JP7513224B1 - 金属am用銅合金粉末および積層造形物の製造方法 - Google Patents

金属am用銅合金粉末および積層造形物の製造方法 Download PDF

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Abstract

この金属AM用銅合金粉末は、金属AMに用いられ、CrとZrを含有する銅合金からなり、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面にCr含有化合物を有するCr化合物層が形成されている。

Description

本発明は、金属アディティブ・マニュファクチャリング(金属AM)技術に最適な金属AM用銅合金粉末、および、積層造形物の製造方法に関する。
本願は、2022年10月24日に、日本に出願された特願2022-169923号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、様々な立体形状を有する金属部品を製造する手法として、主に原料として粉を用いて金属3Dプリンターで製品を造形する金属AM技術が実用化されている。金属粉末を用いた主な金属AM技術としては、電子ビームやレーザー光を用いた粉末床溶融法(パウダー・ベッド・フュージョン:PBF)、バインダジェット法等が挙げられる。
ここで、銅合金は、導電性、熱伝導性、機械的特性、耐摩耗性、耐熱性など工業的な応用に適した多数の基本的性質を有しており、各種部材の素材として利用されている。そこで、近年、宇宙、電気部品応用など様々な分野において、銅合金粉末を用いた金属AMにより、様々な形状の部材を形成することが試行され、金属AMで製造された銅及び銅合金の部品のニーズが高まっている。
例えば、特許文献1には、CrとSiのいずれかを有する銅合金粉末を用いて、金属AMによる積層造形物を作成する技術が提案されている。
また、特許文献2においては、CrとZrを有する銅合金粉末を用いて、金属AMによる積層造形物を作成する技術が提案されている。
特開2016-211062号公報 特開2019-070169号公報
Y. M. Arisoy et. al., "Influence of scan strategy and process parameters on microstructure and its optimization in additively manufactured nickel alloy 625 via laser powder bed fusion", The International Journal of Advanced Manufacturing Technology, Volume 90, p.p. 1393-1417 (2017).
金属AMにより造形される金属構造体は、様々な用途に応じて何らかの構造部材として用いられることになるため、積層造形体の中にボイドが存在する場合や金属材料としての微細構造が不均一である場合には、熱機械的また電気的な信頼性の点で問題となる。
現在、金属AMで最も多く使用されている造形方式はレーザーPBFであり、銅及び銅合金においても、レーザーPBFによる造形が試みられてきている。
ところで、レーザー光や電子線を照射する方法で積層造形する際には、まず薄い粉末の層を形成し(粉末床)、続いてこの粉末床にレーザーや電子線を局所的に照射して材料を溶融凝固させる。しかし、銅及び銅合金においては、鉄、チタン、ニッケル系などの他の金属材料と比較して、銅そのものが可視、赤外域の光に対する反射率が高いことなどが原因となり、レーザーPBFの過程で銅合金粉末の溶融挙動が不安定となり、作製された積層造形物の内部にボイドが発生しやすく、レーザーPBFで製造した造形体の品質が安定しない、生産性が悪いなどの課題が山積しており、レーザーPBFにより製造された銅及び銅合金の生産性及び品質の改善が求められてきている。
現在、最も広く使用されている金属AM用原料の形態は粉末である。例えば、レーザーPBFを用いた金属AMにおいては、原料粉末を構成する粒子の表面層の電磁波とのカップリング・相互作用による粒子の電磁波の吸収特性が、原料粉末の溶融挙動に影響を及ぼし、部品の生産性や部品の欠陥密度を含む品質に大きく影響する。例えば、粉末床を用いる金属AMプロセスにおいては、一回の積層過程で形成される粉末床の厚みは例えば数10μm程度であり(非特許文献1)、収束した電磁波をこのような比較的薄い粉末床に照射することにより原料粉末を溶融させ、更に数多くの積層と溶融凝固を繰り返すことにより所望の造形構造を実現する。粉末床を用いるこのような積層造形の素過程に大きな影響を及ぼすのが固体の電磁波の吸収特性であり、例えば、固体の電磁波の吸収特性は材料組成により影響されるため、粉末の材料組成や微細構造の均一性を高めることは、積層造形物全体において安定した品質を実現することや高い生産性の実現において極めて重要となる。
ここで、銅及び銅合金における電磁波の吸収特性は、例えば、単純に銅以外の成分として、目的のレーザー波長の吸収率が高い物質を添加することで改善可能である。しかしながら、過去の多くの冶金研究が示すように、銅及び銅合金をある応用に供する場合、その応用に必要な特性は、銅に添加される元素の種類とその添加量が適切に選択されることにより初めて実現される。従って、銅や銅合金の金属AM造形体の生産性や品質改善のために、言い換えると、銅や銅合金の原料粉末のレーザー吸収の改善のために、最適化された組成の銅や銅合金にレーザー吸収率の高い各種異元素を添加したり、その添加量を増加させたりするなどの単純なアプローチは、各種応用に必要な銅合金の性能を悪化させる可能性がある。従って、各種応用に必要な銅合金の性能を十分に確保することが可能な材料組成を維持しながら、レーザー吸収特性が改善された金属AM用銅合金粉末を実現することが求められてきた。
粉末のレーザー吸収特性の改善のための一つの重要なアプローチは、粉末を構成する各粒子表面の表面改質により各粒子のレーザー吸収能を改善することである。この表面改質のためには、所望の銅合金組成を有する粉末の各粒子の表面に、金属AMで使用するレーザー波長に対し高い吸収率を示す物質のコーティングを施すことが考えられる。このような粒子表面のコーティングのアプローチとして、所望のコーティング材料を湿式や気相プロセスを用いて粒子表面に形成することがあり得る。しかしながら、このようなコーティングプロセスでは、各粒子でのコーティング層の厚みの制御だけではなく、粉末全体でのコーティング厚みやコーティング材料の均質性の再現性の問題が付きまとい、結果として造形体の生産性や品質において数々の課題が発生することになる。
また、銅合金においては、過去の様々な研究開発の結果、高い導電性を維持しながら高い機械強度を実現した材料や、耐熱性に優れる材料などが既に開発されており、金属AMにおいても、既存のこのような高性能銅合金材料を用いて所望の形状を有する金属AM部品を実現したい社会的要請がある。
しかし、コーティングにより形成した材料中の成分の量を制御しながら、最終造形物の銅合金の材料組成を制御することは、大きな製造工程の負荷となるだけでなく、組成ばらつきや微細構造のばらつきに起因する造形部品の性能の悪化、部品の量産性の悪化、また部品の品質の維持の面など、多数の大きな問題を抱える懸念があった。
また、金属AM造形体の構造欠陥の原因となる一つの因子として、ガスなどの巻き込みに起因するボイドの発生がある。従来の銅合金粉末を用いてPBF法で積層造形した場合、粉末溶融時に、銅合金粉末に内包される不純物が原因となりガスが発生し、溶融した銅合金や凝固した銅合金がガス成分をトラップし、作製された積層造形物の内部にボイドが生じることがあり、安定して高品質な積層造形物を作製することができないおそれがあった。
また、原料の粉末床にレーザー光や電子線を照射して積層造形する場合、レーザー光などが照射される各場所の粉末粒子の組成再現性を含む原料粉末に関わる微細構造の再現性が欠如している場合、粉末の溶融挙動が不均一となり、その結果、造形体内部にボイドなどの構造欠陥の発生を誘発したり、造形体の金属組成の不均一性による機械特性の悪化を生じさせたりするおそれがあった。
また、このような原料粉末の微細構造の再現性は、粉末の材料組成の再現性を含み、バインダジェット法など他の金属AMの工法においても同様な問題となっていた。銅合金の金属AMにおいては、このような各種の原料の課題のため生産性の改善が大きな課題であった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少ない高品質な積層造形物を安定して製造可能な金属AM用銅合金粉末、および、積層造形物の製造方法を提供することを目的とする。
この課題を解決するために、本発明者らは、実応用に必要な銅合金組成を有しながらも、金属AMプロセスを用いて高性能で高品質な銅合金部品を高い生産性で実現するための銅合金粉末を製造するための研究開発を行った。その結果、高純度の銅合金を原料として用いて粉末化処理を行った場合、銅合金粉末全体としては不純物が少なくかつ均一な組成を維持しながら、銅合金粉末中の個別の粒子表面に着目すると、レーザーが照射されることになる銅合金粒子表面に薄層が形成されていることが見いだされた。更に、この銅合金粒子表面に形成された薄層においては、バルクの銅合金粒子内部と比較し、銅よりも高いレーザー吸収を示す粉末構成元素が高頻度で存在するという特徴ある構造が、粉末への個別のコーティングプロセスや付加的なプロセスを経ることなく、銅合金原料からの直接的な粉末化プロセスにおいて自発的に生成することが見出された。また、本発明の金属AM用銅合金粉末は高純度の銅合金原料に由来した銅合金粉末であることにより、デガス成分につながる不純物が少ないことで溶融時の欠陥発生を抑制することが期待され、高い熱的、電気的、機械的特性を有しながら、緻密な銅合金造形体を実現し、更にこのような高い性能を示す銅合金造形体の高い生産性と高い品質を実現することが可能と想定される。
また、本発明の金属AM用銅合金粉末においては、銅合金粉末の粒子表面において、Crを含む析出物を銅結晶粒界及び銅結晶粒表面に形成可能であり、また、粒子表面に、これらのCrを含む析出物を含むCr化合物層を形成可能であることが分かった。このような表面構造を有する銅合金粒子で構成される粉末においては、このような粒子表面における微細構造により、高いレーザー吸収が実現されると想定される。
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明の態様1の金属AM用銅合金粉末は、金属AMに用いられる金属AM用銅合金粉末であって、CrとZrを含有する銅合金からなり、Crの含有量が0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲内、Zrの含有量が0.02質量%以上0.2質量%以下の範囲内、残部が銅及び不純物からなる組成とされており、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面にCr含有化合物を有するCr化合物層が形成されていることを特徴としている。
態様1の金属AM用銅合金粉末において、Si、Mg、Ti、Ni、Al、Zn、Ca、Sn、Pb、Fe、Mn、Te、Nb,P、Co、Sb、Bi、Ag、Ta、W及びMoの群から選択される少なくとも一種の元素を、総量で0.07mass%以下含んでいてもよい。
本発明の態様1の金属AM用銅合金粉末によれば、CrとZrを含有する銅合金からなり、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面にCr含有化合物を有するCr化合物層が形成されているので、粒子表面においてレーザー吸収が効率良く行われることになり、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少ない高品質な積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本発明の態様2は、態様1の金属AM用銅合金粉末において、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面における前記Cr化合物層が酸素を含有することが好ましい。
本発明の態様2の金属AM用銅合金粉末によれば、銅合金粒子の表面に形成された前記Cr化合物層が酸素を含有するため、粒子表面においてレーザー吸収がさらに効率良く行われることになり、また、金属AM用銅合金粉末の変質を抑制でき、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少ない高品質な積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本発明の態様3は、態様1または態様2の金属AM用銅合金粉末において、前記銅合金はZrを含有しており、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面にZr含有化合物が分布していることが好ましい。
本発明の態様3の金属AM用銅合金粉末によれば、前記銅合金はZrが含有し、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面にZr含有化合物が分布しているので、銅合金粉末を構成する粒子表面においてレーザー吸収がさらに効率良く行われることになり、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少ない高品質な積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つの金属AM用銅合金粉末において、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の断面観察において、結晶粒界にCr含有化合物が分布していることが好ましい。
本発明の態様4の金属AM用銅合金粉末によれば、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の断面観察において、結晶粒界にCr含有化合物が分布しているので、導電性、熱伝導性、強度に優れた積層造形物を製造することが可能となる。
本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つの金属AM用銅合金粉末において、前記銅合金はZrを含有しており、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の断面観察において、結晶粒界にZr含有化合物が分布していることが好ましい。
本発明の態様5の金属AM用銅合金粉末によれば、前記銅合金がZrを含有し、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の断面観察において、結晶粒界にZr含有化合物が分布しているので、導電性、熱伝導性、強度に優れた積層造形物を製造することが可能となる。
本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つの金属AM用銅合金粉末において、前記Cr含有化合物がCrZrを含有していることが好ましい。
本発明の態様6の金属AM用銅合金粉末によれば、前記Cr含有化合物がCrZrを含有しているため、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少なくさらに高品質な積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本発明の態様7は、態様3から態様6のいずれか一つの金属AM用銅合金粉末において、前記Zr含有化合物がCuZrを含有していることが好ましい。
本発明の態様7の金属AM用銅合金粉末によれば、前記Zr含有化合物がCuZrを含有しているため、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少なくさらに高品質な積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本発明の態様8は、態様1から態様7のいずれか一つの金属AM用銅合金粉末において、レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の50%累積粒子径D50が5μm以上120μm以下の範囲内とされていることが好ましい。
本発明の態様8の金属AM用銅合金粉末によれば、レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の50%累積粒子径D50が5μm以上120μm以下の範囲内とされているので、金属AMに適した粒度分布を有しており、積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本発明の態様9は、態様1から態様8のいずれか一つの金属AM用銅合金粉末において、レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の10%累積粒子径D10が1μm以上80μm以下の範囲内とされていることが好ましい。
本発明の態様9の金属AM用銅合金粉末によれば、レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の10%累積粒子径D10が1μm以上80μm以下の範囲内とされているので、金属AMに適した粒度分布を有しており、積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本発明の態様10は、態様1から態様9のいずれか一つの金属AM用銅合金粉末において、レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の90%累積粒子径D90が10μm以上150μm以下の範囲内とされていることが好ましい。
本発明の態様10の金属AM用銅合金粉末によれば、レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の90%累積粒子径D90が10μm以上150μm以下の範囲内とされているので、金属AMに適した粒度分布を有しており、積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本発明の態様11の積層造形物の製造方法は、態様1から態様10のいずれか一つの金属AM用銅合金粉末を準備する準備工程と、前記金属AM用銅合金粉末を含む粉末床を形成する第1工程と、前記粉末床において所定位置の前記金属AM用銅合金粉末を固化させて造形床を形成する第2工程とを順次繰り返して積層造形物を作製する造形工程と、を備えることが好ましい。
本発明の態様11の積層造形物の製造方法によれば、態様1から態様8のいずれか一つの金属AM用銅合金粉末を用いているので、積層造形により作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少ない高品質な積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本発明によれば、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少ない高品質な積層造形物を安定して製造可能な金属AM用銅合金粉末、および、積層造形物の製造方法を提供することができる。
本実施形態である金属AM用銅合金粉末を構成する銅合金粒子の概略説明図である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末を構成する粒子の表面のオージェ電子分光分析結果を示す図であり、最表面から15分エッチング後の粒子表面の二次電子像である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末を構成する粒子の表面のオージェ電子分光分析結果を示す図であり、粒子表面の元素マッピング合成像である 本実施形態である金属AM用銅合金粉末を構成する粒子の表面のオージェ電子分光分析結果を示す図であり、最表面から30分エッチング後の粒子表面の半定量分析の結果である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末を構成する粒子の表面のオージェ電子分光分析により得られたCu、O、Cr、Zrの強度デプスプロファイルの一例である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末(C18150)の粒子断面に対する走査型電子顕微鏡分析結果であり、二次電子像である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末(C18150)の粒子断面に対する走査型電子顕微鏡分析結果であり、Crの元素マッピング像である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末(C18150)の粒子断面に対する走査型電子顕微鏡分析結果であり、Zrの元素マッピング像である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末の製造方法のフロー図である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末を製造する際に用いられる連続鋳造装置の概略説明図である。 本実施形態である積層造形物の製造方法のフロー図である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末を製造する際に用いられる他の連続鋳造装置の概略説明図である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子の粒界析出物の高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(High-Angle Annular Dark Field Scanning Transmission Electron Microscopy, HAADF-STEM)による分析結果の一例。(A)HAADF像、(B)Crマッピング、(C)Zrマッピング。(A)において矢印はCr系析出物とZr系析出物を示す。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末の粒界部の析出物の透過型電子顕微鏡法による分析結果の一例であって、(A)明視野像、(B)高速フーリエ変換図形((A)の四角い枠の部分の分析結果。CrZr(Hexagonal)[-21-4])である。 本実施形態である金属AM用銅合金粉末の粒界部の析出物の透過型電子顕微鏡法による分析結果の一例であって、(A)明視野像、(B)高速フーリエ変換図形((A)の四角い枠の部分の分析結果。CuZr(Orthorhombic)[21-4])である。
以下に、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態である金属AM用銅合金粉末について説明する。
本実施形態である金属AM用銅合金粉末は、金属AMに用いられる銅合金粉末である。なお、本実施形態である金属AM用銅合金粉末においては、レーザーを用いたPBF法に特に適したものとされている。
本実施形態である金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50においては、CrとZrを含有する銅合金で構成されており、図1に示すように、粒子表面にCr含有化合物を有するCr化合物層52が形成されている。
すなわち、本実施形態である金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50においては、図1に示すように、Crを含有する銅合金からなる粒子本体51と、この粉末本体51の外周面(或いは表層)に形成されたCr化合物層52と備えたものとされていることが好ましい。
ここで、本実施形態においては、金属AM用銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面(粒子表面)(或いは表層)は、粒子の最表面から深さ100nmまでの領域を指す。
Cr化合物層52に含有されるCr含有化合物としては具体的にはCrZrが挙げられる。また、Cr化合物層52においては、Crが単体で存在していてもよい。
また、図3に本実施形態である金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50においては、Cr化合物層52は、粒子本体51を構成する元素の酸化物を有することが好ましい。
また、金属AM用銅合金粉末の粒子表面のCr化合物層52の厚みは、1nm以上100nm以下となっていることが好ましい。
より詳しくは、Cr化合物層52の厚みは、1nm以上が好ましく、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、20nm以上であってもよく、30nm以上であってもよく、50nm以上であってもよい。また、Cr化合物層52の厚みは、100nm以下であることが好ましく、95nm以下であってもよく、90nm以下であってもよく、80nm以下であってもよく、70nm以下であってもよい。
Cr化合物層52とは、粒子本体51の外周面(或いは表層)に配置されている層であって、Crを含む析出物であるCr含有化合物(Cr系析出物)を含有する層であることが好ましい。Cr化合物層52において、Cr含有化合物は、ドット状の析出物としてCr化合物層52内に一様に又は不均一に分散して含有されている状態であってもよい。Cr化合物層52において、Cr含有化合物が凝集した複数の不定形のアイランド形状(不定形の凝集体)をなす析出物としてCr化合物層52内に一様に又は不均一に分散して含有されている状態であってもよい。
また、Cr含有化合物は、粒子本体51の表面の銅結晶粒界に沿って析出していてもよい。
Cr化合物層52において、Cr含有化合物が粒子本体51の外周面(或いは表層)を連続的に被覆するように析出している状態であってもよい。このとき、粒子本体51の外周面全面がCr含有化合物で被覆されていても、外周面(或いは表層)の一部(例えば、外周面の50%以上)を連続的に被覆していてもよい。なお、粒子本体51の外周面(或いは表層)の一部(例えば、外周面の50%以上)を不連続的(或いはアイランド状)に被覆していてもよい。
Cr化合物層52の厚みは、SiOからなる粒子表面をイオンエッチング法で、エッチングレート1.08nm/分でエッチングを行う条件を基準の条件とし、この基準のエッチング条件で、金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50の表面をエッチングして、金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50の表面を、アルバック・ファイ株式会社製走査型オージェ電子分光分析装置PHI700xiを用いたオージェ電子分光法によって分析し、Cr含有化合物を示すCrマッピング像を得て、クロム(Cr)の強度デプスプロファイル(図3に示す、強度-エッチング時間の関係を示すグラフ)を得て、クロム(Cr)の強度(cps)が、減少しなくなるまで又は所定の値以下となる時間から算出できる。
すなわち、クロム(Cr)の強度(cps)が減少しなくなるまで又は所定の値以下となる時間(分)×基準の条件のエッチングレート1.08nm/分=Cr化合物層52の厚み、として算出できる。
一例として、図2A~図2Cに示すように、本実施形態である金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50の粒子本体51は、多結晶体とされており、粒子本体51の表面には、Crを含む化合物からなるCr含有化合物が分散していることが確認される。なお、このCr含有化合物は、結晶粒界および結晶粒内の両方に分散している。
なお、本実施形態においては、Cr化合物層52に存在するCr系析出物由来のCr含有化合物の粒子表面に沿った直径又は長径が1nm以上1000nm以下の範囲内とされていることが好ましい。Cr含有化合物の粒子表面に沿った直径又は長径は、800nm以下であってもよく、500nm以下であってもよく、300nm以下であってもよく、100nm以下であってもよく、80nm以下であってもよい。また、Cr含有化合物の粒子表面に沿った直径又は長径の下限値は、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、上限値は90nm以下であってもよく、80nm以下であってもよい。
ここで、Cr含有化合物の粒子表面に沿った直径又は長径は、Cr含有化合物が粒子本体51の外周面にドット形状又は不定形のアイランド形状(島形状)で分散している場合の、粒子本体51の外周面に沿った、各Cr含有化合物の析出物の凝集体それぞれの直径又は長径であり、粒子本体51の外周面をアルバック・ファイ株式会社製走査型オージェ電子分光分析装置PHI700xiを用いたオージェ電子分光法で分析した画像から測定できる。
本実施形態である金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50の粒子本体51の表面に、Cr含有化合物由来の析出物が分散している場合、Cr化合物層52におけるCr含有化合物由来の析出物の密度は、Cr化合物層52の最表面の何れかにおいて、面積率が15%以上である箇所が観察でき、面積率が20%以上である箇所が観察できるとよい。
Cr化合物層52におけるCr含有化合物由来の析出物の密度は、Cr化合物層52の最表面を、アルバック・ファイ株式会社製走査型オージェ電子分光分析装置PHI700xiを用いたオージェ電子分光法で分析した画像を用いて、1μmあたりのCr含有化合物の析出物のサイズ及び個数から、Cr含有化合物(Cr系析出物)の面積占有率を算出して得ることが出来る。
Cr化合物層52におけるCr含有化合物由来の析出物が粒子本体51の表面の銅結晶粒界に沿って析出している場合、また、粒子本体51の表面をオージェ電子分光法を用いて観察する場合、銅結晶粒界は線として捉えることが出来る。この際、Cr含有化合物由来の銅結晶粒界単位長さあたりの密度(線密度)を求めることが出来る。
Cr化合物層52の最表面を、アルバック・ファイ株式会社製走査型オージェ電子分光分析装置PHI700xiを用いたオージェ電子分光法で分析した画像の銅結晶粒界を観察し、粒界長さ1μmあたりをCr含有化合物由来の析出物が占める割合から、粒界長さ1μmあたり線密度を求めてもよい。この場合、線密度が30%以上である箇所を観察できるとよい。
また、図3に示すように、本実施形態である金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50においては、断面観察の結果、粒子本体51の内部の結晶粒界に、Crを含む化合物からなるCr含有化合物が分散している。
なお、本実施形態においては、粒子の断面観察の結果、粒子本体51の内部の結晶粒界に観察されるCr含有化合物の直径又は長径が1nm以上1000nm以下の範囲内とされていることが好ましい。
ここで、本実施形態である金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50を構成する銅合金は、合金元素として、Crを0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲内で含有することが好ましい。
なお、Crの含有量の下限は0.6質量%以上であることがさらに好ましく、0.7質量%以上であることがより好ましい。Crの含有量の上限は1.4質量%以下であることがさらに好ましく、1.3質量%以下であることがより好ましい。
さらに、本実施形態においては、金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50を構成する銅合金は、Cr以外の合金元素を含有していてもよい。
なお、金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50を構成する銅合金の組成において、数字の精度の誤差は±10%である(O,H,S,及びNを除く)。
このとき、図2A~図2Cに示すように、粒子本体51の表面にZr含有化合物(Zr系析出物)が分布していることが好ましい。また、図3に示すように、銅合金粒子50の断面観察において、粒子本体51の内部の結晶粒界にZr含有化合物が分布していることが好ましい。
また、Zr含有化合物はCr化合物層52内に分散されていてもよい。
粒子本体51の表面に分布しているZr含有化合物として、具体的にはCuZrが挙げられる。
なお、合金元素として、CrとZrを含有する銅合金としては、例えば、Crを0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲内、Zrを0.02質量%以上0.2質量%以下の範囲内、残部が銅及び不純物からなる組成(いわゆるC18150に相当する組成)のものが挙げられる。
本実施形態において、合金元素とは、Cr及びZrをいう。また、ここで不純物とは、後述する不純物元素とO,H,S,及びNを含む成分である。
また、金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50を構成する銅合金は、合金元素以外の添加元素および不純物元素を含んでいてもよい。
本実施形態において添加元素とは、本実施形態の金属AM用銅合金粉末に意図的に添加される元素である。一方、不純物元素(O,H,S,及びNを除く)とは、本実施形態の金属AM用銅合金粉末に意図せずに混入するものであり、製造工程中のコンタミネーションや原料に微量に含有される不純物に由来する。不純物元素は不可避不純物であってもよい。
金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50を構成する合金元素以外の添加元素および不純物元素(O,H,S,及びNを除く)としては、例えば、Si、Mg、Ti、Ni、Al、Zn、Ca、Sn、Pb、Fe、Mn、Te、Nb,P、Co、Sb、Bi、Ag、Ta、W、Mo等を挙げることができる。なお、合金以外の添加元素および不純物元素は、Si、Mg、Ti、Ni、Al、Zn、Ca、Sn、Pb、Fe、Mn、Te、Nb,P、Co、Sb、Bi、Ag、Ta、W,及びMo等の群から選択される少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。
ここで、金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50を構成する合金元素以外の添加元素および不純物元素(O,H,S,及びNを除く)は、総量で0.07mass%以下であってもよく、0.06mass%以下であってもよく、0.05mass%以下であってもよく、0.04mass%以下とすることが好ましく、0.03mass%以下とすることがさらに好ましく、0.02mass%以下とすることがより好ましく、さらには0.01mass%以下とすることが好ましい。
また、金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50を構成する合金元素以外の添加元素および不純物元素(O,H,S,及びNを除く)のそれぞれの含有量の上限は、30massppm以下とすることが好ましく、20massppm以下とすることがさらに好ましく、15massppm以下とすることがより好ましい。
本実施形態である金属AM用銅合金粉末においては、レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の50%累積粒子径D50が5μm以上120μm以下の範囲内、10%累積粒子径D10が1μm以上80μm以下の範囲内、90%累積粒子径D90が10μm以上150μm以下の範囲内とされていることが好ましい。
なお、50%累積粒子径D50の下限は10μm以上であることがさらに好ましく、15μm以上であることがより好ましい。50%累積粒子径D50の上限は100μm以下であることがさらに好ましく、90μm以下であることがより好ましい。
また、10%累積粒子径D10の下限は5μm以上であることがさらに好ましく、10μm以上であることがより好ましい。10%累積粒子径D10の上限は70μm以下であることがさらに好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
さらに、90%累積粒子径D90の下限は20μm以上であることがさらに好ましく、30μm以上であることがより好ましい。90%累積粒子径D90の上限は140μm以下であることがさらに好ましく、120μm以下であることがより好ましい。
本実施形態である金属AM用銅合金粉末の製造方法の一例について、図5のフロー図を用いて説明する。なお、本実施形態では、レーザーPBF法に適した銅合金粉末を製造するものである。
本実施形態である金属AM用銅合金粉末の製造方法は、銅合金鋳塊を得る溶解・鋳造工程S01と、得られた銅合金鋳塊を線棒材に加工して銅合金原料とする銅合金原料作製工程S02と、銅合金原料を粉末に加工する粉末加工工程S03と、を備えている。
(溶解・鋳造工程S01)
まず、所定組成の銅合金鋳塊を製造する。溶解・鋳造工程S01においては、溶解工程、合金元素添加工程、連続鋳造工程を有している。ここで、本実施形態においては、図6に示す連続鋳造装置10を用いて銅合金鋳塊1を製造する。
この連続鋳造装置10は、溶解炉11と、溶解炉11の下流に配置されたタンディシュ12と、溶解炉11とタンディシュ12とをつなぐ連結樋13と、タンディシュ12において合金元素を添加する添加部14と、タンディッシュ12の下流側に配設された連続鋳造用鋳型15と、タンディッシュ12から連続鋳造用鋳型15へと銅合金溶湯を注入する注湯ノズル16と、を備えている。
溶解炉11においては、非酸化性雰囲気(不活性ガス雰囲気または還元性雰囲気)で、銅原料を溶解して銅溶湯3を得る(溶解工程)。
ここで、溶解炉11において溶解する銅原料は、銅の純度が99.99mass%以上の高純度銅(例、高純度の電気銅や無酸素銅)とされている。なお、溶解する銅原料は、4Nグレード(99.99mass%)以上の高純度銅であるが、5Nグレード(99.999mass%)以上の高純度銅であることがさらに好ましく、6N(99.9999mass%)以上の高純度銅であることがより好ましい。また、得られる銅溶湯3は無酸素銅溶湯であることが好ましい。
連結樋13においては、得られた銅溶湯3を、非酸化性雰囲気(不活性ガス雰囲気または還元性雰囲気)を維持した状態で、タンディッシュ12に供給する。連結樋13は溶解炉11とタンディッシュ12との間に配置され、銅溶湯3は非酸化性雰囲気の連結樋13内を通過する。
また、タンディッシュ12内においては、非酸化性雰囲気(不活性ガス雰囲気または還元性雰囲気)にて、銅溶湯3を保持する。
なお、溶解炉11、連結樋13、タンディッシュ12が、非酸化性雰囲気(不活性ガス雰囲気または還元性雰囲気)とされていることから、銅溶湯3中のガス成分(O,H)が低減されることになる。
そして、タンディッシュ12においては、銅溶湯3に対して添加部14を用いて合金元素(Cr及びZr等)を適宜添加する(合金元素添加工程)。また、ここで添加元素を適宜添加してもよい。
ガス成分(O,H)が十分低減された銅溶湯3に対して合金元素を添加することにより、合金元素の添加歩留が良いので、合金元素の使用量を低減でき、銅合金の製造コストを低減することができる。
また、タンディッシュ12内を流動している銅溶湯3に対して合金元素を添加することにより、合金元素を均一に溶解して、成分値が安定した銅合金溶湯を連続的に製造することができる。
得られた銅合金溶湯を、注湯ノズル16を介して連続鋳造鋳型15に注入し、銅合金鋳塊1を連続的に製造する(連続鋳造工程)。
なお、本実施形態では、断面円形の銅合金鋳塊を製造するものとしている。
ここで、本実施形態では、得られた銅合金鋳塊1においては、O濃度が10massppm以下、H濃度が5massppm以下とされている。
なお、得られた銅合金鋳塊1においては、S濃度が15massppm以下とされていることが好ましい。
さらに、得られた銅合金鋳塊1においては、合金元素以外の添加元素および不純物元素の含有量は合計で0.04mass%以下であることが好ましい。
(銅合金原料作製工程S02)
次に、溶解・鋳造工程S01で得られた銅合金鋳塊を線棒材に加工して、銅合金原料を製造する。銅合金原料作製工程S02においては、押出工程と、引抜工程と、切断工程と、を備えている。
この銅合金原料作製工程S02においては、まず、断面円形の銅合金鋳塊を加熱し、熱間押出加工によって、所定の直径の棒材とする(押出工程)。
なお、本実施形態においては、熱間押出加工時の加熱温度を700℃以上1000℃以下の範囲内とすることが好ましい。
次に、得られた棒材に対して引抜加工を行って、所定の直径の線材とする(引抜工程)。なお、引抜加工の温度には特に制限はないが、冷間または温間圧延となる-200℃から200℃の範囲内とすることが好ましく、特に常温が好ましい。
そして、得られた線材を所定の長さに切断し、銅合金原料とする(切断工程)。
ここで、得られた銅合金原料におけるO濃度が10massppm以下、H濃度が5massppm以下であることが好ましい。
また、得られた銅合金原料におけるS濃度が15massppm以下であることが好ましい。
さらに、得られた銅合金原料における合金元素以外の添加元素および不純物元素(O,H,及びSを除く)の含有量は合計で0.04mass%以下であることが好ましい。
(粉末加工工程S03)
次に、銅合金原料作製工程S02で得られた銅合金原料を用いて、アトマイズ処理することにより、金属AM用銅合金粉末を製造する。
この粉末加工工程S03においては、溶解工程と、アトマイズ処理工程と、分級工程と、を備えている。
この溶解工程では、銅合金原料を加熱して溶解して合金溶湯を得る。ここで、本実施形態では、溶解時の雰囲気は非酸化雰囲気とすることが好ましい。
アトマイズ処理工程では、例えばガスアトマイズ法によって粉末を得る。すなわち、溶解工程で得られた合金溶湯を、高圧ガス噴霧して合金溶湯の液滴を急冷することで、球状または球状に類似する形状の粉末を製造する。ガスアトマイズ法に用いられるガスとしては、アルゴン、窒素などの不活性ガスを利用可能である。
分級工程では、得られた粉末を分級処理し、所定の粒度分布を有する銅合金粉末を得る。
ガスアトマイズ処理における銅合金原料の溶解温度(ガスアトマイズ処理時の溶解温度)は銅の融点以上、1500℃以下であることが好ましい。ガスアトマイズ処理時の溶解温度は、1085℃以上、1500℃以下であってもよい。
ここで、本実施形態では、上述のように、不純物元素(O,H,S,及びNを除く)の含有量が十分に低減された銅合金原料由来の合金溶湯を用いてアトマイズ処理していることから、Cr等の合金元素が不純物元素(O,H,S,及びNを除く)と反応して消費されることが抑制され、Cr含有化合物15を生成させることが可能となる。
また、本実施形態では、不純物(不純物元素とO,H,S,及びNを含む成分)の含有量が十分に低減された銅合金原料由来の合金溶湯を用いてアトマイズ処理していることから、Cr等の合金元素が不純物(不純物元素とO,H,S,及びNを含む成分)と反応して消費されることが抑制され、Cr含有化合物15を生成させることが可能となる。
上述の各工程により、本実施形態である金属AM用銅合金粉末が製造される。なお、本実施形態である金属AM用銅合金粉末においては、O濃度が1000massppm以下、H濃度が5massppm以下であることが好ましい。
なお、O濃度は900massppmであることが好ましいが、2700massppm以下程度であってもよい。また、O濃度の下限値は特に限定されないが、0を含まない値で(又は0を超える値)あってよい。
O濃度が高いと造形体に酸素や酸化物などの形で異物が残存し、造形体の各種特性を悪化させる可能性がある。
なお、H濃度は90massppm以下であってもよく、60massppm以下であってもよい。また、H濃度の下限値は特に限定されないが、0を含まない値で(又は0を超える値)あってよい。
また、金属AM用銅合金粉末におけるS濃度は、90massppm以下であってもよく、60massppm以下であってもよく、30massppm以下であると好ましい。更に、金属AM用銅合金粉末におけるS濃度が10massppm以下であることがより好ましい。また、S濃度の下限値は特に限定されないが、0を含まない値で(又は0を超える値)あってよい。
また、アトマイズ処理など、有限の圧力下で実施される工程において、大気中もしくは工程中に含まれる雰囲気成分が原因となり、粉末に雰囲気成分が含まれることが生じ得る。例えば、粉末に雰囲気成分に由来する窒素が含まれることが生じ得る。
本実施形態である金属AM用銅合金粉末においては、窒素濃度(N濃度)が、30massppmであることが望ましく、20massppmであることがより望ましく、10massppm以下であることが望ましい。また、本実施形態である金属AM用銅合金粉末においては、窒素濃度(N濃度)が5massppm以下であることがさらに望ましい。また、N濃度の下限値は特に限定されないが、0を含まない値で(又は0を超える値)あってよい。
なお、金属AM用銅合金粉末は、合金元素以外の添加元素および不純物元素は、特性に影響を与えない範囲で含有されていてもよい。
ここで、合金元素以外の添加元素および不純物元素(O,H,S,及びNを除く)は、総量で0.07mass%以下であってもよく、0.06mass%以下であってもよく、0.05mass%以下であってもよく、0.04mass%以下とすることが好ましく、0.03mass%以下とすることがさらに好ましく、0.02mass%以下とすることがより好ましく、さらには0.01mass%以下とすることが好ましい。
また、合金元素以外の添加元素および不純物元素(O,H,S,及びNを除く)のそれぞれの含有量の上限は、30massppm以下とすることが好ましく、20massppm以下とすることがさらに好ましく、15massppm以下とすることがより好ましい。
次に、本実施形態である積層造形物の製造方法について、図7のフロー図を用いて説明する。
本実施形態である積層造形物の製造方法は、上述の金属AM用銅合金粉末を準備する準備工程S101と、金属AM用銅合金粉末を含む粉末層を形成する第1工程S121と粉末層において所定位置の金属AM用銅合金粉末を固化させて造形層を形成する第2工程S122とを順次繰り返して積層造形物を作製する造形工程S102と、を備えている。
このような工程により、所定の形状の積層造形物が製造される。この積層造形物においては、本実施形態である金属AM用銅合金粉末を用いていることから、ボイドなどの構造欠陥が少なく、機械的特性に優れている。
以上のような構成とされた本実施形態である金属AM用銅合金粉末によれば、金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子50がCrを含有する銅合金からなり、粒子本体51の表面にCr含有化合物を有するCr化合物層52が形成されているので、粒子表面においてレーザー吸収が効率良く行われることになり、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少ない高品質な積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本実施形態である金属AM用銅合金粉末を構成する銅合金粒子50において、Cr化合物層52が酸素を含有する場合には、粒子表面においてレーザー吸収がさらに効率良く行われることになり、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少ない高品質な積層造形物を安定して製造することが可能となる。
また、本実施形態である金属AM用銅合金粉末を構成する銅合金粒子50において、粒子本体51を断面観察した際に、結晶粒界にCr含有化合物が分布している場合には、導電性、熱伝導性、強度に優れた積層造形物を製造することが可能となる。
ここで、本実施形態である金属AM用銅合金粉末を構成する銅合金粒子50において、粒子本体51を構成する銅合金がZrを含有しており、粉末本体51の表面にZr含有化合物が分布している場合には、粒子表面においてレーザー吸収がさらに効率良く行われることになり、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少ない高品質な積層造形物を安定して製造することが可能となる。
また、本実施形態である金属AM用銅合金粉末を構成する銅合金粒子50において、粒子本体51を構成する銅合金がZrを含有しており、粒子本体51を断面観察した際に、結晶粒界にZr含有化合物が分布している場合には、導電性、熱伝導性、強度に優れた積層造形物を製造することが可能となる。
さらに、本実施形態である金属AM用銅合金粉末において、レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の50%累積粒子径D50が5μm以上120μm以下の範囲内とされている場合には、金属AMに適した粒度分布を有しており、積層造形物を安定して製造することが可能となる。
また、本実施形態である金属AM用銅合金粉末において、レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の10%累積粒子径D10が1μm以上80μm以下の範囲内とされている場合には、金属AMに適した粒度分布を有しており、積層造形物を安定して製造することが可能となる。
また、本実施形態である金属AM用銅合金粉末において、レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の90%累積粒子径D90が10μm以上150μm以下の範囲内とされている場合には、金属AMに適した粒度分布を有しており、積層造形物を安定して製造することが可能となる。
本実施形態である積層造形物の製造方法においては、本実施形態である金属AM用銅合金粉末を用いているので、金属AMにより作製した造形体の微細構造の再現性が高く、ボイド等の構造欠陥が少ない高品質な積層造形物を安定して製造することが可能となる。
以上、本発明の実施形態である金属AM用銅合金粉末、および、積層造形物の製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、ガスアトマイズ法によって金属AM用銅合金粉末を製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、水アトマイズ法や遠心力アトマイズ法、プラズマアトマイズ法などによって、金属AM用銅合金粉末を製造してもよい。
また、上述のように得られた金属AM用銅合金粉末に対し、雰囲気を制御して適宜熱処理を施して組織の安定化などを図ってもよい。
さらに、本実施形態では、レーザーを用いたPBF法に適した金属AM用銅合金粉末を製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、その他の金属AMに適用する金属AM用銅合金粉末であってもよい。
また、本実施形態では、図6に示す連続鋳造装置を用いて銅合金鋳塊を製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、その他の鋳造装置を用いてもよい。
例えば、図8に示す連続鋳造装置101を用いてもよい。この連続鋳造装置101は、最上流部に配置された無酸素銅供給手段(銅溶湯供給部)102と、その下流に配置された加熱炉103と、加熱炉103の下流に配置されて銅溶湯が供給されるタンディシュ104と、無酸素供給手段102から加熱炉103までをつなぐ溶湯供給路105a,105b,105cと、加熱炉103とタンディシュ104とをつなぐ樋106と、非酸化性雰囲気で合金元素を添加する添加手段(添加部)107,108と、連続鋳造鋳型42と、を備えている。なお、無酸素銅供給手段102、加熱炉103、タンディッシュ104、溶湯供給路105a,105b,105cおよび樋106は、それぞれの内部を非酸化性雰囲気としている。
無酸素銅供給手段102は、銅原料を溶解する溶解炉121と、溶解炉121で溶解されて得られた溶銅を一時保持する保持炉122と、溶銅中の酸素および水素を除去する脱ガス処理装置124と、これらをつなぐ溶湯供給路105a,105b,105cと、で構成されている。
脱ガス処理装置124は、その内部で溶銅が攪拌されるように攪拌手段としてガスバブリング装置を有しており、例えば不活性ガスによるバブリング等を行うことにより、溶銅から酸素および水素を除去する。
溶湯供給路105a、105b、105cは、溶銅および無酸素銅溶湯が酸化されるのを防止するために、その内部を非酸化性雰囲気としている。この非酸化性雰囲気は、例えば、窒素と一酸化炭素の混合ガスやアルゴン等の不活性ガスを溶湯供給路内に吹き込むことにより形成される。
合金元素を添加する添加手段として、加熱炉103に配設された第1の添加手段107と、タンディシュ104に配設された第2の添加手段108と、を備えている。
加熱炉103に設けられた第1の添加手段107から合金元素を連続的にまたは間欠的に装入すると、加熱炉103内に貯留された無酸素銅溶湯中に合金元素が添加される。ここで、貯留部に貯留された無酸素銅溶湯は、高周波誘導コイルによって加熱され、添加された合金元素の溶解が促進されることになる。
また、タンディシュ104に設けられた第2の添加手段108から合金元素を連続的にまたは間欠的に装入すると、タンディシュ104内を流れる無酸素銅溶湯中に合金元素が添加される。ここで、タンディッシュ104内を流れる無酸素銅溶湯は、加熱炉103で加熱されて高温であるとともにタンディッシュ104内を流動していることから、添加された合金元素の溶解が促進されることになる。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
(本発明例)
まず、実施形態に記載した製造方法により、4Nグレードの高純度銅からなる銅原料を用いて、表1に示す組成のC18150の鋳塊を作製した。
次に、作製したC18150の鋳塊を原料として、アルゴンガスを用いるガスアトマイズ法によって、表2に示す組成の金属AM用C18150粉末を作製し、金属AMの粉末床に適する粒度に分級した。ガスアトマイズ処理時の溶解温度は1300℃の条件で行った。
本発明例の金属AM用C18150粉末について、マイクロトラック社製MT3300EXIIを用いた粒径分布測定を行った結果、体積基準の10%累積粒子径が19μm、50%累積粒子径が30μm、90%累積粒子径が49μmの粒度分布となった。
そして、本発明例の金属AM用C18150粉末を用い、市販のレーザーPBF装置を用いてエネルギー密度を5J/mmの条件で、積層造形物の小片を作製した。
(金属AM用銅合金粉末の粒子表面の構造)
本発明例の金属AM用銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面の微細構造を、オージェ電子分光分析法を用いて評価した。この分析においては、作製した銅合金粉末の中から分析対象の粒子を選択し、粒子の最表面からアルゴンイオンでエッチングしながら各表面を分析した。本実施形態である金属AM用銅合金粉末を構成する粒子の表面のオージェ電子分光分析の結果を図2A~図2C、及び図3に示す。図2Aは、粒子の最表面から15分間エッチングした後の二次電子像を示す。図2Bにおいて、実線の矢印がZr系析出物、点線1の矢印が銅結晶粒界に存在するCr系析出物、点線2の矢印が銅結晶粒上に存在するCr系析出物の存在例を示す。また、図2Cにおいて、写真中の四角枠は粒子表面の半定量分析を行った位置を示す。
(金属AM用銅合金粉末の粒子断面の構造)
本発明例の金属AM用銅合金粉末を構成する銅合金粒子の断面を、日本電子製クロスセクションポリッシャーを用いて作製した。本発明例の金属AM用銅合金粉末を構成する粒子の断面の微細構造を、走査型電子顕微鏡分析法を用いて評価した。金属AM用銅合金粉末を構成する粒子の断面の結果を図4A~図4Cに示す。
(銅合金粒子の表面におけるCr含有化合物、Zr含有化合物の有無)
高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法及び透過型電子顕微鏡法により、本発明例の金属AM用銅合金粉末において、粉末を構成する銅合金粒子表面におけるCr含有化合物、Zr含有化合物の有無を確認した。図9~図11に示すように観察結果を得た。
(鋳塊および金属AM用銅合金粉末の組成)
表1に示す鋳塊、および、本発明例の金属AM用銅合金粉末、比較例の金属AM用銅合金粉末におけるO濃度は不活性ガス融解―赤外線吸収法、H濃度は不活性ガス融解―熱伝導度法、S濃度は燃焼―赤外線吸収法で求めた。また、銅を除き、これらの物質以外の成分の濃度は、蛍光X線分析法、グロー放電質量分析法、誘導結合プラズマ質量分析法を組み合わせて求めた。
(造形物密度)
作製した積層造形物の断面と、積層造形物の断面において観測されるボイドが占有する面積から、積層造形物の密度を評価した。本明細書においては、この密度を造形物密度と定義する。
造形物密度の評価は、造形物断面において計測対象の断面積を定義した後(これを評価断面積と呼ぶ。3.4mm四方。)、この計測断面積の内部にあるボイド箇所を確認した後、評価断面積におけるボイドの占有面積を算出した。そして、(評価断面積-ボイド占有面積)/評価断面積を造形物密度と定義した。造形物密度の評価結果を表2に示す。
(造形物の機械的特性)
作製した積層造形物の機械的特性として、表2に記載の条件で熱処理を行った造形体について、室温においてビッカース硬度(HV単位)をJISZ2244:2009に準じて測定した。ビッカース硬度の測定荷重は10kgfとした。
Figure 0007513224000001
(表1で示す不純物は不純物からO,H,Sを除く。)
Figure 0007513224000002
(表2で示す不純物は不純物からO,H,S,Nを除く。)
Figure 0007513224000003
図2A及び図2Bは、本発明の金属AM用銅合金粉末の粒子表面を15分間イオンエッチングした後のオージェ電子分光分析の結果である。本オージェ電子分光分析の実験系における本発明の銅合金粉末の粒子表面における各構成元素単体や各構成元素により生じる化合物のエッチングレートは定かではないが、本オージェ電子分光分析の実験系におけるSiOのエッチングレートは1.08nm/分であることから、15分間のイオンエッチングは概ね15nmの厚みをエッチングした後の構造であると考えられる。
図2Aに示すように、イオンエッチングした後の本発明例の金属AM用銅合金粉末の粒子表面には、銅結晶粒と銅結晶粒の粒界に加え、多数のアイランド状の微細な構造が出現した。更に、図2Aと図2Bとの比較により、微細なアイランド状の構造はCr系析出物に由来することが確認された。また、図2Bで確認されるように、銅結晶粒子の結晶粒界にZr系析出物も存在することが確認された。さらに、図2Cは、本発明の金属AM用銅合金粉末の粒子の最表面近傍を30分間イオンエッチングした後の単一の銅結晶粒子の表面のオージェ電子分光分析の結果である。図2Cでは、本発明の金属AM用銅合金粉末の粒子表面の銅結晶粒子上にも、Cu以外にCr、Zrが存在していることが確認される一方、アイランド状の構造が見えにくくなった。従って、粒子表面に存在するCr系析出物を含む表面層、即ちCr含有化合物を有するCr化合物層52の厚みは概ね1nmから100nm程度の範囲であると考えられる。
また、図3に示すように、本発明の金属AM用銅合金粉末においては、銅合金粒子の最表面から銅合金粒子の内部に向かうに従い、酸素濃度が低くなっていることが確認された。本質的に、本発明の金属AM用銅合金粉末は、銅合金としての酸素を含むため、粒子本体には一定量の酸素が存在し、これが粒子本体の酸素濃度のバックグラウンド濃度を構成するものと考えられる。一方、粒子表面において観測される酸素濃度の勾配は、主として粉末化の工程において生じ、さらに、図3の結果から概ね1nmから100nm程度の範囲として存在すると考えられ、上記のCr系析出物を含む表面層の厚みのオーダーにおいて酸素濃度の勾配が生じ得ると考えられる。
図2A~図2Cと図3に示した結果より、本発明の金属AM用銅合金粉末の粒子表面には銅結晶粒界および銅結晶上にCr系析出物由来のCr含有化合物を有するCr化合物層52が形成されており、さらにこのCr化合物層52はZr及び酸素を含有する層となっていることが確認された。また、図2A~図2C、図3、図4A~図4Cに示すように、本発明例の金属AM用銅合金粉末は、母相であるCuが主成分であるため、このような酸素は、主として銅酸化物に由来するものと推測され、さらに、合金元素やその他の不純物元素の酸化物の構成元素として存在していると推測される。すなわち、本発明例の金属AM用銅合金粉末の表面におけるCr化合物層52は、Cr、Zrにより構成される化合物を内包しながら、Cuや銅酸化物、Cr、Zrの酸化物などから構成される複合層を形成しているものと推測される。
また、図2A及び図2Bの結果より、本発明の金属AM用銅合金粉末の粒子表面に存在するCr系析出物のサイズは概ね1000nm以下となっていることが確認された。また、図2Bの結果より、Zr系析出物のサイズは、Cr系析出物のサイズはよりも小さい傾向があると考えられた。図2Bに示す結果より、小さなZr系析出物が銅結晶粒界に存在していることが確認され、一方、図2Cに示すように、銅結晶粒の上(銅結晶粒表面)にもZr系析出物が存在していることが確認された。
本発明例の金属AM用銅合金粉末の粒子のCr化合物層52におけるCr含有化合物由来の析出物の密度は、Cr化合物層52の最表面を、アルバック・ファイ株式会社製走査型オージェ電子分光分析装置PHI700xiを用いたオージェ電子分光法で分析した画像を用いて、1μmあたりのCr含有化合物の析出物のサイズ及び個数から、Cr含有化合物(Cr系析出物)の面積占有率を算出した。
本発明例の金属AM用銅合金粉末の粒子のCr化合物層52の最表面では、析出物の密度が面積率16%である箇所と、面積率28%である箇所が観察された。
本発明例の金属AM用銅合金粉末の粒子のCr化合物層52のアルバック・ファイ株式会社製走査型オージェ電子分光分析装置PHI700xiを用いたオージェ電子分光法で分析した画像の銅結晶粒界を観察し、粒界長さ1μmあたりをCr含有化合物由来の析出物が占める割合から、粒界長さ1μmあたり線密度を求めた。本発明例の金属AM用銅合金粉末の粒子のCr化合物層52では、析出物の銅結晶粒界における線密度が59%である箇所と、74%である箇所が観察された。
図9と図10で示すように、本発明の金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子表面の透過型電子顕微鏡による分析結果より、本発明の金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子の表面において形成されているCr系化合物は、Cr及びCrZr(Hexagonal)[-21-4])を含むことが確認された。
図11で示すように、本発明の金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子表面の透過型電子顕微鏡による分析結果より、本発明の金属AM用銅合金粉末の銅合金粒子の表面において形成されているZr系化合物は、CuZr(Orthorhombic)[21-4])を含むことが確認された。
以上より、本発明の金属AM用銅合金粉末の粒子表面は、このような微細な析出構造を有するため、析出物が比較的凝集することなく、粒子表面に微細かつ広く分布している様子が確認された。このような粒子表面における析出物の分布の様子は、本発明の金属AM用銅合金粉末全体に渡って均一なレーザー吸収を実現することに貢献すると考えられる。また、粒子表面におけるこのような微細な析出構造の出現は、不純物元素の種類と濃度が高まると阻害されると推測され、本発明においては高純度の銅合金原料から銅合金粉末を製造しているため、粒子の表面構造が制御しやすいものと考えられる。すなわち、本発明と異なり、不純物濃度が高い銅合金鋳塊を用いて粉末を製造した場合、不純物元素の種類と各不純物元素の濃度の関係に依存して、銅と不純物元素、合金元素と不純物元素、または不純物元素間の複雑な反応が生じ、凝集を含む不均一な析出構造が出現すると推測される。このような構造の不均一性は、造形物中のボイドや各種特性の悪化やばらつきにつながると推測される。
図4A~図4Cに示すように、銅合金粒子の断面観察として本発明例の金属AM用銅合金粉末を構成する粒子の内部においては、共通して銅結晶粒界にCr含有化合物の析出が確認された。また、粒子表面と比較すると、粒子の内部においては、粒界に見られるような頻度でCr含有化合物の析出は見られなかった。すなわち、粒子表面においては、Cr含有化合物が高頻度で観測されることを示している。
一方、図4A~図4Cにより代表的に明示されるように、金属AM用銅合金粉末の粒子の粒子内部の粒界にはCr系析出物の存在が確認された。この結果は、金属AM用銅合金粉末の粒子の粒子表面のCr化合物層より内部においては、粒界にCr系析出物が存在していることを示している。
本発明の金属AM用銅合金粉末を構成する銅合金粒子の粒子表面は、粒子内部と比較しこのような特徴的な構造を有するため、レーザー吸収が促進され、造形体の高密度化や造形体の生産性の向上が実現されるものと考えられた。
そして、表2に示すように、CrとZrを含有する銅合金からなり、銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面にCr含有化合物を有するCr化合物層が形成されている本発明例の金属AM用銅合金粉末を用いて造形した場合、造形物密度は99.6%となった。また、表2に記載の条件で熱処理を行った造形体のビッカース硬度を測定したところ、130HVの特性を示すことを確認した。
これら結果から、本発明例の銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面にCr含有化合物を有するCr化合物層が形成されている本発明例の金属AM用銅合金粉末においては、実使用に重要となるボイドの発生が顕著に抑制された高品位な積層造形物を製造可能であることが確認された。
50 金属AM用銅合金粉末を構成する銅合金粒子
51 粒子本体
52 Cr化合物層

Claims (14)

  1. 金属AMに用いられる金属AM用銅合金粉末であって、
    CrとZrを含有する銅合金からなり、Crの含有量が0.5質量%以上1.5質量%以下の範囲内、Zrの含有量が0.02質量%以上0.2質量%以下の範囲内、残部が銅及び不純物からなる組成とされており、
    銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面にCr含有化合物を有するCr化合物層が形成されていることを特徴とする金属AM用銅合金粉末。
  2. Si、Mg、Ti、Ni、Al、Zn、Ca、Sn、Pb、Fe、Mn、Te、Nb,P、Co、Sb、Bi、Ag、Ta、W及びMoの群から選択される少なくとも一種の元素を、総量で0.07mass%以下含んでいることを特徴とする請求項1に記載の金属AM用銅合金粉末。
  3. 前記Cr化合物層が酸素を含有することを特徴とする請求項1に記載の金属AM用銅合金粉末。
  4. 前記銅合金粉末を構成する銅合金粒子の表面にZr含有化合物が分布していることを特徴とする請求項1に記載の金属AM用銅合金粉末。
  5. 前記銅合金粉末を構成する銅合金粒子の断面観察において、結晶粒界にCr含有化合物が分布していることを特徴とする請求項1に記載の金属AM用銅合金粉末。
  6. 前記銅合金粉末を構成する銅合金粒子の断面観察において、結晶粒界にZr含有化合物が分布していることを特徴とする請求項1に記載の金属AM用銅合金粉末。
  7. 前記Cr含有化合物がCrZrを含有していることを特徴とする請求項1に記載の金属AM用銅合金粉末。
  8. 前記Cr含有化合物がCrZrを含有していることを特徴とする請求項5に記載の金属AM用銅合金粉末。
  9. 前記Zr含有化合物がCuZrを含有していることを特徴とする請求項4に記載の金属AM用銅合金粉末。
  10. 前記Zr含有化合物がCuZrを含有していることを特徴とする請求項6に記載の金属AM用銅合金粉末。
  11. レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の50%累積粒子径D50が5μm以上120μm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の金属AM用銅合金粉末。
  12. レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の10%累積粒子径D10が1μm以上80μm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の金属AM用銅合金粉末。
  13. レーザー回折・散乱法にて測定された体積基準の90%累積粒子径D90が10μm以上150μm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の金属AM用銅合金粉末。
  14. 請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の金属AM用銅合金粉末を準備する準備工程と、
    前記金属AM用銅合金粉末を含む粉末床を形成する第1工程と前記粉末床において所定位置の前記金属AM用銅合金粉末を固化させて造形床を形成する第2工程とを順次繰り返して積層造形物を作製する造形工程と、
    を備えることを特徴とする積層造形物の製造方法。
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