以下では、図面とともに本発明の実施の形態について詳述する。以下では、2つのユニットを含み、人体に装着可能な時計システムについて説明する。この2つのユニットの間で通信が行われる。
図1は、本発明の実施形態にかかる時計システムの一例を示す図である。時計システムは、いわゆる腕時計の形状を有し、その腕時計の本体に相当するヘッド1と、バックル2と、ヘッド1とバックル2とを接続するバンド3とを含む。図1に示されるヘッド1はいわゆるアナログ表示方式の電子時計である。時計システムのヘッド1、バックル2、およびバンド3は、使用状態において手首を入れることが可能な環を構成する。
図2は、図1に示される時計システムの断面図である。図2は、時計システムを周方向に延びる線に沿って切断した場合の断面を示す。図3は、時計システムの回路構成を概略的に示す図である。
ヘッド1は、筐体11と、ホット電極12と、コールド電極13と、絶縁部14と、二次電池15と、充電回路152と、操作部162と、ムーブメント17と、指針18とを含む。ムーブメント17は、ステップモータ171と、輪列172と、時計制御回路174と、発振器175と、制御通信ユニット19と、を含む。筐体11には、指針18を保護する風防112と、バンド3を固定するラグ113とが配置されている。ホット電極12、コールド電極13は、手首61が時計システムの内側を通る場合に、手首61に対向するように配置されている。また、絶縁部14は、ホット電極12、コールド電極13の間を絶縁させるために、それらの間に配置されている。ステップモータ171の出力は輪列172を介して指針18を駆動する。ステップモータ171、輪列172、指針18、および文字板は、表示部161を構成している。表示部161は、いわゆるデジタル表示機構であってもよいし、液晶などの表示パネルであってもよい。
バックル2は、筐体21と、ホット電極22と、コールド電極23と、絶縁部24と、二次電池25と、充電回路252と、通知部261と、操作部262と、センサ263と、回路基板27と、無線通信部28と、制御通信ユニット29とを含む。無線通信部28、制御通信ユニット29は回路基板27上に配置される。
ヘッド1、バックル2は、それぞれ特許請求の範囲の記載における、第1ユニット、第2ユニットに対応する。またホット電極12、コールド電極13、ホット電極22、コールド電極23、充電回路152、充電回路252は、それぞれ第1主電極、第1副電極、第2主電極、第2副電極、第1充電制御回路、第2充電制御回路に対応し、無線通信部28は、第3通信回路に対応する。なお、ヘッド1、バックル2がそれぞれ第2ユニット、第1ユニットに対応してもよい。この場合には、ホット電極12、コールド電極13、ホット電極22、コールド電極23、充電回路152、充電回路252は、それぞれ第2主電極、第2副電極、第1主電極、第1副電極、第2充電制御回路、第1充電制御回路に対応してよいし、第3通信回路に対応する無線通信部28がヘッド1に設けられてよい。
バンド3は2つの部分からなり、その2つの部分はヘッド1の互いに異なる端から延び、それぞれバックル2の互いに異なる端に接続されている。バックル2は、金属バンドとともに用いられる両開きや片開きのもののように周の長さを拡げるタイプであってもよいし、バンド3の2つの部分を付け外し可能にするものであってもよい。
ここで、ヘッド1とバックル2との間では、人体通信(HBC: Human Body Communication)が行われる。人体通信は、人体を伝送媒体として用いる通信方式である。ホット電極22、コールド電極23は、手首61が時計システムの内側を通る場合に、手首61に対向するように配置されている。絶縁部24は、ホット電極22、コールド電極23の間を絶縁させるために、それらの間に配置されている。無線通信部28は、人体通信とは異なる、例えばBluetooth Low Energy(登録商標)のような無線通信方式による通信を行う回路であり、スマートフォン5(図8参照)などの時計システムの外にある装置との無線通信を実現する回路である。通知部261は時計システムを装着した者(ユーザ)に情報を通知し、表示パネル、バイブレータ、スピーカにより構成されている。操作部262はタッチセンサおよびボタンのうち少なくとも一方を含む。センサ263は、例えば、加速度センサ、心拍センサを含む。
制御通信ユニット19は、制御部190と、通信回路196とを含む。通信回路196は切り替えスイッチ192と、受信部193と、送信部194とを含む。制御通信ユニット29は、制御部290と、通信回路296と、発振器295とを含む。通信回路296は、切り替えスイッチ292と、受信部293と、送信部294とを含む。制御部190,290は、いわゆるマイクロコントローラであり、受信部193、送信部194は、ヘッド1において人体通信を実現し、受信部293、送信部294は、バックル2において人体通信を実現する。
通信回路196および通信回路296は、それぞれ特許請求の範囲における第1通信回路および第2通信回路に対応する。へッド1、バックル2がそれぞれ第2ユニット、第1ユニットに対応する場合には、通信回路196および通信回路296は、それぞれ第2通信回路および第1通信回路に対応してよい。
ホット電極12は、切り替えスイッチ192を介して受信部193および送信部194と接続されている。切り替えスイッチ192は、ヘッド1が人体通信によりデータを送信する場合にホット電極12と送信部194とを接続し、ヘッド1がデータを受信する場合にホット電極12と受信部193とを接続する。コールド電極13は、基準電位(例えば接地電位)を供給する配線に接続されている。制御通信ユニット19は、時計制御回路174に接続されている。時計制御回路174は発振器175、表示部161、操作部162に接続されている。時計制御回路174は、発振器175の制御、表示部161による時計表示の制御、電源の制御を行う。二次電池15は制御通信ユニット19、時計制御回路174等へ電力を供給する。充電回路152は主に制御部190の制御に基づいて二次電池15の充電を制御する。充電のための電力はホット電極12から供給される。この詳細については後述する。なお、時計制御回路174は、ソーラーセル155(図36参照)が光を受けて発電する電力に基づいて二次電池15の充電を制御する。
ホット電極22は、切り替えスイッチ292を介して受信部293および送信部294と接続されている。切り替えスイッチ292は、バックル2が人体通信によりデータを送信する場合にホット電極22と送信部294とを接続し、バックル2がデータを受信する場合にホット電極22と受信部293とを接続する。コールド電極23は、基準電位を供給する配線に接続されている。制御通信ユニット29は、無線通信部28、通知部261、操作部262、センサ263に接続されている。二次電池25は制御通信ユニット29等へ電力を供給する。充電回路252は制御部290の制御に基づいて二次電池25への充電を制御する。充電のための電力はホット電極22から供給される。制御部190,290は、リアルタイムクロック(RTC)、および、記憶部を有する。制御部290は発振器295に接続されている。
人体通信においては、送信側、受信側のそれぞれに2つの電極(ホット電極12,22、コールド電極13,23)が必要になる。ホット電極12およびコールド電極13は送信部194、受信部193による通信に用いられ、ホット電極22およびコールド電極23は送信部294、受信部293による通信に用いられる。ホット電極12はそれに接続される送信部194、受信部193を含むヘッド1(ホット電極12に対応するヘッド1)に設けられ、コールド電極13はともに用いられるホット電極12が設けられるヘッド1に設けられる。ホット電極22はそれに接続される送信部294、受信部293を含むバックル2(ホット電極22に対応するバックル2)に設けられ、コールド電極23はともに用いられるホット電極22が設けられるバックル2に設けられる。ホット電極12,22のうち一方が、ヘッド1またはバックル2のうち対応するものと分離して設けられてもよいし、コールド電極13,23のうち一方が、ヘッド1またはバックル2のうち対応するものと分離して設けられてもよい。
送信側のホット電極12または22のみに送信信号が入力される場合(電界方式)には、コールド電極13または23には、基準となる電位(基準電位)が供給される。基準電位は、ホット電極12または22に印加される信号とは異なる電位である。そして、人体を介して伝達されかつ受信側のホット電極22または12において検出される信号が復号される。
一方、いわゆる差動伝送(平衡伝送)の場合には、送信側のホット電極12または22に送信信号が入力され、送信側のコールド電極13または23には送信信号の極性を反転させた反転信号が入力される。すると、受信側のホット電極22または12と、受信側のコールド電極23または13との双方で信号を検出する。ホット電極22または12において検出される信号からコールド電極23または13において検出される信号が減算され、その減算結果として得られる信号に基づいて復号が行われる。差動伝送はより高速に信号を伝達できる。差動伝送の場合には、図3において、ホット電極12,22だけでなくコールド電極13,23も、他の切り替えスイッチを介して通信回路(送信部194,294または受信部193,293)に接続されてよい。
ホット電極12,22、コールド電極13,23が人体と接触している場合には、人体通信により人体に直接的に通信信号が流れる。それにより、一般的な無線通信に比べて消費電力が小さくなる。またホット電極12,22、コールド電極13,23を人体と絶縁しても、人体との容量結合により信号を送受信することができる。この場合も消費電力は小さくなる。
図4は、人体通信における変調方式を説明する図である。図4は、いわゆる振幅偏移変調の一種であるオンオフ変調により信号が伝送される場合の例である。
送信側にある送信部194,294は、シリアル変換部41、タイマ42、AND回路43、フィルタ44を含み、ホット電極12,22に相当するHBC電極45に接続されている。受信側にある受信部293,193は、ホット電極22,12に相当するHBC電極51に接続され、同調回路52、検波回路53、波形整形回路54、パラレル変換部55を含む。なお、差動伝送方式の場合、HBC電極45は、コールド電極13,23にも相当し、HBC電極51はコールド電極23,13にも相当する。
シリアル変換部41は、送信データをシリアルのデジタル信号に変換する。タイマ42は、人体通信の伝送信号のキャリア周波数を有するキャリア信号を出力する。デジタル信号とキャリア信号はAND回路43に入力され、AND回路43は変調されたデジタル波形を出力する。フィルタ44はキャパシタによるDCカット機能とバンドパスフィルタとを含み、変調されたデジタル波形が入力され、AM信号を出力する。出力されたAM信号はHBC電極45から送信され、人体を介してHBC電極51に到達する。HBC電極51により受信された受信信号は同調回路52、検波回路53によりアナログの検波波形となり、波形整形回路54は検波波形を二値化しシリアルのデジタル信号を出力する。パラレル変換部55はシリアルのデジタル信号を受信データに変換する。なお、シリアル変換部41およびパラレル変換部55は、いわゆるUARTにより実現される。
なお、例えば周波数偏移変調や位相偏移変調など振幅偏移変調と異なる変調方式により人体通信における信号が送受信されてもよい。
人体通信をする時計システムにおける電極の配置についてさらに説明する。図5は、時計システムにおけるホット電極12,22およびコールド電極13,23の配置の一例を示す図である。ホット電極12、コールド電極13は、ヘッド1のうち環の中心側に、仮に手首61が挿通する場合にその手首61に対向するように配置されている。またホット電極22、コールド電極23は、両開きのバックル2のうち環の中心側に、仮に手首61が挿通する場合にその手首61に対向するように配置されている。
ホット電極22およびコールド電極23は、ホット電極12およびコールド電極13が並ぶ向きに沿って配置されている。図5の例では、ホット電極12およびコールド電極13、ホット電極22およびコールド電極23は、特に環の周方向にそって配置されている。これにより、ヘッド1のホット電極12およびコールド電極13により生じる電界の励振方向(図5,6のヘッド1における太い矢印)と、バックル2のホット電極22およびコールド電極23により生じる電界の励振方向(図5,2のバックル2における太い矢印)とがほぼ一致するため、送受信における損失を抑えられる。
なお、ホット電極12およびコールド電極13が並ぶ向きは、図5と異なっていてもよい。図7は、時計システムにおけるホット電極12,22およびコールド電極13,23の配置の他の一例を示す図である。図7の例では、ホット電極12およびコールド電極13は環の周方向に交差する交差方向に並ぶようにヘッド1に配置され、ホット電極22およびコールド電極23も、交差方向に並ぶように片開のバックル2に配置されている。このような配置であっても、送受信における損失を抑えられる。
次に、ヘッド1とバックル2との通信に関する処理について説明する。図8は、人体通信および他の無線通信のプロトコルを説明するシーケンス図であり、主に通信接続に関する処理を説明する図である。図8の例では、人体通信において、ヘッド1がセントラルであり、バックル2がペリフェラルとなる。また無線通信において、スマートフォン5がセントラルであり、バックル2がペリフェラルとなる。以下では、無線通信の例として、Bluetooth Low Energy(BLE)規格に従う通信が行われる場合について説明する。
はじめに人体通信の接続処理について説明する。ヘッド1は「HBC SCAN」の期間においてバックル2からの人体通信によるアドバタイズ信号を受信できる(スキャンする)状態にある。バックル2が「HBC ADV」の期間においてアドバタイズ信号を送信すると、ヘッド1はそのアドバタイズ信号を受信する。アドバタイズ信号の受信後に、ヘッド1とバックル2との間で接続処理が行われ、人体通信における接続済状態(「HBC Connected」の期間に対応する)に遷移する。
次に無線通信における接続処理について説明する。スマートフォン5は「BLE SCAN」の期間においてバックル2からのBLEによるアドバタイズ信号を受信できる(スキャンする)状態にあり、バックル2が「BLE ADV」の期間においてBLEによるアドバタイズ信号を送信すると、スマートフォン5はそのアドバタイズ信号を受信する。アドバタイズ信号の受信後に、スマートフォン5とバックル2との間で接続処理が行われ、BLEにおける接続済状態(「BLE Connected」の期間に対応する)に遷移する。
図8の例では人体通信の接続処理の後にBLE規格の接続処理が行われているが、この順序は異なっていてもよい。また、人体通信におけるセントラル機器とペリフェラル機器が反対であってもよい。
図9は、人体通信の接続における送受信タイミングを示すタイミングチャートである。図9におけるTxは送信期間を示し、Rxは受信期間を示している。図9の例では、ヘッド1側の人体通信におけるスキャンは、ヘッド1の手首61への装着後に開始され、バックル2が最初のアドバタイズ信号を送信するタイミングでは行われていない。バックル2はアドバタイズ信号の送信の後に返答の受信を待ち、返答が送信されない場合は前回のアドバタイズ信号の送信からTint経過した後に次のアドバタイズ信号を送信する。ヘッド1がアドバタイズ信号を受信すると、返答の信号を送信し、バックル2が返答を受信すると、その後はバックル2とヘッド1との間で予め定められたプロトコルに従いデータの送受信が行われ、接続処理およびその後の通信が行われる。この接続の処理手法は、人体通信であることを除けばBLE規格と同様である。
BLE規格によりバックル2とスマートフォン5とが通信接続すると、消費電力削減のためバックル2とスマートフォン5との間の無線通信は間欠的に行われる。より具体的にはバックル2は、決定された第1送信間隔で間欠的にデータを送信する、またその第1送信間隔に応じた第1受信間隔でデータを受信する。スマートフォン5も同様に間欠的にデータを送受信する。ヘッド1とバックル2とが通信接続すると、こちらも人体通信は間欠的に行われる。より具体的にはバックル2は、決定された第2送信間隔で間欠的にデータを送信する、またその第2送信間隔に応じた第2受信間隔でデータを受信する。スマートフォン5も同様に間欠的にデータを送受信する。第1送信間隔および第1受信間隔は多くの場合等しく、以下では第1送信間隔または第1受信間隔を第1通信間隔とよぶ。同様に第2送信間隔および第2受信間隔は多くの場合等しく、以下では第2送信間隔または第2受信間隔を第2通信間隔とよぶ。
ここで、第2通信間隔は第1通信間隔に基づいて決定されてよい。例えば、制御部290、または、送信部294および受信部293は、第2通信間隔を第1通信間隔と同じものに決定してよい。すると、人体通信と無線通信との送受信タイミングの重複を安定的に避けることができ、制御部290の負荷に起因して通信エラーが発生することを抑制できる。さらに、データ通信量が閾値より小さく、第1通信間隔が所定の値より大きい場合には、無線積信と人体通信とを連続的に行うよう送受信のタイミングを調整することができ、バックル2の制御通信ユニット29が起動している時間を短縮し、さらに消費電力を削減することが可能になる。
なお、制御部290は、人体通信の通信先が検出されない場合に、人体通信だけでなく無線通信部28によるスマートフォン5などとの通信を停止してもよい。例えばバックル2が表示機能を有していない場合には、人体通信ができない場合はヘッド1およびバックル2の機能を使う必要がない蓋然性が高いため、効率的に電力消費を削減することが可能になる。また人体通信の通信先が検出されない場合に、制御部290はバックル2について蓄積されているデータをスマートフォン5などに送信してもよい。これにより送信負荷を平準化することが可能になる。
図10は、ヘッド1の通信接続時の処理の一例を示すフロー図である。図10に示される処理は、主にヘッド1とバックル2との人体通信による通信接続の際に行われる処理であり、ヘッド1およびバックル2の機能を適切に連携させるための処理である。この処理は主に制御通信ユニット19の制御部190により行われるが、制御部190と異なるマイクロコントローラにより行われてもよい。
はじめに制御部190は、通信先が検出されたか否かを判定する(ステップS201)。例えば受信部193がアドバタイズ信号を受信し、通信接続処理がされた場合に通信先が検出されたと判定されてよい。通信先が検出されない場合は(ステップS201のN)、ステップS201の処理を繰り返す。
通信先が検出された場合には(ステップS201のY)、制御部190は受信部193が受信した通信先からの接続情報を取得する(ステップS202)。接続情報は、通信先のデバイスの識別情報と、通信先のデバイスが有する機能を示す機能情報とを含む。機能情報は、例えば音声の出力可否を示す情報、テキスト表示機能の有無を示す情報、保有するセンサの種類を示す情報、非接触による決済機能の有無を示す情報のうちいずれかを含んでよい。
次に、制御部190は、取得された識別情報と、記憶部に記憶された接続済デバイスの情報とに基づいて、通信先と過去に接続していたか判定する(ステップS203)。接続済デバイスの情報は、過去に接続されたデバイスの識別情報と、そのデバイスから取得された接続情報と、その他の設定情報とを含む。
通信先と過去に接続していない場合には(ステップS203のN)、制御部190は、通信先が有する機能のうち、自らのデバイスと共通の機能を検出する(ステップS204)。また、予め記憶部に記憶されている設定データから、共通する機能の優先度設定を取得する(ステップS205)。優先度設定は、その機能を優先的に使用するか否か、通信先のデバイスの機能と共存させるか否かを示す情報を含む。なお、優先度設定として、通信先が自らのデバイスが有する機能より高性能な機能を有する場合に、自らのデバイスの機能を用いないといった条件付きの設定がされていてもよい。
次に、制御部190は、取得された優先度設定に基づいて、共通の機能のそれぞれについて、自らのデバイスと通信先のうちいずれが有する機能を無効化するか決定し、決定された機能を無効化する(ステップS206)。通信先の機能を無効化する場合には、制御部190は、送信部194を介してその機能を無効化させる命令を通信先へ送信する。
そして、制御部190は、通信先との接続に関する情報を接続済デバイスの情報として記憶部に格納する(ステップS207)。通信先との接続に関する情報は、通信先のデバイスの識別情報と、そのデバイスから取得された接続情報と、共通する機能のうち無効化する機能を示す情報とを含む。ステップS204からS207では、共通する機能の取り扱いに関する処理が行われるが、制御部190は、通信先が有する表示能力に基づいて、どの種類の情報(例えば時刻や天気、通知など)を表示部161、通知部261のどちらに表示させるか決定し、その表示に関する機能を制御する制御情報を記憶部に格納し、また通信先に送信してもよい。
ここで、通信先と過去に接続していた場合には(ステップS203のY)、制御部190は、その通信先について記憶部に格納される接続済デバイスの情報に基づいて、例えば共通する機能を無効化するなど、機能を制御する(ステップS209)。なお、制御部190は、ステップS222において接続準備中を示す情報を表示部161に表示させ、ステップS228またはS229の処理が終了した際にその情報の表示を終了させてもよい。
単に機能の有効化、無効化だけでなく、各機能のセキュリティの制御も行われてよい。図11は、ヘッド1の通信接続時の処理の他の一例を示すフロー図である。特に電子決済に用いられ非接触のICチップを用いるNFC(Near Field Communication)機能に関する処理を記載しているが、他のセキュリティの制御が必要な機能について同様の処理が行われてもよい。
はじめに制御部190は、通信先が検出されたか否かを判定する(ステップS221)。通信先が検出されない場合は(ステップS221のN)、ステップS221の処理を繰り返す。通信先が検出された場合には(ステップS221のY)、制御部190は受信部193が受信した通信先からの接続情報を取得する(ステップS222)。
次に、制御部190は、取得された識別情報と、記憶部に記憶された接続済デバイスの情報とに基づいて、通信先と過去に接続していたか判定する(ステップS223)。ステップS221からS223の処理は、図10のステップS201からS203の処理と同様である。
通信先と過去に接続していない場合には(ステップS223のN)、制御部190は、通信先のデバイスおよび自らのデバイスがNFC機能を有するか否か確認し、またそのNFC機能を有効化する(ステップS224)。また、制御部190は双方のデバイスがNFC機能を有するか確認する(ステップS225)。双方のデバイスがNFC機能を有する場合(ステップS225のY)には、制御部190は予め記憶部に記憶されている優先度設定に基づいて、その優先度の低いデバイスのNFC機能を無効化する(ステップS226)。通信先のNFC機能を無効化する場合には、制御部190は、送信部194を介してNFC機能を無効化させる命令を通信先へ送信する。また、制御部190はNFC機能が無効化されたデバイスに、有効化されたNFC機能へアクセスするための認証情報を設定する(ステップS227)。これにより、無効化された端末を介してNFC機能を利用することが可能になる。また複数のNFCチップによる送受信による動作異常を防ぐことが容易になる。どちらかのデバイスがNFC機能を有さない場合(ステップS225のN)には、ステップS226,S227の処理はスキップされる。
そして、制御部190は、通信先との接続に関する情報を接続済デバイスの情報として記憶部に格納する(ステップS228)。
なお、通信先と過去に接続していた場合には(ステップS223のY)、制御部190はその通信先について記憶部に格納される過去の接続済デバイスの情報に基づいて、NFC機能の有効化、無効化を制御する(ステップS229)。これまでに説明されたように、利用の際にセキュリティの制御のため認証情報が必要な機能であっても、片方の機能を停止させつつ利便性を確保することが可能になる。なお、セキュリティの制御が不要な機能については、別途図10のステップS204からS206の処理が行われてもよい。
次に、ヘッド1およびバックル2の省電力制御について説明する。図12は、ヘッド1において省電力モードを制御する処理の一例を示すフロー図である。この処理は主に制御通信ユニット19の制御部190により行われるが、制御部190と異なるマイクロコントローラにより行われてもよい。
はじめに、制御部190は、時計制御回路174を介して二次電池15の電圧を取得する(ステップS301)。ここで取得された電圧が閾値より高い場合には(ステップS302のN)、制御部190は所定の期間経過した後に、ステップS301の処理を繰り返す。一方、検出された電圧が閾値以下である場合には(ステップS302のY)、制御部190は省電力モードに移行するためにステップS303以降の処理を実行する。なお、二次電池15の充電量が低下するとその電圧も低下するため、制御部190が二次電池15の電圧の低下を検出すること充電量の低下の検出と同義である。
ステップS303では、制御部190は、人体通信の通信先が存在しているか判定する。通信先が存在する場合には(ステップS303のY)、制御部190は、送信部194を介して、通信先に省電力モードへの移行を示す情報(省電力モード移行信号)を送信する(ステップS304)。通信先が存在しない場合には(ステップS303のN)、ステップS304をスキップする。そして、制御部190は、自らのデバイスであるヘッド1を省電力モードに移行させる(ステップS305)。省電力モードでは、時計制御回路174により、電力の消費を抑えるため、ステップモータ171の駆動が抑制され、表示される内容が限定される。ヘッド1の表示部161が表示パネルを含む場合には、時計制御回路174または制御部190により、省電力モードにおいて、表示部161は原則として情報を表示せず、人体通信も行わないように制御される。
図13は、バックル2において省電力モードを制御する処理の一例を示すフロー図である。この処理は主に制御通信ユニット29の制御部290により行われるが、他のマイクロコントローラにより行われてもよい。
はじめに制御部290は、人体通信により省電力モード移行信号を受信したか判定する(ステップS321)。省電力モードへの移行を示す情報を受信するまで、ステップS321の処理は繰り返し行われてよい。
ここで、ステップS304においてヘッド1の送信部194が省電力モードへの移行を示す情報を送信し、バックル2の受信部293がその情報を受信すると(ステップS321のY)、制御部290は記憶部に省電力モードを連携する設定が格納されているか確認する(ステップS322)。連携する設定が格納されている場合には(ステップS322のY)、制御部290は自らのデバイスであるバックル2を省電力モードに移行する(ステップS323)。省電力モードにおいては、例えば、制御部290により通知部261の表示が抑制され、人体通信も行わない。
図12,13に示される処理により、人体通信を用いてヘッド1とバックル2とが連携して省電力モードに入ることが可能になる。両方が稼働しないと効果を得づらい機能のみが稼働しているような場合には、確実に電力消費を抑えることができる。なお、ヘッド1およびバックル2は、二次電池15,25の電圧が低下した場合以外でも省電力モードに移行する。例えば、時計システムが人体から外された、一定時間操作が行われない、または、加速度センサが一定時間動きを検出しない場合に図12のステップS303以降の処理および図13の処理を実行し、省電力モードへ移行する。なお、図12の処理をバックル2で行い、図13に示される処理をヘッド1で行ってもよい。
次に、人体通信の開始に関する制御の例について説明する。図14は省電力モードから復帰する際の処理の一例を示すフロー図である。図14の例では、人体に装着されることによりバックル2が省電力モードから復帰する場合に、人体通信を開始する手順について説明する。
はじめに、制御部290は、人体への近接が検出されたか否かを判定する(ステップS351)。例えば制御部290は、静電容量式タッチセンサの原理を用いて、人体に対向する電極(例えばホット電極12及びコールド電極13)に生じる容量を示す値が閾値C1を超えることを人体の近接として検出してよい。制御部290は、ここでは近接検出回路として動作する。人体の近接が検出されない場合には(ステップS351のN)、制御部290は所定の期間待機した後に、ステップS351を繰り返してよい。
人体の近接が検出された場合には(ステップS351のY)、制御部290は人体通信に関連する回路をスタンバイモードに移行させる(ステップS352)。人体通信に関連する回路は、具体的には送信部294、受信部293であり、省電力モードではこれらの回路は停止しており、スタンバイモードは、これらの回路を起動させるが、ホット電極22には信号が出力されない状態である。なお送信部294、受信部293の起動には一定の時間が必要である。
制御部290は、所定の期間待機し(ステップS353)、時計システムの人体への装着が検出されたか否か判定する(ステップS354)。例えば制御部290は、静電容量式タッチセンサの原理を用いて、人体に対向する電極に生じる容量を示す値が閾値C2(C2が示す容量はC1が示す容量より大きい)を超えることを人体の近接として検出してよい。
人体への装着が検出されない場合には(ステップS354のN)、ステップS353から繰り返す。一方、人体への装着が検出された場合には、制御部290は、送信部294および受信部293を制御し、人体通信におけるアドバタイズを開始する(ステップS355)。この処理により、送信部294は人体通信による通信の接続を開始するための信号であるアドバタイズ信号を送信する。より具体的には図8とともに説明されているので詳細の説明は省略する。
人体の近接によりスタンバイモードに移行し、装着前に送信部294,受信部293の起動させることで、人体通信をより早く開始することが可能になり、時計システムの使い勝手を向上させることが可能になる。また装着前には人体通信そのものを開始しないため、電力の浪費も防ぐことができる。なお、図14に示される処理と同様の処理が、ヘッド1において行われてもよい。この場合は、処理は制御部190により実行され、ステップS352では送信部194、受信部193が制御される。またステップS355では図8の「HBC SCAN」についての処理が行われる。
図15は、省電力モードにおける表示処理の一例を示す図であり、バックル2において行われる処理の一例を示す図である。はじめに制御部290は、操作部262が操作されたことが検出されたか否かを判定する(ステップS401)。操作されたことが検出されない場合には(ステップS401)、制御部290は、例えば操作部262のタッチパネルへの接触またはボタンの押下があった場合に操作を検出してよい。また制御部290は、センサ263に含まれるモーションセンサの出力により、人体による動きが検出されたか否かを判定する(ステップS402)。
動作が検出されない場合には(ステップS402のN)、ステップS401から繰り返す。ここで操作部262が操作されたことが検出される(ステップS401のY)、または、モーションセンサが人体による動きを検出した(ステップS402のY)場合には、ヘッド1およびバックル2のうち、時計システムを装着しているユーザが視認しているデバイスを推定する(ステップS403)。より具体的には、制御部290はセンサ263に含まれるモーションセンサの出力が示す重力加速度に基づいて、ヘッド1およびバックル2の向く方向を検出し、推定された方向に基づいてヘッド1およびバックル2からユーザに視認されるものを推定する。
次に制御部290は電池残量が動作閾値を超えているか判定する(ステップS404)。動作閾値を超えている場合には(ステップS404のY)、あらかじめ設定された表示対象の設定情報に基づいて、表示させる情報を決定する(ステップS405)。もし設定情報が、時刻および天気を表示させることを示す情報を含む場合には、制御部290は表示させる情報として、現在時刻と、無線通信部28経由で取得される現在の天気とを取得する。
一方、電池残量が動作閾値以下である場合には(ステップS404のN)、表示させる情報として充電警告表示を決定する(ステップS406)。そして、制御部290は、ステップS403により推定されたデバイスに、決定された情報を表示させる(ステップS407)。制御部290は、決定されたデバイスが自らのデバイスである場合には、通知部261に情報を表示させ、通信先のデバイスである場合には、送信部294を制御し、そのデバイスにその情報を表示する指示を送信する。
複数のデバイスがある場合にどちらに表示すべきか判定し、人体通信を介した表示の制御がされることで、視認性を向上させることができる。なお、ヘッド1に含まれる制御部190により、図15と同様の処理が行われてもよい。またその場合にはヘッド1がモーションセンサを含み、ステップS402でそのモーションセンサが用いられてもよい。またモーションセンサを用いずに、操作部162への入力がある場合のみにステップS403以降の処理がされてもよい。この場合ステップS404において、操作があったデバイスを視認されるデバイスとして決定してよい。
本実施形態では、ヘッド1およびバックル2の両方で通知が可能である。またバックル2は外部デバイスであるスマートフォン5と連携可能なため、スマートフォン5の通知機能も利用することが可能である。以下では、複数デバイスにおける通知先の制御について説明する。
図16は、情報の通知におけるヘッド1の処理の一例を示すフロー図である。
はじめに、制御部190は、ヘッド1の状況が通知条件を満たしているか判定する(ステップS501)。通知条件は、例えば、ヘッド1に予め設定されている時刻になること、操作部162に対して何らかの操作がされること、ヘッド1にて実行されているプログラムから通知指示を受信すること、といった複数の条件を含み、制御部190は先の複数の条件のうちいずれかが満たされる場合に通知条件を満たしていると判定してよい。
状況が通知条件を満たしていない場合には(ステップS501のN)、バックル2から通知情報を受信したか判定する(ステップS502)。バックル2から通知情報を受信した場合には(ステップS502のY)、制御部190は、時計制御回路174を介して表示部161に通知情報を表示させる(ステップS503)。通知情報を受信していない場合は(ステップS502のN)、ステップS501からの処理を繰り返す。なお、ステップS502の処理を繰り返す代わりに、制御部190は受信部193がバックル2から受信するごとに受信された情報が通知情報であるか判定し、通知情報である場合にステップS503を実行してもよい。
ヘッド1の状況が通知条件を満たしている場合には(ステップS501のY)、制御部190は通知情報を取得する(ステップS504)。この処理は、満たした条件に応じて通知情報を生成する処理であってもよいし、他のプログラムにより生成された通知情報を読み出す処理であってもよい。また、制御部190は、通知情報の種類、通知情報の情報量のうち少なくとも一部に基づいて、通知情報の出力先(出力するデバイス)も決定する。ユーザが予め通知情報の種類に応じた出力先を設定しておき、その設定に基づいて出力先が決定されてよい。制御部190は、ヘッド1、バックル2、外部デバイスの3種類のうち1または複数を出力先として決定することが可能である。図16の例では、出力先として、ヘッド1のみ、バックル2のみ、外部デバイスのみ、バックル2および外部デバイス、のうちいずれかの組み合わせが決定される。
取得された通知情報の出力先がヘッド1である場合には(ステップS505のY)、ステップS503の処理へ遷移する。一方、取得された通知情報の出力先がヘッド1でない場合には(ステップS505のN)、制御部190はその出力先が外部デバイスを含むか判定する(ステップS506)。出力先に外部デバイスが含まれる場合には(ステップS506のY)、制御部190は、通知情報に外部デバイスへ転送させる転送情報を付加する(ステップS507)。出力先に外部デバイスが含まれない場合には(ステップS506のN)、ステップS507はスキップされる。そして制御部190は、送信部194にバックル2へ通知情報を送信させる(ステップS508)。図16に示される処理により、ヘッド1で起きた状況に応じた通知情報を、バックル2または外部デバイスへ送信することが可能になる。
図17から19は、情報の通知におけるバックル2の処理の一例を示すフロー図である。バックル2は、外部デバイスと無線通信することが可能であるため、外部デバイスと連携する処理も行われる。
はじめに、制御部290は、バックル2の状況が通知条件を満たしているか判定する(ステップS521)。通知条件は、例えば、バックル2のセンサ263に基づいて検出される歩数、活動量の達成度(%)、NFCによる非接触決済における残高、電池残量といった指標のうちいずれかが種類ごとに定められた値を超えるまたは下回ること、操作部262に対して何らかの操作がされること、バックル2にて実行されているプログラムから通知指示を受信すること、といった複数の条件を含み、制御通信ユニット29は先の複数の条件のうちいずれかが満たされる場合に通知条件を満たしていると判定してよい。
状況が通知条件を満たしていない場合には(ステップS521のN)、制御部290は受信部293がヘッド1から通知情報を受信したか判定する(ステップS522)。ヘッド1から通知情報を受信した場合には(ステップS522のY)、制御部290はステップS541以降の処理を実行する。また、外部デバイスから通知情報を受信した場合には(ステップS523のY)、制御部290はステップS561以降の処理を実行する。ステップS521からS523の処理のそれぞれは、繰り返し実行されてよい。
バックル2の状況が通知条件を満たしている場合には(ステップS521のY)、制御部290は通知情報を取得する(ステップS524)。この処理は、満たした条件に応じて通知情報を生成する処理であってもよいし、他のプログラムにより生成された通知情報を読み出す処理であってもよい。また、制御部290は、通知情報の種類、通知情報の情報量のうち少なくとも一部に基づいて、通知情報の出力先も決定する。ユーザが予め通知情報の種類に応じた出力先を設定しておき、その設定に基づいて出力先が決定されてよい。図17の例では、出力先として、ヘッド1のみ、バックル2のみ、外部デバイスのみ、ヘッド1と外部デバイス、バックル2および外部デバイス、のうちいずれかが決定される。
通知情報の出力先がヘッド1を含む場合には(ステップS525のY)、制御部290はその出力先が外部デバイスを含むか判定する(ステップS526)。出力先に外部デバイスが含まれる場合には(ステップS526のY)、制御部290は無線通信部28を介して外部デバイスへ通知情報を送信する(ステップS527)。出力先に外部デバイスが含まれない場合には(ステップS526のN)、ステップS527はスキップされる。そして制御部290はヘッド1へ通知情報を送信する(ステップS528)。この場合、ヘッド1は、図16のステップS502,S503の処理により、見返しリングやベゼルに記載された値のうち、通知情報の値に対応する位置を指針18で指し示すことによりその通知情報を表示してよい。
ステップS522において、受信部293がヘッド1から通知情報を受信した場合には(ステップS522のY)、制御部290はその通知情報を解析する(ステップS541)。そして、制御部290は通知情報に外部デバイスへの転送情報が付加されているか判定する(ステップS542)。転送情報が付加されている場合には(ステップS542のY)、制御部290は無線通信部28を介して外部デバイスへ通知情報を送信する(ステップS543)。また制御部290は通知情報の出力先がバックル2を含むか判定し(ステップS544)、出力先がバックル2を含まない場合には(ステップS544のN)、処理を終了する。
一方、通知情報に転送情報が付加されていない場合には(ステップS542のN)、ステップS543,544はスキップされ、制御部290は通知情報を通知部261に表示させる(ステップS545)。ステップS544において出力先がバックル2を含む場合(ステップS544のY)にもステップS545の処理が実行される。
ステップS523において、無線通信部28が外部デバイスから通知情報を受信した場合には(ステップS523のY)、制御部290はその通知情報を解析する(ステップS561)。そしてその通知情報の出力先がヘッド1である場合には(ステップS562のY)、制御部290は送信部294にヘッド1へ通知情報を送信させる(ステップS563)。一方、通知情報の出力先がヘッド1でない場合には(ステップS562のN)、制御部290はその通知情報を通知部261に表示させる(ステップS545)。
このように、出力先に応じて転送や表示を切り替えることにより、通知の出力先を柔軟に設定することが可能になり、時計システムのユーザによる通知の確認をより容易にすることが可能になる。
なお、通知情報の代わりに、制御通信ユニット29は、例えば歩数、活動量の達成度(%)、残高(%)、電池残量、のような状態情報を定期的にヘッド1に送信し、ヘッド1の制御部190が、表示部161にその状態情報を表示させてもよい。ヘッド1は、ユーザの操作に従って、見返しリングやベゼルに記載された0~100%までの範囲のうち値に対応する位置を指針で指し示すことによりその状態情報を表示してよい。なお、ヘッド1が表示パネルを含む場合には、単にその状態情報を表示パネルに常時表示させてよい。またヘッド1から状態情報を定期的に送信し、バックル2がその状態情報を表示してもよい。この場合も、状態情報の種類や情報量に応じて出力先が決定され、決定された出力先が自らのデバイスでない場合に、その状態情報が送信されてよい。
ここで、ホット電極12,22、コールド電極13,23の構成は、これまでに説明されたものと異なっていてもよい。
図20は、時計システムの他の一例を示す図であり、図21は図20に示される時計システムの断面図である。図20,21の例では、コールド電極13はヘッド1の筐体11であり、コールド電極23はバックル2の筐体21である。ここで、筐体11,21は金属などの導電性の材質により構成されている。ホット電極12は周方向でみて中央と端部との間に配置されている。図20では、バックル2は両開きである。ホット電極22は周方向でみてバックル2の中央に配置されている。また時計システムの環の内側から見ると、ホット電極12,22は、それぞれ絶縁部14,24により囲まれ、その絶縁部14,24によりホット電極12,22とコールド電極13,23とが絶縁されている。
コールド電極13,23を筐体11,21と共通にすることにより、構造を簡素化することが可能になる。
バックル2は片開きでもよい。図22は、時計システムの他の一例を示す図である。図22の例では、図20の例と異なりバックル2は片開きであり、ホット電極22は周方向でみてバックル2の端部に隣接して配置されている。
ここで、コールド電極13,23の両方が必ずしも明示的に配置されなくてもよい。バンド3によって、ヘッド1の基準電位を供給する配線と、バックル2の基準電位を供給する配線とが電気的に接続されてもよい。
図23は、時計システムの他の一例を示す図である。図24は、図23に示される時計システムの断面図である。図23,24の例では、ヘッド1の筐体11はコールド電極13に相当し、バックル2の筐体21はコールド電極23に相当する。また筐体11,21は、それぞれ制御通信ユニット19,29に基準電位を供給する配線と接続されている。
バンド3は複数の部材により構成されている。それらの部材は導電性の材質、例えば金属により構成されている。バンド3は複数のコマと、隣り合うコマを接続するピンと、バネ棒とを含み、それらは導電性の部材であり互いに接触する。バネ棒は、ヘッド1のラグ113、バックル2の筐体21に取り付けられ、筐体11,21と電気的に接続する。バンド3がヘッド1の筐体11とバックル2の筐体21とに接続されることで、ヘッド1の基準電位を供給する配線と、バックル2の基準電位を供給する配線とを電気的に接続する。
ホット電極12は、周方向で見てヘッド1の中央に配置されている。またバックル2は両開きであり、ホット電極22は周方向で見てバックル2の中央に配置されている。ホット電極12,22を筐体11,21より手首61の側に突出させ、筐体11,21と手首61とが接触しないようにしてよい。
図23,24の例では、コールド電極13,23を設けるスペースを節約することができ、構造を簡素化することができる。また信号の伝送に必要な2つの線路のうち一方が優先になる、一種の半有線通信になるため、通信の安定性が向上する。なお、バンド3が、ホット電極12,22と極性または位相の異なる信号を伝送する配線と接続されてもよい。
バックル2は片開きでもよい。図25は、時計システムの他の一例を示す図である。図25の例では、図23の例と異なりバックル2は片開きであり、ホット電極22は周方向でみてバックル2の端部に隣接して配置されている。
コールド電極13,23に相当するバンド3および筐体11,21と、人体とが絶縁されてもよい。図26は、時計システムの他の一例を示す断面図である。
図26の例では、バンド3のうち少なくとも手首61に対向する表面は、絶縁部34により覆われている。絶縁部34は例えば塗装や、樹脂によるコーティングであってもよい。またヘッド1のうち手首61に対向する表面(ホット電極12を除く)、および、バックル2のうち手首61に対向する表面(ホット電極22を除く)も、絶縁部14,24により手首61と絶縁されてもよい。人体がホット電極12,22のみと接触することにより、コールド電極13,23に相当する電位が手首61にリークすることによる信号の損失を抑えることができる。
バンド3が絶縁体で構成される本体と、バンド3の本体の内部に配置される配線とから構成されてもよい。配線は、ヘッド1とバックル2とを電気的に接続する。図27は、時計システムの他の一例を示す断面図である。図28は、絶縁性のバンド3および配線の一例を示す図である。図27,28の例では、バンド3の本体は例えば革やウレタンなどの絶縁性の材料からなる。またバンド3の中に配線として導電部材72と導電バネ棒71とが配置されている。導電部材72は、金属であってもよいし、FPC(Flexible Printed Circuits)であってもよい。また、導電性の布や糸であってもよい。もちろん導電バネ棒71と導電部材72とは互いに接している。このように、バンド3の材質が革やウレタンであっても、単純な構造でヘッド1とバックル2とを電気的に接続することが可能になる。
ホット電極12,22が人体に対して絶縁されてもよい。図29は、時計システムの他の一例を示す図である。図29では、ホット電極12,22のうち手首61に対向する側の面が、絶縁部14,24により覆われている。この場合、人体とホット電極12とが容量結合されることにより、信号が伝達される。これにより、ホット電極12,22がショートを起こすことを防止できる。また、汗や海水によって、ホット電極12,22と筐体11,21との間で電蝕の発生を防止できる。そのため、ホット電極12,22と筐体11,21との間で互いに異なる金属材質を用いることが可能になる。
図30は、時計システムの他の一例を示す図である。図30の例では、図5から7に示される時計システムと同様に、ホット電極12,22、コールド電極13,23が、筐体11,21と絶縁されている。さらに、ホット電極12およびコールド電極13のうち手首61に対向する側の面は、絶縁部14により覆われ、ホット電極22およびコールド電極23のうち手首61に対向する側の面は、絶縁部24により覆われている。この例では、ホット電極12,22のみでなくコールド電極13,23も、容量結合により信号を伝達させる。これにより、ホット電極12,22、コールド電極13,23においてショートが発生することを防止し、また電蝕の発生も防止されるため、ホット電極12,22と、コールド電極13,23と、筐体11,21との間で互いに異なる金属材質を用いることが可能になる。
図31はバックル2の他の一例を示す図である。図31の例では、図20や図23の例と同様にコールド電極23と筐体21とが共通であるが、ホット電極22は複数の開口部75a~75cを有する点が異なる。開口部75a~75cの内側には、センサ263の1つであるバイタルセンサが配置される。バイタルセンサは、例えば脈拍や酸素飽和度などの身体の状態を計測するものである。ここでは、バイタルセンサは光学的に身体の状態を計測するものであってよく、開口部75a,75cの内側に発光素子が配置され、開口部75bの内側に受光素子が配置されてよい。ホット電極22とバイタルセンサはどちらも人体に十分に近づける必要があるため、この配置によりどちらも人体と良好に接近することが可能になる。なお、ホット電極22は黒色に塗装されてよい。これにより、バイタルセンサの発光素子からの光の不要な反射を抑え、測定精度の低下を抑えることができる。また、制御通信ユニット29の制御部290は、ホット電極22による人体の近接の検出に基づいて、バイタルセンサの測定環境を判定し、その判定に基づいてバイタルセンサの稼働を制御してもよい。
これまでの説明では、ヘッド1とバックル2とは人体を介して人体通信するよう構成されているが、人体がない場合にも通信できるように構成されてもよい。図32は時計システムの他の一例を示す断面図であり、図33は図32に示される時計システムの非装着時の状態を示す断面図である。図32,33の例では、ヘッド1は篏合部77を有し、バックル2は被篏合部78を有する。時計システムが手首61から外され、ヘッド1がバックル2の上に来るように置かれると、篏合部77と被篏合部78とが篏合される。この場合、ヘッド1のホット電極12とバックル2のホット電極22とが対向し、それらは互いに接触または近接する。これにより、人体が間にない状態でもホット電極12,22間で直接的に信号または電流を流すこと、または、容量結合により通信をすることができる。
また、人体が間に入らないことにより、信号や電力の損失が大幅に減少する。そこで、制御部190,290は、ホット電極12とホット電極22とが接触または近接する場合に、通信速度を上昇させ、または、電力を融通するよう制御してもよい。なお、ホット電極12,22だけでなくコールド電極13,23も、篏合部77と被篏合部78とが篏合される場合に近接または接触するように配置されてもよい。
ここで、ホット電極22、コールド電極23は、バックル2の本体ではなく、バンド3に手首61に対向するように設けられてもよい。図34は時計システムの他の一例を示す断面図である。図35は図34に示されるバックル2およびバンド3を示す図である。ホット電極22はヘッド1の一端とバックル2の一端とを接続するバンド3に設けられ、コールド電極23はヘッド1の他端とバックル2の他端とを接続するバンド3に設けられる。
図34,35の例では、バックル2とバンド3とは切り離せないように構成されており、バンド3の内部には、ホット電極22およびコールド電極23とバックル2内部の制御通信ユニット29とを接続する配線が埋め込まれている。ホット電極22およびコールド電極23は、バックル2の本体よりヘッド1に近い位置に配置されているため、手首61に装着された際に、人体を介して信号を送受信する際の損失を減らすことができる。
ここで、人体通信に用いられるホット電極12,22、コールド電極13,23を二次電池15,25の充電のために用いてもよい。つまり、ホット電極12,22、コールド電極13,23を介して外部から電力が給電されてもよい。
図36は、ヘッド1の充電に関する回路構成を示す図である。制御通信ユニット19は、制御部190、受信部193、送信部194に加えて、電極状態検出回路197を含む。ホット電極12は、キャパシタ199を介してスイッチに接続され、スイッチはキャパシタ199の一端を、受信部193、送信部194のうち一方と選択的に接続する。また電極状態検出回路197は、キャパシタ199の2つの端子のうちホット電極12と接続される端子に電気的に接続されている。ホット電極12は、さらにスイッチ153を介して充電回路152に接続され、充電回路152はダイオード154を介して二次電池15のプラス極に接続されている。充電回路152はホット電極12およびコールド電極13をから電力が供給された場合に二次電池15を充電する。
二次電池15のマイナス極は基準電位を供給する配線に接続されている。時計制御回路174および制御通信ユニット19は、二次電池15のプラス極、および基準電位を供給する配線に接続されている。図36の例では、コールド電極13は基準電位を供給する配線に接続されている。また時計制御回路174はソーラーセル155を介して二次電池15のプラス極に接続されている。時計制御回路174は、ソーラーセル155による二次電池15の充電を制御する。
電極状態検出回路197は、ホット電極12の電位に基づいて、ホット電極12およびコールド電極13から電力が供給されたか否かを検出する。制御部190は、電力が供給されたことが検出された場合にスイッチ153をオンし、ホット電極12と充電回路152とを電気的に接続する。すると、充電回路152は供給される電力により二次電池15を充電する。なお、ダイオード154は、電流の逆流を防ぐために設けられている。
図37は、電極状態検出回路197の一例を示す図である。電極状態検出回路197はコンパレータを含み、コンパレータの第1の入力端子には参照電位Vrefが供給され、第2の入力端子はホット電極12と電気的に接続され、ホット電極12の電位Vbが入力される。コンパレータは電位Vbが参照電位Vrefを越えているか否かを示す電位を出力Voutに出力する。
図37には電極状態検出回路197として一つのコンパレータのみが記載されているが、電極状態検出回路197は3以上の状態を検出するために、複数のコンパレータを含んでよい。複数のコンパレータのそれぞれは、第2の入力端子には電位Vbが入力されるが、第1の入力端子には互いに異なりかつ予め定められた参照電位が供給されてよい。電極状態検出回路197は、ホット電極12の電位に基づいて、ホット電極12、コールド電極13を介して電力が供給されるか否か、および、ヘッド1が人体に装着されたか否かのそれぞれを検出してよい。
図38は、バックル2の充電に関する回路構成を示す図である。制御通信ユニット29は、制御部290、受信部293、送信部294に加えて、電極状態検出回路297を含む。ホット電極22は、キャパシタ299を介してスイッチに接続され、スイッチはキャパシタ299の一端を、受信部293、送信部294のうち一方と選択的に接続する。また電極状態検出回路297は、ホット電極22と電気的に接続されている。ホット電極22は、さらにスイッチ253を介して充電回路252に接続され、充電回路252はダイオード254を介して二次電池25のプラス極に接続されている。充電回路252はホット電極22およびコールド電極23をから電力が供給された場合に二次電池25を充電する。二次電池25のマイナス極は基準電位を供給する配線に接続されている。制御通信ユニット29は、二次電池25のプラス極、および、基準電位を供給する配線と接続されている。
電極状態検出回路297は、ヘッド1における電極状態検出回路197と同様の構成を有する。電極状態検出回路297はホット電極22およびコールド電極23から電力が供給されたか否かを検出する。制御部290は、電力が供給されたことが検出された場合にスイッチ253をオンし、ホット電極22と充電回路252とを電気的に接続する。すると、充電回路252はホット電極22を介して供給される電力により二次電池25を充電する。
ここで、電極状態検出回路197が充電における電力が供給される状態であるか判別する手法について説明する。電極状態検出回路197は、時計システムが手首61へ装着されているか否かも検出する。
図39は、非装着の際の電位Vb‐電位Vaの変動を示す図である。実線はホット電極12に接続される配線に電位が印加されるタイミングを示し、破線は、ホット電極12の電位Vbを示す。非装着の場合、期間Δtの開始時にホット電極12を介して電流が流れるように接続され、キャパシタ299の切り替えスイッチ側の端が固定的な電位を供給する配線に接続されると、ホット電極12とコールド電極13との間は抵抗とみなせるため、その抵抗に電流が流れ、キャパシタ199に電荷が蓄積され、電位Vb-電位Vaは平衡値Vcに近づいていく。そこで、電位Vb-電位Vaが判定閾値Vthを超えかつ判定閾値Vth2を超えない場合に、電極状態検出回路197はその旨を示す信号を出力し、制御部190はその信号に基づいて、時計システムが装着されていないと判定する。ここで判定閾値Vthは平衡値Vcより小さくVaの値より大きく、判定閾値Vth2は平衡値Vcより大きく充電時に到達する値よりも小さい。なお、電極状態検出回路197の参照電位Vrefとして、判定閾値Vth,Vth2と電位Vaとに応じて予め決定された電位が供給されるものとする。また例えば送信部194がパルスとして出力する電位の半分が平衡値Vcになるようにキャパシタ199の静電容量が調整されてよい。
図40は、装着された際の電位Vb‐電位Vaの変動を示す図である。図40の例では、期間Δt1では時計システムは非装着の状態であり、期間Δt2の開始時に時計システムが手首61に装着されたものとする。この場合、期間Δt2ではホット電極12が手首61に接触するため、ホット電極12とコールド電極13との間の抵抗値が下がり電位Vbが低下する。そこで、電位Vb-電位Vaが参照閾値Vthを超えない場合に、電極状態検出回路197はその旨を示す信号を出力し、制御部190はその信号に基づいて、時計システムが装着されたと判定する。
図41は、充電の際の電位Vb‐電位Vaの変動を示す図である。図41の例では、期間Δt1では時計システムは非装着の状態であり、期間Δt3の開始時にヘッド1のホット電極12、コールド電極13に電力が供給されたものとする。この場合、期間Δt3ではホット電極12に充電用の電位が供給されるため、電位Vb-電位Vaは充電の際にホット電極12に印加される電位に応じて高くなる。そこで、電位Vb-電位Vaが判定閾値Vth2を超える場合に、電極状態検出回路197はその旨を示す信号を出力し、制御部190はその信号に基づいて、ヘッド1が充電可能であると判定する。
このように、ホット電極12の電位に基づいて、装着されているか否かと、充電可能な否かについて検出することが可能になる。なお、バックル2においても、同様の処理が行われてよい。
図42は、充電器8の一例を説明する図である。図42には、充電器8単体の状態(i)と、充電器8をヘッド1およびバックル2に取り付ける直前の状態(ii)と、充電器8がヘッド1およびバックル2に取り付けられた状態(iii)とが記載されている。充電器8は、電極台81と、充電電極82~85と、アーム861,862と、バネ87と、回転軸88と給電線89とを含む。
図43は、電極台81における充電電極82~85の配置を示す図である。充電電極82,83は、電極台81の第1の面に、ヘッド1のホット電極12およびコールド電極13に接触可能なように配置されている。充電電極84,85は、電極台81の第1の面に対向する第2の面、バックル2のホット電極22およびコールド電極23に接触可能なように配置されている。
給電線89は電力を供給するACアダプタに接続され、給電線89から供給される電力により、充電電極82~85からヘッド1およびバックル2に電力が供給される。電極台81は、アーム861,862の間にあり、アーム861,862は、回転軸88を中心として可動することにより電極台81との間の間隔を開け、閉じることが可能である。
アーム861,862に力がかかっていない場合には、状態(i)のようにアーム861,862を閉じるようにバネ87が配置されている。指などにより力がかかりアーム861,862が開くと、状態(ii)に示されるようにヘッド1とバックル2の間に電極台81を滑り込ませることができる。その後アーム861,862を閉じると、状態(iii)に示されるようにアーム861と電極台81との間にヘッド1を挟み、アーム862と電極台81との間にバックル2を挟むことが可能になる。
図44は、充電器8に接続された時計システムの一例を示す断面図である。充電器8によりヘッド1とバックル2が挟まれている際に、ヘッド1とバックル2との間に充電電極82から85が配置される。この場合、ホット電極12と充電電極82、コールド電極13と充電電極83、ホット電極22と充電電極84、コールド電極23と充電電極85とが接触するように、充電電極82~85の位置が調整されている。
このように、充電器8の形状を工夫することにより、充電端子を増加させることなくヘッド1およびバックル2の両方を充電することが可能になる。
なお、本発明の各実施形態で示した構成図、回路図等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更することができる。これまでの説明では、無線通信部28は、バックル2の代わりにヘッド1に配置されてもよいし、ヘッド1およびバックル2の機能のそれぞれが適宜入れ替わってもよい。