JP7515145B1 - 電気・電子回路用接点部材の製造方法、及び電気・電子回路用接点部材の製造装置 - Google Patents

電気・電子回路用接点部材の製造方法、及び電気・電子回路用接点部材の製造装置 Download PDF

Info

Publication number
JP7515145B1
JP7515145B1 JP2023216415A JP2023216415A JP7515145B1 JP 7515145 B1 JP7515145 B1 JP 7515145B1 JP 2023216415 A JP2023216415 A JP 2023216415A JP 2023216415 A JP2023216415 A JP 2023216415A JP 7515145 B1 JP7515145 B1 JP 7515145B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
base material
spring base
rotating electrode
metal wire
contact member
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2023216415A
Other languages
English (en)
Inventor
嘉明 笠井
恵二 松浦
司 高橋
Original Assignee
株式会社セプト・ワン
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 株式会社セプト・ワン filed Critical 株式会社セプト・ワン
Priority to JP2023216415A priority Critical patent/JP7515145B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7515145B1 publication Critical patent/JP7515145B1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Resistance Welding (AREA)

Abstract

【課題】金属線をバネ母材の所定の位置に精度よく溶接して接点部材を製造するための方法を提供することである。【解決手段】本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法は、バネ母材供給工程と、金属線供給工程と、供給されたバネ母材と金属線とを重合した状態で上部回転電極と下部回転電極との間に挟持して、連続的にシーム溶接して電気・電子回路用接点部材を作製する接点部材作成工程を有する。また、接点部材作成工程において、バネ母材を回転電極の基準面に押し当てることにより、バネ母材の回転電極に対する位置が制御されると共に、金属線が下部回転電極の外周部に設けられたV字形状のガイド溝に案内されてバネ母材の所定の位置に位置決めされてシーム溶接される。【選択図】図1

Description

本発明は、電気・電子回路を構成する各種の接触部品に使用される、電気・電子回路用接点部材の製造方法、及び電気・電子回路用接点部材の製造装置に関するものである。
印刷抵抗体と組み合わせて使用される摺動用接点等を構成する電気・電子回路に用いる接点部材は、接触抵抗等の電気的特性と摺動時の安定性を保持するため、バネ性、耐摩耗性等の機械的特性が求められる。このため、接触抵抗が小さく、耐磨耗性に優れた貴金属系の材料を用いる構成とすることが望まれるが、貴金属材料はコスト面から必要最小限の使用にとどめるため、一般的には、接点部のみに貴金属系材料を使用し、母材となる「バネ材」に、溶接や、メッキ等で貴金属系材料を配するのが通例となっている。
この様にして構成される電気・電子用接点は、使用される接触部品の構造に適した形状に加工し使用されるが、その際、接点の接触部分が所望の位置に適切に配置されていることが必須要件であり、接触部品としての性能と信頼性を左右するため、金属線を母材(バネ材)の正確な位置に溶接することが必要となる。
特許文献1(特開平9-106874号公報)には、接点/接続部材用貴金属線材を接点/接続部材用母材に、抵抗溶接により溶着する電気電子部品用接点/接続部材の製造方法及びその製造装置が記載されている。特許文献1に記載の電気電子部品用接点/接続部材の製造方法では、溶接位置においてマザー回転電極(上部回転電極)と可変回転ローラー電極(下部回転電極)との間で線材を母材の上面または下面に押し付けながら両電極間に通電することにより拡散接合させて、線材が母材の上面または下面の所定位置に溶着される。
特開平9-106874号公報
しかし、上記の特許文献1に記載された電気・電子部品用接点或いは接続部材の製造方法においては、金属線は、下部回転電極に設けられたV溝にガイドされて位置決めされる。一方、母材(バネ材)については、位置決め機構がないために、この母材(バネ母材)が回転電極に送られる際に、変形したり、母材の送り方向(前後方向)に対して、左右に揺動したりした場合に、金属線、或いは下部回転電極のV溝との相対的な位置が変化する場合がある。このため、金属線を母材(バネ材)の正確な位置に溶接されていない場合があった。
求められているのは、金属線を母材(バネ材)に所定の溶接強度で溶接するための接点部材の製造方法及び製造装置を提供することである。
本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法は、バネ母材に金属線を重ね合わせて溶接する電気・電子回路用接点部材の製造方法であって、前記バネ母材を上部回転電極及び下部回転電極を含む回転電極に供給するためのバネ母材供給工程と、前記金属線を前記回転電極に供給するための金属線供給工程と、前記バネ母材と前記金属線とを重合した状態で前記上部回転電極と前記下部回転電極との間に挟持して、連続的にシーム溶接して電気・電子回路用接点部材を作製する接点部材作成工程とを有する。また、前記接点部材作成工程において、前記バネ母材を前記回転電極の基準面に押し当てることにより、前記バネ母材の前記回転電極に対する位置が制御されると共に、前記金属線が前記下部回転電極の外周部に設けられたV字形状のガイド溝に案内されて前記バネ母材の所定の位置に位置決めされてシーム溶接されることを特徴とする。
本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法では、接点部材作成工程において、バネ母材を回転電極の基準面に押し当てることにより、バネ母材の回転電極に対する位置が制御されると共に、金属線が下部回転電極の外周部に設けられたV字形状のガイド溝に案内されてバネ母材の所定の位置に位置決めされてシーム溶接される。これにより、金属線をバネ母材の所定の位置に正確に高精度で溶接することができる。また、金属線がバネ母材の所定の位置に正確に高精度で溶接された電気・電子回路用接点部材を再現性よく、かつ安定して製造することができる。
また、本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法では、前記バネ母材と前記金属線とが前記上部回転電極と前記下部回転電極との間に挟持された状態で、前記下部回転電極の頂部と前記バネ母材の表面との間の離間距離が所定の範囲に制御された状態で、前記金属線と前記バネ母材とがシーム溶接されることを特徴とすることができる。
本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法では、下部回転電極の頂部と前記バネ母材の表面との間の離間距離が所定の範囲に制御された状態で、金属線とバネ母材とがシーム溶接されるので、金属線の頂部の円形が保持された状態で確実に、且つ再現性良く金属線とバネ母材とをシーム溶接することができる。また、これにより、接触抵抗等の電気的特性と摺動時の安定性に優れた電気・電子回路用接点部材を提供することができる。
また、本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法において、前記下部回転電極の頂部と前記バネ母材の表面との間の前記離間距離が、前記下部回転電極の外周部に設けられたV字形状の前記ガイド溝の角度と深さによって設定されることを特徴としてもよい。
また、本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法において、前記下部回転電極の頂部と前記バネ母材の表面との間の前記離間距離が、30μm以上、50μm以下の範囲であることを特徴としてもよい。
また、本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法において、前記接点部材作成工程後に、前記電気・電子回路用接点部材を検査するための検査工程を、更に含むことができる。さらに、前記検査工程は、前記バネ母材と前記金属線とがシーム溶接された溶接部の外縁部が表面に現れた溶出部量を測定し、測定した当該溶出部量により良否判定を行うことを特徴としてもよい。これにより、シーム溶接された溶接部を切断して、その断面を確認する破壊試験を行わずに、溶接部の溶出部量を測定することにより、溶接状態の良否判定を行うことが可能である。
また、本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法において、前記溶出部量と、前記溶接部に形成される接合部の生成状態との関係を示す溶出部データをあらかじめ取得し、前記溶出部データに基づいて、前記溶出部量による良否判定を行うことを特徴としてもよい。
また、本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造装置は、バネ母材に金属線を重ね合わせて溶接する電気・電子回路用接点部材の製造装置であって、バネ母材供給手段と、金属線供給手段と、上部回転電極及び下部回転電極を含み、前記バネ母材供給手段から供給された前記バネ母材と前記金属線供給手段から供給された前記金属線とを重合した状態で前記上部回転電極と前記下部回転電極との間に挟持して、連続的にシーム溶接するための回転電極と、前記バネ母材を前記回転電極の基準面に押し当てることにより、前記バネ母材の前記回転電極に対する位置を制御するための突当ユニットとを備える。前記下部回転電極は、外周部に設けられたV字形状のガイド溝を有し、前記位置決めユニットにより、前記バネ母材の前記回転電極に対する位置が制御された状態を維持しながら、前記金属線が、前記下部回転電極に設けられたガイド溝に案内された前記バネ母材の所定の位置に位置決めされてシーム溶接されるように構成されたことを特徴とする。電気・電子回路用接点部材の製造装置を用いて金属線とバネ母材とをシーム溶接することにより、金属線をバネ母材の所定の位置に正確に高精度で溶接することができる。
また、本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造装置において、前記バネ母材に前記金属線をシーム溶接する時に、前記バネ母材のたわみ量を制御するため位置決めユニットを更に備えることができる。前記位置決めユニットは、所定の距離で隔離されて、互いに対向して配置された第1押部材と第2押部材とを有し、前記バネ母材が前記第1押部材と前記第2押部材との間に形成された空隙を通過することにより、前記バネ母材のたわみ量が制限されるように構成されていることを特徴としてもよい。
本発明に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法では、バネ母材と金属線とを重合した状態で上部回転電極と下部回転電極との間に挟持して、連続的にシーム溶接して電気・電子回路用接点部材を作製する接点部材作成工程を有し、バネ母材を回転電極の基準面に押し当てることにより、バネ母材の回転電極に対する位置を制御すると共に、金属線が下部回転電極の外周部に設けられたV字形状のガイド溝に案内されてバネ母材の所定の位置に位置決めされてシーム溶接される。これにより、金属線をバネ母材の所定の位置に正確に高精度で溶接することができる。また、金属線がバネ母材の所定の位置に正確に高精度で溶接された電気・電子回路用接点部材を再現性よく、かつ安定して製造することができる。
図1は、本実施形態に係る電気・電子回路に用いる接点部材を製造するための接点部材製造装置を模式的に示す図である。 図2は、接点部材製造装置における回転電極部の拡大図である。 図3は、接点部材製造装置における位置決めユニット及び突当ユニットを説明するための図である。 図4は、図3のIV―IV線に沿って取られた断面図である。 図5は、回転電極の側面拡大図である。 図6は、本十形態に係る電気・電子回路用接点部材の製造方法を説明するためのフローチャート図である。 図7は、回転電極に供給するパルス電流波形を概略的に示す図である。 図8は、シーム溶接時の状態を説明するための概略図である。図8(a)は、シーム溶接前の状態を説明するための図である。また、図8(b)は、シーム溶接後の状態を説明するための図である。 図9は、シーム溶接部断面の電子顕微鏡(SEM)写真である。 図10は、下部回転電極の頂部とバネ母材の表面との間の離間距離と溶接状態の関係を説明するための図である。図10(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ、離間距離が、30μm、50μm、及び40μmの場合の溶接状態の模式図である。 図11は、シーム溶接後の溶け出し部を説明するための図である。図11(a)は、バネ母材に金属線をシーム溶接した接点部材の側面図を模式的に示す図である。また、図11(b)は、バネ母材に金属線をシーム溶接した接点部材の上面図を模式的に示す図である。 図12は、バネ母材に金属線をシーム溶接した接点部材の斜視図を示す図である。 図13は、シーム溶接完了後に、加工して製造される電気・電子回路に用いる接点部材製品の一例を示す図である。
いくつかの実施形態に係る電気・電子回路に用いる接点部材の製造装置、及び電気・電子回路に用いる接点部材の製造方法を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。説明中、「上」、「下」、「右」、「左」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
本実施形態に係る接点部材の製造装置は、電気・電子回路に用いる接点部材を製造するための装置である。より詳しくは、接点部材の接点部に使用する金属線を、母材となる「バネ母材」にシーム溶接するための装置である。金属線の材料としては、例えば、パラジウム、銀などの貴金属系材料を主原料とする合金を用いることができる。また、バネ母材の材料としては、例えば、銅とニッケルの合金などを用いることができる。
図1に、本実施形態に係る電気・電子回路に用いる接点部材を製造するための接点部材製造装置1を模式的に示す。また、図2に、接点部材製造装置における回転電極部の拡大図を示す。
図1を参照すると、接点部材製造装置1は、例えば、帯状のバネ母材に金属線を重ね合わせてシーム溶接して形成される電気・電子回路用接点部材の製造装置である。図1に示すように、接点部材製造装置1は、バネ母材供給手段2、金属線供給手段3、上部回転電極及び下部回転電極を有する回転電極4、及び合体品の巻取手段5(巻取装置)を備えることができる。
図1を参照しながら、接点部材製造装置1の概要を説明する。接点部材製造装置1において、バネ母材は、バネ母材用リール6に巻き付けられて収納されおり、バネ母材供給手段2に配置されている第一検知センサー8と第2検知センサー9の間に通される。接点部材製造装置1の運転が開始すると、バネ母材用リール6を回転するリール駆動モーターが回転し、バネ母材7が回転電極4に送り出される。同時に、金属線リール10に巻かれた金属線11も、回転電極4に送りだされる。その後、バネ母材7と金属線11は、上下の回転電極に挟まれて、シーム溶接され、接点部材が形成される。回転電極4は、図2に示すように、上部回転電極14と、下部回転電極15を有する。回転電極4で溶接された接点部材40は、接点部材製造装置の出口側、すなわち巻取手段5に向けて溶接完了品として送り出される。
バネ母材用リール6に巻き付けられて収納されているバネ母材7は、バネ母材用リール6に巻き癖がかかった状態や硬く巻き付けられた状態で巻き付けられていることがあり、この状態でバネ母材7が回転電極4に送り出されると、バネ母材用リール6を回転させるリール駆動モーター(図示せず)に不規則に負荷が掛り、回転数が不規則に変化する場合がある。このとき、バネ母材7の供給スピードが変化するため、バネ母材用リール6から供給されるバネ母材7にたるみが生じることがある。
本実施形態では、バネ母材7を回転電極4に供給するためのバネ母材供給装置2を設けている。図1に示すように、バネ母材供給装置2は、バネ母材用リール6と、バネ母材用リール6から供給されるバネ母材7のたるみ量を検知するたるみ検知センサーと、たるみ検知センサーからの信号を検出して、リール駆動モーターの回転力を制御するリール駆動モーター制御装置を有することができる。本実施形態では、たるみ検知センサーは、第1検知センサー8と、第1検知センサー8と対向して配置される第2検知センサー9とから構成されており、バネ母材7が、第1検知センサー8と第2検知センサー9との間を通過しながら回転電極4に送り出されるときに、第1検知センサー8とバネ母材7との距離、及び第2検知センサー9とバネ母材7との距離を検知している。バネ母材7が所定以上のたるみが生じた時、第1検知センサー8とバネ母材7との距離、及び第2検知センサー9とバネ母材7との距離が変化したことを検知し、この第1検知センサー8とバネ母材7との距離、及び第2検知センサー9とバネ母材7との距離が所定の値となるようにリール駆動モーターを制御している。これにより、所定のたるみを有しながら、バネ母材7を回転電極4に供給することができる。
バネ母材7にたるみが生じると、本装置では、溶接する際の上下回転電極でバネ母材7を把持する力は、溶接性を決定する条件(重り)と関係している。このため、回転電極によりバネ母材7を把持する力には、制限がある。バネ母材7にたるみがあると、相対的に弱く把持された状態では、バネ母材7の自重により、バネ母材7が後戻りする応力が発生し、後述する金属線11とのシーム溶接位置のズレが生じて不良となる。バネ母材供給手段2を導入することで、バネ母材7のスムーズな供給となり、所定のたるみを維持しながら、バネ母材7を回転電極4に供給することができる。
また、図1を参照すると、金属線11は、金属線リール10に巻き付けられて収納されている。接点部材製造装置1の運転が開始すると、金属線11は、バネ母材7と共に、回転電極4に送られ、上下回転電極14、15に挟まれてシーム溶接が行われる。図1,及び図2に示すように、本実施形態では、金属線リール10に巻かれた金属線11は、金属線ローラー16、金属線ガイド17を通過後、回転電極4に送られるように構成されている。金属線ガイド17は、金属線ローラー16と上下回転電極14、15との間に配置されている。
金属線ガイド17には、金属線11を引っ掛けてガイドするためのガイド部を有することができる。金属線ガイド17は、高さや角度を調整することにより、金属線を所定の角度で回転電極に送り出すことができる。また、この金属線ガイド17には、金属線11の有無を感知する金属線検知センサー(図示せず)が取り付けられている。金属線検知センサーは、金属線リール10から回転電極4に送られる金属線11が無くなったことを検知するために取り付けられている。例えば、金属線検知センサーが、回転電極4に送る金属線が無くなったことを検知した場合、アラームを鳴らしたり、接点部材製造装置1の運転を停止させることができる。
図3を参照すると、上下回転電極14、15の近傍に、位置決めユニット18と突当ユニット19が取り付けられている。電気・電子回路に用いる接点部材において、バネ母材7に溶接する金属線11は、高い精度で正確にバネ母材7の所定の位置に溶接される必要がある。このバネ母材7の所定の位置に金属線11を溶接するために、シーム溶接時のバネ母材7のたわみ量を制御するための位置決めユニット18、及び突当ユニット19を、上下回転電極14、15の近傍に設けている。
図3に、位置決めユニット18、及び突当ユニット19を説明するための図を示す。位置決めユニット18、及び突当ユニット19,及び上下回転電極14、15は、回転電極保持台に取り付けられて、それぞれの相対的な位置が固定されている。
また、図4には、図3のIV―IV線に沿って取られた断面図を示す。図3を参照すると、位置決めユニット18は、略コの字形状を有する板状の第1押部材20と、第1押部材と対向して配置された第2押部材21を上下に配置して、間に空隙を設け、この第1押部材20と第2押部材21の間の空隙を、バネ母材7が通過するように構成されている。第1押部材20と第2押部材21とは、突当ユニット19と対向している面と反対側の端部が、支持部材により支持されている。さらに、第1押部材20と第2押部材21の間には、支持部材に挿通されて、回転自在に支持されたベアリング24が設けられている。バネ母材7と金属線11がシーム溶接されながら、前方に移動する際に、ベアリング24にバネ母材7が押し当てられながら、スムーズに移動することができる。
また、位置決めユニット第1押部材20と配置された第2押部材21は、それぞれ前側アーム部22及び後側アーム部23を備えることができる。前側アーム部22及び後側アーム部23の間に、上下回転電極14、15が配置されている。前側アーム部22及び後側アーム部23の間の距離は、回転電極が接触せずに、かつ、シーム溶接時のバネ母材7のたわみの影響を低減できる程度に設定されており、本実施形態では、約35mm程度の大きさに設定されている。
また、位置決めユニット18の第1押部材20と第2押部材21の間の空隙の大きさは、バネ母材7のたわみ量を制限する範囲により決定することができる。バネ母材7のたわみ量は、好適には、0.125mm以下に制限することが好ましい。上下回転電極14、15によりシーム溶接する際に、バネ母材7に所定以上のたわみがあると、バネ母材7に溶接する金属線11の位置にバラツキが生じることがある。この金属線11のバネ母材7への溶接位置のバラツキを低減するために、バネ母材7のたわみ量を、位置決めユニット18の第1押部材20と第2押部材21の間の空隙の大きさにより、制限することができる。本実施形態では、第1押部材と第2押部材の間の空隙は、約0.125mm程度に設定されている。
また、前述したように、金属線11を溶接するバネ母材7の位置を制御するために、位置決めユニット18を設けて、シーム溶接時のバネ母材7のたわみ量を制御することに加えて、突当ユニット19を設けて、バネ母材7の回転電極に対する左右方向(X方向)の位置を制御している。バネ母材7の上下回転電極に対する左右方向の位置ズレによっても、バネ母材7に溶接する金属線11の位置にバラツキが生じる。この左右方向の位置ずれが生じると、電気・電子回路に用いる接点部材(図10参照)の電極としての仕様を満足しなくなる場合がある。金属線11の左右方向のずれの許容範囲は、例えば、左右に0.01~0.03mm程度である。
図3と図4を参照すると、突当ユニット19は、バネ母材7を、位置決めユニット18のベアリング24に突き当てるための突当ローラー25を有することができる。本実施形態において、このベアリング24が、上下回転電極14、15に対する基準面を形成している。突当ローラー25は、弾性部材26により、所定の付勢力により、バネ母材7に押し当てられている。突当ユニット19により、上下回転電極(或いは、回転電極4に設けられた金属線案内用のためのV字形状のガイド溝27)に対するバネ母材7の位置を高精度に制御することができる。本実施形態では、バネ母材7と金属線11のシーム溶接位置を、0.02mmの精度で制御することができる。
本実施形態において、突当ユニット19により、バネ母材7を突き当てることにより、回転電極に対するバネ母材の位置を高精度に制御しているが、このとき、バネ母材7が左右方向に押されることにより、上方向または下方向に膨らみ、左右方向に変形する可能性がある。このバネ母材7の変形によっても、バネ母材7に溶接する金属線11の位置にバラツキが生じる可能性がある。このバネ母材7の上下方向の膨らみによる変形量は、位置決めユニット18の空隙部によって制限される。したがって、突当ユニット19によりバネ母材7が左右方向に押されて変形したとしても、位置決めユニット18と協働することにより、バネ母材7に溶接する金属線11の位置のバラツキを低減することができる。
電気・電子回路に用いる接点部材は、相対する接触体に当接する部分にのみ金属線11が配される構造となり、この金属線11の位置がずれたり、金属線11の頂部がつぶれたりすることが無いように微細な設計を要求されているものである。本実施形態において、バネ母材7に金属線11をシーム溶接した接点部材の斜視図を図11に示す。この接点部材をプレス加工にて打ち抜いて図12に示すような電子部品用接点となす。バネ母材7にシーム溶接される金属線11の位置がずれてしまうと、図12に示す電子部品用接点のB部の位置がずれてしまうこととなり、電子部品用接点としての品質を満足することが出来ないものとなってしまう。このため、位置決めユニット18と突当ユニット19の協働により金属線11の左右方向のずれを規制する必要がある。
次に、シーム溶接を行う回転電極について詳細に説明する。図5に、前側から観た回転電極の側面拡大図を概略的に示す。
図5を参照すると、回転電極は、互いに対向して配置された上部回転電極14と下部回転電極15とから成ることができる。図5に示すように、下部回転電極15は、外周に沿って周設されたV字形状のガイド溝23を有する。金属線11は、回転電極の入口側から供給され、下部回転電極15のV字形状のガイド溝23に保持され、上部回転電極14と下部回転電極15との間に把持されたバネ母材7の表面に押圧された状態で、回転電極に溶接電流が印加され、金属線11がバネ母材7表面の所定位置にシーム溶接されることができる。回転電極が回転しながら、このシーム溶接を行うことにより、金属線11をバネ母材7の表面に連続的に溶接することができる。
再び図1、及び図2を参照すると、上部回転電極14には上部給電シャフト(図示せず)が接続固定されており、上部給電シャフトが、上部ハウジング(図示せず)に支持され上部回転電極14を回動自在に支持している。同様に、下部給電シャフト(図示せず)は下部ハウジング(図示せず)に支持され下部回転電極15を回動自在に支持している。尚、下部給電シャフトにはチルド冷却水を通す通水孔(図示せず)が軸方向に穿設されている。
本実施形態では、上部給電シャフト、及び下部給電シャフトに設けられた通水孔に、冷却水を通すことにより、溶接時の回転電極の温度上昇を抑制するための冷却水を供給するための循環冷却手段を設けて、上部回転電極14及び下部回転電極15を冷却するように構成されている。
次に、接点部材製造装置1を用いた電気・電子回路に用いる接点部材の製造方法について詳細に説明する。図5に、電気・電子回路に用いる接点部材の製造方法を説明するためのフローチャート図を示す。図5を参照すると、接点部材の製造方法は、バネ母材供給工程S01、金属線供給工程S02、シーム溶接工程S03、検査工程S04、及び巻取工程S05を含むことができる。以下に、これらの各工程について説明する。
(バネ母材供給工程S01)
まず、バネ母材供給工程S01について説明する。バネ母材供給工程S01において、バネ母材供給装置2から、バネ母材7を回転電極4に供給する。バネ母材7は、バネ母材用リール6に巻き付けられて収納されおり、たるみ検知センサー8及び9の間を通過して、回転電極に供給されることができる。たるみ検知センサーは、第1検知センサー8と、第1検知センサー8と対向して配置される第2検知センサー9とから構成されている。
バネ母材用リール6に巻き付けられて収納されているバネ母材7は、バネ母材用リール6に巻き癖がかかった状態や、硬く巻き付けられた状態で巻き付けられていることがあり、この状態でバネ母材7が回転電極に送り出されるとバネ母材用リール6を回転するリール駆動モーターに不規則に負荷がかかり、回転数が不規則に変化することがある。
リール駆動モーターの回転数が不規則に変化すると、バネ母材供給手段2から供給されるバネ母材7の延伸方向(図3におけるY方向)にたるみが生じることがある。バネ母材7にたるみが生じることにより、バネ母材7が重みでバネ母材供給装置2側に引き戻される。このとき、バネ母材7に、延伸方向にたるみが生じると同時に、左右方向(X方向)に振れる場合がある。この結果、バネ母材7の回転電極に対する左右方向(X方向)の位置にばらつきが生じ、バネ母材7に金属線11をシーム溶接する際に、金属線11の位置にズレが生じることがある。
本実施形態では、バネ母材7に所定以上のたるみが生じた時、第1検知センサー8とバネ母材7との距離、及び第2検知センサー9とバネ母材7との距離が変化したことをリール駆動モーター制御装置が判断し、この第1検知センサーとバネ母材7との距離、及び第2検知センサーとバネ母材7との距離が所定の値となるように、リール駆動モーターの回転を制御し、これによりバネ母材7の供給量を制御することができる。この結果、所定のたるみ量を有しながら、バネ母材7を回転電極に供給することができる。
(金属線供給工程S02)
また、金属線供給工程S02において、金属線11がバネ母材7と共に回転電極に供給される。金属線11は、金属線用リール10に巻き付けられて収納されている。接点部材製造装置1の運転が開始すると、金属線11は、バネ母材7と共に、回転電極に送られ、バネ母材7と共に挟まれてシーム溶接が行われる。本実施形態では、金属線リール10に巻かれた金属線11は、金属線ローラー16、金属線ガイド17を通過後、回転電極に送られるように構成されている。金属線ローラー16と回転電極との間に、金属線ガイド17を設けることにより、回転電極に送られる金属線11の高さや角度を調整することができる。この結果、金属線11を所定の角度で回転電極に送り出すことができる。
また、金属線ガイド17には、金属線検知センサー(図示せず)が取り付けられており、この金属線検知センサーにより、金属線の残量が検知される。金属線検知センサーが、金属線が無くなったことを検知した場合、接点部材製造装置1の運転を停止させることができる。なお、金属線11は、シーム溶接を行う際に回転電極が回転することにより、バネ母材7と共に回転電極に供給される。
(シーム溶接工程S03)
次に、シーム溶接工程S03について、詳細に説明する。バネ母材供給装置2により回転電極に送られるバネ母材7と、金属線供給手段3により回転電極に送られる金属線11とは、シーム溶接工程S03においてシーム溶接される。シーム溶接工程S03は、位置決め工程S03aと溶接工程S03bとを含むことができる。
(a)位置決め工程S03a
まず、回転電極に送られたバネ母材7は、回転電極4の位置に対して、所定の位置に配置されるように、突当ユニット19、及び位置決めユニット18により位置決めされる。まず、バネ母材7は、突当ユニット19の突当ローラー25により、バネ母材7の幅方向(X方向)に押圧されて、位置決めユニット18のベアリング24に突き当てられる。突当ユニット19により、回転電極(或いは、回転電極に設けられた金属線案内用のV字形状のガイド溝27)に対するバネ母材7の位置を高精度に制御することができる。このとき、バネ母材7が、突当ユニット19の突当ローラー25により幅方向(X方向)に押圧されることにより、バネ母材7の中央部が上方向に盛り上がるように変形することがある(以下、このバネ母材の変形を「たわみ」と言う。)。
バネ母材7の中央部が上方向に盛り上がるように変形すると、下部回転電極15に形成された金属線案内用のV字形のガイド溝27とバネ母材7との相対的な位置が変わるため、下部回転電極15のV字形のガイド溝27に保持された金属線11がバネ母材7に溶接される位置が、バネ母材7の変形した山なりの斜面分だけずれてしまうことになる。
本実施形態では、位置決めユニット18において、対向して上下に配置された第1押部材20と第2押部材21の間の空隙に、バネ母材7を通過させて、バネ母材7のたわみ量を所定の範囲に制限することができる。本実施形態では、第1押部材20と第2押部材21の間の空隙の大きさにより、バネ母材7のたわみ量は、約0.125mm以下に制限されている。
また、本実施形態では、突当ユニット19及び位置決めユニット18により位置決めすることにより、バネ母材7と金属線11のシーム溶接位置を、左右に0.01~0.03mm程度の精度で制御することができる。突当ユニット19によりバネ母材7が左右方向に押されて変形したとしても、位置決めユニット18と協働することにより、バネ母材7に溶接する金属線11の位置のバラツキを低減することができる。
(b)溶接工程S03b
この工程は、上部回転電極14と下部回転電極15との間に、バネ母材7と金属線11とを挟んで、バネ母材7に金属線11をシーム溶接で溶接する工程である。本実施形態では、シーム溶接する際の溶接電流をインバーター電源を用いて供給して、シーム溶接を行っている。図7に、インバーター電源により供給される溶接電流波形を模式的に示す。
溶接条件として、まず、下部回転電極15のV字形状のガイド溝27に金属線11が保持された状態で、金属線11とバネ母材7とをシーム溶接する際に、一定の荷重を金属線11とバネ母材7に印加しなから、シーム溶接を行う。本実施形態では、上部回転電極に1000gの荷重をかけることにより、金属線11とバネ母材7にこの荷重が印可されようにしている。
バネ母材7は、下部回転電極15を回転駆動することにより巻取手段5側に送られる。バネ母材7の送りスピードは、例えば、約5mm/sec.(5ミリパーセカンド)とすることができる。バネ母材7に金属線11をシーム溶接しながら、接点部材が巻取装置5側へ送られる。
インバーター電源から供給される電流は、図7に示すように、パルス電流であり、パルス電流のピーク値は、約1mA(1ミリアンペア)程度とすることができる。また、通電されている時間(ON時間)を約5msec.(5ミリセカンド)程度とし、通電されていない時間(OFF時間)を約25msec.(25ミリセカンド)とし、またパルスの1周期を約30msec.(30ミリセカンド)に設定した。従って、金属線11とバネ母材7とは、0.15mm間隔で通電されて、拡散接合しながら金属線11とバネ母材7とが連続的にシーム溶接されて、巻取装置5側へ送られる。
次に、溶接工程S03bにおいて、金属線11がバネ母材7にシーム溶接される状態について、詳細に説明する。図8に、金属線11とバネ母材7が、上下の回転電極の間に挟まれてシーム溶接される状態を説明するための状態図を示す。なお、図8(a)は、シーム溶接前の状態を説明するための図であり、また、図8(b)は、シーム溶接後の状態を説明するための図である。図8(a)に示すように、シーム溶接前の状態では、バネ母材7と金属線11とが、互いに当接した状態で、上部回転電極14と下部回転電極15との間に配置されている。金属線11は、下部回転電極15に設けられたV字形のガイド溝27に支持されると共に、上部回転電極14に支持されたバネ母材7の表面に当接されている。上記でも説明したように、溶接性を向上させるために、金属線11とバネ母材7には、所定の荷重(本実施形態では1000gの荷重)が印加されている。
シーム溶接時には、溶接電流が流れている間、金属線11とバネ母材7とが接触している領域及びその近傍は、加熱されて、ともに軟化状態となっている。図8(a)及び(b)を参照すると、上部回転電極には、所定の荷重が印加されており、金属線11とバネ母材7との接触領域及びその近傍の領域が軟化することにより、上部回転電極14が、溶接時の上部電極の下限位置34の線まで下側方向に移動することができる。この結果、下方に移動した上部回転電極14により、金属線11とバネ母材7とが圧接され、拡散接合によりシーム溶接される。
具体的には、図8(a)及び(b)に示すように、金属線11とバネ母材7との異種材料の界面接触部位にまず純粋な溶融拡散接合部(溶け出し部)32が生成され、その後ジュール熱の影響を受けて溶融拡散と固相拡散とが混じった強固な接合部(ナゲット)33が生成されてバネ母材7と金属線11は確実に接合される。バネ母材7と金属線11の材料に応じて電気抵抗溶接の諸条件を整合させておけば、回転電極の回転によりバネ母材7と金属線11とが一定速度で走行するため、金属線11がバネ母材7の上に走行方向に連続して溶接される。この場合、上下の回転電極を強制空冷や循環水冷等により冷却することにより、長時間の連続溶接が可能となる。図9に、シーム溶接部の断面の電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図9を参照すると、シーム溶接により生成された溶融拡散接合部(溶け出し部)32、及び接合部(ナゲット)33を確認することができる。
発明者の知見によれば、図8(a)において、シーム溶接される前に設定される下部回転電極の頂部35とバネ母材7の表面との間の距離の大きさによって、溶接状態にばらつきが生じることが分かった。図8(a)において、下部回転電極の頂部35とバネ母材7の表面との間の距離A(以下、離間距離Aという。)と溶接状態について実験した結果を説明する。図10に、離間距離Aを変更したときのシーム溶接部の溶接状態を模式的に示す。なお、図10において、図10(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ、離間距離Aが、30μm、50μm、及び40μmの場合の溶接状態の断面図を模式的に示したものである。また、本実施形態では、金属線11の太さは、直径90μmφ(一定)の太さの金属線を用い、下部回転電極のV字形状のガイド溝27の角度は、約90度とした。
本実施形態において、離間距離Aは、下部回転電極に設けたV字形状のガイド溝27の深さを所定の範囲に設定することにより調整することができる。離間距離Aが30μmのとき、V字形状のガイド溝27の深さは、80μmである(図10(a))。離間距離は50μmのとき、V字形状のガイド溝27の深さを60μmである(図10(b))。また、離間距離は40μmのとき、V字形状のガイド溝27の深さを70μmである(図10(c))。
図10(a)を参照すると、溶接部内部にはナゲットの生成は見られず溶接されていない箇所が生じることが分かった。この場合、溶接強度が不十分であるため、バネ母材7から金属線11が剥がれるなどの不具合が生じる。離間距離Aを30μmと比較的小さい値にした場合は、V字形状のガイド溝27の深さが80μmと相対的に大きな値を有する下部回転電極を使用することになる。この場合、V字形状のガイド溝27内に、金属線11を安定して保持することができ、V字形状のガイド溝27から金属線11が脱落することを防止できるといたメリットがある。しかし、離間距離Aが30μmと設定することにより、下部回転電極15とバネ母材7との間で電気的に接触することがある。この結果、溶接電流が分流(漏洩)を起こしてしまい、適正な溶融温度に達しないことが原因であることを実験により判明した。
次に、図10(b)を参照すると、金属線の頂部の円形の形状36が変形し、つぶれた形状となることが分かった。この原因として、V字形状のガイド溝23の深さを小さくしたことに起因していることが分かった。図10(b)において、離間距離Aが50μmと比較的大きい値にした場合は、V字形状のガイド溝27の深さが60μmと相対的に小さな値を有する下部回転電極を使用することになる。V字形状のガイド溝27の深さを小さくした場合、V字形状のガイド溝27内に保持した金属線11の安定性は低下するが、離間距離Aが十分大きく確保できるので、下部回転電極15とバネ母材7との間の溶接電流の分流を低減することができる。ところで、シーム溶接時に、溶接電流が流れている間、金属線11には溶融温度領域が生じ、この溶融温度領域が、V字形状のガイド溝27内に流れ出すが、V字形状のガイド溝27の斜面が障壁となって、V字形状のガイド溝27の外部に流れ出るのを防止している。しかし、図10(b)に示すように、V字形状のガイド溝27の深さを小さくした場合、V字形状のガイド溝27の斜面の長さが小さくなり、V字形状のガイド溝27の斜面の障壁としての機能が低下する。この結果、シーム溶接時に、金属線11の溶融温度領域が外部に流れ出すようになるため、この結果、金属線の円形の形状36が変形し、頂部の形状がつぶれた形状となることが分かった。本実施形態では、V字形状のガイド溝27の深さを60μm以上にしたときに、金属線の頂部の円形の形状36が変形し、つぶれた形状となることが分かった。
図10(c)に、適切な離間距離Aを設定してシーム溶接した場合の溶接状態を示す。このときの離間距離Aは、40μmである。また、下部回転電極のV字形状のガイド溝27の深さは70μmである。図10(c)に示すように、シーム溶接の溶け出し部が発生しており、バネ母材7と金属線11とが確実に接合されている。さらに、金属線11の頂部の円形の形状36も丸みを維持しており、溶接品質は合格であった。
上記の結果から、下部回転電極に設けられたV字形状のガイド溝27の深さを約60~80μmで離間距離Aを30μmから50μmに設定して溶接することで、良好な溶接が可能であることが分かった。図12は、溶接工程により、金属線11をバネ母材7にシーム溶接して形成した接点部材40の斜視図である。後で詳述するが、この接点部材40をプレスにて打ち抜き加工をして、電気・電子回路に用いる電子部品用接点が完成する(図13参照)。図13に示すB部(先端部分)が電子部品用接点の通電部分となり、このB部の先端部が丸みを帯びた状態の金属線が配されることが電子部品用接点として必須である。図10(b)に示すように金属線11の頂部の円形の形状36がつぶれた形状となっている場合は、電子部品用接点が相手側の接点電極に接触する時に接触不良となり、接触抵抗が大きくなるといった不具合が生じる場合がある。また、相手側の接点電極の傷つきも発生する場合がある。図10(c)で示すような溶接後の状態が得られる条件でシーム溶接することにより、金属線11の頂部の円形が保持された状態で、電子部品用接点を製造することができる。
(検査工程S04)
次に、シーム溶接工程の後に検査工程S04を行う。以下に検査工程S04について詳細に説明する。前述のように、下部回転電極の頂部35とバネ母材7表面との間の距離、すなわち離間距離Aの大きさが、溶接状態の変化に影響し、品質の良否が決定されることが判明した。次の検査工程S04では、金属線11とバネ母材7とをシーム溶接した後の検査を行う。この検査工程S04では、シーム溶接部の表面を上方からカメラで撮影し、画像処理することで、シーム溶接の良否判定を行うことができる。
図11に、シーム溶接溶出部の模式図を示す。図11には、シーム溶接部の溶出部32が示されている。この溶出部32は、シーム溶接された領域の外縁部である。シーム溶接部の溶出部32の量を測定することで、シーム溶接状態を定性的、及び定量的に判定可能であることが分かった。発明者の知見によれば、溶出部32の大きさと、シーム溶接領域に形成される接合部(ナゲット)33の生成状態とが関連しており、シーム溶接部を切断して接合部を観察しなくとも、溶出部32を観察することにより、接合部の良否判定が可能であることが分かった。
具体的には、以下の手順により接合部の良否判定を行うことができる。良好な接合部を形成するためには、所定以上の溶出部32の大きさが必要となることが分かっている。まず、あらかじめ、溶接部32の大きさが異なる接点部材40の断面を観察し、溶出部32の大きさと接合部(ナゲット)33の生成状態との関係を示す溶出部データを実験により取得しておく。次に、シーム溶接の溶接部32の大きさを測定する。この測定した溶出部32の大きさとあらかじめ取得しておいた溶出部データとを対比し、溶出部32の大きさ(測定値)が、所定の大きさ(溶出部32の規格値)以上の場合は、良好に溶接されていると判定し、シーム溶接を継続する。一方、溶出部32の大きさ(測定値)が、所定の大きさ(溶出部32の規格値)より小さい場合には、溶接工程を停止するように設定することができる。
(巻取工程S05)
検査工程S04の後に、バネ母材7の所定の位置に金属線11が連続して溶接された状態の接点部材40を完成品リール37に巻き取る。これが、電気・電子回路に用いる接点部材の中間品となる。この後、プレス加工で打ち抜き加工されて、図13に示す電気・電子回路用接点部材が完成する。
本実施形態では、下部回転電極のV字形のガイド溝27の角度は、約90度に設定しているが、80度~100度程度の範囲で設定してもよい。また、本実施形態では、バネ母材7のたわみ量を0.125mm以下に制限して行ったが、その範囲に限定するものではなく、0.1~0.2mm程度の範囲で規定してもよい。また、本実施形態では、金属線11の左右方向のずれの許容範囲を左右に0.01~0.03mm程度で実施したが、その範囲に限定するものではなく、例えば0.01~0.05mm程度の許容範囲でも可能である。
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような 原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって 認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない 。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
1 接点部品製造装置
2 バネ母材供給手段
3 金属線供給手段
4 回転電極
5 巻取手段
6 バネ母材用リール
7 バネ母材
8 第一検知センサー
9 第二検知センサー
10 金属線リール
11 金属線
14 上部回転電極
15 下部回転電極
16 金属線ローラー
17 金属線ガイド
18 位置決めユニット
19 突当ユニット
20 第一押部材
21 第二押部材
22 前側アーム
23 後側アーム
24 ベアリング
25 突当ローラー
26 弾性部材
27 V字形状のガイド溝
32 溶出部
33 ナゲット
34 溶接時の上部回転電極の下限位置
35 下部回転電極の頂部
36 金属線頂部の円形の形状
37 完成品リール
40 接点部材

Claims (7)

  1. バネ母材に金属線を重ね合わせて溶接する電気・電子回路用接点部材の製造方法であって、
    前記バネ母材を上部回転電極及び下部回転電極を含む回転電極に供給するためのバネ母材供給工程と、
    前記金属線を前記回転電極に供給するための金属線供給工程と、
    前記バネ母材と前記金属線とを重合した状態で前記上部回転電極と前記下部回転電極との間に挟持して、連続的にシーム溶接して電気・電子回路用接点部材を作製する接点部材作成工程と、を有し、
    前記接点部材作成工程において、前記バネ母材を前記回転電極の基準面に押し当てることにより、前記バネ母材の前記回転電極に対する位置が制御されると共に、前記バネ母材が、所定の距離で隔離されて互いに対向して配置された第1押部材と第2押部材との間に形成された空隙を通過することにより、前記バネ母材のたわみ量が制限された状態にて、前記金属線が前記下部回転電極の外周部に設けられたV字形状のガイド溝に案内されて前記バネ母材の所定の位置に位置決めされてシーム溶接されることを特徴とする電気・電子回路用接点部材の製造方法。
  2. 前記接点部材作成工程において、前記バネ母材と前記金属線とが前記上部回転電極と前記下部回転電極との間に挟持された状態で、前記下部回転電極の頂部と前記バネ母材の表面との間の離間距離が所定の範囲に制御された状態で、前記金属線と前記バネ母材とがシーム溶接されることを特徴とする請求項1に記載の電気・電子回路用接点部材の製造方法。
  3. 前記下部回転電極の頂部と前記バネ母材の表面との間の前記離間距離が、前記下部回転電極の外周部に設けられたV字形状の前記ガイド溝の角度と深さによって設定されることを特徴とする請求項2に記載の電気・電子回路用接点部材の製造方法。
  4. 前記下部回転電極の頂部と前記バネ母材の表面との間の前記離間距離が、30μm以上、50μm以下の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の電気・電子回路用接点部材の製造方法。
  5. 前記接点部材作成工程後に、前記電気・電子回路用接点部材を検査するための検査工程を、更に含み、
    前記検査工程は、前記バネ母材と前記金属線とがシーム溶接された溶接部の外縁部が表面に現れた溶出部量を測定し、測定した当該溶出部量により良否判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の電気・電子回路用接点部材の製造方法。
  6. 前記溶出部量と、前記溶接部に形成される接合部の生成状態との関係を示す溶出部データをあらかじめ取得し、
    前記溶出部データに基づいて、前記溶出部量による良否判定を行うことを特徴とする請求項5に記載の電気・電子回路用接点部材の製造方法。
  7. バネ母材に金属線を重ね合わせて溶接する電気・電子回路用接点部材の製造装置であって
    バネ母材供給手段と、
    金属線供給手段と、
    上部回転電極及び下部回転電極を含み、前記バネ母材供給手段から供給された前記バネ母材と前記金属線供給手段から供給された前記金属線とを重合した状態で前記上部回転電極と前記下部回転電極との間に挟持して、連続的にシーム溶接するための回転電極と、
    前記バネ母材を前記回転電極の基準面に押し当てることにより、前記バネ母材の前記回転電極に対する位置を制御するための突当ユニットと、
    所定の距離で隔離されて互いに対向して配置された第1押部材と第2押部材とを有し、前記バネ母材が前記第1押部材と前記第2押部材との間に形成された空隙を通過することにより、前記バネ母材のたわみ量を制限するため位置決めユニットと、を備え、
    前記下部回転電極は、外周部に設けられたV字形状のガイド溝を有し、
    前記突当ユニット及び/または前記位置決めユニットにより、前記バネ母材の前記回転電極に対する位置が制御された状態を維持しながら、前記金属線が前記下部回転電極に設けられたガイド溝に案内されて、前記バネ母材の所定の位置に位置決めされシーム溶接されるように構成されていることを特徴とする電気・電子回路用接点部材の製造装置。
JP2023216415A 2023-12-22 2023-12-22 電気・電子回路用接点部材の製造方法、及び電気・電子回路用接点部材の製造装置 Active JP7515145B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2023216415A JP7515145B1 (ja) 2023-12-22 2023-12-22 電気・電子回路用接点部材の製造方法、及び電気・電子回路用接点部材の製造装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2023216415A JP7515145B1 (ja) 2023-12-22 2023-12-22 電気・電子回路用接点部材の製造方法、及び電気・電子回路用接点部材の製造装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP7515145B1 true JP7515145B1 (ja) 2024-07-12

Family

ID=91810466

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023216415A Active JP7515145B1 (ja) 2023-12-22 2023-12-22 電気・電子回路用接点部材の製造方法、及び電気・電子回路用接点部材の製造装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7515145B1 (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101562484B1 (ko) 인다이렉트 스폿 용접 방법
US8878093B2 (en) Method and apparatus for inspecting adhesive quality
US20070068991A1 (en) Ultrasonic welding system
JP5908976B2 (ja) スポット溶接装置及びスポット溶接方法
JP2012200738A (ja) スポット溶接装置及びスポット溶接方法
JP5549153B2 (ja) インダイレクトスポット溶接方法
JP7515145B1 (ja) 電気・電子回路用接点部材の製造方法、及び電気・電子回路用接点部材の製造装置
JP2008246554A (ja) 溶接装置及び溶接方法
CN112338335A (zh) 一种gh4169镍基高温合金卡箍和箍带不等厚电阻点焊方法
JPH0549393B2 (ja)
EP0243638A2 (en) Microweld apparatus with an improved electrode tip design
JPH0615447A (ja) 溶接管の製造方法
WO2021199784A1 (ja) 溶接制御装置及び溶接制御方法
JP2010105008A (ja) 抵抗溶接機
JPH06238460A (ja) プロジェクション溶接機
JP4431784B2 (ja) 極細線熱電対の製造方法及び製造用治具
JPH1110351A (ja) 抵抗溶接装置
WO2024029532A1 (ja) 巻線体、巻線体の製造方法、溶接用電極、及び製造装置
JP2009028786A (ja) 抵抗ろう付けの良否判定方法およびその装置
JP2887860B2 (ja) プロジェクション溶接方法
NL2022864B1 (en) Method for resistance welding and resistance welding apparatus
JP2019118921A (ja) 溶接装置
WO2023153389A1 (ja) スポット溶接装置、スポット溶接装置の制御方法、スポット溶接継手、及びスポット溶接継手の製造方法
US20110278275A1 (en) Arc welding method and arc welding apparatus
JP5421582B2 (ja) 溶接装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240228

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20240228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240402

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20240411

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240611

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240624

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7515145

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150