JP7697102B2 - 炭素濃度分布の解析方法 - Google Patents
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Description
特許文献2は、浸炭部品の浸炭ばらつきを抑制することを目的として、減圧浸炭処理の条件を設定するものであり、減圧浸炭処理を行う鋼材について、炭素濃度の分布を解析するものではない。
本発明は、炭素濃度分布の解析精度を高めることを目的とする。
上記式(II)において、Cは鋼材中の炭素濃度であり、tは時間であり、divは発散であり、Jは炭素の拡散流束である。
上記式(III)において、Dγはオーステナイト中の炭素の拡散係数であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、Cγはオーステナイト中の炭素濃度である。
上記式(IV)において、mγはオーステナイト中の炭素の易動度であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、Cγはオーステナイト中の炭素濃度であり、γγはオーステナイト中の炭素の活量係数[-]である。
λ=Vγ n ・・・(V)
Vγはオーステナイトの体積分率[-]であり、nは整数である。
さらに、鋼材中の拡散係数の計算及び拡散シミュレーションに使用されるパラメータ(言い換えると、拡散方程式に含まれる拡散流速、拡散係数、易動度)を補正係数によって補正することにより、浸炭処理を施した鋼材中の炭素濃度を解析するときの精度を、より担保しやすくなる。
浸炭処理を行ったときの鋼材の内部における炭素濃度の分布は、後述する拡散シミュレーション(鋼材中の炭素濃度勾配に基づく拡散方程式)及び拡散係数の計算に基づいて解析することができる。
(拡散方程式に基づく拡散シミュレーション)
浸炭処理では、鋼材中を炭素が拡散し、Fickの法則が成立する。この場合、炭素の拡散流束Jは下記式(1)の拡散方程式で表されるともに、炭素濃度の時間変化量(∂C/∂t)は下記式(2)の拡散方程式で表される。
J:炭素の拡散流束[m・mol%/s](ベクトル表記)である。
D:鋼材中の炭素の拡散係数[m2/s]である。
C:鋼材中の炭素濃度である。炭素濃度Cは、モル濃度[mol%](もしくは[-])であってもよいし、質量濃度[mass%](もしくは[-])であってもよい。
ここでは、濃度をモル濃度[mol%]としているが、濃度の単位に応じて、拡散流束Jの単位は変化する。
t:時間[s]である。
grad:位置の勾配である。なお、例えば、x軸、y軸、z軸を直行座標軸とする三次元を対象としている場合、grad C=(∂C/∂x,∂C/∂y,∂C/∂z)となる(以下、同様である)。
div:発散である。なお、例えば、x軸、y軸、z軸を直行座標軸とする三次元を対象としている場合、div J=∂Jx/∂x + ∂Jy/∂y+∂Jz/∂z となり、Jx、Jy、Jzはそれぞれ炭素の拡散流束J(ベクトル表記)のx成分、y成分、z成分である(以下、同様である)。
雰囲気ガス中のカーボンポテンシャルを高く制御して炭化物を形成させる高濃度浸炭や上述の減圧浸炭では、浸炭中に炭化物が形成する。この場合、式(1)に基づいて炭素の拡散流束を計算するためには、オーステナイト及び炭化物の複相領域に対応する炭素の拡散係数が必要となり、この拡散係数は、浸炭状態によって変化する炭素濃度や炭素を除く鋼材成分により異なるオーステナイトへの固溶C濃度・炭化物形成量に応じて大きく変化する。
この場合、解析精度を上げるために、鋼種毎に異なる炭素濃度・温度における拡散係数を導出し、これをシミュレーションにおいて設定する必要がある。例えば、脱炭法のように実験のみで拡散係数を導出する手法は、実験回数が過度に増大するため、現実的ではない。
そこで、本発明者は、後述する通り、オーステナイト中の炭素の拡散係数や易動度を用いて、複相領域を含む鋼材中の拡散係数を計算し、式(1)に基づいて炭素の拡散流束を計算する方法を知見した。
オーステナイト及び炭化物を含む複相領域を含有する鋼材であっても、式(3)により鋼材中の拡散係数Dを計算することで、式(1)に基づいて炭素の拡散流束を計算することができる。
D:鋼材中の炭素の拡散係数[m2/s]である。
Dγ:オーステナイト中の炭素の拡散係数[m2/s]である。
C:鋼材中の炭素濃度である。
Cγ:オーステナイト中の炭素濃度である。
∂:偏微分記号である。
なお、炭素濃度は、モル濃度[mol%](もしくは[-])であってもよいし、質量濃度[mass%](もしくは[-])であってもよい。
オーステナイト及び炭化物を含む複相領域を含む対象でも、式(4)により鋼材中の拡散係数を計算することで、式(1)に基づいて炭素の拡散流束を計算することができる。
D:鋼材中の炭素の拡散係数[m2/s]である。
mγ:オーステナイト中の炭素の易動度[m2・mol/J・s]である。
R:気体定数(8.314[J/(K・mol)]である。
T:温度[K]である。
C:鋼材中の炭素濃度である。
Cγ:オーステナイト中の炭素濃度である。
γγ:オーステナイト中の炭素の活量係数[-]である。
∂は、偏微分記号である。
なお、炭素濃度は、モル濃度[mol%](もしくは[-])であってもよいし、質量濃度[mass%](もしくは[-])であってもよい。
上述のように、式(1)における拡散係数Dを、式(3)又は式(4)から求めることができる。
詳細については、後述するが式(3)及び(4)に含まれるパラメータは、以下の方法で取得することができる。式(3)及び(4)に含まれるオーステナイト中の炭素濃度Cγや炭素の活量係数γγは、熱力学計算により取得してもよい。また、式(3)における拡散係数Dγは、浸炭処理の対象となる鋼材を用いて予め実験により求めた数値、実験データとして報告されているデータから取得してもよい。式(4)に含まれるオーステナイト中の炭素の易動度mγは、熱力学データベース及び拡散データベースを用いた熱力学計算により取得してもよい。式(3)及び(4)に含まれる炭素濃度Cは、拡散シミュレーションにより経時的に求められる値である。
上述の式(3)、式(4)による鋼材中の拡散係数の計算では、オーステナイト単相が連続した状態を仮定しているため、オーステナイト及び炭化物を含む複相領域を含む鋼材を対象とする場合、解析をより厳密にするため、複相領域において下記式(5)に示す迷宮度(labyrinth factor)λ(ただし、λ≠1)を式(3)、式(4)の右辺に乗算し、鋼材中の炭素の拡散係数Dを算出してもよい。「解析をより厳密にするため(中略)算出してもよい」であるから、迷宮度λを乗算することは必須ではない。なお、単相領域では、λ=1である。
なお、数学的に自明であるが、式(3)または式(4)の右辺に迷宮度λを乗算せずに、式(1)の右辺に迷宮度λを乗算してもよい。
また、式(3)または式(4)の右辺に迷宮度λを乗算せずに、式(2)の右辺に迷宮度λを乗算してもよい。
λ:迷宮度[-]である。
Vγ:オーステナイトの体積分率[-]であり、熱力学計算により計算してよい。
n:整数である。一般的には、nは1または2であるが、解析精度が担保されれば3以上の整数であってもよい。解析精度を担保できる整数の上限は、鋼材の種類等によって異なるため一義的に定義することはできない。
浸炭処理の対象となる鋼材の表層を複数のセルで区分したメッシュデータを作成する。各セルのサイズは適宜設定することができ、例えば、1~500μmとすることができる。また、セルのサイズは、均等のサイズにすることもできるし、鋼材の表面から内部に向かって徐々に大きくする(言い換えれば、鋼材の内部から表面に向かって徐々に小さくする)こともできる。メッシュ・要素の種類は特に限定されないが、例えば、二次元では、三角形、四角形、三次元では、四面体、六面体などが存在しており、適宜選択することができる。また、一次要素・二次要素のどちらを利用してもよい。
浸炭処理時に二次元または三次元方向に炭素が拡散する鋼材(例えばエッジ形状部を有する鋼材)を対象とする場合には、二次元または三次元でのモデル化を必要とする。切欠付き丸棒試験片などの軸対象形状の鋼材を対象とする場合には、メッシュデータを円筒座標系とすることで二次元として取り扱ってもよい。
拡散シミュレーションの解析時間(ステップ時間)は特に限定されないが、例えば、0.001~1.0秒とすることができる。
鋼材表面や鋼材内部において、浸炭処理によってセメンタイト(θ)が析出する場合がある。この場合、鋼材中の炭素が、セメンタイトとオーステナイトとに分配される。そこで、その時の温度及びその位置の化学組成における、鋼材中の平衡相及び平衡組成を、上述の熱力学計算により求め、オーステナイト中の固溶C濃度、オーステナイトの体積分率、及び、オーステナイト中の炭素の活量係数を特定できる。
なお、オーステナイト中の拡散係数Dγは、式(3)から鋼材中の拡散係数Dを求める場合に必要となる。たとえば、オーステナイト中の炭素の拡散係数Dγとして、上述の非特許文献1に示された下記式(6)を用いてもよい。
Dγ:オーステナイト中の拡散係数[μm2/s]である。
Cγ:オーステナイト中の炭素濃度である。
炭素濃度Cγは、モル濃度[mol%](もしくは[-])であってもよいし、質量濃度[mass%](もしくは[-])であってもよい。
T:温度[K]である。
本実施形態では、第1実施形態で説明した式(1)~式(4)を補正して、拡散シミュレーションを行うことにより、浸炭処理を施した鋼材中の炭素濃度を解析するときの精度を、より担保しやすくなる。以下、拡散シミュレーションを補正する方法について、図1のフローチャートを用いて説明する。
ここで、浸炭条件、鋼材の形状(部位)、鋼種が変化した場合でも、予め求めた前述の補正係数kを用いて拡散シミュレーションを補正することができる。ただし、浸炭条件、鋼材の形状(部位)、鋼種毎にステップS101~S103の処理を実施して、それぞれに対応した補正係数kを決定したほうが、解析精度は向上する。
上述したように拡散シミュレーションを補正する場合には、上記の拡散方程式や鋼材中の拡散係数の計算式に含まれる拡散流束J、拡散係数D、Dγ及び易動度mγのうち少なくとも一つに対して補正係数kを乗算する。下記式(1a),(2a),(3a),(4a)はそれぞれ、上記式(1),(2),(3),(4)のパラメータ(拡散流束J、拡散係数D、Dγ、易動度mγ)に補正係数kを乗算した式である。
「少なくとも一つ」であるから、式(1a)、式(2)及び式(3)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2a)及び式(3)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2)及び式(3a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2a)及び式(3)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2a)及び式(3a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2)及び式(3a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2a)及び式(3a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよい。各式に含まれる補正係数kは異なる値を用いてもよい。
「少なくとも一つ」であるから、式(1a)、式(2)及び式(4)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2a)及び式(4)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2)及び式(4a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2a)及び式(4)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2a)及び式(4a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2)及び式(4a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2a)及び式(4a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよい。各式に含まれる補正係数kは異なる値を用いてもよい。
言うまでもないが、第1実施形態の「迷宮度」に関する記載は、第2実施形態に援用することができる。
第1実施例は、第1実施形態に対応する実施例である。
(鋼材サンプル・浸炭条件)
減圧浸炭処理に供される鋼材として、下記表に示す組成の鋼材サンプルを準備した。
鋼材サンプルに対して上述の浸炭条件で減圧浸炭処理を行い、処理後の鋼材サンプルのそれぞれについて、炭素濃度(実測値)を測定した。
図3は鋼材サンプルの断面図である。同図を参照して、鋼材サンプルの角柱長さ方向中央(つまり、図2の長さKの中央)における断面を検査位置として、矢印で示す測定方向MDに向かって、炭素濃度を測定した。測定方向MDは二方向とした。具体的には、断面の直角部(以下、「90°角部」ともいう)を二等分する線を測定方向MDとし、断面の角度αの角部(以下、「60°角部」ともいう)を二等分する線を測定方向MDとした。
なお、測定方向MDはいずれもエッジ頂点(台形断面の頂点)を通過することは、言うまでもない。
以下、拡散シミュレーションにおけるモデリング方法について説明する。本実施例では、上述の式(1)の拡散方程式(鋼材中の炭素濃度の勾配を駆動力とした拡散方程式)を用いて炭素の拡散流束Jを計算するプログラムが組み込まれた公知の有限要素法に基づく解析ソフトウェア(市販品)を使用した。
(I)メッシュデータ
90°角部及び60°角部に対してエッジ頂点から半径6[mm]以内を含む領域の2次元断面をモデル化し、鋼材表面でのメッシュが最も細かくなるようにメッシュデータを作成した。具体的には、メッシュのサイズを1~500[μm]の範囲内で設定した。メッシュの種類は、四角形メッシュとした。
(II)境界条件
減圧浸炭処理の浸炭期(浸炭工程)では、鋼材の表面に相当する位置において、熱力学計算により得られるグラファイトと平衡時の炭素濃度を与えた。また、拡散期(拡散工程)以降の時間では、鋼材の表面から炭素の浸入はないものとみなし、閉鎖系とした。
(III)設定温度
減圧浸炭処理の温度条件としては、上記の減圧浸炭条件に示す温度を計算モデルにて設定した。ただし、計算簡便化のために、降温工程における温度を880[℃]に固定して、解析モデルにて設定した。
(IV)鋼材中の拡散係数D
鋼材中の拡散係数Dは式(3)または式(4)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。式(3)、(4)に含まれるオーステナイト中の炭素濃度Cγ、オーステナイト中の活量係数γγは、鋼材中の各位置における成分、及び上記(III)で記述した設定温度から熱力学計算により算出される値を用いた。オーステナイト中の拡散係数Dγは式(6)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。オーステナイト中の炭素の易動度mγは、熱力学データベースと拡散データベースを用いた熱力学計算により算出される値を用いた。
(V)迷宮度(labyrinth factor)
迷宮度は式(5)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。つまり、式(5)に基づき計算した迷宮度を、式(3)または式(4)の右辺に乗算し、鋼材中の拡散係数Dを計算した。
式(5)に含まれるオーステナイトの体積分率Vγは、熱力学計算により計算される値を用いた。nは2に設定した。
(VI)熱力学計算
熱力学計算は、市販の熱力学計算ソフトウェアThermo-Calcを用いて行った。計算には市販の熱力学データベースTCFE10と拡散データベースMOBFE1を使用した。
(VII)補正係数k
本実施例では、第1実施形態に対応するため、補正係数kを乗算した解析を行わなかった。
第2実施例は、第1実施形態及び第2実施形態に対応する実施例である。
(鋼材サンプル・浸炭条件)
減圧浸炭処理に供される鋼材組成、及びサンプル形状は第1実施例と同じにした。減圧浸炭処理として、減圧した加熱炉内で鋼材サンプルを浸炭温度まで加熱する加熱工程と、浸炭温度で鋼材サンプルを均熱する均熱工程と、炉内に浸炭ガス(アセチレンガス)を導入して浸炭温度で鋼材サンプルを浸炭処理する浸炭工程と、侵入した炭素を鋼材サンプル中に拡散させる拡散工程と、鋼材サンプルの温度を保持温度まで降温する降温工程と、保持温度で鋼材サンプルの温度を保持する保持工程と、をこの順序で実施した。なお、浸炭工程以外の工程では、浸炭ガスを導入しなかった。減圧浸炭処理の条件として、下記表に示す減圧浸炭処理条件B及び減圧浸炭処理条件Cを設定した。
鋼材サンプルに対して上述の浸炭条件で減圧浸炭処理を行い、減圧浸炭処理後における鋼材サンプルのそれぞれにおいて、炭素濃度(実測値)を測定した。
炭素濃度の測定方法は第1実施例と同じにした。
以下、拡散シミュレーションにおけるモデリング方法について説明する。本実施例では、上述の式(1)の拡散方程式(鋼材中の炭素濃度の勾配を駆動力とした拡散方程式)を用いて炭素の拡散流束を計算するプログラムが組み込まれた公知の有限要素法に基づく解析ソフトウェア(市販品)を使用した。
(I)メッシュデータ
第1実施例と同じにした。
(II)境界条件
第1実施例と同じにした。
(III)設定温度
第1実施例と同じにした。
(IV)鋼材中の拡散係数D
鋼材中の拡散係数Dは式(3)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。式(3)に含まれるオーステナイト中の炭素濃度Cγは、鋼材中の各位置における成分、及び上記(III)で記述した設定温度から熱力学計算により算出される値を用いた。オーステナイト中の拡散係数Dγは式(6)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した
(V)迷宮度(labyrinth factor)
迷宮度は式(5)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。つまり、式(5)に基づき計算した迷宮度を、式(3)の右辺に乗算した。
式(5)に含まれるオーステナイトの体積分率Vγには、熱力学計算により計算される値を用いた。nは2に設定した。
(VI)熱力学計算
第1実施例と同じにした。
(VII)誤差の計算
測定方向MDに沿って、60°角部または90°角部のエッジ頂点から0.25[mm]までの範囲における炭素濃度の解析値と実測値の平均絶対誤差(MAE)を計算した。
(VIII)補正係数kの設定
実施例5では、補正係数kは設定しなかった。つまり、実施例5は、第1実施形態に対応しており、式(1)、式(2)及び式(3)を用いて、炭素濃度の分布を解析した。
実施例6~8では、炭化物が固溶する拡散期(拡散工程)以降の時間において、浸炭期(浸炭工程)に炭化物が析出した領域で補正係数kを設定した。補正係数は、実施例6に示す条件にて解析精度が向上するように決定した。具体的には平均絶対誤差(MAE)が17%以下となるように補正係数(0.77)を決定した。
なお、補正係数kは、式(3)の右辺にのみ乗算した。つまり、式(1)、式(2)及び式(3a)を用いて、炭素濃度の分布を解析した。
第3実施例は、第1実施形態及び第2実施形態の中の迷宮度λの設定が第1実施例及び第2実施例と異なる場合に対応する実施例である。
(鋼材サンプル・浸炭条件)
減圧浸炭処理に供される鋼材組成、及びサンプル形状は第1実施例及び第2実施例と同じにした。減圧浸炭条件は、第1実施例、第2実施例に記載の減圧浸炭処理条件A、減圧浸炭処理条件B及び減圧浸炭処理条件Cのいずれかとした。
(炭素濃度の測定)
第1実施例と同じにした。
(拡散シミュレーション)
以下、拡散シミュレーションにおけるモデリング方法について説明する。本実施例では、上述の式(1)の拡散方程式(鋼材中の炭素濃度の勾配を駆動力とした拡散方程式)を用いて炭素の拡散流束を計算するプログラムが組み込まれた公知の有限要素法に基づく解析ソフトウェア(市販品)を使用した。
(I)メッシュデータ
第1実施例と同じにした。
(II)境界条件
第1実施例と同じにした。
(III)設定温度
第1実施例と同じにした。
(IV)鋼材中の拡散係数D
鋼材中の拡散係数Dは式(3)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。式(3)に含まれるオーステナイト中の炭素濃度Cγは、鋼材中の各位置における成分、及び上記(III)で記述した設定温度から熱力学計算により算出される値を用いた。オーステナイト中の拡散係数Dγは式(6)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した
(V)迷宮度(labyrinth factor)
実施例9~12では、迷宮度λは設定しなかった。
実施例13~16では、迷宮度は式(5)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。つまり、式(5)に基づき計算した迷宮度を、式(3)の右辺に乗算した。式(5)に含まれるオーステナイトの体積分率Vγには、熱力学計算により計算される値を用いた。nは1に設定した。
実施例17~24では、迷宮度は式(5)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。つまり、式(5)に基づき計算した迷宮度を、式(3)の右辺に乗算した。式(5)に含まれるオーステナイトの体積分率Vγには、熱力学計算により計算される値を用いた。nは5または8に設定した。
(VI)熱力学計算
第1実施例と同じにした。
(VII)誤差の計算
実施例10~12、実施例14~16、実施例18~20、及び実施例22~24のエッジ部の頂点近傍に粗大炭化物が残存した条件においてのみ、第2実施例と同じ条件にて計算した。
(VIII)補正係数kの設定
実施例9、実施例10、実施例13、実施例14、実施例17、実施例18、実施例21、及び実施例22では、補正係数kは設定しなかった。つまり、これら実施例は、第1実施形態に対応しており、式(1)、式(2)及び式(3)を用いて、炭素濃度の分布を解析した。
実施例11、実施例12、実施例15、及び実施例16では、炭化物が固溶する拡散期(拡散工程)以降の時間において、浸炭期(浸炭工程)に炭化物が析出した領域で補正係数kを設定した。補正係数は、実施例11または実施例15に示す条件にて解析精度が向上するように決定した。具体的には、実施例11では、平均絶対誤差(MAE)が11%以下となるように補正係数(0.83)を決定した。実施例15では、平均絶対誤差(MAE)が18%以下となるように補正係数(0.83)を決定した。
実施例19、実施例20、実施例23、及び実施例24では、炭化物が固溶する拡散期(拡散工程)以降の時間において、浸炭期(浸炭工程)に炭化物が析出した領域で補正係数kを設定した。補正係数は、実施例19または実施例23に示す条件にて解析精度が向上するように決定した。具体的には、実施例19では、平均絶対誤差(MAE)が40%以下となるように補正係数(0.50)を決定した。実施例23では、平均絶対誤差(MAE)が40%以下となるように補正係数(0.37)を決定した。
なお、補正係数kは、式(3)の右辺にのみ乗算した。つまり、式(1)、式(2)及び式(3a)を用いて、炭素濃度の分布を解析した。
S 短辺
H 高さ
K 角柱長さ
Claims (3)
- 浸炭処理された鋼材中の炭素濃度分布を、拡散方程式を用いて解析する方法であって、
鋼材中には、前記浸炭処理によって炭化物が形成されており、
鋼材は、オーステナイト及び炭化物を含む複相領域を含有しており、
前記拡散方程式は、下記式(I)及び下記式(II)で表され、
下記式(I)におけるDを、下記式(III)又は下記式(IV)から算出することを特徴とする炭素濃度分布の解析方法。
上記式(I)において、Jは炭素の拡散流束であり、Dは鋼材中の炭素の拡散係数であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、gradは位置の勾配である。
上記式(II)において、Cは鋼材中の炭素濃度であり、tは時間であり、divは発散であり、Jは炭素の拡散流束である。
上記式(III)において、Dγはオーステナイト中の炭素の拡散係数であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、Cγはオーステナイト中の炭素濃度である。
上記式(IV)において、mγはオーステナイト中の炭素の易動度であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、Cγはオーステナイト中の炭素濃度であり、γγはオーステナイト中の炭素の活量係数[-]である。 - 前記浸炭処理によって形成された鋼材中の炭化物の析出領域において、式(I)の拡散係数D、式(II)の拡散流束J、式(III)の拡散係数Dγ、式(IV)の易動度mγのうち少なくとも一つに補正係数を乗算し、
前記補正係数は、前記拡散方程式から解析される前記炭素濃度の分布と、予め測定した前記炭素濃度の分布との誤差が閾値以下となる条件を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の炭素濃度分布の解析方法。
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|---|---|---|---|---|
| JP2016172898A (ja) | 2015-03-17 | 2016-09-29 | 株式会社豊田中央研究所 | 浸炭解析装置及び浸炭解析方法 |
| WO2021039911A1 (ja) | 2019-08-29 | 2021-03-04 | 日本製鉄株式会社 | 真空浸炭処理方法及び浸炭部品の製造方法 |
Non-Patent Citations (1)
| Title |
|---|
| 藤堂 尚二 ほか,真空浸炭の利用技術開発,新日鉄住金技報,2016年,第406号,p.13-18 |
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| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JP2025005383A (ja) | 2025-01-16 |
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