JP7511745B2 - 飽和によるdasの位相ジャンプの回避 - Google Patents

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Description

本開示は、一般に、分散型光ファイバセンシング(DOFS)システム、方法、および構造に関する。より詳細には、本開示は、コヒーレント分散型音響センシング(DAS)における飽和による位相ジャンプの回避を提供するシステム、方法、および構造に関する。
光ファイバ内のコヒーレントレイリー後方散乱を用いた分散型音響センシング(DAS)は、多くの安全性、セキュリティ、および完全性監視システムにおけるその有用な応用により、リアルタイムで複数の動的事象を監視するユビキタスな技術となっている。そのため、本技術の改善は、歓迎すべきものであろう。
複素シーケンスの位相から情報を抽出し、アンラップ中にハイパスフィルタの出力にオーバーフローまたは「スパイク」を示すDASシステムにおいて、飽和による位相ジャンプを回避するためのシステム、方法、および構造を対象とする本開示の態様によれば、当技術分野における進歩がもたらされる。
本開示の一態様によれば、従来技術とは対照的に、位相アンラップ中(出力信号がサポート範囲を超える場合)に、調整されるべき方向に応じて、Nが負または正の整数である位相にN・2πを加算することによって、範囲内に戻るように調整される。
調整された位相は、フラグ信号と共に、ハイパスフィルタ(HPF)に出力され、HPFにバッファされたx(n-m)個のサンプル(m=0,1,2,...)は、x’(n-m)=x(x-m)+N・2πに置き換えられ、出力のスパイクが除去される。
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
本開示の態様による、例示的なコヒーレントDAS処理手順の概略フローチャート図である。
本開示の態様による、アンラップ位相飽和調整およびハイパスフィルタ(HPF)出力における対応するスパイクを示すプロットである。
本開示の態様による方法の例示的な処理ステップを示す一対のフローチャートである。 本開示の態様による方法の例示的な処理ステップを示す一対のフローチャートである。
従来技術で実行される位相アンラップを示す概略図である。
本開示の態様による、オーバーフローが発生したときのアンラップ位相処理を示すプロットである。
従来技術で実行される直接型IIRフィルタを示す概略図である。
本発明の態様に係る第1の2次DF-I型IIRフィルタの実装例を示す概略図である。
本開示の態様による改善されたHPF出力を示すプロットである。
本開示の態様による、インタロゲータとコヒーレント受信機と解析システムとを含む例示的なDFSシステムの概略ブロック図である。
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
まず、作動位相抽出を用いたレイリー後方散乱信号のコヒーレント検出は、感度、縦方向応力に対する線形位相応答、および無制限の位相範囲の利点により、一部に起因して、分散音響センシング(DAS)で一般的に使用されている周知の技術であることを最初に述べておく。
当業者であれば、理解および認識されるように、複素信号(complex signal)に関する位相決定および計算は、通常、複数の処理ステップを要する。
まず、アークタンジェント(atan())を使用し、入力の符号を考慮することによって、(real(S(z,n)),imag(S(z,n)))から(-π,π]範囲の角度φ(z,n)を計算する。ここで、
Figure 0007511745000001
は、位置z、時間nにおける差動位相情報を含む複素信号である。
次に、φ(z,n)をアンラップして、x(z,n)-x(z,n-1)(任意のnについて)が(-π,π]の範囲に入るx(z,n)を取得する。
ハイパスフィルタ(HPF)は、通常、振動検出またはその他の目的で、アンラップされた位相に続いてDCを除去する。この手順を図1に概略的に示す。
実際にはいくつかの理由で、アンラップされた位相の範囲は限られており、出力はその範囲に達する/それを超えて、オーバーフローを引き起こす可能性があることに留意されたい。その理由1つは、利用可能な処理リソースが原因で、特に固定小数点処理を使用するファームウェアで実装されている場合、出力信号のビット数が限られてしまうことである。
別の理由は、アンラップされた位相自体が、ノイズによって引き起こされるランダムウォーク、または超大なファイバ応力レベル、またはレーザ位相ドリフトなどの他の要因のために、一方向に移動し、最終的に最大範囲に達する可能性があることである。
アンラップされた位相が最大値(正または負のいずれか)に達すると、2つの処理の選択肢があり、すなわち、最大範囲に留まり(つまり、飽和したまま)、信号が反対方向に向かうまで待つか、または0にリセットするなどの正常な範囲に引き戻すか、またはアンラップされた値を使用して(-π、π]の範囲に変更するかのいずれかである。
飽和状態のままでは、信号がフラットになるため検出機能が失われ、アンラップされた信号を正常な範囲に引き戻すと、2つのサンプル間に大きな段差(step)が生じ、HPF出力に強いスパイクが発生する。このスパイクは、誤って振動として扱われる可能性がある。
図2は、本開示の態様による、アンラップ位相飽和調整と、ハイパスフィルタ(HPF)出力における対応するスパイクとを示すプロットである。
図2に示される例では、x軸はサンプルのシーケンスまたは時間nであり、y軸は振幅であり、上側の線はアンラップ位相であり、下側の線はDCを除去するためにハイパスフィルタを通過する対応する出力である。上側の線の大きな段差(step)はアンラップされた位相が飽和するタイミングで起こり、アルゴリズムは、2πを減算することによって、それを正常な範囲に引き戻す。下側の線から分かるように、この大きな段差によって、HPFの出力に強いスパイクとそれに続く長いリップルが発生する。
ここで示し記載するように、本開示の一態様は、図2に示すような場合に、HPF出力からスパイクを除去する方法を説明する。説明を簡単にするために、以下では、特に明記しない限り、固定位置zを考慮する。
位相アンラップ出力
アンラップ位相が飽和するとき、本開示の態様による方法は、2πを減算または加算することによって出力を調整し、これは、飽和方向に応じて、(-π-2π,π-2π]または(-π+2π,π+2π]の範囲のx(n)-x(n-1)を有する。後続の信号x(n+i+1)-x(n+i)(i=0,1,2,...)は、x(n+i+1)が飽和するまで、標準のアンラップ手順に従って範囲(-π,π]になる。アンラップ位相出力と共に、フラグを使用して、時間nにおける飽和状態と調整方向を示す。
例えば、フラグは2ビット(「b00」は「飽和なし」、「b10」は「飽和し、-2πによって調整」、「b11」は「飽和し、+2πによって調整」)を使用することができる。
HPF処理
HPFがIIR(無限インパルス応答)フィルタの場合は、カスケード接続された2次直接型I(DF-I)を使用して実装する。飽和のためにアンラップ位相が調整される場合、x(n-1)およびx(n-2)を、x(n)に適用されたものと同じ量だけ増減する。
例えば、新しい位相入力x(n)と飽和フラグ「b0」(飽和を避けるためにx(n)が2πだけ減少したことを意味する)を使用すると、DF-I構造のx(n-1)とx(n-2)はそれぞれx’(n-1)=x(n-1)-2πとx’(n-2)=x(n-2)-2πに置き換える必要があり、x(n),x’(n-1)が次のサイクルの動作で使用される。
HPFが
Figure 0007511745000002
の形式のFIR(有限インパルス応答)フィルタである場合、
Figure 0007511745000003
について、x(n+m)はx’(n+m)=x(n+m)+/-2πに置き換えられ、
Figure 0007511745000004
となる。
この時点で、本発明の方法のいくつかの特徴的な機能を強調する。
第1に、位相アンラップモジュールでは、出力信号がサポートされている範囲を超えると、変化方向に依存して、N・2π(Nは負または正の整数)を加算することによって、出力信号を範囲内に戻す。
第2に、調整された位相は、フラグ信号と共にHPFに出力される。
第3に、HPFにおけるバッファされたx(n-m)(m=0,1,2,...)をx’(n-m)=x(n-m)+N・2πに置き換えて、追加工程によって生じるスパイクとそれに続くリップルを除去する。
図3(A)および図3(B)は、本開示の態様による方法の例示的な処理ステップを示す一対のフローチャートである。
これらの図を参照すると、図3(A)では、差動ビートからの入力信号sig(n)を使用して、関数にatan()および位相アンラップが含まれていることが確認できる。入力sig(n)は複素数型であり、そこから
Figure 0007511745000005
を用いて角度を計算し、(-π,π]の範囲に変換する。
角度出力に続いて、従来技術で知られている標準的な位相アンラップを行い、x(n)-x(n-1)≧(-π,π]とする。そのアンラップに加えて、本開示の方法は、出力位相がオーバーフローするかどうかをチェックする。正の最大値を超えた場合は、出力値が2π減算され、負の最大値を超えた場合には、出力値が2π増加される。あるいは、出力位相が(-π,π]の範囲に収まるように、適用される調整をN・2πにすることもできる。この更新されたx(n)および調整Δ(n)(フラグ信号で表される)は、ハイパスフィルタに出力される。
図3(B)は、ハイパスフィルタの動作を示すフローチャートである。従来技術と比較したその動作の際立った特徴の1つは、本開示による本発明の方法では、オーバーフローが発生すると、フィルタ内の前のサイクルからのバッファされた全ての入力信号(すなわち、x(n-i)、i=1,2,...,N)がΔ(n)によって調整されることである。
DASにおけるレイリー後方散乱信号のコヒーレント検出では、まず、X(c,n)・X(c-l,n)*を計算することによる差動ビートを使用し、ここで、lは「ビートタップ」と呼ばれ、センサファイバの長さに沿った2つの位置間のサンプル数である。このビート積の位相は、2つの位置の間の時間nにおける全応力に対して線形である。
図4は、従来技術で行われている位相アンラップを示す概略図であり、2つの信号ごとの差がπを超えないという仮定に基づくものである。まず、atan()を用いて複素積から(-π,π]の範囲の角度φ(n)を計算し、次に、前回の角度(z-1、シングルタップ遅延線、またはレジスタからの(φ(n-1))で減算し、必要に応じて+2πまたは-2πのいずれかで差分を(-π,π]の範囲内に変更する。そして、その差分を前回のアンラップ出力x(n-1)に加算して出力x(n)とする。この処理により、x(n)-x(n-1)が(-π,π]の範囲に収まる。
デジタル信号処理ではビット数が限られているため、アンラップ信号x(n)がオーバーフローする可能性がある。このようなオーバーフローは、信号の飽和(すなわち、ハイパスフィルタを通過した後の出力がゼロ)を引き起こすか、または正常な範囲に強制的に戻された場合に強いスパイクおよび長いリップルを発生させる。
本開示による方法は、オーバーフローが発生したときに、アンラップ信号を正常な範囲に戻す。
理解を深めるために、サポートされる範囲を[neg_max,pos_max]とする。ここで、neg_max<0、pos_max>0であり、アンラップ位相はサンプルnでオーバーフローする。すなわち、-π<x(n)-x(n-1)<π、neg_max≦x(n-1)≦pos_maxであり、x(n)>pos_maxまたはx(n)<neg_maxである。
本開示による方法は、x’(n)=x(n)-Δ(n)を使用し、ここで、
Figure 0007511745000006
である。
ここでは、N・2π≦pos_max<(N+1)・2πである。出力は、x(n)をx’(n)で置き換える。
図5は、本開示の態様による、オーバーフローが発生したときのアンラップ位相処理を示すプロットである。この図の例のように、x(n)がpos_maxより大きくなると、出力は、x(n)=x(n)-Δ(n)を使用する。ここで、2つの選択肢で示されるように、Δ(n)=2πまたはΔ(n)=N・2πである。この調整された信号x(n)は、オーバーフローとオーバーフローの方向(正または負)を示すフラグf(n)と共に出力される。例えば、f(n)は2ビットを使用し、1ビット目はオーバーフロー(「b1」)するか否か(「b0」)を示し、2ビット目は正(「b0」)方向または負(「’b1」)方向を示すことができる。x(n)とf(n)の両方がHPFブロックに入力される。
HPFは、IIRまたはFIRのいずれかを用いることができる。IIRの場合は、複数の2次IIRフィルタをカスケード接続することによって、任意の高次フィルタを実装できることが知られている。2次IIRフィルタは、以下のように表すことができる。
Figure 0007511745000007
2次IIRフィルタの実装には、直接型I(DF-I)または直接型II(DF-II)の2つの選択肢がある。DF-I実装には、最終結果y(n)が範囲内にある限り、内部フィルタのオーバーフローの可能性がないという利点がある。これにより、ハードウェアの実装により適したものとなり、これは本発明で採用される選択肢である。
図6は、上記の式を直接写像したDF-Iフィルタの実装である。
アンラップ位相がオーバーフローに遭遇すると、本発明では、そのバッファリングされたx(n-1)およびx(n-2)にΔ(n)を減算することによって、第1の2次IIRのフィードフォワード段における動作を変更する。すなわち、x’(n-1)=x(n-1)-Δ(n)、x’(n-2)=x(n-2)-Δ(n)、および
Figure 0007511745000008
である。
フィードバック段および後続の2次IIRフィルタはどちらも変更されない。この方法を、図6の従来技術と比較して、チェーン内の第1の2次IIRフィルタについて図7に示す。
FIRフィルタについても同様に、
Figure 0007511745000009
であり、x(n)がオーバーフローする場合、
Figure 0007511745000010
について、x(n+m)は、x’(n+m)=x(n+m)-Δ(n)に置き換えられ、
Figure 0007511745000011
となる。
図8は、図2の入力と同じデータを使用する、この開示の上記方法からの本開示の態様による改善されたHPF出力を示すプロットである。この図から容易に分かるように、スパイクおよびリップルは両方とも除去される。
図9は、本開示の態様による、インタロゲータとコヒーレント受信機と解析システムとを含む例示的なDFSシステムの概略ブロック図である。
いくつかの具体例を用いて本開示を示したが、当業者であれば、本教示がそのように限定されないことを認識するのであろう。したがって、本開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

Claims (5)

  1. ファイバと、
    光パルスを生成し、それら光パルスを前記光ファイバに取り込み、前記光ファイバから一連のレイリー反射信号を受信する光インタロゲータユニットと、
    前記レイリー反射信号から情報を抽出するように構成されたコヒーレント受信ユニットと、を有するDOFS/DASシステムのための分散型光ファイバセンシング(DOFS)/分散型音響センシング(DAS)方法であって、
    前記DOFS/DASシステムを動作させて、前記光ファイバに沿った複数の位置について、ビート積のシーケンスを取得(サンプリング)することと、
    前記シーケンス内の2つのサンプルごとの位相差がオーバーフロー状態になるかどうかを決定することと、
    決定されたオーバーフローの位相差を、固定値だけ増減して正常値になるように調整することと、
    前記オーバーフロー状態と該オーバーフローの方向とを示すフラグを出力することと、
    前記調整された位相差およびフラグをハイパスフィルタに提供することと、を含み
    前記ハイパスフィルタにおいて、バッファされたx(n-m)個のサンプル(m=0,1,2,...)をx’(n-m)=x(x-m)+N・2πに置き換え、ここでNは整数である、方法。
  2. 前記固定値は、2πおよび2Nπからなる群から選択されるものであり、ここで、2Nπ≦(正常値のサポート範囲)であり、2(N+1)π≧(正常値のサポート範囲)である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ハイパスフィルタは、カスケード接続された2次IIRサブフィルタを使用して実装される無限インパルス応答(IIR)を有するハイパスフィルタである、請求項2に記載の方法。
  4. 第1の2次IIRフィルターは、
    Figure 0007511745000012
    で表される直接型であり、x(n)がオーバフローした場合、
    Figure 0007511745000013
    について、x(n+m)はx’(n+m)=x(n+m)-Δ(n)で置き換えられ、
    Figure 0007511745000014
    となる、請求項3に記載の方法。
  5. 前記ハイパスフィルタは、有限インパルス応答(FIR)を有するハイパスフィルタであり、前記シーケンス内のx(n)より前のサンプルは全て、位相アンラップと同じ値である、請求項2に記載の方法。
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