JP7741918B1 - 膜電極構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水における電極と電解質の膨潤率の違いに起因して、膜電極構造体(特に、電解質膜)に皺が発生することを抑制できる、膜電極構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1積層体提供工程S1aでは、イオン交換容量が所定値未満である第1アイオノマー原料71と第1電極44とを積層させた第1積層体70を提供する。第2積層体提供工程S1bでは、イオン交換容量が所定値以上である第2アイオノマー原料73と第2電極46とを積層させた第2積層体72を提供する。基材提供工程S1cでは、電解質基材74を提供する。膨潤工程S2では、第1積層体70、第2積層体72及び電解質基材74を膨潤させる。接合工程S3では、電解質基材74と第1積層体70の第1アイオノマー原料71とを接合するとともに、電解質基材74と第2積層体72の第2アイオノマー原料73とを接合する。
【選択図】図3
【解決手段】第1積層体提供工程S1aでは、イオン交換容量が所定値未満である第1アイオノマー原料71と第1電極44とを積層させた第1積層体70を提供する。第2積層体提供工程S1bでは、イオン交換容量が所定値以上である第2アイオノマー原料73と第2電極46とを積層させた第2積層体72を提供する。基材提供工程S1cでは、電解質基材74を提供する。膨潤工程S2では、第1積層体70、第2積層体72及び電解質基材74を膨潤させる。接合工程S3では、電解質基材74と第1積層体70の第1アイオノマー原料71とを接合するとともに、電解質基材74と第2積層体72の第2アイオノマー原料73とを接合する。
【選択図】図3
Description
本発明は、膜電極構造体の製造方法に関する。
近年、より多くの人々が手ごろで信頼できる持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する電解スタックに関する技術開発が行われている。従来、積層された複数の電解セルからなる電解スタックを備えた電解装置は公知である。電解セルは、膜電極構造体を有する。膜電極構造体は、電解質膜を一対の電極で挟み込んだ構造である。電解セルとして、水を電解する水電解セル、水素(水素ガス)を電解する水素電解セル等がある。複数の水電解セルが積層された積層体を備える電解スタックは、水電解装置と称される場合がある。複数の水素電解セルが積層された積層体を備える電解スタックは、EHC(Electrochemical Hydrogen Compressor)と称される場合がある。例えば、特許文献1には、水電解セルを備える水電解装置が開示されている。
例えば、水電解装置では、電解時に膜電極構造体が水を取り込んで膨潤するため、膜電極構造体の寸法変化が生じる。このため、水電解装置の組立完了時と使用時(電解時)とでは、膜電極構造体の状態が異なる。水電解装置の組立完了時の膜電極構造体の状態を、電解時と同じ状態にするために、電解スタックとして組み立てる前に膜電極構造体を水に漬けて膨潤させることが考えられる。
しかしながら上述の方法では、電極と電解質膜とが水によって膨潤した際の膨潤率の違いによって、膜電極構造体(特に、電解質膜)に皺が発生することが懸念される。
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
本開示の態様は、電解質膜と前記電解質膜の両側にそれぞれ積層された第1電極及び第2電極とを有する膜電極構造体を備え、前記第1電極に電解用の流体を供給し、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加し、前記第1電極で得られる第1ガスよりも高圧の第2ガスを前記第2電極で得る差圧式電解装置に用いられる前記膜電極構造体の製造方法であって、所定温度、所定湿度雰囲気下での単位面積当たりのイオン交換容量が所定値未満である第1アイオノマー原料と、前記第1電極とを積層させた第1積層体を提供する第1積層体提供工程と、前記所定温度、前記所定湿度雰囲気下での単位面積当たりのイオン交換容量が前記所定値以上である第2アイオノマー原料と、前記第2電極とを積層させた第2積層体を提供する第2積層体提供工程と、互いに反対側の第1面及び第2面を有する電解質基材を提供する基材提供工程と、前記第1積層体、前記第2積層体及び前記電解質基材を膨潤させる膨潤工程と、前記膨潤工程の後に、前記電解質基材の前記第1面と前記第1積層体の前記第1アイオノマー原料とを接合するとともに、前記電解質基材の前記第2面と前記第2積層体の前記第2アイオノマー原料とを接合する接合工程と、を有する、膜電極構造体の製造方法である。
本発明によれば、第1積層体、第2積層体及び電解質基材を膨潤させた後に、第1積層体と電解質基材との接合と、第2積層体と電解質基材との接合を行うため、電解質膜における皺の発生を抑制することができる。また、この製造方法によって得られた膜電極構造体では、電解質膜のうち第2電極に隣接する部分(第2隣接部)のイオン交換容量が、電解質膜のうち第1電極に隣接する部分(第1隣接部)のイオン交換容量よりも大きい。このため、差圧式電解装置が水電解装置である場合に、電解質膜のうち高圧側である第2隣接部の乾燥を抑制することにより、電気分解の効率の低下や電気抵抗の増加に伴う電解質膜の劣化の進行を抑制できる。
図1に示すように、差圧式電解装置10は、セル積層体12を備える電解スタック10Aとして構成されている。電解スタック10Aは、全体として略円柱体形状を有しているが、立方体形状等の種々の形状に設定可能である。セル積層体12は、鉛直方向又は水平方向に積層された複数の電解セル14を有する。電解セル14は、水電解セルである。電解セル14は、水素電解セルであってもよい。以下の説明において、「積層方向」は、複数の電解セル14の積層方向(A方向)を意味する。
複数の電解セル14のうちの積層方向の一端(下端)に位置する電解セル14には、流体導入口15aが設けられる。複数の電解セル14のうちの積層方向の他端(上端)に位置する電解セル14には、流体導出口15bが設けられる。
差圧式電解装置10は、一対のターミナルプレート16a、16bと、一対の絶縁プレート18a、18bと、一対のエンドプレート20a、20bとをさらに備える。積層方向の一方(図1で上方)に向かって、ターミナルプレート16a、絶縁プレート18a及びエンドプレート20aはこの順で配設される。積層方向の他方(図1で下方)に向かって、ターミナルプレート16b、絶縁プレート18b及びエンドプレート20bは、この順で配設される。
ターミナルプレート16a、16bには端子部24a、24bがそれぞれ設けられる。端子部24a、24bは、配線26a、26bを介して電解電源28にそれぞれ電気的に接続される。
電解スタック10Aは、積層方向に延在する複数本のタイロッド22等の押圧機構によってエンドプレート20a、20bを一体的に締め付けた状態に保持される。エンドプレート20aには、後述する高圧流体導出孔21に連通する不図示の配管が接続される。この配管には、高圧流体導出孔21を介したガスの排出を規制することが可能な背圧機構が設けられる。電解スタック10Aは、エンドプレート20a、20bを含む箱状ケーシング(図示せず)を備えてもよい。
図2に示すように、電解セル14は、膜電極構造体30と、第1給電体32と、第2給電体34と、第1セパレータ36と、第2セパレータ38と、樹脂枠部材40とを有する。
膜電極構造体30は、略円形リング状である。膜電極構造体30は、電解質膜42と、第1電極44と、第2電極46とを有する。電解質膜42は、固体高分子からなる。電解質膜42は、アイオノマーからなる。電解質膜42は、イオンを交換可能な膜である。第1電極44は、電解質膜42の一方面に配置される。第1電極44は、電極触媒層である。第1電極44には、電解に用いられる流体が供給される。第2電極46は電解質膜42の他方面に配置される。第2電極46は、第1電極44とは反対側の電極触媒層である。電解電源28(図1)により第1電極44と第2電極46の間に電圧が印加される。
電解セル14が水電解セルである場合、電解質膜42は、アニオン交換膜であってもよいし、プロトン交換膜であってもよい。
電解質膜42がアニオン交換膜である場合、電解用の流体は、アルカリ性の水である。電解セル14が水電解セルであり、電解質膜42がアニオン交換膜であり、第1電極44と第1給電体32とがアノードであり、第2電極46と第2給電体34とがカソードである場合、第1電極44では酸素が第1ガスとして生成され、第2電極46では第2ガスとして水素が生成される。一方、電解セル14が水電解セルであり、電解質膜42がアニオン交換膜であり、第1電極44と第1給電体32とがカソードであり、第2電極46と第2給電体34とがアノードである場合、第1電極44では水素が生成され、第2電極46では酸素が生成される。
電解セル14が水電解セルであり、電解質膜42がプロトン交換膜である場合、電解に用いられる流体は、不純物が所定量以下の水(例えば、純水)である。電解質膜42がプロトン交換膜であり、第1電極44と第1給電体32とがアノードであり、第2電極46と第2給電体34とがカソードである場合、第1電極44では酸素が生成され、第2電極46では水素が生成される。一方、電解セル14が水電解セルであり、電解質膜42がプロトン交換膜であり、第1電極44と第1給電体32とがカソードであり、第2電極46と第2給電体34とがアノードである場合、第1電極44では水素が生成され、第2電極46では酸素が生成される。
電解セル14が水素電解セルである場合、電解質膜42は、プロトン交換膜である。この場合、電解に用いられる流体は、水素である。また、第1電極44と第1給電体32とがアノードであり、第2電極46と第2給電体34とがカソードである。第2電極46では、第1電極44に供給された水素よりも高圧の水素が生成される。
電解質膜42には、径方向の略中心に貫通孔42hが形成される。第1電極44は、電解質膜42の一方の面において、電解質膜42のうちの貫通孔42hの周縁部位と外周縁部位との間の部位に設けられる。電解質膜42の他方の面の一部には、第2電極46が設けられる。第2電極46は、電解質膜42の他方の面において、電解質膜42のうちの貫通孔42hの周縁部位と外周縁部位との間の部位に設けられる。第1電極44及び第2電極46は、例えば、円形状に形成される。第1電極44には、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒が使用される。第2電極46には、例えば、白金触媒が使用される。
電解質膜42は、第1電極44に隣接する部分(以下、「第1隣接部421」ともいう)と、第2電極46に隣接する部分(以下、「第2隣接部422」ともいう)とを有する。第1隣接部421の所定温度及び所定湿度雰囲気下での単位面積当たりのイオン交換容量(IEC)は、所定値未満である。第2隣接部422の所定温度及び所定湿度雰囲気下での単位面積当たりのイオン交換容量(IEC)は、所定値以上である。このため、所定温度及び所定湿度雰囲気下において、第2隣接部422の単位面積当たりのイオン交換容量は、第1隣接部421の単位面積当たりのイオン交換容量よりも大きい。イオン交換容量は、1モルのイオンを交換可能とするために必要な乾燥状態の電解質膜42の重量の逆数(meq/g)である。
膜電極構造体30は、第1給電体32と、第2給電体34との間に配される。第1給電体32及び第2給電体34は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。第1給電体32及び第2給電体34は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%~50%、より好ましくは、20%~40%の範囲内に設定される。
第1給電体32は、電解に用いられる流体が供給される給電体(流体供給側給電体)である。第1セパレータ36と第1給電体32との間には、流路部材50が介装される。流路部材50には、複数個の孔部50hが形成される。第1給電体32と第1電極44との間には、保護シート部材52が介装される。保護シート部材52には、複数の連通孔52hが形成される。
第2給電体34は、第1給電体32とは反対側の給電体である。第2給電体34は、荷重付与機構54によって第2電極46に向かって押圧される。荷重付与機構54は、例えば、板ばね等の導電性の弾性部材を備える。荷重付与機構54は、金属製のホルダ56を介して第2給電体34に荷重を付与する。第2給電体34とホルダ56との間には、円形リング状の導電シート58が配置される。
電解質膜42と第2セパレータ38との間であって、膜電極構造体30の電解領域よりも径方向外側には、シール部材60が配置される。シール部材60の径方向外側には、耐圧部材62が配置される。耐圧部材62は、略リング形状を有する。耐圧部材62の外周部は、樹脂枠部材40の内周部に嵌合する。
第1セパレータ36及び第2セパレータ38は、積層方向において膜電極構造体30等を挟持する。第1セパレータ36及び第2セパレータ38は、略円盤状であるとともに、例えば、カーボン部材等で構成される。第1セパレータ36及び第2セパレータ38は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、或いは、その金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形してもよい。或いは、切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成してもよい。
樹脂枠部材40は、膜電極構造体30等を囲繞するように、第1セパレータ36と第2セパレータ38との間に配置される。樹脂枠部材40は、略リング形状である。樹脂枠部材40の両面には、シール部材64a、64bが設けられる。樹脂枠部材40は、流体導入孔40aと、流体導出孔40bとを有する。流体導入孔40aは、電解に用いられる流体を導入するための流路である。流体導入孔40aは、積層方向に沿って延びる。積層された複数の電解セル14の各々の流体導入孔40aは互いに連通する。複数の電解セル14のうちの積層方向の一端(下端)に位置する電解セル14の樹脂枠部材40には、流体導入口15a(図1参照)が接続される。
流体導出孔40bは、電解されない未反応の流体を含む混合流体を導出するための流路である。流体導出孔40bは、積層方向に沿って延びる。積層された複数の電解セル14の各々の流体導出孔40bは互いに連通する。複数の電解セル14のうちの積層方向の他端(上端)に位置する電解セル14の樹脂枠部材40には、流体導出口15b(図1参照)が接続される。
電解セル14には、径方向の中央部を積層方向に沿って貫通する高圧流体導出孔21が設けられる。高圧流体導出孔21は、電解に用いられる流体の電解により発生するガスを昇圧して導出するために形成される。積層された複数の電解セル14の各々の高圧流体導出孔21は互いに連通する。発生したガスは、例えば、1MPa~80MPaに昇圧された状態で高圧流体導出孔21から導出される。
次に、本実施形態に係る膜電極構造体30の製造方法について説明する。
図3に概略的に示すように、膜電極構造体30の製造方法は、部材提供工程S1と、膨潤工程S2と、接合工程S3とを有する。部材提供工程S1は、第1積層体提供工程S1aと、第2積層体提供工程S1bと、基材提供工程S1cとを有する。第1積層体提供工程S1aは、第1積層体70を提供する工程である。第2積層体提供工程S1bは、第2積層体72を提供する工程である。基材提供工程S1cは、電解質基材74を提供する工程である。なお、第1積層体70、第2積層体72及び電解質基材74はリング状であるが、図3ではこれらの形状を省略して示している。
第1積層体70は、第1電極44と、第1層である第1アイオノマー原料71とを有する。第1電極44と第1アイオノマー原料71とが互いに積層されている。例えば、第1電極44の表面に第1アイオノマー原料71を塗布することにより、第1積層体70が得られる。或いは、第1アイオノマー原料71からなるシートに第1電極44を転写することにより、第1積層体70が得られてもよい。
第1電極44の直径と第1アイオノマー原料71の直径とは互いに略同じである。第1電極44と第1アイオノマー原料71との積層方向における第1アイオノマー原料71の厚みt1は、電解質基材74の厚みt3よりも遙かに小さい。第1アイオノマー原料71の厚みt1は、例えば、5μm~50μmである。第1アイオノマー原料71の厚みt1は、例えば、電解質基材74の厚みt3の3%~50%である。
第2積層体72は、第2電極46と、第2層である第2アイオノマー原料73とを有する。第2電極46と第2アイオノマー原料73とが互いに積層されている。例えば、第2電極46の表面に第2アイオノマー原料73を塗布することにより、第2積層体72が得られる。或いは、第2アイオノマー原料73からなるシートに第2電極46を転写することにより、第2積層体72が得られてもよい。
第2電極46の直径と第2アイオノマー原料73の直径とは互いに略同じである。第2電極46と第2アイオノマー原料73との積層方向における第2アイオノマー原料73の厚みt2は、電解質基材74の厚みt3よりも遙かに小さい。第2アイオノマー原料73の厚みt2は、例えば、5μm~50μmである。第2アイオノマー原料73の厚みt2は、例えば、電解質基材74の厚みt3の3%~50%である。
電解質基材74は、アイオノマーからなる。電解質基材74は、互いに反対側の第1面741及び第2面742を有する。電解質基材74の厚みt3は、例えば、100μm~150μmである。電解質基材74は、例えば、円形である。電解質基材74の直径は、第1積層体70の直径及び第2積層体72の直径よりも大きい。
第1アイオノマー原料71の、所定温度、所定湿度雰囲気下での単位面積当たりのイオン交換容量は、所定値未満である。所定温度及び所定湿度雰囲気下において、第1アイオノマー原料71の単位面積当たりのイオン交換容量は、電解質基材74の単位面積当たりのイオン交換容量よりも小さい。第2アイオノマー原料73の、所定温度、所定湿度雰囲気下での単位面積当たりのイオン交換容量は、所定値以上である。所定温度及び所定湿度雰囲気下において、第2アイオノマー原料73の単位面積当たりのイオン交換容量は、電解質基材74の単位面積当たりのイオン交換容量よりも大きい。このため、所定温度及び所定湿度雰囲気下において、第2アイオノマー原料73の単位面積当たりのイオン交換容量は、第1アイオノマー原料71の単位面積当たりのイオン交換容量よりも大きい。
膨潤工程S2は、第1積層体70、第2積層体72及び電解質基材74を膨潤させる工程である。具体的に、膨潤工程S2では、第1積層体70、第2積層体72及び電解質基材74を水Wに浸漬する。浸漬により、第1積層体70、第2積層体72及び電解質基材74の各々の内部に水分が浸透し、第1積層体70、第2積層体72及び電解質基材74が膨潤する。このため、膨潤状態になった第1アイオノマー原料71の厚みt1及び直径は、膨潤前の第1アイオノマー原料71の厚みt1及び直径よりもそれぞれ大きい。膨潤状態になった第2アイオノマー原料73の厚みt2及び直径は、膨潤前の第2アイオノマー原料73の厚みt2及び直径よりもそれぞれ大きい。膨潤状態になった電解質基材74の厚みt3及び直径は、膨潤前の電解質基材74の厚みt3及び直径よりも大きい。
第1アイオノマー原料71の膨潤率は、第1電極44の膨潤率よりも大きいが、第1アイオノマー原料71の厚みt1は、電解質基材74の厚みt3よりも遙かに小さいため、第1アイオノマー原料71における皺の発生は抑制される。また仮に、第1アイオノマー原料71において皺が発生した場合でも、その皺の大きさは微小である。同様に、第2アイオノマー原料73の膨潤率は、第2電極46の膨潤率よりも大きいが、第2アイオノマー原料73の厚みt2は、電解質基材74の厚みt3よりも遙かに小さいため、第2アイオノマー原料73における皺の発生は抑制される。また仮に、第2アイオノマー原料73において皺が発生した場合でも、その皺の大きさは微小である。
膨潤工程S2の後、接合工程S3を実施する。接合工程S3は、電解質基材74の第1面741と第1積層体70の第1アイオノマー原料71とを接合するとともに、電解質基材74の第2面742と第2積層体72の第2アイオノマー原料73とを接合する工程である。接合工程S3は、例えば、ホットプレス装置80を用いて実施することができる。
ホットプレス装置80は、第1型82と、第2型84と、第1保持部材86と、第2保持部材88とを備える。第1型82は、下型である。第2型84は、上下方向に移動可能な上型である。
第1保持部材86は、円形リング状である。第2保持部材88は、円形リング状である。接合前の準備工程では、第1保持部材86と第2保持部材88とにより電解質基材74の外周縁部を挟持する。これにより、第1保持部材86は、電解質基材74の第1面741に向かい且つ電解質基材74の外周縁部に当接する。第2保持部材88は、電解質基材74の第2面742に向かい且つ電解質基材74の外周縁部に当接する。
第1保持部材86と第2保持部材88とにより電解質基材74の外周縁部を挟持することにより電解質基材74を張らせた状態で、第1保持部材86の内側に第1積層体70を挿入し、第2保持部材88の内側に第2積層体72を挿入する。この結果、第1積層体70と第2積層体72との間に電解質基材74が配置される。この場合、第1保持部材86の内側に第1積層体70が配置された状態で、第1積層体70の第1アイオノマー原料71と電解質基材74の第1面741とが接触する。第2保持部材88の内側に第2積層体72が配置された状態で、第2積層体72の第2アイオノマー原料73と電解質基材74の第2面742とが接触する。
接合工程S3では、第1積層体70、電解質基材74及び第2積層体72からなる積層構造体75を第1型82と第2型84とにより挟持して、加圧及び加熱する。これにより、電解質基材74の第1面741と第1積層体70の第1アイオノマー原料71とが互いに接合され、電解質基材74の第2面742と第2積層体72の第2アイオノマー原料73とが互いに接合される。
膨潤に伴う皺が第1アイオノマー原料71に発生していた場合でも、電解質基材74と第1アイオノマー原料71とが互いに接合される際、ホットプレス装置80からの圧力及び熱により、第1アイオノマー原料71の皺は、電解質基材74と一体化し、実質的に消失する。同様に、膨潤に伴う皺が第2アイオノマー原料73に発生していた場合でも、電解質基材74と第2アイオノマー原料73とが互いに接合される際、ホットプレス装置80からの圧力及び熱により、第2アイオノマー原料73の皺は、電解質基材74と一体化し、実質的に消失する。
電解質基材74、第1アイオノマー原料71及び第2アイオノマー原料73が一体化することにより、電解質膜42となる。このため、接合工程S3により、膜電極構造体30(図2も参照)が得られる。膨潤工程S2の完了時から接合工程S3の開始時までの間、第1積層体70、電解質基材74及び第2積層体72からは若干の水分が蒸発するが、第1積層体70、電解質基材74及び第2積層体72は依然として膨潤している。また、接合工程S3によって第1積層体70、電解質基材74及び第2積層体72からは若干の水分が蒸発するが、第1積層体70、電解質基材74及び第2積層体72の各々には十分な水分量が保持されているため、第1積層体70、電解質基材74及び第2積層体72は依然として膨潤している。このため、接合工程S3の完了時においても、膜電極構造体30の膨潤状態は維持されている。
上述した製造方法によって、複数の膜電極構造体30が得られる。複数の膜電極構造体30を用いて、電解スタック10A(図1参照)が製造される。この場合、複数の膜電極構造体30を電解時と同様の膨潤状態にして電解スタック10Aが組み立てられる。このため、電解時において膜電極構造体30に皺が発生することを抑制することができる。
本実施形態は、以下の効果を奏する。
膜電極構造体30の製造方法によれば、第1積層体70、第2積層体72及び電解質基材74を膨潤させた後に、第1積層体70と電解質基材74との接合と、第2積層体72と電解質基材74との接合を行うため、電解質膜42における皺の発生を抑制することができる。
ところで、図2において、差圧式電解装置10が水電解装置である場合、電解質膜42内の水分は、第2電極46に生成される高圧のガスによって、第1電極44に向って押される。このため、本実施形態に係る製造方法によって製造された膜電極構造体30と異なり、電解質膜42のうち第2電極46に隣接する部分(第2隣接部422)のイオン交換容量と、電解質膜42のうち第1電極44に隣接する部分(第1隣接部421)のイオン交換容量とが同じである場合、第1電極44を通じて電解質膜42に供給された水分のうち第2隣接部422の水分は高圧のガスの圧力によって第1電極44側に押し戻されるため、第1隣接部421よりも乾燥しやすくなる。電解質膜42の乾燥が発生すると、電解質膜42内のイオンの移動が阻害されるため、電気分解の効率が低下することがある。また電解質膜42の乾燥が発生すると、電気抵抗の増加に伴う電解質膜42の劣化(特に第2隣接部422の劣化)が進行することがある。
これに対し、本実施形態に係る製造方法によって製造された膜電極構造体30では、電解質膜42のうち高圧側である第2隣接部422のイオン交換容量が、低圧側である第1隣接部421のイオン交換容量よりも大きい。このため、差圧式電解装置10が水電解装置である場合に、第2隣接部422の最大水分含有量を第1隣接部421の最大水分含有量よりも大きくできる。このため、第1電極44を通じて電解質膜42に供給された水分が第2電極46に生成された高圧のガスの圧力によって押し戻されても、第2隣接部422での乾燥が抑制され、電解質膜42内のイオンの移動が阻害されることが抑制される。換言すれば、電解質膜42の厚さ方向において、電解質膜42の含水量のバラツキを抑制することができる。これにより、電解質膜42のうち高圧側である第2隣接部422の乾燥を抑制することにより、電気分解の効率の低下や電解質膜42の劣化(特に第2隣接部422の劣化)の進行を抑制できる。
図3において、第1アイオノマー原料71の厚みt1は、第2アイオノマー原料73の厚みt2と異なってもよい。第1アイオノマー原料71の厚みt1と第2アイオノマー原料73の厚みt2とを互いに異ならせることにより、図2において、電解時の電解質膜42の第1隣接部421の水分量と第2隣接部422の水分量とを調整し、第2隣接部422の乾燥を抑制することができる。
第1積層体70、第2積層体72及び電解質基材74の各々は、円形状である。第1積層体70及び第2積層体72の各々の直径は、電解質基材74の直径よりも小さい。接合工程S3において、電解質基材74の外周縁部を保持する第1保持部材86及び第2保持部材88よりも内側で、第1積層体70と電解質基材74とを接合し、第2積層体72と電解質基材74とを接合する。これにより、第1保持部材86及び第2保持部材88により電解質基材74の外周縁部を保持しつつ、第1保持部材86及び第2保持部材88の内側で接合を行うため、接合工程S3を良好に実施することができる。
上記実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)本開示の膜電極構造体(30)の製造方法は、電解質膜(42)と前記電解質膜の両側にそれぞれ積層された第1電極(44)及び第2電極(46)とを有する膜電極構造体を備え、前記第1電極に電解用の流体を供給し、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加し、前記第1電極で得られる第1ガスよりも高圧の第2ガスを前記第2電極で得る差圧式電解装置(10)に用いられる前記膜電極構造体の製造方法であって、所定温度、所定湿度雰囲気下での単位面積当たりのイオン交換容量が所定値未満である第1アイオノマー原料(71)と、前記第1電極とを積層させた第1積層体(70)を提供する第1積層体提供工程(S1a)と、前記所定温度、前記所定湿度雰囲気下での単位面積当たりのイオン交換容量が前記所定値以上である第2アイオノマー原料(73)と、前記第2電極とを積層させた第2積層体(72)を提供する第2積層体提供工程(S1b)と、互いに反対側の第1面(741)及び第2面(742)を有する電解質基材(74)を提供する基材提供工程(S1c)と、前記第1積層体、前記第2積層体及び前記電解質基材を膨潤させる膨潤工程(S2)と、前記膨潤工程の後に、前記電解質基材の前記第1面と前記第1積層体の前記第1アイオノマー原料とを接合するとともに、前記電解質基材の前記第2面と前記第2積層体の前記第2アイオノマー原料とを接合する接合工程(S3)と、を有する。
(付記2)付記1に記載の膜電極構造体の製造方法において、前記第1電極と前記第1アイオノマー原料との積層方向における前記第1アイオノマー原料の厚み(t1)は、前記第2電極と前記第2アイオノマー原料との積層方向における前記第2アイオノマー原料の厚み(t2)と異なってもよい。
(付記3)付記1又は2に記載の膜電極構造体の製造方法において、前記第1積層体、前記第2積層体及び前記電解質基材の各々は、円形状であり、前記第1積層体及び前記第2積層体の各々の直径は、前記電解質基材の直径よりも小さく、前記接合工程において、前記電解質基材の外周縁部を保持する保持部材よりも内側で、前記第1積層体と前記電解質基材とを接合し、前記第2積層体と前記電解質基材とを接合してもよい。
本開示について詳述したが、本開示は上述した個々の実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、又は、請求の範囲に記載された内容とその均等物から導き出される本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、置き換え、変更、部分的削除等が可能である。また、これらの実施形態は、組み合わせて実施することもできる。例えば、上述した実施形態において、各動作の順序や各処理の順序は、一例として示したものであり、これらに限定されるものではない。また、上述した実施形態の説明に数値又は数式が用いられている場合も同様である。
10…差圧式電解装置 30…膜電極構造体
42…電解質膜 44…第1電極
46…第2電極 70…第1積層体
71…第1アイオノマー原料 72…第2積層体
73…第2アイオノマー原料 74…電解質基材
42…電解質膜 44…第1電極
46…第2電極 70…第1積層体
71…第1アイオノマー原料 72…第2積層体
73…第2アイオノマー原料 74…電解質基材
Claims (3)
- 電解質膜と前記電解質膜の両側にそれぞれ積層された第1電極及び第2電極とを有する膜電極構造体を備え、前記第1電極に電解用の流体を供給し、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加し、前記第1電極で得られる第1ガスよりも高圧の第2ガスを前記第2電極で得る差圧式電解装置に用いられる前記膜電極構造体の製造方法であって、
所定温度、所定湿度雰囲気下での単位面積当たりのイオン交換容量が所定値未満である第1アイオノマー原料と、前記第1電極とを積層させた第1積層体を提供する第1積層体提供工程と、
前記所定温度、前記所定湿度雰囲気下での単位面積当たりのイオン交換容量が前記所定値以上である第2アイオノマー原料と、前記第2電極とを積層させた第2積層体を提供する第2積層体提供工程と、
互いに反対側の第1面及び第2面を有する電解質基材を提供する基材提供工程と、
前記第1積層体、前記第2積層体及び前記電解質基材を膨潤させる膨潤工程と、
前記膨潤工程の後に、前記電解質基材の前記第1面と前記第1積層体の前記第1アイオノマー原料とを接合するとともに、前記電解質基材の前記第2面と前記第2積層体の前記第2アイオノマー原料とを接合する接合工程と、を有する、膜電極構造体の製造方法。 - 請求項1に記載の膜電極構造体の製造方法において、
前記第1電極と前記第1アイオノマー原料との積層方向における前記第1アイオノマー原料の厚みは、前記第2電極と前記第2アイオノマー原料との積層方向における前記第2アイオノマー原料の厚みと異なる、膜電極構造体の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の膜電極構造体の製造方法において、
前記第1積層体、前記第2積層体及び前記電解質基材の各々は、円形状であり、
前記第1積層体及び前記第2積層体の各々の直径は、前記電解質基材の直径よりも小さく、
前記接合工程において、前記電解質基材の外周縁部を保持する保持部材よりも内側で、前記第1積層体と前記電解質基材とを接合し、前記第2積層体と前記電解質基材とを接合する、膜電極構造体の製造方法。
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