JP7697102B2 - 炭素濃度分布の解析方法 - Google Patents

炭素濃度分布の解析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7697102B2
JP7697102B2 JP2024074807A JP2024074807A JP7697102B2 JP 7697102 B2 JP7697102 B2 JP 7697102B2 JP 2024074807 A JP2024074807 A JP 2024074807A JP 2024074807 A JP2024074807 A JP 2024074807A JP 7697102 B2 JP7697102 B2 JP 7697102B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
formula
diffusion
carbon concentration
carbon
steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2024074807A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2025005383A (ja
Inventor
康政 武藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sanyo Special Steel Co Ltd
Original Assignee
Sanyo Special Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sanyo Special Steel Co Ltd filed Critical Sanyo Special Steel Co Ltd
Priority to PCT/JP2024/022818 priority Critical patent/WO2025005044A1/ja
Publication of JP2025005383A publication Critical patent/JP2025005383A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7697102B2 publication Critical patent/JP7697102B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Description

本発明は、浸炭処理された鋼材中の炭素濃度分布の解析方法に関するものである。
鉄鋼材料の製品(例えばギア等の駆動系製品)においては、製品表面の耐摩耗性、疲労強度等の必要特性を確保するために、所望の形状に加工された加工品に対して浸炭処理を行っている。近年、環境負荷の低減の観点から減圧浸炭処理に代表される減圧浸炭処理が広がってきている。
減圧浸炭処理では、加熱炉において、ガスを排気して減圧した状態で炭素を含んだ浸炭ガスを注入した雰囲気中で、一定の温度および時間で加工品を加熱した後に、油などの冷却媒体に加工品を浸漬して冷却している。この減圧浸炭処理では、浸炭ガスの注入が続けられる浸炭期と、浸炭ガスの注入を止めた状態となる拡散期が存在する。
減圧浸炭処理において、製品の表層部に過大に炭素が侵入し、表層部よりも内部に炭素が十分に拡散しない場合には、粗大な炭化物が形成されてしまい、製品の疲労強度等の特性が低下してしまうことがある。このような不具合を回避するために、以下に説明する技術が開示されている。
特許文献1では、浸炭パターンを設定し、拡散方程式を用いて、対象部品の表層部における任意のセルの炭素濃度を求めている。そして、求めた炭素濃度と、所望の炭素濃度とを比較することにより、設定した浸炭条件を評価して合否を決定している。
特許文献2には、浸炭部品の浸炭ばらつきを抑制できる減圧浸炭処理方法が記載されている。浸炭工程は、浸炭工程の開始から交差時間teまでの前期浸炭工程と、交差時間teから浸炭時間taまでの後期浸炭工程とを有している。前期浸炭工程では、実際浸炭ガス流量を、浸炭工程の開始から基準時間ta/5時点での理論浸炭ガス流量以上、かつ、浸炭工程の開始から20秒時点での理論浸炭ガス流量以下としている。後期浸炭工程では、実際浸炭ガス流量を、理論浸炭ガス流量の1.00~1.20倍の範囲内としている。
特開2008-208403号公報 特許第6583600号公報
真空浸炭におけるエッジ部過剰浸炭の疲労強度に対する影響,鉄と鋼,社団法人日本鉄鋼協会,2010年,Vol.96、No.6,48~53頁
特許文献1では、拡散方程式に含まれる拡散係数を定数として、炭素濃度分布を解析しているが、厳密には拡散係数はγ中の炭素濃度によって変化する値であるため、炭素濃度分布の解析精度が低い。
特許文献2は、浸炭部品の浸炭ばらつきを抑制することを目的として、減圧浸炭処理の条件を設定するものであり、減圧浸炭処理を行う鋼材について、炭素濃度の分布を解析するものではない。
本発明は、炭素濃度分布の解析精度を高めることを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る炭素濃度分布の解析方法は、(1)浸炭処理された鋼材中の炭素濃度分布を、拡散方程式を用いて解析する方法であって、鋼材中には、前記浸炭処理によって炭化物が形成されており、前記拡散方程式は、下記式(I)及び下記式(II)で表され、下記式(I)におけるDを、下記式(III)又は下記式(IV)から算出することを特徴とする炭素濃度分布の解析方法。
上記式(I)において、Jは炭素の拡散流束であり、Dは鋼材中の炭素の拡散係数であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、gradは位置の勾配である。
上記式(II)において、Cは鋼材中の炭素濃度であり、tは時間であり、divは発散であり、Jは炭素の拡散流束である。
上記式(III)において、Dγはオーステナイト中の炭素の拡散係数であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、Cγはオーステナイト中の炭素濃度である。
上記式(IV)において、mγはオーステナイト中の炭素の易動度であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、Cγはオーステナイト中の炭素濃度であり、γγはオーステナイト中の炭素の活量係数[-]である。
(2)上記(1)の構成において、以下のように設定してもよい。前記浸炭処理によって形成された鋼材中の炭化物の析出領域において、式(I)の拡散係数D、式(II)の拡散流束J、式(III)の拡散係数Dγ、式(IV)の易動度mγのうち少なくとも一つに補正係数を乗算するとともに、前記補正係数を、前記拡散方程式から解析される前記炭素濃度の分布と、予め測定した前記炭素濃度の分布との誤差が閾値以下となる条件を満たすように設定してもよい。
(3)上記(1)又は(2)の構成において、式(I)のDを式(III)から算出する場合、式(I)、式(II)及び式(III)のうちいずれかの右辺に、下記式(V)で表される迷宮度λを乗算し、式(I)のDを式(IV)から算出する場合、式(I)、式(II)及び式(IV)のうちいずれかの右辺に、下記式(V)で表される迷宮度λを乗算してもよい。
λ=Vγ ・・・(V)
γはオーステナイトの体積分率[-]であり、nは整数である。
本発明によれば、浸炭中にオーステナイトと炭化物の複相領域を含む鋼材(例えば、減圧浸炭処理、高濃度浸炭など)においても、鋼材中の炭素濃度勾配を駆動力とした拡散方程式に基づき、炭素濃度の分布を精度良く解析することができる。
さらに、鋼材中の拡散係数の計算及び拡散シミュレーションに使用されるパラメータ(言い換えると、拡散方程式に含まれる拡散流速、拡散係数、易動度)を補正係数によって補正することにより、浸炭処理を施した鋼材中の炭素濃度を解析するときの精度を、より担保しやすくなる。
鋼材中の炭素濃度を解析する拡散シミュレーションを補正する方法を説明するフローチャートである。 鋼材サンプルの斜視図である。 鋼材サンプルの断面図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例1~2及び比較例1~2による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例3~4及び比較例3~4による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例5による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例6による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例7による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例8による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例9による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例10による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例11による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例12による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例13による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例14による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例15による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例16による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例17による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例18による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例19による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例20による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例21による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例22による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例23による解析結果と実測値との関係を示す図である。 鋼材表面からの深さに応じた炭素濃度について、実施例24による解析結果と実測値との関係を示す図である。
(第1実施形態)
浸炭処理を行ったときの鋼材の内部における炭素濃度の分布は、後述する拡散シミュレーション(鋼材中の炭素濃度勾配に基づく拡散方程式)及び拡散係数の計算に基づいて解析することができる。
(拡散方程式に基づく拡散シミュレーション)
浸炭処理では、鋼材中を炭素が拡散し、Fickの法則が成立する。この場合、炭素の拡散流束Jは下記式(1)の拡散方程式で表されるともに、炭素濃度の時間変化量(∂C/∂t)は下記式(2)の拡散方程式で表される。
式(1)及び(2)に含まれるパラメータの定義は、以下の通りである。
J:炭素の拡散流束[m・mol%/s](ベクトル表記)である。
D:鋼材中の炭素の拡散係数[m/s]である。
C:鋼材中の炭素濃度である。炭素濃度Cは、モル濃度[mol%](もしくは[-])であってもよいし、質量濃度[mass%](もしくは[-])であってもよい。
ここでは、濃度をモル濃度[mol%]としているが、濃度の単位に応じて、拡散流束Jの単位は変化する。
t:時間[s]である。
grad:位置の勾配である。なお、例えば、x軸、y軸、z軸を直行座標軸とする三次元を対象としている場合、grad C=(∂C/∂x,∂C/∂y,∂C/∂z)となる(以下、同様である)。
div:発散である。なお、例えば、x軸、y軸、z軸を直行座標軸とする三次元を対象としている場合、div J=∂Jx/∂x + ∂Jy/∂y+∂Jz/∂z となり、Jx、Jy、Jzはそれぞれ炭素の拡散流束J(ベクトル表記)のx成分、y成分、z成分である(以下、同様である)。
(炭化物が形成する場合の拡散シミュレーション)
雰囲気ガス中のカーボンポテンシャルを高く制御して炭化物を形成させる高濃度浸炭や上述の減圧浸炭では、浸炭中に炭化物が形成する。この場合、式(1)に基づいて炭素の拡散流束を計算するためには、オーステナイト及び炭化物の複相領域に対応する炭素の拡散係数が必要となり、この拡散係数は、浸炭状態によって変化する炭素濃度や炭素を除く鋼材成分により異なるオーステナイトへの固溶C濃度・炭化物形成量に応じて大きく変化する。
この場合、解析精度を上げるために、鋼種毎に異なる炭素濃度・温度における拡散係数を導出し、これをシミュレーションにおいて設定する必要がある。例えば、脱炭法のように実験のみで拡散係数を導出する手法は、実験回数が過度に増大するため、現実的ではない。
そこで、本発明者は、後述する通り、オーステナイト中の炭素の拡散係数や易動度を用いて、複相領域を含む鋼材中の拡散係数を計算し、式(1)に基づいて炭素の拡散流束を計算する方法を知見した。
(オーステナイト中の拡散係数を用いた複相領域の拡散係数の計算)
オーステナイト及び炭化物を含む複相領域を含有する鋼材であっても、式(3)により鋼材中の拡散係数Dを計算することで、式(1)に基づいて炭素の拡散流束を計算することができる。
式(3)に含まれるパラメータの定義は、以下の通りである。
D:鋼材中の炭素の拡散係数[m/s]である。
Dγ:オーステナイト中の炭素の拡散係数[m/s]である。
C:鋼材中の炭素濃度である。
Cγ:オーステナイト中の炭素濃度である。
∂:偏微分記号である。
なお、炭素濃度は、モル濃度[mol%](もしくは[-])であってもよいし、質量濃度[mass%](もしくは[-])であってもよい。
(オーステナイト中の易動度を用いた複相領域の拡散係数の計算)
オーステナイト及び炭化物を含む複相領域を含む対象でも、式(4)により鋼材中の拡散係数を計算することで、式(1)に基づいて炭素の拡散流束を計算することができる。
式(4)に含まれるパラメータの定義は、以下の通りである。
D:鋼材中の炭素の拡散係数[m/s]である。
γ:オーステナイト中の炭素の易動度[m・mol/J・s]である。
R:気体定数(8.314[J/(K・mol)]である。
T:温度[K]である。
C:鋼材中の炭素濃度である。
Cγ:オーステナイト中の炭素濃度である。
γγ:オーステナイト中の炭素の活量係数[-]である。
∂は、偏微分記号である。
なお、炭素濃度は、モル濃度[mol%](もしくは[-])であってもよいし、質量濃度[mass%](もしくは[-])であってもよい。
上述のように、式(1)における拡散係数Dを、式(3)又は式(4)から求めることができる。
(熱力学計算を利用した拡散シミュレーション)
詳細については、後述するが式(3)及び(4)に含まれるパラメータは、以下の方法で取得することができる。式(3)及び(4)に含まれるオーステナイト中の炭素濃度Cγや炭素の活量係数γγは、熱力学計算により取得してもよい。また、式(3)における拡散係数Dγは、浸炭処理の対象となる鋼材を用いて予め実験により求めた数値、実験データとして報告されているデータから取得してもよい。式(4)に含まれるオーステナイト中の炭素の易動度mγは、熱力学データベース及び拡散データベースを用いた熱力学計算により取得してもよい。式(3)及び(4)に含まれる炭素濃度Cは、拡散シミュレーションにより経時的に求められる値である。
(迷宮度の設定)
上述の式(3)、式(4)による鋼材中の拡散係数の計算では、オーステナイト単相が連続した状態を仮定しているため、オーステナイト及び炭化物を含む複相領域を含む鋼材を対象とする場合、解析をより厳密にするため、複相領域において下記式(5)に示す迷宮度(labyrinth factor)λ(ただし、λ≠1)を式(3)、式(4)の右辺に乗算し、鋼材中の炭素の拡散係数Dを算出してもよい。「解析をより厳密にするため(中略)算出してもよい」であるから、迷宮度λを乗算することは必須ではない。なお、単相領域では、λ=1である。
なお、数学的に自明であるが、式(3)または式(4)の右辺に迷宮度λを乗算せずに、式(1)の右辺に迷宮度λを乗算してもよい。
また、式(3)または式(4)の右辺に迷宮度λを乗算せずに、式(2)の右辺に迷宮度λを乗算してもよい。
式(5)に含まれるパラメータの定義は、以下の通りである。
λ:迷宮度[-]である。
γ:オーステナイトの体積分率[-]であり、熱力学計算により計算してよい。
n:整数である。一般的には、nは1または2であるが、解析精度が担保されれば3以上の整数であってもよい。解析精度を担保できる整数の上限は、鋼材の種類等によって異なるため一義的に定義することはできない。
(拡散シミュレーションでの計算方法)
浸炭処理の対象となる鋼材の表層を複数のセルで区分したメッシュデータを作成する。各セルのサイズは適宜設定することができ、例えば、1~500μmとすることができる。また、セルのサイズは、均等のサイズにすることもできるし、鋼材の表面から内部に向かって徐々に大きくする(言い換えれば、鋼材の内部から表面に向かって徐々に小さくする)こともできる。メッシュ・要素の種類は特に限定されないが、例えば、二次元では、三角形、四角形、三次元では、四面体、六面体などが存在しており、適宜選択することができる。また、一次要素・二次要素のどちらを利用してもよい。
浸炭処理時に一次元方向に炭素が拡散する部位・形状(例えば平坦部)を対象とする場合には、一次元でモデル化してもよい。鋼材の形状が丸棒又は円筒である場合には、メッシュデータを円筒座標系とすることで一次元として取り扱うことができる。
浸炭処理時に二次元または三次元方向に炭素が拡散する鋼材(例えばエッジ形状部を有する鋼材)を対象とする場合には、二次元または三次元でのモデル化を必要とする。切欠付き丸棒試験片などの軸対象形状の鋼材を対象とする場合には、メッシュデータを円筒座標系とすることで二次元として取り扱ってもよい。
拡散シミュレーションの解析時間(ステップ時間)は特に限定されないが、例えば、0.001~1.0秒とすることができる。
減圧浸炭の浸炭期における鋼材表面においては、黒鉛と平衡状態であるとする。そこで、浸炭処理の対象となる鋼材の炭素を除く化学組成に基づいて、浸炭温度における、黒鉛と平衡状態での平衡相及び平衡組成を、周知の熱力学計算により求める。熱力学計算により求めた平衡相及び平衡組成により、鋼材中の炭素濃度、オーステナイト中の固溶C濃度、オーステナイトの体積分率、及び、オーステナイト中の炭素の活量係数を特定できる。
一方、減圧浸炭の拡散期など鋼材表面からの炭素侵入が起きない期間は、閉鎖系とする。
鋼材表面や鋼材内部において、浸炭処理によってセメンタイト(θ)が析出する場合がある。この場合、鋼材中の炭素が、セメンタイトとオーステナイトとに分配される。そこで、その時の温度及びその位置の化学組成における、鋼材中の平衡相及び平衡組成を、上述の熱力学計算により求め、オーステナイト中の固溶C濃度、オーステナイトの体積分率、及び、オーステナイト中の炭素の活量係数を特定できる。
鋼材のオーステナイト中の炭素の拡散係数Dγは、浸炭処理の対象となる鋼材を用いて予め実験により求めた数値を利用してもよいし、実験データとして報告されているデータを用いてもよい。鋼材中のオーステナイト中の炭素の易動度mγは、たとえば、熱力学データベース及び拡散データベースを用いた熱力学計算から求めることができる。
なお、オーステナイト中の拡散係数Dγは、式(3)から鋼材中の拡散係数Dを求める場合に必要となる。たとえば、オーステナイト中の炭素の拡散係数Dγとして、上述の非特許文献1に示された下記式(6)を用いてもよい。
式(6)に含まれるパラメータの定義は、以下の通りである。
γ:オーステナイト中の拡散係数[μm/s]である。
γ:オーステナイト中の炭素濃度である。
炭素濃度Cγは、モル濃度[mol%](もしくは[-])であってもよいし、質量濃度[mass%](もしくは[-])であってもよい。
T:温度[K]である。
拡散方程式に基づいたシミュレーションを実施するための数値解析手法は、差分法、有限要素法、有限体積法などが挙げられ、特に限定されない。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態で説明した式(1)~式(4)を補正して、拡散シミュレーションを行うことにより、浸炭処理を施した鋼材中の炭素濃度を解析するときの精度を、より担保しやすくなる。以下、拡散シミュレーションを補正する方法について、図1のフローチャートを用いて説明する。
ステップS101では、拡散シミュレーションに基づいて、浸炭処理(例えば、減圧浸炭処理)を行ったとしたときの鋼材の内部における炭素濃度の分布を解析する。拡散シミュレーションに対して浸炭処理の条件(温度や時間)を適用することにより、炭素濃度の分布を解析することができる。
ステップS102では、鋼材に対して浸炭処理を行った後、この鋼材の内部における炭素濃度の分布を測定する。ステップS102の処理で用いられる鋼材は、ステップS101の処理で用いられる鋼材と同じであり、ステップS102の処理で用いられる浸炭処理の条件は、ステップS101の処理で用いられる浸炭処理の条件と同じである。浸炭処理で用いられる浸炭ガスとしては、例えば、アセチレンを用いることができる。炭素濃度の測定方法としては、公知の測定方法を適宜採用することができ、例えば、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて鋼材中の炭素濃度の分布を測定することができる。
なお、ステップS101及びステップS102の処理を行う順序は、特に限定されない。
ステップS103では、ステップS101の処理で解析した炭素濃度の分布と、ステップS102の処理で測定した炭素濃度の分布との誤差Ecが閾値Eth以下となるように、ステップS101の処理で用いた拡散シミュレーションを補正するための補正係数k[-]を決定する。
誤差Ecとしては、例えば、平均絶対誤差(MAE)や平均二乗誤差(MSE)を用いることができる。閾値Ethは、補正係数kを設定しない場合の炭素濃度の解析精度を考慮して適宜設定することができる。ここで、閾値Ethが小さいほど、炭素濃度の解析精度を向上させることができる。例えば、エッジ形状の鋼材を解析対象とする場合、閾値Ethを18%以下とすることで、解析精度を向上することができる。また、閾値Ethは15%以下が望ましく、13%以下が更に望ましい。
上述したように、拡散シミュレーションで用いられる拡散方程式(式(1)及び式(2)に対応する)及び鋼材中の拡散係数Dの計算式(式(3)及び(4)に対応する)には、炭素の拡散流速J、拡散係数D、Dγ、及び易動度mγが含まれるが、これらのパラメータの少なくとも1つに対して補正係数kを乗算することにより、拡散シミュレーションを補正することができる。補正係数kは、0よりも大きく、1よりも小さい値である。浸炭処理によって形成された鋼材中の炭化物の析出領域において、前述の補正係数kが設定されることは言うまでもない。
補正係数kを任意に設定した上で拡散シミュレーションに基づいて炭素濃度を解析し、誤差Ecを求める。この誤差Ecが閾値Eth以下であれば、この誤差Ecが得られたときの補正係数kを、拡散シミュレーションを補正するための補正係数kとして決定する。一方、誤差Ecが閾値Ethよりも大きければ、補正係数kを設定し直した上で拡散シミュレーションに基づいて炭素濃度を解析し、誤差Ecを求める。そして、誤差Ecが閾値Eth以下になるまで、補正係数kを探索し続ける。
ステップS104では、ステップS103の処理で決定した補正係数kを用いて拡散シミュレーションを補正する。具体的には、拡散シミュレーションに組込まれているパラメータ(拡散流束J、拡散係数D、Dγ、易動度mγ)に対して、決定した補正係数kを乗算して、拡散シミュレーションを補正し、この補正後の拡散シミュレーションを用いて、浸炭処理された鋼材中の炭素濃度を解析する。
ここで、浸炭条件、鋼材の形状(部位)、鋼種が変化した場合でも、予め求めた前述の補正係数kを用いて拡散シミュレーションを補正することができる。ただし、浸炭条件、鋼材の形状(部位)、鋼種毎にステップS101~S103の処理を実施して、それぞれに対応した補正係数kを決定したほうが、解析精度は向上する。
本実施形態によれば、拡散シミュレーションを補正することにより、浸炭処理による鋼材中の炭素濃度を解析するときの精度を担保しやすくなる。特に、後述する実施例から理解できるように、炭化物が析出しない単相領域だけでなく、例えば、オーステナイト及び炭化物を含む複相領域においても、炭素濃度の分布を精度良く解析することができる。
(拡散シミュレーションの補正)
上述したように拡散シミュレーションを補正する場合には、上記の拡散方程式や鋼材中の拡散係数の計算式に含まれる拡散流束J、拡散係数D、Dγ及び易動度mγのうち少なくとも一つに対して補正係数kを乗算する。下記式(1a),(2a),(3a),(4a)はそれぞれ、上記式(1),(2),(3),(4)のパラメータ(拡散流束J、拡散係数D、Dγ、易動度mγ)に補正係数kを乗算した式である。
式(1)、式(2)及び式(3)を用いて、炭素濃度の分布を解析するときは、式(1a)、式(2a)及び式(3a)に示すように拡散係数D,Dγ及び拡散流束Jのうち少なくとも一つに補正係数kを乗算する。
「少なくとも一つ」であるから、式(1a)、式(2)及び式(3)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2a)及び式(3)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2)及び式(3a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2a)及び式(3)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2a)及び式(3a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2)及び式(3a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2a)及び式(3a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよい。各式に含まれる補正係数kは異なる値を用いてもよい。
式(1)、式(2)及び式(4)を用いて、炭素濃度の分布を解析するときは、式(1a)、式(2a)及び式(4a)に示すように拡散係数D、易動度mγ及び拡散流束Jのうち少なくとも一つに補正係数kを乗算する。
「少なくとも一つ」であるから、式(1a)、式(2)及び式(4)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2a)及び式(4)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2)及び式(4a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2a)及び式(4)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1)、式(2a)及び式(4a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2)及び式(4a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよいし、式(1a)、式(2a)及び式(4a)を用いて炭素濃度の分布を解析してもよい。各式に含まれる補正係数kは異なる値を用いてもよい。
言うまでもないが、第1実施形態の「迷宮度」に関する記載は、第2実施形態に援用することができる。
(第1実施例)
第1実施例は、第1実施形態に対応する実施例である。
(鋼材サンプル・浸炭条件)
減圧浸炭処理に供される鋼材として、下記表に示す組成の鋼材サンプルを準備した。
図2は鋼材サンプルの斜視図である。同図を参照して、鋼材サンプルは、台形断面の角柱形状(エッジ形状部を有する鋼材)とした。台形断面の長辺L、短辺S及び高さHはそれぞれ、16[mm]、10[mm]及び10[mm]とした。角柱長さKは、50[mm]とした。台形断面は、2角が90°、1角がα(60°)とした。
減圧浸炭処理として、減圧した加熱炉内で鋼材サンプルを浸炭温度まで加熱する加熱工程と、浸炭温度で鋼材サンプルを均熱する均熱工程と、炉内に浸炭ガス(アセチレンガス)を導入して浸炭温度で鋼材サンプルを浸炭処理する浸炭工程と、侵入した炭素を鋼材サンプル中に拡散させる拡散工程と、鋼材サンプルの温度を保持温度まで降温する降温工程と、保持温度で鋼材サンプルの温度を保持する保持工程と、をこの順序で実施した。なお、浸炭工程以外の工程では、浸炭ガスを導入しなかった。減圧浸炭処理の条件として、下記表に示す減圧浸炭処理条件Aを設定した。
(炭素濃度の測定)
鋼材サンプルに対して上述の浸炭条件で減圧浸炭処理を行い、処理後の鋼材サンプルのそれぞれについて、炭素濃度(実測値)を測定した。
図3は鋼材サンプルの断面図である。同図を参照して、鋼材サンプルの角柱長さ方向中央(つまり、図2の長さKの中央)における断面を検査位置として、矢印で示す測定方向MDに向かって、炭素濃度を測定した。測定方向MDは二方向とした。具体的には、断面の直角部(以下、「90°角部」ともいう)を二等分する線を測定方向MDとし、断面の角度αの角部(以下、「60°角部」ともいう)を二等分する線を測定方向MDとした。
なお、測定方向MDはいずれもエッジ頂点(台形断面の頂点)を通過することは、言うまでもない。
(拡散シミュレーション)
以下、拡散シミュレーションにおけるモデリング方法について説明する。本実施例では、上述の式(1)の拡散方程式(鋼材中の炭素濃度の勾配を駆動力とした拡散方程式)を用いて炭素の拡散流束Jを計算するプログラムが組み込まれた公知の有限要素法に基づく解析ソフトウェア(市販品)を使用した。
(I)メッシュデータ
90°角部及び60°角部に対してエッジ頂点から半径6[mm]以内を含む領域の2次元断面をモデル化し、鋼材表面でのメッシュが最も細かくなるようにメッシュデータを作成した。具体的には、メッシュのサイズを1~500[μm]の範囲内で設定した。メッシュの種類は、四角形メッシュとした。
(II)境界条件
減圧浸炭処理の浸炭期(浸炭工程)では、鋼材の表面に相当する位置において、熱力学計算により得られるグラファイトと平衡時の炭素濃度を与えた。また、拡散期(拡散工程)以降の時間では、鋼材の表面から炭素の浸入はないものとみなし、閉鎖系とした。
(III)設定温度
減圧浸炭処理の温度条件としては、上記の減圧浸炭条件に示す温度を計算モデルにて設定した。ただし、計算簡便化のために、降温工程における温度を880[℃]に固定して、解析モデルにて設定した。
(IV)鋼材中の拡散係数D
鋼材中の拡散係数Dは式(3)または式(4)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。式(3)、(4)に含まれるオーステナイト中の炭素濃度Cγ、オーステナイト中の活量係数γγは、鋼材中の各位置における成分、及び上記(III)で記述した設定温度から熱力学計算により算出される値を用いた。オーステナイト中の拡散係数Dγは式(6)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。オーステナイト中の炭素の易動度mγは、熱力学データベースと拡散データベースを用いた熱力学計算により算出される値を用いた。
(V)迷宮度(labyrinth factor)
迷宮度は式(5)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。つまり、式(5)に基づき計算した迷宮度を、式(3)または式(4)の右辺に乗算し、鋼材中の拡散係数Dを計算した。
式(5)に含まれるオーステナイトの体積分率Vγは、熱力学計算により計算される値を用いた。nは2に設定した。
(VI)熱力学計算
熱力学計算は、市販の熱力学計算ソフトウェアThermo-Calcを用いて行った。計算には市販の熱力学データベースTCFE10と拡散データベースMOBFE1を使用した。
(VII)補正係数k
本実施例では、第1実施形態に対応するため、補正係数kを乗算した解析を行わなかった。
下記表3に、実施例及び比較例の条件をまとめた。なお、比較例1と3では、鋼材中の拡散係数Dをオーステナイト中の拡散係数の式(6)によって計算される値(つまり、拡散係数Dγ)とし、シミュレーションを行った。比較例2と4では、鋼材中の拡散係数Dを定数(43μm2/s)とし、シミュレーションを行った。なお、この定数は、文献値に基づくものである。
図4及び図5は、シミュレーション結果である。なお、本浸炭条件における表層の状態は、浸炭工程で析出した粗大炭化物が拡散工程で固溶し、粗大炭化物が残存していない状態となっている。実施例1~4から明らかなように、式(3)または(4)により鋼材中の拡散係数を計算し、鋼材中の炭素濃度勾配を駆動力とした拡散方程式に基づく拡散シミュレーションを実施することで、炭素濃度分布の解析精度が向上することがわかった。
(第2実施例)
第2実施例は、第1実施形態及び第2実施形態に対応する実施例である。
(鋼材サンプル・浸炭条件)
減圧浸炭処理に供される鋼材組成、及びサンプル形状は第1実施例と同じにした。減圧浸炭処理として、減圧した加熱炉内で鋼材サンプルを浸炭温度まで加熱する加熱工程と、浸炭温度で鋼材サンプルを均熱する均熱工程と、炉内に浸炭ガス(アセチレンガス)を導入して浸炭温度で鋼材サンプルを浸炭処理する浸炭工程と、侵入した炭素を鋼材サンプル中に拡散させる拡散工程と、鋼材サンプルの温度を保持温度まで降温する降温工程と、保持温度で鋼材サンプルの温度を保持する保持工程と、をこの順序で実施した。なお、浸炭工程以外の工程では、浸炭ガスを導入しなかった。減圧浸炭処理の条件として、下記表に示す減圧浸炭処理条件B及び減圧浸炭処理条件Cを設定した。
(炭素濃度の測定)
鋼材サンプルに対して上述の浸炭条件で減圧浸炭処理を行い、減圧浸炭処理後における鋼材サンプルのそれぞれにおいて、炭素濃度(実測値)を測定した。
炭素濃度の測定方法は第1実施例と同じにした。
(拡散シミュレーション)
以下、拡散シミュレーションにおけるモデリング方法について説明する。本実施例では、上述の式(1)の拡散方程式(鋼材中の炭素濃度の勾配を駆動力とした拡散方程式)を用いて炭素の拡散流束を計算するプログラムが組み込まれた公知の有限要素法に基づく解析ソフトウェア(市販品)を使用した。
(I)メッシュデータ
第1実施例と同じにした。
(II)境界条件
第1実施例と同じにした。
(III)設定温度
第1実施例と同じにした。
(IV)鋼材中の拡散係数D
鋼材中の拡散係数Dは式(3)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。式(3)に含まれるオーステナイト中の炭素濃度Cγは、鋼材中の各位置における成分、及び上記(III)で記述した設定温度から熱力学計算により算出される値を用いた。オーステナイト中の拡散係数Dγは式(6)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した
(V)迷宮度(labyrinth factor)
迷宮度は式(5)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。つまり、式(5)に基づき計算した迷宮度を、式(3)の右辺に乗算した。
式(5)に含まれるオーステナイトの体積分率Vγには、熱力学計算により計算される値を用いた。nは2に設定した。
(VI)熱力学計算
第1実施例と同じにした。
(VII)誤差の計算
測定方向MDに沿って、60°角部または90°角部のエッジ頂点から0.25[mm]までの範囲における炭素濃度の解析値と実測値の平均絶対誤差(MAE)を計算した。
(VIII)補正係数kの設定
実施例5では、補正係数kは設定しなかった。つまり、実施例5は、第1実施形態に対応しており、式(1)、式(2)及び式(3)を用いて、炭素濃度の分布を解析した。
実施例6~8では、炭化物が固溶する拡散期(拡散工程)以降の時間において、浸炭期(浸炭工程)に炭化物が析出した領域で補正係数kを設定した。補正係数は、実施例6に示す条件にて解析精度が向上するように決定した。具体的には平均絶対誤差(MAE)が17%以下となるように補正係数(0.77)を決定した。
なお、補正係数kは、式(3)の右辺にのみ乗算した。つまり、式(1)、式(2)及び式(3a)を用いて、炭素濃度の分布を解析した。
図6乃至図9は、シミュレーション結果である。なお、本浸炭条件における表層の状態は、浸炭工程で析出した粗大炭化物が拡散工程以降で一部固溶しているものの、残存した状態となっている。表面近傍の炭素濃度が著しく高い範囲は、粗大炭化物が残存している範囲と対応する。実施例5~8の炭素濃度分布の解析結果から明らかなように、本実施のシミュレーションは炭素濃度分布の解析精度に優れることがわかった。また、実施例5の解析結果から分かるように、補正係数を設定していない場合でも、粗大炭化物が残存していない範囲(例えば、実施例5ではエッジ頂点から約0.3mmより鋼材内部の範囲)では、高い精度で炭素濃度分布を解析できることがわかった。更に、補正係数kにより補正した実施例6~8のシミュレーションは、粗大炭化物の残存範囲に対応する表面近傍の炭素濃度が高い領域においても、高い精度で炭素濃度分布を解析できることがわかった。
(第3実施例)
第3実施例は、第1実施形態及び第2実施形態の中の迷宮度λの設定が第1実施例及び第2実施例と異なる場合に対応する実施例である。
(鋼材サンプル・浸炭条件)
減圧浸炭処理に供される鋼材組成、及びサンプル形状は第1実施例及び第2実施例と同じにした。減圧浸炭条件は、第1実施例、第2実施例に記載の減圧浸炭処理条件A、減圧浸炭処理条件B及び減圧浸炭処理条件Cのいずれかとした。
(炭素濃度の測定)
第1実施例と同じにした。
(拡散シミュレーション)
以下、拡散シミュレーションにおけるモデリング方法について説明する。本実施例では、上述の式(1)の拡散方程式(鋼材中の炭素濃度の勾配を駆動力とした拡散方程式)を用いて炭素の拡散流束を計算するプログラムが組み込まれた公知の有限要素法に基づく解析ソフトウェア(市販品)を使用した。
(I)メッシュデータ
第1実施例と同じにした。
(II)境界条件
第1実施例と同じにした。
(III)設定温度
第1実施例と同じにした。
(IV)鋼材中の拡散係数D
鋼材中の拡散係数Dは式(3)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。式(3)に含まれるオーステナイト中の炭素濃度Cγは、鋼材中の各位置における成分、及び上記(III)で記述した設定温度から熱力学計算により算出される値を用いた。オーステナイト中の拡散係数Dγは式(6)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した
(V)迷宮度(labyrinth factor)
実施例9~12では、迷宮度λは設定しなかった。
実施例13~16では、迷宮度は式(5)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。つまり、式(5)に基づき計算した迷宮度を、式(3)の右辺に乗算した。式(5)に含まれるオーステナイトの体積分率Vγには、熱力学計算により計算される値を用いた。nは1に設定した。
実施例17~24では、迷宮度は式(5)に基づき計算し、拡散シミュレーションに使用した。つまり、式(5)に基づき計算した迷宮度を、式(3)の右辺に乗算した。式(5)に含まれるオーステナイトの体積分率Vγには、熱力学計算により計算される値を用いた。nは5または8に設定した。
(VI)熱力学計算
第1実施例と同じにした。
(VII)誤差の計算
実施例10~12、実施例14~16、実施例18~20、及び実施例22~24のエッジ部の頂点近傍に粗大炭化物が残存した条件においてのみ、第2実施例と同じ条件にて計算した。
(VIII)補正係数kの設定
実施例9、実施例10、実施例13、実施例14、実施例17、実施例18、実施例21、及び実施例22では、補正係数kは設定しなかった。つまり、これら実施例は、第1実施形態に対応しており、式(1)、式(2)及び式(3)を用いて、炭素濃度の分布を解析した。
実施例11、実施例12、実施例15、及び実施例16では、炭化物が固溶する拡散期(拡散工程)以降の時間において、浸炭期(浸炭工程)に炭化物が析出した領域で補正係数kを設定した。補正係数は、実施例11または実施例15に示す条件にて解析精度が向上するように決定した。具体的には、実施例11では、平均絶対誤差(MAE)が11%以下となるように補正係数(0.83)を決定した。実施例15では、平均絶対誤差(MAE)が18%以下となるように補正係数(0.83)を決定した。
実施例19、実施例20、実施例23、及び実施例24では、炭化物が固溶する拡散期(拡散工程)以降の時間において、浸炭期(浸炭工程)に炭化物が析出した領域で補正係数kを設定した。補正係数は、実施例19または実施例23に示す条件にて解析精度が向上するように決定した。具体的には、実施例19では、平均絶対誤差(MAE)が40%以下となるように補正係数(0.50)を決定した。実施例23では、平均絶対誤差(MAE)が40%以下となるように補正係数(0.37)を決定した。
なお、補正係数kは、式(3)の右辺にのみ乗算した。つまり、式(1)、式(2)及び式(3a)を用いて、炭素濃度の分布を解析した。
図10乃至図25は、シミュレーション結果である。なお、実施例10~12、実施例14~16、実施例18~20、及び実施例22~24における角部頂点近傍の状態は、浸炭工程で析出した粗大炭化物が拡散工程以降で一部固溶しているものの、残存した状態となっている。実施例9、実施例13、実施例17、及び実施例21においては浸炭工程で析出した粗大炭化物が拡散工程で固溶し、粗大炭化物が殆ど残存していない状態となっている。従って、炭素濃度が著しく高い範囲は、粗大炭化物が残存している範囲と対応する。実施例9~24の炭素濃度分布の解析結果から明らかなように、本実施例のシミュレーションは、比較例よりも、炭素濃度分布の解析精度に優れることがわかった。
また、実施例9、実施例10、実施例13、実施例14、実施例17、実施例18、実施例21、及び実施例22の解析結果から分かるように、補正係数を設定していない場合でも、粗大炭化物が残存していない範囲(例えば、実施例10ではエッジ頂点から約0.3mmより鋼材内部の範囲)では、高い精度で炭素濃度分布を解析できることがわかった。加えて、補正係数kにより補正した実施例11、実施例12、実施例15、実施例16、実施例19、実施例20、実施例23、及び実施例24のシミュレーションは、粗大炭化物の残存範囲に対応する表面近傍の炭素濃度が高い領域において、補正係数を設定していない場合と比較して、更に高い精度で炭素濃度分布を解析できることがわかった。
第2実施例と第3実施例の解析結果から分かるように、迷宮度の設定の有無や迷宮度の中の整数nの値に関わらず、比較例よりも高い精度で解析できることがわかった。すなわち、迷宮度における整数nは一般的な値である1や2に限定されるものではなく、より大きな整数であっても必要な解析精度(つまり、比較例よりも高い解析精度)が担保される。整数nの上限については、鋼種成分によって変化する炭化物の形成度合い等により異なるため、一義的に定義することはできない。整数nは、必要な解析精度が得られるように、適宜設定すればよい。
L 長辺
S 短辺
H 高さ
K 角柱長さ

Claims (3)

  1. 浸炭処理された鋼材中の炭素濃度分布を、拡散方程式を用いて解析する方法であって、
    鋼材中には、前記浸炭処理によって炭化物が形成されており、
    鋼材は、オーステナイト及び炭化物を含む複相領域を含有しており、
    前記拡散方程式は、下記式(I)及び下記式(II)で表され、
    下記式(I)におけるDを、下記式(III)又は下記式(IV)から算出することを特徴とする炭素濃度分布の解析方法。
    Figure 0007697102000015

    上記式(I)において、Jは炭素の拡散流束であり、Dは鋼材中の炭素の拡散係数であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、gradは位置の勾配である。
    上記式(II)において、Cは鋼材中の炭素濃度であり、tは時間であり、divは発散であり、Jは炭素の拡散流束である。
    上記式(III)において、Dγはオーステナイト中の炭素の拡散係数であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、Cγはオーステナイト中の炭素濃度である。
    上記式(IV)において、mγはオーステナイト中の炭素の易動度であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Cは鋼材中の炭素濃度であり、Cγはオーステナイト中の炭素濃度であり、γγはオーステナイト中の炭素の活量係数[-]である。
  2. 前記浸炭処理によって形成された鋼材中の炭化物の析出領域において、式(I)の拡散係数D、式(II)の拡散流束J、式(III)の拡散係数Dγ、式(IV)の易動度mγのうち少なくとも一つに補正係数を乗算し、
    前記補正係数は、前記拡散方程式から解析される前記炭素濃度の分布と、予め測定した前記炭素濃度の分布との誤差が閾値以下となる条件を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の炭素濃度分布の解析方法。
  3. 式(I)のDを式(III)から算出する場合、式(I)、式(II)及び式(III)のうちいずれかの右辺に、下記式(V)で表される迷宮度λを乗算し、
    式(I)のDを式(IV)から算出する場合、式(I)、式(II)及び式(IV)のうちいずれかの右辺に、下記式(V)で表される迷宮度λを乗算する、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素濃度分布の解析方法。
    Figure 0007697102000016
    γはオーステナイトの体積分率[-]であり、nは整数である。


JP2024074807A 2023-06-27 2024-05-02 炭素濃度分布の解析方法 Active JP7697102B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2024/022818 WO2025005044A1 (ja) 2023-06-27 2024-06-24 浸炭処理された鋼材中の炭素濃度分布の解析方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2023105092 2023-06-27
JP2023105092 2023-06-27

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2025005383A JP2025005383A (ja) 2025-01-16
JP7697102B2 true JP7697102B2 (ja) 2025-06-23

Family

ID=94227253

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2024074807A Active JP7697102B2 (ja) 2023-06-27 2024-05-02 炭素濃度分布の解析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7697102B2 (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016172898A (ja) 2015-03-17 2016-09-29 株式会社豊田中央研究所 浸炭解析装置及び浸炭解析方法
WO2021039911A1 (ja) 2019-08-29 2021-03-04 日本製鉄株式会社 真空浸炭処理方法及び浸炭部品の製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016172898A (ja) 2015-03-17 2016-09-29 株式会社豊田中央研究所 浸炭解析装置及び浸炭解析方法
WO2021039911A1 (ja) 2019-08-29 2021-03-04 日本製鉄株式会社 真空浸炭処理方法及び浸炭部品の製造方法

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
藤堂 尚二 ほか,真空浸炭の利用技術開発,新日鉄住金技報,2016年,第406号,p.13-18

Also Published As

Publication number Publication date
JP2025005383A (ja) 2025-01-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Seo et al. Kinetics of the partitioning of carbon and substitutional alloying elements during quenching and partitioning (Q&P) processing of medium Mn steel
Turpin et al. Carbon diffusion and phase transformations during gas carburizing of high-alloyed stainless steels: Experimental study and theoretical modeling
CN118821524B (zh) 利用热处理数值改进渗碳淬火热处理形性调控工艺的方法
CN117669086B (zh) 一种钢制齿轮表面热处理强化的模拟实验方法
WO2025005044A1 (ja) 浸炭処理された鋼材中の炭素濃度分布の解析方法
Hassani-Gangaraj et al. Microstructural evolution during nitriding, finite element simulation and experimental assessment
Shi et al. HAZ microstructure simulation in welding of a ultra fine grain steel
Cavaliere et al. Multi-objective optimization of steel nitriding
JP7697102B2 (ja) 炭素濃度分布の解析方法
Galdikas et al. Modeling of stress induced nitrogen diffusion in nitrided stainless steel
Xu et al. Microstructural evolution and corrosion behavior of GH3536 superalloy fabricated by laser metal deposition following different aging heat treatments
JP7595701B2 (ja) 炭素濃度分布の解析方法
Keddam Surface modification of the pure iron by the pulse plasma nitriding: Application of a kinetic model
Fernández-Vicente et al. Deformation behavior during hot torsion of an ultrahigh carbon steel containing 1.3 wt.% C
WO2024090229A1 (ja) 炭素濃度分布の解析方法
Eremin et al. Microstructure-based finite-difference analysis of the plastic flow in low-carbon steel
Schwenk et al. Experimentally validated residual stresses and distortion prediction for dual frequency induction hardening
Bourke et al. Complementary X-ray and neutron strain measurements of a carburized surface
Kajihara Analysis for kinetics of ferrite growth due to isothermal decarburization of austenite in the binary Fe–C system
Deng et al. Finite element modeling and experimental verification of nitriding process in S30C steel
Eiumtadanai et al. Deformation and corrosion resistance of sintered AISI 303 austenitic stainless steel after hot forging
Campbell et al. Examination of multicomponent diffusion between two Ni-base superalloys
Djafri et al. Simple model and integral method for simulating the growth of the borided layer FeB/Fe2B on the AISI H13 steel
Amatanweze et al. Residual stress distribution, distortion, and crack initiation in conventional and intensive quench practices
Song et al. Numerical and experimental study on the residual stresses in the nitrided steel

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20241114

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20241114

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20250212

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20250310

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20250610

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20250611

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7697102

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150