し、n=2の測定値の平均を計算することによって、各サンプルのpI値を得た。
本事例の一態様において、pIは、0.1%m/vメチルセルロース(MC)中に0.08 Mリン酸を含む溶液を陽極液として用い、0.1%m/v MC中に0.1 M水酸化ナトリウムを含む溶液を陰極液として用い、0.5 mg/mL抗体、0.3%m/v MC、6.0 mM イミノ二酢酸(IDA)、10 mMアルギニン、4 M尿素、およびpIマーカー(7.65および9.77)を含む溶液を抗体溶解用の作用溶液として用いるキャピラリー等電点電気泳動によって測定される。
(a5)抗原結合領域
一態様において、抗体は抗原結合領域を含む。好ましい態様において、抗原結合領域は、C1sのCUB1-EGF-CUB2ドメイン内のエピトープに特異的に結合し得る。さらなる好ましい態様において、抗原結合領域は、C1sのCUB1-EGF-CUB2ドメインに特異的に結合し得る。これらの態様において、C1sはヒトC1sを含むが、これに限定されない。C1sは好ましくはヒトC1sである。
一態様において、抗原結合領域は抗体可変領域であってもよい。抗原結合領域が、解離促進機能および/またはブロッキング機能等の単離された抗体の特性を損なわず、かつ、抗体の以下の結合活性:
表面プラズモン共鳴により抗体のヒトおよび/またはカニクイザルC1sに対する結合活性を測定する場合において、
i)中性pH領域での解離定数(KD)値は信頼性をもって計算することができ、かつ酸性pH領域でのKD値は、結合活性が無いかもしくは結合活性が非常に低いために信頼性をもって計算することができない、または
ii)中性pH領域および酸性pH領域の両方でのKD値が信頼性をもって計算することができるという条件で、中性pH領域でのKD値に対する酸性pH領域でのKD値の比(酸性KD/中性KD比)が10より大きい
を損なわない限り、抗体可変領域は抗体可変領域の全部または一部であってもよい。
本態様において、抗体可変領域はヒト化されている。抗原結合領域は、好ましくはヒト化抗体可変領域である。そのようなヒト化抗体が医薬として使用される場合、非ヒト化抗体と比べて副作用が回避されることが期待される。
一態様において、単離された抗C1s抗体の抗原結合領域は、以下の1)~6)からなる群より選択されるHVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3の組み合わせを含む:
1)それぞれ配列番号25、26、27、60、61、および62からなるアミノ酸配列を含む、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3、
2)それぞれ配列番号37、38、39、56、57、および58からなるアミノ酸配列を含む、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3、
3)それぞれ配列番号25、26、27、56、57、および58からなるアミノ酸配列を含む、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3、
4)それぞれ配列番号25、26、27、48、49、および50からなるアミノ酸配列を含む、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3、
5)それぞれ配列番号29、30、31、52、53、および54からなるアミノ酸配列を含む、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3、ならびに
6)それぞれ配列番号33、34、35、56、57、および58からなるアミノ酸配列を含む、HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3。
本発明の別の態様において、単離された抗C1s抗体は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、および抗体定常領域を含む。本態様において、単離された抗C1s抗体は、以下の1)~6)からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む:
1)それぞれ配列番号24および59からなるアミノ酸配列を含む、VHおよびVL、
2)それぞれ配列番号36および55からなるアミノ酸配列を含む、VHおよびVL、
3)それぞれ配列番号24および55からなるアミノ酸配列を含む、VHおよびVL、
4)それぞれ配列番号24および47からなるアミノ酸配列を含む、VHおよびVL、
5)それぞれ配列番号28および51からなるアミノ酸配列を含む、VHおよびVL、ならびに
6)それぞれ配列番号32および55からなるアミノ酸配列を含む、VHおよびVL。
(a6)抗体定常領域
一態様において、単離された抗体の抗体定常領域は、ヒト抗体の定常領域を包含するがそれに限定されない。ヒト抗体の定常領域は重鎖および軽鎖を含んでもよい。ヒト抗体はヒトIgG1を包含するがそれに限定されない。ヒト抗体は、好ましくはヒトIgG1である。
一態様において、抗体定常領域は、少なくとも一つのアミノ酸であって、当該少なくとも一つのアミノ酸を含まない単離された抗体と比べて、酸性pH領域における単離された抗体のFcRnへの結合能を増強し得る、少なくとも一つのアミノ酸を含む。
本態様において、定常領域は以下を含む:
(a)EUナンバリングによる434位のAla;438位のGlu、Arg、Ser、もしくはLys;および440位のGlu、Asp、もしくはGln;
(b)EUナンバリングによる434位のAla;438位のArgもしくはLys;および440位のGluもしくはAsp;
(c)EUナンバリングによる428位のIleもしくはLeu;434位のAla;436位のIle、Leu、Val、Thr、もしくはPhe;438位のGlu、Arg、Ser、もしくはLys;および440位のGlu、Asp、もしくはGln;
(d)EUナンバリングによる428位のIleもしくはLeu;434位のAla;436位のIle、Leu、Val、Thr、もしくはPhe;438位のArgもしくはLys;および440位のGluもしくはAsp;
(e)EUナンバリングによる428位のLeu;434位のAla;436位のValもしくはThr;438位のGlu、Arg、Ser、もしくはLys;および440位のGlu、Asp、もしくはGln;または
(f)EUナンバリングによる428位のLeu;434位のAla;436位のValもしくはThr;438位のArgもしくはLys;および440位のGluもしくはAsp。
WO2013/046704には、酸性条件下でのFcRnに対する結合性を増強し得るアミノ酸置換と組み合わせた場合に、リウマトイド因子に対する結合性の有意な低下をもたらす、EUナンバリングによるQ438R/S440E、Q438R/S440D、Q438K/S440E、およびQ438K/S440Dの二重アミノ酸残基置換が具体的に報告されている。
本態様において、定常領域は好ましくは、以下からなる群より選択されるアミノ酸置換の組み合わせを含む:
(I)EUナンバリングによる、(a)N434A/Q438R/S440E;(b)N434A/Q438R/S440D;(c)N434A/Q438K/S440E;(d)N434A/Q438K/S440D;(e)N434A/Y436T/Q438R/S440E;(f)N434A/Y436T/Q438R/S440D;(g)N434A/Y436T/Q438K/S440E;(h)N434A/Y436T/Q438K/S440D;(i)N434A/Y436V/Q438R/S440E;(j)N434A/Y436V/Q438R/S440D;(k)N434A/Y436V/Q438K/S440E;(l)N434A/Y436V/Q438K/S440D;(m)N434A/R435H/F436T/Q438R/S440E;(n)N434A/R435H/F436T/Q438R/S440D;(o)N434A/R435H/F436T/Q438K/S440E;(p)N434A/R435H/F436T/Q438K/S440D;(q)N434A/R435H/F436V/Q438R/S440E;(r)N434A/R435H/F436V/Q438R/S440D;(s)N434A/R435H/F436V/Q438K/S440E;(t)N434A/R435H/F436V/Q438K/S440D;(u) M428L/N434A/Q438R/S440E;(v)M428L/N434A/Q438R/S440D;(w)M428L/N434A/Q438K/S440E;(x)M428L/N434A/Q438K/S440D;(y)M428L/N434A/Y436T/Q438R/S440E;(z)M428L/N434A/Y436T/Q438R/S440D;(aa)M428L/N434A/Y436T/Q438K/S440E;(ab)M428L/N434A/Y436T/Q438K/S440D;(ac)M428L/N434A/Y436V/Q438R/S440E;(ad)M428L/N434A/Y436V/Q438R/S440D;(ae)M428L/N434A/Y436V/Q438K/S440E;(af)M428L/N434A/Y436V/Q438K/S440D;(ag) L235R/G236R/S239K/M428L/N434A/Y436T/Q438R/S440E;(ah)L235R/G236R/A327G/A330S/P331S/M428L/N434A/Y436T/Q438R/S440E;または
(II)EUナンバリングによる、(a)N434A/Q438R/S440E;(b)N434A/Y436T/Q438R/S440E;(c)N434A/Y436V/Q438R/S440E;(d)M428L/N434A/Q438R/S440E;(e)M428L/N434A/Y436T/Q438R/S440E;(f)M428L/N434A/Y436V/Q438R/S440E;(g)L235R/G236R/S239K/M428L/N434A/Y436T/Q438R/S440E;および(h)L235R/G236R/A327G/A330S/P331S/M428L/N434A/Y436T/Q438R/S440E。
別の態様において、定常領域は好ましくは、428位のロイシン、434位のアラニン、および436位のスレオニン(すべての番号はEUナンバリングシステムによる)からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸を含む。本態様において、定常領域はより好ましくは、428位のロイシン、434位のアラニン、および436位のスレオニン(すべての番号はEUナンバリングシステムによる)を含む。
Fc領域変異体
(スイーピング技術)
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸改変を導入して、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸ポジションのところでアミノ酸改変(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。いくつかの態様において、Fc領域はヒトIgG1のFc領域である。
血漿中抗原濃度の低下を促進するためおよび/または抗体の薬物動態を改善するため、IgGのFc領域内のFcRnに対する結合部位のアミノ酸残基が、それらの細胞内への取り込みを促進するように改変され得る。pH依存性を有する抗体がこのように改変される場合、その変異体は、より強くFcRnに結合し、抗原を(pHが酸性である)エンドソーム内へと効率的に移送して分解することができるが、それ自身はより効率的に細胞表面にリサイクルされ得る、「スイーピング」抗体であろう。そのような改変された「スイーピング」抗体は、その改変を有さない元の(親の)抗体と比較して、中性pHにおいて細胞表面上のFcRnに強く結合し、抗原の取り込みおよび分解を向上させ得る(Semin Immunopathol. 2018; 40(1): 125-140)。
いくつかの局面において、抗体は、血漿中抗原濃度の低下を促進しかつ/または抗体の薬物動態を改善するように少なくとも1つのアミノ酸改変をFc領域内に有するFc領域を含む。
本発明の抗体定常領域としては、特にFcγ受容体に対する結合活性を低下させるものが好ましい。例えば、本発明の抗体は、Fcγ受容体に対する結合活性を低下させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む変異定常領域を有する。ここで、Fcγ受容体(本明細書ではFcγレセプター、FcγRまたはFcgRと記載することがある)とは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のFc領域に結合し得る受容体をいい、実質的にFcγレセプター遺伝子にコードされるタンパク質のファミリーのいかなるメンバーをも意味する。ヒトでは、このファミリーには、アイソフォームFcγRIa、FcγRIbおよびFcγRIcを含むFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131(H型)およびR131(R型)を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2を含む)およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32);およびアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1およびFcγRIIIb-NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)、並びにいかなる未発見のヒトFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、これらに限定されるものではない。FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサル由来のものが含まれるが、これらに限定されず、いかなる生物由来でもよい。マウスFcγR類には、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFcγRIII-2(CD16-2)、並びにいかなる未発見のマウスFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、これらに限定されない。こうしたFcγ受容体の好適な例としてはヒトFcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、FcγRIIb(CD32)、FcγRIIIa(CD16)及び/又はFcγRIIIb(CD16)が挙げられる。
FcγRには、ITAM(Immunoreceptor tyrosine-based activation motif)をもつ活性型レセプターとITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)をもつ抑制型レセプターが存在する。FcγRはFcγRI、FcγRIIa R、FcγRIIa H、FcγRIIIa、FcγRIIIbの活性型FcγRと、FcγRIIbの抑制型FcγRに分類される。
FcγRIのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれNM_000566.3及びNP_000557.1に、FcγRIIaのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC020823.1及びAAH20823.1に、FcγRIIbのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC146678.1及びAAI46679.1に、FcγRIIIaのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC033678.1及びAAH33678.1に、並びにFcγRIIIbのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC128562.1及びAAI28563.1に記載されている(RefSeq登録番号)。尚、FcγRIIaには、FcγRIIaの131番目のアミノ酸がヒスチジン(H型)あるいはアルギニン(R型)に置換された2種類の遺伝子多型が存在する(J. Exp. Med, 172, 19-25, 1990)。また、FcγRIIbには、FcγRIIbの232番目のアミノ酸がイソロイシン(I型)あるいはスレオニン (T型)に置換された2種類の遺伝子多型が存在する(Arthritis. Rheum. 46: 1242-1254 (2002))。また、FcγRIIIaには、FcγRIIIaの158番目のアミノ酸がバリン(V型)あるいはフェニルアラニン(F型)に置換された2種類の遺伝子多型が存在する(J. Clin. Invest. 100(5): 1059-1070 (1997))。また、FcγRIIIbには、NA1型、NA2型の2種類の遺伝子多型が存在する(J. Clin. Invest. 85: 1287-1295 (1990))。
Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているかどうかは、FACS、ELISAフォーマット、ALPHAスクリーン(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法等、周知の方法によって確認することができる(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103 (11), 4005-4010)。
例えば、pH7.4における各サンプルのFcγRに対する結合特性を、25℃でBIACORE(登録商標)T200機器(Cytiva)を用いて決定する。まずプロテインL(BioVision)は、Amine Coupling Kit,type2(Cytiva)を用いてCM4センサーチップのすべてのフローセル上に固定化される。150mM NaCl, 0.05% Tween(登録商標)20を含む 50mMリン酸緩衝液(pH7.4)をランニングバッファーとして使用し、結合レスポンスが500 RUもしくは2000 RU となるように調製された抗体がセンサー表面に捕捉される。ここに、ランニングバッファーで希釈したFcγR(例えばヒトまたはサルのFcγR)を注入し、抗体への結合量が測定される。サイクル毎に、10 mM グリシン塩酸溶液, pH1.5を用いてセンサー表面が再生される。得られた測定結果から、BIACORE(登録商標)T200 evaluation software、version2.0(Cytiva)を用いて、FcγRの結合量を、捕捉した各抗体の結合量で割った値(Binding/capture)を算出する。すなわち、FcγRの結合量は、捕捉した抗体の量に依存するため、各抗体の捕捉量でFcγRの結合量を除した補正値を算出し、抗体間で比較する。
本発明の抗体において、FcγRの結合量を、捕捉した各抗体の結合量で割った値(Binding/capture)は、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、または0.01以下を示し、好ましくは0.05、0.04、0.03、0.02以下、特に好ましくは0.01以下、または結合活性が無いかもしくは結合活性が非常に低いために信頼性をもって計算することができない、である。また、Fcγ受容体に対する結合活性を低下させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む変異定常領域を有する本発明の抗体の、当該アミノ酸改変を含まない(親)定常領域を有する抗体と比較した、Fcγ受容体に対する相対的結合活性は、Fcγ受容体に対する結合活性を低下させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む変異定常領域を有する本発明の抗体で得られたBinding/capture値を、当該アミノ酸改変を含まない抗体(例えばHerceptin)で得られたBinding/capture値で割った相対値(FcγRsへの相対結合割合)で表すことができ、当該相対値は、0.06以下、0.05以下、0.04以下、0.03以下、0.02以下、0.01以下、または0.00以下であり、好ましくは0.00以下、または結合活性が無いかもしくは結合活性が非常に低いために信頼性をもって計算することができない、である。
ALPHAスクリーンは、ドナーとアクセプターの2つのビーズを使用するALPHAテクノロジーによって下記の原理に基づいて実施される。ドナービーズに結合した分子が、アクセプタービーズに結合した分子と生物学的に相互作用し、2つのビーズが近接した状態の時にのみ、発光シグナルを検出される。レーザーによって励起されたドナービーズ内のフォトセンシタイザーは、周辺の酸素を励起状態の一重項酸素に変換する。一重項酸素はドナービーズ周辺に拡散し、近接しているアクセプタービーズに到達するとビーズ内の化学発光反応を引き起こし、最終的に光が放出される。ドナービーズに結合した分子とアクセプタービーズに結合した分子が相互作用しないときは、ドナービーズの産生する一重項酸素がアクセプタービーズに到達しないため、化学発光反応は起きない。
例えば、抗体がFcRn結合ドメインとして抗体のFc領域を含む場合、野生型Fc領域を有する抗体と、Fcγ受容体に対する結合を変化させるためのアミノ酸変異が加えられた変異Fc領域を有する抗体を準備し、ドナービーズにビオチン標識された抗体を結合させ、アクセプタービーズにはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)でタグ化されたFcγ受容体を結合させる。変異Fc領域を有する抗体の存在下では、野生型Fc領域を有する抗体とFcγ受容体とは相互作用し520-620 nmのシグナルを生ずる。変異Fc領域を有する抗体をタグ化しない場合、野生型Fc領域を有する抗体とFcγ受容体間の相互作用と競合する。競合の結果表れる蛍光の減少を定量することによって相対的な結合親和性が決定され得る。抗体をSulfo-NHS-ビオチン等を用いてビオチン化することは公知である。Fcγ受容体をGSTでタグ化する方法としては、Fcγ受容体をコードするポリヌクレオチドとGSTをコードするポリヌクレオチドをインフレームで融合した融合遺伝子を発現可能なベクターを保持した細胞等において発現し、グルタチオンカラムを用いて精製する方法等が適宜採用され得る。得られたシグナルは例えばGRAPHPAD PRISM(GraphPad社、San Diego)等のソフトウェアを用いて非線形回帰解析を利用する一部位競合(one-site competition)モデルに適合させることにより好適に解析される。
相互作用を観察する物質の一方(リガンド)をセンサーチップの金薄膜上に固定し、センサーチップの裏側から金薄膜とガラスの境界面で全反射するように光を当てると、反射光の一部に反射強度が低下した部分(SPRシグナル)が形成される。相互作用を観察する物質の他方(アナライト)をセンサーチップの表面に流しリガンドとアナライトが結合すると、固定化されているリガンド分子の質量が増加し、センサーチップ表面の溶媒の屈折率が変化する。この屈折率の変化により、SPRシグナルの位置がシフトする(逆に結合が解離するとシグナルの位置は戻る)。Biacoreシステムは上記のシフトする量、すなわちセンサーチップ表面での質量変化を縦軸にとり、質量の時間変化を測定データとして表示する(センサーグラム)。センサーグラムのカーブからカイネティクス:結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)が、当該定数の比からアフィニティー(KD)が求められる。BIACORE法では阻害測定法も好適に用いられる。阻害測定法の例はProc.Natl.Acad.Sci.USA (2006) 103 (11), 4005-4010において記載されている。
本明細書において、「Fcγ受容体に対する結合活性が低下している」、または「Fcγ受容体に対する結合活性を低下させる」とは、例えば、上記の解析方法に基づいて、対照とする抗体定常領域を有する抗体(例えば親抗体、すなわち本発明の改変前の元の抗体)のFcγ受容体に対する結合活性と、当該元の(親)抗体の抗体定常領域に対して1つまたは複数のアミノ酸変異(例えば、付加、挿入、欠失または置換)が導入された改変後の本発明の抗体のFcγ受容体に対する結合活性との間で比較され、親抗体の結合活性と比較して、改変後の本発明の抗体の結合活性が、50%以下、好ましくは45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、特に好ましくは5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、または0%の結合活性を示すことをいう。
対照とする抗体(親抗体)としては、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4モノクローナル抗体のFc領域を含むドメインを有する改変前の抗体が適宜使用され得る。また、ある特定のアイソタイプの抗体のFc領域の変異体を有する抗体を被験物質として使用する場合には、当該特定のアイソタイプの抗体のFc領域を有する抗体を対照として用いることによって、当該変異体が有する変異によるFcγ受容体への結合活性に対する効果が検証される。上記のようにして、Fcγ受容体に対する結合活性が低下していることが検証されたFc領域の変異体を有する抗体が適宜作製される。
このような変異体の例としては、EUナンバリングに従って特定されるアミノ酸である231A-238Sの欠失(WO 2009/011941)、C226S、C229S、P238S、(C220S)(J.Rheumatol (2007) 34, 11)、C226S、C229S(Hum.Antibod.Hybridomas (1990) 1(1), 47-54)、C226S、C229S、E233P、L234V、L235A(Blood (2007) 109, 1185-1192)等の変異体が公知である。
すなわち、特定のアイソタイプの抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸:220位、226位、229位、231位、232位、233位、234位、235位、236位、237位、238位、239位、240位、264位、265位、266位、267位、269位、270位、295位、296位、297位、298位、299位、300位、325位、327位、328位、329位、330位、331位、332位が置換されているFc領域を有する抗体が好適に挙げられる。特に好ましくは235位、236位を挙げることができる。Fc領域の起源である抗体のアイソタイプとしては特に限定されず、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4モノクローナル抗体を起源とするFc領域が適宜利用され得るが、天然型ヒトIgG1抗体を起源とするFc領域が好適に利用される。
例えば、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換後のアミノ酸残基をそれぞれ表す):
(a)L234F、L235E、P331S、
(b)C226S、C229S、P238S、
(c)C226S、C229S、
(d)C226S、C229S、E233P、L234V、L235A
が施されているFc領域、又は、231位から238位のアミノ酸配列が欠失したFc領域を有する抗体も適宜使用され得る。
また、IgG2抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換後のアミノ酸残基をそれぞれ表す):
(e)H268Q、V309L、A330S、P331S
(f)V234A
(g)G237A
(h)V234A、G237A
(i)A235E、G237A
(j)V234A、A235E、G237A
が施されているFc領域を有する抗体も適宜使用され得る。
また、IgG3抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換後のアミノ酸残基をそれぞれ表す):
(k)F241A
(l)D265A
(m)V264A
が施されているFc領域を有する抗体も適宜使用され得る。
また、IgG4抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換後のアミノ酸残基をそれぞれ表す):
(n)L235A、G237A、E318A
(o)L235E
(p)F234A、L235A
が施されているFc領域を有する抗体も適宜使用され得る。
その他の好ましい例として、天然型ヒトIgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸:233位、234位、235位、236位、237位、327位、330位、331位が、対応するIgG2またはIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されているFc領域を有する抗体が挙げられる。
その他の好ましい例として、天然型ヒトIgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれか一つ又はそれ以上のアミノ酸:235位、236位が他のアミノ酸によって置換されているFc領域を有する抗体が好適に挙げられる。置換後に存在するアミノ酸の種類は特に限定されないが、235位、236位のいずれか一つ又は二つのアミノ酸がアルギニンに置換されているFc領域を有する抗体が特に好ましい。
特定の態様において、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を備える抗体変異体も、本発明の考慮の内であり、当該エフェクター機能は、抗体を、そのin vivoでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)は不要または有害である場合の適用に望ましい候補とするものである。CDCおよび/またはADCC活性の低下/欠乏を確認するために、in vitroおよび/またはin vivoの細胞傷害測定を行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合測定は、抗体がFcγR結合性を欠く(よってADCC活性を欠く蓋然性が高い)一方でFcRn結合能を維持することを確かめるために行われ得る。ADCCを媒介するプライマリ細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、一方単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991) の第464頁のTable 3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitro測定法(アッセイ)の非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom I. et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986) 参照)および Hellstrom I. et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987) 参照)に記載されている。あるいは、非放射性の測定法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACT1(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);および、CytoTox 96(登録商標)non-radioactive cytotoxicity assays 法 (Promega, Madison, WI) 参照)。このような測定法に有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞 (peripheral blood mononuclear cell: PBMC) およびナチュラルキラー (natural killer: NK) 細胞を含む。あるいはまたは加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998) に記載されるような動物モデルにおいて、in vivoで評価されてもよい。また、抗体がC1qに結合できないこと、よってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合測定を行ってもよい。例えば、WO2006/029879 および WO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。また、補体活性化を評価するために、CDC測定を行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003);およびCragg M.S. and M.J. Glennie et al., Blood 103:2738-2743 (2004) 参照)。さらに、FcRn結合性およびin vivoでのクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野において知られた方法を用いて行い得る(例えばPetkova S.B. et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006) 参照)。
一態様において、本願抗体は、抗体定常領域が、配列番号45からなるアミノ酸配列を含むH鎖定常領域および配列番号23からなるアミノ酸配列を含むL鎖定常領域を含む、抗体である。
一態様において、本願抗体は、以下の1)~6)からなる群より選択される重鎖(H鎖)および軽鎖(L鎖)を含む、抗体である:
1)それぞれ配列番号66および67からなるアミノ酸配列を含む、H鎖およびL鎖、
2)それぞれ配列番号68および69からなるアミノ酸配列を含む、H鎖およびL鎖、
3)それぞれ配列番号70および71からなるアミノ酸配列を含む、H鎖およびL鎖、
4)それぞれ配列番号72および73からなるアミノ酸配列を含む、H鎖およびL鎖、
5)それぞれ配列番号74および75からなるアミノ酸配列を含む、H鎖およびL鎖、ならびに
6)それぞれ配列番号76および77からなるアミノ酸配列を含む、H鎖およびL鎖。
(a7)他の態様
(抗体変異体)
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体も、考慮の内である。例えば、抗体の結合アフィニティおよび/または他の生物学的特性を改善することが、望ましいこともある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入すること、または、ペプチド合成によって、調製されてもよい。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列中への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列中の残基の置換を含む。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合性)を備えることを前提に、欠失、挿入、および置換の任意の組合せが、最終構築物に至るために行われ得る。
a7-1)置換、挿入、および欠失変異体
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換的変異導入の目的部位は、HVRおよびFRを含む。保存的置換を、表Aの「好ましい置換」の見出しの下に示す。より実質的な変更を、表Aの「例示的な置換」の見出しの下に提供するとともに、アミノ酸側鎖のクラスに言及しつつ下で詳述する。アミノ酸置換は目的の抗体に導入されてもよく、産物は、例えば、保持/改善された抗原結合性、低下した免疫原性、または改善したADCCまたはCDCなどの、所望の活性についてスクリーニングされてもよい。
(表A)
アミノ酸は、共通の側鎖特性によって群に分けることができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、メチオニン (Met)、アラニン (Ala)、バリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile);
(2) 中性の親水性:システイン (Cys)、セリン (Ser)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln);
(3) 酸性:アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸 (Glu);
(4) 塩基性:ヒスチジン (His)、リジン (Lys)、アルギニン (Arg);
(5) 鎖配向に影響する残基:グリシン (Gly)、プロリン (Pro);
(6) 芳香族性:トリプトファン (Trp)、チロシン (Tyr)、フェニルアラニン (Phe)。
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスのものに交換することをいう。
置換変異体の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を含む。通常、その結果として生じ、さらなる試験のために選ばれた変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性における修飾(例えば、改善)(例えば、増加したアフィニティ、低下した免疫原性)を有する、および/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換変異体は、アフィニティ成熟抗体であり、これは、例えばファージディスプレイベースのアフィニティ成熟技術(例えば本明細書に記載されるもの)を用いて適宜作製され得る。簡潔に説明すると、1つまたは複数のHVR残基を変異させ、そして変異抗体をファージ上に提示させ、特定の生物活性(例えば、結合アフィニティ)に関してスクリーニングを行う。
改変(例えば、置換)は、例えば抗体のアフィニティを改善するために、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008) を参照のこと)および/または抗原に接触する残基において行われ得、得られた変異VHまたはVLが結合アフィニティに関して試験され得る。二次ライブラリーからの構築および再選択によるアフィニティ成熟が、例えば、Hoogenboom et al., in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001)) に記載されている。アフィニティ成熟のいくつかの態様において、多様性は、任意の様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指向変異導入)によって成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。次いで、このライブラリーは、所望のアフィニティを有する任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)を無作為化するHVR指向アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異導入またはモデリングを用いて、具体的に特定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3がしばしば標的化される。
特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つまたは複数のHVR内で行われ得る。例えば、結合アフィニティを実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、例えば、HVRの抗原接触残基の外側であり得る。上記の変異VHおよびVL配列の特定の態様において、各HVRは改変されていないか、わずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含む。
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域を同定するのに有用な方法は、Cunningham and Wells (1989), Science 244:1081-1085によって記載される、「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれるものである。この方法において、一残基または一群の標的残基(例えば、荷電残基、例えばアルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、およびグルタミン酸)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンもしくはポリアラニン)で置き換えられ、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかどうかが決定される。この初期置換に対して機能的感受性を示したアミノ酸位置に、さらなる置換が導入され得る。あるいはまたは加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を解析してもよい。そのような接触残基および近隣の残基を、置換候補として標的化してもよく、または置換候補から除外してもよい。変異体は、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
アミノ酸配列の挿入は、配列内部への単一または複数のアミノ酸残基の挿入と同様、アミノ末端および/またはカルボキシル末端における1残基から100残基以上を含むポリペプチドの長さの範囲での融合も含む。末端の挿入の例は、N末端にメチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体のN-またはC-末端に、酵素(例えば、ADEPTのための)または抗体の血漿中半減期を増加させるポリペプチドを融合させたものを含む。
a7-2)グリコシル化変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加させるまたは減少させるように改変されている。抗体へのグリコシル化部位の追加または削除は、1つまたは複数のグリコシル化部位を作り出すまたは取り除くようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成可能である。
抗体がFc領域を含む場合、そこに付加される炭水化物が改変されてもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然型抗体は、典型的には、枝分かれした二分岐のオリゴ糖を含み、当該オリゴ糖は通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-リンケージによって付加されている。例えば、Wright et al., TIBTECH 15:26-32 (1997) 参照。オリゴ糖は、例えば、マンノース、N‐アセチルグルコサミン (GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸などの種々の炭水化物、また、二分岐のオリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに付加されたフコースを含む。いくつかの態様において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を伴う抗体変異体を作り出すために行われてもよい。
一態様において、Fc領域に(直接的または間接的に)付加されたフコースを欠く炭水化物構造体を有する抗体変異体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるようにMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に付加されたすべての糖構造体(例えば、複合、ハイブリッド、および高マンノース構造体)の和に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域の297位のあたりに位置するアスパラギン残基を表す(Fc領域残基のEUナンバリング)。しかし、複数の抗体間のわずかな配列の多様性に起因して、Asn297は、297位の±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位~300位の間に位置することもあり得る。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号 (Presta, L.) ;第2004/0093621号 (Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd) を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例は、US2003/0157108; WO2000/61739; WO2001/29246; US2003/0115614; US2002/0164328; US2004/0093621; US2004/0132140; US2004/0110704; US2004/0110282; US2004/0109865; WO2003/085119; WO2003/084570; WO2005/035586; WO2005/035778; WO2005/053742; WO2002/031140; Okazaki et al., J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004) を含む。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例は、タンパク質のフコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al., Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);US2003/0157108 A1、Presta, L;およびWO2004/056312 A1、Adams et al.、特に実施例11)およびノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda Y. et al., Biotechnol. Bioeng. 94(4):680-688 (2006);およびWO2003/085107を参照のこと)を含む。
例えば抗体のFc領域に付加された二分枝型オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体がさらに提供される。そのような抗体変異体は、減少したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878 (Jean-Mairet et al.) ;米国特許第6,602,684号 (Umana et al.);およびUS2005/0123546 (Umana et al.) に記載されている。Fc領域に付加されたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体変異体は、例えば、WO1997/30087 (Patel et al.);WO1998/58964 (Raju, S.); およびWO1999/22764 (Raju, S.) に記載されている。
a7-3)システイン改変抗体変異体
特定の態様において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された、システイン改変抗体(例えば、「thioMAb」)を作り出すことが望ましいだろう。特定の態様において、置換を受ける残基は、抗体の、アクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置され、当該反応性のチオール基は、当該抗体を他の部分(薬剤部分またはリンカー‐薬剤部分など)にコンジュゲートして本明細書でさらに詳述するようにイムノコンジュゲートを作り出すのに使用されてもよい。特定の態様において、以下の残基の任意の1つまたは複数が、システインに置換されてよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるようにして生成されてもよい。
a7-4)抗体誘導体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野において知られておりかつ容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これに限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール (PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ1,3ジオキソラン、ポリ1,3,6,トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれでも)、および、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、および、これらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性のために、製造において有利であるだろう。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、枝分かれしていてもしていなくてもよい。抗体に付加されるポリマーの数には幅があってよく、2つ以上のポリマーが付加されるならそれらは同じ分子であってもよいし、異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、これらに限定されるものではないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下での療法に使用されるか否か、などへの考慮に基づいて、決定することができる。
別の態様において、抗体と、放射線に曝露することにより選択的に熱せられ得る非タンパク質部分との、コンジュゲートが提供される。一態様において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線はいかなる波長でもよく、またこれらに限定されるものではないが、通常の細胞には害を与えないが抗体‐非タンパク質部分に近接した細胞を死滅させる温度まで非タンパク質部分を熱するような波長を含む。
B. 組み換えの方法および構成
例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるとおり、抗体は組み換えの方法や構成を用いて製造することができる。一態様において、本明細書に記載の抗C1s抗体をコードする、単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしてもよい。さらなる態様において、このような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。このような態様の1つでは、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または、(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクターと抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクターを含む(例えば、形質転換されている)。一態様において、宿主細胞は、真核性である(例えば、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞)またはリンパ系の細胞(例えば、Y0、NS0、SP2/0細胞))。一態様において、抗C1s抗体の発現に好適な条件下で、上述のとおり当該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、および任意で、当該抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することを含む、抗C1s抗体を作製する方法が提供される。
抗C1s抗体の組み換え製造のために、(例えば、上述したものなどの)抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のために、1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて容易に単離および配列決定されるだろう(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることで)。
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合は、細菌で製造してもよい。細菌での抗体断片およびポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照のこと。(加えて、大腸菌における抗体断片の発現について記載したCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性フラクション中に単離されてもよく、またさらに精製することができる。
原核生物に加え、部分的なまたは完全なヒトのグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類および酵母の株を含む、糸状菌または酵母などの真核性の微生物は、抗体コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)および Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) を参照のこと。
多細胞生物(無脊椎生物および脊椎生物)に由来するものもまた、グリコシル化された抗体の発現のために好適な宿主細胞である。無脊椎生物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。昆虫細胞との接合、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質転換に用いられる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(登録商標)技術を記載)を参照のこと。
脊椎動物細胞もまた宿主として使用できる。例えば、浮遊状態で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は、有用であろう。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎CV1株 (COS-7);ヒト胎児性腎株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977) などに記載の293または293細胞);仔ハムスター腎細胞 (BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980) などに記載のTM4細胞);サル腎細胞 (CV1);アフリカミドリザル腎細胞 (VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞 (HELA);イヌ腎細胞 (MDCK);Buffalo系ラット肝細胞 (BRL 3A);ヒト肺細胞 (W138);ヒト肝細胞 (Hep G2);マウス乳癌 (MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982) に記載);MRC5細胞;および、FS4細胞などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR- CHO細胞 (Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)) を含むチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞;およびY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説として、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003) を参照のこと。
pH依存性を有する抗体は、例えばWO 2009/125825に記載されるような、スクリーニング方法および/または変異誘発方法を用いることによって取得され得る。当該スクリーニング方法は、特定の抗原に特異的な抗体の集団内からpH依存的結合特性を有する抗体を同定する任意のプロセスを含み得る。特定の態様において、当該スクリーニング方法は、酸性pHおよび中性pHの両方において初期抗体集団内の個々の抗体の1つまたは複数の結合パラメータ(例えば、KDまたはkd)を測定することを含み得る。抗体の結合パラメータは、例えば表面プラズモン共鳴、または特定の抗原に対する抗体の結合特性の定量的もしくは定性的な評価を可能にする任意の他の分析方法を用いて測定され得る。特定の態様において、当該スクリーニング方法は、2以上の酸性KD/中性KD比で抗原に結合する抗体を同定することを含み得る。あるいは、当該スクリーニング方法は、2以上の酸性kd/中性kd比で抗原に結合する抗体を同定することを含み得る。
別の態様において、変異誘発方法は、抗原に対する抗体のpH依存的結合性を増強するために抗体の重鎖内および/または軽鎖内にアミノ酸の欠失、置換または付加を組み込むことを含み得る。特定の態様において、変異誘発は、抗体の1つまたは複数の可変ドメイン内、例えば1つまたは複数のHVR(例えば、CDR)内で行われ得る。例えば、変異誘発は、抗体の1つまたは複数のHVR(例えば、CDR)内のアミノ酸を別のアミノ酸で置換することを含み得る。特定の態様において、変異誘発は、抗体の少なくとも1つのHVR(例えば、CDR)内の1つまたは複数のアミノ酸をヒスチジンで置換することを含み得る。特定の態様において、「増強されたpH依存的結合性」は、変異型の抗体が、変異誘発前の元の「親」抗体(すなわち、pH依存性の低い抗体)よりも大きな酸性KD/中性KD比または大きな酸性kd/中性kd比を示すことを意味する。特定の態様において、変異型の抗体は、2以上の酸性KD/中性KD比を有する。あるいは、変異型の抗体は、2以上の酸性kd/中性kd比を有する。
ポリクローナル抗体は好ましくは、関連する抗原およびアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により動物において産生される。関連する抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質に、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害因子に、二官能性物質または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(ここでRおよびR1は異なるアルキル基である)を用いて、コンジュゲートすることが有用であり得る。
動物(通常は非ヒト哺乳動物)は、例えば、(ウサギまたはマウスについてそれぞれ)100μgまたは5μgのタンパク質またはコンジュゲートを3倍容量のフロイント完全アジュバントと組み合わせてその溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、複数部位に皮下注射することによって、最初の量の1/5~1/10の、フロイント完全アジュバント中のペプチドまたはコンジュゲートで該動物を追加免疫する。7~14日後、該動物から採血し、血清を抗体力価についてアッセイする。力価がプラトーに達するまで動物を追加免疫する。好ましくは、同一抗原であるが別のタンパク質にコンジュゲートされたおよび/または別の架橋試薬を介してコンジュゲートされたコンジュゲートを用いて、該動物を追加免疫する。コンジュゲートは、組み換え細胞培養物中でタンパク質融合体として調製することも可能である。また、免疫応答を増強するために、ミョウバンなどの凝集剤も好適に使用される。
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られ、すなわち、該集団を構成する個々の抗体は、若干量存在しうる自然に生じる潜在的な突然変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示している。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256(5517):495-497 (1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製することができる。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターを本明細書に上記したように免疫化して、免疫化に使用されたタンパク質に特異的に結合する抗体を製造するか製造する能力があるリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的には、抗原タンパク質またはその融合変異体を包含する。一般的に、ヒト起源の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(PBL)が使用され、非ヒト哺乳動物源が望まれる場合には脾臓細胞またはリンパ節細胞が使用される。その後、リンパ球は、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて不死化細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press (1986), pp. 59-103)。
不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシおよびヒト起源のミエローマ細胞である。通常は、ラットまたはマウスのミエローマ細胞株が利用される。このようにして作製されたハイブリドーマ細胞を、未融合の親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1種以上の物質を好ましくは含有する適切な培養培地中に播種して増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含むであろう。
好ましい不死化ミエローマ細胞とは、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの製造を補助し、かつHAT培地のような培地に対して感受性である、細胞である。これらの中でも、マウスミエローマ株、例えば、米国カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerから入手できるMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、ならびに米国バージニア州マナッサスのAmerican Type Culture Collectionから入手できるSP-2細胞(およびその誘導体、例えばX63-Ag8-653)が好ましい。ヒトモノクローナル抗体の製造について、ヒトミエローマ細胞株およびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株もまた、記載されている(Kozbor et al., J Immunol. 133(6):3001-3005 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, pp. 51-63 (1987))。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の製造についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により製造されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはin vitro結合測定法、例えば放射免疫測定法(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定される。このような技術および測定法は当技術分野で公知である。例えば、結合アフィニティは、Munson, Anal Biochem. 107(1):220-239 (1980)のスキャッチャード(Scatchard)解析によって求めることができる。
所望の特異性、アフィニティ、および/または活性の抗体を製造するハイブリドーマ細胞が特定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングして、標準的な方法(Goding、前掲)により増殖させることができる。この目的のための適切な培養培地としては、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が挙げられる。また、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物内の腫瘍としてin vivoで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、培養培地、腹水、または血清から、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製法によって、適切に分離される。
III. 測定法(アッセイ)
本明細書で提供される抗C1s抗体は、当該技術分野において知られている種々の測定法によって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物活性について明らかにされてもよい。
A.結合測定法および他の測定法
一局面において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット等の公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。
別の局面において、C1sへの結合に関して、本明細書に記載されるいずれかの抗C1s抗体と競合する抗体を同定するため、または本明細書に記載されるいずれかの抗C1s抗体と同じエピトープに結合する抗体を同定するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、そのような競合抗体が過剰に存在する場合、これは、C1sに対する参照抗体の結合を少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、またはそれ以上阻止する(例えば低減させる)。特定の態様において、そのような競合抗体は、本明細書に記載されるいずれかの抗C1s抗体によって結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris (1996), "Epitope Mapping Protocols," in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。特定の態様において、そのような競合アッセイを中性pH条件で実施することができる。いくつかの態様において、競合アッセイは、例えばOctet(登録商標)システムを用いる、タンデム競合アッセイである。
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたC1sは、C1sに結合する第1の標識された抗体(例えば、本明細書に記載されているもののうちの1つ)およびC1sへの結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたC1sが、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のC1sへの結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたC1sに結合した標識の量が測定される。固定化されたC1sに結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がC1sへの結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988), Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。
別の局面において、本明細書で提供される抗C1s抗体と同じエピトープに結合するまたは本明細書で提供される抗C1s抗体とC1sへの結合に関して競合する抗体は、サンドイッチアッセイを用いて同定され得る。サンドイッチアッセイは2つの抗体を使用することを含み、当該抗体はそれぞれ、検出したいタンパク質の異なる免疫原性部分またはエピトープに結合することができる。サンドイッチアッセイにおいて、固体支持体上に固定化された第1の抗体に試験サンプルアナライトが結合し、続いて第2の抗体がアナライトに結合し、それによって不溶性の3者複合体が形成される。David & Greene、米国特許第4,376,110号を参照のこと。第2の抗体は、それ自体が検出可能部分で標識されてもよい(直接サンドイッチアッセイ)し、検出可能部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定されてもよい(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1つはELISAアッセイであり、この例において、検出可能部分は酵素である。本明細書で提供される抗C1s抗体と同時にC1sに結合する抗体は、当該抗C1s抗体と異なるエピトープに結合する抗体であると判定され得る。したがって、本明細書で提供される抗C1s抗体と同時にはC1sに結合しない抗体は、当該抗C1s抗体と同じエピトープに結合するまたは当該抗C1s抗体とC1sへの結合に関して競合する抗体であると判定され得る。
B. 活性アッセイ
一局面において、生物活性を有する抗C1s抗体を同定するためのアッセイが提供される。生物活性には、古典経路の活性化の阻止、および当該経路の活性化により生じる切断産物であるC2a、C2b、C3a、C3b、C4a、C4b、C5a、およびC5bの生成の阻止が含まれ得る。in vivoおよび/またはin vitroでそのような生物活性を有する抗体も提供される。
特定の態様において、本発明の抗体は、そのような生物活性について試験される。いくつかの態様において、本発明の抗体は、ヒツジ赤血球(RBC)抗原に対する抗体によって感作されたヒツジRBCの補体介在性溶血を阻害するその能力について、すなわちRBCアッセイを用いて、評価され得る。いくつかの態様において、本発明の抗体は、ニワトリ赤血球(cRBC)抗原に対する抗体によって感作されたcRBCの補体介在性溶血を阻害するその能力について評価され得る。補体タンパク質の供給源としてヒト血清を用いると、放出されたヘモグロビンの量を分光光度法により測定することによって、本発明の抗体の活性を決定することができる。
RBCアッセイは、公知の方法、例えばJ. Vis. Exp. 2010; (37): 1923に開示される方法を用いて適切に実施され得る。この文献は、RBC溶解アッセイとして50%溶血性補体(CH50)アッセイを実施する方法について記載している。簡潔に述べると、このアッセイは、古典的補体経路の活性化を測定し、その経路の任意の成分の減少、非存在、または不活性を検出する。それは、血清中の補体成分の赤血球溶解活性を評価する。抗体が試験血清と共にインキュベートされると、この経路が活性化され、溶血が引き起こされる。古典的経路の1つまたは複数の成分が減少すると、CH50値が減少する。CH50アッセイは、補体成分による細胞溶解に対する阻害%を測定する本明細書の実施例において使用されたアッセイと完全に同一ではないが、コンセプトおよび基本構成は本発明と実質的に同一である。一態様において、RBCアッセイは以下のようにして実施される。ヒト血清を、関心対象の抗体と共にプレインキュベートする(例えば、摂氏37度(℃)で3時間)。次いでこの血清を等量の感作ヒツジ赤血球に添加し、赤血球が溶解するようインキュベートする(例えば、37℃で1時間)。次いでこの反応を停止させる。この混合物を遠心分離して未溶解細胞をペレット化し、その上清を取り出し、415 nmでの吸光度(OD)を用いてヘモグロビンの放出を分析する。赤血球溶解の阻害率(%)を計算するため、0%阻害を、抗体を添加しない(緩衝液のみの)条件と設定し、100%阻害を、終濃度5 mMのEDTAを添加する条件と設定する(例えば、実施例7を参照のこと)。抗体が一定の赤血球溶解阻害率(%)を示すとき、このことは、その抗体がヒト血清補体に対する中和活性、例えば、C1qとC1r2s2複合体との間の相互作用を阻害する活性を有することを意味する。
このように、C1qとC1r2s2複合体との間の相互作用を阻害する活性を評価するために、RBCアッセイを用いて、抗体のヒト血清補体に対する中和活性を評価することができる。一態様において、本発明は、RBCアッセイにおいて少なくとも70%のヒト血清補体に対する中和活性を有する、C1qとC1r2s2複合体との間の相互作用を阻害する単離された抗体を提供する。
C. 免疫原性の評価
抗体の免疫原性は、WO2018/124005(Kubo C.ら)に記載されているように、活発な増殖を示す前のIL-2分泌CD4+ T細胞の割合を指標として使用することで評価される。具体的には、ヒトPBMCからCD8-CD25low PBMC(末梢血単核球細胞)を調整し、該細胞を抗体存在下で67時間培養する。
IV. イムノコンジュゲート
本発明はまた、1つまたは複数の細胞傷害剤(例えば化学療法剤または化学療法薬、増殖阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物もしくは動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素、もしくはそれらの断片)または放射性同位体)にコンジュゲートされた本明細書の抗C1s抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
一態様において、イムノコンジュゲートは、抗体が、これらに限定されるものではないが以下を含む1つまたは複数の薬剤にコンジュゲートされた、抗体-薬剤コンジュゲート (antibody-drug conjugate: ADC) である:メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、および欧州特許第0,425,235号B1参照);例えばモノメチルオーリスタチン薬剤部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号および第5,780,588号および第7,498,298号参照)などのオーリスタチン;ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号、および第5,877,296号;Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);ならびにLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998) 参照);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006);Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006);Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005);Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000);Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002);King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);および米国特許第6,630,579号参照);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065。
別の態様において、イムノコンジュゲートは、これらに限定されるものではないが以下を含む酵素的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた、本明細書に記載の抗体を含む:ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) 由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ (Aleurites fordii) タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ (Phytolacca americana) タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ツルレイシ (momordica charantia) 阻害剤、クルシン (curcin)、クロチン、サボンソウ (saponaria officinalis) 阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン (mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、ならびにトリコテセン。
別の態様において、イムノコンジュゲートは、放射性コンジュゲートを形成するために放射性原子にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体を含む。様々な放射性同位体が放射性コンジュゲートの製造に利用可能である。例は、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212Pb、およびLuの放射性同位体を含む。放射性コンジュゲートを検出のために使用する場合、放射性コンジュゲートは、シンチグラフィー検査用の放射性原子(例えばTc-99mもしくは123I)、または、核磁気共鳴 (NMR) イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られる)用のスピン標識(例えばここでもヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、または鉄)を含み得る。
抗体および細胞傷害剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質連結剤を用いて作製され得る。例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート (SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート (SMCC)、イミノチオラン (IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)である。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987) に記載されるようにして調製され得る。炭素-14標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸 (MX-DTPA) は、抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照のこと。リンカーは、細胞内での細胞傷害薬の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
本明細書のイムノコンジュゲートまたはADCは、(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aから)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋試薬を用いて調製されるコンジュゲートを明示的に考慮するが、これらに限定されない。
V. 診断および検出のための方法および組成物
特定の態様において、本明細書で提供される抗C1s抗体のいずれも、生物学的サンプルにおけるC1sの存在を検出するのに有用である。本明細書で用いられる用語「検出」は、定量的または定性的な検出を包含する。特定の態様において、生物学的サンプルは、細胞または組織、例えば、血清、全血、血漿、生検サンプル、組織サンプル、細胞懸濁物、唾液、痰、口腔液、脳脊髄液、羊水、腹水、母乳、初乳、乳腺分泌物、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、滑液、腹水、眼用レンズ液、または粘液を含む。
一態様において、診断方法または検出方法において使用するための抗C1s抗体が提供される。さらなる局面において、生物学的サンプル中のC1sの存在を検出する方法が提供される。特定の態様において、この方法は、C1sへの抗C1s抗体の結合が許容される条件下で本明細書に記載の抗C1s抗体と生物学的サンプルを接触させること、および抗C1s抗体とC1sの間で複合体が形成されたかどうかを検出することを含む。そのような方法は、in vitroの方法またはin vivoの方法であり得る。一態様において、抗C1s抗体は、例えばC1sが患者を選択するためのバイオマーカーである場合、抗C1s抗体を用いる治療に適合する対象を選択するために使用される。特定の態様において、個体由来の生物学的サンプル(例えば、個体の細胞、組織、または体液)において異常な量(例えば、過剰な量)の補体C1sまたは異常なレベルの補体C1sタンパク質分解活性が検出される場合、当該個体を本発明の抗C1s抗体を用いる治療に好適であると選択することができる。
本発明の抗体を用いて診断され得る疾患または状態の例には、加齢性黄斑変性症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、アナフィラキシー、嗜銀顆粒性認知症、関節炎(例えば、関節リウマチ)、喘息、アテローム性動脈硬化症、非典型溶血性尿毒症症候群、自己免疫疾患、バラケル・シモンズ症候群(Barraquer-Simons syndrome)、ベーチェット病、英国型アミロイドアンギオパチー、類天疱瘡、天疱瘡、バージャー病、C1q腎症、がん、抗リン脂質抗体症候群、脳アミロイドアンギオパチー、寒冷凝集素症、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、クローン病、クリオグロブリン血症性血管炎、拳闘家痴呆、レビー小体型認知症(DLB)、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、円板状エリテマトーデス、ダウン症候群、巣状分節性糸球体硬化症、形式的思考障害、前頭側頭型認知症(FTD)、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、ギラン・バレー症候群、ハラーホルデン・スパッツ症候群、溶血性尿毒症症候群、遺伝性血管浮腫、低ホスファターゼ症、特発性肺炎症候群、免疫複合体病、炎症性筋疾患(例えば、皮膚筋炎、壊死性筋炎、封入体筋炎、抗ARS症候群)、感染症(例えば、細菌(例えば、髄膜炎菌もしくはレンサ球菌)、ウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))または他の感染病原体によって引き起こされる疾患)、炎症疾患、虚血/再灌流障害、軽度認知障害、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、モリブデン補因子欠損症(MoCD)A型、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)I、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)II(デンスデポジット病)、膜性腎炎、多発梗塞性認知症、ループス(全身性エリテマトーデス(SLE))、糸球体腎炎、川崎病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、多系統萎縮症、重症筋無力症、心筋梗塞、筋強直性ジストロフィー、視神経脊髄炎、ニーマン・ピック病C型、神経原線維変化を呈する非グアム型運動ニューロン疾患、パーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、発作性夜間血色素尿症、尋常性天疱瘡、ピック病、脳炎後パーキンソン病、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、乾癬、敗血症、志賀毒素産生性大腸菌(E.coli)(STEC)-HuS、脊髄性筋萎縮症、脳卒中、亜急性硬化性全脳炎、神経原線維型認知症、移植片拒絶、血管炎(例えば、ANCA関連血管炎)、ヴェグナー肉芽腫症、鎌状赤血球症、クリオグロブリン血症、混合性クリオグロブリン血症、本態性混合性クリオグロブリン血症、II型混合性クリオグロブリン血症、III型混合性クリオグロブリン血症、腎炎、薬物性血小板減少症、ループス腎炎、後天性表皮水疱症、遅発性溶血性輸血反応、低補体血症性蕁麻疹様血管炎症候群、偽水晶体性水疱性角膜症、血栓性微小血管障害症(TMA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、シェーグレン症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、全身性硬化症(強皮症)(SSc)、免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)および血小板輸血不応状態が含まれるが、これらに限定されない。
特定の態様において、標識された抗C1s抗体が提供される。標識は、直接的に検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色標識、高電子密度標識、化学発光標識、および放射性標識)ならびに、例えば酵素反応または分子間相互作用を通じて間接的に検出される部分(例えば酵素またはリガンド)を含むが、これらに限定されない。例示的な標識は、これらに限定されるものではないが、以下を含む:放射性同位体32P、14C、125I、3Hおよび131I、希土類キレートなどの発蛍光団またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)などのルシフェラーゼ、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ (horseradish peroxidase: HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、単糖オキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素(例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼ)と連結されたもの、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなどの複素環オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカル類、ならびにこれらに類するもの。
VI. 薬学的製剤
本明細書に記載の抗C1s抗体の薬学的製剤は、所望の純度を有する抗体を、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体 (Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)) と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬学的に許容される担体は、概して、用いられる際の用量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む、抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの、砂糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール (PEG) などの非イオン系表面活性剤。
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水溶液抗体製剤は、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載のものを含み、後者の製剤はヒスチジン-アセテート緩衝液を含んでいる。
本明細書の製剤は、治療される特定の適応症のために必要であれば1つより多くの有効成分を含んでもよい。互いに悪影響を与えあわない相補的な活性を伴うものが好ましい。例えば、併用療法に用いられる製剤をさらに提供することが望ましい場合がある。このような有効成分は、意図された目的のために有効である量で、好適に組み合わせられて存在する。
有効成分は、例えば液滴形成(コアセルベーション)手法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)に取り込まれてもよいし、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)に取り込まれてもよいし、マクロエマルションに取り込まれてもよい。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に開示されている。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含んだ固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、当該マトリクスは例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
生体内 (in vivo) 投与のために使用される製剤は、通常無菌である。無菌状態は、例えば滅菌ろ過膜を通して濾過することなどにより、容易に達成される。
VII. 治療的方法および治療用組成物
本明細書で提供される抗C1s抗体のいずれも、治療的な方法において使用されてよい。
一局面において、医薬品としての使用のための、抗C1s抗体が提供される。さらなる局面において、補体介在性の疾患または状態の治療における使用のための、抗C1s抗体または抗C1s抗体を含む薬学的製剤(以下、まとめて抗C1s抗体と称することがある)が提供される。特定の態様において、治療方法における使用のための、抗C1s抗体が提供される。特定の態様において、本発明は、補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療する方法であって、当該個体に抗C1s抗体の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、抗C1s抗体を提供する。このような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。特定の態様において、方法は、個体由来の生物学的サンプル(例えば、個体の細胞、組織、または体液)における補体C1sの量およびタンパク質分解活性のうちのいずれかまたは両方を測定する工程を含み、当該個体由来の生物学的サンプル(例えば、個体の細胞、組織、または体液)において異常な量(例えば、過剰な量)の補体C1sまたは異常なレベルの補体C1sタンパク質分解活性が検出される場合、当該個体は本発明の抗C1s抗体を用いる治療に好適であると選択される。生物学的サンプルにおけるC1sの量およびタンパク質分解活性は、当業者に公知の手法によって測定することができる。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる態様において、本発明は、補体介在性の疾患または状態の治療に使用するための抗C1s抗体を提供する。さらなる態様において、抗C1s抗体は、血漿からのC1sのクリアランスの増強に使用するためのものであり得る。さらなる態様において、抗C1s抗体は、血漿からのC1r2s2のクリアランスの増強に使用するためのものであり得る。さらなる態様において、抗C1s抗体は、血漿からのC1qのクリアランスを増強せずに血漿からのC1r2s2のクリアランスを増強するのに使用するためのものであり得る。いくつかの例において、当該抗体は古典的補体経路の成分を阻害し、いくつかの例において、古典的補体経路の成分はC1sである。特定の態様において、本発明は、補体介在性の疾患または状態の治療方法において使用するための抗C1s抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、血漿からのC1sのクリアランスを増強する方法において使用するための抗C1s抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、血漿からのC1r2s2のクリアランスを増強する方法において使用するための抗C1s抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、血漿からのC1qのクリアランスを増強せずに血漿からのC1r2s2のクリアランスを増強するのに使用するための抗C1s抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、古典的補体経路の成分を阻害する方法において使用するための抗C1s抗体を提供し、いくつかの例において、古典的補体経路の成分はC1sである。上記態様のいずれかにおいて、「個体」は好ましくはヒトである。
一局面において、本開示は、補体活性化を調整する方法を提供する。いくつかの態様において、この方法は、例えばC4b2aの産生を減少させるよう、補体の活性化を阻害する。いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体において補体の活性化を調整する方法であって、本開示の抗C1s抗体または本開示の薬学的製剤(薬学的組成物)を個体に投与する工程を含み、薬学的製剤(薬学的組成物)が本開示の抗C1s抗体を含む、方法を提供する。いくつかの態様において、そのような方法は、補体活性化を阻害する。いくつかの態様において、個体は哺乳動物である。いくつかの態様において、個体はヒトである。投与は、本明細書で開示されるものを含む、当業者に公知の任意の経路によるものであり得る。いくつかの態様において、投与は静脈内投与または皮下投与である。いくつかの態様において、投与は髄腔内投与である。
補体介在性の疾患または状態は、個体の細胞、組織、または体液における異常な量の補体C1sまたは異常なレベルの補体C1sタンパク質分解活性によって特徴づけられる疾患または状態である。
いくつかの例において、補体介在性の疾患または状態は、細胞、組織、または体液における増加した(通常より多い)量のC1sまたは上昇したレベルの補体C1s活性の存在によって特徴づけられる。例えば、いくつかの例において、補体介在性の疾患または状態は、脳組織および/または脳脊髄液における増加した量のC1sおよび/または上昇した活性のC1sの存在によって特徴づけられる。細胞、組織、または体液における「通常より多い」量のC1sは、その細胞、組織、または体液中のC1sの量が通常の対照レベルよりも多い、例えば、同じ年齢グループの個体または個体集団の通常の対照レベルよりも多いことを示す。細胞、組織、または体液における「通常よりも高い」レベルのC1s活性は、その細胞、組織、または体液においてC1sによりもたらされるタンパク質分解切断が通常の対照レベルよりも高い、例えば、同じ年齢グループの個体または個体集団の通常の対照レベルよりも高いことを示す。いくつかの例において、補体介在性の疾患または状態を有する個体は、そのような疾患または状態の1つまたは複数のさらなる症状を示す。
他の例において、補体介在性の疾患または状態は、細胞、組織、または体液における通常よりも少ない量のC1sまたは低いレベルの補体C1s活性の存在によって特徴づけられる。例えば、いくつかの例において、補体介在性の疾患または状態は、脳組織および/または脳脊髄液における少ない量のC1sおよび/または低い活性のC1sの存在によって特徴づけられる。細胞、組織、または体液における「通常よりも少ない」量のC1sは、その細胞、組織、または体液におけるC1sの量が通常の対照レベルよりも少ない、例えば、同じ年齢グループの個体または個体集団の通常の対照レベルよりも少ないことを示す。細胞、組織、または体液における「通常よりも低い」レベルのC1s活性は、その細胞、組織、または体液においてC1sによりもたらされるタンパク質分解切断が通常の対照レベルよりも低い、例えば、同じ年齢グループの個体または個体集団の通常の対照レベルよりも低いことを示す。いくつかの例において、補体介在性の疾患または状態を有する個体は、そのような疾患または状態の1つまたは複数のさらなる症状を示す。
補体介在性の疾患または状態は、補体C1sの量または活性が個体において疾患または状態を引き起こす程度のものである疾患または状態である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、自己免疫疾患、がん、血液疾患、感染症、炎症疾患、虚血・再灌流障害、神経変性疾患、神経変性障害、眼疾患、腎臓疾患、移植片拒絶、血管疾患、および血管炎疾患からなる群より選択される。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、自己免疫疾患である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、がんである。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、感染疾患である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、炎症疾患である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、血液疾患である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、虚血・再灌流疾患である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、眼疾患である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、腎臓疾患である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、移植片拒絶である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、抗体による移植片拒絶である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、血管疾患である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、血管炎疾患である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、神経変性疾患または障害である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患は、神経変性疾患である。いくつかの態様において、補体介在性の状態は、神経変性障害である。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、タウロパチーである。
補体介在性の疾患または状態の例には、加齢性黄斑変性症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、アナフィラキシー、嗜銀顆粒性認知症、関節炎(例えば、関節リウマチ)、喘息、アテローム性動脈硬化症、非典型溶血性尿毒症症候群、自己免疫疾患、バラケル・シモンズ症候群(Barraquer-Simons syndrome)、ベーチェット病、英国型アミロイドアンギオパチー、類天疱瘡、天疱瘡、バージャー病、C1q腎症、がん、抗リン脂質抗体症候群、脳アミロイドアンギオパチー、寒冷凝集素症、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、クローン病、クリオグロブリン血症性血管炎、拳闘家痴呆、レビー小体型認知症(DLB)、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、円板状エリテマトーデス、ダウン症候群、巣状分節性糸球体硬化症、形式的思考障害、前頭側頭型認知症(FTD)、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、ギラン・バレー症候群、ハラーホルデン・スパッツ症候群、溶血性尿毒症症候群、遺伝性血管浮腫、低ホスファターゼ症、特発性肺炎症候群、免疫複合体病、炎症性筋疾患(例えば、皮膚筋炎、壊死性筋炎、封入体筋炎、抗ARS症候群)、感染症(例えば、細菌(例えば、髄膜炎菌もしくはレンサ球菌)、ウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))または他の感染病原体によって引き起こされる疾患)、炎症疾患、虚血/再灌流障害、軽度認知障害、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、モリブデン補因子欠損症(MoCD)A型、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)I、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)II(デンスデポジット病)、膜性腎炎、多発梗塞性認知症、ループス(全身性エリテマトーデス(SLE))、糸球体腎炎、川崎病、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、多系統萎縮症、重症筋無力症、心筋梗塞、筋強直性ジストロフィー、視神経脊髄炎、ニーマン・ピック病C型、神経原線維変化を呈する非グアム型運動ニューロン疾患、パーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、発作性夜間血色素尿症、尋常性天疱瘡、ピック病、脳炎後パーキンソン病、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、乾癬、敗血症、志賀毒素産生性大腸菌(E.coli)(STEC)-HuS、脊髄性筋萎縮症、脳卒中、亜急性硬化性全脳炎、神経原線維型認知症、移植片拒絶、血管炎(例えば、ANCA関連血管炎)、ヴェグナー肉芽腫症、鎌状赤血球症、クリオグロブリン血症、混合性クリオグロブリン血症、本態性混合性クリオグロブリン血症、II型混合性クリオグロブリン血症、III型混合性クリオグロブリン血症、腎炎、薬物性血小板減少症、ループス腎炎、後天性表皮水疱症、遅発性溶血性輸血反応、低補体血症性蕁麻疹様血管炎症候群、偽水晶体性水疱性角膜症、血栓性微小血管障害症(TMA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、シェーグレン症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、全身性硬化症(強皮症)(SSc)、免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)および血小板輸血不応状態が含まれるが、これらに限定されない。
アルツハイマー病および特定の形態の前頭側頭型認知症(ピック病、散発性前頭側頭型認知症、および17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症)は、最も一般的な形態のタウロパチーである。したがって、本発明は、タウロパチーがアルツハイマー病、ピック病、散発性前頭側頭型認知症、および17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症である上記の任意の方法に関連する。他のタウロパチーには、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、および亜急性硬化性全脳炎が含まれるが、これらに限定されない。
神経変性タウロパチーには、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、嗜銀顆粒性認知症、英国型アミロイドアンギオパチー、脳アミロイドアンギオパチー、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、拳闘家痴呆、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、前頭側頭型認知症、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、ハラーホルデン・スパッツ症候群、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、ニーマン・ピック病C型、神経原線維変化を呈する非グアム型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後パーキンソン病、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、進行性核上性麻痺、亜急性硬化性全脳炎、神経原線維型認知症、多発梗塞性認知症、虚血性脳卒中、慢性外傷性脳症(CTE)、外傷性脳損傷(TBI)、および脳卒中が含まれる。
本開示はまた、シヌクレイノパチー、例えば、パーキンソン病(PD);レビー小体型認知症(DLB);多系統萎縮症(MSA)等を治療する方法を提供する。例えば、認知症を伴うPD(PDD)が、本開示の方法を用いて治療され得る。
いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、アルツハイマー病を含む。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、パーキンソン病を含む。いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、移植片拒絶を含む、いくつかの態様において、補体介在性の疾患または状態は、抗体による移植片拒絶である。
いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、個体において補体介在性の疾患または状態の少なくとも1つの症状の発症を防ぐまたは遅らせる。いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、個体において補体介在性の疾患または状態の少なくとも1つの症状を軽減するまたは除去する。症状の例には、自己免疫疾患、がん、血液疾患、感染疾患、炎症疾患、虚血・再灌流疾患、神経変性疾患、神経変性障害、腎臓疾患、移植片拒絶、眼疾患、血管疾患または血管炎疾患に関連する症状が含まれるが、これらに限定されない。症状は、神経学的症状、例えば、認知機能障害、記憶障害、運動機能喪失等であり得る。症状はまた、個体の細胞、組織、または体液中のC1sタンパク質の活性であり得る。症状はまた、個体の細胞、組織、または体液中での補体活性化の程度であり得る。
いくつかの態様において、個体への本開示の抗C1s抗体の投与は、個体の細胞、組織、または体液において補体活性化を調整する。いくつかの態様において、個体への本開示の抗C1s抗体の投与は、個体の細胞、組織、または体液において補体活性化を阻害する。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体における補体活性化と比較して、個体における補体活性化を少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超阻害する。
いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、赤血球へのC3沈着を減少させる、例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、RBCへのC3b、iC3b等の沈着を減少させる。いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の赤血球溶解を阻害する。
いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、血小板へのC3の沈着を減少させる。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、血小板へのC3b、iC3b等の沈着を減少させる。
いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体の投与は、以下からなる群より選択されるアウトカムをもたらす:(a)補体活性化の低減、(b)認知機能の改善、(c)ニューロン喪失の低減、(d)ニューロンにおけるリン酸化Tauレベルの低下、(e)グリア細胞活性化の低減、(f)リンパ球浸潤の低減、(g)マクロファージ浸潤の低減、(h)抗体沈着の減少、(i)グリア細胞喪失の低減、(j)オリゴデンドロサイト喪失の低減、(k)樹状細胞浸潤の低減、(l)好中球浸潤の低減、(m)赤血球溶解の低減、(n)赤血球食作用の低減、(o)血小板食作用の低減、(p)血小板溶解の低減、(q)移植片生存の改善、(r)マクロファージにより媒介される食作用の低減、(s)視力の改善、(t)運動制御の改善、(u)血栓形成の改善、(v)凝固の改善、(w)腎臓機能の改善、(x)抗体により媒介される補体活性化の低減、(y)自己抗体により媒介される補体活性化の低減、(z)貧血の改善、(aa)脱髄の低減、(ab)好酸球増加の低減、(ac)赤血球細胞へのC3沈着の減少(例えば、RBCへのC3b、iC3b等の沈着の減少)、および(ad)血小板へのC3沈着の減少(例えば、血小板へのC3b、iC3b等の沈着の減少)、および(ae)アナフィラトキシン産生の低減、(af)自己抗体により媒介される水疱形成の低減、(ag)自己抗体により誘導される掻痒の低減、(ah)自己抗体により誘導されるエリテマトーデスの低減、(ai)自己抗体により媒介される皮膚びらんの低減、(aj)輸血反応に起因する赤血球破壊の低減、(ak)同種抗体に起因する赤血球溶解の低減、(al)輸血反応に起因する溶血の低減、(am)同種抗体により媒介される血小板溶解の低減、(an)輸血反応に起因する血小板溶解の低減、(ao)マスト細胞活性化の低減、(ap)マスト細胞ヒスタミン放出の低減、(aq)血管透過性の低減、(ar)浮腫の低減、(as)移植片内皮への補体沈着の減少、(at)移植片内皮におけるアナフィラトキシン生成の低減、(au)真皮表皮接合部の分離の低減、(av)真皮表皮接合部におけるアナフィラトキシン生成の低減、(aw)移植片内皮における同種抗体により媒介される補体活性化の低減、(ax)抗体により媒介される神経筋接合部の喪失の低減、(ay)神経筋接合部における補体活性化の低減、(az)神経筋接合部におけるアナフィラトキシン生成の低減、(ba)神経筋接合部における補体沈着の減少、(bb)麻痺の低減、(be)しびれの低減、(bd)膀胱制御の向上、(be)排便管理の向上、(bf)自己抗体に関連する死の減少、ならびに(bg)自己抗体に関連する病的状態の低減。
いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、以下のアウトカム:(a)補体活性化;(b)認知機能の低下;(c)ニューロンの喪失;(d)ニューロンにおけるリン酸化Tauレベル;(e)グリア細胞活性化;(f)リンパ球浸潤;(g)マクロファージ浸潤;(h)抗体沈着;(i)グリア細胞の喪失;(j)オリゴデンドロサイトの喪失;(k)樹状細胞浸潤;(l)好中球浸潤;(m)赤血球溶解;(n)赤血球食作用;(o)血小板食作用;(p)血小板溶解;(q)移植片拒絶;(r)マクロファージにより媒介される食作用;(s)視力低下;(t)抗体により媒介される補体活性化;(u)自己抗体により媒介される補体活性化;(v)脱髄;(w)好酸球増加のうちの1つまたは複数を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体におけるアウトカムのレベルまたは程度と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、低減するのに有効である。
いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、以下のアウトカム:a)認知機能;b)移植片生存;c)視力;d)運動制御;e)血栓形成;f)凝固;g)腎臓機能、およびh)ヘマトクリット(赤血球数)のうちの1つまたは複数を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体におけるアウトカムのレベルまたは程度と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、改善するのに有効である。
いくつかの態様において、個体への本開示の抗C1s抗体の投与は、個体における補体活性化を低減する。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、個体における補体活性化を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体における補体活性化と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、低減する。
いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体の投与は、個体における認知機能を改善する。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、個体における認知機能を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体における認知機能と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、改善する。
いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体の投与は、個体における認知機能の低下率を低下させる。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、個体における認知機能の低下率を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体における認知機能の低下率と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、低下させる。
いくつかの態様において、個体への本開示の抗C1s抗体の投与は、個体におけるニューロン喪失を低減する。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、個体におけるニューロン喪失を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体におけるニューロン喪失と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、低減する。
いくつかの態様において、個体への本開示の抗C1s抗体の投与は、個体におけるリン酸化Tauレベルを低下させる。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、個体におけるリン酸化Tauを、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体におけるリン酸化Tauレベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、減少させる。
いくつかの態様において、個体への本開示の抗C1s抗体の投与は、個体におけるグリア細胞活性化を低減する。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、個体におけるグリア活性化を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体におけるグリア細胞活性化と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、低減する。いくつかの態様において、グリア細胞は、アストロサイトまたはミクログリアである。
いくつかの態様において、個体への本開示の抗C1s抗体の投与は、個体におけるリンパ球浸潤を低減する。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、個体におけるリンパ球浸潤を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体におけるリンパ球浸潤と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、低減する。
いくつかの態様において、個体への本開示の抗C1s抗体の投与は、個体におけるマクロファージ浸潤を低減する。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、個体におけるマクロファージ浸潤を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体におけるマクロファージ浸潤と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、低減する。
いくつかの態様において、個体への本開示の抗C1s抗体の投与は、個体における抗体沈着を減少させる。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、個体における抗体沈着を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体における抗体沈着と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、減少させる。
いくつかの態様において、個体への本開示の抗C1s抗体の投与は、個体におけるアナフィラトキシン(例えば、C3a、C4a、C5a)産生を減少させる。例えば、いくつかの態様において、本開示の抗C1s抗体は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に単独療法としてまたは併用療法において1つまたは複数の用量で投与された場合、個体におけるアナフィラトキシン産生を、抗C1s抗体を用いた処置の前の個体におけるアナフィラトキシン産生レベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または90%超、減少させる。
いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療するための、本開示の抗C1s抗体または本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)の使用を提供する。いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療するための、本開示の抗C1s抗体の使用を提供する。いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療するための、本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)の使用を提供する。
いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療するための医薬品の製造における、本開示の抗C1s抗体の使用を提供する。
いくつかの態様において、本開示は、補体活性化を阻害するための、本開示の抗C1s抗体または本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)の使用を提供する。いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体において補体活性化を阻害するための、本開示の抗C1s抗体または本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)の使用を提供する。いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体において補体活性化を阻害するための、本開示の抗C1s抗体の使用を提供する。いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体において補体活性化を阻害するための、本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)の使用を提供する。
いくつかの態様において、本開示は、補体活性化を調整するための医薬品の製造における、本開示の抗C1s抗体の使用を提供する。いくつかの態様において、該医薬品は、補体活性化を阻害する。いくつかの態様において、該医薬品は、補体介在性の疾患または状態を有する個体において補体活性化を阻害する。
いくつかの態様において、本開示は、薬物療法において使用するための、本開示の抗C1s抗体または本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)を提供する。いくつかの態様において、本開示は、薬物療法において使用するための、本開示の抗C1s抗体を提供する。いくつかの態様において、本開示は、薬物療法において使用するための、本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)を提供する。
いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療するための、本開示の抗C1s抗体または本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)を提供する。いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療するための、本開示の抗C1s抗体を提供する。いくつかの態様において、本開示は、補体介在性の疾患または状態を有する個体を治療するための、本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)を提供する。
いくつかの態様において、本開示は、補体活性化を調整するための、本開示の抗C1s抗体または本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)を提供する。いくつかの態様において、本開示は、補体活性化を調整するための、本開示の抗C1s抗体を提供する。いくつかの態様において、本開示は、補体活性化を調整するための、本開示の抗C1s抗体および薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤(薬学的組成物)を提供する。いくつかの態様において、抗C1s抗体は、補体活性化を阻害する。
さらなる局面において、本発明は、医薬品の製造または調製における抗C1s抗体の使用を提供する。一態様において、医薬品は、補体介在性の疾患または状態の治療のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、補体介在性の疾患または状態を有する個体に有効量の該医薬品を投与する工程を含む補体介在性の疾患または状態の治療方法において使用するためのものである。1つのそのような態様において、該方法はさらに、有効量の少なくとも1つのさらなる治療剤(例えば後述のもの)を個体に投与する工程を含む。さらなる態様において、医薬品は、血漿からのC1sのクリアランスを増強(または血漿からC1sを除去)するのに使用するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、血漿からのC1r2s2のクリアランスを増強(または血漿からC1r2s2を除去)するのに使用するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、血漿からのC1qのクリアランスを増強(または血漿からC1qを除去)せずに血漿からのC1r2s2のクリアランスを増強(または血漿からC1r2s2を除去)するのに使用するためのものである。さらなる態様において、医薬品は、古典的補体経路の成分の阻害において使用するためのものであり、いくつかの例において、古典的補体経路の成分はC1sである。
さらなる態様において、医薬品は、有効量の該医薬品を個体に投与する工程を含む、補体介在性の疾患または状態を有する個体の治療方法において使用するためのものである。上記態様のいずれかにおいて、「個体」はヒトであり得る。
さらなる局面において、本発明は、補体介在性の疾患または状態を治療する方法を提供する。一態様において、該方法は、そのような補体介在性の疾患または状態を有する個体に有効量の抗C1s抗体を投与する工程を含む。1つのそのような態様において、該方法はさらに、有効量の少なくとも1つのさらなる治療剤(後述されるもの)を個体に投与する工程を含む。上記態様のいずれかにおいて、「個体」はヒトであり得る。
さらなる局面において、本発明は、個体において血漿からのC1sのクリアランスを増強(または血漿からC1sを除去)する方法を提供する。さらなる局面において、本発明は、個体において血漿からのC1r2s2のクリアランスを増強(または血漿からC1r2s2を除去)する方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、個体において血漿からのC1qのクリアランスを増強(または血漿からC1qを除去)せずに血漿からのC1r2s2のクリアランスを増強(または血漿からC1r2s2を除去)する方法を提供する。いくつかの例において、本発明は、個体において古典的補体経路の成分を阻害する方法を提供し、いくつかの例において、古典的補体経路の成分はC1sである。一態様において、「個体」はヒトである。
さらなる局面において、本発明は、例えば上記の治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書で提供される抗C1s抗体のいずれかを含む薬学的製剤を提供する。一態様において、薬学的製剤は、補体介在性の疾患または状態の治療または予防における使用のための薬学的製剤であり、補体介在性の疾患または状態の治療剤または予防剤とも称される。一態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗C1s抗体のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗C1s抗体のいずれかと、少なくとも1つのさらなる治療剤(例えば後述されるもの)とを含む。
本発明の抗体は、療法において、単独または他の剤との組み合わせのどちらでも使用され得る。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。
上述したような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同じまたは別々の製剤に含まれる)、および個別投与を包含し、個別投与の場合、本発明の抗体の投与が追加治療剤の投与に先立って、と同時に、および/または、続いて、行われ得る。一態様において、抗C1s抗体の投与および追加治療剤の投与は、互いに、約1か月以内、または約1、2、または3週間以内、または約1、2、3、4、5、または6日以内に行われる。本発明の抗体は、放射線療法と組み合わせて用いることができる。
本発明の抗体(および、任意の追加治療剤)は、非経口投与、肺内投与、および経鼻投与、また局所的処置のために望まれる場合は病巣内投与を含む、任意の好適な手段によって投与され得る。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。投与は、投与が短期か長期かに一部応じて、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によるなど、任意の好適な経路によってなされ得る。これらに限定されるものではないが、単回投与または種々の時点にわたる反復投与、ボーラス投与、および、パルス注入を含む、種々の投与スケジュールが本明細書の考慮の内である。
本発明の抗体は、優良医療規範 (good medical practice) に一致したやり方で、製剤化され、投与され、また投与される。この観点から考慮されるべきファクターは、治療されているその特定の疾患または状態、治療されているその特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、疾患または状態の原因、剤を送達する部位、投与方法、投与のスケジュール、および医療従事者に公知の他のファクターを含む。抗体は、必ずしもそうでなくてもよいが、任意で、問題の疾患または状態を予防するまたは治療するために現に使用されている1つまたは複数の剤とともに、製剤化される。そのような他の剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、疾患もしくは状態または治療のタイプ、および上で論じた他のファクターに依存する。これらは通常、本明細書で述べたのと同じ用量および投与経路で、または本明細書で述べた用量の約1から99%で、または経験的/臨床的に適切と判断される任意の用量および任意の経路で、使用される。
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体の適切な用量(単独で用いられるときまたは1つまたは複数の他の追加治療剤とともに用いられるとき)は、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体が予防的目的で投与されるのか治療的目的で投与されるのか、薬歴、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに、主治医の裁量に依存するだろう。抗体は、患者に対して、1回で、または一連の処置にわたって、好適に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、例えば、1回または複数回の別々の投与によるにしても連続注入によるにしても、約1μg/kgから15 mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体が、患者に対する投与のための最初の候補用量とされ得る。1つの典型的な1日用量は、上述したファクターに依存して、約1μg/kgから100mg/kg以上まで、幅があってもよい。数日またはより長くにわたる繰り返しの投与の場合、状況に応じて、治療は通常疾患症状の所望の抑制が起きるまで維持される。抗体の1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg から約 10mg/kgの範囲内である。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、もしくは 10mg/kgの1つまたは複数の用量(またはこれらの任意の組み合わせ)が、患者に投与されてもよい。このような用量は、断続的に、例えば1週間毎にまたは3週間毎に(例えば、患者が約2から約20、または例えば約6用量の抗体を受けるように)、投与されてもよい。高い初回負荷用量の後に、1回または複数回の低用量が投与されてもよい。しかしながら、他の投与レジメンが有用な場合もある。この療法の経過は、従来の手法および測定法によって、容易にモニタリングされる。
上述の製剤または治療的方法のいずれについても、抗C1s抗体の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを用いて実施してもよいことが、理解されよう。
VIII. 製品
本発明の別の局面において、上述の疾患または状態の治療、予防、および/または診断に有用な器材を含んだ製品が、提供される。製品は、容器、および当該容器上のラベルまたは当該容器に付属する添付文書を含む。好ましい容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器類は、ガラスやプラスチックなどの、様々な材料から形成されていてよい。容器は組成物を単体で保持してもよいし、症状の治療、予防、および/または診断のために有効な別の組成物と組み合わせて保持してもよく、また、無菌的なアクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き通すことのできるストッパーを有する静脈内投与用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの有効成分は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選ばれた症状を治療するために使用されるものであることを示す。さらに製品は、(a)第一の容器であって、その中に収められた本発明の抗体を含む組成物を伴う、第一の容器;および、(b)第二の容器であって、その中に収められたさらなる細胞傷害剤またはそれ以外で治療的な剤を含む組成物を伴う、第二の容器を含んでもよい。本発明のこの態様における製品は、さらに、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示す、添付文書を含んでもよい。あるいはまたは加えて、製品はさらに、注射用制菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む、第二の(または第三の)容器を含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどの、他の商業的観点またはユーザの立場から望ましい器材をさらに含んでもよい。
上述の製品のいずれについても、抗C1s抗体の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを含んでもよいことが、理解されよう。
以下は、本発明の方法および組成物の実施例である。上述の一般的な記載に照らし、種々の他の態様が実施され得ることが、理解されるであろう。
前述の発明は、明確な理解を助ける目的のもと、実例および例示を用いて詳細に記載したが、本明細書における記載および例示は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用したすべての特許文献および科学文献の開示は、その全体にわたって、参照により明示的に本明細書に組み入れられる。
実施例1
組み換えC1r2s2の調製
1.1. ヒトC1r2s2四量体(hC1r2s2)の発現および精製
発現および精製に使用した配列は、ヒトC1s(NCBIリファレンス配列:NP_958850.1)(配列番号:1)およびヒトC1r(NCBIリファレンス配列:NP_001724.3)である。ヒトC1r配列は、R463Q及びS654A変異を有する(配列番号:2)。組み換えヒトC1r2s2四量体の発現のために、HEK293(Expi293(登録商標))細胞株(Thermo Fisher、Carlsbad、CA、USA)またはFreeStyle(登録商標)293-F細胞株(Thermo Fisher、Carlsbad、CA、USA)を用いてヒトC1sおよびヒトC1rを一過的に共発現させた。組み換えヒトC1r2s2を発現する培養上清をMilliQ(登録商標)水で3倍に希釈し、最終濃度2 mM となるようCaCl2(Wako)を加え、1N NaOHにてpHを8に調整し、50 mM Tris-HCl、2 mM CaCl2、pH8.0で平衡化されたQセファロースHP陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GE healthcare)に供し、NaCl勾配を用いて溶出させた。組み換えヒトC1r2s2四量体を含む溶出画分を収集し、濃縮し、続いて、1×TBS (Wako)、2 mM CaCl2緩衝液で平衡化されたSuperdex(登録商標)200ゲルろ過カラム(GE healthcare)に供した。次いで組み換えヒトC1r2s2四量体を含む画分をプールし、必要に応じて濃縮し、-80℃で保管した。
1.2. カニクイザルC1r2s2四量体(cyC1r2s2)の発現および精製
発現および精製に使用した配列は、カニクイザルC1s(配列番号:3)およびカニクイザルC1rである。カニクイザルC1r配列はR463Q及びS654A変異を有する(配列番号:4)。組み換えカニクイザルC1r2s2四量体の発現のために、HEK293(Expi293(登録商標))細胞株(Thermo Fisher、Carlsbad、CA、USA)を用いてカニクイザルC1sおよびカニクイザルC1rを一過的に共発現させた。組み換えカニクイザルC1r2s2を発現する培養上清をMilliQ(登録商標)水で3倍に希釈し、最終濃度2 mMとなるようCaCl2 (Wako)を加え、1N NaOHにてpHを8に調整し、50 mM Tris-HCl、2 mM CaCl2、pH8.0で平衡化されたQセファロースHP陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GE healthcare)に供し、NaCl勾配を用いて溶出させた。組み換えヒトC1r2s2四量体を含む溶出画分を収集し、濃縮し、続いて、1×TBS (Wako)、2mM CaCl2緩衝液で平衡化されたSuperdex(登録商標)200ゲルろ過カラム(GE healthcare)に供した。次いで組み換えカニクイザルC1r2s2四量体を含む画分をプールし、-80℃で保管した。
実施例2
組み換えFcガンマ受容体の調製
2.1カニクイザルFcガンマ受容体(cyFcγRs)の調製
カニクイザルFcガンマ受容体の細胞外ドメインの遺伝子は、当業者に知られている方法を使用して、カニクイザルから各Fcガンマ受容体のcDNAをクローニングすることによって構築された。Fcガンマ受容体の細胞外ドメインのアミノ酸配列は配列表に次のように示された:(カニクイザルFcガンマ受容体Ia [cyFcγRIa]については配列番号5、カニクイザルFcガンマ受容体IIa1[cyFcγRIIa1]については配列番号6、カニクイザルFcガンマ受容体IIa2[cyFcγRIIa2]については配列番号7、カニクイザルFcガンマ受容体IIa3[cyFcγRIIa3]については配列番号8、カニクイザルFcガンマ受容体IIb[cyFcγRIIb]については 配列番号9、カニクイザルFcガンマ受容体IIIa(R)[cyFcγRIIIa(R)]については配列番号10、カニクイザルFcガンマ受容体IIIa(S)[cyFcγRIIIa(S)]については配列番号11)。次に、Hisタグをコードする遺伝子配列は各遺伝子の3′末端に付加された。得られた各遺伝子は哺乳動物細胞発現用に設計された発現ベクターに当業者公知の方法によって挿入された。発現ベクターはヒト胎児腎臓細胞由来のFreeStyle293細胞(Invitrogen)に導入されて、標的タンパク質は発現させられた。培養後、得られた培養上清は、原則として以下の4工程でろ過・精製された。最初のステップとしてSPセファロースFFを使用した陽イオン交換クロマトグラフィー実行された。2番目のステップとして、Hisタグに対するアフィニティークロマトグラフィー(HisTrap HP)が実行された。3番目のステップとして、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー(Superdex200)が実行された。4番目のステップとして滅菌ろ過が実行された。精製タンパク質の280nmでの吸光度は分光光度計を使用して測定されて、精製タンパク質の濃度はPACEの方法(Protein Science 4:2411-2423(1995))によって計算された吸光係数を使用して決定された。
2.2 ヒトFcガンマ受容体(hFcγRs)の調製
ヒトFcガンマ受容体の細胞外ドメインの遺伝子配列は、ヒトFcガンマ受容体Ia(NCBIリファレンス配列:NM_000566.3) ヒトFcガンマ受容体IIa(NCBIリファレンス配列:NM_001136219.1) ヒトFcガンマ受容体IIb(NCBIリファレンス配列:NM_004001.3)ヒトFcガンマ受容体IIIa(NCBIリファレンス配列:NM_001127593.1)ヒトFcガンマ受容体IIIb (NCBIリファレンス配列:NM_000570.3)から取得されて、多型部位に関しては次の文献を参考にして設計された(ヒトFcガンマ受容体IIaについては Warmerdam, P. A. M. et al., 1990, J. Exp. Med. 172:19-25、ヒトFcガンマ受容体IIIaについては Wu, J. et al., 1997, J. Clin. Invest. 100(5):1059-1070、 ヒトFcガンマ受容体IIIbについては Ory, P. A. et al., 1989, J. Clin. Invest. 84:1688-1691)。
発現および精製に使用したFcガンマ受容体の細胞外ドメインのアミノ酸配列は配列表に次のように示された:(ヒトFcガンマ受容体Ia [hFcγRIa]については配列番号12、ヒト Fcガンマ受容体IIa_167R [hFcγRIIa_167R]については配列番号13、ヒト Fcガンマ受容体IIa_167H [hFcγIIa_167H]については配列番号14、ヒト Fcガンマ受容体IIb [hFcγRIIb]については配列番号15、ヒト Fcガンマ受容体IIIa_176F [hFcγRIIIa_176F]については配列番号16、ヒト Fcガンマ受容体IIIa_176V [hFcγRIIIa_176V]については配列番号17、ヒトFcガンマ受容体IIIb_NA1[hFcγRIIIb_NA1]については配列番号18、ヒトFcガンマ受容体IIIb_NA2[hFcγRIIIb_NA2]については配列番号19)。次に、HisタグをC末端に付加し、得られた各遺伝子は哺乳動物細胞発現用に設計された発現ベクターに当業者公知の方法によって挿入された。発現ベクターはヒト胎児腎臓細胞由来のFreeStyle293細胞(Invitrogen)に導入されて、標的タンパク質は発現させられた。培養後、得られた培養上清は、原則として以下の4工程、あるいは最初の陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を除いた3工程でろ過・精製された。最初のステップとしてQ Sepharose Fast Flow(GE Healthcare)を使用した陰イオン交換クロマトグラフィーが実行された。2番目のステップとして、HisTrap HP(GE Healthcare)を使用して Hisタグに対するアフィニティークロマトグラフィーが実行された。3番目のステップとして、HiLoad 26/600 Superdex 200 pg(GE Healthcare)を用いてゲルろ過カラムクロマトグラフィーが実行された。4番目のステップとして滅菌ろ過が実行された。精製タンパク質の280nmでの吸光度は分光光度計を使用して測定されて、精製タンパク質の濃度はPACEの方法(Protein Science 4:2411-2423(1995))によって計算された吸光係数を使用して決定された。
実施例3
抗C1s抗体の調製
3.1. IPN009VH2VK3-SG1148の調製
抗C1s抗体の重鎖および軽鎖可変領域であるIPN009VH2(配列番号:20)およびIPN009VK3(配列番号:21)(WO2019/098212に記載の通り)のポリヌクレオチドを合成した。この重鎖および軽鎖可変領域を、それぞれ重鎖定常領域SG1148(配列番号:22)および軽鎖定常領域SK1(配列番号:23)を含有する発現ベクターにクローニングした。
製造元の指示にしたがってExpi293(登録商標)F細胞(Life technologies)を用いて、抗C1s抗体IPN009VH2VK3-SG1148を一過的に発現させた。組み換え抗体はプロテインA(GE Healthcare)を用いて精製し、D-PBS、Tris緩衝生理食塩水(Tris Buffered Saline;TBS)またはHis緩衝液(20 mMヒスチジン、150 mM NaCl、pH6.0)に溶出させた。必要に応じて、サイズ排除クロマトグラフィーをさらに行い、高分子量および/または低分子量成分を除去した。
3.2. pH依存性及び等電点やFcガンマ受容体への結合性を最適化した抗C1s抗体の創製、並びに各種抗C1s抗体の調製
血漿からのC1sのクリアランスを増強する抗C1sスイーピング抗体を創製し、長期間の血中C1sの中和を達成するために、FcγRへの結合が増強された重鎖定常領域SG1077R (ヒト用TT91Rに対応したカニクイザルサロゲートFc)が3つのFab (COS0637pHv2、COS0637pHv3、COS0637pHv8 (特願2019-189148))にそれぞれ連結された3抗体が調製された(配列は表1参照。)。これらの抗体を用いてサル薬物動態(PK)試験が実施されたが、 全ての抗体のPKプロファイルは一般的な治療用抗体よりも劣り、補体活性も長期間抑制することができなかった (実施例4、10)。最もPKの劣ったCOS0637pHv2-SG1077RとわずかにPKの優れたCOS0637pHv3-SG1077R、COS0637pHv8-SG1077Rを比較したところ、COS0637pHv3-SG1077R、COS0637pHv8-SG1077RはCOS0637pHv2-SG1077Rに比べ理論等電点(pI)が低かった(それぞれ、8.76(COS0637pHv3-SG1077R)、8.76(COS0637pHv8-SG1077R)、9.27(COS0637pHv2-SG1077R))。またFabの結合性を比較したところ、COS0637pHv3、COS0637pHv8はCOS0637pHv2に比べてpH依存性が強かった(特願2019-189148: KD(pH5.8)/KD(pH7.4)=44(COS0637pHv2)、278(COS0637pHv3)、117(COS0637pHv8))。そこで抗C1s抗体のPKはpH依存性のさらなる増強とpIの低下によりさらに改善されうるという仮説を立てて検証を行った。また、FcγRへの結合とPKへの影響を考察するために、COS0637pHv2-SG1077RとCOS0637pHv2-SG1077RのカニクイザルFcγRへの結合を全てサイレントにしたCOS0637pHv2-FcgSil(表9、10)のサルPK試験が行われた (実施例4)。その結果、抗C1s抗体COS0637pHv2-SG1077RのPKはFcγRへの結合をサイレントにすることで改善されることが分かった。以上の結果に基づき、FabとFcの両面からの最適化による動態改善が実施された。サルPK試験に使用した抗体一覧及び配列番号は表1に示された。また結合試験のコントロールに用いられた抗体COS0637pHv8-TT91R、COS0637pHv3-TT91Rの配列も表1に示された
(表1)サルPK試験に用いた抗体及び結合試験のコントロールに用いた抗体名称及び配列番号対応
薬物動態及び薬効改善を目的とした抗体最適化のために、高いpH依存性が確認されたCOS0637pHv8-TT91RのFab(実施例5)を鋳型にしてpH依存性を向上させるFab上のアミノ酸改変とpI低下及びFcγRへの結合を低減させるFc上のアミノ酸改変が探索された。
まず、pH依存性を向上させるために、COS0637pHv8にアミノ酸改変を加えることで、表2に記載されたpH依存性が改善された抗体が作成された (pH依存性の改善は実施例5に示された)。
(表2)pH依存性を向上させた抗体名称及び配列番号対応
また、これらの抗体は全てC1qとC1r2s2複合体(C1qrs複合体)に結合してC1qrs複合体からのC1qの解離を促進する「解離促進機能/活性」または「C1q解離促進機能/活性」を有することが示された(実施例6)。
さらに、pIが低下されてFcγRへの結合が抑制された重鎖定常領域 (G1A3FcgSil+LowpI)が作成された(実施例7、8)。天然型IgG1配列に対して導入されたG137E、H268Q、K274Q、R355Q、Q419E(いずれの番号もEUナンバリングシステムによる) の改変はpIを低下させた。また、天然型IgG1配列に対して導入されたL235R、G236Rの改変はFcγRへの結合を抑制した。
これらのFab配列と重鎖定常領域配列を組み合わせることによってpH依存性が改善され、pIが低下され、FcγRへの結合性が抑制された分子が作成された(表3)。また、pH依存性がさらに改善されたこれらの抗C1s Fab配列は例えばTT91RやSG1077RなどのFcγRへの結合が増強されたスイーピング抗体用のFcと組み合わせることでpH依存性が低かった抗体よりも、より高いスイーピング能力及びより長期間の補体活性中和能を発揮しうる。
(表3)pH依存性を向上させたFabにpIを低下及びFcγRへの結合を抑制したFcを組み合わせた抗体名称及び配列番号対応
各抗体配列は重鎖可変領域(VH)をコードする遺伝子を合成し、改変されたヒトIgG1重鎖定常領域(CH)(SG1、配列番号:65)、改変ヒトIgG1 CH、例えば、SG1077R(配列番号:42)、FcgSil(配列番号:43)、TT91R(配列番号:44)、G1A3FcgSil+LowpI(配列番号:45)、およびSG1148(配列番号:22)と組み合わせた。軽鎖可変領域(VL)をコードする遺伝子を合成し、ヒト軽鎖定常領域(CL)(SK1、配列番号:23)と組み合わせた。組み合わせたこれらの配列は発現ベクターに当業者公知の方法でクローニングされた。
重鎖および軽鎖の発現ベクターの混合物が共導入されたHEK293細胞に抗体を発現させ、各抗体は回収した培養上清からプロテインAもしくはプロテインGにより当業者公知の方法で精製された。必要に応じて、さらにゲルろ過が行われた。
実施例4
抗C1s抗体のin vivo試験
カニクイザルによるin vivo試験
抗C1s抗体投与後の血漿中の抗体ならびに内因性C1s濃度をカンボジア産の3才から5才のカニクイザルを用いたin vivo試験で評価した (株式会社新日本科学)。抗C1s抗体は、ディスポーザブル注射筒及び留置針を用いて前腕撓側皮静脈内に10 mg/kgの用量で投与した。0.5 mL/kg/minあるいは2 mL/minの速度で投与した。COS0637pHv2-SG1077Rについては、投与前、投与5分後、2時間後、8時間後、1日後、2日後、4日後、7日後、14日後、21日後、28日後、42日後および56日後に血液を採取した。その他の抗体については、さらに投与10日後にも採血を実施した。血液は大腿静脈からヘパリンナトリウム加注射筒を用いて採取した。血液は速やかに氷冷した後、遠心分離 (4℃、1700×g、5分あるいは10分間) し、血漿を分取した。血漿は超低温フリーザー (許容範囲 : -70℃以下) で凍結保管した。投与された抗C1s抗体は、COS0637pHv2-SG1077R、COS0637pHv3-SG1077R、COS0637pHv8-SG1077RおよびCOS0637pHv2-FcgSilの4抗体である。
電気化学発光 (ECL) 法による血漿中抗体濃度測定
カニクイザル血漿中のCOS0637pHv2-SG1077RおよびCOS0637pHv2-FcgSil濃度はECL法によって測定した。MULTI-ARRAY 96-wellプレート (Meso Scale Discovery) に抗ヒトIgG Fcマウス抗体 (SouthernBiotech、9040-01) を分注し、室温で1時間静置して固相化した。検量線およびカニクイザル血漿サンプルは100倍以上希釈した。検量線は、カニクイザル血漿中濃度として0.410、1.02、2.56、6.40、16.0、40.0および100μg/mLに調製した。抗ヒトIgG Fc抗体を固相化したプレートを洗浄した後、希釈したサンプルをプレートに添加し、室温で1時間撹拌した。プレートを洗浄後、ビオチン化した抗ヒトIgG抗体 (Bethyl Laboratories、A80-319A) を添加し、室温で1時間撹拌した。プレートを洗浄後、SULFO-TAG Streptavidin (Meso Scale Discovery) を添加し、室温で1時間撹拌した。プレートを洗浄後、Read Buffer T (x2) (Meso Scale Discovery) を直ちにプレートに添加し、SECTOR Imager 2400 (Meso Scale Discovery) でシグナルを検出した。各抗体濃度は、検量線のシグナルをもとに解析ソフトSOFTmax PRO (Molecular Devices) を用いて算出した。本測定によって得られた血漿中抗体濃度推移は図1-1に示す。
高速液体クロマトグラフィー接続型エレクトロスプレーイオン化質量分析計 (LC/ESI-MS/MS) による血漿中抗体濃度測定
カニクイザル血漿中のCOS0637pHv3-SG1077RおよびCOS0637pHv8-SG1077R濃度はLC/ESI-MS/MSによって測定した。検量線は、カニクイザル血漿中濃度として0.781、1.56、3.13、6.25、12.5、25.0および50μg/mLに調製した。検量線および血漿サンプル2μLを50μLのCOS0637pHv3-SG1077RないしCOS0637pHv8-SG1077Rに特異的に結合する抗体を固相化した磁気ビーズ (Magnosphere MS300/ Low Carboxyl,JSR) に添加し、25℃で1.5時間振盪した。サンプル中の磁気ビーズを0.2 mLの0.05% Tween 20入りPBSで3度洗浄後、0.2 mLのPBSで洗浄した。磁気ビーズは24μLの7.5 mol/L尿素、8 mmol/Lジチオスレイトールおよび0.1μg/mLリゾチーム (chicken egg white) を含む50 mmol/L ammonium bicarbonate中で懸濁された後、56℃で45分間振盪した。続いて、500 mmol/Lヨードアセトアミド2μLを添加し、遮光下で、37℃で30分間振盪した。続いて、0.5μg/mL sequencing grade modified trypsin (Promega) を含む50 mmol/L ammonium bicarbonateを160μL添加した。サンプルは37℃で16時間振盪し、 10%トリフルオロ酢酸を5μL添加して反応を停止した。酵素消化サンプル50μLをLC/ESI-MS/MSによる分析に使用した。LC/ESI-MS/MS分析にはI-class UPLC (Waters) を接続したXevo TQ-S triple quadrupole instrument (Waters) を使用した。抗C1s抗体特異的ペプチドNQVSLTC(Carbamidomethyl)LVKは選択的反応モニタリング (SRM) で検出した。SRMトランジションは、抗C1s抗体の親イオンが[M+2H]2+ (m/z 581.3)、娘イオンがy7 ion (m/z 820.4) である。内部較正検量線は、濃度とピーク面積を用いた直線回帰によって1/x2の重み付けで作成された。カニクイザル血漿中の抗体濃度は、解析ソフトMasslynx Ver.4.1 (Waters) を用いて算出された。本測定によって得られた血漿中抗体濃度推移は図1-1に示す。
高速液体クロマトグラフィー接続型エレクトロスプレーイオン化質量分析計 (LC/ESI-MS/MS) による血漿中内因性C1s濃度測定
カニクイザル血漿中のC1s濃度はLC/ESI-MS/MSによって測定した。検量線は、カニクイザルC1r2s2をマウス血漿で希釈しカニクイザルC1s血漿中濃度として0.477, 0.954, 1.91, 3.82, 7.63, 15.3および30.5μg/mLに調製した。カニクイザル血漿サンプルはマウス血漿を用いて5倍に希釈した。検量線および血漿サンプル2μLは26μLの50 mmol/L ammonium bicarbonate 混合溶液(7.5 mol/L尿素/ 100 mmol/Lジチオスレイトール/ 10μg/mLリゾチーム (chicken egg white)/ 100μg/mL ヒトC1s = 20/ 2/ 2/ 2)と混合された後、56℃で45分間振盪した。ヒトC1sは内部標準として使用した。続いて、500 mmol/Lヨードアセトアミド2μLを添加し、遮光下で、37℃で30分間振盪した。続いて、0.5μg/mL sequencing grade modified trypsin (Promega) を含む50 mmol/L ammonium bicarbonateを160μL添加した。サンプルは37℃で16時間振盪した後、 10%トリフルオロ酢酸を5μL添加して反応を停止した。酵素消化サンプル50μLをLC/ESI-MS/MSによる分析に使用した。LC/ESI-MS/MS分析にはI-class UPLC (Waters) を接続したXevo TQ-S triple quadrupole instrument (Waters) を使用した。カニクイザルC1s特異的ペプチドLLEVPEARは選択的反応モニタリング (SRM) で検出した。SRMトランジションは、抗C1s抗体の親イオンが[M+2H]2+ (m/z 463.8)、娘イオンがy6 ion (m/z 700.4) である。内部較正検量線は、濃度とピーク面積を用いた直線回帰によって1/x2の重み付けで作成された。カニクイザル血漿中のC1s濃度は、解析ソフトMasslynx Ver.4.1 (Waters) を用いて算出された。本測定によって得られた血漿中C1s濃度推移は図1-2に示す。
カニクイザルにおける抗C1s抗体濃度ならびに補体阻害活性に対するpH依存性ならびにFcγR silent抗体の効果
サルFcγRIIa及びFcγRIIb に対する結合増強改変を加えたFcを有する3種の抗C1s抗体 (COS0637pHv2-、COS0637pHv3-およびCOS0637pHv8-SG1077R) は、投与2日後までに血漿中のC1s濃度を最大で投与前の18.9%から26.4%まで低下させた (図1-2)。しかし、これらの抗体の消失は通常の治療用IgG抗体に比べて早く(図1-1)、投与後14日以降に血漿中の抗体濃度の低下とともに総C1s濃度の再増加が見られた。ただし、抗原結合に対するpH依存性を改善したCOS0637pHv3-およびCOS0637pHv8-SG1077Rでは、COS0637pHv2- SG1077Rに比べて抗体PKの改善が見られた。これによって、COS0637pHv2- SG1077R投与時の補体阻害活性が投与後7日までであるのに対し、COS0637pHv3-およびCOS0637pHv8-SG1077R投与時の補体阻害活性は投与後14日および21日まで持続し、長期間の抗原中和ならびに補体阻害を示した(図4)。
一方、サルFcγRsに対する結合を低下させる改変を加えたFcを有する抗C1s抗体であるCOS0637pHv2-FcgSilは、サルFcγRIIa及びFcγRIIb結合増強改変抗体と比べて良好なPKを示した(図1-1)。COS0637pHv2-FcgSil投与時の補体阻害活性は投与後14日まで持続した(図4)。COS0637pHv2-FcgSil投与時の総C1s濃度は、最大で投与前の75.5%までしか低下しなかったが(図1-2)、PKの改善によってCOS0637pHv2- SG1077Rと比較して長期間の抗原の中和ならびに補体阻害活性を示した。
実施例5
Biacore(登録商標)を用いた異なるpH条件下での結合評価
pH7.4およびpH6.0における各サンプルの結合特性は、37℃でBIACORE(登録商標)T200機器(Cytiva)を用いて決定された。まず抗ヒトC1r2s2抗体IPN009VH2Vk3-SG1148(IPN009)が、Amine Coupling Kit, type2(Cytiva)を用いてCM5センサーチップのすべてのフローセル上に固定化された。20 mM ACES、150 mM NaCl、1.2 mM CaCl2、1 mg/mL BSA(IgG非含有)、1 mg/mL CMD、0.05% Tween(登録商標)20、0.005w/v% NaN3、pH7.4またはpH6.0緩衝液がランニングバッファーとして用いられた。次に、結合レスポンスが100 Resonance unit (RU) となるように調製された組み換えヒトC1r2s2四量体 (hC1r2s2)および組み換えカニクイザルC1r2s2四量体(cyC1r2s2)が、IPN009によってセンサー表面に捕捉された。ここに、30μL/minで抗体溶液が120秒注入された後、30μL/minでランニングバッファーが180秒注入されることで、hC1r2s2及びcyC1r2s2に対する各抗体の解離定数(KD)が算出された。尚、pH7.4でのKD値の算出には、pH7.4のランニングバッファーを用いて0, 0.8, 1.6, 3.1, 6.3, 13 nMとなるように希釈された抗体溶液が注入され、pH6.0でのKD値の算出には、pH6.0のランニングバッファーを用いて0、6.3、12.5、25、50、100 nMになるように調製された抗体溶液が注入された。サイクル毎に、3 M MgCl2(自家調製品)を用いてセンサー表面が再生された。KD値はBIACORE(登録商標)T200 evaluation software version 2.0(Cytiva)を用いて算出された。また、各pH条件での結合の強さは、pH6.0でのKD値をpH7.4でのKD値で割ることによって比較された。(表4)
(表4)ヒトC1r2s2抗体に対する酸性条件下及び中性条件下の結合活性
Biacoreを用いて算出したヒトC1r2s2に対するpH6.0及びpH7.4におけるKD値および、pH7.4でのKD値に対するpH6.0でのKD値の比を示した。
(表5)カニクイザルC1r2s2抗体に対する酸性条件下及び中性条件下の結合活性
Biacoreを用いて算出したサルC1r2s2に対するpH6.0及びpH7.4におけるKD値および、pH7.4でのKD値に対するpH6.0でのKD値の比を示した。
実施例6
抗C1s抗体のC1q解離促進機能の評価
抗体のC1q解離促進機能は、37℃でBIACORE(登録商標)T200機器(Cytiva)を用いたC1r2s2捕捉法により実証された。抗ヒトC1r2s2抗体IPN009VH2Vk3-SG1148は、Amine Coupling Kit, type2(Cytiva)を用いてCM5センサーチップ上に固定化された。抗体、組み換えヒトC1r2s2四量体(hC1r2s2)、および天然型ヒトC1q(CompTech, hC1q)は、pH7.4のランニングバッファー(20 mM ACES、150 mM NaCl、1.2 mM CaCl2、1 mg/mL BSA(IgG非含有)、1 mg/mL CMD、0.05% Tween(登録商標)20、0.005w/v% NaN3、pH7.4)で調製された。最初に、hC1r2s2が、IPN009VH2Vk3-SG1148によってセンサー表面に捕捉された。捕捉量は、200共鳴単位(RU)を目標とした。次に、100 nMになるようにランニングバッファーで希釈されたhC1qが注入され、その後直ちにランニングバッファーで500 nMに希釈された抗体溶液が10μL/分で1500秒間注入された。センサー表面はサイクル毎に3 M MgCl2(自家調製品)を用いて再生された。結果を図2-1~2-14に示す。センサーグラムはBIACORE(登録商標)T200 evaluation software、version2.0(Cytiva)を用いて取得された。実線は、hC1r2s2にhC1qを注入したのちに緩衝液を注入した際に取得されたセンサーグラム(C1r2s2+C1q)であり,センサーチップ表面のC1qrs複合体形成を反映している(以降、センサーグラム1と記載)。一点鎖線は、hC1r2s2にhC1qを注入後,抗体の注入を実施した際のセンサーグラム(C1r2s2+C1q+Ab)であり,センサーチップ表面のC1qrs複合体に抗体が及ぼす影響を反映している(以降,センサーグラム2と記載)。破線は、hC1r2s2にhC1qは注入せずに抗体のみを注入した際に取得されたセンサーグラム(C1r2s2+Ab)であり,センサーチップ表面のhC1r2s2のみへの抗体の結合を図示している(以降,センサーグラム3と記載)。図2-1~2-14はセンサーグラム1~3を示す。これらのセンサーグラムの比較のため、C1r2s2の結合応答を100 RUとしてノーマライズした。
抗C1s抗体は、C1qrsに結合するため、C1q添加後のタイムポイントから、抗体を添加するとセンサーグラムの応答が上昇する。C1q解離促進機能を有しないC1s抗体については、C1q添加後のタイムポイントから、抗体を添加するとセンサーグラムの応答が上昇し、その応答単位が抗体添加終了時にほとんど変化しない(引用:WO2019198807、Fig2AのCOS0583)。
C1q解離促進機能を有する抗体については、C1q添加後のタイムポイントから、抗体を添加するとセンサーグラムの応答が上昇するが、抗体添加終了時の応答単位は、C1q添加後にBufferのみを添加した場合における応答単位よりも低いか、または抗体添加開始直後に対する添加終了時の低下程度が、Bufferのみを添加した場合の低下程度よりも大きい。
図2-1~2-14におけるセンサーグラム3から、各Abは、C1qの非存在下でC1r2s2に安定的に結合することができると考えられた。センサーグラム1では、Abの非存在下でC1qが安定的にC1r2s2に結合した。そのうえで、ほとんどの抗体において、センサーグラム2の抗体添加終了後の応答単位は、センサーグラム1 よりも低くなり、いくつかの抗体で、センサーグラム2での抗体添加直後に対する添加終了時の応答単位の低下程度が、センサーグラム1での低下程度よりも大きかった。この結果から、すべての改変抗体は、C1qrs複合体からC1qを解離させることができた。
実施例7
抗C1s抗体の等電点(pI)の評価
4.1. キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を用いた抗C1s抗体の等電点(pI)の測定
cIEFは、キャピラリーカートリッジを用いてMaurice (Protein simple) にて行われた。陽極液および陰極液は、それぞれ0.1w/v%メチルセルロース(MC)を含む0.08 Mリン酸、および0.1w/v% MCを含む0.1 M水酸化ナトリウムであった。すべての解析サンプルは、作用0.2 mg/mL抗体、0.35w/v% MC、6.0 mM IDA(イミノ二酢酸)、10 mMアルギニン、0.5w/v%pIマーカー5.85および0.5w/v%pIマーカー9.99、ならびに2vol% pharmalyte 8-10.5及び2vol% pharmalyte 5-8を含んでいた。すべてのサンプルは、オートサンプラーのコンパートメントに入れる前にボルテックスされ、短く遠心された。サンプルは1分間1.5 kVに続く各7分間3.0 kVの条件にて集束された。オートサンプラーのコンパートメントは、10℃に維持された。各サンプルのpI値は、測定を2回繰り返し、n=2の測定値の平均を計算することによって得られた。算出されたpI値は表6に示す。
(表6)pIを低下及びFcγRsへの結合を抑制したFcを有する各抗C1s抗体の実測pI
Maurice(Protein simple)を用いて測定した各抗体のpIを示す。pIの値は2回測定した値の平均値である。
実施例8
FcγRへの結合確認
pH7.4における各サンプルのFcγRsに対する結合特性は、25℃でBIACORE(登録商標)T200機器(Cytiva)を用いて決定された。まずプロテインL(BioVision)は、Amine Coupling Kit,type2(Cytiva)を用いてCM4センサーチップのすべてのフローセル上に固定化された。150mM NaCl, 0.05% Tween(登録商標)20を含む 50mMリン酸緩衝液(pH7.4)をランニングバッファーとして使用し、結合レスポンスが500 RUもしくは2000 RU となるように調製された抗体がセンサー表面に捕捉された。ここに、ランニングバッファーで希釈したヒト及びサルFcγRsを注入し、抗体への結合量が測定された。この時、hFcγRIa及びcyFcγRIaは8nMに希釈し、その他は1000nMに希釈した。サイクル毎に、10 mM グリシン塩酸溶液、pH1.5(自家調製品)を用いてセンサー表面が再生された。得られた測定結果から、BIACORE(登録商標)T200 evaluation software、version2.0(Cytiva)を用いて、FcγRの結合量を、捕捉した各抗体の結合量で割った値(Binding/capture)を算出した(表7及び表9)。さらにこの結果から、Herceptin(中外製薬株式会社)(ヒトIgG1/kappa)で得られたBinding/captureの値を1としたときの、その他の検体でのBinding/captureの値を表に示した(表8及び 表10)。
(表7)ヒトFcγRsへの捕捉抗体1RUあたりの応答値
Biacoreを用いて算出したヒトFcγRsに対するBinding/captureの値をしめした。
(表8)ヒトFcγRsへの相対結合割合
Biacoreを用いて算出したヒトFcγRsに対するBinding/captureの値から、Herceptinに対する開発抗体の相対結合割合を算出した。
(表9)カニクイザルFcγRsへの捕捉抗体1RUあたりの応答値
Biacoreを用いて算出したサルFcγRsに対するBinding/captureの値をしめした。
(表10)カニクイザルFcγRsへの相対結合割合
Biacoreを用いて算出したサルFcγRsに対するBinding/captureの値から、Herceptinに対する開発抗体の相対結合割合を算出した。
実施例9
カニクイザルによるin vivo試験
実施例4と同様の方法にて試験を実施した。投与された抗C1s抗体は、COS0637pHv16-G1A3FcgSil+LowpIおよびCOS0637pHv21-G1A3FcgSil+LowpIの2抗体である。
高速液体クロマトグラフィー接続型エレクトロスプレーイオン化質量分析計 (LC/ESI-MS/MS) による血漿中抗体濃度測定
カニクイザル血漿中のCOS0637pHv16-G1A3FcgSil+LowpIおよびCOS0637pHv21-G1A3FcgSil+LowpI濃度はLC/ESI-MS/MSによって測定した。検量線は、カニクイザル血漿中濃度として0.781、1.56、3.13、6.25、12.5、25.0および50μg/mLに調製した。検量線および血漿サンプル2μLを50μLのCOS0637pHv16-G1A3FcgSil+LowpIないしCOS0637pHv21-G1A3FcgSil+LowpIに特異的に結合する抗体を固相化した磁気ビーズ (Magnosphere MS300/ Low Carboxyl,JSR) に添加し、遠心後25℃で1.5時間振盪した。サンプル中の磁気ビーズを0.2 mLの 0.05% Tween 20入りPBSで3度洗浄後、0.2 mLのPBSで洗浄した。磁気ビーズは24μLの7.5 mol/L尿素、8.3 mmol/Lジチオスレイトールおよび0.083μg/mLリゾチーム (chicken egg white) を含む50 mmol/L ammonium bicarbonate中で懸濁された後、56℃で45分間振盪した。続いて、500 mmol/Lヨードアセトアミド2μLを添加し、遮光下で、37℃で30分間振盪した。続いて、0.5μg/mL sequencing grade modified trypsin (Promega) を含む50 mmol/L ammonium bicarbonateを160μL添加した。サンプルは37℃で一晩振盪し、 10%トリフルオロ酢酸を5μL添加して反応を停止した。酵素消化サンプル50μLをLC/ESI-MS/MSによる分析に使用した。LC/ESI-MS/MS分析にはI-class UPLC (Waters) を接続したXevo TQ-S triple quadrupole instrument (Waters) を使用した。抗C1s抗体特異的ペプチドGPSVFPLAPSSRを選択的反応モニタリング (SRM) で検出した。SRMトランジションは,抗C1s抗体の親イオンが[M+2H]2+ (m/z 607.8),娘イオンがy7 ion (m/z 727.4) である。内部較正検量線は、濃度とピーク面積を用いた直線回帰によって1/x2の重み付けで作成された。カニクイザル血漿中の抗体濃度は、解析ソフトMasslynx Ver.4.2(Waters) を用いて算出された。本測定によって得られた血漿中抗体濃度推移は図3-1に示す。
高速液体クロマトグラフィー接続型エレクトロスプレーイオン化質量分析計 (LC/ESI-MS/MS) による血漿中内因性C1s濃度測定
カニクイザル血漿中のC1s濃度はLC/ESI-MS/MSによって測定した。検量線は、カニクイザルC1r2s2をマウス血漿で希釈しカニクイザルC1s血漿中濃度として0.477, 0.954, 1.91, 3.82, 7.63, 15.3および30.5μg/mLに調製した。カニクイザル血漿サンプルはマウス血漿を用いて5倍に希釈した。検量線および血漿サンプル2μLは26μLの50 mmol/L ammonium bicarbonate 混合溶液(7.5 mol/L尿素/ 100 mmol/Lジチオスレイトール/ 10μg/mLリゾチーム (chicken egg white)/ 300μg/mL ヒトC1s2r2= 20/ 2/ 2/ 2)と混合された後、56℃で45分間振盪した。ヒトC1sは内部標準として使用した。続いて、500 mmol/Lヨードアセトアミド2μLを添加し、遮光下で、37℃で30分間振盪した。続いて、0.5μg/mL sequencing grade modified trypsin (Promega) を含む50 mmol/L ammonium bicarbonateを160μL添加した。サンプルは37℃で16時間振盪した後、10%トリフルオロ酢酸を5μL添加して反応を停止した。酵素消化サンプル50μLをLC/ESI-MS/MSによる分析に使用した。LC/ESI-MS/MS分析にはI-class UPLC (Waters) を接続したXevo TQ-S triple quadrupole instrument (Waters) を使用した。カニクイザルC1s特異的ペプチドLLEVPEARは選択的反応モニタリング (SRM) で検出した。SRMトランジションは、抗C1s抗体の親イオンが[M+2H]2+ (m/z 463.8)、娘イオンがy6 ion (m/z 700.4) である。内部較正検量線は、濃度とピーク面積を用いた直線回帰によって1/x2の重み付けで作成された。カニクイザル血漿中のC1s濃度は、解析ソフトMasslynx Ver.4.2 (Waters) を用いて算出された。本測定によって得られた血漿中C1s濃度推移は図3-2に示す。
カニクイザルにおける抗C1s抗体濃度ならびに補体阻害活性に対するpH依存性ならびにpIの効果
サルFcγRsに対する結合を低下させる改変を加えたFcを有する抗C1s抗体について、さらに抗原結合に対するpH依存性を改善し、抗体のpIを低下させる改変を加えたCOS0637pHv16-G1A3FcgSil+LowpIならびにCOS0637pHv21-G1A3FcgSil+LowpIの抗体および抗原濃度推移を確認した。抗体投与後のC1s濃度推移はCOS0637pHv2-FcgSil投与時と大きな差は認められなかった一方で、投与後56日後の抗体濃度はCOS0637pHv2-FcgSilと比べて20倍以上高い濃度を示し、大幅なPKの改善が見られた。各抗体投与時の補体阻害活性は、少なくとも投与後56日まで持続した (図4)。COS0637pHv16-G1A3FcgSil+LowpIならびにCOS0637pHv21-G1A3FcgSil+LowpIでは、PKの大幅な改善によって長期間の抗原の中和ならびに補体阻害活性を示した。
実施例10
サルにおける補体中和機能の評価(RBC溶解阻害効果)
抗体の補体阻害活性は感作されたニワトリの赤血球を使用して、以下のようにして評価した。サルから採取した血漿を、アッセイ緩衝液(0.05%BSAを含むHBSS Ca2+ Mg2+)で10%に希釈した。抗ニワトリ赤血球抗体(Rockland)を用いてニワトリ赤血球(Japan Bio Serum)を感作し、リンス後に計数し、アッセイ緩衝液中1×108細胞/mLに調整した。次いでサル由来血漿を、等量の感作ニワトリ赤血球に添加し、37℃で7分間インキュベートして赤血球を溶解させた。この反応物中でのサル血漿の終濃度は5%であった。反応は、EDTAを含む冷アッセイ緩衝液で停止させた。この混合物を遠心分離して未溶解細胞をペレット化させ、その上清を取り出し、415 nmでの吸光度(OD)を用いてヘモグロビンの放出を分析した。赤血球溶解率(%)を計算するため、抗体投与前の血漿による赤血球溶解を100%とし、血漿を加えない条件での溶解率を0%として各タイムポイントでの赤血球溶解率を算出した。サル3頭の血漿を用いて、1タイムポイントあたりそれぞれ1ウェルを評価した。図4に示されるデータは、抗抗体が陰性と判断されたデータの平均±SDを表している。