JP7496980B2 - 脂肪含有率等の計測装置及び方法 - Google Patents

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Description

本発明は、脂肪と赤身とが混在する試料の脂肪と赤身の混合の程度を計測する技術に関する。
本願では、脂肪は、脂肪組織を意味し、主成分は中性脂肪、すなわちトリグリセリドである。また、赤身は、筋肉を意味し、以下で議論しているように牛肉やマグロなどでは、ミオグロビンが多いと赤く見える。筋肉は、約70%の水分と約30%のタンパク質とを含む。
片側開放型の核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)センサを用いたプロトン核磁気共鳴法(例えば特許文献1乃至4、非特許文献1を参照のこと)は、非破壊、非侵襲且つ原位置で、計測対象物の内部の水、油、ゴム、ゲルなどの物理化学的状態を計測する手法であり、地下深部の油田の検層(例えば非特許文献1)、生きた牛の脂肪混合度合いの計測(例えば非特許文献2)、マグロの大トロの脂肪含有率計測(例えば非特許文献3)などに応用可能である。例えば、牛肉やマグロなどの食品の脂肪含有量は、食味ひいては価格に直結する重要な特性なので、原位置で非破壊且つ非侵襲で計測を可能とする当該手法は、有望な計測技術といえる。
このプロトン核磁気共鳴法における計測原理はおおよそ次のとおりである。まず、片側開放型の核磁気共鳴センサ(磁気回路及び高周波コイルを含む)の感度領域に入るように、計測対象物を核磁気共鳴センサに近づける。なお、磁気回路のデザインや大きさによるが、感度領域は計測対象物の表面から数mm~数cm深部に設定される。高周波コイルに対して所定のパルスシーケンスの高周波パルスを出力し、それが形成する磁界波によって、感度領域に存在する水や油などのプロトンを励起し、そのあと起きるプロトンの横緩和過程を、過渡的な波形f(t)(tは時間を表す)として高周波コイルで検出する。
脂肪の炭化水素中のプロトンと水(赤身、すなわち筋肉中の水)のプロトンとは、しばしば互いに異なる横緩和時間を有するので、パルスシーケンス中のパルスの繰り返し間隔TRが、脂肪と赤身中の水の両方のプロトン縦緩和時間より5倍以上長い場合は(例えば非特許文献7)、プロトン横緩和波形データf(t)を、以下のような関数で最小自乗法等によりフィッティングさせることができる。
f(t)=Afat*exp(-t/T2fat)+Alean*exp(-t/T2lean) (1)
ここで、Afatは、最小自乗法等で決められるべき未知の定数であって、NMRセンサの感度領域中の脂肪量に比例して増加するものである。また、T2fatは、脂肪の横緩和時間(以下、T2値と呼ぶ)を表し、Aleanは、最小自乗法等で決められるべき未知の定数であって、NMRセンサの感度領域中の赤身量に比例して増加するものである。さらに、T2leanは赤身のT2値を表す。T2fatとT2leanは、それぞれ、赤身のない純粋な脂肪サンプル、脂肪のない純粋な赤身サンプルを、予め計測することで得られる。また、脂肪含有量及び赤身含有量が既知であるサンプル群で、係数Afat及びAleanを予め実験的に計測しておけば、Afat及びAleanをそれぞれ脂肪含有量と赤身含有量に換算できる検量線を得ることができる。この検量線を用いて、未知試料について実験的に得たAfat及びAleanから、NMRセンサの感度領域内における脂肪混合の程度(すなわち感度領域中の脂肪と赤身の混合比)を推定できる(例えば非特許文献2及び3)。
しかしながら、式(1)に基づき脂肪と赤身の混合の程度を検出できるというのは、T2fat及びT2leanが互いに異なる値であることが前提となっており、この前提が崩れる場合が見出された。
日本特許第5196480号 日本特許第5294230号 日本特許第5170617号 米国特許第6489872号
Casanova, Federico, Juan Perlo, and Bernhard Bluemich (編集). (2011). "Single-sided NMR." Springer, Berlin, Heidelberg. Nakashima, Yoshito. (2015). "Development of a single-sided nuclear magnetic resonance scanner for the in vivo quantification of live cattle marbling." Applied Magnetic Resonance 46, 593-606. Nakashima, Y. (2019) "Non-Destructive Quantification of Lipid and Water in Fresh Tuna Meat by a Single-Sided Nuclear Magnetic Resonance Scanner" Journal of Aquatic Food Product Technology 28, 241-252. Veliyulin, E., van der Zwaag, C., Burk, W., & Erikson, U. (2005) "In vivo determination of fat content in Atlantic salmon (Salmo salar) with a mobile NMR spectrometer" Journal of the Science of Food and Agriculture, 85, 1299-1304. 中島善人(2002)"パルス磁場勾配NMRを用いた水の自己拡散係数の計測:原理と粘土ゲルへの応用例" 粘土科学, 42, 37-50. ウィリアム ケンプ (1988) やさしい最新のNMR入門. 培風館 藤森宏高, 井奥洪二, 後藤誠史, 山田哲夫. (2001) 固体 NMR によるイミド熱分解法により合成した窒化ケイ素粉末の結晶化過程の観察. Journal of the Ceramic Society of Japan (日本セラミックス協会学術論文誌), 109(1266), 132-136.
従って、本発明の目的は、一側面として、温度によらず、脂肪と赤身とが混在する試料の脂肪と赤身の混合の程度を計測できるようにするための技術を提供することである。
本発明に係る計測システムは、(A)磁気回路と高周波コイルとを含む核磁気共鳴センサと、(B)脂肪と筋肉とが混在する試料における筋肉の、プロトン横緩和波形データに対する影響を除去又は抑制するように設定されたパルスパラメータによって特定されるパルスシーケンスの高周波パルスを高周波コイルに出力して、高周波コイルから試料のプロトン横緩和波形データを計測し、当該プロトン横緩和波形データに対する回帰分析により所定関数の係数を算出し、当該計算された係数と予め用意された検量線とに基づき試料の少なくとも脂肪含有率を算出する計測部とを有する。
一側面によれば、温度によらず、脂肪と赤身とが混在する試料の脂肪と赤身の混合の程度を計測できるようになる。
図1は、マグロサンプルの脂肪サンプルについて計測されたT1値及びT2値、並びに赤身サンプルについて計測されたT1値及びT2値の温度変化を説明するための図である。 図2は、マグロの脂肪サンプルについてNMR信号の時間変化を温度毎に示した図である。 図3は、マグロの赤身サンプルについてNMR信号の時間変化を温度毎に示した図である。 図4は、牛肉サンプルの脂肪サンプルについて計測されたT1値及びT2値、並びに赤身サンプルについて計測されたT1値及びT2値の温度変化を説明するための図である。 図5は、牛肉の脂肪サンプルについてNMR信号の時間変化を温度毎に示した図である。 図6は、牛肉の赤身サンプルについてNMR信号の時間変化を温度毎に示した図である。 図7は、実施の形態に係る計測システムの概要を示す図である。 図8(a)は、飽和回復法におけるパルスシーケンス例、(b)は、反復回復法におけるパルスシーケンス例を示す図である。 図9は、第1の実施の形態に係る計測処理の処理フローを示す図である。 図10は、第2の実施の形態に係る計測処理の処理フローを示す図である。 図11は、第3の実施の形態に係る計測処理の処理フローを示す図である。 図12は、第4の実施の形態に係る計測処理の処理フローを示す図である。 図13は、コンピュータ装置のブロック構成図である。
[本発明の実施の形態の前提となる実験結果]
マグロサンプルは、生のクロマグロ(国内の養殖モノ)から切り出した皮下脂肪と赤身の2つである。ソックスレー抽出法という通常の食品分析結果によると、その脂肪サンプルと赤身サンプルの脂肪含有量はそれぞれ83wt%、6wt%であった。残りのwt%値は赤身の重量分率なので、前者は赤身のないほぼ純粋な脂肪サンプル、後者は脂肪のないほぼ純粋な赤身サンプルと近似してよい。マグロ計測時においては、この2サンプルを計測することで、式(1)のT2fat及びT2leanをそれぞれ決定できる(例えば非特許文献2及び3を参照のこと)。
一方、牛肉サンプルは、国内産の黒毛和牛から切り出した皮下脂肪と、豪州産の赤身(ランプ肉)の2つである。ソックスレー抽出法によると、その脂肪サンプルと赤身サンプルの脂肪含有量はそれぞれ92wt%、5wt%であった。残りのwt%値は赤身の重量分率なので、前者は赤身のないほぼ純粋な脂肪サンプル、後者は脂肪のないほぼ純粋な赤身サンプルと近似してよい。牛肉計測時においては、この2サンプルを計測することで、式(1)のT2fat及びT2leanをそれぞれ決定できる(例えば非特許文献2及び3を参照のこと)。
計測に使用したNMR装置は、プロトンのラーモア周波数が20MHzで、装填できる試料管の直径は10mmタイプである(装置詳細は、例えば非特許文献5を参照のこと)。脂肪と赤身のプロトンの横緩和時間T2を計測するために使用したパルスシーケンスは、CPMG(Carr-Purcell-Meiboom-Gill)法(飽和回復法とも呼ぶ)である。一方、脂肪と赤身のプロトンの縦緩和時間T1を計測するために使用したパルスシーケンスは、反転回復 (Inversion recovery) 法である(例えば非特許文献6を参照のこと)。信号積算回数はいずれのシーケンスも8回、積算間隔(シーケンスの繰り返し間隔TR)は4秒である。サンプル温度は、マグロについては9.3℃~34.0℃までの5種類、牛肉については8.7℃~39.8℃までの6種類を実施した。
マグロサンプルに関する結果を図1乃至3に、牛肉サンプルに関する結果を図4乃至6に示す。図1と図4は、脂肪サンプルと赤身サンプルのT1及びT2値をアレニウスプロット(サンプル絶対温度の逆数に対する、緩和時間の片対数プロット)したものである。上述のようなサンプルの純粋性により、グラフ中で、脂肪サンプルのT2値は式(1)のT2fat値であり、赤身サンプルのT2値は式(1)のT2lean値である。
CPMG法によって得られた波形f(t)を、図2及び3(マグロサンプル)、並びに図5及び6(牛肉サンプル)に示す。一般に、核スピンのボルツマン分布のため、図2及び3、図5及び6の縦軸、すなわちNMR信号の強度f(t)は、サンプルの絶対温度の逆数に反比例するので、その補正(例えば非特許文献6を参照のこと)を行った上で、サンプル温度の異なる波形データの強度を定量的に比較できるようにしてある。
より、マグロサンプルについては、サンプル温度Tが30℃程度であれば、T2fatはT2leanの約3倍も異なるので(図中に両矢印で示す)、非特許文献3にあるように、式(1)を用いて脂肪と赤身の混合率を定量できる。しかし、サンプル温度が3℃まで低下すると、図の図中に両矢印で示したように、T2fatはT2leanとほぼ一致してしまい、その結果、式(1)を用いて脂肪と赤身の混合率を定量することは困難になる。
図4より、牛肉サンプルについては、サンプル温度Tが40℃程度であれば、T2fatはT2leanの約3倍も異なるので(図中に両矢印で示す)、非特許文献2にあるように、式(1)を用いて脂肪と赤身の混合率を定量できる。しかし、サンプル温度が約13℃まで低下すると、T2fatはT2leanとほぼ一致してしまい、その結果、式(1)を用いて脂肪と赤身の混合率を定量することが困難になる。13℃を超えてさらにサンプル温度が低下すると、赤身と脂肪のT2値の長短関係が逆転し、幸いにも両者の乖離は拡大し、たとえば3℃になると図4の図中に両矢印で示したように、T2leanはT2fatの約1.5倍になる。しかしながら1.5倍の差は、上で述べた3倍の差より小さいので、3℃では40℃に比べると式(1)を用いて脂肪と赤身の混合率を定量することが困難になる。
一般論として、サンプルが低温になると、水や脂肪分子の熱運動が低下してしまい、片側開放型NMRでは信号が読み取れなくなり、式(1)のAfatやAleanがほぼゼロになってしまい、結果として脂肪や赤身の混合率を定量することが困難になるリスク、すなわち過小評価するリスクがある。しかし、図2及び3と図5及び6によれば、マグロ及び牛肉について、脂肪サンプルも赤身サンプルも、ゼロ時刻に外挿した信号強度は温度に依存せずほぼ同一である。従って、今回調べた温度範囲では、サンプルの低温化によるNMR信号の消失(すなわち脂肪や赤身の量の過小評価)のリスクはないと言える。
海水温が高い低緯度の外洋上やイケスでマグロを釣り上げた場合、魚肉温度は30℃程度である。また、生きている牛の体温は約40℃である。これら比較的肉が高温環境の場合は、上述のとおり、T2fatはT2leanの約3倍も異なるので、非特許文献2及び3にあるように、式(1)を用いて脂肪と赤身の混合率を定量できる。すなわち、釣り上げた直後にマグロの魚体を、あるいは生きている間又はと畜直後に牛を、それぞれNMRスキャンをすれば、脂肪と赤身のT2値の違いを利用して正確に脂肪含有量を定量できるであろう。
しかし、マグロを冷蔵庫に長期保管して魚肉温度がチルド温度程度(たとえば図3の3℃付近)まで低下すると、上述のようにT2fatはT2leanとほぼ一致してしまう。牛肉についても、サンプル温度が約13℃まで低下するとT2fatはT2leanとほぼ一致してしまう。13℃を超えてさらにサンプル温度が低下するとT2fatはT2leanとの差はふたたび開き始めるが、それでもたとえば3℃では図4に点線で示したように、T2leanはT2fatの約1.5倍程度しか差異がない。このように、低温環境ではマグロ肉も牛肉も、高温環境に比べてT2fatはT2leanと差異が確保できていないので、式(1)を用いての脂肪と赤身の混合率を定量することが困難になる。
そこで、下に述べる手法を用いて、温度によらず(但し、低温が好適)、赤身と脂肪とが混在する未知試料について、脂肪と赤身の混合率を定量できるようにする。
[実施の形態1]
飽和回復法において縦緩和時間の影響を発現させることで、脂肪と赤身との混合率を定量できるようにする実施の形態である。
まず、各実施の形態において前提となる計測システムの構成及び高周波コイルに出力される高周波パルスのパルスシーケンスなどについて説明しておく。
図7に計測システムの構成例を示す。本発明の実施の形態に係る計測システムは、磁気回路及び高周波コイルを有するNMRセンサ200と、NMRセンサ200に対する制御及びNMRセンサ200の計測結果に対する情報処理を行う計測装置100とを有する。
NMRセンサ200は、例えば非特許文献2等に記載されている片側開放型のNMRセンサである。片側開放型のNMRセンサであるので、図1に模式的に示すように、試料300をNMRセンサ200上に載せたり、試料300にNMRセンサ200を当てたりすることで計測することができ、試料300中のNMRセンサ200寄りに感度領域がある。但し、本発明の実施の形態では、片側開放型でないNMRセンサ200を用いるようにしてもよい。
計測装置100は、当該NMRセンサ200の高周波コイルに対して所定のパルスシーケンスを出力するように制御を行い、高周波コイルからのNMR信号(より具体的には横緩和波形データ)を計測し、以下で述べる処理を行うようになっている。
図8に、高周波コイルに出力されるパルスシーケンスの具体例を示す。図8(a)は、飽和回復法におけるパルスシーケンスを示し、図8(b)は、反復回復法におけるパルスシーケンスを示し、縦軸は信号強度を表し、横軸は時間を表している。
図8(a)に示すように、1つの90°パルスの後に複数の180°パルスがパルス間隔tEで順次出力されるようになっており、その後繰り返し間隔TRおいて同様のパルスシーケンスが繰り返されるようになっている。なお、180°パルス間でNMR信号(点線)のサンプリング(黒丸)が行われ、サンプリングの間隔もパルス間隔tEとなる。パルス間隔tE及び繰り返し間隔TRは、パルスパラメータの一部である。また、NMR信号は微弱なので、各パルスシーケンス内において同じタイミングでサンプリングされた値は、所定回数だけ累積されて、後続の処理で用いられる。
図8(b)に示すように、最初に180°パルスが出力され、その後待機時間τおいて90°パルスが出力され、さらに複数の180°パルスがパルス間隔tEで順次出力されるようになっており、その後繰り返し間隔TRおいて同様のパルスシーケンスが繰り返されるようになっている。180°パルス間でNMR信号(点線)のサンプリング(黒丸)が行われ、サンプリングの間隔もパルス間隔tEとなる。待機時間τ、パルス間隔tE及び繰り返し間隔TRは、パルスパラメータの一部である。また、NMR信号は微弱なので、パルスシーケンス内において同じタイミングでサンプリングされた値は、所定回数だけ累積されて、後続の処理で用いられる。
本実施の形態では、図(a)で示した飽和回復法のパルスシーケンスを用いた場合を説明する。
上で述べた実験では、繰り返し間隔TRは4秒であり、これは、脂肪と赤身中の水の両方のT1値より5倍以上長い。このような場合は、式(1)ではT2の違いしか発現していない(非特許文献7)。しかし、繰り返し間隔TRを短くすると、T1値の違いも信号強度f(t)に反映させることができるので、これを利用することで、脂肪と赤身の信号に差異を追加できる。繰り返し間隔TRを短くする場合には、式(1)の右辺には、飽和回復法特有の補正係数がかかるので、式(1)の定数Afat及びAleanをA'fat及びA'leanで置換した式(2)になる。
f(t)=A'fat*exp(-t/T2fat)+A'lean*exp(-t/T2lean) (2)
A'fat=Afat*(1-exp(-TR/T1fat))
A'lean=Alean*(1-exp(-TR/T1lean))
T1fatは、脂肪のT1値であり、T1leanは赤身のT1値である。
図1及び4に示すように、マグロ肉も牛肉も低温ではT1leanはT1fatの約3倍長い。よって式(2)によれば、TRを短くする効果は、脂肪ではなく赤身の信号低下として顕著に表れる。すなわち、脂肪の信号を相対的に強調し、赤身の信号を相対的に弱める計測手法である。
具体的なTRの範囲であるが、非特許文献2によると、片側開放型NMRではノイズ混入のため赤身の定量誤差が10%程度になるので、核磁化の縦緩和強度である1-exp(-TR/T1lean)が100-10=90%以上に回復してしまうとノイズに埋もれてしまって実質的な赤身信号の減弱効果は期待できない。よってTR値は、式(3)を満たすべきである。
1-exp(-TR/T1lean) <0.9 (3)
この式を変形すると、TRの上限を規定する不等式として、TR<2.30*T1leanとなる。
次に、本実施の形態に従った計測方法を、図9を用いて具体的に説明する。
まず、ユーザは、縦緩和時間T1の影響を顕在化させる繰り返し間隔TRを、計測装置100に設定する(ステップS1)。この際、式(3)の制約があるので、必要があれば被計測物(未知試料)の温度でT1leanを計測しておき、式(3)の制約条件を満たすように繰り返し間隔TRを設定する。以下、設定された繰り返し間隔TRのパルスシーケンスを用いる。
また、ユーザは、赤身のない純粋な脂肪サンプルについて計測システムを用いて被計測物の温度でT2fatを計測し、脂肪のない純粋な赤身サンプルついて計測システムを用いて被計測物の温度でT2leanを計測する(ステップS3)。
さらに、ユーザは、被計測物の温度で脂肪含有率が既知のサンプル群について計測システムで計測を行うことで、脂肪についての係数A'fatについての検量線を生成し、計測装置100の記憶装置に格納する(ステップS5)。なお、ここで赤身含有率が既知のサンプル群についての計測を行うことで、赤身についての係数A'leanについての検量線をも生成しても良いが、式(2)では、繰り返し間隔TRを短くすることでできるだけA'leanの値を小さくし相対的に脂肪の信号を強調する。これにより、脂肪定量の信頼度は向上させることができるが、代償としてA'lean値には強いノイズが入り赤身定量の信頼性が低下するリスクがある。従って、本実施の形態ではA'leanについての検量線は生成しないようにする。
このステップまでは事前準備であるから、既に得られている値についてはそのまま用いるようにしてもよい。
そして、計測装置100は、設定された繰り返し間隔TR等のパルスパラメータで特定される高周波パルスを高周波コイルに対して発生させて、当該高周波コイルから未知試料についてプロトン横緩和波形データf(t)を計測する(ステップS7)。
次に、計測装置100は、計測されたプロトン横緩和波形データf(t)に対して最小自乗法などの回帰分析を行って、式(2)の係数A'fatを算出する(ステップS9)。
そして、計測装置100は、検量線から、係数A'fatに対応する脂肪含有率及び赤身含有率を算出し、表示装置などの出力装置に出力する(ステップS11)。上で述べたノイズの問題から、ここでは、赤身含有率は、100wt%-脂肪含有率(wt%)にて算出する。
このように縦緩和時間T1の影響を発現させて相対的に赤身成分の影響を抑制させることで、脂肪含有率を精度良く算出することができるようになる。
[実施の形態2]
反復回復法において縦緩和時間の影響を発現させることで、脂肪と赤身との混合率を定量できるようにする実施の形態である。但し、「繰り返し間隔TRが脂肪と赤身中の水の両方のT1値より5倍以上長い場合」という条件を満たした場合である。
繰り返し間隔TRが脂肪と赤身中の水の両方のT1値より5倍以上長い場合(非特許文献7)、反転回復法のパルスシーケンスであれば、式(2)の代わりに式(4)を使う(例えば、非特許文献1及び7を参照のこと)。
f(t)=A"fat*exp(-t/T2fat)*+A"lean*exp(-t/T2lean) (4)
A"fat=Afat*(1-2exp(-τ/T1fat))
A"lean=Alean*(1-2exp(-τ/T1lean))
式(4)では、τとT1fat及びT1leanとの大小関係がf(t)の強弱に影響を及ぼしている。飽和回復法に対する反転回復法の利点であるが、脂肪のNMR信号に干渉してくる邪魔なA"leanをかぎりなくゼロに抑えることができる。すなわち、赤身のプロトンの核磁化回復途上(縦緩和過程の途中)において核磁化がゼロ点を通過する瞬間をねらって、図8(b)で示した90°パルスを正確に打ち込めば、赤身由来の信号A"leanは理論上ゼロになる。
具体的には、τ=ln2*T1lean=0.693*T1leanと設定すれば、式(4)の赤身由来の信号A"leanはゼロになるので、この待機時間τで計測を行えば、脂肪由来の信号のみ計測できる。このベストな値からτ値を若干はずすと、A"leanはゼロにはならないが、小さい値に抑えることができる。このようなゼロあるいは小さいA"lean を生じるようなτ値を採用すれば、赤身由来の信号を抑制できるので高い精度で脂肪含有率を得ることができる。
また、待機時間τが0.693*T1leanから若干外れるとA"leanはゼロにならないが、飽和回復法のときと類似の考察から、以下のような待機時間τの範囲が得られる。すなわち、非特許文献2によると、片側開放型NMRではノイズ混入のため赤身の定量誤差が10%程度になるので、核磁化の縦緩和強度である1-2exp(-τ/T1lean)が100-10=90%以上に回復してしまうとノイズに埋もれてしまって実質的な赤身信号の減弱効果は期待できない。よって、式(4)を実施する場合のτ値は、式(5)を満たすべきである。
1-2exp(-τ/T1lean)<0.9 (5)
この式を変形すると、τ<3.00*T1leanとなる。
次に、本実施の形態に従った計測方法を、図10を用いて具体的に説明する。
まず、ユーザは、赤身の影響を除去又は低減させる待機時間τを計測装置100に設定する(ステップS21)。この際、式(5)の制約があるので、必要があれば被計測物の温度でT1leanを計測しておき、式(5)の制約条件を満たすように待機時間τを設定する。以下、設定された待機時間τのパルスシーケンスを用いる。なお、待機時間τのベスト値である0.693*T1leanが好ましい。
また、ユーザは、赤身のない純粋な脂肪サンプルについて計測システムを用いて被計測物(未知試料)の温度でT2fatを計測し、脂肪のない純粋な赤身サンプルついて計測システムを用いて被計測物の温度でT2leanを計測する(ステップS23)。
さらに、ユーザは、被計測物の温度で脂肪含有率が既知のサンプル群について計測システムで計測を行うことで、脂肪についての係数A"fatについての検量線を生成し、計測装置100の記憶装置に格納する(ステップS25)。なお、ここで赤身含有率が既知のサンプル群についての計測を行うことで、赤身についての係数A"leanについての検量線をも生成しても良いが、式(4)では、τを短くすることでできるだけA"leanの値を小さくし相対的に脂肪の信号を強調する。これにより、脂肪定量の信頼度は向上させることができるが、代償としてA"lean値には強いノイズが入り赤身定量の信頼性が低下するリスクがある。従って、本実施の形態ではA"leanについての検量線は生成しないようにする。
このステップまでは事前準備であるから、既に得られている値についてはそのまま用いるようにしてもよい。
そして、計測装置100は、設定された待機時間τ等のパルスパラメータで特定される高周波パルスを高周波コイルに対して発生させて、当該高周波コイルから未知試料についてプロトン横緩和波形データf(t)を計測する(ステップS27)。
次に、計測装置100は、計測されたプロトン横緩和波形データf(t)に対して最小自乗法などの回帰分析を行って、式(4)の係数A"fatを算出する(ステップS29)。
そして、計測装置100は、検量線から、係数A"fatに対応する脂肪含有率及び赤身含有率を算出し、表示装置などの出力装置に出力する(ステップS31)。上で述べたノイズの問題から、ここでは、赤身含有率は、100wt%-脂肪含有率(wt%)にて算出する。
このように縦緩和時間T1の影響を発現させて相対的に赤身成分の影響を抑制する又は赤身成分の影響を除去させることで、脂肪含有率を精度良く算出することができるようになる。
[実施の形態3]
第2の実施の形態では、「繰り返し間隔TRが脂肪と赤身中の水の両方のT1値より5倍以上長い場合」という条件を満たした場合を示したが、この条件を満たさない、すなわち、「繰り返し間隔TRが脂肪と赤身中の水の両方のT1値の5倍より短い場合」という条件に合致する場合について、本実施の形態で述べる。
この場合には、式(4)のA"leanのτ依存性、すなわち1-2exp(-τ/T1lean)という関係が破綻するので、A"leanをゼロにするという意味でのτのベスト値は0.693*T1leanではなくなる。しかし、τを様々に変更した赤身試料計測の予備実験をすることで、核磁化がゼロ点を通過できるτ、すなわちA"leanがゼロになるτが判明するので、そのτの値を採用すれば、赤身の信号をゼロに抑制できる。なお、A"leanがゼロでなくても、十分にゼロに近い値であればA"leanを無視できるので、そのような値を実験的に見つけるようにしてもよい。なお、第2の実施の形態と同様に、90%回復の待機時間τが、τの上限値とも言える。
次に、本実施の形態に従った計測方法を、図11を用いて具体的に説明する。
まず、ユーザは、赤身の影響を低減させる待機時間τを、計測システムを用いて実験により決定し、当該待機時間τを計測装置100に設定する(ステップS21b)。A"leanがゼロになる待機時間τを実験的に見つけるが、上でも述べたように、完全にA"leanがゼロとなる待機時間τではなく、ゼロとみなすことができる程度に小さくなった場合における待機時間τを採用するようにしてもよい。
この後の処理(ステップS23乃至S31)については第2の実施の形態と同様であるから、説明を省略する。
このように、繰り返し間隔TRが脂肪と赤身中の水の両方のT1値の5倍より短い場合であっても、赤身の影響を低減又は除去する待機時間τを実験的に見つけ出せれば、脂肪含有率を精度良く算出することができるようになる。
[実施の形態4]
本実施の形態は、分子の自己拡散係数Dに着目した手法である。
静磁場勾配(その値をGとする)がある感度領域内を水や脂肪の分子が熱運動、すなわちランダムウォークで移動すると、その効果によってT2緩和が促進される。その結果、試料のT2値は本来の値(すなわち図1や図4の値)より小さい値T2diffで観測される。
T2diff=12/[(γ*G*tE)2*D] (6)
但し、γはプロトンの磁気回転比(物理定数)、tEは上で述べたサンプリング間隔又は180°パルスの間隔である。赤身中の水分子の自己拡散係数Dは、脂肪組織中の脂肪分子のDより約2桁も高いので(非特許文献2)、同じG及びtE値でも、赤身の水分子の方が脂肪分子よりも式(6)による緩和の促進を強くうけ、実験的に得られる赤身のT2値は脂肪のT2値よりかなり短くなる(非特許文献4)。すなわち、この緩和促進の影響を顕著に受けるのは脂肪ではなく赤身である。
このように、傾斜磁場中の分子の拡散運動を利用したプロトン横緩和促進メカニズムを発現させれば、脂肪と赤身のT2の差異を強調できる。非特許文献2によると、赤身のT2diffが脂肪のT2fatの1/2.3以下まで短くなると、赤身と脂肪の識別が可能になる。したがって、式(7)の不等式を満たすくらいtEを長くすれば、赤身のT2diffが脂肪のT2fatとの差が顕著になるので、すなわち2.3倍以上に開くので、結果としてプロトン横緩和時間の違いで、赤身と脂肪の定量化が可能になる。
T2diff<T2fat/2.3 (7)
なお、式(7)は、以下のように書き下される。
Figure 0007496980000001
式(7)の条件が満たされる状況においては、式(1)のT2leanをT2diffに置換した式が採用される。
f(t)=Afat*exp(-t/T2fat)+Alean*exp(-t/T2diff) (8)
次に、本実施の形態に従った計測方法を、図12を用いて具体的に説明する。
まず、ユーザは、赤身の影響を抑制し脂肪の影響を強調する高周波パルス間隔tEを、計測装置100に設定する(ステップS41)。なお、式(7)で示すように、高周波パルス間隔tEには、T2fatに応じた制約があるので、T2fatが未知の状態では適切ではないtEが設定される場合もある。
従って、仮に高周波パルス間隔tEを設定して、ユーザは、当該高周波パルス間隔tEに基づき、赤身のない純粋な脂肪サンプルについて計測システムを用いて被計測物の温度でT2fatを計測し、脂肪のない純粋な赤身サンプルついて計測システムを用いて被計測物の温度でT2leanを計測する(ステップS43)。
ここで、高周波パルス間隔tEが、ステップS43で得られたT2fatから得られる下限値以上となっているかを確認し(ステップS45)、この制約条件が満たされていない場合には、ステップS41に戻って、再度高周波パルス間隔tEを設定する。一方、高周波パルス間隔tEがT2fatから得られる下限値以上となっていれば、当該高周波パルス間隔tEをそのまま以下の計測で採用する。
そして、ユーザは、被計測物の温度で脂肪含有率が既知のサンプル群について計測システムで計測を行うことで、脂肪についての係数Afatについての検量線を生成し、同様に被計測物の温度で赤身含有率が既知のサンプル群について計測システムで計測を行うことで、赤身についての係数Aleanについての検量線を生成し、計測装置100の記憶装置に格納する(ステップS47)。
このステップまでは事前準備であるから、既に得られている値についてはそのまま用いるようにしてもよい。
そして、計測装置100は、設定された高周波パルス幅tE等のパルスパラメータで特定される高周波パルスを高周波コイルに対して発生させて、当該高周波コイルから未知試料についてプロトン横緩和波形データf(t)を計測する(ステップS49)。
次に、計測装置100は、計測されたプロトン横緩和波形データf(t)に対して最小自乗法などの回帰分析を行って、式(8)の係数Afat及びAleanを算出する(ステップS551)。
そして、計測装置100は、検量線から、係数Afatに対応する脂肪含有率及び係数Aleanに対応する赤身含有率を算出し、表示装置などの出力装置に出力する(ステップS53)。
このように高周波パルス幅tEを延ばすことで赤身の影響を相対的に抑制させることで、脂肪含有率及び赤身含有率を精度良く算出することができるようになる。
なお、式(6)によると、傾斜磁場中の分子の拡散運動を利用したプロトン横緩和促進メカニズムを発現させるためには、G又はtEの値を大きくすることになる。このうちGを大きくする手法は、以下の理由で望ましくない。すなわち、静磁場の不均一性指標としてのGが高いと、NMRセンサ200の感度領域の体積が桁違いに小さくなってしまうからである。例えばGを大きくする手法を採用した磁石の感度領域は、非特許文献4では0.5cm×0.5cm×0.25cm=0.063cm3しかない。これに対して、Gを桁違いに小さくして設計した磁石であれば(非特許文献2)、感度領域は1.9cm×1.9cm×1.6cm=5.8cm3もある。これは、前者の92倍も大きい。感度領域体積が小さいと脂肪のプロトン信号(図1及び5のゼロ時刻に外挿した信号強度)も比例して弱くなり、ランダムノイズが相対的に増えるので、結果として長時間NMR信号を積算することになって、計測時間が長くなってしまう。例えば、上記のように体積が92倍異なると、プロトン共鳴周波数など他の条件同じとすると、同一レベルの信号ノイズ比のCPMG波形を取得するのに922=8500倍もの長時間の信号積算時間を要することになる。これは、一般に信号・ノイズ比は、N回積算するとNの平方根倍だけ改善するためである。このように、磁石のつくる静磁場勾配Gを大きくしてしまうと、感度領域が狭まり、結果として脂肪の信号が弱まる欠点がある。従って、Dの差異を利用する手法としてはtEを大きくして、NMR計測することが推奨される。すなわち、特許文献1乃至3のように、磁気回路の構造を工夫してできるだけ静磁場勾配Gを低下させることで感度領域の体積を大きくすることが好ましい。
[他の実施の形態]
第4の実施の形態は、第1乃至第3の実施の形態のいずれかと組み合わせることができる。
すなわち、式(2)及び(4)は、T2leanをT2diffに置換した、以下の式を採用することになる。
f(t)=A'fat*exp(-t/T2fat)+A'lean*exp(-t/T2diff) (9)
f(t)=A"fat*exp(-t/T2fat)+A"lean*exp(-t/T2diff) (10)
この場合、第4の実施の形態におけるAfatを、A'fat又はA"fatに置き換えて、第4の実施の形態におけるAleanを、A'lean又はA"leanに置き換えて、図12の処理を行えば良いが、A'lean及びA"leanは信頼性が低くなるので、A'fat及びA"fatから脂肪含有率を算出して、100wt%-脂肪含有率で赤身含有率を算出する方が良い。
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上で示した処理フローについては、処理結果が変わらない限り、処理順番を入れ替えたり、並列実行するようにしてもよい。上でも述べたように、ある程度データの蓄積があれば、そのデータを用いて計測を行うことができるので、事前準備の処理については省略することができる。
さらに、上ではマグロ肉及び牛肉を例示していたが、赤身と脂肪とが混在している他の肉などについても適用可能である。冒頭でも述べたように、ミオグロビンが少ない白身の魚(例えばひらめ)であっても、脂肪と筋肉とが混在しているので、適用可能である。さらに、マグロ肉及び牛肉については、比較的低温において効果があることが述べられているが、本発明の実施の形態は、温度によって効果が減ぜられることはないので、様々な温度の被計測物に対して適用可能である。
なお、上で述べた計測装置100は、コンピュータ装置を含み、このコンピュータ装置は図13に示すように、メモリ2501とCPU(Central Processing Unit)2503とハードディスク・ドライブ(HDD:Hard Disk Drive)2505と表示装置2509に接続される表示制御部2507とリムーバブル・ディスク2511用のドライブ装置2513と入力装置2515とネットワークに接続するための通信制御部2517とがバス2519で接続されている。なお、HDDはソリッドステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)などの記憶装置でもよい。オペレーティング・システム(OS:Operating System)及び本発明の実施の形態における処理を実施するためのアプリケーション・プログラムは、HDD2505に格納されており、CPU2503により実行される際にはHDD2505からメモリ2501に読み出される。CPU2503は、アプリケーション・プログラムの処理内容に応じて表示制御部2507、通信制御部2517、ドライブ装置2513を制御して、所定の動作を行わせる。また、処理途中のデータについては、主としてメモリ2501に格納されるが、HDD2505に格納されるようにしてもよい。本技術の実施例では、上で述べた処理を実施するためのアプリケーション・プログラムはコンピュータ読み取り可能なリムーバブル・ディスク2511に格納されて頒布され、ドライブ装置2513からHDD2505にインストールされる。インターネットなどのネットワーク及び通信制御部2517を経由して、HDD2505にインストールされる場合もある。このようなコンピュータ装置は、上で述べたCPU2503、メモリ2501などのハードウエアとOS及びアプリケーション・プログラムなどのプログラムとが有機的に協働することにより、上で述べたような各種機能を実現する。
なお、上で述べたような処理を実行することで用いられるデータは、処理途中のものであるか、処理結果であるかを問わず、メモリ2501又はHDD2505等の記憶装置に格納される。
以上述べた実施の形態をまとめると以下のようになる。
本発明の実施の形態に係る計測システムは、(A)磁気回路と高周波コイルとを含む核磁気共鳴センサと、(B)脂肪と筋肉とが混在する試料における筋肉の、プロトン横緩和波形データに対する影響を除去又は抑制するように設定されたパルスパラメータによって特定されるパルスシーケンスの高周波パルスを高周波コイルに出力して、高周波コイルから試料のプロトン横緩和波形データを計測し、当該プロトン横緩和波形データに対する回帰分析により所定関数の係数を算出し、当該計算された係数と予め用意された検量線とに基づき試料の少なくとも脂肪含有率を算出する計測部とを有する。
このようにすることで、温度によらず、脂肪と筋肉(赤身)とが混在する試料の脂肪と筋肉(赤身)の混合の程度を計測できるようになる。これは、筋肉(赤身)の影響を除去又は抑制(相対的な抑制を含む)がなされているためである。
なお、上記パルスパラメータは、飽和回復法における繰り返し間隔(TR)又は反復回復法における待機時間(τ)と、高周波パルス間隔(tE)とのうち少なくともいずれかである場合もある。繰り返し間隔と待機時間については、縦緩和時間による効果を発現させることで、筋肉(赤身)の影響を除去又は低減させるものである。また、高周波パルス間隔(180°パルス間隔)については、分子の自己拡散係数Dの効果により、相対的に脂肪の影響度合いを高め、相対的に筋肉(赤身)の影響度合いを低減させるものである。
具体的には、飽和回復法における繰り返し間隔を、脂肪の縦緩和時間×2.3倍未満に設定することで、脂肪含有率を精度良く算出することができるようになる。
また、反復回復法における待機時間を、脂肪の縦緩和時間×3.00以下、又は実験的に求められた、筋肉の影響を除去する時間に設定するようにしてもよい。なお、繰り返し間隔TRが脂肪と筋肉中の水の両方のT1値より5倍以上長い場合における最も好ましい待機時間τは、脂肪の縦緩和時間×0.693である。繰り返し間隔TRが脂肪と筋肉(赤身)中の水の両方のT1値より5倍以上長いという条件が成り立たない場合には、実験的に決めることになるが、筋肉(赤身)の影響を完全に除去できない場合でも、十分に低減されていれば、脂肪含有率の精度向上には効果がある。
さらに、高周波パルス間隔を、γをプロトンの磁気回転比とし、Dを分子の自己拡散係数とし、Gを磁気回路の静磁場勾配とし、T2fatを脂肪の横緩和時間とすると、
Figure 0007496980000002
の範囲内で設定するようにしてもよい。これによって、筋肉(赤身)に比して脂肪を2.3倍は強調できるようになる。
なお、上で述べた所定関数は、脂肪についての横緩和時間を時定数とし且つ減衰を表す指数関数と、筋肉についての横緩和時間を時定数とし且つ減衰を表す指数関数との和として表される。例えば、式(2)、(4)、(9)及び(10)のように表される。
本発明の実施の形態に係る計測方法は、(A)磁気回路と高周波コイルとを含む核磁気共鳴センサにおける高周波コイルに対して、脂肪と筋肉とが混在する試料における筋肉の、プロトン横緩和波形データに対する影響を除去又は抑制するように設定されたパルスパラメータによって特定されるパルスシーケンスの高周波パルスを出力して、高周波コイルから前記試料のプロトン横緩和波形データを計測するステップと、(B)計測されたプロトン横緩和波形データに対する回帰分析により所定関数の係数を算出し、当該計算された係数と予め用意された検量線とに基づき試料の少なくとも脂肪含有率を算出するステップとを含む。
以上述べた計測方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを作成することができて、そのプログラムは、様々な記憶媒体に記憶される。
また、上で述べたような計測方法を実行するコンピュータは、1台のコンピュータで実現される場合もあれば、複数台のコンピュータで実現される場合もあり、それらを合わせて計測システム又は単にシステムと呼ぶものとする。
100 情報処理装置
200 NMRセンサ
300 被計測物

Claims (3)

  1. 磁気回路と高周波コイルとを含む核磁気共鳴センサと、
    脂肪と筋肉とが混在する試料における前記筋肉の、プロトン横緩和波形データに対する影響を除去又は抑制するように設定されたパルスパラメータによって特定されるパルスシーケンスの高周波パルスを前記高周波コイルに出力して、前記高周波コイルから前記試料のプロトン横緩和波形データを計測し、当該プロトン横緩和波形データに対する回帰分析により所定関数の係数を算出し、当該計算された係数と予め用意された検量線とに基づき前記試料の少なくとも脂肪含有率を算出する計測部と、
    を有し、
    前記パルスパラメータが、
    1つの90°パルスの後に複数の180°パルスを含むパルス群における、前記複数の180°パルスのパルス間隔であり、
    前記パルス間隔tEを、
    γをプロトンの磁気回転比とし、Dを前記筋肉の水分子の自己拡散係数とし、Gを前記磁気回路の静磁場勾配とし、T2fatを前記脂肪の横緩和時間とすると、
    Figure 0007496980000003
    の範囲内で設定すること
    を特徴とする計測システム。
  2. 前記所定関数が、
    前記脂肪についての横緩和時間を時定数とし且つ減衰を表す指数関数と、前記筋肉についての横緩和時間を時定数とし且つ減衰を表す指数関数との和である
    請求項記載の計測システム。
  3. 磁気回路と高周波コイルとを含む核磁気共鳴センサにおける前記高周波コイルに対して、脂肪と筋肉とが混在する試料における前記筋肉の、プロトン横緩和波形データに対する影響を除去又は抑制するように設定されたパルスパラメータによって特定されるパルスシーケンスの高周波パルスを出力して、前記高周波コイルから前記試料のプロトン横緩和波形データを計測するステップと、
    計測された前記プロトン横緩和波形データに対する回帰分析により所定関数の係数を算出し、当該計算された係数と予め用意された検量線とに基づき前記試料の少なくとも脂肪含有率を算出するステップと、
    を含み、
    前記パルスパラメータが、
    1つの90°パルスの後に複数の180°パルスを含むパルス群における、前記複数の180°パルスのパルス間隔であり、
    前記パルス間隔tEを、
    γをプロトンの磁気回転比とし、Dを前記筋肉の水分子の自己拡散係数とし、Gを前記磁気回路の静磁場勾配とし、T2fatを前記脂肪の横緩和時間とすると、
    Figure 0007496980000004
    の範囲内で設定すること
    を特徴とする計測方法。
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