JP7486867B1 - 断熱・遮炎シート並びにこれを用いた組電池及び電池モジュールパッケージ - Google Patents

断熱・遮炎シート並びにこれを用いた組電池及び電池モジュールパッケージ Download PDF

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Abstract

本発明は、電池セルが直列又は並列に接続、積層された組電池の、各セル間に介在させて用いられる軽量薄型の断熱・遮炎シートを提供する。この断熱・遮炎シートは、水酸基を有するシリカ系無機繊維25~70重量%;ガラス繊維2~25質量%;繊維状鉱物5~40重量%;バインダー3~20重量%;断熱付与無機粒子0~45重量%を含有する分散液を、抄造してなる、厚み3mm以下の断熱・遮炎シートである。前記断熱付与無機粒子は、気孔率80%以上、平均粒径5~200μmの疎水性エアロゲル粒子の表面を親水化処理した親水化処理エアロゲル粒子を含んでいる。

Description

本発明は、電気自動車やハイブリッド車などを駆動する電動モータの電源となるバッテリーパック又はバッテリーモジュールを構成する電池セル間に介在させる、あるいはセルの集合体(電池モジュール)をパッケージングする筐体の断熱・遮炎に用いることができる断熱・遮炎シート、並びにこれらを用いた組電池、電池モジュールパッケージに関する。
電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源として、複数の電池セルが直列又は並列に接続、モジュール化された組電池が搭載されている。この電池セルには、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。
電池の内部短絡や過充電等が原因で、ある電池セルが急激に昇温し、熱暴走を起こした場合、隣接する他の電池セルに伝播して、連鎖的に隣接する電池セルの熱暴走を引き起こしたり、熱暴走を起こした電池セルから高温のリチウム電解液が噴出するなどにより、発火等の大事故を引き起こすおそれがある。
このため、組電池では、ある電池セルが熱暴走したときに、隣接するセルに伝播する熱を抑制、さらには火炎による延焼を抑制するための技術として、例えば、図1に示すように、電池セル11、11間に断熱・遮炎シート10を介在させることが提案されている。複数個の電池セルは、通常、まとめて筐体12内に収納される。
また、電池モジュールのパッケージングとしては、例えば、図2に示すように、角型の電池セル11’を並列させて、筐体12’に収納した後、筐体12’の蓋体12’aで密封したものがある。この蓋体12’aの裏面に、断熱・遮炎シート10を粘着剤10aを用いて貼り付けておくことで、パッケージングされる電池セルの1個が熱暴走することにより噴出した高温のリチウム電解液、これにより発生した火炎が、周辺の機器に影響を及ぼすことを防止することができる。
従来より、このような断熱・遮炎シートには、優れた絶縁性、火炎バリア機能を有するマイカシート(少なくとも80%のマイカを含むシート)を用いることが提案されている。しかしながら、マイカシートは、嵩密度が高いため、電気自動車の電池用途においては、より軽量で、同程度の機能を有する断熱・遮炎シートが求められている。
軽量で、断熱性、耐炎性を有するシートとして、無機繊維の織布、不織布、抄紙を用いることが提案されている。無機繊維としてのアルミナ繊維は、高耐熱性(融点約2000℃)、耐燃焼性、高絶縁性で大変優れた特性を有するが、他の無機繊維に比べて高価格である。このため、シートの構成繊維として用いることには適していない。このような状況下、所望の断熱性、遮炎性を有する断熱・遮炎シートとして、無機繊維と無機粒子とを組み合わせた断熱シートが提案されている。
例えば、特表2021-531631(特許文献1)には、直径が異なる2種類のガラス繊維と、「グラスバブル、カオリン粘土、タルク、マイカ、炭酸カルシウム及びアルミナ三水和物から選択される少なくとも2種の微粒子充填剤混合物」と、無機結合剤とを含む耐燃焼性を有する材料を抄紙したシートが提案されている。
また、国際公開2019/187313(特許文献2)では、複数の電池セルを積層状態に固定した組電池の、電池セルの積層面に挟んで使用する断熱シートとして、無機繊維の隙間に無機粒子(無機中空粒子又は無機発泡粒子)を充填してなる無機繊維シートが提案されている。ここでは、無機繊維として、「たとえば、ケイ酸マグネシウム(セピオライト)、ロックウール、セラミック繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム」が例示されている。また、実施例1として、80重量%のケイ酸マグネシウム(セピオライト)に、10重量%のガラス繊維と、10重量%のナイロン繊維を懸濁し、分散して抄紙用スラリーとし、これを湿式抄紙してシート状とし、乾燥した後熱プレスして厚さ0.7mmの無機繊維シートを製造したこと、得られたシートの両面にポリエチレンフィルム(厚さ50μm)を接着して、断熱シートを作成したと記載されている。なお、無機粒子を含有した実施例は開示されていない。
特開2021-34278号公報(特許文献3)には、シリカナノ粒子(第1粒子)と、チタニア、アルミナ等の金属酸化物粒子(第2粒子)という2種類の無機粒子と、線状又は針状の無機繊維(実施例ではガラス繊維)とを含み、必要に応じて結合材(高分子凝集剤やアクリルエマルジョンなどの有機バインダー、シリカゾル、アルミナゾルなどの無機バインダ)を併せて水中に分散させてなるスラリーを抄造することで得られる断熱シートが提案されている。シリカナノ粒子の含有量が多くなるにしたがって、断熱性が向上することから、断熱材として機能する第1無機粒子、第2無機粒子、及び無機バルーンは、断熱シート全体に対して50~80質量%含有することが提案されている。
なお、実施例では、上記構成成分以外に、さらにパルプ繊維8重量%を含有したスラリーを抄造して、断熱シートを得たことが記載されている。
特許6997263号、特許7000626号(特許文献4、5)には、断熱効果を発揮する無機粒子(アルミナ、チタニアなどの酸化物粒子、空孔率が高い多孔質又は中空粒子)と、2種類の無機繊維を含む熱伝達抑制シートにおいて、2種類の無機繊維として、太径で線状の第1繊維と細径で樹枝状の第2繊維の組合せを用いた熱伝達抑制シートが提案されている。上記2種類の無機繊維の組合せを用いることで、繊維の絡み合いにより、30~90重量%という無機粒子を安定的に保持し、且つ高温暴走時でも形状を保持できると説明されている。しかしながら、第1無機繊維、第2無機繊維について、具体的に使用した繊維の種類が記載されていないし、作製した熱伝達抑制シートについて、粉落ちが防止できたこと、断熱効果に関する開示は一切ない。
ところで、断熱性に優れた多孔質粒子として、エアロゲル(多孔質シリカ粒子)が知られている。
特開2015-163815号(特許文献6)は、主体繊維100重量部に対して、高い断熱効果を有するエアロゲル粒子(平均粒径2~140μm、かつ比表面積が400m/g以上)35~210重量部を配合し、さらにカチオン性ポリマー及び両性ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性ポリマー、及び/又は、低融点合成繊維を含むバインダーを含有する断熱材(断熱シート)を提案している。
主体繊維としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の合成繊維の他、セラミック繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維といった無機繊維が挙げられている(〔0018〕)が、実施例では、パルプ、ポリエステル繊維、ビニロンバインダー繊維といった有機繊維を用いたシートが作製されているだけである。
バインダーについては、メチルシリケート粒子がアニオン性又は両性を示すため、カチオン性ポリマー及び/又は両性ポリマーをバインダーとして使用することで、パルプ及び多孔質シリカ粒子の凝集を促進し、歩留まりを高めることが可能であると説明されている(〔0026〕)。
具体的実施例では、水中に、主体繊維(パルプ、ポリエステル繊維、ビニロンバインダー繊維といった有機繊維)、エアロゲル、水溶性ポリマーを添加し、撹拌して、抄紙用スラリーを調製し、抄紙法により断熱シートを作製している。得られた断熱シートを紙コップ又はステンレス棒に巻き付け、紙コップに95℃の熱湯をいれた場合、ステンレス棒を100℃に加熱した場合について、断熱シート表面の温度を測定(60秒間)した結果が示されている。
また、特開2020-200901号(特許文献7)には、断熱用成分として、ナノメートルサイズの空孔を多数有するエアロゲル粒子、グラスビーズ、又はセラミックビーズを使用し、繊維として生体溶解性ロックウールを使用した断熱シートが提案されている。繊維成分、断熱用成分、バインダーを含むスラリーを含有する抄紙用スラリーを用いて、厚さ1.72~6.3mmのフェルト状または紙状の断熱シートを形成したことが開示されている(実施例の表1)。
ここでは、バインダーとしては、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル澱粉、アクリルポリビニルアルコールが挙げられており(〔0025〕)、基材となる繊維(ロックウール)100重量部に対して、50~300部を配合すると記載されている(〔0026〕)。特許文献7の実施例では、バインダー含有水溶液にエアロゲルを添加混合したエアロゲル分散液と、生体溶解性ロックウールの分散液とを個別に調製し、繊維分散液にエアロゲル分散液を添加して、抄紙用スラリーを調製している。
かかる抄紙用スラリーを用いて、濾紙と網の積層体上に塗布し、網と濾紙を積層した状態で加熱加圧することで、断熱シートを作製している。実施例では、作製した断熱シートの熱伝導率(熱線法)の測定結果が示されている。
特表2021-531631号公報 国際公開2019/187313号公報 特開2021-34278号公報 特許6997263号公報 特許7000626号公報 特開2015-163815号 特開2020-200901号
無機繊維として代表的なガラス繊維は低価格であるが、汎用タイプ(例えばEガラス)の使用温度は700℃程度が使用限界であるため、700℃を超える熱暴走時には、溶融してしまい、シート形状を保持できない。特許文献1では、ガラス繊維の含有量を7~25重量%(実施例)とし、粘土やマイカ、グラスバブルの共存により、トーチ火炎試験に耐えることができたとの結果が報告されている。
なお、トーチ火炎試験をはじめとする評価試験は、抄紙法により作成した無機系紙を、無機バインダとしてのケイ酸ナトリウムを用いて複数層、積み重ねた後、加圧、乾燥した積層体シートについて行っている。薄い場合には、積層シートに穴があいたことが示されている。
特許文献2では、ガラス繊維の含有量を10重量%以下にしているが、粒子を保持した例はなく、エアロゲルなどの無機粒子を含有させる場合には、両面をプラスチックフィルムで挟むことが提案されている。電池間に介在させる断熱シートの場合は、断熱シートの両面が電池で保持されることになるので、熱暴走時にプラスチックフィルムが焼失した後も、電池間に存在して熱伝達抑制効果を発揮することが可能である。しかしながら、図2のように、筐体のカバーに貼付して用いる場合、電池側のプラスチックフィルムが焼失すると、シート形状を保持できず、無機粒子が落下してしまう。
特許文献3-5では、無機粒子の含有量を30重量%以上、さらには50重量%以上としたシートが提案されている。特許文献3では、ガラス繊維の含有率を10重量%とし、パルプ繊維を8重量%として、抄紙法により厚み1mmのシートを作成し、シリカナノ粒子とチタニア粒子の含有量比を変えて、850℃までの熱伝導率を測定している。しかしながら、火炎試験による評価は行われていないため、筐体のカバーなどに固定する断熱シートとして、1000℃近くの火炎に曝された場合、形状を保持できるかという点は明らかでない。さらに、特許文献4、5では、粉落ちが防止できたことも、断熱効果についても、具体的な実施例をもって示されていない。
特許文献6は、エアロゲルを用いた断熱効果が具体的に示されているが、熱源温度は100℃程度である。リチウムイオン電池が熱暴走した場合の熱暴走対策として求められる、遮炎性、500℃以上の高温域における断熱性については、開示がなく、不明である。
特許文献7は、断熱材の用途として、医薬品、食品用の断熱容器(〔0002〕)の他、電子部品の断熱(〔0003〕)が記載されているが、リチウムイオン電池の熱暴走シートに用いることは記載されていない。熱伝導率の測定結果が示されているが、熱暴走対策として求められる600℃以上の高温に対する断熱性、遮炎性に関しては、具体的効果が示されておらず、その効果は不明である。
シートの基材繊維となる生体溶解性ロックルールは、無機繊維に属することから、不燃性(耐火性)であり、700℃程度までは耐熱性を有するといわれている。一方、ロックウールは、原料のスラグや岩石を1500~1600℃の電気炉で溶解し、溶融物を遠心力で吹き飛ばして空気中で固化させて製造される。かかる製造方法に基づき、ロックウールは、繊維になりきれなかった非繊維状粒子(ショット)を含んでいる。かかる非繊維状粒子は、抄紙過程で低減できても完全に除去することは困難であるため、一定割合で断熱シートに混入することを回避することは困難である。結果として、断熱シートの断熱性・遮炎性に影響を及ぼす恐れがあり、非繊維状粒子がシートと接触するセルの外壁を傷つけ損傷させるおそれもある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、0.5mm超、1mm以上、3mm以下、好ましくは2mm以下といった軽量薄型のシートで、1000℃近くの火炎に曝された場合でも、短くても10分間は形状を保持した遮炎・断熱効果を発揮できる断熱・遮炎シートを提供することにある。
本発明者らは、軽量薄型シートで、通常使用時(熱暴走が起こらない程度の温度上昇時)の断熱性、並びに火炎暴露(1000℃以上)に対しても、遮炎・断熱性を発揮できる繊維、シートの構成について種々検討した。
EV自動車の電源に用いられるリチウムイオン電池は、多数のセルの積層体であることから、個々のセル間に介在させて用いる断熱・遮炎シートは、耐熱性との関係で、無機材料を主成分とし、薄く、軽量であることが求められる。無機材料を主成分とする材料を用いて、0.5mm超、1mm以上、3mm未満、好ましくは2mm以下といった軽量薄型のシートの製造方法として、湿式抄造法がある。
ところで、断熱効果が高いとして知られているエアロゲル粒子は、ナノサイズの気孔に空気が閉じ込められることにより優れた断熱効果を発揮していることとの関係で、表面が疎水性でしかも低密度である。このことは、分散媒体として水を用いる湿式抄造法では、繊維と絡み合って凝集することが困難な原因にもなる。エアロゲル粒子の優れた断熱効果を発揮させるためには、抄紙用原料液(繊維含有懸濁液)において、疎水性であるエアロゲル粒子と繊維とを均質に混合させる必要がある。
また、エアロゲル粒子は、輻射熱の割合が高くなる500℃以上の高温域では、断熱効果が減じられることが知られている。このため、熱暴走が起きた場合の高温域での断熱については、シリカエアロゲル粒子とは別の断熱機構を有することが望ましい。
一方、鉱物粘土は、遮炎性に優れるが、一般に熱伝導率が高い傾向にあるため、含有量が高くなると、断熱性が低下する傾向にある。さらには、湿式抄造法によりシートを作製しようとすると、メッシュを用いるろ過脱水工程で、目詰まりを起こしやすく、1mm以上の厚みを有するシートを抄紙することは実質的に困難である。このため、例えば、特許文献1で作製される無機系紙のように、複数枚の紙を積層したシートとして用いる必要がある。
発明者らは、末端に水酸基を有するシリカ系無機繊維では、高温にさらされたときに、繊維自体が脱水縮合反応により吸熱することができ、初期の早急な昇温を抑制できることを見出した。
すなわち、末端に水酸基を有するシリカ系無機繊維では、300~600℃程度の温度域で脱水縮合反応が起こり、吸熱反応による昇温の抑制、さらには生成水の蒸発熱による熱エネルギーの消費により、初期の昇温を遅延化できる。
本発明者らは、このようなシリカ系無機繊維を断熱・遮炎シートを構成する基材繊維として利用することで、断熱付与無機粒子として、エアロゲル粒子の優れた断熱性を生かしつつ、エアロゲル粒子による断熱効果が低下する高温時、熱暴走が起こるような急激な昇温、発火に対して、断熱性、遮炎性を発揮し、リチウムイオン電池の熱暴走が拡大、延焼するリスクを低減できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の断熱・遮炎シートは、水酸基を有するシリカ系無機繊維25~70重量%;ガラス繊維2~25質量%;繊維状鉱物5~40重量%;バインダー3~20重量%;断熱付与無機粒子0~45重量%を含む厚み3mm以下の断熱・遮炎シートであって、前記断熱付与無機粒子は、気孔率80%以上、平均粒径5~200μmの疎水性エアロゲル粒子の表面を親水化処理した親水化処理エアロゲル粒子を含んでいる。
前記シリカ系無機繊維と前記ガラス繊維の含有重量比(シリカ系無機繊維/ガラス繊維)は、30/1~1.5/1であることが好ましい。
前記疎水性エアロゲル粒子とは、粒子表面の水に対する濡れ角度が100度以上であることが好ましい。
前記親水化処理とは、エアロゲル粒子表面を有機溶剤、界面活性剤、又は親水性高分子と接触させる処理をいう。
ある実施形態の親水化処理エアロゲル粒子は、前記疎水性エアロゲル粒子の少なくとも一部を親水性高分子で被覆されたものである。親水性高分子は、水酸基を有している高分子であることが好ましい。
前記親水化処理エアロゲル粒子における前記疎水性エアロゲル粒子に対する前記親水性高分子量は、親水性高分子/疎水性エアロゲル粒子(重量比)で1/2~1/100であることが好ましい。
前記繊維状鉱物は、セピオライト、パリゴルスカイト、チタン酸カリウムウィスカー、ワラストナイトから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記バインダーは、熱可塑性樹脂繊維を含むことが好ましく、さらに有機系凝集剤を含んでもよい。
また、前記バインダーは、無機バインダーを含んでもよく、前記無機バインダーとしては、コロイダルシリカ及び/又は無機金属塩が挙げられる。
本実施形態の断熱・遮炎シートは、かさ密度が100~400kg/mである。
本発明は、前記断熱付与無機粒子を含む断熱・遮炎シートの製造方法を開示する。当該製造方法は、親水性処理剤含有水溶液に、表面が疎水性で、気孔率80%以上、平均粒径5~200μmのシリカエアロゲル粒子が分散している親水化処理エアロゲルスラリーを調製する工程:
水酸基を有するシリカ系無機繊維、ガラス繊維、繊維状鉱物、及びバインダーを含有する水性分散液に、前記親水化処理エアロゲルスラリーを添加混合して、前記シリカ系無機繊維25~70重量%、前記ガラス繊維2~25質量%、前記繊維状鉱物5~40重量%、前記バインダー3~20重量%、及び親水処理化エアロゲル0超~45重量%含有する懸濁液を調製する工程;
前記懸濁液を湿式抄造して、厚み3mm未満のシートを得る工程を含む。
ある一実施形態の製造方法は、水溶性高分子の水溶液に、表面が疎水性で、気孔率80%以上、平均粒径5~200μmのシリカエアロゲル粒子を分散させた親水化処理エアロゲルスラリーを調製する工程:
水酸基を有するシリカ系無機繊維、ガラス繊維、繊維状鉱物、及び熱可塑性樹脂繊維を含むバインダーを含有する水性分散液に、前記親水化処理エアロゲルスラリーを添加混合する工程;
得られた混合液を湿式抄造後、加熱・加圧して、厚み3mm未満のシートを得る工程を含む。
前記親水化処理エアロゲルスラリー中の界面活性剤の含有率は10重量%以下であることが好ましく、有機溶剤の含有率は10重量%以下であることが好ましい。
本発明は、ここに開示されている断熱・遮炎シートを用いた組電池又は組電池モジュールも包含する。
ある態様の組電池又は組電池モジュールでは、わち、筐体内に、電池セルが直列又は並列に接続して収納されている組電池又は組電池モジュールにおいて、前記電池セル間に断熱・遮炎シートが介在されている。
別の態様の組電池又は組電池モジュールでは、筐体内に、電池セルが直列又は並列に接続して収納されている組電池又は組電池モジュールにおいて、前記電池セルが接触している前記筐体の内壁面に断熱・遮炎シートが貼着されている。
本発明の断熱・遮炎シートは、軽量で、通常使用時の断熱性に優れ、且つ熱暴走による急激な温度上昇、さらには1000℃近くの火炎暴露にも10分間耐えることができて、リチウムイオン電池の熱暴走を抑制することができる。
断熱・遮炎シートを介在させた組電池の構成を示す模式図である。 断熱・遮炎シートを筐体の蓋体に適用した電池モジュールの構成例を示す模式図である。 リチウムイオンバッテリーモジュールの他の実施形態の構成を示す模式図である。 図3に示すリチウムイオンバッテリーモジュールで用いられる断熱・遮炎シートの一例を示す構成模式図である。 実施例で行った火炎暴露試験を説明するための図である。 実施例で行った熱伝導率の測定方法を説明するための図である。 実施例で作製した断熱・遮炎シートNo.21の厚み方向断面の顕微鏡写真(倍率1000倍)である。 実施例で作製した断熱・遮炎シートNo.23の厚み方向断面の顕微鏡写真(倍率1000倍)である。 火炎暴露試験後の断熱・遮炎シートNo.21の加熱された面の顕微鏡写真(倍率1000倍)である。 火炎暴露試験後の断熱・遮炎シートNo.23の加熱された面の顕微鏡写真(倍率1000倍)である。 実施例で行った断熱性試験Iを説明するための図である。 実施例で作製した断熱・遮炎シートNo.23の断熱性試験I後のシート外観(加熱面)の外観を撮像した写真である。 実施例で作製した断熱・遮炎シートNo.27の断熱性試験I後のシート外観(加熱面)の外観を撮像した写真である。 断熱・遮炎シートNo.23の断熱性試験I後のシート加熱面の顕微鏡写真(100倍)である。 断熱・遮炎シートNo.27の断熱性試験I後のシート加熱面の顕微鏡写真(100倍)である。 断熱・遮炎シートNo.23の断熱性試験I後の加熱面と反対側の面(背面)の顕微鏡写真(100倍)である。 断熱・遮炎シートNo.27の断熱性試験I後のシート加熱面と反対側の面(背面)の顕微鏡写真(100倍)である。 実施例で行った断熱性試験IIを説明するための図である。 断熱性試験IIの測定結果(温度変化)を表すグラフである。
本発明の断熱・遮炎シートは、水酸基を有するシリカ系無機繊維;ガラス繊維;繊維状鉱物;及びバインダー;さらに所望により断熱付与無機粒子を所定割合で含有する無機系繊維の紙様シートである。
具体的には、水酸基を有するシリカ系無機繊維;ガラス繊維;繊維状鉱物;バインダー;断熱付与無機粒子を所定割合で含有する抄紙用懸濁液を湿式抄造することにより製造できる、厚み3mm未満、好ましくは2mm以下の紙様シートである。
<抄紙用懸濁液の組成>
はじめに、本発明の断熱・遮炎シートの抄紙原料となる抄紙用懸濁液について説明する。
前記抄紙用懸濁液は、水中、場合によっては有機溶媒又は界面活性剤を含有する水性媒体中に、水酸基を有するシリカ系無機繊維;ガラス繊維;繊維状鉱物;及びバインダー;所望によりさらに断熱付与無機粒子を所定割合で含有する。以下、各成分について詳述する。
(1)シリカ系無機繊維
本発明で使用するシリカ系無機繊維は、繊維構成成分としてSiOを含有する非晶質繊維で、末端にヒドロキシル基を有する。
シリカ系無機繊維に含まれるヒドロキシル基は、300~600℃程度で、下記(1)式のように縮合反応して、新たなシロキサン結合(Si-O-Si結合)を形成するとともに、HOを放出することができる。脱水縮合によって生じた水は、高温雰囲気下で気化する。このとき、気化熱として、シリカ系無機繊維製シートに与えられた熱エネルギーを消費することから、シートの温度上昇を遅らせることができると考えられる。
Figure 0007486867000001
ヒドロキシル基を有するシリカ系無機繊維としては、例えば、アルミナで修飾されたケイ酸から作られるシリカ系アモルファス繊維であり、一般に90~97重量%のシリカ、約3~9重量パーセントのアルミナ、0.5パーセント未満の酸化ナトリウム、および0.5パーセント未満の他の成分(ZrO、TiO、LiO、KO、CaO、MgO、SrO、BaO、Y、La、Fe、およびこれらの混合物)を含んでいる。SiO-のネットワークの一部にSi(OH)が存在している。このようなシリカ系無機繊維の融点は1500℃~1550℃の範囲であり、1000℃以上の耐熱性を有する。
また、このようなシリカ系アモルファス繊維は、特性低下の原因、特性のばらつきの原因となる非繊維状粒子(ショット)を、実質的に含まないという点で優れている。
本発明で用いるシリカ系無機繊維は、上記のような脱水縮合反応をすることができるシリカ系無機繊維であれば、その組成は特に限定しない。市販のシリカ系無機繊維としては、未焼成のBELCHEM GmbH社のBELCOTEX(登録商標)を用いることができる。
未焼成のBELCOTEX(登録商標)は、出発ガラス物質からフィラメント又はステープルファイバーを製造する過程において、出発ガラス物質中に含まれていた金属又は金属酸化物イオン(例えばAl3+、TiO2+またはTi4+、およびZrO2+またはZr4+)がプロトン置換したヒドロキシル基が残っている。
本発明で用いるシリカ系無機繊維は、径6~13μm、好ましくは7~10μm程度で、長さ3~30mmのステープルファイバー、または径6~13μm、好ましくは7~10μm程度で、一般に、長さ1~50mm、好ましくは3~30mm、より好ましくは3~20mmのステープルファイバーを使用することができる。
上記のようなシリカ系無機繊維は、抄紙用懸濁液中の固形分含有率が、25重量%以上、30重量%以上、40重量%以上であり、70重量%以下、65重量%以下、50重量%以下である。これらの範囲において、断熱性付与無機粒子、繊維状鉱物の含有量に応じて、適宜選択される。
なお、断熱・遮炎シートにおけるシリカ系無機繊維の含有率は、抄造用懸濁液の固形分含有率と同程度である。
シリカ系無機繊維の含有率が少なすぎると、シートにしたシリカ系無機繊維による熱エネルギー消費効果が得られず、熱暴走初期の温度上昇の抑制効果が不十分となる。一方、多くなりすぎると、相対的に他の成分割合が減じることとの関係で、引張り強度をはじめとする強度が低下し、後述するガラス繊維によって熱収縮の問題を解決できたとしても、ハンドリング性の点で満足できない。
(2)ガラス繊維
ガラス繊維は、シートに引張強度を付与することができる。特に、シリカ系無機繊維との関係で、高温時の熱収縮を抑制することができる。すなわち、ガラス繊維は、高温、特に炎に曝されるような高温では、断熱性を有しないばかりか、溶融・収縮して繊維形状を保持できなくなるが、シートにおける含有率を抑制することにより、ガラス繊維が溶融しても、繊維間間隙に膜状に広がる程度で済む。このことは、シリカ繊維が脱水縮合して収縮するような温度領域で、ガラス繊維が溶融しはじめるので、溶融したガラスが、シリカ繊維間に閉じ込められ、垂れを抑制できるとともに、シリカ系無機繊維の収縮を相殺できるという効果がある。したがって、例えば、図2に示すような、蓋体に貼付して用いる仕様でも、溶融したガラスが垂れたりせずに済む。
ガラス繊維のサイズとしては、繊維径1~10μm、好ましくは3~9μm、より好ましくは4~6μm程度である。繊維長は、シリカ系無機繊維、後述する有機系繊維と絡み合うことができる長さ、強度があればよい。一方、ガラス繊維は炎にさらされるような高温域では溶融するので、溶融により生じるガラス塊が大きくなりすぎると、自重で垂れてしまう。よって、ガラス繊維としては、繊維長1~15mm、好ましくは2~10mmのステープルファイバーを使用することが好ましい。
本発明で使用するガラス繊維は、種類について特に限定しない。本発明におけるガラス繊維の役割から、高度な耐熱性は要求されないので、入手容易性、コストの点から、Eガラス繊維が好ましく用いられる。
抄造用懸濁液におけるガラス繊維の含有率は、上記役割から、2重量%以上、5重量%以上で、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、7重量未満である。
なお、断熱・遮炎シートにおけるガラス繊維の含有率は、抄造用懸濁液の固形分含有率と同程度である。
断熱・遮炎シートにおけるガラス繊維の含有率は、ガラス繊維の上記役割から、シリカ系無機繊維の含有率に応じて、上記範囲から選択されることが好ましい。さらに、シリカ系無機繊維:ガラス繊維の重量比率として、30:1~1.5:1、好ましくは20:1~2:1、より好ましくは10:1~3:1程度とすることが好ましい。
ガラス繊維の割合が高くなりすぎると、ガラスが溶融するような高温域(700℃超)、火炎暴露時により、シート形状を保持することが困難になる傾向にある。
(3)繊維状鉱物
本発明で使用する繊維状鉱物とは、顕微鏡観察において繊維状、樹枝状、針状、柱状、棒状などの粒子形状を認識できる鉱物であり、鉱物粘土又は鉱物繊維に分類されることもある。
繊維径に相当する幅、繊維長に対応する全長の比率(全長/幅)としてのアスペクト比が10以上、好ましくは15以上で、200以下、好ましくは150以下のものである。
後述する断熱付与無機粒子は、熱暴走が起こる高温(例えば500℃以上)では、断熱効果が小さく、遮炎性も期待できない。この点、粘土鉱物は、耐熱、耐炎性に優れる。一方、粘土は、懸濁液の粘度増大の原因となるため、抄紙工程(特にメッシュを使用するろ過脱水工程)での目詰まり原因となりやすい。この点、繊維状鉱物は、目詰まりの問題が生じにくいという利点がある。
かかる観点から、使用する繊維状鉱物の平均一次粒子径としては、5μm以上、10μm以上、20μm以上で、200μm以下、100μm以下、80μm以下、70μm以下である。
ここでいう平均粒子とは、カーブを描いたり、捲縮している繊維状鉱物の場合は、二次元に投影した末端長さに基づき、球状に換算される粒子径であり、篩を用いて最小粒子径を基準に分級してもよい。
上記繊維状鉱物としては、セピオライト、パリゴルスカイト、チタン酸カリウムウィスカ、及びワラストナイトから選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
セピオライト、パリゴルスカイトは、繊維状形態を有する粘土鉱物に分類される層状ケイ酸塩である。これらは、繊維径に相当する幅が0.1μm未満で、顕微鏡観察により測定できる長さ(繊維長)としては、最大でも150μm程度である。
セピオライトは、2:1リボン型構造をもつ含水ケイ酸マグネシウムで、成因の違いにより、高温高圧下における熱水作用を受け、結晶化度が高く、長繊維のα型と、浅海底や湖底での堆積作用を成因とし、結晶化度が低く、短繊維(塊状または粘土状形態)のβ型があり、いずれも用いることができる。なお、α型は電子顕微鏡(1000倍)で通常繊維形態を確認することができるが、β型は電子顕微鏡(1000倍)では粒状を呈し、通常、繊維形態と認識されにくい。
セピオライトの層状構造は、鎖構造を有し、多孔質で比表面積が大きく、吸着性に優れている。チクソトロピー性を有し、水を分散媒体として用いたスラリー中で解砕されて繊維状となる。また、可塑性、柔軟性に優れているため、繊維間間隙に入り込んだ後、乾燥固結して、繊維間のバインダーとして機能することが可能である。
ワラストナイトは、針状の結晶鉱物(メタケイ酸塩)で、繊維径に相当する幅は、1μm以下で、長さは50μm程度である。
チタン酸カリウムは、針状の単結晶(ウィスカ)として用いられる。通常、繊維径は0.1~0.5μmであり、長さは、10~50μm、入手しやすいものとしては、15~30μmである。
このような繊維状鉱物粒子は、抄紙懸濁液中で、シリカ系無機繊維、ガラス繊維と絡み合うことができるので、抄紙により作成されるシート状態においても、安定的に保持され、粉落ちの問題が発生しにくく、シートの強度アップに有効に寄与できる。 また、繊維状鉱物粒子若しくはこれらが絡み合ったものは、脱水ろ過工程で目詰まりの原因となりにくいので、抄紙工程でのハンドリング性にも優れている。
一方、他の鉱物粒子、例えば、マイカやタルクなどの板状粘土鉱物では、スラリー状態において、繊維と絡み合うことがほとんどないため、シートの強度アップに対する寄与が小さく、得られたシートは、ハリがなく、ハンドリング性に欠ける傾向がある。
さらに、これらの繊維状鉱物は、耐熱性に優れるので、シートの高温下での引っ張り強度の改善にも役立つ。この点、ガラス繊維が高温下では引っ張り強度の増大に寄与できないことから、より有効な役割を有する。
一方、これらの鉱物の断熱効果は、後述する断熱付与無機粒子や無機繊維と比べて断熱性が劣る傾向にあることから、多くなりすぎると、相対的に他の断熱効果を奏する成分の含有量が少なくなり、結果として断熱・遮炎シートとしての断熱性低下をもたらし得る。
以上のような観点から、抄紙用懸濁液中、断熱・遮炎シートにおける繊維状鉱物の含有率として、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、15重量%以上で、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、20重量%以下の範囲で、他の成分の含有率との関係で適宜選択される。
(4)バインダー
バインダーとしては、有機バインダー及び/又は無機バインダーを用いることができる。本発明にいうバインダーは、繊維同士、繊維と無機粒子を結着する役割を有する化合物の他、抄紙方法(湿式脱水成形)において、慣用的に用いられる凝集剤も含む概念である。
凝集剤とは、架橋物等を形成することで、抄紙用懸濁液に含まれる繊維、粒子の凝集を促進し、歩留まりを改善することができるものである。
(4-1)有機バインダー
本発明で使用することができる有機バインダーとしては、粉末、顆粒状、コロイド溶液、高粘度流体、繊維状などの種々の形態で用いることができる。
繊維状バインダーとしては、熱可塑性樹脂繊維が挙げられる。熱可塑性樹脂繊維は、抄紙工程において、弾性率が高いガラス繊維、シリカ系無機繊維と絡み合い、さらに、断熱付与無機粒子と絡み合うことで、これらのバインダーとして作用することができる。
また、熱可塑性樹脂繊維は、抄紙後の乾燥工程で、熱により軟化、溶融して、繊維同士を結着することができる。したがって、乾燥時に加熱加圧することで、ガラス繊維やシリカ系無機繊維のスプリングバックを抑制することができ、得られたシートの厚みを制御しやすい。
使用できる熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、パルプ繊維、ポリエステル繊維(軟化温度:約240℃、溶融温度:約255~260℃)、ポリプロピレン繊維(軟化温度:約140~160℃、溶融温度:約165~173℃)、ポリエチレン繊維(軟化温度:約100~115℃、溶融温度:約125~135℃)、アクリル繊維(軟化温度:約190~240℃)、ポリ塩化ビニル繊維(軟化温度:約60~100℃、溶融温度:約200~210℃)、ビニリデン繊維(軟化温度:145~165℃、溶融温度:約165~185℃)、ナイロン繊維(軟化温度:約180℃、溶融温度:約215~220℃)、ビニロン繊維(軟化点:220~230℃)、ポリビニルアルコール系繊維などが挙げられる。また、表層部に軟化温度が低い繊維を使用した芯鞘構造の熱可塑性樹脂繊維を用いてもよい。
有機バインダーとして熱可塑性樹脂繊維を使用する場合、繊維径3μm~50μm、好ましくは5μm~30μmで、繊維長1~20mm、好ましくは3~10mmのステープルファイバーが好ましく用いられる。熱可塑性樹脂繊維は、断熱・遮炎シートの主体となる無機繊維と均質に絡み合う必要があることから、無機繊維(ガラス繊維、シリカ系無機繊維)と同程度の長さを有することが好ましい。
繊維以外の形態を有する有機バインダーとしては、粉末状又は流体状の高分子が挙げられる。例えば、アクリルラテックス、(メタ)アクリルラテックス等のラテックス;ポリビニルアルコール粉末、デンプンなどの粉体状の増粘物質;スチレンとブタジエンのコポリマー、ビニルピリジン、アクリロニトリル、アクリロニトリルとスチレンのコポリマー等がある。
これらの有機バインダーは、抄造中にはウェットシートに強度を与えることができる。抄造後、分散媒体の除去後においては、固化しても、加熱により再び軟化することができるので、所望の形状、例えばスリット、折り曲げなどの形状に成形加工する場合に有利である。
以上のような有機バインダーは、通常使用時だけでなく、昇温時、特にガラス溶融前の昇温時に、無機繊維間の無機粒子の保持状態に合わせて、軟化することで、無機粒子をより安定的な状態に保持することを可能にする。
さらに、ポリアクリルアミドや、アクリルアミド-アクリル酸ナトリウム共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高分子凝集剤も、有機バインダーの1種として含有してもよい。湿式抄紙法において、メッシュ(網)を用いる脱水工程では、メッシュの目開きよりも小さい粒子はメッシュを通過し、ろ過できない。この場合、高分子凝集剤を繊維含有液(抄紙用懸濁液)に添加し、ろ過成形できるサイズの凝集フロックを形成する。かかる役割との関係で、凝集剤に該当する有機バインダーは、繊維、粒子を均質に混合した繊維含有液の調製後、さらには繊維含有液に断熱付与剤含有スラリーを混合した後に、添加されることが好ましい。
以上のような有機バインダーは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。2種以上組み合わせて用いる場合に、形態が異なる有機バインダーの組合せ(例えば有機繊維とラテックスの組合せ)であってもよいし、有機繊維と高分子凝集剤の組合せのように、役割が異なるバインダーの組合せであってもよい。
有機バインダーは、抄紙法により得られたシートの後加工や、熱加工時に可撓性、あるいは通常使用時の温度上昇におけるシートの膨張、収縮を緩和するのに必要十分な量だけ含有すればよい。含有量が多くなりすぎると、耐熱性低下の原因となる。また、通常使用時の温度(200℃程度まで)を超えるような高温下では、有機成分が酸化により発熱したり、分解ガスを発生したりする場合がある。その場合、破裂、発火、発煙に至る可能性もある。したがって、抄造用懸濁液中の固形分濃度として、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以下、8重量%以下である。
(4-2)無機バインダー
無機バインダーとしては、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾルなどのコロイド酸化物;水ガラス、珪酸カルシウム;定着剤又は無機系凝集剤に分類される硫酸アルミニウムなどを用いることができる。
このうち、コロイダルシリカは、繊維間隙に入って、乾燥によりシリカコロイド粒子が凝着することで、ガラス繊維、シリカ系無機繊維のバインダーとして作用することができる。
硫酸アルミニウムは、繊維群の水切れや歩留まりを改善するもので、通常、抄紙法において、定着剤又は歩留まり向上剤として添加される。
以上のような無機バインダーは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。抄紙用懸濁液における無機バインダーの含有率は、1重量%以上、3重量%以上、10重量以下、7重量%以下、5重量%以下程度で用いられる。
有機バインダー、無機バインダーは、いずれか一方、又は双方組み合わせて用いることができる。双方組み合わせて用いる場合、抄紙用懸濁液におけるバインダーの含有率は、3~20重量%、好ましくは5~15重量%である。
(5)断熱付与無機粒子
本発明で用いられる断熱付与無機粒子としては、例えば、シリカエアロゲル、グラスバブルやグラスバルーン等の多孔質又は中空の無機粒子;ナノ粒子の凝集塊(アグロメレート)を形成することで多孔質粒子のように機能できるナノ粒子群;酸化チタン、アルミナ、バインダー機能を有しないシリカ(結晶性シリカ粉末、アモルファスシリカ、フュームドシリカなど)等の輻射熱を散乱できるセラミック粒子などが挙げられる。
好ましくは、空気による断熱効果及び軽量化を得ることができる中空又は多孔質のシリカ粒子、ナノ粒子群であり、より好ましくは多孔質のシリカ粒子(シリカエアロゲル)である。
断熱付与無機粒子として用いるシリカ粒子は、ナノサイズの粒子(5~50nm程度)が凝集した網目状の凝集体(aggregate)又は凝集塊(agglomerate)で、凝集体又は凝集塊として、ナノサイズの空孔を、気孔率50体積%以上有している。このようなシリカ粒子は、ゾルゲル法、乾式法(フュームドシリカ)、湿式法(沈降シリカ)などにより製造され、製造方法、製造条件により、得られる粒子径、凝集状態が異なる。
湿式シリカ(沈降シリカ)は、一般に、珪砂とソーダ灰から合成されるケイ酸ナトリウムと鉱酸を原料に、水中で合成されるシリカで、マクロポア構造を有する不定形凝集粒子(二次粒子としての凝集塊)として得られ、多孔質粒子のように作用することができる。
ゾルゲル法で製造されるシリカ粒子は、ナノサイズの粒子(5~50nm程度)が凝集した網目状の凝集体で、ナノ粒子同士がシラノール結合している。ナノサイズの空孔を、気孔率70体積%以上、好ましくは80体積%以上、より好ましくは90体積%以上で有する多孔質粒子(一次粒子)に該当する。
好ましくは、熱・電気の伝導性を阻害できる曲折した長い空気路となるナノサイズの気孔を有する表面疎水性のエアロゲルである。
以下、代表的な断熱付与無機粒子として、親水化処理エアロゲル粒子、表面親水性のナノ粒子の凝集塊について説明する。
(5-1)親水化処理シリカエアロゲルについて
ゾルゲル法では、多孔質のシリカエアロゲルが得られる。具体的には、2官能化シラン、3官能シラン化合物に加えて、少なくとも4官能シラン化合物を含むゾルを架橋反応して、ゲル化し、得られたウェットゲルを必要に応じて成形した後、ウェットゲル表面及び内部に素材する水及び/又は有機溶剤を乾燥し、有機溶媒に交換し(溶媒交換)、有機溶媒の種類に応じて、超臨界乾燥、又は常圧乾燥することにより、得られる。
得られたゲル乾燥体としてのエアロゲルは、気孔サイズが1~20nm程度であり、気体分子の平均自由行程以下である。
上記のように、ゾルゲル法で製造されるシリカエアロゲルの表面に存在するシラノール基を、例えばシリル化剤等の疎水性基を用いてエンドキャッピングすることで、表面を疎水性にしたエアロゲル粒子が得られる。凝集体(アグリゲート)の構成要素となる個々のシリカ粒子表面も疎水性キャッピングされたシリカエアロゲルは、粒子内部の気孔も疎水性となり、水を分散媒体として用いるスラリーにおいても、気孔内に水が侵入することを防止できるので、空気に基づき、熱伝導率を低減することができる。
このような表面疎水性のエアロゲル粒子は、通常、水に対する濡れ角度100度以上、110度以上、130度以上、150度以上である。
本発明で使用する断熱性付与無機粒子としては、表面が疎水性であるエアロゲル粒子が好ましく用いられる。具体的には、表面積が約300m/g~約1,000m/g、好ましくは500m/g~約1,000m/g、BET表面積が700m/g~800m/gで、空隙率が少なくとも80%、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の多孔質構造を有するシリカエアロゲルを用いる。
断熱付与無機粒子として用いる表面疎水性のエアロゲル粒子は、通常、平均粒子径5~200μm、好ましくは5μm~150μm、より好ましくは10~100μmである。粒子密度は、100~200g/cmであることが好ましい。
かかるサイズのエアロゲル粒子を用いることで、抄紙工程での歩留まりに優れ、軽量で、且つ断熱性に優れた断熱・遮炎シートを提供できる。
なお、製造方法によっては、200μm以上~数mm程度の凝集体となっている場合がある。この場合、粉砕により上記範囲内のエアロゲル粒子を得ればよい。
これらの無機粒子粉末の表面が疎水性で高い表面張力を有するエアロゲルの場合、抄紙用懸濁液において、エアロゲル粒子同士が凝集して、他の成分(無機繊維、熱可塑性樹脂繊維)と十分に混合することが困難となる。本発明では、上記のような疎水性シリカエアロゲルを、親水化処理して用いる。
表面疎水性エアロゲルの親水化処理の方法としては、有機溶剤又は界面活性剤と混合することで、表面性状を水に濡れやすくする方法;エアロゲル粒子の表面の少なくとも一部を被覆するが、気孔内部にまでは侵入できないような親水性高分子で被覆する方法などが挙げられる。
親水化処理に用いる有機溶剤又は界面活性剤としては、シリカエアロゲル粒子の凝集構造に影響を及ぼさない程度に、水とシリカエアロゲルとの界面に存在できるような溶剤又は界面活性剤で、さらに水中で繊維とも混合できる溶剤である。
具体的には、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3~7程度の多価アルコールアルキルエーテル系有機溶剤などが挙げられる。
なお、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン縮合物などのアルキレンオキシド型界面活性剤は、エアロゲルの親水性を高めることができるが、媒体としての水を用いた繊維含有液とは分離する傾向にあり、繊維との混合が困難である。
上記のような有機溶剤又は界面活性剤が含まれる場合、後述するエアロゲルスラリー中の含有率として10重量%以下とすることが好ましい。界面活性剤又は有機溶剤の含有率が高くなりすぎると、抄紙用懸濁液の調製工程、特に混合撹拌時の泡立ちが多くなる傾向にある。
親水化処理に用いる親水性ポリマーとしては、セルロースナノファイバー、デンプン、アミロース、カチオン化デンプン、カルボキシルメチルセルロースなどの多糖類;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン-ビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸などのビニル系親水性ポリマーが挙げられる。これらのうち、水溶性ポリマーであることが好ましく、1級又は2級水酸基を複数有する水溶性ポリマーが好ましい。また、ポリビニルアルコール等のケン化物の場合、ケン化度は、77~99モル%が水溶性の観点から好ましい。
ポリビニルアルコールとしては、未変性ポリビニルアルコールの他、水溶性、親水性が損なわれない範囲であれば、側鎖に複数のアルコール性水酸基を有する変性ポリビニルアルコール、側鎖にオキシアルキレン基やスルホン酸基等を導入した変性ポリビニルアルコールであってもよい。
これらの親水性ポリマーは、水溶液の状態で用いられる。増粘剤としても機能することから、高粘度の水溶液が得られる。増粘された水溶液に、エアロゲルを添加し、撹拌、振盪により均質化することで、エアロゲル粒子表面を親水化できる。
これらの親水性ポリマーは、エアロゲルの気孔よりもサイズが大きい傾向にあり、その分子構造から、親水性基が分散媒体側となるように、エアロゲル粒子の表面周囲を囲むように存在すると考えられる。これにより、表面状態が分散媒体と親和性を有するようになり、エアロゲル含有スラリー内で、凝集体(アグリゲート)としてのエアロゲル粒子の状態で分散できる。
したがって、上記のような親水性ポリマーは、疎水性エアロゲル粒子の表面を親水性とするのに必要十分な量だけ用いればよく、通常、親水性ポリマー/疎水性エアロゲル粒子(重量比)で、1/2~1/100の範囲で用いられる。当該範囲内で、親水性ポリマーの種類、疎水性エアロゲル粒子の種類に応じて、適宜選択される。
以上のような親水化処理方法のうち、環境にやさしく、製造環境、取り扱い性の観点から、水溶性高分子を用いることが好ましい。これにより繊維含有液及び抄紙用懸濁液の分散媒を実質的に水だけにすることができ、脱水工程の排水処理が簡便化される。
尚、上記のような界面活性剤、親水性ポリマーは、抄紙方法において、有機バインダーや乳化剤として用いられることがあるが抄紙用懸濁液の調製工程においては、両者の取り扱いが異なる。すなわち、水溶性樹脂や界面活性剤をバインダーや乳化剤として用いる場合、通常、繊維含有液中に、バインダー、エアロゲルを添加することになる。しかしながら、一般に、疎水性エアロゲルと水層(界面活性剤、親水性ポリマーの水溶液)との比重差が大きく、乳化が困難な傾向にある。
一方、エアロゲルの親水化処理剤として用いる場合には、エアロゲルと親水性ポリマー溶液との混合液を、繊維含有液とは個別に調製し、これらを混合する。この場合、疎水性エアロゲルは親水性となっているので、比重差があっても、繊維含有液と混合することができる。すなわち、親水化処理エアロゲル粒子を、繊維含有液中に分散させることが可能となる。
(5-2)親水性シリカナノ粒子群について
本発明で用いる親水性シリカナノ粒子群とは、一般に、珪砂とソーダ灰から合成されるケイ酸ナトリウムと鉱酸を原料に、水中で合成される湿式シリカ(沈降シリカ)に相当し、分散前は、不定形凝集粒子(凝集塊)として存在している。凝集塊の状態では、マクロポア構造を有する多孔質粒子のように作用することができる。
親水性シリカナノ粒子の凝集塊の場合、特段の表面処理を施すことなく、使用することができる。
親水性エアロゲル粒子群の場合、一次平均粒子径が1~50nm程度、5~30nm程度のシリカナノ粒子で、表面が親水性である。シリカナノ粒子は、個々のナノ粒子同士が結合が形成していない、いわゆる二次粒子であるアグロメレート(凝集塊)の状態で存在し、二次粒子径が100nm~100μm程度である。しかしながら、親水性シリカナノ粒子群は、水中で、二次粒子としての凝集塊が解砕されやすく、拡散しやすい。その結果、抄紙用懸濁液の調製にあたり、シリカ系無機繊維、ガラス繊維といった無機繊維と混合しやすく、無機繊維と親水性シリカナノ粒子がからみあった混合液が得られやすい。
一方、凝集塊において、個々のシリカ粒子は結合していないため、撹拌等の混合操作により、ナノ粒子にまで解砕されることもある。生じたナノ粒子は、無機繊維やバインダー、繊維状鉱物との絡み合いが不十分な場合には、抄紙方法で、脱水工程に用いるメッシュサイズとの関係で、水と一緒に流出しやすく、歩留まりが悪くなる傾向にある。
(5-3)断熱付与無機粒子の含有率
本発明の断熱・遮炎シートにおいては、以上のような断熱付与無機粒子は必須構成成分ではないが、含有していることが好ましい。特に親水化処理シリカエアロゲルは、通常使用時(最大でも200℃程度までの昇温)において、優れた断熱効果を発揮できるので、多数のセルが積層された組電池、電池モジュールにおいて、あるセルが過熱した場合に、隣接する電池セル又は電池モジュールに伝播することを防止できる。また、多孔質粒子であるシリカエアロゲルを含有することで、断熱・遮炎シートの軽量化を図ることができる。
一方、断熱付与無機粒子、空気の低熱伝導率に基づいて断熱効果を付与する親水化処理シリカエアロゲルは、熱暴走を起こすような高温では、断熱効果が小さい。熱暴走を起こすような高温(1000℃程度)では、1000℃以上の耐熱性を有するシリカ系無機繊維、繊維状鉱物が、遮炎、耐熱性を発揮する。したがって、通常使用時、熱暴走が生じるような高温域の双方での断熱・遮炎機能の点から、断熱付与無機粒子の含有率は、0重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上で、45重量%以下、40重量%以下である。過半を超えて含有すると、抄紙が困難になり、また熱暴走を生じるような高温域での耐熱性、遮炎性が不十分となる。
(6)熱硬化性樹脂の前駆体
本発明の断熱・遮炎シートは、さらに熱硬化性樹脂の前駆体を含有してもよい。熱硬化性樹脂前駆体とは、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂(例えばレゾール樹脂)、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂など)のモノマー又はオリゴマーで、液状又は粉末状である。
熱硬化性樹脂の前駆体は、加熱により又は硬化剤共存下で、架橋反応することにより硬化する。
無機繊維(シリカ繊維、ガラス繊維)、有機及び/又は無機バインダー、無機粒子(繊維状鉱物、断熱付与無機粒子)に加えて、熱硬化性樹脂の前駆体を含有する抄紙用懸濁液を抄造して得られたシートに、特定形状を付与し、シートの強度アップのために、さらに熱硬化性樹脂層を積層したい場合がある。熱硬化性樹脂の前駆体を含有することで、熱硬化時に、積層すべき熱硬化性樹脂層の一部と架橋反応することができるので、層間接着性増大を図ることができて好ましい。
熱硬化性樹脂の前駆体が含有される場合、5重量%未満、好ましくは1~3重量%である。含有量が多くなると、後で形成される熱硬化性樹脂層との接着強度が増大するが、無機繊維を主体とする断熱・遮炎シートの無機繊維に基づく可撓性が損なわれる傾向にあるからである。
(7)その他のフィラー
抄紙用懸濁液の固形分としては、上記成分の他、固形分全体に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%以下で、以下のようなフィラーが含有されていてもよい。
その他のフィラーとしては、上記繊維状鉱物以外の粘土鉱物(層状ケイ酸塩)を含有してもよい。具体的には、雲母、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、セリサイト、イライト、グローコナイト、クロライト、タルク等の含水フェロケイ酸塩鉱物類、又はこれらの混合物を用いることができる。これらのうち、スメクタイト、モンモリロナイト、ベントナイト、及びこれらの混合物が好ましく用いられる。
ベントナイトは、天然の粘土鉱物で、モンモリロナイトを主成分とする。スメクタイトは、2:1型鉱物のグループの総称で、モンモリロナイト、スチーブンサイト、ヘクトライトなどが含まれる。
モンモリロナイトの単位結晶は、4面体シート、8面体シート、4面体シートからなる平板状の単位で、かかる単位結晶が複数枚積み重なることで層状を構成している。モンモリロナイトの単位結晶が、厚み約1nm、幅100~1000nmのとても薄い板状結晶をしているため、スメクタイトは、セピオライトと同様に、抄紙用懸濁液において繊維間間隙に入り込むことができ、乾燥固化することで塗膜を形成し、これらのバインダーとして機能することができる。
モンモリロナイトは、高い液性限界を示し、含水量が多い。スメクタイトは、層間に水や有機物がはいって膨張する膨潤性を有し、層間に多量の水(例えばカオリンの10倍以上の水)を含有することができる。なお、モンモリロナイトは、電解質の影響を受けやすく、解膠することができるので、塗膜形成力が高いセピオライトと組み合わせて使用することで、無機粒子を巻き込んだ状態で、繊維間間隙に塗膜を形成しやすい。
以上のような層状ケイ酸塩は、抄紙用懸濁液の調製前の状態では、円相当径で、平均粒子径300μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは10~100μmの粉末として存在するが、水との混合により、粘性、粘着性、可塑性を示すようになり、自己塗膜形成能力がある。したがって、抄紙用懸濁液を抄造した後、乾燥すると、粘土は、繊維間間隙に、無機粒子(無機バインダー、断熱付与無機粒子)を含めた状態で、固化凝結することができる。これにより、無機繊維及び無機粒子の凝集力を高め、安定的に保持できる無機繊維同士のバインダーとしての役割を果たすことができる。
その他の固形分フィラーとしては、例えば、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、着色剤、濡れ剤、粘剤、歩留向上剤、紙力向上剤、濾水剤、pH調整剤等が挙げられる。
(8)分散媒体
抄紙用懸濁液の調製のための分散媒体としては、上記シリカ系無機繊維、ガラス繊維、繊維状鉱物、無機粒子、有機繊維を均一に溶解又は分散できるものであればよい。
例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロピルアルコール等のアルコール類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水、及びこれらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
水以外の有機溶剤は、粒子分散性との関係で必要に応じて配合されるが、環境、廃水処理の点からは、水が好ましい。界面活性剤、有機溶剤の含有率は、0.1重量%以下、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.001重量%以下である。
断熱付与無機粒子として、有機溶剤又は界面活性剤で親水化処理したエアロゲル粒子を用いた場合であっても、抄造溶液として、上記範囲内にとどめることができる。
<抄紙用懸濁液の調製>
上記で挙げた各成分、すなわちシリカ系無機繊維、ガラス繊維、繊維状鉱物及びバインダー、さらに必要に応じて配合される断熱付与無機粒子、熱硬化性樹脂、その他のフィラーを、分散媒体中に所定量添加し、撹拌して、抄紙用懸濁液を調製する。抄紙用懸濁液の調製にあたっては、必要に応じてさらに水で希釈してもよい。
抄紙用懸濁液の固形分濃度は、上記成分を均一に撹拌、混合できる濃度であればよい。具体的には、固形分率で、0.01~10重量%、好ましくは0.05~3重量%である。
上記成分の配合順序は特に限定しないが、繊維及び無機粒子を分散媒体中で撹拌しながら添加する方法が好ましい。
ただし、疎水性断熱付与無機粒子を含有する場合には、別途、親水化処理シリカエアロゲルの分散液(スラリー)を調製する。そして、このエアロゲルスラリーと繊維含有液とを混合し、混合液にバインダーを添加することにより、調製することが好ましい。
これにより、疎水性エアロゲルのように、水中で凝集しやすく、繊維と分離しやすい断熱付与無機粒子を添加する場合であっても、繊維に絡み合わせて、繊維内に分散した状態のシートを得ることが可能となる。
<湿式抄造>
湿式抄造とは、上記で調製した抄紙用懸濁液を抄紙機で抄きあげ、プレスして水分除去後、乾燥してシート状物を得る方法である。
抄紙機としては、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜型抄紙機、傾斜短網抄紙機、これらの複合機を用いることができる。
抄紙後、得られたウェットシートを加熱乾燥して、分散媒体を除去する。乾燥温度は、分散媒体(水、有機溶媒を含有する場合には当該有機溶媒)を蒸発させることができる温度以上、好ましくは80℃以上である。乾燥温度の上限は、熱硬化性樹脂の前駆体を含有する場合には、熱硬化が始まる温度よりも低い温度、熱可塑性繊維を含む場合にはそれらの融点以下の温度であることが好ましい。したがって、使用する熱可塑性樹脂繊維の種類、熱硬化性樹脂の前駆体の有無などによもよるが、通常、60~200℃、好ましくは80~150℃である。
抄紙後、乾燥前、乾燥時、又は乾燥後に、断熱・遮炎シートを所望の形状とするために、成形してもよい。乾燥は、通常、加熱のみにより行ってもよいし、加圧下で加熱することにより行ってもよい。図3に示すような電池モジュールの隔壁シートに用いる場合、図4に示すように、スリットなどを有する形状を付与した状態でプレス後、乾燥してもよい。
いずれも、乾燥前の状態では可塑性を有しているので、スリットや折り曲げなどの所定形状を付与した状態で固化させることができる。
乾燥後、得られた成形体(紙様シート)をさらに切断、打ち抜き、折り曲げなどの二次加工に供してもよい。
なお、繊維含有液を抄造して得られた繊維シートに、断熱付与無機粒子、繊維状鉱物、バインダーを含有するスラリーをスプレー塗布、カーテン塗布、含浸塗布、バー塗布、ロール塗布、ブレード塗布等の方法により含浸させる方法(外添)がある。このような外添による繊維状鉱物、無機粒子の含浸は、表層部に留まる傾向が強く、乾燥後に粉末化し、粉末が飛散しやすい。この点、本発明の断熱・遮炎シートでは、繊維状鉱物、断熱付与無機粒子は、主体となる無機繊維及び繊維状鉱物とともに抄造されるので、繊維ないしは繊維状鉱物との絡み合いによる保持効果で、無機粒子、繊維状鉱物のシート内での付着力が高められており、乾燥後、粉末化しても、飛散しにくい。つまり、無機粒子がシート内に安定的に保持されている。
<断熱・遮炎シートの構成>
本発明に係る断熱・遮炎シートは、上記のような組成を有する抄紙用懸濁液を用いて湿式抄造し、乾燥により分散媒体を除去して得られるものである。
抄造後、乾燥時に、成形型に充填することで、例えば図4に示すように、複数のスリットが形成されたシート9としてもよい。本発明の断熱・遮炎シートは、強度、可撓性を有するので、図4に示すような加工、成形に耐えることができる。
シートの厚みは、0.5mm超、0.8mm以上、1mm以上、1.3mm以上、1.5mm以上で、3mm未満、2、5mm以下、2.0mm以下、1.8mm以下である。薄すぎると、強度不十分であり、また繊維、絶縁付与無機粒子の含有量が減少しすぎて、十分な断熱性能が得られにくい。
一方、3mm未満と薄いにもかかわらず、繊維状鉱物により強度が改善されている上に、加熱により熱可塑性樹脂繊維による塑性、軟化状態となるので、プレス工程に供しても、破壊されずに済む。また、断熱付与無機粒子は、複数種類の繊維の絡み合いにより保持された状態となって存在できるので、切削、打ち抜きを行っても、無機粒子の粉末の飛散は、抑制される。
本発明に係る断熱・遮炎シートは、上記のように抄紙により製造されたシート単独でもよいし、片面に粘着剤と塗工して、さらに離型紙を積層した積層体としてもよい。図2に示すような電池モジュールの筐体12’の蓋体12’aに貼着する場合、断熱・遮炎シート10の片面に粘着剤を塗布して粘着剤層10aを形成し、これに離型紙を積層したものでもよい。離型紙を剥がして、粘着剤層10aを蓋体12’aの裏面に貼着することで、断熱・遮炎シートを貼着できるので、シートの施工作業が簡便である。
以上のような構成を有する本発明の断熱・遮炎シートは、シリカ系無機繊維にバインダーを加えただけで抄紙して得られるシートと比べて、高温域での断熱性に優れている。また、断熱付与無機粒子を含有していることで、通常使用時(熱暴走起こさない程度の300℃未満)の断熱性にも優れる。
さらに、シートの坪量にもよるが、嵩密度を400kg/m以下、300kg/m以下、250kg/m以下、100kg/m以上、150kg/m以上とすることができる。したがって、マイカシート(一般に2000kg/m程度)と比べてはるかに軽量である。このことは、EV自動車のパワーとして用いられる組電池、電池モジュールのように、多数の電池セルを積層した積層体(例えば図2)で、各電池セル間に介在させる断熱・遮炎シートとしては、軽量であることが大変有用である。
また、なんらかの理由で、セルの一つが熱暴走した場合、エアロゲルの断熱効果が得られにくくなる高温領域に突入することになるが、シリカ系無機繊維が脱水縮合反応により熱エネルギーを消費し、シリカ系無機繊維の低熱伝導率により、初期の昇温を抑制することができる。このことは、熱暴走により急激な昇温の遅延化を意味し、有意義である。
また、ガラス繊維の強度が低下し、形状保持が困難になるような600~800℃の高温域では、高耐熱性でガラス繊維よりも耐熱性に優れたシリカ系無機繊維がシートの形状保持に寄与できると考えられる。さらに、火炎暴露に対しては、繊維状鉱物が遮炎効果を発揮できる。
このように、本発明の断熱・遮炎シートは、通常使用時(200℃程度まで)、セルの1つが熱暴走した場合の急激な温度上昇時、さらには600~800℃程度の高温での熱暴走状態、1000℃近くの火炎との暴露状態といった広範な温度域で、シート形状を保持しつつ、断熱効果を発揮し、隣接するセルへの加熱、火炎暴露の遅延化を図ることができる。
さらに、断熱付与無機粒子として多孔質粒子を用いた断熱・遮炎シートは、圧縮性に優れている。リチウムイオン電池は、通常使用時であっても、セルが昇温状態で膨張し、冷却により収縮するといった体積変動がある。したがって、図2に示すような、セル積層体タイプの組電池、特に筐体12’内に密接してセル11’が積層されている電池モジュールにおいて、多孔質粒子を断熱付与無機粒子として用いた断熱・遮炎シートは、セルの体積変動の緩衝材としての役割を果たすことが期待できる。
<用途>
本発明の断熱・遮炎シートは、リチウムイオンバッテリーの最小単位である電池セル間に介在させる断熱・遮炎シート(例えば図1);直列または並列に電気的に接続した複数のリチウムイオン電池セルを、外側筐体内に所定空間を介して、複数個配設された電池モジュール化した電池群を筐体に収納してパッケージングする場合、筐体の蓋体の断熱に用いられる断熱・遮炎シート(図2);図3に示すような円筒形セルの隔壁、隔離用シートに用いる断熱・遮炎シート(図3)として用いられる。
個別単位のセルまたはモジュールが「熱暴走」状態になった場合、電池内に含まれている電解質が発火して爆発と火災を引き起こす可能性がある。このような熱暴走の連鎖を防止するために、バッテリーパック内において、また電池モジュール内において、これらを構成する個々の電池セル、又は電池モジュールと筐体との間に、本発明の断熱・遮炎シートを介在させることで、断熱・遮炎シートは、個別の電池セルで生じた熱暴走事象が隣接する電離セル、さらには電池モジュール内の他の電池に伝播するのを防ぐことができる。
〔測定・評価方法〕
(1)火炎暴露試験
図5に示すように、評価されるシート(150mm×150mm)15を、電池セルボックスに見立てたカチオン電着塗料鋼板17に粘着テープ16を用いて固定し、シート15を、水平に固定したバーナー火炎14により加熱(シートの加熱側の面より5mmでの温度が1000℃となるように火炎を調節)し、鋼板17の火炎対応部分の温度(背面温度)を、温度センサ13にて測定した。
上記バーナー火炎で10分間又は5分間加熱した後、シートの状態(クラックの有無、シート外観など)を観察した。
(2)熱伝導率(熱流束法)の測定
図6に示すように、ヒータ30上に、実施例で作製した3枚のシート31a、31b、31cを重ねて載置した。ヒータ30と最下層のシート31aとの間に熱電対32a、最上層のシート31cの上に熱電対32bをそれぞれセットし、熱電対32b上に熱流センサ(京都電子工業株式会社 K500B-20)33をセットした。2つの熱電対32a、32bにより、最下層シート31aの下面と最上層シート31cの上面との温度差を測定すること、及び熱流センサ33で熱流束を測定することで、熱伝導率(λ)を算出した。
熱伝導率(λ)の算出に際しては、シート全体が均一に加熱されるように、ヒータ30の温度が200℃に到達してから6時間保持した後の測定値を用いた。
〔断熱・遮炎シートの原料〕
<原料>
(1)シリカ系無機繊維
BELCHEM GmbH社のBELCOTEX(登録商標)110(組成はAlO1.5・18〔(SiO20.6(SiO1.5OH)0.4〕)のチョップドストランド(繊維径9μm、繊維長さ3~5mm)を、300℃で1時間、熱処理(焼成シリカ系無機繊維)又は熱処理せずに(未焼成シリカ系無機繊維)を用いた。
(2)繊維状鉱物
・セピオライト
α型又はβ型の2種類のセピオライトを用いた。
α型セピオライトとしては、粒子径150μ以下の粒子を40%含む分級品で、嵩密度0.13~0.15g/mlのものを用いた。
β型セピオライトとしては、粒子径45μm以下の粒子を80%含み、嵩密度0.20~0.27g/mlのものを用いた。
・チタン酸カリウム(ウィスカ)(大塚化学製のティスモ)
繊維径0.3~0.6μmで、繊維長10~20μm
(3)ガラス繊維
繊維径5~9μm、長さ3~9mmのガラス繊維(Eガラス)を用いた。
(4)有機バインダー
・パルプ繊維(繊維径20~30μm)
・ポリエステル繊維(繊維径5~10μm、繊維長3~9mm)
・ポリビニルアルコール繊維(繊維径5~12μm、繊維長3~6mm)
・アクリルラテックス
(5)無機バインダー
・硫酸アルミニウム
・コロイダルシリカ
スノーテックス30(登録商標)を用いた。スノーテックス30は、平均一次粒子径10~20nmのシリカナノ粒子(アモルファス)が単分散したコロイド溶液で、シリカ粒子の比表面積は130~280m/gである。
(6)断熱付与無機粒子
下記2種類の断熱付与無機粒子を用いた。
(6-1)疎水性エアロゲル
ゾルゲル法で製造された表面疎水性(濡れ角度120~150度)の非晶質シリカ(表面積700~800m/g、気孔率120~150kg/m、平均細孔径20nm、粒子径30~120μm、DBP吸油量540~650g/100g)について、下記親水化処理I、II、又はIIIを行って得られた親水化処理エアロゲル(断熱付与無機粒子I、II、III)を用いた。
・断熱付与無機粒子I
水200gに、上記疎水性エアロゲル20g及び有機溶剤(エチレングリコールモノブチルエーテル)20gを添加し、振盪して、エアロゲルスラリーを調製した。エアロゲル:有機溶剤=1:1で親水化処理したエアロゲルスラリーである(エアロゲル固形分率:8.3%)
・断熱付与無機粒子II
水200gに、上記疎水性エアロゲル20g及びセルロールナノファイバー2.3%の水溶液20g、有機溶剤(エチレングリコールモノブチルエーテル)20gを添加して、振盪して、エアロゲルスラリーを調製した。エアロゲル:セルロースナノファイバー=43:1で親水化処理したエアロゲルスラリーである(エアロゲル固形分率:8.6%)。
・断熱付与無機粒子III
水300g中に、上記疎水性エアロゲル30g及びポリビニルアルコール5gを添加して、振盪して、エアロゲルスラリーを調製した。エアロゲル:ポリビニルアルコール=6:1で親水化処理したエアロゲルスラリーである(エアロゲル固形分率:8.9%)。
(6-2)親水性シリカ粒子(湿式シリカ)
断熱付与無機粒子IVとして、非晶質の沈降シリカで、表面に多数のシラノール基を有する親水性シリカナノ粒子を用いた。これは、平均一次粒子径が数nmのナノ粒子の凝集塊(1~10μmの不定形凝集体(二次粒子)であった。二次粒子としての比表面積は200~250m/gであり、DOA吸油量:230~280ml/100gである。
(7)その他
・マイカ(ヤマグチマイカ AB-25S)
湿式粉砕品
平均粒径24μm、嵩比重0.17g/ml
・カオリナイト(林純薬工業のカオリン(研究実験用)
<抄紙用懸濁液の調製及び抄造法によるシートNo.1~7の作製(断熱付与無機粒子なし)>
水2000ccいれた容器内に、上記原料成分を表1に示す割合(固形分の重量%)で配合し、さらに、凝集剤としてのポリアクリルアミド2ccを添加して配合し、ミキサーを用いて撹拌混合した後、手すき機を用いて抄造した。
抄造後、乾燥オーブンに入れ、100℃で10分間乾燥した。これにより、150mm×150mm×厚み約1.5mmの測定用シートを得た。
得られたシートについて、上記火炎暴露試験(暴露時間10分間)を行い、断熱性(厚み1.6mm換算したときの背面温度)を測定し、試験後のシートの外観を目視で観察した。結果を1に示す。
参考例R1として、マイカシート(市販品)について、同様の方法に評価した結果をあわせて表1に示す。
Figure 0007486867000002
No.3,4、7は、未焼成のシリカ系無機繊維を用いたもので、高温で脱水縮合反応して、熱エネルギー消費効果を期待できるものである。背面温度が低く、断熱効果を有する。しかしながら、No.3では、ガラス繊維又は繊維状鉱物を含有していないため、高温で熱収縮した結果、試験後のシートには、クラックが発生していた。
No.5は、シリカ系無機繊維を用いることなく、繊維状鉱物を主体とするシートである。熱収縮の問題はなく、火炎暴露試験後のクラックもなかった。一方、嵩密度に関して、マイカシートよりは軽量化を達成できるが、シリカ系無機繊維を主体とするシートよりも重くなる傾向にあった(No4との比較)。また、断熱性も、シリカ系無機繊維を用いた場合よりも劣る傾向にあった。
No.6は、ガラス繊維を主体とするシートであり、炎に曝される1000℃では溶融してしまうため、十分な断熱性が得られなかった。なお、ガラス繊維の溶融は、試験後の表面性状から、炎の当接部分及びその周囲には繊維形状が認められないことから確認した。
一方、No.1,2は、焼成シリカ系無機繊維を用いたもので、事前の熱処理によりシリカ系無機繊維の火炎暴露による熱収縮がないと考えられる。No.1ではクラックが発生しなかったのに対して、No.2ではクラックの発生が見られた。繊維形態を有するセピオライトの方がマイカよりも他の繊維と絡み合うことにより、火炎暴露による鋼板の体積膨張に追随できたためと考えられる。
焼成シリカ系無機繊維を用いたNo.1,2では、シリカ系無機繊維の脱水縮合による熱エネルギー消費効果が得られなかったためか、断熱効果は、No.3,4よりも劣っていた。
<抄紙用懸濁液の調製、断熱付与無機粒子入りシートNo.21~27の作製及び評価>
水2000ccいれた容器内に、上記原料成分を添加混合し、表2に示す組成(固形分の重量%)の抄紙用懸濁液を調製した。
成分は、未焼成シリカ系無機繊維、ガラス繊維、繊維状鉱物、有機繊維(PET繊維)、断熱付与無機繊維、無機バインダー、凝集剤(ポリアクリルアミド)の順で添加、配合した。ポリアクリルアミドは、抄紙用懸濁液のフロックの状態を確認しながら3cc~18ccの範囲で添加した。
疎水性断熱付与無機粒子I、II、IIIを用いる場合は、別途調製した親水化処理断熱付与無機粒子のスラリーとして添加した。表2には、抄紙用懸濁液における固形分に換算した量(重量%)を記載している。
親水性断熱付与無機粒子(親水性シリカ粒子)を添加する場合は、粉末をそのまま繊維含有液に添加した。
上記で調製した抄紙用懸濁液を、湿式成形機(ろ過用メッシュスクリーン#80(目開き180~200μm))に注入して、吸引脱水した。
脱水後、熱プレス機(100℃)でを用いて、10分間、加圧しながら加熱乾燥した。これにより、150mm×150mm×厚み約1.2~2.1mmのシートを得た。各抄紙用懸濁液について、3枚のサンプルシートを作製した。抄紙用懸濁液の固形分から算出される平均収率は、80%~90%であった。
作製したシートについて、上記火炎暴露試験、熱伝導率(熱流束法)の測定を行った。火炎暴露5分後の背面温度について、厚み1.6mmに換算した場合の温度(作製した3枚のシートの平均値)を表2に示す。また、火炎暴露試験後のシートの性状(クラックの有無など)を目視で観察した。結果を表2に示す。
また、熱源200℃の場合のシートの熱伝導率を、あわせて表2に示す。
参考例R2:
疎水性エアロゲル粒子(粉末)を親水化処理せずに、直接、繊維含有液に添加したところ、振盪、撹拌しても、疎水性エアロゲル粒子粉末が水層表面に浮遊して粉末層となり、繊維とエアロゲル粒子とが混合した抄紙用懸濁液を調製することができなかった。
参考例R3:
親水化処理剤として、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン縮合物を用いた。水100gに、親水化処理剤10gを添加した後、疎水性エアロゲル粒子(粉末)10gを添加し、激しく振盪することにより断熱付与無機粒子含有スラリーを得た。このエアロゲル含有スラリーを、別途調製した繊維含有液に添加すると、繊維含有液と分離し、撹拌しても均一な混合液(抄紙用懸濁液)を得ることができなかった。
Figure 0007486867000003
熱源200℃の場合の熱伝導率について、断熱付与無機粒子として親水化処理エアロゲル粒子を含有するNo.21~24、26、27のシートは、断熱付与無機粒子として親水性のナノ粒子群を含有するシートNo.25よりも優れていた。高気孔率の疎水性エアロゲル粒子がシート全体にわたって分散することで、低熱伝導率である空気に基づいて、優れた断熱性を発揮できたと考えられる。
また、No.27とNo.23との比較から、シリカ系無機繊維を主体とするシートの方が、ガラス繊維を主体とするシートよりも熱伝導率が低かった。シリカ系無機繊維の熱伝導率の方が、ガラス繊維の熱伝導率よりも低いためではないかと考えられる。
火炎暴露試験については、断熱付与無機粒子として親水化処理エアロゲル粒子を用いたシート(No.21、22、23,24、26、27参照)は、火炎暴露試験のシート背面温度について、No.25よりもが低かった。
このような断熱効果は、断熱付与無機粒子として親水化処理シリカエアロゲル粒子を用いることで得られる通常使用時(200℃未満)の断熱効果に加えて、熱暴走のように急激な温度上昇時には、水酸基を有するシリカ繊維による昇温遅延効果、エアロゲル粒子含有により、シート全体としての急激な温度上昇を抑制できたためと考えられる。
シートNo.21-27は、いずれも未焼成シリカ繊維とガラス繊維を、ガラス繊維/シリカ繊維が1/10以上でガラス繊維を含有することから、火炎暴露試験後にクラックは認められなかった。
一方、ガラス繊維/シリカ繊維の含有率が8/1以上と、ガラス繊維の含有量がシリカ繊維の含有量と比べて過大となる場合には、火炎暴露によりガラス繊維が溶融していた(No.27)。
また、ガラス繊維/シリカ繊維の含有率が1/7を超えてガラス繊維を含有する場合であっても、粘土鉱物を含有しないシートNo.23は、火炎試験後のシートが綿状化して、シート形状を保持できなかった。
No.22、26との比較から、粘土鉱物として、繊維状鉱物を用いる方が、断熱効果が高いと考えられる。かかる断熱効果は、通常使用時、火炎暴露時の双方で認められた。セピオライトは吸着水を有することから、通常使用時には、吸着水の脱水におる熱エネルギー消費効果が得られ、火炎暴露時のような高温域では、繊維状鉱物の方が、平板状鉱物よりも、シート全体としての気孔率が高くなり、高温時の開孔効果が得やすいためかもしれない。尚、No.26は、作製されたシートの硬度が低く、他のシートとくらべて強度不足のために、取り扱い性が劣る傾向にあった。
No.21、23のシートの厚み方向断面の顕微鏡写真(倍率1000倍)を、図7、図8に示す。
これらの写真から、断熱付与無機粒子が、シート全体にわたって、繊維と絡み合いながら、あるいは繊維間隙に埋設されるように存在していることがわかる。
さらに、No.21、23の火炎暴露試験後のシートの加熱面の顕微鏡写真(倍率1000倍)を、図9、図10に示す。
これらの写真から、シリカ系無機繊維及び断熱付与無機粒子、繊維状鉱物粘土(No.21の場合)が残存していることが確認できる。
<シリカ系無機繊維とガラス繊維との断熱性効果比較>
上記で作製した断熱・遮炎シートNo.23、27について、以下のようにして、700℃加熱時の断熱性試験を行った。
(1)断熱性試験I
図11に示すように、700℃に加熱したホットプレート(100mm×100mm)22上に、直径40mmの円形開口部23aが開設されたセラミック製断熱ボード(300mm×300mm×厚み15mm)23を載置し、円形開口部23aが中央にくるように、評価するシート(150mm×150mm)21を載置し、6分間保持した。
試験終了後のシートNo.23、27の加熱部分の写真を、それぞれ図12、13に示す。
両者を比べると、No.23では、シートの抄紙状態が保持されていたが、No.27では、弾性を喪失したガラス繊維が浮き上がり、加熱部分におけるシート形状の保持が困難な傾向にあった。
シートNo.23、27の加熱部分の加熱面の顕微鏡写真(100倍)を、それぞれ図14、15に示す。また、シートNo.23、27の加熱されていない側の面(背面)の顕微鏡写真(100倍)を、それぞれ図16、17に示す。
シートNo.27について、図15(加熱面)と図17(背面)とを比べると、加熱面において、繊維が溶融し、融着していた箇所が多く、且つ溶融融着部分の面積が大きいことが認められた。一方、No.23では、加熱面であっても、繊維の大部分が繊維の状態を保持していた(図14、16)。No.27は、ガラス繊維が主体であるため、700℃では、ガラス繊維の一部が溶融しはじめ、繊維形状を有しているガラス繊維であっても、弾性、強度が低下し、繊維同士の絡み合い力が低下し、シート面から浮き上がったようになったと思われる。
(2)断熱性試験II
図18に示すように、ヒータを備えたSUSプレート(100mm×100mm)22’上に、評価する断熱・遮炎シート(150mm×150mm)21’を載置し、当該シート上のヒータ対応部分に熱電対24’をセットし、プレート温度、シート温度を測定した。
測定は、プレート温度が200℃に到達後、10分間保持し、その後、ヒート温度を100℃上げて10分間保持し、続けて100℃昇温、10分間保持という昇温サイクルを500℃まで行った。このような昇温サイクル試験での温度変化の結果を図19に示す。一点鎖線はヒータ温度、実線はシートNo.23、点線はNo.27の温度変化を示している。
ヒータ温度が300℃~500℃の場合に、No.23の方が、No.27よりも3~6℃程度、低くなる傾向が認められた。シリカ系無機繊維の脱水縮合、それによる昇温遅延化と考えられる。
<付記>
本発明は、上記のような好ましい態様、実施例を基に、当業者が考え得る種々の改変された態様も、本発明に包含される。本発明の実施形態としては、例えば、以下のような形態が挙げられる。
1. 水酸基を有するシリカ系無機繊維25~70重量%;
ガラス繊維2~25質量%;
繊維状鉱物5~40重量%;
バインダー3~20重量%;
を含む厚み3mm以下の断熱・遮炎シート。
2. 水酸基を有するシリカ系無機繊維25~70重量%;
ガラス繊維2~25質量%;
繊維状鉱物5~40重量%;
バインダー3~20重量%;及び
断熱付与無機粒子0重量%超~45重量%
を含む厚み3mm以下の断熱・遮炎シートであって、
前記断熱付与無機粒子は、気孔率80%以上、平均粒径5~200μmの疎水性エアロゲル粒子の表面を親水化処理した親水化処理エアロゲル粒子を含んでいる断熱・遮炎シート。
3. 前記シリカ系無機繊維と前記ガラス繊維の含有重量比(シリカ系無機繊維/ガラス繊維)は、30/1~1.5/1である付記1又は2に記載の断熱・遮炎シート。
4. 断熱・遮炎シートの厚みは、0.5mm超である付記1~3のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
5. 前記疎水性エアロゲル粒子に用いた疎水性エアロゲルの表面の水に対する濡れ角度が100°以上である付記2~4のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
6 前記親水化処理エアロゲル粒子は、前記疎水性エアロゲル粒子の表面が、有機溶剤、界面活性剤、又は親水性高分子と接触処理されたものである付記5に記載の断熱・遮炎シート。
7. 前記疎水性エアロゲル粒子は、気孔率90%以上、平均粒子径5~200μmの、表面が疎水性のシリカエアロゲル粒子の表面の少なくとも一部が親水性高分子で被覆されたものである付記6に記載の断熱・遮炎シート。
8.前記疎水性エアロゲル粒子の表面積は300~1000m/gである付記5~7のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
9.前記疎水性エアロゲル粒子の粒子密度は、100~200g/cmである付記5~8のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
10. 前記親水性高分子は、複数の水酸基を有する高分子である付記5~9のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
11. 前記親水性高分子は、水溶性高分子である付記10に記載の断熱・遮炎シート。
12. 前記親水化処理エアロゲル粒子における前記疎水性エアロゲル粒子に対する前記親水性高分子量は、親水性高分子/疎水性エアロゲル粒子(重量比)で1/2~1/100である付記10又は11かに記載の断熱・遮炎シート。
13. 前記断熱付与無機粒子は、平均一次粒子径が1nm~50nmの表面親水性のナノ粒子を含んでいる付記2~12のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
14. 前記繊維状鉱物は、セピオライト、パリゴルスカイト、チタン酸カリウムウィスカー、及びワラストナイトから選択される少なくとも1種である付記1~13のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
15. 前記繊維状鉱物は、チタン酸カリウムウィスカー又はワラストナイトである付記1~13のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
16. 前記繊維状鉱物は、層状ケイ酸塩鉱物である付記1~13のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
17. 前記ケイ酸塩鉱物は、α型セピオライト又はβ型セピオライトである付記16に記載の断熱・遮炎シート。
18. 前記バインダーは、熱可塑性樹脂繊維を含む付記1~17のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
19. 前記バインダーは、有機系凝集剤を含む付記1~18のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
20. 前記バインダーは、無機バインダーを含む付記1~19のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
21. 前記無機バインダーは、コロイダルシリカを含む付記20に記載の断熱・遮炎シート。
22. 前記無機バインダーは、無機金属塩を含む付記20又は21に記載の断熱・遮炎シート。
23. かさ密度が100~400kg/mである付記1~22のいずれかに記載の断熱・遮炎シート。
24. 親水化処理剤含有水溶液に、表面が疎水性で、気孔率80%以上、平均粒径5~200μmのシリカエアロゲル粒子が分散している親水化処理エアロゲルスラリーを調製する工程;
水酸基を有するシリカ系無機繊維、ガラス繊維、繊維状鉱物、及びバインダーを含有する水性分散液に、前記親水化処理エアロゲルスラリーを添加混合して、前記シリカ系無機繊維25~70重量%、前記ガラス繊維2~25質量%、前記繊維状鉱物5~40重量%、前記バインダー3~20重量%、及び親水化処理エアロゲル0超~45重量%含有する懸濁液を調製する工程;及び
前記懸濁液を湿式抄造して、厚み3mm未満のシートを得る工程
を含む断熱・遮炎シートの製造方法。
25. 付記2~23のいずれかに記載の断熱・遮炎シートの製造方法であって、
水溶性高分子の水溶液に、表面が疎水性で、気孔率80%以上、平均粒径5~200μmのシリカエアロゲル粒子を分散させた親水化処理エアロゲルスラリーを調製する工程;
水酸基を有するシリカ系無機繊維、ガラス繊維、繊維状鉱物、及び熱可塑性樹脂繊維を含むバインダーを含有する水性分散液に、前記親水化処理エアロゲルスラリーを添加混合する工程;
得られた混合液を湿式抄造後、加熱・加圧して、厚み3mm未満のシートを得る工程
を含む断熱・遮炎シートの製造方法。
26 得られた混合液又は懸濁液に、さらに、無機バインダー及び/又は有機系凝集剤を添加する工程を含む付記24又は25に記載の断熱・遮炎シートの製造方法。
27. 前記親水化処理エアロゲルスラリー中の界面活性剤の含有率は、10重量%以下である付記24~26のいずれかに記載の断熱・遮炎シートの製造方法。
28. 前記親水化処理エアロゲルスラリー中の有機溶剤の含有率は、10重量%以下である付記24~27のいずれかに記載の断熱・遮炎シートの製造方法。
29. 前記水性分散液の分散媒は水である付記1~28のいずれかに記載の断熱・遮炎シートの製造方法。
30. 筐体内に、電池セルが直列又は並列に接続して収納されている組電池又は組電池モジュールにおいて、前記電池セル間に付記1~23のいずれか1項に記載のシートが介在されている組電池又は組電池モジュール。
31. 筐体内に、電池セルが直列又は並列に接続して収納されている組電池又は組電池モジュールにおいて、前記電池セルが接触している前記筐体の内壁面に付記1~23のいずれか1項に記載のシートが貼着されている組電池又は組電池モジュール。
本発明の断熱・遮炎シートは、軽量薄型の紙様シートであることから、リチウムイオン電池を複数用いた組電池、特にセルが複数積層された組電池を筐体内にパッケージした電池モジュールにおいて、個々のセルの通常使用時の温度上昇が隣接するセルに伝播しないように断熱するため、更に、あるセルが何らかの原因で熱暴走した場合、電池モジュール内の他のセルの熱暴走を引き起こさないように、断熱、遮炎するために、個々のセル間に介在させて用いることができる。
9、10 断熱・遮炎シート
8、11、11’ 電池セル
12 筐体

Claims (17)

  1. 水酸基を有するシリカ系無機繊維25~70重量%;
    ガラス繊維2~25質量%;
    繊維状鉱物5~40重量%;
    バインダー3~20重量%;
    断熱付与無機粒子0~45重量%
    を含む厚み3mm以下の断熱・遮炎シートであって、
    前記断熱付与無機粒子は、気孔率80%以上、平均粒径5~200μmの疎水性エアロゲル粒子の表面を親水化処理した親水化処理エアロゲル粒子を含んでいる断熱・遮炎シート。
  2. 前記シリカ系無機繊維と前記ガラス繊維の含有重量比(シリカ系無機繊維/ガラス繊維)は、30/1~1.5/1である請求項1に記載の断熱・遮炎シート。
  3. 前記親水化処理エアロゲル粒子は、疎水性エアロゲル粒子の表面を、有機溶剤、界面活性剤、又は親水性高分子と接触させる処理が行われたものである請求項1に記載の断熱・遮炎シート。
  4. 前記親水化処理エアロゲル粒子は、前記疎水性エアロゲル粒子の少なくとも一部が親水性高分子で被覆されている請求項3に記載の断熱・遮炎シート。
  5. 前記親水化処理エアロゲル粒子における前記疎水性エアロゲル粒子に対する前記親水性高分子量は、親水性高分子/疎水性エアロゲル粒子(重量比)で1/2~1/100である請求項1に記載の断熱・遮炎シート。
  6. 前記繊維状鉱物は、セピオライト、パリゴルスカイト、チタン酸カリウムウィスカー、ワラストナイトから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の断熱・遮炎シート。
  7. 前記バインダーは、熱可塑性樹脂繊維を含む請求項1に記載の断熱・遮炎シート。
  8. 前記バインダーは、有機系凝集剤を含む請求項1に記載の断熱・遮炎シート。
  9. 前記バインダーは、無機バインダーを含む請求項1に記載の断熱・遮炎シート。
  10. 前記無機バインダーは、コロイダルシリカ及び/又は無機金属塩を含む請求項9に記載の断熱・遮炎シート。
  11. かさ密度が100~400kg/mである請求項1に記載の断熱・遮炎シート。
  12. 親水性処理剤含有水溶液に、表面が疎水性で、気孔率80%以上、平均粒径5~200μmのシリカエアロゲル粒子が分散している親水化処理エアロゲルスラリーを調製する工程:
    水酸基を有するシリカ系無機繊維、ガラス繊維、繊維状鉱物、及びバインダーを含有する水性分散液に、前記親水化処理エアロゲルスラリーを添加混合して、前記シリカ系無機繊維25~70重量%、前記ガラス繊維2~25質量%、繊維状鉱物5~40重量%、バインダー3~20重量%、及び親水化処理エアロゲル0超~45重量%を含有する懸濁液を調製する工程;
    前記懸濁液を湿式抄造して、厚み3mm未満のシートを得る工程
    を含む断熱・遮炎シートの製造方法。
  13. 前記断熱付与無機粒子を含む請求項に記載の断熱・遮炎シートの製造方法であって、
    水溶性高分子の水溶液に、表面が疎水性で、気孔率80%以上、平均粒径5~200μmのシリカエアロゲル粒子を分散させた親水化処理エアロゲルスラリーを調製する工程:
    水酸基を有するシリカ系無機繊維、ガラス繊維、繊維状鉱物、及び熱可塑性樹脂繊維を含むバインダーを含有する水性分散液に、前記親水化処理エアロゲルスラリーを添加混合する工程;
    得られた混合液を湿式抄造後、加熱・加圧して、厚み3mm未満のシートを得る工程
    を含む断熱・遮炎シートの製造方法。
  14. 前記親水化処理エアロゲルスラリー中の界面活性剤の含有率は、10重量%以下である請求項12又は13に記載の断熱・遮炎シートの製造方法。
  15. 前記親水化処理エアロゲルスラリー中の有機溶剤の含有率は、10重量%以下である請求項12又は13に記載の断熱・遮炎シートの製造方法。
  16. 筐体内に、電池セルが直列又は並列に接続して収納されている組電池又は組電池モジュールにおいて、前記電池セル間に請求項1~11のいずれか1項に記載のシートが介在されている組電池又は組電池モジュール。
  17. 筐体内に、電池セルが直列又は並列に接続して収納されている組電池又は組電池モジュールにおいて、前記電池セルが接触している前記筐体の内壁面に請求項1~11のいずれか1項に記載のシートが貼着されている組電池又は組電池モジュール。
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