以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面は、便宜的に実際とは異なる縮尺で描かれている場合がある。また、各図面において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明を省略する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る撮像システム100の要部概略図(模式図)である。図1(a)は、後述する複数のレンズ部のうちの一部の光軸を含む断面(YZ断面)を示している。ここでの光軸とは、各レンズ部における各光学面(各レンズ面)の中心(頂点)を通る軸を指す。図1(a)においては、各レンズ部の軸上像高に集光される軸上光束のマージナル光線を示している。また、図1(b)は、撮像システム100における各部材の位置関係を示す図である。なお、撮像対象となる不図示の物体は、撮像システム100の-Z側(物体側)に配置されているものとする。
撮像システム100は、撮像装置(カメラユニット)1と、それよりも物体側に配置された光学装置(鏡筒ユニット)2とを有する。撮像装置1は、光学装置2の像面に配置される撮像面(受光面)を含む撮像素子(受光素子)11と、撮像素子11を保持する保持部材(筐体)12を備える。
光学装置2は、光学ユニット(第1の光学ユニット、アレイユニット)20と、光学ユニット20を保持する保持部材(鏡筒部)23を備える。光学ユニット20は、夫々が物体の像を形成する複数のレンズ部で構成されるレンズアレイ21と、各レンズ部の光軸上に配置される複数のフィルタで構成されるフィルタアレイ22、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を保持する保持部材201を備える。
撮像素子11としては、CCDセンサやCMOSセンサなどの光電変換素子を採用することができる。また、撮像素子11は、可視光に限らず赤外光(近赤外光や遠赤外線光)などを光電変換できるように構成されていてもよい。例えば、使用波長帯域に応じて、Si、InGaAs、InAsSbなどの材料を用いた撮像素子を採用してもよい。また、撮像素子11の画素数は、撮像システム100において求められる分解能に基づいて決定することが望ましい。
本実施例に係る複数のレンズ部の夫々は、1枚以上のレンズで構成されており、夫々が物体を撮像素子11の撮像面に結像する。言い換えると、レンズアレイ21の像面には、複数のレンズ部によって物体の複数の像(像アレイ)が形成される。すなわち、レンズアレイ21によれば、同一の物体の像を複製することができる。なお、複数のレンズ部は、製造や配置を容易にするために一体的に形成されていてもよく、あるいは個別の位置調整(フォーカス調整など)を可能にするために別体で形成されていてもよい。
本実施例に係る複数のフィルタ(光学フィルタ)は、互いに異なる透過特性を有する二つ以上のフィルタを含んでいる。ここでの透過特性とは、透過させる光の波長帯域(透過波長域)、透過させる偏光の方向や種類(偏光状態)、入射光の強度に対する透過光の強度(透過率)などの、入射光の状態を変化させる光学特性のことである。フィルタアレイ22を互いに異なる透過特性を有する複数のフィルタで構成することにより、同一の物体に対して互いに異なる複数の画像情報を同時に取得することが可能になる。
フィルタアレイ22は、少なくとも透過特性が互いに異なる二つのフィルタ(第1及び第2のフィルタ)を含んでいればよい。言い換えると、透過特性が互いに同一である二つ以上のフィルタを含んでいてもよい。例えば、撮像システム100を測距装置(ステレオカメラ)として用いる場合、視差が互いに異なる二つの画像情報を用いて物体の距離情報を取得するため、各画像情報に対応する二つのフィルタの透過特性を略同等とすることが望ましい。ただし、互いに異なる複数の画像情報を一回の撮像でより多く取得するためには、複数フィルタの全ての透過特性を互いに異ならせることが望ましい。
例えば、互いに透過波長域の中心波長が異なる複数のフィルタ(バンドパスフィルタ)を用いることで、複数の波長帯域に対応する複数の画像情報を同時に取得することができる。このとき、撮像システム100を、一般的なカメラの波長帯域(RGB)よりも多い4種類以上の波長帯域に対応する画像情報を取得することができるマルチスペクトルカメラとして構成することが望ましい。さらに、撮像システム100を、100種類以上の波長帯域に対応する画像情報を取得することができるハイパースペクトルカメラとして構成することがより好ましい。なお、バンドパスフィルタの代わりに、入射光の波長を変換して射出する波長変換フィルタを用いてもよい。
あるいは、互いに種類が異なる複数の偏光フィルタを用いることで、複数の偏光状態に対応する複数の画像情報を同時に取得することができる。例えば、X方向(水平方向)、Y方向(垂直方向)、X方向及びY方向に対して45°の方向、の夫々に平行な方向の直線偏光を透過させる三つの直線偏光フィルタと、円偏光を透過させる円偏光フィルタを用いる場合が考えられる。このように、入射光の偏光状態を変化させる複数の種類の偏光フィルタを用いることで、物体の偏光特性(ストークスパラメータ)や、物体の偏光状態の2次元分布などの偏光情報を取得することができる。
なお、透過特性の種類が異なる複数のフィルタでフィルタアレイ22を構成することで、波長情報、偏光情報、輝度情報、視差情報などの異なる種類の情報を同時に取得できるようにしてもよい。このとき、互いに異なる種類の複数のフィルタの夫々を、互いに異なるレンズ部の光軸上に配置した構成に限らず、同一の光軸上に配置した構成を採ってもよい。後者の場合、取得した画像情報を不図示の画像処理部によってフィルタリングすることで、異なる種類の画像情報に分離することができる。
また、一般的に可視波長帯域で使用されるシリコン材料で構成される撮像素子11は、短波長帯域(450nm以下)及び長波長帯域(750nm以上)よりも中心波長帯域(550nm近傍)に対する感度の方が高いという感度特性を有している。よって、これらの各波長帯域に対応する複数のバンドパスフィルタを用いる場合、中心波長帯域に対応するバンドパスフィルタが配置されている光軸上に減光フィルタを配置することが好ましい。このとき、偏光フィルタを減光フィルタとして用いることで、各画像情報の輝度のバランスを補正することだけでなく、波長情報及び偏光情報を同時に取得することが可能になる。
物体からの光を分光して所望の複数の画像情報を得るためには、各レンズ部及び各フィルタの夫々を互いに対となるように配置することが望ましい。言い換えると、一つのレンズ部を通過した光の全てが、その光軸上に配置された1種類のフィルタのみを透過することが望ましい。なお、ここでの1種類のフィルタとは、同一の光軸上に配置された複数のフィルタ素子で構成されたフィルタを含む。しかし、フィルタアレイ22のみが交換可能な構成、あるいはレンズアレイ21のみが交換可能な構成では、各レンズ部及び各フィルタの対応関係が崩れてしまい、良好な画像情報が得られなくなる可能性がある。例えば、レンズアレイ21を交換して各レンズ部のサイズ(有効径)や配置を変更する場合、それに合わせて各フィルタのサイズや配置を変更することが必要になる。
また、各レンズ部の像面における色収差は対応するバンドパスフィルタの透過特性によって変化し、それに応じて各レンズ部のピント位置(フォーカス位置)や歪曲収差も変化してしまう。バンドパスフィルタ以外のフィルタを用いた場合にも、各フィルタの異方性などに応じて光学性能の変化が生じてしまう可能性がある。よって、フィルタアレイ22を交換して各フィルタの透過特性を変更する場合、それに合わせて各レンズ部の位置や構成(設計)を変更することが必要になる。ただし、仮にレンズアレイ21及びフィルタアレイ22を個別に交換でき、夫々の適切な組み合わせを選択できる構成であったとしても、夫々の相対位置の誤差によって良好な光学性能が得られなくなる可能性がある。
そこで、本実施例においては、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を保持部材201によって一体的に保持することで、夫々の相対位置のずれを抑制している。また、保持部材201は、保持部材23に設けられた結合部(第1の結合部)27と結合するための結合部(着脱部)202を有している。これにより、光学ユニット20をアクセサリとして、結合部202を介して光学装置2に着脱可能とすることができる。すなわち、撮像システム100に対して、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を一体的に保持しつつ同時に交換することが可能になる。
この構成によれば、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22の相対位置のずれを抑制しつつ、取得する画像情報の種類や解像度を変更することができる。具体的には、フィルタアレイ22を透過特性が異なるものに交換する際に、同時にレンズアレイ21を各フィルタアレイに対応する(最適化された)ものに交換することができる。これにより、各レンズの収差やピントの変化を抑制することができる。また、レンズアレイ21をレンズ部の数が異なるものに交換することで、撮像システム100の解像度を変更することができる。この場合にも、同時にフィルタアレイ22を各レンズアレイに対応するものに交換することができる。
このように、本実施例に係る撮像システム100によれば、取得したい画像情報や被写体の条件に応じて光学ユニット20を交換することができる。特に、レンズアレイ21が交換可能であるため、レンズ部の数を増減させることで、画像情報の種類(バンド数など)や解像度を増減させることができる。そして、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を一体的に交換可能であるため、交換時の光学性能の変化を抑制することができる。これにより、光学ユニット20の構成によらず、共通の撮像装置1によって複数の良好な画像情報を同時に取得することが可能になる。
特許文献1に記載の撮像システムのように光学装置の全体を交換する構成だと、画像情報の変更に伴って本来は変更する必要がない(共用できるはずの)鏡筒部などの部材も交換することが必要になる。この場合、画像情報の変更のために多くの部材が必要になってしまう。後述のように、光学装置2が光学ユニット20の物体側又は像側に配置される光学系を有する場合、この課題はより顕著になる。一方、本実施例に係る撮像システム100によれば、光学装置2の全体ではなく、画像情報の変更のために交換が必要な最小構成である光学ユニット20のみを交換するだけで、容易に画像情報を変更することが可能になる。
なお、結合部202及び27の構成(形状)は特に限定されないが、夫々が互いに電気的に接続するための電気接点を含んでいることが望ましい。これにより、相互に情報の通信や電力の受供給などを行うことが可能になる。また、光学ユニット20は、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22に関する情報を記憶する記憶部を備えることが望ましい。この構成により、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22に関する情報を光学装置2や撮像装置1に送信することができ、後述する種々の処理を行うことが可能になる。
図1(a)に示すように、結合部202は、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22に対して光軸に垂直な方向における外側に配置されていることが望ましい。これにより、光路に対する光学ユニット20の挿抜が容易になると共に、光学装置2の光軸方向における長さを短縮することができる。例えば、保持部材23の外周面に開口を設け、その開口を介して光軸に垂直な方向から光学ユニット20を保持部材23の内部に挿入する構成を採ることができる。なお、Z方向から見たときに、結合部202は、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22の外側の全周に設けられている必要はなく、少なくとも一部に設けられていればよい。また、必要に応じて、結合部202をレンズアレイ21及びフィルタアレイ22に対して物体側又は像側に配置してもよい。
本実施例に係る撮像システム100においては、光学装置2の全体を撮像装置1に対して着脱可能な構成を採用している。具体的には、保持部材23が撮像装置1に結合するための第1のマウント部(結合部)24を有し、光学装置2が第1のマウント部24を介して撮像装置1に着脱可能な構成を採っている。これにより、例えば光学ユニット20の物体側又は像側に配置される光学系を変更したい場合などに、光学ユニット20とは独立して光学装置2を交換することが可能になる。また、この構成によれば、光学装置2に対して、撮像装置1と後述するアクセサリ装置とを結合するアダプタ装置(アダプタユニット)としての機能を持たせることができる。第1のマウント部24の形状は、撮像装置1に設けられたマウント部13に対応する形状とすればよい。例えば、光軸方向(Z方向)から見たときに撮像面を囲む円周上に設けられた結合部(バヨネット爪、凸部や凹部、磁石など)を第1のマウント部24として採用することができる。図1(a)においては、第1のマウント部24を凹部として示し、撮像装置1のマウント部13を凸部として示しているが、各マウント部の形状はこれに限られるものではない。また、第1のマウント部24に、撮像装置1と電気的に接続するための電気接点(端子)を設けることが好ましい。これにより、光学装置2は電気接点を介して撮像装置1と通信を行ったり撮像装置1から電力を受給したりすることが可能になる。
なお、図2に示すように、保持部材23は、像側に設けられる第1のマウント部24だけでなく、物体側に設けられる第2のマウント部(結合部)25を有していてもよい。これにより、光学装置2に対して後述するレンズ装置やアダプタ装置などのアクセサリ装置を着脱可能とすることができる。図2においては、第2のマウント部25を凸部として示しているが、第2のマウント部25の形状はこれに限られず、装着されるアクセサリ装置におけるマウント部の形状に応じて設定すればよい。なお、第2のマウント部25についても、アクセサリ装置に対して通信や電力の受供給を行うための電気接点を設けることが好ましい。
ただし、撮像システム100は上述した構成に限られるものではなく、例えば撮像装置1及び光学装置2を一体的に(着脱不可能に)構成し、撮像装置1及び光学装置2を合わせて撮像装置とてもよい。この場合、保持部材12(カメラ筐体)及び保持部材23(鏡筒部)を一体的に構成することができるため、夫々にマウント部13,24を設ける必要が無くなる。この場合においても、光学ユニット20を鏡筒部に対して着脱可能な構成とすることで、上述の効果を得ることができる。なお、必要に応じて、光学ユニット20の物体側又は像側に配置される光学系に結合部を設け、その光学系を保持部材23に対して着脱可能にしてもよい。
本実施例に係る光学ユニット20は、図1(b)に示したように、9個のレンズ部と、各レンズ部の光軸上に配置される9個のフィルタを備えている。すなわち、同一の光軸上に配置されたレンズ部及びフィルタをまとめて一つの結像部であるとすると、光学ユニット20は9個の結像部を備えていることになる。複数の結像部をまとめて結像部アレイとも呼ぶ。なお、結像部の数はこれに限られるものではなく、光学ユニット20は少なくとも二つの結像部を備えていればよい。ただし、一回の撮像でより多くの透過特性に対応する画像情報を取得するためには、結像部を四つ以上設けることが望ましく、本実施例のように結像部を九つ以上設けることがより好ましい。
物体からの光は、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を順に介して撮像素子11の撮像面に到達する。このとき、撮像面には、各結像部に応じた9個の像(複製像)が形成される。図1(b)では、仮に被写体としての物体が「C」の文字である場合に撮像面に形成される像を示している。本実施例に係る撮像システム100が備える結像光学系は、夫々が単レンズから成る複数のレンズ部で構成されたレンズアレイ21のみであるため、各像は倒立像となっている。
なお、撮像装置1の小型化のためには、本実施例に係る撮像素子11のように、各レンズ部に対して共通の(単一の)撮像素子を設けることが望ましい。また、各レンズ部に対して共通の撮像素子を用いることで、光学ユニット20の交換によってレンズ部の数や配置が変化した場合にも、良好な画像情報を取得することができる。このとき、撮像素子11の利用効率を向上させるためには、撮像素子11を構成する複数の画素(フォトダイオード)をできるだけ隙間なく均一に配置することが望ましい。
ただし、必要に応じて、各レンズ部に対して個別に撮像素子を設けてもよい。この場合、装置全体の小型化のためには、各撮像素子をできるだけ隙間なく均一に配置することが望ましい。また、光学ユニット20の小型化のためには、撮像素子11の撮像面の形状に合わせて各レンズ部を配置することが望ましい。具体的には、図1(b)に示すように、XY断面において各レンズ部を正方配置することが望ましい。なお、撮像素子11の撮像面が正方形でない場合は、各レンズ部の配置のアスペクト比などを変更してもよい。
図1(b)では、撮像素子11の撮像面における複数の像(結像領域)の境界を破線で示している。ただし、この破線は便宜的に撮像面における各結像部に対応する区分を示したものであり、構造物ではない。実際に破線で示したように各像の境界を明確にする必要がある場合は、各結像部に対応する絞り部材(遮光部材)を設けることが望ましい。例えば、図2に示すように、各結像部の境界(光軸同士の間)に遮光部材26を設けることが望ましい。これにより、ある結像部(第1の結像部)に対応する結像領域に、隣接する別の結像部(第2の結像部)からの不要光(迷光)が入射することを抑制することができる。
上述したように、本実施例に係る光学ユニット20は光学装置2に対して着脱可能に構成されているため、遮光部材26は光学ユニット20における保持部材201によって保持されていることが望ましい。これにより、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を交換する際に、同時に遮光部材26をレンズアレイ21及びフィルタアレイ22に対応するものに交換することができる。また、不要光を十分に遮光するためには、図2に示すように遮光部材26が撮像装置1の内部における撮像素子11の近傍まで延在した構成を採ることが好ましい。
なお、図2では、図1(b)において破線で示した矩形の結像領域に対応するように遮光部材26が配置されているが、遮光部材26の配置はこれに限られるものではなく、各結像部の配置及び要求される各結像領域の形状に対応してさえいればよい。例えば、各結像領域の形状を矩形ではなく円形等の任意の形状としたり、各結像領域の大きさを異ならせたりしてもよい。ただし、撮像面の利用効率を向上させるためには、図1(b)に示すように各結像領域を同じ大きさの矩形とすることで撮像面を等分割した構成とすることが望ましい。あるいは、各結像部がハニカム配列されている場合は、これに合わせて遮光部材26をハニカム構造とすればよい。
レンズアレイ21及びフィルタアレイ22の光軸方向における配置の順番は、図1に示したものに限られない。例えば、干渉型のバンドパスフィルタを用いる場合は、その角度特性(角度依存性)を鑑みて、各フィルタに対する光の入射角が小さくなるように、フィルタアレイ22をレンズアレイ21よりも物体側に配置することが好ましい。ただし、レンズアレイ21における各レンズ部が十分なテレセントリック性を有している場合は、フィルタアレイ22がレンズアレイ21よりも像側(+Z側)に配置されていたとしても、各フィルタに対する光の入射角を小さくすることができる。
また、フィルタアレイ22がレンズアレイ21よりも物体側に配置されている場合、レンズアレイ21に入射する軸外光線の欠け(ヴィネッティング)が発生してしまう可能性がある。よって、例えば吸収型のバンドパスフィルタなどの角度依存性が小さいフィルタを用いる場合や、フィルタの角度依存性よりも光利用効率を優先する場合には、フィルタアレイ22をレンズアレイ21よりも像側に配置することが好ましい。
本実施例に係る撮像システム100において、光学ユニット20を光学装置2に装着したり光学装置2を撮像装置1に装着したりする際に、夫々の結合部の製造の精度によっては取り付け誤差が生じる場合がある。この場合、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22と撮像素子11との位置関係に誤差が生じ、撮像素子11の撮像面に対するレンズアレイ21のピントずれ(デフォーカス)が生じてしまう可能性がある。そこで、レンズアレイ21を光軸方向に移動するための移動機構を設け、レンズアレイ21のピントを調整できるように構成することが望ましい。
あるいは、レンズアレイ21の代わりに撮像素子11を光軸方向に移動するための移動機構を設け、撮像素子11の移動によるピント調整(センサフォーカス)ができるように構成してもよい。なお、光学ユニット20や光学装置2の取り付け誤差によりレンズアレイ21の像面が撮像面に対して傾き、像面湾曲やレンズ部ごとに異なるピントずれが生じてしまう可能性がある。よって、撮像素子11の光軸に対する傾き(チルト角)を変更することができるように構成することが好ましい。さらに、撮像素子11を光軸に垂直な方向の成分を含む方向に移動させることで、像ブレ補正(手振れ補正)を行うことができるようにしてもよい。
また、フィルタアレイ22を構成するフィルタの透過特性によっては、各レンズ部の夫々において生じるピントずれの向きやずれ量が互いに異なる場合がある。よって、レンズアレイ21を構成する複数のレンズ部の夫々の位置を個別に調整することができるように構成することがより好ましい。この場合、各レンズ部としてロッドレンズのような光軸方向に長いレンズを採用することで、各レンズ部を安定して保持することができるため、各レンズ部の調整時の光軸に対する傾き偏心の発生を抑制することが可能になる。
なお、色収差の補正などを目的として、各レンズ部を同一の光軸上に配置される複数のレンズによって構成した場合にも、各レンズ部を保持する鏡筒(小径鏡筒)が光軸方向に長い形状となるため、同様の効果を得ることができる。このとき、各鏡筒の内側の光軸に垂直な方向における端部(コバ部)に遮光塗料を塗布したり、隣接する鏡筒の間に遮光部材を設けたりすることにより、迷光が撮像面に到達することを抑制することができる。例えば、図2に示した遮光部材26を鏡筒として用いてもよい。
次に、撮像システム100における処理系について説明する。上述したように、撮像素子11から出力される画像情報の特性は、撮像装置1に装着される光学ユニット20の構成によって変化する。よって、撮像装置1にどのような光学ユニット20が装着されたとしても、画像情報を適切に処理するためのシステムを実現することが望ましい。具体的に、光学ユニット20は、撮像装置1に対して送信される情報を記憶する記憶部や、それを送受信するための通信部や、撮像装置1との接続を認識するための認識部を備えていることが好ましい。
図2では、撮像装置1が処理部P1を有し、光学ユニット20が記憶部P2を有する場合を示している。処理部P1は、少なくとも通信部及び認識部としての機能を備えている。記憶部P2は、光学ユニット20の固有情報を記憶している。撮像装置1やその他の外部装置は、記憶部P2にアクセスすることでこの固有情報を取得することができる。光学装置2の固有情報は、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22に関する情報を含んでいる。レンズアレイ21及びフィルタアレイ22に関する情報とは、例えばレンズアレイ21及びフィルタアレイ22の夫々の識別番号などの識別子(ID)や、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22の組み合わせに関する識別子等である。
処理部P1及び記憶部P2は、撮像装置1に光学ユニット20が装着された際に、結合部202,27及びマウント部24,13の夫々に設けられた電気接点を介して互いに電気的に接続される。処理部P1は、記憶部P2が記憶している光学ユニット20の固有情報を読み出す(受信する)ことによって、光学ユニット20が撮像装置1に装着されたこと(着脱状態)を認識したり、光学ユニット20の種別や個体を認識したりすることができる。なお、処理部P1及び記憶部P2の通信方法はこれに限定されるものではない。例えば、記憶部P2に通信部としての機能を持たせ、記憶部P2が自発的に情報を送信可能な構成とすることで、処理部P1及び記憶部P2が相互に情報(信号)を送受信するようにしてもよい。なお、各マウント部に電気接点が設けられていない場合などは、例えば光通信などの無線通信を行ってもよい。
本実施例に係る撮像システム100においては、撮像装置1が電源を有しており、光学ユニット20は電源を有していない。よって、上述したように、記憶部P2に通信部としての機能を持たせず、撮像装置1における処理部P1によって光学ユニット20の装着を認識するように構成することが望ましい。ただし、処理部P1及び記憶部P2が無線通信を行う場合は、撮像装置1及び光学ユニット20の夫々に電源を設け、夫々が個別に認識を行う構成を採ってもよい。
なお、必要に応じて、光学装置2が処理部を備える構成を採ってもよい。ここでの処理部としては、例えば、記憶部P2が記憶する情報を受信してその情報を処理部P1に送信する通信部としての機能や、光学ユニット20や撮像装置1との接続を認識するための認識部としての機能を有するものを採用することができる。光学装置2の処理部にこのような機能を持たせることで、光学ユニット20の構成を簡素にすることができる。また、処理部として、光学装置2の固有情報を記憶する記憶部としての機能を有するものを採用してもよい。光学装置2が処理部を備える場合は、光学装置2に電源を設けてもよい。ただし、上述したように撮像装置1と光学装置2とを一体的に構成する場合は、光学装置2に処理部や電源を設ける必要はない。
処理部P1は、画像処理部(プロセッサ)としての機能も備えており、受信した固有情報に応じて、撮像素子11から出力される画像情報を処理する。このとき、予め光学ユニット20におけるレンズアレイ21の情報(レンズ部の数や配置など)やフィルタアレイ22の情報(フィルタの透過特性や配置など)と固有情報を紐づけて、データテーブルとして処理部P1又は外部装置に記録しておくことが望ましい。これにより、処理部P1は、受信した固有情報をデータテーブルに照らし合わせることで、どのような構成(特性)の光学ユニット20が装着されたのかを認識することができる。
なお、必要に応じて、上述したようなレンズアレイ21やフィルタアレイ22の情報そのものを固有情報として記憶部P2に記録しておき、処理部P1が記憶部P2からその情報を取得するように構成してもよい。ただし、光学ユニット20の簡素化及び小型化のためには、記憶部P2に記録しておく情報は、上述したように光学ユニット20の種別や個体を弁別するための識別番号などの最小限のものとすることが望ましい。
例えば、フィルタアレイ22がバンドパスフィルタで構成されている場合、処理部P1はレンズアレイ21及びフィルタアレイ22の情報に基づいて、撮像素子11から出力される一つの画像情報を適切に分割及び再配列する。これにより、バンドパスフィルタに対応する波長帯域ごとの複数の画像情報(マルチスペクトル画像)を生成することができる。このとき、必要に応じて、複数の画像情報を重ね合わせる(再合成する)ことで、1枚のマルチスペクトル画像を生成してもよい。
なお、撮像素子11から出力される画像情報を外部装置に送信することで、処理部P1ではなく外部装置によって上述したような画像処理を行うように構成してもよい。この場合、光学ユニット20の情報と画像情報との対応関係をわかりやすくするために、記憶部P2が記憶している情報を画像情報に付加してから外部装置に送信することが好ましい。あるいは、記憶部P2を外部装置として撮像装置1の外部に設けてもよい。
以上、本実施例に係る撮像システム100によれば、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を光学ユニット20として一体的に保持しつつ撮像装置1に対して着脱可能に構成することで、同時に取得する複数の画像情報を容易に変更することができる。
[実施例2]
以下、本発明の実施例2に係る撮像システム200について説明する。本実施例に係る撮像システム200において、上述した実施例1に係る撮像システム100と同等の構成については説明を省略する。
図3は、本施例に係る撮像システム200の要部概略図(模式図)である。図3(a)は複数のレンズ部のうちの一部の光軸を含む断面を示し、図3(b)は撮像面を-Z方向から見たときの正面図を示している。撮像システム200の撮像システム100に対して異なる点は、光学ユニット20におけるレンズアレイ21及びフィルタアレイ22の構成と、光学装置2の物体側にレンズ装置(レンズユニット)3が装着されている点である。
本実施例に係る光学ユニット20において、レンズアレイ21は16個のレンズ部で構成され、フィルタアレイ22は各レンズ部に対応する16個のフィルタで構成されている。すなわち、光学ユニット20は16個の結像部を備えており、撮像素子11の撮像面には各結像部によって16個の像が形成される。このように、実施例1と実施例2とで結像部の数や配置が異なるが、各結像部に対して共通の撮像素子11を用いることで、撮像装置1の構成を変更せずに良好な画像情報を取得することができる。
レンズ装置3は、光学ユニット20の各結像部に対して共通である1枚以上のレンズを有する光学系(主光学系)31と、光学系31を保持する保持部材(鏡筒部)32を備えている。また、保持部材32は、光学装置2の第2のマウント部25と結合するためのマウント部33を有している。これにより、マウント部33を介してレンズ装置3を光学装置2に着脱可能とすることができる。ただし、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22と光学系31との相対位置を決定できるのであれば、この構成に限られるものではない。例えば、光学装置2の保持部材23に開口(穴部)を設け、その開口を介してレンズ装置3を撮像装置1に直接装着できるようにしてもよい。
ただし、光学装置2の第1のマウント部24とレンズ装置3のマウント部33とを同じ形状とし、撮像装置1のマウント部13と光学装置2の第2のマウント部25とを同じ形状とすることが望ましい。言い換えると、撮像装置1に対して着脱可能なレンズ装置3が、光学装置2にも着脱可能である構成とすることが望ましい。これにより、一般的なカメラとしての撮像装置1及び一般的な交換レンズとしてのレンズ装置3を用いて、複数の画像情報を一回の撮像で同時に取得できる撮像システムを構成することが可能になる。
本実施例に係るレンズ装置3は、撮像システム200の画角(撮像画角)を変換する役割を果たしている。すなわち、レンズ装置3を光学系31の構成が異なるものに交換することで、様々な画角に対応する画像情報を取得することができる。なお、レンズ装置3を用いずに、各レンズ部を複数のレンズ群で構成し、隣接するレンズ群の間隔を変更可能とすることで、撮像システム100の画角を変更することも可能である。しかし、その場合はレンズアレイ21の製造及び制御の難易度が高くなり、かつ光学ユニット20の構成が複雑化及び大型化してしまう。
よって、光学ユニット20の簡素化及び小型化のためには、本実施例のようにレンズ装置3の交換によって撮像システム100の画角を変更できるように構成すること望ましい。なお、レンズ装置3における光学系31を構成する少なくとも1枚のレンズを移動可能とすることで、ピント調整(フォーカシング)を行うようにしてもよい。また、光学系31を複数のレンズ群で構成して隣接するレンズ群の間隔を変更し、撮像システム100の焦点距離を変更することで、画角や結像倍率を調整できるようにしてもよい。
なお、レンズアレイ21における各レンズ部の焦点位置と撮像素子11の撮像面が一致している場合、無限遠に位置する物体から出射してレンズアレイ21に入射する光は平行光になる。よって、レンズ装置3における光学系31をコリメータ光学系として、光学系31が平行光をレンズアレイ21に導光するように構成することが望ましい。この構成によれば、各マウント部における取り付け誤差によりレンズ装置3が光軸に垂直な方向にずれた場合において、結像性能の変化を抑制することができる。
ただし、この構成においてレンズ装置3を取り外した場合、すなわち実施例1のように光学装置2のみを撮像装置1に装着して撮像を行う場合、近距離に位置する物体にピントが合わず、撮像画像においてボケが生じてしまう。よって、この構成においては、上述したようにレンズアレイ21と撮像素子11との相対位置を変化させるための機構を設けることで、フォーカシングを行うことができるようにすることが望ましい。
また、レンズ装置3は、光学ユニット20における記憶部P2と同様の処理部P3を備えていることが望ましい。処理部P3は、レンズ装置3に関する固有情報を記憶しており、その固有情報を光学ユニット20における記憶部P2を介して、又は直接撮像装置1における処理部P1に送信することができる。処理部P1は、レンズ装置3の固有情報に基づいて、レンズ装置3の種別や個体を認識することができる。また、処理部P1は、レンズ装置3の固有情報及び光学ユニット20の少なくとも一方の固有情報に応じて、撮像素子11から出力される画像情報を処理することができる。
[実施例3]
以下、本発明の実施例3に係る撮像システム300について説明する。本実施例に係る撮像システム300において、上述した実施例2に係る撮像システム200と同等の構成については説明を省略する。
図4は、本施例に係る撮像システム300の要部概略図(模式図)である。図4(a)は複数のレンズ部のうちの一部の光軸を含む断面を示し、図4(b)はレンズアレイ21の正面図を示し、図4(c)は撮像面の正面図を示している。撮像システム300の撮像システム200に対して異なる点は、レンズアレイ21を構成するレンズ部の数と、一部のレンズ部のサイズ及び配置である。
本実施例に係る光学ユニット20において、レンズアレイ21は13個のレンズ部で構成され、フィルタアレイ22は各レンズ部に対応する13個のフィルタで構成されている。すなわち、光学ユニット20は13個の結像部を備えており、撮像素子11の撮像面には各結像部によって13個の像が形成される。そして、図4(b)に示すように、本実施例に係るレンズアレイ21におけるレンズ部21dのサイズは他のレンズ部よりも大きい。具体的に、本実施例に係るレンズ部21dは、実施例2に係るレンズアレイ21において四つのレンズ部が配置されていた領域を占めるように配置されている。
本実施例では、各レンズ部が開口絞りの役割を兼ねており、各レンズ部のサイズ(有効径)によって各結像部の明るさ(F値)が決定されている。よって、レンズ部21dによって形成される像の光量は、他のレンズ部によって形成される像の光量よりも多い。このように、レンズアレイ21における一部のレンズ部のサイズを変更することで、複数の異なる光量情報を含む撮像情報を一度の撮像で取得することができる。なお、レンズ部21d以外にも、有効径のサイズが異なるレンズ部を設けてもよい。
また、本実施例では、レンズ部21dのサイズを他のレンズ部よりも大きくしたことに伴い、レンズ部21dの焦点距離を他のレンズ部よりも大きくし、かつ図4(a)に示すようにレンズ部21dを他のレンズ部よりも物体側に配置している。そのため、図4(c)に示すように、レンズ部21dによって形成される像11dが、他のレンズ部によって形成される像よりも大きくなっている。よって、撮像素子11における画素密度が一定である場合、像11dの解像度は他の像の解像度よりも高くなる。したがって、この構成によれば、複数の異なる解像度の撮像情報を一度の撮像で取得することができる。
例えば、フィルタアレイ22をバンド幅が互いに異なる複数のバンドパスフィルタで構成した場合、収差補正が比較的難しい長波長帯域に対応するバンドパスフィルタをレンズ部21dの光軸上に配置することで、十分な解像度を確保することができる。あるいは、レンズ部21dの光軸上にフィルタを配置せずに、レンズ部21dを輝度情報(輝度分布)の取得に特化させてもよい。この場合、像11dより取得した輝度情報に基づいて、他の像より取得した画像情報のダイナミックレンジの補正や、サブピクセル情報を利用した超解像処理などを行うことができる。
[実施例4]
以下、本発明の実施例4に係る撮像システム400について説明する。本実施例に係る撮像システム400において、上述した各実施例に係る撮像システムと同等の構成については説明を省略する。
図5は、本施例に係る撮像システム400の要部概略図(模式図)である。図5(a)は複数のレンズ部のうちの一部の光軸を含む断面を示し、図5(b)は撮像面の正面図を示している。撮像システム400の撮像システム100に対して異なる点は、光学装置2の物体側にレンズ装置3が装着され、かつ、光学装置2の内部に光学ユニット40,50が装着されている点である。
本実施例に係るレンズ装置3は、実施例2及び3に係るレンズ装置3と同様に、1枚以上のレンズを有する光学系31と、光学系31を保持する保持部材32を備えている。しかし、実施例2及び3に係る光学系31とは異なり、本実施例に係る光学系31は、物体からの光を集光することで物体の中間像を形成している。
本実施例に係る光学ユニット(第2の光学ユニット、拡散ユニット)40は、光を拡散させる拡散素子41と、拡散素子41を保持する保持部材401を備える。また、本実施例に係る光学ユニット(第3の光学ユニット、コリメータユニット)50は、1枚以上のレンズを有する光学系51と、光学系51を保持する保持部材501を備えている。拡散素子41は、レンズ装置3により形成される中間像面(1次結像面)の位置に配置されており、スクリーンとしての役割を果たしている。拡散素子41としては、拡散面(粗面)を有する拡散部材(拡散板)や、複数の微細なレンズで構成されるマイクロレンズアレイなどを採用することができる。光学系51は、拡散素子41からの光を平行光に変換するコリメータ光学系としての機能を有する。
そして、保持部材401は、保持部材23に設けられた結合部(第2の結合部部)28と結合するための結合部402を有し、保持部材501は、保持部材23に設けられた結合部(第3の結合部部)29と結合するための結合部502を有している。すなわち、本施例に係る撮像システム400は、各結合部を介して光学ユニット20,40,50の夫々を保持部材23に着脱可能な構成を採っている。これにより、各光学ユニットを個別に交換することができるため、取得したい画像情報や被写体の条件に応じて臨機応変に光学装置2の光学性能を変更することが可能になる。
なお、本実施例に係る撮像システム400は、光学ユニット50を用いることで、実施例2及び3に係る撮像システム200,300と同様に光学ユニット20に平行光が入射する構成を採っている。これにより、本実施例に係る光学装置2を、実施例2及び3に示したような物体の中間像を形成しないレンズ装置に対しても適用することが可能になる。よって、光学装置2及びレンズ装置3の互換性を確保するために、各装置のマウント部の形状は、夫々の光学系の構成にかかわらず同一の形状とすることが望ましい。
なお、本実施例のレンズ装置3のように物体の中間像を形成するレンズ装置を用いる場合は、その中間像面の位置に視野絞りを配置することが望ましい。これにより、撮像素子11の撮像面に形成される各像の境界の形状やサイズを適切に設定することができる。例えば、各結像部からの光が撮像面において互いに干渉する場合は、視野絞りに設けられる開口のサイズ(開口径)を小さくすればよい。このとき、撮像素子11の利用効率を向上させるためには、視野絞りの開口の形状を、撮像面を等分割することができる矩形などの形状とすることが望ましい。
また、撮像面における各像の境界は、視野絞りを中間像面の位置に近づける程明確になるため、本実施例のように中間像面の位置に拡散素子41を配置する場合は、視野絞りを拡散素子41に密着するように配置することが好ましい。すなわち、光学ユニット40が視野絞りを有する構成を採ることが好ましい。このとき、拡散素子41が厚みを持つ場合は、拡散素子41の内部での散乱の影響を低減するために、視野絞りを拡散素子41の像側に配置することがより好ましい。本実施例においては、図5に示すように、拡散素子41の中央部(矩形部)以外に遮光部材(遮光塗料)を設けることで、拡散素子41に視野絞りとしての機能を持たせることができる。あるいは、視野絞りを構成する遮光部材に設けられる開口部に拡散素子41を配置することで、視野絞りと拡散素子41とを一体的に構成してもよい。
中間像面の位置に拡散素子41を配置した場合、レンズ装置3からの光は拡散素子41によって拡散されるため、レンズ装置3からの光の入射角に関する情報が失われ、各像における視差の発生を抑制することができる。ただし、本実施例に係る撮像システム400を後述するような測距装置として用いる場合、各像の視差を用いて物体までの距離に関する情報を取得するため、レンズ装置3からの光の入射角に関する情報を残しておく必要がある。その場合は、視野絞りの直前に拡散素子41の代わりにフィールドレンズとしての正レンズを配置することで、入射角に関する情報を残しつつ本実施例と同様の機能を実現することができる。
図5(a)に示すように、光学ユニット40,50は光学ユニット20における記憶部P2と同様の記憶部P4,P5を備えていることが望ましい。このとき、記憶部P4に光学ユニット40に関する固有情報を記憶させ、記憶部P5に光学ユニット50に関する固有情報を記憶させることが好ましい。これにより、各結合部を介して又は直接、各固有情報を撮像装置1における処理部P1に送信することができる。処理部P1は、各固有情報に基づいて、レンズ装置3や光学ユニット20,40,50の種別や個体を認識することができる。また、処理部P1は、レンズ装置3や光学ユニット20,40,50の少なくとも一つの固有情報に応じて、撮像素子11から出力される画像情報を処理することができる。このとき、レンズ装置3の固有情報を用いて、レンズ装置3で生じる収差による画像情報への影響を補正してもよい。
ここで、本実施例に係る撮像システム400は、レンズ装置3によって結像した物体を光学ユニット20によって再結像する構成を採っているため、図5(b)に示すように、本実施例における撮像面には正立像が形成される。したがって、撮像装置1における処理部P1によって画像情報を適切に処理するためには、撮像面に形成される像が倒立像なのか正立像なのかを判別するための情報が必要になる。
よって、記憶部P4,P5の少なくとも一方には、像の反転の有無を識別するための情報を記憶させておくことが好ましい。例えば、光学装置2には物体の中間像を形成するレンズ装置のみが装着されるということを前提とする場合、記憶部P4,P5の少なくとも一方には物体の像が1回結像された(反転した)ということを識別するための情報を記憶させておけばよい。なお、仮に光学ユニット20における各結像部が物体を複数回結像する構成を採っている場合は、記憶部P2にも像の反転に関する情報を記憶させておけばよい。
[実施例5]
以下、本発明の実施例5に係る撮像システム500について説明する。本実施例に係る撮像システム500において、上述した実施例1に係る撮像システム100と同等の構成については説明を省略する。
図6は、本施例に係る撮像システム500の要部概略図(模式図)である。図6は複数のレンズ部のうちの一部の光軸を含む断面を示している。撮像システム500の撮像システム100に対して異なる点は、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を保持する保持部材201が夫々独立している点である。
本実施例に係る保持部材201は、レンズアレイ21を保持する第1の保持部材501と、フィルタアレイ22を保持する第2の保持部材502とを含んでいる。第1の保持部材501には、結合部27の一部である結合部51と結合するための結合部(着脱部)503が設けられ、第2の保持部材501には、結合部27の一部である結合部52と結合するための結合部(着脱部)504が設けられている。すなわち、保持部材201に設けられた結合部202は、複数の結合部51,52を含んでいる。このように、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を互いに独立した保持部材で保持する構成を採ることで、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を互いに独立して保持部材(鏡筒部)23に着脱することが可能になる。これにより、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22の組み合わせの選択肢を増やすことができる。
なお、実施例1において説明したように、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22を個別に交換可能な構成においては、夫々の相対的な位置ずれが生じる可能性がある。よって、第1の保持部材501及び第2の保持部材502が結合される結合部51,52が、単一の部材(剛体)に設けられていることが望ましい。例えば、保持部材23を単一の部材(剛体)で形成し、それに第1の保持部材501及び第2の保持部材502を付き当てて位置決めすることで、相対的な位置ずれを低減することができる。実施例1又は本実施例の何れの構成を採用するかについては、求める光学性能などに応じて選択すればよい。
図6に示すように、第1の保持部材501及び第2の保持部材501の夫々は、上述した記憶部P2の一部としての記憶部P21,P22を備えていることが望ましい。このとき、記憶部P21にレンズアレイ21に関する固有情報を記憶させ、記憶部P22にフィルタアレイ22に関する固有情報を記憶させることが好ましい。これにより、各結合部を介して又は直接、各固有情報を撮像装置1における処理部P1に送信することができる。処理部P1は、各固有情報に基づいて、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22の種別や個体を認識することができる。また、処理部P1は、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22の少なくとも一方の固有情報に応じて、撮像素子11から出力される画像情報を処理することができる。
なお、本実施例においては、実施例1とは異なり、フィルタアレイ22よりも像側にレンズアレイ21が配置された構成を採っている。これにより、フィルタアレイ22よりも物体側にレンズアレイ21が配置されている場合と比較して、フィルタアレイ22に対する光の入射角を制限しやすくなる。よって、フィルタアレイ22の角度特性を考慮してフィルタアレイ22に対する光の入射角を制限したい場合は、このような配置を採用することが好ましい。ただし、フィルタアレイ22の角度特性を考慮する必要がない場合は、レンズアレイ21及びフィルタアレイ22の位置関係は特に限定されるものではない。
また、本実施例においては、実施例1とは異なり、フィルタアレイ22が光軸方向において配列された複数の光学素子を含んでいる。具体的に、フィルタアレイ22は、各光軸上において物体側に配置されたバンドパスフィルタ(波長選択素子)と像側に配置された回折素子とを含んでいる。一般的なレンズにおいては、入射する光の波長毎に焦点距離が異なることに起因して軸上色収差が生じる。よって、フィルタアレイ22がバンドパスフィルタだけしか有していない場合、フィルタアレイ22を交換した際にピントずれが発生し、軸上色収差が大きく生じてしまう可能性がある。
そこで、本実施例のように、各バンドパスフィルタの透過波長帯域毎に異なる回折素子を配置することで、フィルタアレイ22を交換した際のピントずれを各回折素子によって補正するように構成することが好ましい。なお、バンドパスフィルタ及び回折素子を互いに接着してもよい。また、バンドパスフィルタ又は回折素子の何れか一方に対して、成膜や表面加工等によって他方の機能を付加することで、両方の機能を持たせてもよい。
[測距装置]
以下、上述した各実施例に係る撮像システムを車載カメラや監視カメラなどの測距装置として用いる場合について説明する。
光学ユニット20におけるレンズアレイ21を構成する各レンズ部の光軸は、X方向及びY方向の少なくとも一方において互いに離間しているため、各レンズ部により形成される像には視差が生じている。よって、この視差に関する情報(視差情報)に基づいて、撮像装置1の処理部P1や外部装置により物体までの距離に関する情報(距離情報)を取得することができる。なお、ここでの距離情報とは、物体との間隔、デフォーカス量、像ズレ量、などの物体との相対位置に関する情報のことであり、画像情報における物体の距離値を直接的に表すものでも、距離値に対応する情報を間接的に表すものでもよい。
例えば、図1(b)に示したフィルタアレイ22における何れか二つのフィルタを、互いに同じ透過波長域のバンドパスフィルタとすることにより、このバンドパスフィルタを含む結像部のペアがステレオ光学系(測距光学系)として機能する。すなわち、図1(a)に示した撮像システム100がステレオカメラ(測距装置)として機能することになる。よって、この結像部のペアにより形成されるステレオ像の視差情報に基づいて、物体の距離情報を取得することができる。
なお、ステレオ光学系として用いる結像部のペアは、水平方向(X方向)に配列されたものであっても、鉛直方向(Y方向)に配列されたものであっても、斜め方向に配列されたものであってもよい。ただし、ステレオ像の視差が大きいほど測距精度が向上するため、複数の結像部の中で最も離間したペアをステレオ光学系として用いることが好ましい。また、一対の結像部だけでなく、他の結像部のペアを測距に用いてもよい。奥行方向(Z方向)に配置される複数の物体を測距対象とする場合、手前の物体の背後にある物体の情報が不足するオクルージョンという問題が生じるため、三つ以上の結像部をセットとして測距に用いることがより好ましい。
[変形例]
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
例えば、光学ユニット20がレンズアレイ21及びフィルタアレイ22以外の光学素子を有する構成や、光学装置2が光学ユニット20の像側に配置される光学素子を有する構成を採用してもよい。また、上述した各実施例に係る各結合部は、結合のための特別な構造を有するものに限られない。例えば、光学装置2における保持部材23及び光学ユニットの何れか一方にのみ結合のための構造を設け、他方には何も設けない場合においても、互いに結合している部分を結合部とみなすことができる。
上述した各実施例では、レンズ部が開口絞りの役割を兼ねている場合、すなわちレンズ部の有効径がレンズ部自身によって定まる場合について説明したが、開口絞りを別部材として設けてもよい。また、一つの結像部において、レンズ部が複数のレンズを含む場合や、フィルタが複数のフィルタ素子を含む場合は、レンズ及びフィルタ素子を光軸方向において交互に配置してもよい。実施例5と同様に、他の実施例においてもフィルタ素子として回折素子を採用してもよい。
さらに、レンズ部の瞳をXY断面において分割するように配置される複数のフィルタを備える結像部を採用してもよい。このとき、撮像面におけるその結像部に対応する領域に微小なレンズアレイを設けることで、撮像システムをプレノプティックカメラとして用いることができる。この構成によれば、一つのレンズ部の瞳を通過する光が分離されて、撮像面における互いに異なる画素に入射するため、より多くの画像情報を取得することが可能になる。
上述した実施例2及び3においては、光学装置2とレンズ装置3とが互いに着脱可能となっているが、必要に応じて夫々を一体化することで、互いの取り付け誤差の発生を抑制してもよい。例えば、光学装置2とレンズ装置3とを一体的に構成することで、撮像装置1に対して着脱可能な一つのレンズ装置(アクセサリ装置)としてもよい。
実施例4においては、光学ユニット20,40,50の夫々が保持部材23に対して個別に着脱可能となっているが、必要に応じて何れか二つ又は全てを一体化することで、互いの取り付け誤差の発生を抑制してもよい。また、実施例4において、光学ユニット20,40,50の全てを保持部材23に対して着脱可能とせずに、一部の光学ユニットを保持部材23と一体的に構成してもよい。例えば、光学系51が比較的大きな口径を有し様々な光学ユニット20に対応できる構成の場合、光学ユニット50を頻繁に交換する必要は無いため、位置精度を確保するために光学ユニット50を保持部材23に固定することが好ましい。
また、実施例4において、必要に応じて光学ユニット40,50を光学装置20とは別体のアダプタ装置(アクセサリ装置)として構成してもよい。例えば、図7に示すように、拡散素子41及び光学系51を共通の保持部材401により保持した光学ユニット40と、保持部材401の結合部402に結合可能な結合部42が設けられた保持部材(鏡筒部)43とを備えるアダプタ装置4を採用してもよい。なお、図7では、光学ユニット40,50を一体化しているが、実施例4と同様に別体としてもよい。また、必要に応じて、保持部材401と保持部材43とを一体的に構成してもよい。
アダプタ装置4における保持部材43は、光学装置2の第2のマウント部25と結合するためのマウント部44と、レンズ装置3のマウント部33と結合するためのマウント部45とを有している。これにより、各マウント部を介してアダプタ装置4を光学装置2及びレンズ装置3に着脱可能とすることができる。このとき、レンズ装置3が撮像装置1及び光学装置2に直接着脱することができない場合であっても、アダプタ装置4を介することで間接的に着脱することが可能になる。
ただし、光学装置2の第1のマウント部24とレンズ装置3のマウント部33とを同じ形状とし、撮像装置1のマウント部13とアダプタ装置4のマウント部45とを同じ形状とすることが望ましい。言い換えると、撮像装置1に対して着脱可能なレンズ装置3が、アダプタ装置4にも着脱可能である構成とすることが望ましい。これにより、一般的なカメラとしての撮像装置1及び一般的な交換レンズとしてのレンズ装置3を用いて、複数の画像情報を一回の撮像で同時に取得できる撮像システムを構成することが可能になる。