JP7506288B2 - 超音波物性測定装置 - Google Patents

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本発明は、液体の粘性や弾性などの物性を測定する超音波物性測定装置に関するものである。
液状の食品・液体材料・化学薬品など、液体を取り扱う分野では、製品の品質管理、生産プロセスの最適化、工場プラントの保守点検等において、液体の粘性や弾性などの物性を把握することが重要となっている。例えば、食品分野では、原材料の混合割合のみならず、各原材料の混合状態や管理する温度などにより物性が変化し、完成品の味覚や食感に影響する。よって、物性の変化を監視および管理することで完成品の品質維持や品質向上に大きく寄与することができる。
従来、液体の物性測定装置として回転トルク式物性測定装置がある。この回転トルク式物性測定装置は、上部が解放された容器に測定対象の液体を入れ、液体内に棒状またはプレート状の回転体を浸し、それを回転させて前記回転体にかかるトルクを計測することにより液体の粘性を測定するものである。計測方法がシンプルで扱い易く物性測定装置として広く使用されている。
しかしながら、回転トルク式物性測定装置は、せん断速度(回転速度)に依存しない一定の粘度を持つニュートン流体の粘度計測には非常に有効であるが、せん断速度に依存する粘度を持つ非ニュートン流体に対しては回転体の回転速度によって液体から受けるトルクが変化するため正確な物性を計測することができない。
食品・液体材料・化学薬品などで用いられる液体は、非ニュートン流体であることが多い。この点、非ニュートン流体の物性測定装置として、ダブルディスクを採用したスピニングレオメーターというものがある。このスピニングレオメーターは、2枚の円盤の間に試験流体の薄い層を形成し、各円盤を相対的に回転させる。このとき、前記試験流体層内を流速分布をクエット流れなどに仮定することで、見かけの粘度や線形粘弾性などの物理的特性を計測するものである。
しかしながら、実際の試験流体層内を流動は、クエット流れなどの仮定した流速分布と一致しておらず、仮定した流速分布と実際の流速分布との間に違いが生じる。つまり、スピニングレオメーターによるレオロジー特性の測定には、流速分布を仮定したことによる原理的な不正確性が含まれている。
そこで本願発明者である芳田らは、円筒容器に液体を入れ、前記円筒容器を正逆往復回転させることで発生する前記円筒容器内の流速分布を超音波を用いて計測し、前記流速分布から前記回転円筒内の液体の物性を算定する方法を提案している(非特許文献1)。つまり、非特許文献1に記載の方法は、物性および円筒容器を正逆往復回転させる角速度や周期などにより算定して得られる流速分布の理論値と、同条件で実験することにより得られる流速分布の実験値とを比較することで、実験に用いた液体の物性を算定する方法であり、原理的に流速分布の仮定を必要としない画期的な手法である。
Taiki Yoshida, Yuji Tasaka and Yuichi murai, "Rheological evaluation of complex fluids using ultrasonic spinning rheometry in an open container", The Society of Rheology, Inc. J.Rheol. 61(3), 537-549 May/June(2017).
ところで、非特許文献1に記載された方法における物性の測定精度は、原理的に、超音波により計測される流速分布に依存しており、円筒容器内の流動は理論的な流速分布になることが望ましい。この点、後述する比較例で示すように、従来の有底状の円筒容器を用いた装置において円筒側壁により流動する流れ以外に生ずる流れ、いわゆる二次流れが生じていることが確認されている。よって、さらなる測定精度向上のため、二次流れを抑制できる装置の開発が課題となっている。
また、非特許文献1に記載された方法は、原理的に流速分布の仮定を必要としない物性を測定できるものとして非常に有用であるが、従来装置は比較的大型であり移動や持ち運びが困難であった。このため、移動や持ち運びが可能なポータブル化へのニーズが高まっている。
さらに、有底円筒容器を用いる場合、回転トルク式物性測定装置と同様に測定対象となる液体を貯蔵タンクや製造パイプラインから円筒容器に移し入れる必要があり、温度や周囲環境の変化に伴う物性変化の懸念がある。
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、円筒体内における二次流れの発生を抑制するとともに、ポータブル化を図り、物性の変化を抑制することのできる超音波物性測定装置を提供することを目的としている。
本発明に係る超音波物性測定装置は、正逆往復回転する円筒体の上端面および下端面による二次流れを抑制し、かつポータブル化を可能にするという課題を解決するために、円筒体を一定の周期で正逆往復回転させることで前記円筒体内で流動する液体の流速分布を超音波を用いて計測し、前記流速分布から前記液体の物性を算定する超音波物性測定装置であって、前記円筒体は、上端面および下端面のいずれもが流通可能に貫通されており、当該円筒体の一部または全部を前記液体内に浸した状態で支持して正逆往復回転させる回転機構を備えている。
また、本発明の一態様として、円筒体を回転させつつ二次流れを抑制可能な円筒体の支持部を提供するという課題を解決するために、前記円筒体は、上端面および下端面が全面開放されているとともに、前記回転機構は、前記円筒体を支持する支持部として、前記円筒体の軸心上方で動力部に軸支される回転軸と、前記回転軸の下端部に固定されるハブと、前記ハブから放射状に延出されて前記円筒体の上縁部に固定される複数本のスポークとを有するようにしてもよい。
さらに、本発明の一態様として、回転する各スポークによって発生する流れを放射方向と周方向に分散させることで正逆往復回転により流動する円筒体内の流速分布への影響を抑制するという課題を解決するために、前記各スポークは、前記軸心位置から水平方向に所定の距離ずらした位置を基端とし、前記軸心と前記基端とを結ぶ線に対して水平方向でかつ所定の角度屈曲させた方向に延出されていてもよい。
また、本発明の一態様として、円筒体の壁面近傍における流速分布の計測精度を高めるという課題を解決するために、前記円筒体内に超音波を照射しかつ前記円筒体内から反射してくる超音波を受信する超音波トランスデューサーが、前記円筒体と一体的に回転可能にその外側面に固定されているようにしてもよい。
本発明によれば、円筒体内における二次流れの発生を抑制するとともに、ポータブル化を図り、物性の変化を抑制することができる。
本発明に係る超音波物性測定装置の一実施形態を示すブロック図である。 本実施形態における円筒体、支持部および超音波トランスデューサーを示す斜視図である。 有底の円筒体を回転させたときに底となる円盤により発生する二次流れを示す模式図である。 本実施形態における円筒体と、この円筒体と一体的に回転する超音波トランスデューサーとの位置関係を示す模式図である。 本実施形態におけるハブ、スポークおよび固定用リングを示す平面図である。 他の実施形態における円筒体および回転機構の支持部を示す斜視図である。 本実施形態における円筒体および回転機構を測定対象となる液体を貯蔵している貯蔵タンクにセッティングした状態を示す模式図である。 本実施形態におけるスポークの屈曲状態およびそれに伴う二次元流れを示す模式図である。 比較例において作製された従来方法により円筒体内を流動する液体の流速分布を、超音波を用いて計測するための装置(従来装置)を示す模式図である。 本比較例において従来装置における円筒容器内の流速分布および流速ベクトルを示すカラーマップおよびベクトル図である。 実施例1において作製された本発明に係る超音波物性測定装置(本発明装置)および測定対象となる液体を充填した卓上容器を示す模式図である。 本実施例1において本発明装置により計測された円筒体内の瞬時流速分布および平均流速分布を示すグラフである。 実施例2において従来装置および本発明装置により計測された同位相時の瞬時流速分布をプロットしたグラフである。 本実施例2において従来装置および本発明装置により計測された流速分布から算出されたせん断ひずみ速度の半径分布を示すグラフである。 本実施例2において従来装置および本発明装置により計測された流速分布から算出された粘性係数の半径分布を示すグラフである。 本実施例2において従来装置および本発明装置により計測された流速分布から算出された粘性曲線を示すグラフである。 本実施例2において従来装置および本発明装置により計測された流速分布から算出されたフローカーブを示すグラフである。 実施例3において使用した(a)計測装置を示す模式図、(b)円筒体を示す模式図、(c)支持部を示す模式図および(d)支持部を撮影した写真である。 本実施例3において温度15℃のカルボキシメチルセルロース水溶液を計測した結果得られた(a)超音波トランスデューサーの移動速度を含むドップラー速度分布(計測値)および(b)超音波トランスデューサーの移動速度を示すグラフである。 本実施例3において温度15℃のカルボキシメチルセルロース水溶液を計測した結果得られた超音波トランスデューサーの移動速度を含むドップラー速度分布から超音波トランスデューサーの移動速度を差し引いたドップラー速度分布を示すグラフである。 本実施例3において図20に示す算出されたドップラー速度分布を規格化した周方向流れの速度分布を示すグラフである。 本実施例3において温度15℃、20℃および25℃のカルボキシメチルセルロース水溶液を計測した結果に基づき算出された粘度曲線を示すグラフである。
以下、本発明に係る超音波物性測定装置の一実施形態について図面を用いて説明する。
本実施形態の超音波物性測定装置1は、図1に示すように、円筒体2と、この円筒体2を支持して正逆往復回転させる回転機構3と、前記円筒体2内の液体の流速分布を計測する超音波流速分布計測手段4と、この超音波流速分布計測手段4により計測された前記流速分布から前記液体の物性を算出する物性算出手段5とを有する。以下、各構成について説明する。
円筒体2は、正逆往復回転することで円筒側壁から液体へとせん断力を与え、当該円筒体2の内側の液体を流動させるためのものである。この円筒体2は、図2に示すように、上端面21および下端面22のいずれもが流通可能に貫通されている。つまり、円筒体2は、液体に浸したときに貫通した上端面21および下端面22から前記円筒体2内に前記液体を流入出させることができるようにしており、かつ前記正逆往復回転するときの液体の流通を可能にすることで、二次流れの発生を抑制したものである。
本実施形態における二次流れとは、円筒体2が正逆往復回転するときに円筒側壁により流動する円筒の周方向(円周方向)の流れ以外に生ずる流れであり、図3に示すように、軸心から円筒側壁へと向かう半径方向(放射方向)の流れやこの半径方向の流れにともなう循環流れである。つまり、円筒体2の下端面22に底面が設けられている場合、図3(a)に示すように、円筒体2が回転すると円筒側壁近傍の速度は底面の軸心近傍の速度より早くなる。底面近傍の液体は前記底面とのせん断力により引っ張られて流動する。このとき軸心近傍と円筒側壁近傍とでは流速差が生じる。流体には流速が早くなると圧力が低くなるという性質があり、前記流速差により軸心近傍に比べて円筒側壁近傍の圧力が低くなる。液体は、圧力の高い方から低い方への流れるため、軸心から円筒側壁へと向かう半径方向の流れが生じる。また、この生じた半径方向の流れにより、図3(b)に示すように、円筒体2内で渦を巻くように循環する循環流が生まれ、筒内全体ではドーナツ状の二次流れが発生する。
本実施形態における回転体2は、このような二次流れが発生しないように、上端面21および下端面22は全面開放されており、各端面は円筒側壁の厚みのみで構成されている。
また、本実施形態における円筒体2は、図2に示すように、超音波流速分布計測手段4において超音波の送受信を行う超音波トランスデューサー41を固定するトランスデューサー固定部23が形成されている。具体的には、トランスデューサー固定部23は、円筒体2の外側面24に設けられており、円柱棒状の超音波トランスデューサー41を嵌入可能な内径を有する円筒状に形成されている。このトランスデューサー固定部23は、図4に示すように、超音波トランスデューサー41による超音波の計測線(照射線)ξが円筒体2の軸心からの距離Δyの位置を通過するように設けられている。
なお、超音波トランスデューサー41の支持は、円筒体2と一体的に回転可能な構成に限定されるものではなく、図6(a)に示すように、動力部32等の非回転部に固定された支持アーム42により支持されていてもよい。
回転機構3は、円筒体2を正逆往復回転させるためのものであり、円筒体2を支持する支持部31と、前記支持部31に支持された円筒体を正逆往復回転させる動力部32とを有する。
支持部31は、円筒体2の一部または全部を液体内に浸した状態で支持するためのものである。本実施形態における支持部31は、図2に示すように、円筒体2を下方に吊り下げて支持するように構成されており、回転軸311と、この回転軸311の下端部に固定されるハブ312と、このハブ312から延出される複数本のスポーク313と、各スポーク313の先端を円筒体2の上縁部に固定する固定用リング314とを有する。
回転軸311は、円筒体2の一部または全部を前記液体内に浸すことができるように、円筒体2をその軸心上方で支持するとともに、動力部32による回転力を円筒体2に伝達するためのものでもある。本実施形態における回転軸311は、図1に示すように、動力部32によって軸支されている。この回転軸311は、回転トルク式物性測定装置と異なり、トルクを計測するものではないため長さや液体に浸される深さなどを自由に選択することができる。
ハブ312は、回転軸311と複数本のスポーク313とを連結するためのものである。本実施形態におけるハブ312は、略正方形状に形成されており、四隅からスポーク313が延出できるようになっている。また、ハブ312の中央には、回転軸311を連結する連結孔315が形成されている。
なお、回転軸311とハブ312とは、本実施形態のように別体として構成されるものに限定されるものではなく、図6(b)に示すように、回転軸311の下端部がハブ312として機能するように一体的に構成されていてもよい。
スポーク313は、ハブ312と円筒体2とを連結するためのものであり、ハブ312から放射状に延出されている。本実施形態におけるスポーク313は、スポーク313が要因となって発生する半径方向の二次流れを円周方向に分散させることができるように斜めに設けられている。具体的には、図5に示すように、ハブ312の四隅であって、軸心位置から水平方向に所定の距離ずらした位置を基端とし、軸心と基端とを結ぶ線に対して水平方向でかつ所定の角度屈曲させた方向に延出されている。
スポーク313の先端は、固定用リング314に固定されており、この固定用リング314を介して円筒体2の上縁部25に固定されている。
本実施形態においてスポーク312の先端を固定する円筒体2の上縁部とは、円筒体2の上端面21のみならず、超音波による流速分布の計測の邪魔にならない位置を含むものである。よって、前記上縁部には、図6(b)に示すように、円筒体2に対して上端面21近傍の内周面や、図6(c)に示すように、上端面21近傍の外側面24も含まれるものである。
なお、スポーク313の固定は、固定用リング314を介して上端部に固定される構成に限定されるものではなく、図6(b)に示すように、固定用リング314を介さずに円筒体2に対して直接固定されていてもよい。また、スポーク313は、図6(d)に示すように、上下方向に屈曲されていてもよい。
動力部32は、円筒体2を予め設定された所定の角度範囲Θを一定の周期fで正逆往復回転させるための動力であり、本実施形態では、回転の速度や角度範囲Θを制御可能な電動ステッピングモータにより構成されている。なお、動力部32は、電動ステッピングモータに限定されるものではなく、各種の電動モータから適宜選択することができるとともに、必要に応じて歯車機構などを備えていてもよい。
超音波流速分布計測手段4は、円筒体2の外から円筒体2内に向けて超音波を照射するとともに前記円筒体2内から前記円筒体2外に向けて反射される超音波を受信する超音波トランスデューサー41を備えており、受信した超音波を解析することで前記超音波の計測線ξに沿った複数の計測点における流速を時系列で計測するものである。つまり、超音波流速分布計測手段4は、時刻tの計測線ξおける時空間流速分布uξ(ξ,t)を計測することができる。
超音波トランスデューサー41は、電圧をかけることで作動する小さな素子を備えており、一定周期で振幅する電圧を与えることで振動し、計測線ξに沿って略線状の超音波を照射できるようになっている。また、前記素子は、反射波により振動すると当該振動に応じた電圧が生じるようになっており、反射波を受信できるようになっている。本実施形態における超音波トランスデューサー41は、円筒体2と一体的に回転できるように、円筒体2の外側面24に設けられたトランスデューサー固定部23に挿入されて固定されている。このとき超音波トランスデューサー41は、円筒体2の壁内における超音波の乱反射の影響などを抑制するため、円筒体2の内側面から先端までの距離を超音波トランスデューサー41の直径程度の距離を離して配置するのが好ましく、本実施形態では、円筒体2と一体化することで予めセッティングさせておくことができる。
超音波流速分布計測手段4は、演算処理可能なコンピュータおよび演算処理を実行するプログラムなどにより構成されており、超音波トランスデューサー41で受信した反射波に基づく電圧を演算処理可能なデジタル信号へと変換し、前記デジタル信号を演算処理することで、時空間流速分布uξ(ξ,t)を算出することができる。時空間流速分布uξ(ξ,t)を算出す技術については、例えば、特開2003-344131号公報に開示されている技術を用いることができる。
物性算出手段5は、演算処理可能なコンピュータおよび演算処理を実行するプログラムなどにより構成されており、超音波流速分布計測手段4によって計測された流速分布から液体の物性を算定することができる。本実施形態における物性算出手段5は、超音波流速分布計測手段4とデータ通信可能に接続されており、超音波流速分布計測手段4により計測された流速分布のデータを受信できるように構成されている。
また、本実施形態における物性算出手段5は、超音波トランスデューサー41が円筒体2の外側面24に固定されており一体的に回転されて計測された計測線ξに沿った時系列流速分布uξ(ξ,t)を、円筒体2内の周方向流速分布uθ(r,t)に変換する。
まず、超音波トランスデューサー41の円周方向速度は、下記式(1)で表される。
・・・式(1)
ここで、rは軸心から半径方向の距離、ωは各速度、Θは回転させる角度範囲、tは時間である。
また、超音波トランスデューサー41の超音波の計測線に沿った方向の速度は、下記式(2)で表される。
・・・式(2)
ここで、Δyは軸心からの距離である。
上記式(1)および式(2)に基づき超音波流速分布計測手段4により計測される計測線ξの流速分布uξ(ξ,t)を半径方向に沿った円周方向の流速分布に変換すると、下記式(3)の流速分布になる。
・・・式(3)
本実施形態における物性算出手段5は、式(3)で算出される円周方向の流速分布uθ(r,t)と、理論的に求められる流速分布とを比較することにより、液体の物性を算定する。物性算出手段5における円周方向の流速分布uθ(r,t)から物性を算定する方法は、非特許文献1で開示されている技術を用いることができる。
なお、本実施形態における超音波流速分布計測手段4および物性算出手段5は、別体として構成されているが、同じコンピュータにより構成されていてもよい。
次に、本実施形態の超音波物性測定装置1における各構成の作用について説明する。
まず、円筒体2を一定の周期で正逆往復回転させることにより液体を流動させる。具体的には、回転機構3の支持部31によって支持された円筒体2の一部または全部を液体内に浸す。例えば、図7に示すように、円筒体2および回転機構3を測定対象となる液体を貯蔵している貯蔵タンク6まで運び、貯蔵タンク6の上方から前記液体内の任意の深さおよび位置に浸すように設置する。
円筒体2の上端面21および下端面22のいずれもが流通可能に貫通しているため、沈めるだけで液体が円筒体2内に流入する。本実施形態の超音波物性測定装置1は、従来の回転トルク式物性測定装置のようなトルクを計測するものではないため、回転軸311の長さは自由に選択可能であり、所望する深さや位置に配置することができる。ここで円筒体2は全部を浸した状態にすることにより、上端面側の自由界面の変動の影響を抑制または無くすことができる。また、貯蔵タンク6への設置は円筒体2および回転機構3のみでよく、本実施形態では、超音波トランスデューサー41が円筒体2に予め固定されているため、セッティングが容易でかつ携帯性もよい。
次に、回転機構3の動力部32は、円筒体2を一定の周期で正逆往復回転させる。円筒体2内の液体は、粘性による円筒側壁とのせん断力によって流動する。このとき、円筒体2の下端面22は全面開放されており二次流れは生じない。また、回転軸311が円筒体2の上方に配置されるため二次流れの発生には影響を与えない。
また、ハブ312および各スポーク313は、円筒体2の上端面で流通可能に形成されているため、底面を全面覆った従来の有底円筒容器に比べて二次流れの発生を大幅に抑制することができる。
また、本実施形態における各スポーク313よる二次流れは、各スポーク313に沿って発生するため、半径方向のみならず円周方向にも分散する。つまり、図8に示すように、スポーク313を軸心を通る対角線上に配置されないように屈曲させると、スポーク313に沿った流れaは、半径方向の流れbと円周方向の流れcにも分散され、二次流れ発生を抑制することができる。
超音波流速分布計測手段4は、超音波トランスデューサー41によって円筒体2内に向けて超音波を照射するとともに前記円筒体2内から反射される超音波を受信して、前記超音波の計測線ξに沿った複数の計測点における流速を時系列で計測する。具体的には、図1に示すように、超音波流速分布計測手段4から超音波トランスデューサー41に超音波を発生させるための電圧をかける。一方、超音波トランスデューサー41は、円筒体2内から反射される超音波を受信して、当該反射波に応じて発生する電圧を超音波流速分布計測手段4に送信する。超音波流速分布計測手段4は、超音波トランスデューサー41から受信した電圧を前記デジタル信号に変換し、当該前記デジタル信号を演算処理することで一定の周期で正逆往復回転することで流動した円筒体2内の液体の時空間流速分布uξ(ξ,t)を算出する。そして、算出した流速分布uξ(ξ,t)は物性算出手段5へと送信する。
このとき超音波トランスデューサー41は、最適化された位置に予め円筒体2の外側面24に一体的に固定されているため、セッティングが容易であり、測定ごとの誤差などを抑制することができる。
物性算出手段5は、超音波流速分布計測手段4から送信された流速分布uξ(ξ,t)を受信する。そして、式(3)に基づき前記流速分布uξ(ξ,t)を円周方向の流速分布uθ(r,t)に変換する。そして、円周方向の流速分布uθ(r,t)と、理論的に求められる流速分布(計測値と同じ円周方向の流速分布)と比較し、物性を算定する。
以上のような本実施形態の超音波物性測定装置1によれば、以下のような効果を奏することができる。
1.円筒体2の上端面21および下端面22のいずれも流通可能に構成したことにより、正逆往復回転する液体の流通が可能になり二次流れの発生を抑制することができる。
2.円筒体2の上端面21および下端面22のいずれも流通可能に構成したことにより、貯蔵タンク6等に貯められている液体に沈めることで円筒体2内に液体を流入させることができ、セッティングを容易に行うことができるとともに、別容器などに移し入れる必要が無く物性の変化を抑制することができる。
3.回転軸311の長さを自由に選択することができるため、貯蔵タンク6等に貯められている液体の物性を測定するに当たり、異なる深さや異なる位置による物性の違いを測定することができる。
4.円筒体2を支持する支持部31を回転軸311、ハブ312およびスポーク313で構成することにより、液体の流通を確保しつつ前記円筒体2を正逆往復回転可能に支持することができる。
5.各スポーク313を所定の角度に屈曲させたことで、前記スポーク313に沿って生じる二次流れを半径方向と円周方向に分散させることができる。
6.超音波トランスデューサー41を円筒体2と一体的に回転可能に予め固定したことや円筒体2の上端面21および下端面22のいずれも流通可能に貫通させたことにより、セッティングが容易になり、携帯性が高められるとともに、液体の流速分布の計測精度や測定可能な空間的および速度的範囲を広げることができ、種々のレオロジー特性を持つ液体の物性を測定できる。
次に、本発明に係る超音波物性測定装置の具体的な実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の実施例によって示される特徴に限定されるものではない。
比較例
<非特許文献1で開示している従来方法で発生する二次流れについて>
本比較例では、非特許文献1で開示している従来方法を用いた際に発生した二次流れについて説明する。従来方法では、図9に示すように、有底状の円筒容器を一定の周期で正逆往復回転させる実験装置(以下、「従来装置」という。)を用いた。前記円筒容器は、アクリル製で厚さ3mm、半径R=77mm、深さ300mmである。
また、円筒容器は、一回り大きな容器内に配置されており、超音波トランスデューサーからの超音波が円筒容器内に照射できるように、円筒容器の周囲は水で満たされている。回転機構は、円筒容器の下方に設けられている。
測定対象とした液体は動粘度1000mm/sのシリコンオイルである。このシリコンオイルはせん断速度に依存しないニュートン流体である。シリコンオイルには、超音波の反射をよくするため反射体として微小粒子(三菱ケミカル株式会社、CHP20P、直径75-150μm、シリコンオイルに対する比重1.03)を懸濁させている。そして、円筒容器の底面からの高さz=125mmが液面になるように前記シリコンオイルを充填した。
このシリコンオイルを充填した円筒容器を、角度範囲Θが90度(π/2rad)、1Hzで正逆往復回転させた。
超音波トランスデューサーは、周波数2MHz、直径10mmである。この超音波トランスデューサーは、鉛直方向(底面からの距離Δz)および水平方向(軸心からの距離Δy)に移動可能な設置台(図示しない)に固定されている。本比較例では、円筒容器全体の流動を把握するため、超音波トランスデューサーを軸心からの距離Δy=0mmおよびΔy=15mmの位置において、底面からの高さΔz=10mm~110mmの範囲を10mm間隔で移動させ、それぞれの位置で流速分布を計測した。
図10は、円筒容器内の流速ベクトルおよび流速分布から算出した実効粘度(カラーマップ)を示す計測結果である。横軸は円筒容器の軸心から円筒側壁までの距離rを円筒容器の内径Rで無次元化した位置を示しており、縦軸は底面からの高さzを示している。
流速ベクトルは距離Δy=0mmの位置において計測された半径方向の流速から連続の式を介して鉛直方向の流速を算出しベクトル表示したものであり、矢印の方向が流速方向を示しており、矢印が長いほど流速が速いことを示している。
カラーマップは距離Δy=15mmの位置において計測された流速分布から算出した実効粘度を示しており、色が白いほど実効粘度は低く、色が黒いほど実効粘度は高い。なお、超音波トランスデューサーを軸心からの距離Δy=15mmの位置に置いているため、r/R<Δy/R≒0.2の範囲は流速情報(実効粘度)は得られていない。
図10に示すように、流速ベクトルにより半径方向のみならず鉛直方向にも流れていることが示されている。底面では軸心と円筒壁面近傍の速度差により発生した軸心から円筒壁面へ向かう半径方向の流れが見られる。また、それに伴い軸心近傍では下降流、壁面近傍では上昇流が発生しており、循環するように二次流れが生じている。よって、円筒容器内全体としては、ドーナツ状の二次流れが発生している。このとき二次流れは10~50mm/s程度の流速を有していた。
また、試験流体であるシリコンオイルはニュートン流体であり、円筒容器内において粘度が一定である。しかしながら、カラーマップで示すように、円筒容器の底面近傍では実効粘度が高く算出されて一定にはならなかった。これは底面近傍が正逆往復回転する底面とほぼ剛体回転している状態と近い流れになり、実効粘度が過大評価されたものと考えられる。
以上より、本比較例において従来装置では、流速分布に基づき実効粘度が算出できる一方、有底の円筒容器を回転させることにより底面近傍で発生する半径方向の流れによって、円筒容器内全体ではドーナツ状の二次流れが発生することが確認できた。また、底面近傍で計測された流速分布からは物性値を正確に算出することができなかった。
本実施例1では、本発明に係る超音波物性測定装置(以下、「本発明装置」という。)を作製し、円筒体内の流速分布を計測した。
本実施例1における本発明装置は、図11に示すように、上端面および下端面が全面開放された円筒体を有する。前記円筒体は、アクリル製で厚さ2mm、半径R=77mm、深さ60mmである。
支持部は、図2および図5で示すような回転軸と、この回転軸の下端部に設けられるハブと、このハブの四隅を基端として延出された4本のスポークと、各スポークの先端と円筒体の上端とを連結する固定用リングとを有する。回転軸は直径15mmであり、ハブは1辺の長さ45mmの正方形状に形成されている。スポークは、幅10mm、厚さ5.5mmの平板長尺棒状に形成されており、軸心と基端とを結ぶ線に対して屈曲されている。動力部は、回転軸をその上端で軸支している。
超音波トランスデューサーは、周波数4MHz、直径8mmのものを用いた。この超音波トランスデューサーは、円筒体の外側面で、軸心に対する距離Δy=15mm、下端面からの距離20mmの位置に円筒体と一体的に回転可能に固定されている。また、円筒体の壁面内の乱反射によるノイズを抑制するため、超音波トランスデューサーの先端が、円筒体の内周面から約8mm(超音波トランスデューサーの直径8mmに相当する距離程度)に位置するように設置させた。
測定対象の液体は、比較例と同じ動粘度1000mm/sのシリコンオイルであり、反射体として三菱ケミカル株式会社の微小粒子を懸濁させている。このシリコンオイルを、図11に示すように、卓上に置かれた容器に充填した。そして、支持部によって支持された円筒体の全部を卓上容器内のシリコンオイルに浸した状態に設置し、比較例と同様に、角度範囲Θが90度(π/2rad)、1Hzで正逆往復回転させた。
図12に、本実施例1において計測された円筒体内のシリコンオイルの流速分布を示す。横軸は超音波トランスデューサーの先端からの距離である。ここで円筒体の軸心と円筒側壁との位置関係については、比較例で説明した図10とは左右逆になっており、左側が円筒側壁近傍であり右側が軸心近傍である。また、縦軸は計測された計測線方向の流速(ドップラー速度)であり、正逆往復回転させる1周期中の4つの時刻の瞬時値と、一定の時間間隔で計測した流速の平均値である。
図12に示すように、瞬時流速分布は、流速0mm/sを中心として対称に変動しており、正逆往復回転されることで円筒体内の流れが正逆に流動していることがわかる。また、平均流速分布はほぼ0mm/sとなっている。仮に円筒体内に半径方向の流速成分(二次流れ)が生じていた場合、測定される流速は流速0mm/sを中心として非対称に変動し、平均流速は0mm/sにはならない。
以上より、本実施例1の本発明装置は、従来装置に比べて、二次流れを抑制できることが確認できた。
次に、比較例の従来装置と、実施例1の本発明に係る超音波物性測定装置により計測された流速分布の比較を行い、物性の算出に用いることができる評価可能範囲について検討を行った。
図13は、正逆往復回転させて計測した瞬時流速分布において、同位相時の瞬時流速分布をプロットし、従来装置と本発明装置との比較を行ったグラフである。左グラフが従来装置の結果、右グラフが本発明装置の結果を示す。横軸および縦軸は図13と同様であり、横軸が超音波トランスデューサーの先端からの距離、縦軸が計測された計測線方向の流速である。
左グラフで示すように、従来装置を用いると、超音波トランスデューサーからの距離が75mm程度に達すると流速分布にノイズが含まれるようになる。要因としては、第一に計測対象のシリコンオイルが、超音波を減衰させる性質があり、距離が離れることで受信される超音波の受信量が流速を計測するには不十分となりノイズとなったことが挙げられる。また、第二の要因として、超音波トランスデューサーが円筒容器とは離れた位置で固定されているため、円筒容器の周囲に満たされた水中で発射され超音波は円筒容器壁面を介して容器内のシリコンオイルへと伝搬される過程で、乱反射や減衰が起きてノイズとなったことが挙げられる。さらに、第三の要因として、超音波トランスデューサーと円筒容器とが相対速度を持つため、超音波トランスデューサーからの距離が遠方になるほど計測線方向の流速が遅くなり、前記計測線を通過する反射体(微小粒子)の数が少なくなくなって、超音波の受信量が不十分になったことも考えられる。
これに対し、右グラフで示すように本発明装置では、超音波トランスデューサーからの距離が115mm程度までノイズはあまり見られず、超音波トランスデューサーを設けた位置とは反対側の壁面近傍(距離150mm近傍)であっても、ノイズはわずかであり、また想定される流速分布から大きく外れるようなノイズはあまり見られない。これは超音波トランスデューサーを円筒体に固定したことにより、超音波の乱反射が抑制され、かつ超音波トランスデューサーからの距離が円筒軸心に近いほど(遠方になるほど)液体との計測線方向の流速が速くなり、超音波が減衰し易い位置でも十分な超音波を受信することができ、ノイズの発生が抑制されたものと考えられる。よって、壁面近傍まで流速が計測されており、実態に即した物性が算出できることが期待される。
そこで、円筒容器および円筒体の半径位置に対する評価可能範囲について検討を行った。ここで評価可能範囲とは、物性の算定が可能な範囲のことである。
図14は円筒容器および円筒体の半径位置に対するせん断ひずみ速度を示したグラフである。左グラフが従来装置の結果、右グラフが本発明に係る超音波物性測定装置の結果を示す。横軸は、図10と同様に、円筒容器の軸心から円筒側壁までの距離rを円筒容器の内径Rで無次元化した位置を示している(図12および図13とは円筒体の軸心と円筒側壁との位置関係が左右逆である。)。縦軸はせん断ひずみ速度であり、色は確率密度を示している。
左グラフで示すように、従来装置では、軸心(r/R=0)からr/R=0.45の範囲は、せん断ひずみ速度にバラつきがある。これは、軸心近傍では速度勾配が少なく、せん断ひずみ速度が小さいさくバラつきがでたものと思われる。また、r/R=0.85を超えた範囲では、略直線状な値を示すところ値が増減しており正確な計測ができていないことが確認できた。
これに対して右グラフで示すように、本発明装置では、r/R=0.85を超えた範囲についても略直線状に沿った値を示しており正確な計測ができている。
図15は円筒容器および円筒体の半径位置と流速分布から算出された粘性係数を示すグラフである。横軸は、図14と同様に、円筒容器の軸心から円筒側壁までの距離rを円筒容器の内径Rで無次元化した位置である。縦軸は粘性係数であり、色は確率密度を示している。
左グラフで示すように、従来装置では、正確な流速分布の計測ができていると思われるr/R=0.45から0.85の範囲における粘性係数は、シリコンオイルのカタログに記載された粘性値(カタログ粘性値)と一致している。一方、r/R=0.85を超えた範囲はカタログ粘性値から大きく外れており、正確な粘性係数を算出できていない。
これに対して右グラフで示すように、本発明装置では、r/R=0.45から円筒側壁であるr/R=1の範囲までカタログ粘性値と一致しており、正確な粘性係数が得られている。
これら図14および図15に示すように、従来装置の評価可能範囲はr/R=0.45から0.85の範囲であるのに対し、本発明装置の評価可能範囲は、r/R=0.45から1の範囲と評価可能範囲が広がった。正逆往復回転する円筒体による流動は壁面とのせん断力によるものであり壁面近傍の流速分布を正確に計測できることによって算出される物性の精度の向上に寄与する。よって、本発明装置は従来装置に比べて精度が向上が図れるものと考えられる。
また、図16はせん断ひずみ速度と粘性係数との関係を示す粘性曲線のグラフである。左グラフが従来装置の結果、右グラフが本発明装置の結果を示す。横軸がせん断ひずみ速度であり、縦軸は粘性係数である。色は確率密度を示している。
左グラフで示すように、従来装置では、せん断ひずみ速度が約10s-1を超える範囲では計測できていない。これに対して右グラフで示すように、本発明に係る超音波物性測定装置では、せん断ひずみ速度が約10s-1を超える範囲でもカタログ粘性値とほぼ一致しており正確な計測ができている。
また、図17はせん断ひずみ速度とせん断応力の関係を示すフローカーブのグラフである。横軸がせん断ひずみ速度である。縦軸はせん断応力であり、色は確率密度を示している。フローカーブは、一定の状態(定常流状態)での粘度を複数のせん断速度域で測定した流動特性を示すものであり、せん断速度域の異なる様々な工程におけるせん断応力(粘度)を見積もることができる。
結果は図16と同様であり、左グラフで示すように、従来装置では、せん断ひずみ速度が約10s-1を超える範囲では計測できていない。これに対して右グラフで示すように、本発明装置では、せん断ひずみ速度が約10s-1を超える範囲でも計測ができている。
よって、図16および図17に示すように、本発明装置は、従来装置に比べて広いせん断速度域での物性を計測することができる。
以上より、本発明装置は、従来装置に比べて評価可能範囲が広く、壁近傍の流速から物性の算出が可能であり、かつせん断ひずみ速度に対する適用範囲も広いことから、種々のレオロジー特性を持つ液体の物性を測定することができる。
次に、本発明装置によって、非ニュートン流体における粘性特性(速度分布)の温度依存性について計測を行った。本実施例3に用いた装置は、図18(a)に示すように、試験流体を貯留する直径430mm、深さ350mm超の貯留タンクを有し、この貯留タンクの側面および底面は循環水が流れるように2重に形成されている。また、貯留タンクには循環水を循環させるとともに温度を一定に保つ恒温装置が接続されている。
本実施例3における本発明装置の円筒体は、図18(b)に示すように、アクリル製で厚さ2mm、半径R=77mm、深さ100mmである。また、支持部は、図18(c)および図18(d)で示すように、実施例2と同様の構成を有している。そして、円筒体は、貯留タンクの中心位置であって、下端が貯留タンクの底面から200mmに位置するように配置されている。
超音波トランスデューサーは、円筒体の外側面で、軸心に対する距離Δy=18mm、下端面からの距離400mmの位置に円筒体と一体的に回転可能に固定されている。
試験流体には、非ニュートン流体としてカルボキシメチルセルロース水溶液を用いた。本実施例3で用いた水溶液中のカルボキシメチルセルロースの濃度は0.5wt%である。このカルボキシメチルセルロース水溶液を円筒体が完全に水没するように貯留タンク内に深さ350mmまで貯留させた。
そして、恒温装置により貯留タンクに循環水を循環させて、カルボキシメチルセルロース水溶液の温度を一定に保たせた。本実施例3では、温度15℃、20℃および25℃とした状態で計測を行った。
本発明装置によって温度15℃のカルボキシメチルセルロース水溶液を計測した結果を図19に示す。図19(a)は、超音波トランスデューサーで計測されたドップラー速度である。縦軸は、超音波トランスデューサーからの距離、横軸が経過時間である。また、色の濃淡および等高線がドップラー速度の強弱を表しており、色が濃いほど速度が速いことを示している。また、図19(b)は、超音波トランスデューサー(円筒体壁面)の移動速度である。
図19(a)に示すように、壁面近傍(縦軸0mm近傍および150mm近傍)の速度と、円筒体の中心近傍(縦軸77mm近傍)の速度が遅くなっている。ただし、図19(a)におけるドップラー速度には、超音波トランスデューサーの移動速度が含まれている。そこで、図19(b)に示す超音波トランスデューサーの移動速度との差分を算出し、円筒体が正逆往復回転することによって生じたドップラー速度の抽出を行った。また、算出されたドップラー速度の周方向の流速分布の規格化を行った。
図20に超音波トランスデューサーの移動速度を差し引いたドップラー速度分布を示す。また、図21に、このドップラー速度分布を規格化した周方向流れの流速分布を示す。図20および図21に示すように、壁面近傍において速く、速度が正逆を繰り返して縞模様のように表れている。また、その縞模様が傾斜しており、時間経過に伴い速度が中心方向に徐々に伝播していることもみてとれる。このように本発明装置は、試験流体として非ニュートン流体としてカルボキシメチルセルロース水溶液を用いた流速分布の計測ができていることを確認した。
次に、カルボキシメチルセルロース水溶液の温度を15℃、20℃および25℃としてドップラー速度の計測を行い、それぞれの温度におけるカルボキシメチルセルロース水溶液の粘度の算出を行った。図22は、各温度条件下において算出された粘度曲線であり、縦軸が粘度、横軸がせん断速度を表している。
図22に示すように、粘度は、各温度条件においてせん断速度の増加に伴い低下しており、せん断速度に依存して粘度が変化する非ニュートン流体の特性が表れている。
また、カルボキシメチルセルロース水溶液の温度が高くなると、せん断速度の増加に対して低下し易くなる。つまり、カルボキシメチルセルロース水溶液は、温度の上昇に伴い粘性特性が変化し、せん断速度が遅い段階から粘性が低下する結果となった。
以上より、本発明装置は、非ニュートン流体で、かつ温度依存性がある流体の物性を測定することができる。
なお、本発明に係る超音波物性測定装置は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、円筒体は、正逆往復回転されることによって変形しないように強度を高めるため、二次流れが極力生じない程度に上端面や下端面に架設するような補強材を有していてもよい。
1 超音波物性測定装置
2 円筒体
3 回転機構
4 超音波流速分布計測手段
5 物性算出手段
6 貯蔵タンク
21 上端面
22 下端面
23 トランスデューサー固定部
24 外側面
31 支持部
32 動力部
41 超音波トランスデューサー
42 支持アーム
311 回転軸
312 ハブ
313 スポーク
314 固定用リング
315 連結孔

Claims (4)

  1. 円筒体を一定の周期で正逆往復回転させることで前記円筒体内で流動する液体の流速分布を超音波を用いて計測し、前記流速分布から前記液体の物性を算定する超音波物性測定装置であって、
    前記円筒体は、上端面および下端面のいずれもが流通可能に貫通されており、当該円筒体の一部または全部を前記液体内に浸した状態で支持して正逆往復回転させる回転機構を備えている、前記超音波物性測定装置。
  2. 前記円筒体は、上端面および下端面が全面開放されているとともに、
    前記回転機構は、前記円筒体を支持する支持部として、前記円筒体の軸心上方で動力部に軸支される回転軸と、前記回転軸の下端部に固定されるハブと、前記ハブから放射状に延出されて前記円筒体の上縁部に固定される複数本のスポークとを有する、請求項1に記載の超音波物性測定装置。
  3. 前記各スポークは、前記軸心位置から水平方向に所定の距離ずらした位置を基端とし、前記軸心と前記基端とを結ぶ線に対して水平方向でかつ所定の角度屈曲させた方向に延出されている、請求項2に記載の超音波物性測定装置。
  4. 前記円筒体内に超音波を照射しかつ前記円筒体内から反射してくる超音波を受信する超音波トランスデューサーが、前記円筒体と一体的に回転可能にその外側面に固定されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の超音波物性測定装置。
JP2023502491A 2021-02-25 2022-02-24 超音波物性測定装置 Active JP7506288B2 (ja)

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「複雑流体の物性評価を可能にする超音波スピニングレオメトリの開発」,Youtube [online] [video],2021年10月06日,<URL:https://youtu.be/0cMO-cmkF2c>,16:06~16:43
大家 広平ほか,超音波スピニングレオメトリを用いた過渡的変化を伴う実効粘度の評価(分離を伴う水油混合液への適用),日本機械学会論文集,第86巻第890号,2020年10月25日,p.20-00242,<DOI:10.1299/transjsme.20-00242>
田坂 裕司 Yuji TASAKA,流動による流体の内部構造変化の可視化,日本流体力学会誌「ながれ」 第38巻 第4号 Journal of Japan Society of Fluid Mechanics,日本,一般社団法人日本流体力学会,2019年08月25日,p.283-290,ISSN 0286-3154

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