JP7539423B2 - 少なくとも部分的に水に沈められる人工物体の外面にコーティングを塗布する方法 - Google Patents

少なくとも部分的に水に沈められる人工物体の外面にコーティングを塗布する方法 Download PDF

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Description

本発明は、少なくとも部分的に水に沈められる人工物体(man-made object)の外面にコーティング(coating)を塗布する方法に関する。より詳細には、本発明は、コーティングを塗布する方法であって、そのコーティングが、コーティングのセット(set of coatings)の中で最小の抵抗等級(minimal resistance rating)を有し、外面の全粗さ値(total roughness value)が、コーティングのセットの中のそれぞれのコーティングについて、ファウリング粗さ値(fouling roughness value)、マクロ粗さ値(macro roughness value)およびミクロ粗さ値(micro roughness value)に基づいて計算される、方法に関する。
船舶(ship)および艇(boat)の船体(hull)および艇体(hull)、その他の船、ブイ、掘削プラットホーム、石油生産掘削装置(oil production rig)などの少なくとも部分的に水に沈められる人工物体には、スライム(slime)、緑藻および褐藻、フジツボ、イガイなどの水生生物によるファウリング(fouling:汚染)が生じやすい。このような構造物は一般的に金属でできているが、コンクリート、木材などの他の構造材料を含むこともある。このファウリングは艇体上の厄介物である。これは、ファウリングが、水を押し分けて移動している間の摩擦抵抗を増大させ、その結果、速度を低下させ、燃料費を増大させるためである。ファウリングは、掘削プラットホームおよび石油生産掘削装置の脚などの静止構造物上の厄介物である。これは、第1に、ファウリングの厚い層は、波および流れによって誘起される構造物の流体力学的な力を、潜在的に危険なレベルにまで予測不能に増大させうるためであり、第2に、ファウリングが、応力亀裂や腐食などの欠陥に関する構造物の検査を難しくするためである。
このような沈められた人工物体を規則的な時間間隔で保守することが、物体の寿命および運航効率を最大化するための鍵である。例えば、商業的海運について言えば、水線下の(underwater)船体の保守は通常、船(vessel)の乾ドック入渠(dry docking)中に実行される。進水と最初の乾ドック入渠との間の期間または後続の乾ドック入渠と乾ドック入渠との間の期間は乾ドックサイクルと呼ばれる。この乾ドックサイクルは通常、3年から5年だが、これよりも長いことも短いこともある。加えて、プロペラおよび推進系のより規則正しい保守が実行されることもある。
沈められるこれらの人工物体の保守に関して、物体の外面にコーティングを塗布することが知られている。例えば、船舶および艇について言えば、建造工程中および後続の乾ドック入渠時にコーティングを塗布して、船の摩擦抗力または摩擦抵抗を制限することができる。コーティングは通常、船体の表面を滑らかにし、海洋生物によるファウリングを防き、それによって船体の実効粗さを低減させ、船舶が水を押し分けて移動するときの船舶の抵抗を減らす。同様に、プロペラおよび他の外面にコーティングが塗布されることもある。抵抗をうまく低減させることが、結果的に、船の運航業者にとって大きな利点となる可能性がある。抵抗を低く維持すると、航行速度が速くなる、燃料費が安くなる、環境危険物質、例えば温室効果ガスまたはポリ芳香族炭化水素微粒子の放出量が減るなどの利点の組合せが得られることがある。例えば、船体およびプロペラの状態が非常に悪い船舶、すなわち重度のファウリングを有する船舶は、状態の良い同等の船舶、すなわち比較汚れが少ない滑らかな同等の船舶と同じ速度で航行したときに、燃料を40%多く消費し、温室効果ガスを40%多く放出する。
海洋掘削ステーションなどの少なくとも部分的に水に沈められた動かない人工物体の場合には、抵抗が小さくなると、物体の表面を移動している水によって加えられる力が低減
する可能性がある。このことは例えば、物体のより軽量な設計を可能にするであろう。
それ自体のファウリング制御特性をそれぞれが提供する多数のコーティングが使用可能である。長期間にわたって、好ましくは少なくとも後続の乾ドックサイクルの意図された期間の間、抵抗の所望の低減を達成するためには、適当なコーティングまたは適当なコーティングの組合せを選ぶことが、例えば船の所有者にとって不可欠である。
国際公開第2013/092681号パンフレットに記載されているように、選択したコーティングを塗布した後にその船が航行すると予想される領域に関連づけられたファウリングの危険性に基づいて、保護コーティングを選択することができる。この方法は有用だが、改良の余地があることを本出願の出願人は見出した。
欧州特許出願公開第1484700号明細書は、船の水線下の部分でのファウリング剥離コーティング組成物またはファウリング防止コーティング組成物の塗布および使用に関連した費用を決定する方法に関する。この文献に記載された方法は、船の水線下の表面のファウリングの程度を決定または計算することを必要とし、船の予測される追加の燃料費をファウリングの程度に相関させる。この文献に記載された方法の欠点は、予測される追加の燃料費の精度および正確さがあまり高くないことである。したがって、特定の船に対する下地(substrate)の準備とファウリング制御コーティングの選択との最適な組合せを高い信頼性で識別するこの方法の能力は低い。したがって、より精密で正確な改良された方法が求められている。
本発明の目的は、少なくとも部分的に水に沈められる人工物体の外面にコーティングを塗布する改良された新規の方法を開示することにある。
本開示の一態様は、ある期間の間、少なくとも部分的に水に沈められる人工物体(例えば船または海洋掘削ステーション)の外面にコーティングを塗布する方法であって、物体の沈められた表面を横切る水流が存在する方法に関する。塗布されたコーティングは、少なくとも2種類のコーティングからなるセットに対する最小の抵抗等級を有する。
この方法は、コンピュータによって実施されるコーティング選択工程を含み、このコーティング選択工程は、コーティングのセットの中のそれぞれのコーティングについて、それぞれのコーティングに関連づけられたファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値に基づいて、外面の全粗さ値を得る第1のステップを含む。
ファウリング粗さ値は、海洋ファウリング生物の定着に関連した粗さに関係することを理解すべきである。本発明の全体を通じて、ファウリング粗さ値は、海洋ファウリング生物の粗さの実際の物理的尺度ではなく、流体力学の観点からそのファウリングと同じ影響を抗力および流れ構造に対して有すると考えられる物理的な実効粗さの尺度である。
マクロ粗さ値は主に、板の波打ち、板の重なり、溶接の継目、ボルトもしくは他の突起、鋼の輪郭、物体の腐食もしくは損傷などの物体の外面の要素に由来する粗さ要素、ならびに、コーティング粗さ、および流れ(run)、弛み(sag)、過吹付け(overspray)などのコーティング欠陥など、下地の準備およびペイントの塗布工程に由来する粗さ要素に関係することも理解すべきである。
ミクロ粗さ値が、マクロ粗さ値よりも下位の粗さに関係することも理解すべきである。ミクロ粗さ値は主に、コーティング材料の表面に由来する粗さ要素に関係する。
このコーティング選択工程は、第2のステップにおいて、選択されたコーティングがこの期間について、得られた全粗さ値に関連づけられた最小の抵抗等級を有するコーティングを、コーティングのセットの中から選択することを含む。
この方法はさらに、選択されたコーティングを人工物体の外面に塗布することを含む。
この方法は、ファウリング粗さ値、マクロ粗さ値および/またはミクロスケール粗さ値に関係するパラメータの測定または推定を含むことができる。ファウリング粗さ値に関して測定または推定することができるパラメータの例は、コーティング上の生物ファウリングのタイプ、分布、密度およびその期間の成長速度である。
マクロ粗さ値に関して測定または推定することができるパラメータの例は、カットオフ長さ(cut-off length)あたりの振幅パラメータ、空間パラメータおよび混成パラメータ(振幅パラメータと空間パラメータの結合)に関する。適当には、スタイラスプローブプロフィルメータ(stylus probe profilometer)、レーザプロフィルメータまたは白色/青色光干渉計などによって測定されたRt50(すなわちカットオフ長さ50mmでの最も大きな最高最低間高さ(peak to trough height))が、マクロ粗さ値の尺度である。測定は、入渠(新造ならびに保守および修理)中に船体の水線下のエリアに対して実行することができる。ドック内調査について言えば、マクロ粗さ値を測定する前に、高圧真水洗浄を使用してファウリング粗さを除去するのが適当である。甚だしい機械的損傷など一目で分かるエリアが存在する場合には、それらのエリアを調査から除外することができる。
ミクロ粗さ値に関して測定または推定することができるパラメータの例は、カットオフ長さあたりの振幅パラメータ、空間パラメータおよび混成パラメータ(振幅パラメータと空間パラメータの結合)に関する。適当には、Ra(すなわち、カットオフ長さ5mmの評価長さ内で記録された、平均線からのプロフィル高さ(profile height)の偏差の絶対値の算術平均)を使用して、ミクロ粗さ値を測定することができる。あるいは、入渠(新造ならびに保守および修理)中に船体の水線下のエリアの表面インプリント(surface imprint)を生成し、それらの表面インプリントを後に試験室で調べることもできる。測定は、スタイラスプローブプロフィルメータ、レーザプロフィルメータまたは白色/青色光干渉計を使用して実施することができる。
次いで、ファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値に関する測定または推定された全てのパラメータを、それらの3つのパラメータを単純に加算して全粗さ値を得ることを可能にする共通のパラメータに換算して表現することができる。例えば、ファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値を、等価砂粒粗さ高(equivalent sandgrain roughness height)kとして表現することができる。特定の粗さに対する等価砂粒粗さ高は、十分に発達した乱流レジーム内の特定の粗さと同じ粗さ関数(roughness function)を与える密にパックされた均一な砂の高さである。
コーティングを塗布するときには複数のパラメータを考慮すべきであること、および人工物体の外面の全粗さ値は、ファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値に基づいて計算すべきであることを、本出願の出願人は認識した。さらに、それぞれの特定のコーティングは、ファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値に、特定の態様で影響を与えることを本出願の出願人は理解した。例えば、第1のコーティングは、ファウリング粗さ値に対しては非常に肯定的な効果を有するが、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値に対しては非常に否定的な効果を有し、その結果として、おそらくは、全粗さ値に対して全体として否定的な効果を有するとする。一方で、例えば、第2のコーティングは、ファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値に対して中程度の肯定的な効果を有し、その結果として、おそらくは、外面の全粗さ値に対して全体として肯定的な効果を有するとする。この例では、第2のコーティングが最良の選択肢となろう。一実施形態ではさらに、選択工程において、コーティング材料の費用および塗布の費用が考慮される。より具体的には、長い保守間隔および/または燃料節減に関する予想される利益が、コーティング材料またはその塗布に関連した高い費用を上回ると考えられる場合にのみ、最も低い全粗さ値を有するコーティングが選択される。この少なくとも部分的に水に沈められる人工物体は、船舶、艇、もしくは期間の少なくとも一部分の間、水を押し分けて移動することが予想されるその他の船艇などの船、または実質的に動かないと予想される海洋掘削ステーションなどの少なくとも部分的に水に沈められる静止構造物とすることができる。
用語「コーティング(coating)」は、コーティング物質を指すことがあるが、この用語が、コーティングを塗布するために使用される技術またはコーティング方式を指すこともあることを理解すべきである。例えば、コーティングのセットは、2つの異なる技術を使用して塗布された全く同じ2つのコーティング物質を含むことができる。コーティングは、異なるコーティング組成物から準備された多数の層を含むことができる。
期間は、適当な任意の期間、例えば船に関しては乾ドックサイクルとすることができる。乾ドックサイクルは、船の進水とその船の最初の乾ドック入渠の間の期間、または後続の乾ドック入渠と乾ドック入渠の間の期間である。期間は、例えば3年もしくは5年とすることができ、またはこれよりも短くすることも長くすることもできる。
ファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値のうちの少なくとも1つの粗さ値は時間依存性であることがあり、期間の間に変化することがあることを理解すべきである。したがって、外面の計算された全粗さ値も時間依存性であることがあり、期間の間に変化することがある。計算された全粗さ値、ならびにファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値は、複数の値を含むことができ、それらのそれぞれの値は、期間内の特定の時点または時間に関連づけられている。一例として、縦軸が全粗さ値の値、横軸が時間であるグラフ上に、計算された全粗さ値を、曲線としてプロットすることができる。
さらに、コーティングのセットの中のそれぞれのコーティングに対して得られたそれぞれの全粗さ値に基づいて、関連する抵抗等級を計算し、それによって一組の抵抗等級を生成することができることも理解すべきである。選択されたコーティングの最小の抵抗等級は、この一組の抵抗等級の中の最も低い抵抗等級とすることができる。
この最小の抵抗等級は、船が水を押し分けて移動するときのその船の抗力抵抗(drag resistance)を示すことができる。この最小の抵抗等級が、少なくとも部分的に水に沈められた動かない物体が、物体の沈められた表面を横切って移動する水から受ける摩擦力を示すこともある。
本明細書に開示された一実施形態では、それぞれのコーティングに関連づけられたファウリング粗さ値の計算が、以下のステップを含む。第1のステップは、それぞれのコーティングと、期間の間、人工物体が配置されることが予想される少なくとも1つの地理的領域との組合せを、静的ファウリング粗さ値に関連づける粗さデータベースにアクセスすることを含む。
剪断力(例えば約5ノットよりも速い水流)が絶え間なくまたは周期的に加えられる結果としての動的条件下で定着する生物ファウリングは、生物ファウリングのより少ない蓄積、より滑らかな表面、およびより低いファウリング粗さ値を与える。この理由から、静的成長と動的成長の間のファウリング粗さ値の差を考慮するため、粗さ調整係数が導入される。この調整係数は、ファウリング粗さ値を修正する単純な増倍係数である。
静的ファウリング粗さ値は、絶え間ないまたは周期的な剪断力(例えば約5ノットよりも遅い水流)にコーティングされた物体がさらされたときに得られるファウリング粗さ値である。これに対応して、動的ファウリング粗さ値は、絶え間ないまたは周期的な剪断力(例えば約5ノットよりも速い水流)にコーティングされた物体がさらされたときに得られるファウリング粗さ値である。動的条件下で定着するファウリングは、ファウリングのより少ない蓄積、より滑らかな表面、およびより低いファウリング粗さ値を与える。この理由から、静的条件と動的条件の間のファウリング粗さ値の差を考慮するため、ファウリング粗さ値調整係数が導入される。この調整係数は、ファウリング粗さ値を修正する数学的係数である。第2のステップは、静的ファウリング粗さ値を粗さデータベースから取り出すことを含む。第3のステップは、期間中の人工物体の予想される活動を考慮することによって、静的ファウリング粗さ値を動的ファウリング粗さ値に変換することを含む。第4のステップは、この動的ファウリング粗さ値に基づいてファウリング粗さ値を計算することを含む。
国際公開第2013/092681号パンフレットの8ページ22行目から9ページ29行目に開示されているように、粗さデータベースは、複数のコーティングおよび複数の地理的領域を含むことができこと、ならびに粗さデータベースは、コーティングと地理的領域の固有の組合せごとに別個の静的ファウリング粗さ値を含むことができることを理解すべきである。粗さデータベースはさらに経験的データを含むことができる。粗さデータベースはさらに計算されたデータを含むことができる。計算されたデータは補間されたデータであることがある。
期間の間、人工物体が移動し、配置され、または接触することが予想される地理的領域は、期間の間に船が航行することが予想される貿易航路を含むことができる。
人工物体の予想される活動を考慮することは、予想される活動に基づく活動係数を使用することを含むことができる。予想される活動は、船が航行していると予想される期間と船が静止していると予想される期間の比率を含むことができる。活動係数は、通常は、動かない物体のファウリングの程度の方が、移動している物体のファウリングの程度よりも大きくなり、したがって、動かない物体は、より高いファウリング粗さ値を有する危険性を反映するように選択することができる。海洋掘削ステーションなどの動かない物体に関しては、動的ファウリング粗さ値が、静的ファウリング粗さ値と等しくなることがある。
静的ファウリング粗さ値は、特定の1つの時点における予想される静的ファウリング粗さ値を表す1つの値とすることができる。この特定の時点は、期間の終わりとすることができる。例えば、ある船が、地理的領域Iを航行することが予想されており、コーティングのセットの中にコーティングBが含まれており、期間が、5年の乾ドックサイクルであるとする。その場合、IとBの組合せに関連づけられた静的ファウリング粗さ値は、5年の期間の終わりにおける予想される静的ファウリング粗さ値を表す。
動的ファウリング粗さ値も、特定の1つの時点における動的ファウリング粗さ値を表す1つの値を含むことができる。動的ファウリング粗さ値に基づいてファウリング粗さ値を計算することは、時間の経過に伴うファウリング粗さの予想される変化に基づいて複数のファウリング粗さ値を計算することを含むことができる。物体の沈められた表面のファウリングの程度は、沈められた期間に応じて大きくなる。通常は、より長い期間、沈められた物体がより大きなファウリング粗さ値を有するような態様で、物体にファウリングが生じる危険性は、沈められた期間が長くなるにつれて増大する。例えば、時間の経過に伴うファウリング粗さ値の予測される変化は、時間の経過とともにファウリング粗さ値が指数関数的に増大する変化であることがある。あるいは、時間の経過に伴うファウリング粗さ値の予想される変化は、時間の経過とともにファウリング粗さ値が直線的に、段階的にまたは対数関数的に増大する変化であることがある。
この実施形態は、期間中の人工物体の予想される活動を考慮することを可能にする。活動が約100%の人工物体、例えばほとんどの時間、航行している船のファウリングは、活動が約0%の人工物体、例えばほとんどの時間、静止している船または動かない物体のファウリングよりもはるかに少ないと予想することができる。さらに、時間の経過に伴うファウリング粗さ値の予測される変化を適用することによって、期間内の任意の時点のファウリング粗さ値を、動的ファウリング粗さ値に基づいて計算することができ、したがって、時間の経過に伴う複数のファウリング粗さ値の計算を使用して、コーティングを選択することができる。それらの複数の値のそれぞれの値は、期間内の特定の時点におけるファウリング粗さを表す。
開示された別の実施形態では、コーティングのセットの中のコーティングと地理的領域との組合せに関連づけられた少なくとも1つの静的ファウリング粗さ値が予め導出されている。第1のステップは、以前に前記地理的領域内にあり、コーティングが塗布された少なくとも部分的に水に沈められる複数の人工物体のファウリングに関するパラメータを、ファウリングデータベースから取り出すことを含む。第2のステップは、それらのパラメータに基づいて、前記複数の人工物体のうちのそれぞれの人工物体のファウリングスコアを計算し、複数のファウリングスコアを生成することを含む。第3のステップは、それらのファウリングスコアの代表値を計算することを含む。第4のステップは、それらのファウリングスコアの計算された代表値を静的ファウリング粗さ値に関連づけた表から、静的ファウリング粗さ値を得ることを含む。
少なくとも部分的に水に沈められる前記複数の人工物体のファウリングに関するパラメータは、船の乾ドックサイクルなどの選択された期間中に人工物体上で測定されたものとすることができる。沈められた表面に存在する可能性がある異なるタイプのファウリング成長の程度および重大度を考慮するため、ファウリングに関するそれらのパラメータは、いくつかのサブカテゴリ(sub-category)を含むことができる。例えば、これらのサブカテゴリは、軽度のスライムで覆われた外面の百分率、中程度のスライムで覆われた外面の百分率、重度のスライムで覆われた外面の百分率、海藻で覆われた外面の百分率、軽度の動物ファウリングで覆われた外面の百分率、重度の動物ファウリングで覆われた外面の百分率のうちの少なくとも1つの百分率を含むことができる。
ファウリングスコアの代表値を計算することは、ファウリングスコアの算術平均を計算することを含むことができることを理解すべきである。ファウリングスコアの代表値を計算することは、重み付き平均、または中央値、3乗平均値、中点値、最頻値など他のタイプの平均を計算することを含むこともできる。
この実施形態は、コーティングのセットの中のそれぞれのコーティングについて、以前にその地理的領域で水に沈められた人工物体のファウリングに関するパラメータの多数の歴史的測定値の使用を可能にする。それらの実際の測定値に基づいて静的ファウリング粗さ値を立てることによって、より良好な結果を得ることができる。
一実施形態では、前記複数の人工物体が、少なくとも2つのサブグループ(subgroup)に分けられている。それらの少なくとも2つのサブグループのうちのそれぞれのサブグループは、ファウリングスコアの対応するそれぞれの範囲に関連づけられている。対応するそれぞれの範囲は重なっておらず、それぞれのサブグループは、それぞれのサブグループの対応するそれぞれの範囲内のファウリングスコアを有する人工物体だけを含む。サブグループごとに、別個の代表値が計算され、続いて、別個の静的ファウリング粗さ値、別個の動的ファウリング粗さ値、別個のファウリング粗さ値および別個の全粗さ値が計算される。
例えば、前記複数の人工物体が3つのサブグループに分けられているとする。第1のサブグループは例えば、前記複数の人工物体のうちの70パーセントの人工物体を含み、第1のサブグループのそれぞれの人工物体は、第2および第3のサブグループのそれぞれの人工物体よりも低いファウリングスコアを有する。第2のサブグループは例えば、前記複数の人工物体のうちの20パーセントの人工物体を含み、第2のサブグループのそれぞれの人工物体は、第1のサブグループのそれぞれの人工物体よりも高いファウリングスコアを有し、第2のサブグループのそれぞれの人工物体は、第3のサブグループのそれぞれの人工物体よりも低いファウリングスコアを有する。第3のサブグループは例えば、前記複数の人工物体のうちの10パーセントの人工物体を含み、第3のサブグループのそれぞれの人工物体は、第2のサブグループのそれぞれの人工物体よりも高いファウリングスコアを有する。
この実施形態は、これらの3つの異なるサブグループを区別することによって静的ファウリング粗さ値の改良された導出を可能にする。この実施形態は、より高い値の方への、ファウリングスコアの計算された代表値のゆがみ(skew)を防ぐ。このゆがみは、非常に高いファウリングスコアに関連づけられた少数の人工物体によって引き起こされる可能性がある。この実施形態はさらに、コーティングごとに3つの抵抗等級を計算することを可能にする。
一実施形態では、マクロ粗さ値が、初期下地マクロ粗さスコア、コーティングマクロ粗さスコアおよび時間依存マクロ粗さスコアのうちの少なくとも1つの粗さスコアに基づいてマクロ粗さスコアを計算することによって導出される。初期下地マクロ粗さスコアは、コーティングを塗布する前の外面の準備に左右されることがある。船舶、船などの鋼製物体の保守および修理について言えば、スクレーピング、動力工具処理、低圧水または高圧水洗浄、ハイドブラスト処理、研磨材ブラスト処理(abrasive blasting)などの技法を再コーティングの準備として実行することによって、コーティングを塗布するために船体の外面を準備することが、一般的な実際の作業である。外面の準備が、「完全ブラスト処理(full blast)」を含むことがある。完全ブラスト処理では、沈められる外面全体の全てのコーティング層を研磨材ブラスト処理によって除去し、裸の外面を露出させる。この準備が「部分ブラスト処理(partial blast)」であることもある。部分ブラスト処理では、外面の選択されたエリア、例えば既存のコーティングが劣等な状態にあるエリアのコーティング層だけを除去し、それらの選択されたエリアの裸の外面だけを露出させる。外面の準備が、研磨材ブラスト処理によって処理された外面の百分率であることもあることを理解すべきである。例えば、一方の処理の選択エリアが外面全体の50%を占め、もう一方の処理の選択エリアが外面全体の70%を占める2つの部分ブラスト処理を、異なる2つの準備とみなすことができる。この準備が、研磨材ブラスト処理によって外面を処理しないものであることもある。新造船に関しては、コーティングの準備として船体の外面を完全ブラスト処理することが一般的な実際の作業である。コーティングマクロ粗さスコアおよび時間依存マクロ粗さスコアは、物体に塗布するコーティング製品に依存することがある。異なる個々のコーティング製品に対して、異なるコーティングマクロ粗さスコアおよび時間依存マクロ粗さスコアを選択することができる。あるいは、異なるコーティング製品を、異なる総称技術分類に従って分類することもできる。ファウリング制御コーティングは、例えば、ファウルリリース(Foul Release)、バイオサイダルファウルリリース(Biocidal Foul Release)、セルフポリシングコポリマー(Self Polishing Copolymer)(SPC)、リニアポリシングポリマー(Linear Polishing Polymer)(LPP)、セルフポリシング(Self Polishing)(SP)、コントロールデプリーションポリマー(Controlled Depletion Polymer)(CDP)、アブレーティブ(Ablative)、セルフポリシングハイブリッド(Self Polishing Hybrids)(SPH)、加水分解(hydrolyzing)、イオン交換(ion-exchange)、またはその他のコーティング技術のうちの少なくとも1つの技術として分類することができる。
この実施形態は、マクロ粗さスコアに対する異なる寄与因子間の区別を可能にする。それぞれの寄与因子は、コーティングごとに異なることがある。
一実施形態では、ミクロ粗さ値が、初期ミクロ粗さスコアおよび時間依存ミクロ粗さスコアに基づいてミクロ粗さスコアを計算することによって、ならびにミクロ粗さスコアに基づいてミクロ粗さ値を計算することによって導出される。初期ミクロ粗さスコアおよび時間依存ミクロ粗さスコアは、試験室で実行された測定から導出することができる。初期ミクロ粗さスコアは、2次元または3次元の表面粗さを評価する、スタイラスプローブプロフィルメータ、レーザプロフィルメータ、白色/青色光干渉分析法などのさまざまな技法によって測定することができる。これらの測定は、振幅、波長など、表面特徴の性質に関する詳細を構築することができる。時間依存ミクロスケールスコアは、例えば、実験用水路(flume)、ディスクロータ、ドラムロータまたはその他の技法を使用して、流れている海水にコーティング面をさらし、コーティング面のミクロ粗さの変化を定期的に測定することによって測定することができる。
この実施形態は、船体のミクロ粗さ値の計算において試験室測定値を使用することを可能にする。
一実施形態では、外面が、少なくとも2つの部分に分割され、外面の全粗さ値が、第1の部分の全粗さ値と第2の部分の全粗さ値の結合である。
この結合を加算とすることができ、この加算では、それぞれの部分の全粗さ値が、その特定の部分用の係数(以後、特定部分用係数)によって重み付けされる。それらの特定部分用係数の和を1にすることができる。特定部分用係数の値は、それぞれの部分の相対的なおおよその表面積を反映したものとすることができ、少なくとも部分的に水に沈められる人工物体ごとに異なる値とすることとができる。この実施形態は、外面のそれぞれの部分の全粗さ値を別々に計算することを可能にする。
別の実施形態では、沈められた外面、例えば船舶の船体の沈められた外面が、複数のエリアに分割される。それらのエリアの例には、水線部(Boot Top part)、垂直側面部(Vertical Side part)および平底部(Flat Bottom part)、船首部(Bow part)、肩部(Shoulders part)、船尾部(Stern part)、プロペラ部、または船体の他の部分が含まれる。好ましい一実施形態では、船舶の船体の沈められた外面が、水線部、垂直側面部および平底部の中から選択されたエリアに分割される。
船体の全粗さ値は、船体のそれぞれの部分の全粗さ値の結合、例えば、水線部の全粗さ値、垂直側面部の全粗さ値および平底部の全粗さ値の結合とすることができる。この結合を加算とすることができ、この加算では、船体のそれぞれの部分の粗さが係数によって重み付けされる。例えば、水線部は水線係数によって重み付けされ、垂直側面部の粗さは垂直側面係数によって重み付けされ、平底部の粗さは平底係数によって重み付けされる。この実施形態は、船体のそれぞれの部分の粗さを別々に計算することを可能にする。
一実施形態では、最小の抵抗等級が、全粗さ値、人工物体の形状およびサイズ、ならびに人工物体の運航速度のうちの少なくとも1つに基づく計算流体力学モデルによって計算される。この実施形態は、得られた期間中の粗さに関連づけられた抵抗等級のより高度な導出を可能にする。物体の運航速度は、時間の経過とともに変化することがある。適当には、平均運航速度、またはより詳細な速度プロフィルが使用される。
一実施形態では、選択された前記コーティングが、ファウリング、腐食、固体粒子および液体粒子による磨耗(abrasion)、ならびにUV吸収および氷の結果としての劣化のうちの1つから保護するように構成されている、この実施形態は、異なるタイプのコーティングを塗布することを可能にする。
別の実施形態では、少なくとも部分的に水に沈められる人工物体の外面が船の船体を構成する。
ファウリング粗さ値があるしきい値よりも大きいときには、全粗さ値が、ファウリング粗さ値によって支配されることがある。そのような場合には、マクロ粗さ値の変化またはミクロ粗さ値の変化を無視することができる。
本発明の方法はさらに、選択されたコーティングでコーティングされた船体の動力必要量(power requirement)、燃料消費量および温室効果ガス放出量を予測するのに非常に適している。この方法は、船の運航業者が、特定のコーティングを選択することによって得られる経済的な利益を正確に予測することを可能にする。したがって、好ましい一実施形態では、選択されたコーティングでコーティングされた船の船体について、船を所望の速度で移動させるのに必要な動力必要量が計算される。全粗さ値を、特定の船体形状およびサイズを有する特定の船の抗力抵抗に相関させることができ、この抗力抵抗を、所望の船速での動力必要量に相関させることができる。これらのデータは例えば、特定の船の動力必要量および抗力抵抗の歴史的データまたは計算されたデータを含むデータベースから抽出することができる。別の実施形態では、この動力必要量が、予測燃料消費量に変換される。その船が化石燃料で動く場合には、特定のコーティングの選択を温室効果ガス放出量に相関させることが可能である。
本開示の別の態様は、本開示の方法で使用されるコンピュータプログラムおよび非一時的コンピュータ可読記憶媒体に関する。
当業者には理解されることだが、本発明の態様は、システム、方法またはコンピュータプログラム製品として実施することができる。これに応じて、本発明の態様は、完全にハードウェアだけからなる実施形態、完全にソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)だけからなる実施形態、またはソフトウェア態様とハードウェア態様とを組み合わせた実施形態の形態をとることができる。本明細書では一般に、これらの全ての実施形態が、「回路」、「モジュール」または「システム」を指すことがある。本開示に記載された機能は、コンピュータの処理装置/マイクロプロセッサによって実行されるアルゴリズムとして実施することができる。さらに、本発明の態様は、コンピュータ可読プログラムコードがその上に実施された、例えばコンピュータ可読プログラムコードがその上に記憶された1つまたは複数のコンピュータ可読媒体として実施されたコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。
1つまたは複数のコンピュータ可読媒体の任意の組合せを利用することができる。このコンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読記憶媒体とすることができる。コンピュータ可読記憶媒体は例えば、限定はされないが、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線もしくは半導体システム、装置もしくはデバイス、またはこれらの適当な組合せとすることができる。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例には、限定はされないが、1本もしくは数本のワイヤを有する電気接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読出し専用メモリ(EPROMもしくはフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読出し専用メモリ(CD-ROM)、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、またはこれらの適当な組合せが含まれる。本発明の文脈では、コンピュータ可読記憶媒体を、命令実行システム、装置もしくはデバイスによってまたは命令実行システム、装置もしくはデバイスとともに使用されるプログラムを含むことができる有形の媒体、またはこのようなプログラムを記憶することができる有形の媒体とすることができる。
コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読プログラムコードがその中に実施された被伝搬データ信号を含むことができ、このコンピュータ可読プログラムコードは例えば、被伝搬データ信号のベースバンドの中にまたは被伝搬データ信号の搬送波の一部として実施される。このような被伝搬信号は、限定はされないが、電磁気、光学またはこれらの適当な組合せを含むさまざまな形態のうちの任意の形態をとることができる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではないコンピュータ可読媒体であって、命令実行システム、装置もしくはデバイスによってまたは命令実行システム、装置もしくはデバイスとともに使用されるプログラムと通信することができ、またはそのようなプログラムを伝搬しもしくは運ぶことができるコンピュータ可読媒体とすることができる。
コンピュータ可読媒体上に実施されたプログラムコードは、限定はされないが、ワイヤレス、有線、光ファイバ、ケーブル、RFなどを含む、またはこれらの適当な組合せを含む適当な媒体を使用して伝送することができる。本発明の態様を実行するコンピュータプログラムコードは、Java(商標)、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同種のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含む、1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組合せで書くことができる。このプログラムコードは、ユーザのコンピュータ上で完全に実行することができ、ユーザのコンピュータ上で部分的に実行することができ、独立型ソフトウェアパッケージとして実行することができ、ユーザのコンピュータ上で部分的に実行し、リモートコンピュータ上で部分的に実行することができ、またはリモートコンピュータもしくはサーバ上で完全に実行することができる。上記の最後のシナリオでは、ローカルエリアネットワーク(LAN)もしくはワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してそのリモートコンピュータをユーザのコンピュータに接続することができ、または(例えばインターネットサービスプロバイダを使用してInternetを介して)外部コンピュータへの接続を実施することができる。
以下では、本発明の実施形態に基づく方法、装置(システム)およびコンピュータプログラム製品の流れ図および/またはブロック図を参照して、本発明の態様を説明する。それらの流れ図および/またはブロック図のそれぞれのブロック、ならびにそれらの流れ図および/またはブロック図のブロックの組合せを、コンピュータプログラム命令によって実施することができることが理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、マシンを形成する汎用コンピュータ、専用コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサ、特にマイクロプロセッサまたは中央処理ユニット(CPU)に、それらのコンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置または他のデバイスのプロセッサによって実行されるこれらの命令が、これらの流れ図および/またはブロック図のブロックに指定された機能/操作を実施する手段を生成するような態様で提供することができる。
これらのコンピュータプログラム命令はさらに、特定の方式で機能するようにコンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置または他のデバイスに指図することができるコンピュータ可読媒体に、コンピュータ可読媒体に記憶された命令が、これらの流れ図および/またはブロック図のブロックに指定された機能/操作を実施する命令を含む製造物品を生成するような態様で記憶することができる。
コンピュータプログラム命令はさらに、コンピュータ、他のプログラマブル装置または他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させて、コンピュータによって実施される工程を生み出すために、このコンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置または他のデバイス上に、このコンピュータまたは他のプログラマブル装置上で実行されるこれらの命令が、これらの流れ図および/またはブロック図のブロックに指定された機能/操作を実施する工程を提供するような態様でロードすることができる。
添付図中の流れ図およびブロック図は、本発明のさまざまな実施形態に基づくシステム、方法およびコンピュータプログラム製品の可能な実施態様のアーキテクチャ、機能および動作を示す。この点に関して、それらの流れ図またはブロック図のそれぞれのブロックは、指定された論理機能を実施する1つまたは複数の実行可能命令を含む、コードのモジュール、セグメントまたは部分を表すことがある。いくつかの代替実施態様では、これらのブロックに示された機能が、図に示された順序とは異なる順序で実施されることにも留意すべきである。例えば、連続して示された2つのブロックが、実際は、実質的に同時に実行されることがあり、または、含まれる機能によってはそれらのブロックが逆の順序で実行されることもある。それらのブロック図および/または流れ図のそれぞれのブロック、ならびにそれらのブロック図および/または流れ図のブロックの組合せを、指定された機能もしくは操作を実行しまたは専用ハードウェアとコンピュータ命令の組合せを実行するハードウェアベースの専用システムによって実施することができることにも留意すべきである。
次に、本発明に基づく実施形態を概略的に示す添付図面を参照して本発明の実施形態をさらに説明する。本発明は、どんな形であれ、これらの特定の実施形態だけに限定されないことが理解される。
本発明は、特許請求項に記載された特徴の可能な全ての組合せに関することに留意されたい。
次に、図面に示された例示的な実施形態を参照して本発明の態様をより詳細に説明する。
開示された方法のステップを示す流れ図である。 抵抗等級の導出を示す流れ図である。 ファウリング粗さの計算を示す流れ図である。 マクロスケール粗さの導出を示す流れ図である。 ミクロスケール粗さの導出を示す流れ図である。 粗さデータベースへのデータエントリ(data-entry)を示す流れ図である。 粗さデータベースの例を示す図である。 ファウリングデータベースの例を示す図である。 表の例を示す図である。 3つの全粗さ値を含む図である。 抵抗等級を示す図である。 3つの全粗さ値を示す図である。 本発明の一実施形態に基づくコンピューティングシステムを示す図である。
図1は、開示された方法の一実施形態の概略流れ図を示す。この図では、コーティングのセットが、3種類の異なるコーティング、すなわちコーティング1、コーティング2およびコーティング3を含む。ステップS1で、コーティングごとに、外面の全粗さ値を得る。この全粗さ値を得ることは、ファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値を含む。ステップS1は、それぞれのコーティング1~3について、全粗さ値を与える。それぞれの全粗さ値には抵抗等級が関連づけられており、ステップS2で、最小の抵抗等級を有するコーティングを選択する。この実施形態では、コーティング3が、最小の抵抗等級に関連づけられた全粗さ値を有する。続いて、ステップS3で、選択されたコーティング、すなわちコーティング3を、少なくとも部分的に水に沈められる人工物体の外面に塗布する。
図2は、コーティングの抵抗等級の導出を一実施形態について示す流れ図である。この実施形態では、少なくとも部分的に水に沈められる人工物体の外面が船舶の船体である。少なくとも部分的に水に沈められる海洋掘削ステーションなどの他の人工物体に対しても同じ導出ステップを使用することができることを理解すべきである。図2の右側の部分を見ると、抵抗等級が、計算流体力学(Computational Fluid Dynamics)(CFD)モデル化ステップS4の結果であることが分かる。このモデル化に対して使用される入力は、船の形状およびサイズ、船の運航速度ならびに外面の全粗さ値である。ステップS4のCFDモデル化は、全粗さ値に関連づけられた抵抗等級を提供する。さらに、このCFDモデル化は、この全粗さ値に基づいて、期間(図示せず)における船の動力消費量を予測することができる。続いて、この動力消費量に基づいて、燃料消費量、燃料費、温室効果ガス放出量など、他のパラメータを計算することができる。
図2の実施形態では、船の船体が3つの部分、すなわち、満載状態のときの船の水線(water line)と無載状態のときの船の水線との間の船体のエリアである水線(BT)部分、ビルジ(bilge)から水線部分の最下部までの垂直、湾曲または傾斜エリアである垂直側面(VS)部分、およびビルジからビルジまでの船体の船底エリアである平底(FB)部分に分割されている。ビルジは通常、船底と垂直側面の間の遷移部を形成する船体の丸くなった部分である。図2に示されているように、全粗さ値は、水線部分の全粗さ値、垂直側面部分の全粗さ値および平底部分の全粗さ値を結合すること、ならびに特定の重み係数によってそれぞれの全粗さ値に重みを付けることによって計算することができる。
図2は、VS部分の全粗さ値が、(VS部分の)ファウリング粗さ値、(VS部分の)マクロ粗さ値および(VS部分の)ミクロ粗さ値に基づいて得られる実施形態を示している。BT部分の全粗さ値およびFB部分の全粗さ値もそれぞれ、BT部分およびFB部分のファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値に基づいて得ることができることを理解すべきである。ファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値は全て、それらの3つのパラメータを単純に加算して全粗さ値を得ることを可能にする等価砂粒粗さ高kに換算して表すことができることを理解すべきである。特定の粗さ値に対する等価砂粒粗さ高さは、十分に荒い流れレジーム内の特定の粗さと同じ粗さ関数を与える密にパックされた均一な砂の高さである。
図3は、図3の左側の部分に示されたコーティング1に関連づけられた、一実施形態におけるファウリング粗さ値の計算を示す流れ図である。この図の地理的領域は、少なくとも部分的に水に沈められる人工物体が期間の間、配置されると予想される地理的領域であることにも留意されたい。この人工物体は、3年の乾ドックサイクルを有するコンテナ船であるとすることができる。さらに、そのコンテナ船は、次の3年間、米国のボストン港とオランダのロッテルダム港の間だけを航行することが予定されているとすることができる。したがって、地理的領域は北大西洋とすることができる。コーティング1および地理的領域は、図示のファウリング粗さの計算の入力である。ステップS5で、粗さデータベースにアクセスし、その粗さデータベースから、コーティング1と地理的領域の組合せに関連づけられた静的ファウリング粗さ値を取り出す。粗さデータベースは、ファウリング粗さ値を計算する際の、したがって開示された方法を実行する際の重要な態様であることを理解すべきである。粗さデータベースの作成のより詳細な説明は、図6に関して後に提供される。
静的ファウリング粗さ値を得た後、ステップS6で、その静的ファウリング粗さ値を動的ファウリング粗さ値に変換する。この変換は、活動係数および予想される活動に基づく。活動係数は、活動が0%の船のファウリングの方が、活動が100%の船のファウリングよりもひどくなる危険性を反映するものとすることができる。予想される活動は、船が航行している時間と船が水上で静止している時間の比率を示すことができる。これによって、ファウリング粗さを計算する際に船の活動が考慮される。一般に、ほとんどの時間、航行している船の方が、ほとんどの時間、静止している船よりもファウリングが定着する危険性が小さい。動的ファウリング粗さ値を得た後、ステップS7で、ファウリング粗さ値を計算する。この最後のステップS7では、時間の経過に伴うファウリング粗さ値の予想される変化を考慮する。動的ファウリング粗さ値は、乾ドックサイクルなどの期間の終わりにおけるファウリング粗さの特定の1つの値を示す1つの値とすることができる。ファウリング粗さ値の計算S7を、時間の経過に伴う予想される変化に基づいて実行することによって、ファウリング粗さ値の複数の値、例えば、期間中の特定の時点ごとに1つの値を計算することができる。この時間の経過に伴う予想される変化は、上で説明したとおり、時間の経過に伴うファウリング粗さ値の指数関数的な増大とすることができる。
図4は、一実施形態におけるマクロ粗さ値の導出を示す流れ図である。この導出のための入力は、初期下地マクロ粗さスコア、コーティングマクロ粗さスコアおよび時間依存マクロ粗さスコアである。計算ステップS8で、これらのパラメータに基づいてマクロ粗さスコアを計算する。別のステップS9で、このマクロ粗さスコアをマクロ粗さ値に変換する。初期マクロ粗さスコアは、主に外面の輪郭によって規定することができる。したがって、コーティングを塗布する前の外面の準備は、初期マクロ粗さスコアを推定する際の重要なパラメータである。さらに、調査によれば、コーティング製品および/またはコーティング技術分類が初期マクロ粗さスコアに影響する。したがって、コーティング粗さスコアでは、コーティング製品またはコーティング技術分類も考慮される。乾ドックサイクル中のマクロ粗さスコアの変化は、時間依存マクロ粗さスコアによって決定され、このマクロ粗さスコアの変化は、直線的に増大すると仮定することができる。
図5は、ミクロ粗さ値の導出を示す流れ図である。この導出は、初期ミクロ粗さスコアおよび時間依存ミクロ粗さスコアに基づく。ステップS10でミクロ粗さスコアを計算し、続いてステップS11でミクロ粗さ値を導出する。初期ミクロ粗さ値には、塗布の方法/質、コーティングのバッチエイジ(batch age)などの多くの因子が影響する。したがって、初期ミクロ粗さ値は、コーティング面の多数の反復測定によって導出することが望ましい。
図6は、粗さデータベースのエントリの生成の流れ図である。図3を参照して説明したとおり、粗さデータベースは、コーティング1と地理的領域の組合せに対する静的ファウリング粗さ値を含む。エントリの生成の出発点は、ファウリングデータベースである。ファウリングデータベースは、複数の船、例えば20,000隻以上の船に対して実行されたファウリング測定に関するデータを含むことができる。それらの測定は、それらの船の乾ドック中に実行されたものとすることができる。このデータはさらに、それらの船にどのコーティングが塗布されていたのか、およびそれらの船がどの地理的領域を航行したのか、ならびに乾ドックサイクル期間の船の速度データおよび活動データを含む。図8は、ファウリングデータベースの可能な抜粋を示す。これについては後により詳細に説明する。図6の実施形態では、ファウリングデータベースが、コーティング1が塗布され、以前に地理的領域を航行した4隻の異なる船(図示せず)に対する対応するそれぞれのファウリング測定によって得られたファウリングパラメータを含む。船のファウリングパラメータは、どのタイプのファウリングが見られたのか、および外面の百分率として表現されたファウリングの程度を示すことができる。例えば、1隻の船のファウリングパラメータは、船の外面の10%が軽度のスライムで覆われていたこと、20%が重度のスライムで覆われていたこと、別の5%が海藻で覆われていたこと、および外面の別の10%が、重度の動物ファウリングで覆われていたことを示すことができる。それらのファウリングパラメータに基づいて、ステップS12~S15で、それぞれの船のファウリングスコアを計算する。ステップS16で、それらのファウリングスコアを結合して、平均ファウリングスコアを計算する。次のステップS17で、計算された平均ファウリングスコアに静的ファウリング粗さ値を関連づけた表にアクセスすることによって、静的ファウリング粗さ値を得る。ステップS17で静的ファウリング粗さ値を得た後、その静的ファウリング粗さ値を、コーティング1および地理的領域とともに、粗さデータベースに追加する。したがって、粗さデータベースは、静的ファウリング粗さ値をコーティング1と地理的領域の組合せに関連づける1つのエントリを含む。
図7は、一実施形態における粗さデータベースの抜粋の例を示す。見て分かるとおり、この粗さデータベースには、コーティングと地理的領域のそれぞれの組合せに対する関連づけられた静的粗さ値が存在する。それぞれの地理的領域内の異なる状況から、地理的領域に対する静的ファウリング粗さ値の依存性が生じる可能性がある。これらの状況は例えば、水の組成、水温または気象状況に関係する。言うまでもなく、これらの状況に対するそれぞれのコーティングの反応は異なり、その結果、それぞれのコーティングは、地理的領域ごとに異なるコーティング性能を示す。例えば、大西洋では、コーティング1の方がコーティング2よりも効果的にファウリングを防ぐが、インド洋に見られる異なる状況下では、コーティング2の方がコーティング1よりも効果的にファウリングを防ぐというようなことが起こりうる。
図8は、一実施形態におけるファウリングデータベースの抜粋の例を示す。この抜粋には、コーティング1と地理的領域「大西洋」の組合せだけが存在することに留意されたい。この抜粋では、10隻の船が船舶A~Jであり、これらの船は全て、コーティング1が塗布された状態で大西洋を航行した。それぞれの船舶の乾ドックサイクル中にファウリングパラメータが測定された。この図には、軽度のスライムで覆われた船体の百分率と重度のスライムで覆われた船体の百分率の2つのファウリングパラメータだけが示されている。船舶ごとにファウリングスコアが計算されている。さらに、それらの船舶はサブグループ、すなわち低いファウリングスコアを有するサブグループLow、中程度のファウリングスコアを有するサブグループMedium、および高いファウリングスコアを有するサブグループHighに分けられている。このことは、サブグループごとに平均ファウリングスコアを計算することを可能にし、非常に高いファウリングスコアを有する1隻の船舶に起因する高いファウリングスコアの方へのゆがみを防ぐ。この実施形態では、ファウリングスコア8.3を有する船舶Cが、より高い値の方への平均ファウリングスコアのゆがみを引き起こすであろう。
船舶A~Jはそれぞれ、それ自体の乾ドック期間を有し、したがって、コーティング1の塗布とファウリングパラメータの測定との間の時間は船舶ごとに異なり、このことは自ずと、測定されたファウリングパラメータに影響を与えることに留意すべきである。一般
に、乾ドックサイクル期間が長い船舶は、乾ドックサイクル期間が短い船舶よりもファウリングの危険性が高い。さらに、船舶Jは、船舶Bよりもはるかに多く航行し(すなわち活動がより高く)、その結果、船舶Jに対するファウリングスコアがより低くなった可能性がある。例えば調整係数によって、ファウリングデータベースの中の船の運航特性間のこのような違いを可能な限り考慮することが好ましい。適切な平均ファウリングスコアを得るため、ファウリングデータベースのエントリは、船の運航特性のこのような違いを、例えば調整係数を適用することによって考慮することが好ましい。
図9は、静的ファウリング粗さ値をファウリングスコアに関連づける表の例である。この表は、科学的調査に基づくことができる。
図10は、コーティング1、2および3の対応するそれぞれの全粗さ値を示す図である。全粗さ値は、3年の期間に対して計算されている。この実施形態では、この3年の期間の終わりの全粗さ値の値が、コーティング1、2および3の対応するそれぞれの動的ファウリング粗さ値である。図10では、コーティング1の動的ファウリング粗さ値が破線によって示されている。上で説明したとおり、これらの全粗さ値の曲線は、それぞれの動的ファウリング粗さ値に基づいて計算されたものである。この実施形態では、時間の経過に伴う全粗さ値の予想される変化を、指数関数的な増大、したがって指数曲線であると仮定した。見て分かるとおり、これらの指数関数的な増大により、特に3年目の3つコーティングの全粗さ値はかなり異なる。一般に、より高い全粗さ値はより高い抵抗に関連し、したがって例えば、船の所有者にとってはより高い燃料費に関連する。
図11は、図10に示された全粗さ値に関連づけられた対応するそれぞれの抵抗等級を示す図である。抵抗等級は、とりわけ全粗さ値を入力として使用したCFDモデル化の結果である。予想されたとおり、この実施形態では、コーティング3の抵抗等級が最小の抵抗等級である。全粗さ値に基づく抵抗等級の計算は、期間、このケースでは図10に示された3年の期間にわたる全粗さ値の積分を含むことができる。例えば船の抵抗等級は、次の乾ドックサイクルの間の燃料費を船の所有者に指示することを理解すべきである。
図12は、コーティング3の抵抗等級の例を示す。この例では、ファウリングデータベースの中の船を3つのサブグループに分け、サブグループごとに1つ、合計3つの平均ファウリングスコアを得、続いて3つの静的ファウリング粗さ値、3つの動的ファウリング粗さ値、3つのファウリング粗さ値、3つの全粗さ値および最後に3つの抵抗等級を得た。例えば、最も高いファウリングスコアを有するサブグループHighは、ファウリングデータベースの中の船の10%を含み、中程度のファウリングスコアを有するサブグループMidiumはファウリングデータベースの中の船の20パーセントを含み、最も低いファウリングスコアを有するサブグループLowは、ファウリングデータベースの中の船の70%を含むとする。そのため、図12の3本の曲線は、異なるレベルの全粗さ値がコーティング3に対して生じる可能性を示すことができる。したがって、サブグループLowの曲線が主たる予測であり、確からしい全粗さ値または予想される全粗さ値を表す。サブグループMediumの曲線は、可能な全粗さ値を表し、サブグループLowに関連づけられた全粗さ値よりも可能性がやや低い。サブグループHighの曲線は、可能性が低い全粗さ値を表す。
図13は、コンピュータによって実施されるコーティング選択工程で使用することができる例示的なデータ処理システムを示すブロック図を示す。
図13に示されているように、データ処理システム100は、システムバス106によってメモリ要素104に結合された少なくとも1つの処理装置102を含むことができる。そのため、このデータ処理システムは、メモリ要素104内にプログラムコードを記憶することができる。さらに、処理装置102は、システムバス106を介してメモリ要素104からアクセスされたプログラムコードを実行することができる。一態様では、このデータ処理システムが、プログラムコードを記憶および/または実行するのに適したコンピュータとして実施される。しかしながら、プロセッサおよびメモリを含み、本明細書に記載された機能を実行することができる任意のシステムの形態で、データ処理システム100を実施することができることを理解すべきである。
メモリ要素104は、例えばローカルメモリ108、1つまたは複数のバルク記憶デバイス110などの1つまたは複数の物理メモリデバイスを含むことができる。このローカルメモリは、ランダムアクセスメモリのことを指すことがあり、または一般にプログラムコードの実際の実行中に使用される他の非永続性メモリデバイスのことを指すこともある。バルク記憶デバイスは、ハードドライブまたは他の永続性データ記憶デバイスとして実施することができる。実行中にバルク記憶デバイス110からプログラムコードを取り出さなければならない回数を減らすため、処理システム100はさらに、少なくともいくつかのプログラムコードの一時記憶を提供する1つまたは複数のキャッシュメモリ(図示せず)を含むことができる。
任意選択で、入力デバイス112および出力デバイス114として示された入力/出力(I/O)デバイスをデータ処理システムに結合することができる。入力デバイスの例には、限定はされないが、キーボード、マウスなどポインティングデバイスなどが含まれる。出力デバイスの例には、限定はされないが、モニタまたはディスプレイ、スピーカなどが含まれる。入力デバイスおよび/または出力デバイスは、直接にまたは介在するI/Oコントローラを介してデータ処理システムに結合することができる。
一実施形態では、入力デバイスおよび出力デバイスが、結合された入力/出力デバイス(図13では、入力デバイス112および出力デバイス114を取り囲む破線によって示されている)として実施される。結合されたこのようなデバイスの例は、時に「タッチスクリーンディスプレイ」または単に「タッチスクリーン」とも呼ばれるタッチセンシティブティブディスプレイである。このような実施形態では、例えばスタイラス、ユーザの指などの物理的物体を、タッチスクリーンディスプレイ上でまたはタッチスクリーンディスプレイの近くで移動させることによって、このデバイスへの入力を提供することができる。
このデータ処理システムを、介在する専用ネットワークまたは公衆ネットワークを介して、別のシステム、コンピュータシステム、遠隔ネットワークデバイスおよび/または遠隔記憶デバイスに結合することを可能にするために、データ処理システムにネットワークアダプタ116を結合することもできる。このネットワークアダプタは、前記システム、デバイスおよび/またはネットワークによってデータ処理システム100に伝送されたデータを受信するデータ受信器と、前記システム、デバイスおよび/またはネットワークにデータ処理システム100からデータを送信するデータ送信器とを備えることができる。モデム、ケーブルモデムおよびEthernetカードは、データ処理システム100とともに使用することができる異なるタイプのネットワークアダプタの例である。
図13に示されているように、メモリ要素104は、アプリケーション118を記憶することができる。さまざまな実施形態で、アプリケーション118は、ローカルメモリ108もしくは1つもしくは複数のバルク記憶デバイス110に記憶され、またはローカルメモリおよびバルク記憶デバイス以外の場所に記憶される。データ処理システム100は、アプリケーション118の実行を容易にすることができるオペレーティングシステム(図13には示されていない)を実行することもできることを理解すべきである。実行可能なプログラムコードの形態で実施されたアプリケーション118は、データ処理システム100によって、例えば処理装置102によって実行することができる。このアプリケーションの実行に応答して、データ処理システム100を、本明細書に記載された1つまたは複数の操作または方法ステップを実行するように構成することができる。
別の態様では、データ処理システム100が、クライアントデータ処理システムを表す。その場合、アプリケーション118が、クライアントアプリケーションを表すことがあり、そのクライアントアプリケーションは、実行されたときに、データ処理システム100を、「クライアント」に関して本明細書に記載されたさまざまな機能を実行するように構成する。クライアントの例には、限定はされないが、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ、モバイルフォンなどが含まれる。
別の態様では、データ処理システム100がサーバを表す。例えば、このデータ処理システムは、(HTTP)サーバを表すことができ、その場合、アプリケーション118は、実行されたときに、このデータ処理システムを、(HTTP)サーバ動作を実行するように構成することができる。
本発明のさまざまな実施形態を、コンピュータシステムとともに使用されるプログラム製品として実施することができ、そのプログラム製品のプログラムは、(本明細書に記載された方法を含む)実施形態の機能を規定する。一実施形態では、このプログラムを、さまざまな非一時的コンピュータ可読記憶媒体に含めることができる。本明細書で使用されるとき、「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」という表現は、全てのコンピュータ可読媒体を含む。唯一の例外は一時的な伝搬信号である。別の実施形態では、このプログラムを、さまざまな一時的コンピュータ可読記憶媒体に含めることができる。例示的なコンピュータ可読記憶媒体には、限定はされないが、(i)情報が恒久的に記憶される書込みができない記憶媒体(例えばコンピュータ内の読出し専用メモリデバイス、例えばCD-ROMドライブによって読むことができるCD-ROMディスク、ROMチップまたは任意のタイプの固体不揮発性半導体メモリ)、および(ii)変更可能な情報が記憶された書込み可能な記憶媒体(例えばフラッシュメモリ、ディスケットドライブ内のフロッピーディスクもしくはハードディスクドライブ、または任意のタイプの固体ランダムアクセス半導体メモリ)が含まれる。このコンピュータプログラムは、本明細書に記載された処理装置102上で実行することができる。
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記述することだけが目的であり、それらの用語が本発明を限定することは意図されていない。本明細書で使用されるとき、単数形の「a」、「an」および「the」は、そうでないことが文脈から明らかである場合を除き、複数形も含むことが意図されている。また、本明細書で使用されたとき、用語「備える(comprises)」および/または「備える(comprising)」は、明示された特徴、完全体、ステップ、動作、要素および/または構成要素の存在を指定するが、その他の1つまたは複数の特徴、完全体、ステップ、動作、要素、構成要素および/またはこれらのグループの存在または追加を排除しないことが理解される。
以下の特許請求項に記載された対応する構造物、材料、操作、および全ての手段またはステップの等価物、ならびに機能要素は、特許請求項に特に記載された他の要素と組み合わせて機能を実行する任意の構造物、材料または操作を含むことが意図されている。本発明の実施形態の以上の説明は、例示のために示したものであり、以上の説明が網羅的であること、または、以上の説明が、開示された形態での実施だけに限定されることは意図されていない。当業者には、本発明の範囲および趣旨を逸脱しない多くの変更および変形が明らかである。これらの実施形態を選択し説明したのは、本発明の原理およびいくつかの実用的な用途を最もよく説明するため、ならびに、企図された特定の使用に適したさまざまな変更を有するさまざまな実施形態に関して、他の当業者が本発明を理解することを可能にするためである。
なお、本発明には以下の態様が含まれることを付記する。
[態様1]
ある期間の間、少なくとも部分的に水に沈められる人工物体(例えば船または海洋掘削ステーション)の外面にコーティングを塗布する方法であって、沈められた前記物体と前記水の間に相対運動が存在し、前記コーティングが、コーティングのセットに対する最小の抵抗等級を有し、前記方法が、
コンピュータによって実施されるコーティング選択工程
を含み、
前記工程が、
コーティングの前記セットの中のそれぞれのコーティングについて、それぞれのコーティングに関連づけられたファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値に基づいて、前記外面の全粗さ値を得るステップと、
前記期間について、選択されたコーティングが得られた前記全粗さ値に関連づけられた最小の抵抗等級を有するコーティングを、コーティングの前記セットの中から選択するステップと
を含み、
前記方法がさらに、選択された前記コーティングを前記人工物体の前記外面に塗布することを含む、前記方法。
[態様2]
それぞれのコーティングに関連づけられた前記ファウリング粗さ値の計算が、
それぞれのコーティングと、前記期間の間、前記人工物体が配置されることが予想される地理的領域との組合せを、それぞれの静的ファウリング粗さ値に関連づける粗さデータベースにアクセスすること、
前記静的ファウリング粗さ値を取り出すこと、
前記期間中の前記人工物体の予想される活動を考慮することによって、前記静的ファウリング粗さ値を動的ファウリング粗さ値に変換すること、および
前記動的ファウリング粗さ値と、時間の経過に伴う前記ファウリング粗さ値の予想される変化とに基づいて、前記ファウリング粗さ値を計算すること
を含む、態様1に記載の方法。
[態様3]
コーティングの前記セットの中のコーティングと前記地理的領域との組合せに関連づけられた少なくとも1つの静的ファウリング粗さ値が、
以前に前記地理的領域内にあり、前記コーティングが塗布された少なくとも部分的に水に沈められる複数の人工物体のファウリングに関するパラメータを、ファウリングデータベースから取り出し、
前記パラメータに基づいて、前記複数の人工物体のうちのそれぞれの人工物体のファウリングスコアを計算し、複数のファウリングスコアを生成し、
前記複数のファウリングスコアの代表値を計算し、
前記複数のファウリングスコアの計算された前記代表値を前記静的ファウリング粗さ値に関連づけた表から、前記静的ファウリング粗さ値を得ること
によって導出されたものである、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
前記複数の人工物体が、少なくとも2つのサブグループに分けられており、前記少なくとも2つのサブグループのうちのそれぞれのサブグループが、ファウリングスコアのそれぞれの範囲に関連づけられており、前記それぞれの範囲が重なっておらず、それぞれのサブグループが、それぞれのサブグループの前記対応するそれぞれの範囲内のファウリングスコアを有する人工物体だけを含み、
サブグループごとに、別個の平均が計算され、続いて、別個の静的ファウリング粗さ値、別個の動的ファウリング粗さ値、別個のファウリング粗さ値および別個の全粗さ値が計算される、
態様3に記載の方法。
[態様5]
前記マクロ粗さ値が、
初期下地マクロ粗さスコア、コーティングマクロ粗さスコアおよび時間依存マクロ粗さスコアのうちの少なくとも1つの粗さスコアに基づいてマクロ粗さスコアを計算し、
前記マクロ粗さスコアに基づいて前記マクロ粗さ値を計算すること
によって導出される、態様1から4のいずれか一項に記載の方法。
[態様6]
前記ミクロ粗さ値が、
初期ミクロ粗さスコアおよび時間依存ミクロ粗さスコアに基づいてミクロ粗さスコアを計算し、
前記ミクロ粗さスコアに基づいて前記ミクロ粗さ値を計算すること
によって導出される、態様1から5のいずれか一項に記載の方法。
[態様7]
前記最小の抵抗等級が、前記全粗さ値、前記人工物体の形状およびサイズ、ならびに前記人工物体の運航速度のうちの少なくとも1つに基づく計算流体力学モデルによって計算される、態様1から6のいずれか一項に記載の方法。
[態様8]
前記外面が、少なくとも2つの部分に分割され、前記外面の前記全粗さ値が、第1の部分の前記全粗さ値と第2の部分の前記全粗さ値の組合せである、態様1から7のいずれか一項に記載の方法。
[態様9]
前記外面が、水線部、垂直側面部および平底部に分割される、態様8に記載の方法。
[態様10]
選択された前記コーティングが、ファウリング、腐食、固体粒子および液体粒子による磨耗、ならびにUV吸収および氷の結果としての劣化のうちの1つから保護するように構成されている、態様1から9のいずれか一項に記載の方法。
[態様11]
少なくとも部分的に水に沈められる前記人工物体の前記外面が船の船体を構成する、態様1から10のいずれか一項に記載の方法。
[態様12]
選択された前記コーティングでコーティングされた前記船の船体について、前記船を所望の速度で移動させるのに必要な動力必要量が計算される、態様11に記載の方法。
[態様13]
前記動力必要量が、予測燃料消費量または予測温室効果ガス放出量に変換される、態様12に記載の方法。
[態様14]
少なくとも1つのソフトウェアコード部分を含むコンピュータプログラムもしくは一組のコンピュータプログラム、または少なくとも1つのソフトウェアコード部分を記憶したコンピュータプログラム製品であって、前記ソフトウェアコード部分が、コンピュータシステム上で実行されたときに、態様1から13のいずれか一項に記載の前記コーティング選択工程を実行するように構成された、コンピュータプログラムもしくは一組のコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品。
[態様15]
少なくとも1つのソフトウェアコード部分を記憶した非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記ソフトウェアコード部分が、コンピュータによって実行または処理されたときに、態様1から13のいずれか一項に記載の前記コーティング選択工程の前記ステップを含む実行可能な操作を実行するように構成された、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
100 データ処理システム
102 処理装置
104 メモリ要素
106 システムバス
108 ローカルメモリ
110 バルク記憶デバイス
112 入力デバイス
114 出力デバイス
116 ネットワークアダプタ
118 アプリケーション

Claims (14)

  1. ある期間の間、少なくとも部分的に水に沈められる人工物体(例えば船または海洋掘削ステーション)の外面にコーティングを塗布する方法であって、沈められた前記物体と前記水の間に相対運動が存在し、前記コーティングが、コーティングのセットに対する最小の抵抗等級を有し、前記方法が、
    コンピュータによって実施されるコーティング選択工程
    を含み、
    前記工程が、
    コーティングの前記セットの中のそれぞれのコーティングについて、それぞれのコーティングに関連づけられたファウリング粗さ値、マクロ粗さ値およびミクロ粗さ値を計算して計算結果に基づいて前記外面の全粗さ値を得るステップと、
    前記期間について、選択されたコーティングが得られた前記全粗さ値に関連づけられた最小の抵抗等級を有するコーティングを、コーティングの前記セットの中から選択するステップと
    を含み、
    前記方法がさらに、選択された前記コーティングを前記人工物体の前記外面に塗布することを含む、前記方法。
  2. コーティングの前記セットの中のコーティングと、前記期間の間、前記人工物体が配置されることが予想される地理的領域との組合せに関連づけられた少なくとも1つの静的ファウリング粗さ値が、
    以前に前記地理的領域内にあり、前記コーティングが塗布された少なくとも部分的に水に沈められる複数の人工物体のファウリングに関するパラメータを、ファウリングデータベースから取り出し、
    前記パラメータに基づいて、前記複数の人工物体のうちのそれぞれの人工物体のファウリングスコアを計算し、複数のファウリングスコアを生成し、
    前記複数のファウリングスコアの代表値を計算し、
    前記複数のファウリングスコアの計算された前記代表値を前記静的ファウリング粗さ値に関連づけた表から、前記静的ファウリング粗さ値を得ること
    によって導出されたものである、請求項1記載の方法。
  3. 前記複数の人工物体が、少なくとも2つのサブグループに分けられており、前記少なくとも2つのサブグループのうちのそれぞれのサブグループが、ファウリングスコアのそれぞれの範囲に関連づけられており、前記それぞれの範囲が重なっておらず、それぞれのサブグループが、それぞれのサブグループの前記対応するそれぞれの範囲内のファウリングスコアを有する人工物体だけを含み、
    サブグループごとに、別個の平均が計算され、続いて、別個の静的ファウリング粗さ値、別個の動的ファウリング粗さ値、別個のファウリング粗さ値および別個の全粗さ値が計算される、
    請求項に記載の方法。
  4. 前記マクロ粗さ値が、
    初期下地マクロ粗さスコア、コーティングマクロ粗さスコアおよび時間依存マクロ粗さスコアのうちの少なくとも1つの粗さスコアに基づいてマクロ粗さスコアを計算し、
    前記マクロ粗さスコアに基づいて前記マクロ粗さ値を計算すること
    によって導出される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記ミクロ粗さ値が、
    初期ミクロ粗さスコアおよび時間依存ミクロ粗さスコアに基づいてミクロ粗さスコアを計算し、
    前記ミクロ粗さスコアに基づいて前記ミクロ粗さ値を計算すること
    によって導出される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記最小の抵抗等級が、前記全粗さ値、前記人工物体の形状およびサイズ、ならびに前記人工物体の運航速度のうちの少なくとも1つに基づく計算流体力学モデルによって計算される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記外面が、少なくとも2つの部分に分割され、前記外面の前記全粗さ値が、第1の部分の前記全粗さ値と第2の部分の前記全粗さ値の組合せである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記外面が、水線部、垂直側面部および平底部に分割される、請求項に記載の方法。
  9. 選択された前記コーティングが、ファウリング、腐食、固体粒子および液体粒子による磨耗、ならびにUV吸収および氷の結果としての劣化のうちの1つから保護するように構成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
  10. 少なくとも部分的に水に沈められる前記人工物体の前記外面が船の船体を構成する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
  11. 選択された前記コーティングでコーティングされた前記船の船体について、前記船を所望の速度で移動させるのに必要な動力必要量が計算される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記動力必要量が、予測燃料消費量または予測温室効果ガス放出量に変換される、請求項11に記載の方法。
  13. 少なくとも1つのソフトウェアコード部分を含むコンピュータプログラムあって、前記ソフトウェアコード部分が、コンピュータシステム上で実行されたときに、請求項1から12のいずれか一項に記載の前記コーティング選択工程を実行するように構成された、コンピュータプログラム
  14. 少なくとも1つのソフトウェアコード部分を記憶した非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記ソフトウェアコード部分が、コンピュータによって実行または処理されたときに、請求項1から12のいずれか一項に記載の前記コーティング選択工程の前記ステップを含む実行可能な操作を実行するように構成された、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
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