いくつかの実施形態の目的は、今後の乗客の行先を予測し一群のエレベータシステム(GES:group elevator system)内のエレベータかごをスケジューリングするためのシステムおよび方法を提供することであり、より具体的には、建築物の任意のフロアに今後の乗客が到着する時間に関する予測情報を決定することである。さらに、いくつかの実施形態の目的は、予測情報に基づいて一群のエレベータかごを含むGESのためのスケジュールを決定することであり、このスケジュールは、すべての乗客の平均待ち時間(AWT)を最小化することによってパフォーマンス測定基準を最適化する。
いくつかの実施形態は、今後のエレベータ要求の発生および今後のエレベータ要求の発生時間の予測の問題を、拡張行先予測問題として定式化する。行先予測問題は、乗客の移動経路の最終的な行先を、この移動経路の部分的な観察に基づいて推定することを目的とする。そのため、行先予測問題を使用することにより、ある人物の最終的な行先を、その人物の現在の動きに基づいて推定し、最終的な行先が、エレベータ呼出ボタンの近傍等のエレベータ要求エリア内である場合、そうでなければエレベータ要求に関連付けられる場合、この人物を今後の乗客とみなすことができる。しかしながら、正確な行先予測は、周知のように困難な課題である。加えて、ある人物がエレベータサービスを要求するか否かを予測するだけでは不十分である、すなわち、そのような今後のエレベータ要求の時間を推定することも必要である。
そのため、拡張行先予測問題は、行先予測問題を、移動経路の最終的な行先だけでなく最終的な行先に到着する時間を予測することにより、拡張する。加えて、拡張行先予測問題は、ある人物の行先がエレベータ要求に関連付けられるか否かの予測を、行先のさまざまな可能性の単なる予測に置き換えるが、これは、以下で説明するように、計算上より単純であり、拡張行先予測の設計および訓練にとって有益である。
さらに、いくつかの実施形態は、拡張行先予測問題を解くために、モデルベースのまたは深層学習ベースのアプローチに基づいている。いくつかの実施形態は、エレベータのスケジューリングという必要性に対し、人工知能(AI)ベースで行先を予測するのは困難である、という認識に基づいている。より具体的には、典型的なオフィス環境における人物(すなわち乗客)は、移動および行先選択の自由度が大きく、その人物の未完の移動経路は、さまざまな最終的な行先に至る可能性があるので、AIベースの行先予測によって乗客の行先を予測するように適合化することは困難である。加えて、オフィス環境における最終的な行先という概念は誤解を招く、すなわち、どの最終的な行先も中間の行先である可能性があり、その逆の可能性もある。このように、部分的な移動経路の最終的な行先がエレベータ要求エリアか否かを予測するのは難しい。加えて、到着時間の分布を、たとえばガウス・ベルヌーイ分布において、ニューラルネットワークによって予測することは難しい。なぜなら、ニューラルネットワークは、必要な種類の確率分布をその連続出力として容易に提供することができないからである。
そのために、いくつかの実施形態は、行先予測の結果を多項分布の形態で出力するようにニューラルネットワークを訓練する、という認識に基づいている。いくつかの実装形態において、この多項式は2次元であり、一方の次元で行先を定め他方の次元で到着時間を定める。2次元多項分布は行列として可視化することができ、たとえば、行先の名称を列または行とし、時間間隔を行または列とし、行列の値が、対応する行先に対応する時間間隔で到着する確率を定める。時間間隔は、この間隔の始まり、中間、または終わりの時間のインスタンスによって示すことができる。さらに、行列内のすべての値の和は、多項分布の確率の性質を反映する「1」に等しい。これを実現するために、いくつかの実施形態は、行先を網羅するリストを設定することにより、人物の動きが検出された場合にこの人物の最終的な行先が設定した行先リストの中にあることを保証する。より具体的には、エレベータシステムによってサービスされるエリア(たとえばオフィスビルのフロア)を位置のテッセレーションに量子化し、これらの位置を本明細書ではテッセレーション要素と呼ぶ。キッチン、廊下、ミーティングルームなどのような意味論的な行先とは異なり、そのような量子化は、行先を網羅したリストと、各種モーションセンシング法とのより適切な提携とを保証する。
本明細書で使用されるテッセレーションは、密にフィットさせて空隙または重なりのないパターンにした形状の配列である。形状の例は、正方形、矩形、多角形などを含む。テッセレーションが正方形の形状を使用する場合、そのようなテッセレーションは、構造格子(regular grid)または単に格子と呼ぶこともできる。テッセレーションが、寸法が異なる矩形形状を使用する場合、そのようなテッセレーションは、非構造格子(irregular grid)と呼ぶこともできる。異なる実施形態において、テッセレーション要素は、エレベータシステムによってサービスされるエリアのレイアウトにより適切にフィットするように、同一のまたは異なる形状を有することができる。
いくつかの実施形態において、フロア上の乗客の検知および追跡は、建築物内において数メートルごとに配置された無線アンテナによって実現される。したがって、「位置N」または「テッセレーション要素N」は、乗客がアンテナ番号Nによって検出されることを示す。複数のアンテナが乗客を検出する場合、検知アンテナの番号を、アンテナの固定されたタイブレーク順序によって判断することができる。いくつかの他の実施形態において、人物は、カメラセンサ等の他のセンサによって検出される。
加えて、時間次元も、予測のための期間(予測の期間とも呼ばれる)を定める一組の時間間隔になるように量子化される。量子化の期間および粒度は、計算能力によって決まる、および/または用途の要件によって定められる可能性がある。そのため、予測の期間は設定可能である。たとえば、いくつかの実施形態において、行先予測は次の10秒間に対するものであり、したがって、多項分布において量子化された期間は10秒である。
いくつかの実施形態において、予測推定を多項式の形態で出力するために予測ニューラルネットワークを訓練することにはいくつかの利点がある。第1に、多項式は、エレベータ要求エリアに到着する確率の個別の予測を、任意の行先への到着の共同予測に置き換え、この場合、エレベータ要求エリアは行先のうちの1つである。よって、エレベータ要求エリアに到着する確率は、当然、2つの条件が満たされる場合に、他の行先との比較で求められる。2つの条件は、行先のリストが網羅的であることと、多項式内のすべての値の和が「1」に等しいこととを含む。第1の要件は空間量子化によって満たされ、第2の要件はニューラルネットワークの訓練中に実現される。このようにして、エレベータ要求エリアへの到着の確率の拡張行先予測は単純化される。第2に、多項式の時間次元は、既存のシステムにおいて(たとえばガウス・ベルヌーイ分布において)必要とされる、到着時間の連続出力の必要性を排除する。その理由は、異なる時間インスタンスについて求められたエレベータ要求エリアについての異なる値が、エレベータ要求エリアの値によって定められる対応する確率での到着時間の連続分布に対するサンプルを表すことにある。実際、到着時間の確率分布は、異なる時間インスタンスにおけるエレベータ要求エリアへの到着の確率の値を内挿することによって導き出すことができる。しかしながら、異なる実施形態は、確率分布を構築することなく異なる時間インスタンスにおける到着時間の値を使用するように実現される。これは好都合である。なぜなら、そのような実装形態は、拡張行先予測を、どの特定種類の分布にも限定しないからである。
さらに、多項分布の時間次元は、行先予測の対象期間を定めることができる。一実施形態において、この期間は人物がエレベータに到達する最大期間に対応する。別の実施形態において、そのような期間はスケジューラによって決定される。このことは、乗客がエレベータ要求エリアに到着するか否かおよびその到着時間の予測を、乗客が次の予測期間内においてどこに到着するかの予測に置き換えることを可能にするので、好都合である。問題のそのような再定式化は、AIベースの拡張行先予測推定器の訓練を単純化する。
いくつかの実施形態において、履歴移動経路データを利用することにより、ニューラルネットワークモデルを訓練し、潜在的な今後の乗客の行先および到着時間を、乗客の部分的な移動経路に従って予測することができる。現在の時間における任意のフロア上のエレベータかごについてのスケジューリングタスクにおいて考慮される、全体の到着ストリームは、(到着してサービスを要求した)現在の乗客の到着と、今後の乗客の予測される到着とを含み、後者を、現在の到着ストリームの連続集合と呼ぶ。
いくつかの実施形態において、一群のエレベータは、連続集合を使用して現在および今後のサービス要求を考慮することによってスケジューリングされる。そのような連続集合は、シミュレーション(たとえばモンテカルロシミュレーション)の実行に基づいて取得される。各連続集合は、現在の要求と、今後の要求の組み合わせとを含む。個々に、各連続集合は、決定論的であり、その理由は、現在の要求および今後の要求の双方が実際の要求とみなされることにある。しかしながら、集合的に、異なる連続集合における異なる要求の異なる組み合わせにより、いくつかの実施形態は、今後の要求の確率的性質を捕えることができる。
そのため、いくつかの実施形態は、多項式におけるすべての行先が、エレベータによってサービスされるエリアに関連付けられる訳ではない、という認識に基づいている。したがって、そのような実施形態において、多項式は、一群のエレベータによってサービスされるエリアに関連する行先に基づいてフィルタリングされる。このフィルタリングに基づいて、連続集合を、エレベータによってサービスされるエリアに関連する行先について正確な連続集合が得られるように、エレベータによってサービスされるエリアに関連付けられる行先に基づいて、行先予測部により生成された多項式からサンプルを取り出すことにより、取得する。
いくつかの実施形態において、行先予測部を利用することにより、乗客の今後の到着を予測するための多項式を決定する。そのような行先予測部は、深層学習ベースのアプローチ(ディープニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network))に基づいて実現される。深層学習ベースの方法は、行先/移動経路予測等の非言語用途に適合させることが可能である。DNNの例は、回帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)、長・短期記憶(LSTM:Long Short-Term Memory)ベースのニューラルネットワーク、Bi-LSTMベースのニューラルネットワーク、トランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワークを含むが、これらに限定される訳ではない。
いくつかの実施形態は、トランスフォーマアーキテクチャが拡張行先予測にとって有利になり得る、という認識に基づいている。DNNのトランスフォーマアーキテクチャは、言語翻訳、自然言語理解、および文書作成等のさまざまな音声関連用途に利用される。トランスフォーマアーキテクチャは、RNNモデルに存在するどの回帰型セルユニットも有しておらず、代わりに、要素を連続して関連させるために、より有効なアテンションモジュールに依拠する。いくつかの実施形態は、拡張行先予測を、トランスフォーマアーキテクチャのマッピングという性質により、部分的な移動経路の転写とみなすことができ、そのため、トランスフォーマアーキテクチャは拡張行先予測タスクに適用可能である、という認識に基づいている。したがって、いくつかの実施形態において、行先予測部は、トランスフォーマベースのニューラルネットワークアーキテクチャを使用する。検知された移動経路データの位置成分およびタイミング成分の双方が離散化される。連続集合は、エレベータ乗り場に対し、予測された行先をフィルタリングすることによって形成される。到着時間の不確実性に対処するために、モンテカルロシミュレーションを適用して、ニューラルネットにより生成された多項分布からサンプルを取り出すことにより、複数の連続集合を生成する。複数の連続集合の形態で、現在のおよび潜在的な今後の乗客の完全な到着ストリームが取得されると、エレベータを制御するためのスケジュールを、たとえば米国特許第9,834,405号に記載された方法を用いる、すなわち、今後の乗客の到着に関する不確定情報を用いて一群のエレベータシステムにおいてエレベータかごをスケジューリングする方法およびシステムを用いることにより、決定する。
したがって、一実施形態は、一群のエレベータに属するエレベータの動きを制御するための制御システムを開示し、制御システムは、一群のエレベータによるサービスに対する乗客からの現在の要求を受け付けるように構成された第1の入力インターフェイスと、一群のエレベータによってサービスされるエリアを含むフロアの上で移動している人物の動きの部分的な移動経路を受けるように構成された第2の入力インターフェイスとを備える。制御システムはさらにプロセッサを備え、プロセッサは、人物の動きの部分的な移動経路を受けて、部分的な移動経路に従う動きを有する人物の拡張行先予測のために訓練されたニューラルネットワークを実行することにより、人物の拡張行先予測の多項式を生成するように構成され、多項式は少なくとも2つの次元を有し、少なくとも2つの次元は、人物の行先の第1の次元と、第1の次元の行先に人物が到着する時間間隔の第2の次元とを含み、多項式の値の和は1になるように正規化される。さらに、フロアは、第1の次元の行先を形成するテッセレーション要素に量子化され、少なくとも1つのテッセレーション要素が、一群のエレベータによってサービスされるエリアに関連付けられる。プロセッサはさらに、乗客からの現在の要求と、多項式において与えられた時間インスタンスにおけるエレベータサービスに対する人物の今後の要求とに対応するために、一群のエレベータのスケジュールを最適化するように構成され、多項式における対応する値の確率は、一群のエレベータによってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素について求められたものであり、プロセッサはさらに、スケジュールに従って一群のエレベータを制御するように構成される。
さらに、第2の次元の時間間隔は、予測の期間を量子化し、予測の期間は、制御システムが人物の今後の要求について考慮する最大時間である。
別の実施形態において、プロセッサはさらに、要求の時間の複数の組み合わせを生成するために、一群のエレベータによってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素について求められた多項式からサンプルを取り出すように構成され、要求の時間の複数の組み合わせにおける特定の時間インスタンスの発生の頻度は、多項式における、特定の時間間隔と、一群のエレベータによってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素との交点の値を有する、特定の時間間隔における、エレベータサービスに対する今後の要求の確率である。要求の実際の時間は、多項分布の時間間隔の始点または中間点であると想定される。プロセッサはさらに、要求の時間の複数の組み合わせの各々を、現在の要求と組み合わせることにより、複数の連続集合を生成し、すべての連続集合の組み合わせにおける少なくとも一部の乗客について、パフォーマンスの測定基準を最適化するために、一群のエレベータのスケジュールを決定するように、構成される。
別の実施形態において、部分的な移動経路は、位置情報のみを含む移動経路データを含み、各移動経路は、テッセレーションインデックスのシーケンスによって表され、テッセレーションインデックスは、位置座標の範囲を離散化することによって得られ、位置座標の範囲は、テッセレーション要素に関連付けられる経度および緯度を表す。
別の実施形態において、部分的な移動経路は、位置情報とタイミング情報との双方を含む移動経路データを含み、各移動経路は、テッセレーションインデックスのタプルのシーケンスによって表され、各タプルは、位置座標の範囲および予測の期間を離散化することによって得られるテッセレーションインデックスを含む。
別の実施形態において、移動経路のタイミング情報は、移動経路の出発タイムスタンプに対する経過時間としての相対時間を考慮することによって抽出される。
別の実施形態において、各移動経路はシンボルのシーケンスによって表され、各シンボルは、位置情報およびタイミング情報を示すテッセレーションインデックスのタプルからマッピングされる。
別の実施形態において、連続集合は、一群のエレベータによってサービスされるエリアのみを考慮することによる行先のフィルタリングを通して形成される。
別の実施形態において、ニューラルネットワークはトランスフォーマアーキテクチャを有し、トランスフォーマアーキテクチャは、並列化を可能にする、位置符号化およびアテンションメカニズムを使用する。
もう1つの実施形態は、一群のエレベータに属するエレベータの動きを制御する方法を開示し、この方法は、一群のエレベータによるサービスに対する乗客からの現在の要求を得るステップと、一群のエレベータによってサービスされるエリアを含むフロアの上で移動している人物の動きの部分的な移動経路を得るステップとを含む。この方法はさらに、人物の動きの部分的な移動経路を受けて、部分的な移動経路に従う動きを有する人物の拡張行先予測のために訓練されたニューラルネットワークを実行することにより、人物の拡張行先予測の多項式を生成するステップを含み、多項式は少なくとも2つの次元を有し、少なくとも2つの次元は、人物の行先の第1の次元と、第1の次元の行先に人物が到着する時間間隔の第2の次元とを含む。さらに、フロアは、第1の次元の行先を形成するテッセレーション要素に量子化され、少なくとも1つのテッセレーション要素が、一群のエレベータによってサービスされるエリアに関連付けられる。この方法はさらに、乗客からの現在の要求と、多項式において与えられた時間間隔におけるエレベータサービスに対する人物の今後の要求とに対応するために、一群のエレベータのスケジュールを最適化するステップを含み、多項式における対応する値の確率は、一群のエレベータによってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素について求められたものであり、この方法はさらに、スケジュールに従って一群のエレベータを制御するステップを含む。
別の実施形態において、この方法はさらに、要求の時間の複数の組み合わせを生成するために、一群のエレベータによってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素について求められた多項式からサンプルを取り出すことによって到着プロセスのモンテカルロシミュレーションを実行するステップを含み、要求の時間の複数の組み合わせにおける特定の時間間隔の発生の頻度は、多項式における、特定の時間間隔と、一群のエレベータによってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素との交点の値を有する、特定の時間間隔での、エレベータサービスに対する今後の要求の確率であり、この方法はさらに要求の時間の複数の組み合わせの各々を、現在の要求と組み合わせることにより、複数の連続集合を生成するステップと、すべての連続集合の組み合わせにおける少なくとも一部の乗客について、パフォーマンスの測定基準を最適化するために、一群のエレベータのスケジュールを決定するステップとを含む。
ここに開示する実施形態について、添付の図面を参照しながらさらに説明する。示されている図面は、必ずしも一定の縮尺に従っている訳ではなく、代わりに、全体として、ここに開示する実施形態の原理の説明にあたり強調を加えている。
上記図面はここに開示する実施形態を示しているが、本明細書で述べるようにその他の実施形態も意図されている。本開示は、説明のための実施形態を、限定のためではなく代表として示す。当業者は、ここに開示する実施形態の原理の範囲および精神に含まれる数多くの他の変形および実施形態を考案することができる。
詳細な説明
以下の記載では、説明のために、本開示が十分に理解されるよう多数の具体的な詳細事項を述べる。しかしながら、本開示はこれらの具体的な詳細事項なしで実施し得ることが当業者には明らかであろう。その他の場合では、本開示を不明瞭にするのを避けることだけのために、装置および方法をブロック図の形式で示す。
本明細書および請求項で使用される、「たとえば」、「例として」、および「~等の」という用語、ならびに「備える」、「有する」、「含む」という動詞およびこれらの他の動詞形態の各々は、1つ以上の構成要素またはその他のアイテムの列挙とともに使用される場合、その列挙がさらに他の構成要素またはアイテムを除外するとみなされてはならないことを意味する、オープンエンドと解釈されねばならない。「~に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。さらに、本明細書で使用される文体および術語は、説明のためのものであって限定するものとみなされてはならないことが理解されねばならない。本明細書で使用されるいかなる見出しも、便宜的なものにすぎず、法的または限定効果を持つものではない。
本開示は、先に説明したGES問題に対する解決策を提供するために制御システムを開示する。GES制御システムは、パフォーマンス測定基準たとえば乗客の平均待ち時間(AWT)が最小化されるように、スケジューラを使用してエレベータかごを乗客に割り当てる。現在、多くのスケジューラは、認識されている要求(または現在存在している要求)および認識されている行先のみに対してサービスすることによってAWTを最適化する。これらの要求は、典型的にはホール呼出およびかご呼出ボタンを使用して乗客からGESシステムに直接伝えられてきた。しかしながら、スケジューラがエレベータかごのスケジュールをエレベータサービスに対する今後の要求を考慮して決定することができれば好都合であろう。AWTは、今後の要求に関連付けられる情報を考慮することによって著しく最小化することができる。
たとえば、建築物の6階の第1の乗客が一群のエレベータに対してこの建築物の1階に移動するサービスを要求する。第1の乗客にサービスを提供するために割り当てられたエレベータかごは現在15階にあるものとする。次の5秒で10階の第2の乗客も1階に移動するサービスを要求するものとする。この場合、スケジューラは、今後の乗客すなわち第2の乗客の到着に関連付けられる情報を事前に判断し、今後の乗客すなわち第2の乗客が1階に移動するサービスを要求するまで15階のエレベータかごが5秒間待機するように、スケジュールを決定してもよい。エレベータかごは、第2の乗客からの要求を受けて、最初に10階の第2の乗客をピックアップし次に6階の第1の乗客をピックアップすることで、どちらの乗客も一緒に1階に到着できるようにしてもよい。このように、今後の到着に関するいくらかの情報を持つことで、乗客のAWTをさらに最適化することが望ましい。
しかしながら、スケジューリングのために今後の到着の情報を使用することに関連付けられる問題がある。今後の乗客によるサービス要求の確率およびサービス要求が起こり得る時間の確率を予測することは難しい。さらに、たとえこれらの確率が何らかの形で決定または予測されたとしても、これらの確率をスケジューリングを目的として使用することは依然として難しい。
これらの問題に対処するために、スケジューラの中には、認識されているサービス(すなわち既存のまたは現在のサービス要求)、認識されている行先、および今後の乗客の到着の確率を考慮したアルゴリズムを使用するものがある。これらのスケジューラは、今後の乗客の到着を、先ず建築物の任意のフロアにおけるそのような到着の確率分布の集合を生成することによって説明し、この場合、確率分布の集合は、今後の乗客の到着情報を特定する確率変数(すなわち今後の乗客によるサービス要求の確率およびサービス要求が起こり得る時間の確率)によって特徴付けられる。
いくつかの実施形態は、スケジューラは確率分布の集合に基づいて到着情報を決定できる、という理解に基づいており、確率分布の集合(すなわち今後の乗客の到着情報)は、何らかの周知の形態の分布、たとえばガウス・ベルヌーイ確率分布に従うと仮定される。今後の乗客の到着が仮定されるので、確率分布の集合は正確ではない。結果として、スケジューラは、現在および今後の乗客に対してAWTを有効に最適化することができない場合がある。
そのような問題に対処するために、本開示は、今後の到着の確率分布の統計的推定に代わる制御システムにより、乗客の今後の到着を予測することを提案する。
図1Aは、本開示のある実施形態に係る、一群のエレベータ109の動きを制御するための制御システム101の環境を示す。
制御システム101は、潜在的な今後の乗客の到着情報を乗客の移動経路に基づいて予測することができる。予測された到着情報を用いることにより、一群のエレベータ109に属するエレベータかご(かご125および127等)が、(図1Aには示されていない)建築物内の一組のフロア129a、129b、129c、129d、129e、および129f(一組のフロア129a~129fとも呼ぶ)のうちの所望のフロアに向けて乗客にサービスするスケジュール(スケジュール107)を決定する。
そのために、制御システム101は、一群のエレベータ109が提供するサービスに対する1人以上の乗客からの1つ以上の現在の乗客の要求119を受け付けるとともに、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアを含むフロア(たとえば一組のフロア129a~129fのうちのあるフロア)の上で移動している1人以上の人物(すなわち1人以上の乗客)の各々の動きの部分的な移動経路113を受けることができる。部分的な移動経路113は、一組のフロア129a~129fのうちの任意のフロアにおける潜在的な今後の乗客115の移動に関連付けられるデータを含み得る。制御システム101は、センサ117を用いることにより、潜在的な今後の乗客115の部分的な移動経路113を求めるために、潜在的な今後の乗客115の移動を捕捉することができ、部分的な移動経路の各々は未完の可能性がありその最終的な行先はこれから予測される。
さらに、制御システム101は、部分的な移動経路113をニューラルネットワーク103への入力として利用することができ、ニューラルネットワークは、潜在的な今後の乗客の到着情報を多項式111の形態の出力として予測することができ、到着情報は、可能性があるすべての行先と、対応する時間インスタンスとを含み得る。
多項式111は2次元エンティティであり、一方の次元は行先(たとえばdest1、dest2、およびdest3)に対応し、他方の次元は到着時間(たとえばt1およびt2)に対応する。特に、2次元多項分布は、行先の名称を列または行とし時間のインスタンスを行または列とする行列であってもよく、行列の値は、対応する行先に対応する時間間隔で到着する確率を定義する。第1の次元の行先は、一組のフロア129a~129fのうちの各フロアをテッセレーション要素に量子化することによって得られる。行先はフロア(たとえば129a)の量子化によって得られるので、行先はこのフロア上の異なる場所に対応し得る。たとえば、行先1はカフェテリアであってもよく、行先2はサービス要求エリアであってもよく、行先3はフロア上に位置するキャビンであってもよい。同時に、時間次元も、予測の対象期間を定める一組の時間間隔(たとえばt1およびt2)に量子化される。
よって、部分的な移動経路113に従って動く人物の、各時間間隔での異なる行先についての、拡張行先予測が、ニューラルネットワーク103によって実行される。さらに、行列内のすべての値の和は、多項分布の確率の性質を反映する「1」に等しい。例として、多項式111内の値の和は、0.03+0.01+0.6+0.02+0.04+0.3=1である。これにより、ニューラルネットワーク103は、乗客が、特定の行先すなわちエレベータ要求エリアに到着する確率を、他の行先との比較において求めることができる。このようにして、正確な行先予測が実行される。
いくつかの実施形態において、ニューラルネットワーク103は、対象期間と量子化値を利用することにより、異なる時間間隔における乗客の到着を判断するように構成されてもよい。たとえば、予測の対象期間が「5秒」の場合、量子化は「1秒」に等しい。そうすると、多項式111に従って、ニューラルネットワーク103は、今後の乗客の到着が、5つの時間間隔(たとえばt1、t2、t3、t4、およびt5)に関連付けられると予測することができる。したがって、特定の行先に到着する確率は、すべての時間間隔についての行先の値の和に等しい。さらに、制御システム101は、そのような情報を利用することにより、スケジュール107を決定して一群のエレベータ109を制御する。
より具体的には、制御システム101のニューラルネットワーク103は、部分的な移動経路113を受けると、1人以上の人物について拡張行先予測の多項式111を生成することができる。多項式111は、人物の行先の第1の次元と、各人物が第1の次元の行先に到着する時間間隔の第2の次元とを含む、少なくとも2つの次元を有し得る。一組のフロア129a~129fのうちの各フロアは、各フロアに対応する第1の次元の行先を形成するテッセレーション要素に量子化することができる。多項式111はフロア全体(たとえばフロア)129aについて決定することができ、各テッセレーション要素はこのフロアの異なるエリアに関連付けることができる。異なるエリアのうちの少なくとも1つのエリアは一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに対応し、多項式111の対応する値の確率は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素ごとに求めることができる。多項式111における行先のリストは網羅的なものであり、多項式における値の和は「1」に等しく、このことは、フロア(たとえば129a)上で動き回っている人物の位置を、行先のリストのうちの少なくとも1つの行先に常に特定できることを保証する。
さらに、いくつかの実施形態は、サービスについての1人以上の乗客のAWTを、現在エレベータサービスを要求済の1人以上の乗客と、多項式111において与えられた時間インスタンスにおけるエレベータサービスについての1人以上の乗客(1人以上の未対応の乗客とも呼ばれる)とに関連付けられる情報に基づいて、最適化し得る、という認識に基づいており、多項式111における対応する値の確率は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素について求められたものである。現在の乗客からのそのような要求は、現在の乗客の要求119とも呼ばれる。さらに、エレベータかご(たとえばかご125およびかご127)によってピックアップされていない1人以上の未対応の乗客は、既存の未対応の乗客121と呼ばれる。したがって、制御システム101は、すべての乗客のAWTが短縮されるように、未対応の要客を含む乗客すべてのスケジュールを決定することが要求される。
そのために、制御システム101は、すべての乗客のAWT等の1つ以上のパフォーマンス測定基準が最適化されるように、一群のエレベータ109によってサービスされるスケジュール107を決定するスケジューラ105を使用する。スケジューラ105は、現在の乗客の要求119の情報と既存の未対応の乗客121の情報とを、潜在的な今後の乗客の予測された到着情報(すなわち多項式111)とともに取得して、一群のエレベータ109に結合されたコントローラ123のスケジュール107を決定する。
かご125およびかご127等の複数のかごを含む一群のエレベータ109は、複数のフロア(たとえば一組のフロア129a~129f)を有する建築物に設置される。コントローラ123は、スケジュール107を受けた後に、1人以上の乗客をそれに応じてピックアップするために一組のフロア129a~129fにまたがって移動するようかご125および/またはかご127に対してコマンドを発行する。
図1Bは、本開示のある実施形態に係る、制御システム101のブロック図を示す。
制御システム101は、一群のエレベータ109によるサービスに対する1人以上の乗客からの現在の要求を受け付けるように構成された第1の入力インターフェイス131を含み得る。第1の入力インターフェイス131は、1人以上の乗客が、たとえば上昇ボタンまたは下降ボタンを押すことによりサービスを要求するために使用することができるデバイス(ボタン、タッチスクリーンなど)を含むダッシュボードを含み得る。別の実施形態において、第1の入力インターフェイス131は、エレベータへの乗車前に行先フロアが決定されるように行先制御(DC:Destination Control)パネルを含み得る。
さらに、制御システム101は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアの情報を含む、あるフロア(たとえばフロア129a)の上で移動している1人以上の乗客の動きの部分的な移動経路113を受けるように構成することができる第2の入力インターフェイス133を含み得る。第2の入力インターフェイス133は、センサ117(たとえばモーションセンサ)と直接通信することにより、フロア上の1人以上の乗客の動きの部分的な移動経路113を取得することができる。
第1のインターフェイス131および第2のインターフェイス133の各々は、制御システム101の他の構成要素(プロセッサ137、記憶装置139など)と、バス135を通して接続される。さらに、制御システム101は、記憶装置139に格納された命令を実行するように構成されたプロセッサ137を含む。プロセッサ137は、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、コンピューティングクラスタ、または任意の数の他の構成であってもよい。記憶装置139は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、または任意の他の適切なメモリシステムであってもよい。プロセッサ137は、制御システム101の他の構成要素にバス135を通して接続することができる。
命令は、一群のエレベータ109の動きを制御する方法を実現することができる。そのために、記憶装置139は、行先予測部141を実現するために使用されるニューラルネットワーク103として一組の命令を含み得る。行先予測部141は、1人以上の乗客の行先を予測するために実現することができる。ニューラルネットワーク103は、第2の入力インターフェイス133から部分的な移動経路113を得ることができる。部分的な移動経路113を得ると、プロセッサ137は、人物の拡張行先予測のために訓練されたニューラルネットワーク103を、人物の拡張行先予測の多項式111を生成することにより、実行することができる。プロセッサ137はさらに、1人以上の乗客からの現在の要求と、多項式111において与えられた時間インスタンスにおける1人以上の乗客の今後の要求とに対応するために、スケジュール107を最適化するように構成することができ、多項式111における対応する値の確率は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素について求められたものである。
記憶装置139の命令はさらに、すべての乗客についてパフォーマンス測定基準たとえば平均待ち時間(AWT)が最小化されるように各乗客にかご(たとえばかご125またはかご127)を割り当てるように構成されたスケジューラ105を含む。そのために、プロセッサ137はさらに、スケジュール107に従って一群のエレベータ109を制御するためにスケジューラ105を実行するように構成される。
センサ
センサ117は、そこから今後の乗客が到着する、一組のフロア129a、129b、129c、129d、129e、および129fのエリアに設置することができる。いくつかの実施形態の例において、センサ117は、人間の動きまたは存在を検出する、カメラ(たとえば一般的に建築物内の各種フロア129a~129fの廊下およびホールに設けられる監視カメラ)または近接センサ(無線アンテナ等)等の、動き検出器であってもよい。
1つ以上の実施形態の例において、センサ117としての無線アンテナは、建築物の一組のフロア129a~129fの数メートルごとに配置される。したがって、「位置N」または「テッセレーション要素N」は、乗客がアンテナ番号Nによって検出されたことを示す。複数のアンテナが乗客を検出する場合、主要な検知アンテナの正確な番号を、アンテナの固定されたタイブレーク順序によって決定することができる。
さらに、センサ117は、必ずしも、エレベータドア、または一群のエレベータ109に至る廊下だけでなく、建築物内の複数の場所で、1人以上の人物を検出するように構成することができる。そのような場合、ある人物が場所(location)l(たとえばエレベータ乗り場から50メートル離れた玄関ホール)で検出されたときに、その人物がエレベータサービスを要求する確率(probability)piは、検知されたデータを実際のサービス要求と相関させることによって求めることができる。さらに、制御システム101は、相関関係を利用することにより、スケジュール107を正確なやり方で決定する。
さらに、いくつかの実施形態は、一組のフロア129a~129f上の乗客の移動経路(たとえば部分的な移動経路113)を、スケジュール107を決定するために制御システム101が移動経路を分析するように、表現することができる、という認識に基づいている。そのような移動経路は、センサ117から得ることができる。部分的な移動経路113は、位置情報のみを含む移動経路データを含む。いくつかの実装形態において、各移動経路は、テッセレーションインデックスのシーケンスで表され、テッセレーションインデックスは、位置座標の範囲を離散化することによって得られる。さらに、位置座標の範囲は、テッセレーション要素に関連付けられる経度および緯度を表す。
制御システム101は、建築物の各フロア上で動き回っている1人以上の乗客のこれらの移動経路をデータベースに格納することができる。場合によっては、位置およびタイムスタンプの双方についてセンサ117から取得した移動経路の記録は連続変数である。したがって、連続変数を直接使用することは、シーケンス・ツー・シーケンス(sequence-to-sequence)予測部の場合、不可能な場合がある。そのため、位置データおよびタイミングデータを、テッセレーションインデックスに離散化することによって前処理してもよい。
本明細書で使用されるテッセレーションは、密にフィットさせて空隙または重なりのないパターンにした形状の配列である。形状の例は、正方形、矩形、多角形などを含む。テッセレーションが正方形の形状を使用する場合、そのようなテッセレーションは、構造格子または単に格子と呼ぶこともできる。テッセレーションが、寸法が異なる矩形形状を使用する場合、そのようなテッセレーションは、非構造格子と呼ぶこともできる。異なる実施形態において、テッセレーション要素は、エレベータシステムによってサービスされるエリアのレイアウトにより適切にフィットするように、同一のまたは異なる形状を有することができる。
図1Cは、本開示の実施形態の一例に係る、多項分布の構造格子の規則的なテッセレーション要素143でフロアを量子化することを示す。
いくつかの実施形態は、規則的なテッセレーション要素143により、フロア上の1人以上の乗客の移動経路の計算が容易になる、という認識に基づいている。そのために、一組のフロア129a~129fのうちの各フロアは、各フロアのエリアが等しく分割されるように、一定の値に基づいて量子化される。そのような量子化に基づいて、量子化されたフロアの各テッセレーション要素に対応する部分的な移動経路113を、制御システム101によって分析することにより、多項式111を生成することができる。多項式111に基づいて、一群のエレベータ109を制御するためのスケジュール107が決定される。規則的なテッセレーション要素143の1つまたは複数のテッセレーション要素145cは、一群のエレベータによるサービスに対する要求に関連付けられるサービスエリアに対応する。サービスエリアの例は、エレベータ着床のためのエリアおよび/または第1のインターフェイス131が配置されるエリアを含む。
図1Dは、本開示の実施形態の一例に係る、多項分布の非構造格子のテッセレーション要素145でフロアを量子化することを示す。不規則なテッセレーション要素145のうちの1つまたは複数のテッセレーション要素145dは、一群のエレベータによるサービスに対する要求に関連付けられるサービスエリアに対応する。
いくつかの実施形態は、不規則なテッセレーション要素145はフロアのエリア全体を正確にカバーしフロア上の1人以上の乗客の移動経路の正確な計算を容易にし得るものである、という認識に基づいている。しかしながら、この計算は非常に複雑である場合がある。ある実施形態において、一組のフロア129a~129fは、一組のフロア129a~129fのうちの各フロア上の1人以上の乗客の移動経路を求めるために、不規則なテッセレーション要素145で量子化される。
いくつかの実施形態において、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに対応する量子化されたフロアのテッセレーション要素(たとえば規則的なテッセレーション要素143または不規則なテッセレーション要素145)の数のみに関連付けられる多項式111における情報を利用して、一群のエレベータ109を制御するためのスケジュール107を決定することができる。そのような場合、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられない、量子化されたフロアのテッセレーション要素の数は、一群のエレベータ109を制御するためにスケジュール107を決定する際に、破棄されてもよい。
いくつかの他の実施形態において、量子化されたフロアのすべてのテッセレーション要素(たとえば規則的なテッセレーション要素143または不規則なテッセレーション要素145)に関連付けられる情報を利用することにより、一群のエレベータ109を制御するためのスケジュール107を決定することができる。
図1Eは、本開示のある実施形態に係る、行先予測のための移動経路の経過時間の量子化のグラフを示す。
プロセッサ137は、上記式(2)の移動経路の表現のうち、テッセレーションインデックス自体を(括弧およびカンマなしで)保持するだけでよい。
各種実施形態において、スケジューラ105は、乗客からの現在の要求と、多項式において与えられた時間間隔におけるエレベータサービスに対する人物の今後の要求とに対応するために、一群のエレベータのスケジュールを最適化するように構成され、多項式における対応する値の確率は、サービスエリアに関連付けられるテッセレーション要素について求められたものである。このように、スケジューラ105は、今後の乗客の要求の確率を考慮する確率的スケジューラである。異なる実施形態は確率的スケジューラの異なる実装形態を使用する。しかしながら、今後の要求を確率的方法で考慮することは難しい。そのため、いくつかの実施形態は、多項式111からサンプルを生成することにより、今後の乗客の要求の確率を、計算を簡略化する決定論的方法で表す。
たとえば、一実施形態は、行先予測部141によって生成された今後の要求の確率を、現在の到着ストリームの連続集合(または連続170)を生成することによって考慮し、この場合の、現在の到着ストリームは、現在の乗客の要求119に対応する。この実施形態において、スケジューラ105は、多項式111に基づいてスケジュール107を決定し、多項式111は、各々が1人以上の乗客からの要求に関連付けられる、時間情報および行先情報を含む。そのため、スケジューラ105は、シミュレーション(たとえばモンテカルロシミュレーション)を実行し、各々がエレベータのサービスに関連付けられる現在の要求および今後の要求を含む、連続集合を形成する。
いくつかの実施形態において、連続集合は、一群のエレベータ109によってサービスされるフロア129a~129fのエリアのみを考慮することにより、行先に関連付けられる多項式111の値をフィルタリングすることによって、形成される。例として、多項式111における行先dest1、dest2、およびdest3のうちのdest2は、一群のエレベータ109によってのみサービスされるエリアである。そのような場合、多項式111は、多項式111におけるdest2のみに関する情報が連続集合を形成するよう考慮され、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連しないその他の行先(すなわちdest1およびdest3)に関する情報は破棄されるように、フィルタリングされる。
即時割当モードは、現在の乗客に対する割当が即時行われ決して再検討されないことを必要とする。しかしながら、今後の乗客に対する割当にそのような制限はない。このことは、少なくとも原則として、割当を再検討することを可能にする。しかしながら、このことは、計算の著しい増加につながる可能性があり、スケジューリングが実行される方法に対応しない可能性もある。
例として、nの連続集合のうちの1つは、発生する可能性が非常に高くはなくても全くない訳ではなく、実際将来において発生する。その場合、要求に対する割当は、即時モードで行われ、再割当は認められない。そのため、再割当モードにおいて適切な分割が決定されている場合、即時割当モードではこれを飛ばす可能性があり、そういう訳で、再割当は、今後の乗客のスケジューリングの際におそらく使用されるべきではない。
再割当モード
検知情報の種類に応じて、情報ベクトルI(t)のフォーマットに対し、いくつかのオプションが可能である。モンテカルロ連続集合の生成に使用することができる一般的なフォーマットは、センサ117とは無関係である。このフォーマットは、起点および行先のフロアの各ペアに対して到着プロセスを指定する、確率論的プロセスの行列である。
モンテカルロシミュレーションを使用することにより、ランダム変数の介入に起因して容易に予測することができないプロセスにおける異なる結果の確率をモデル化する。これは、予測および予報モデルにおけるリスクおよび不確実性の影響を理解するために使用される技術である。いくつかの実施形態は、モンテカルロシミュレーションを用いることにより、今後のサービス要求の確率的性質を、連続集合を用いて決定論的方式で表し、この場合、各連続集合は決定論的であるが、異なる時間インスタンスにおける今後の要求の確率を一括して表す。
モンテカルロシミュレーションは、数値結果を得るために繰り返されるランダムサンプリングに依拠する、広範な種類の計算アルゴリズムであってもよい。基礎となる概念は、ランダム性を用いることにより、原則的に決定論的であるかもしれない問題を解く、ということである。モンテカルロシミュレーションは、確率分布からドロー(draw)を生成するために使用することができる。モンテカルロシミュレーションは、任意のアクションの選択に対して、起こり得る結果の範囲と、それが起こり得る確率とを、意思決定部に与える。モンテカルロシミュレーションは、極端な可能性を、すなわち、一発勝負および最も控え目な意思決定の結果を、中道の意思決定の起こり得るすべての結果とともに、示し得る。さらに、モンテカルロシミュレーションは、リスク分析を、固有の不確実性を有し得る任意のファクタに対し、ある値の範囲、すなわち確率分布を代入することによって、起こり得る結果のモデルを構築することにより、実行することができる。次に、モンテカルロシミュレーションは、毎回確率関数からのランダムな値の異なる集合を用いて、結果を何度も計算する。不確実性の数とそれらに対して指定された範囲とに応じて、モンテカルロシミュレーションは、完了する前に、何千ものまたは何万もの再計算を伴い得る。したがって、モンテカルロシミュレーションは、起こり得る結果の値の分布を生成することができる。
いくつかの実施形態において、制御システム101は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素について求められた多項式111の値のモンテカルロシミュレーションを実行することにより、要求の時間の複数の組み合わせを生成することができる。要求の時間の複数の組み合わせにおける特定の時間インスタンスの発生の頻度は、多項式111における、特定の時間インスタンスと、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素との交点の値を有する、特定の時間インスタンスでの、エレベータサービスに対する今後の要求の確率である。さらに、制御システム101は、要求の時間の複数の組み合わせの各々と、現在の要求とを組み合わせることにより、複数の連続集合を生成することができる。さらに、制御システム101は、すべての連続集合の組み合わせにおける少なくとも一部の乗客について、パフォーマンスの測定基準を最適化するために、一群のエレベータ109のスケジュール107を決定することができる。実施形態の一例において、制御システム101は、モンテカルロシミュレーションを用いることにより、連続集合を実現することができる。
図1Fは、いくつかの実施形態に係る、モンテカルロシミュレーションを使用することにより、乗客の多項式111に基づいて連続集合を生成するための方法の概略図を示す。各々が異なる多項式を有する、可能性のある今後の2人の乗客について考察する(なお、彼らは同時に同一のまたは異なるフロアに存在し得る)。可能性のある今後の乗客ごとに、多項式から5つのサンプルを取り出し、その乗客は、現在のサンプルにおいてエレベータに向かっている場合、対応する連続集合についての今後の到着リスト160に含まれる。なお、空間(メモリ)消費を減じるために、取り出されたサンプルをフィルタリングする(194)ことにより、乗客がエレベータに向かっているサンプルのみを保持し、その他すべてのサンプルは破棄する。乗客1のサンプル2は、乗客1の多項式のうちの丸で囲んだ値190に対応し、乗客2のサンプル2は、乗客2の多項式のうちの丸で囲んだ値192に対応する。サンプル191および193はどちらも行先がエレベータなので、連続集合2の今後の到着リスト160に含まれる。この今後の到着リスト160を、現在の到着ストリームと組み合わせることにより、図1Gに示されるように、完全な連続集合170を生成する。
たとえば、連続集合c2におけるエントリ「(t2,p1)」は、時間t2において乗客1がエレベータに到着してエレベータサービス要求を行うことを示す。これが偶然ダウンピーク期間である場合、「p1」をさらに、到着フロアが、乗客1が現在いるフロアであり、行先フロアが、1(すなわちロビー)であると、明記することができる。連続集合の形成のさらに詳細な例は以下の通りである。より一般的な場合、「p1」は、乗客1の到着フロアおよび行先フロアとして解釈されるはずであり、したがって、到着フロアは、乗客1が現在いるフロアであり、行先フロアは、時間帯などによって決定することができる。行先フロアを設定するための、最も一般的な方法は、候補の行先フロアの均一分布からランダムに抜き出すことであり、この方法を使用する場合、ランダム性に対応するために、追加の連続集合が形成される必要がある。別の実施形態において、乗客のIDがわかっておりこの乗客が過去に移動したフロアに関する履歴データを入手できる場合、目的フロアの確率分布を、そのデータ、および、連続集合を作成するときにそこから抜き出したサンプルから、学習することができる。
図1Gは、本開示の実施形態の一例に係る、行先予測に基づいた連続集合170を具体例として表したものを示す。
図1Gにおいて、多項式111に従いモンテカルロシミュレーションに基づいて生成された25の連続集合がある。各連続集合170は、一群のエレベータ109に属するエレベータのサービスに対する1人以上の乗客の現在の要求150と今後の要求160(図1Fに示されるように生成されたもの)との組み合わせを含む。現在の要求はまた、現在の乗客の要求119を、GESによって既に登録されているがまだサービスを受けていないすべてのこれらの乗客要求とともに、含む。なお、25の連続集合のすべてについて、現在の到着ストリーム150は全く同一であるが、異なる連続集合について、今後の到着160は、今後の乗客の多項分布からどの種類のサンプルが抜き出されたかに応じて異なる。
現在の要求150の各々は、現在の乗客の要求119に関連付けられ、今後の要求の各々は、多項式111によって示される各時間インスタンスおよび行先に関連付けられ、行先は、一群のエレベータ109によってサービスされる一組のフロア129a~129fの各エリアに対応する。一群のエレベータ109によってサービスされない一組のフロア129a~129fのエリアは、考慮から外される。したがって、高い確率の今後の要求を有するより正確な連続集合が得られる。連続集合は、網羅的であり、今後の要求の起こり得るすべての結果を含む。そのような網羅的な連続集合により、すべての乗客のAWTを効果的に最適化することができる。連続集合のうちの各連続集合は、現在の要求および今後の要求に関連付けられる時間情報を含む。
例として、8階建ての建築物が存在し各フロア(1~8で示される)が1つのエレベータ群を有するものとする。出発時間は、t0=5:00:00pmである。既存の到着ストリームは、{(5:00:00pm,8,1),(5:00:02pm,7,1)}である。
経過時間の量子化間隔をΔt=0.01秒、予測期間をT=15秒とすると、行先予測部141から抽出された今後の到着情報は、フロア7で、乗客1が、エレベータに9秒で(経過時間のテッセレーションインデックスが900)到着する確率が80%、9.5秒で(経過時間のテッセレーションインデックスが950)到着する確率が20%、フロア8で、乗客2が、エレベータに10秒で(経過時間のテッセレーションインデックスが1000)到着する確率が20%、10.2秒で(経過時間のテッセレーションインデックスが1020)到着する確率が60%、10.6秒で(経過時間のテッセレーションインデックスが1060)到着する確率が20%であることを、示し得る。
さらに、各連続集合は異なる時間インスタンスにおける今後の要求の確率を表すので、各連続集合は事実上決定論的である。したがって、制御システム101は、連続集合を使用し、現在および今後のサービス要求の双方を考慮して、一群のエレベータ109を制御するために、スケジューラ105を介してスケジュール107を決定する。
スケジューリング
図1Hは、本開示の実施形態の一例に係る、連続集合に基づいた一群のエレベータ109のかごのスケジューリングの概略図を示す。
いくつかの実施形態において、行先予測部141は、一群のエレベータ109の外部の完全な移動経路を扱うことができる。言い換えると、行先予測部141は、特に興味のあるエレベータかごで行先に到着する時間を予測するために使用される。最も一般的な場合、乗客がエレベータかご(かご125またはかご127)に乗ると、この乗客の行先フロアは、要求された方向(たとえば上または下)の、(一組のフロア129a~129fのうちの)残りのフロアのいずれかの可能性がある。さらに、エレベータかごによってまだピックアップされていない乗客の行先フロアの不確実性に関して待ち時間の予想を考慮してもよい。場合によっては、アップピークまたはダウンピーク期間中に、すべての乗客の(一組のフロア129a~129fのうちの)行先フロアが一意に指定される。要求を受けたことに応じて、スケジューラ105は、パフォーマンス測定基準が実現されるように、たとえばすべての乗客の平均待ち時間(AWT)が最小化されるように、エレベータかごを各乗客に割り当てる。
いくつかの実施形態は、現在の時間および今後の時間間隔中にエレベータを要求するすべての乗客についてのAWTの最小化を、エレベータ群スケジューリング(GES)問題として定式化することができる、という認識に基づいている。
そのような認識に基づいた、GESシステムの目的は、現在の時間および今後の時間間隔においてエレベータを要求するすべての乗客のAWTを最小化することにより、一群のエレベータ109を制御するためにスケジュール107を最適化することである。そのために、制御システム101は、各行先の情報を対応する時間インスタンスとともに示す現在の要求および今後の要求の網羅的なリストを含む連続集合の情報を利用することができる。
したがって、制御システム101は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられる多項式111において与えられた時間インスタンスにおけるエレベータサービスについて、連続集合の取得後に、乗客からの現在の要求と、人物の今後の要求とに対応するよう、一群のエレベータ109のスケジュール107を最適化する。
スケジュール107の最適化に基づいて一群のエレベータ109が制御される。例として、図1Hは、下方向に到着時間taを示し、時間は、その要求が対応済の乗客についての時間間隔t1と、割当が未対応の乗客についての時間間隔t2と、現在の時間tcと、今後の時間間隔t3とに分割されている。実線の上昇記号および下降記号は現在の要求を示し、点線の上昇記号および下降記号は今後の要求を示す。さらに、文字AおよびBはかご(かご1およびかご2)を表す。時間間隔t1において、かごの連続的な選択が決定木として構成される。今後の時間間隔t3中に、要求は即時割当モードで満たされる。
すべての連続集合についてのAWTが、現在の乗客の要求(この場合はかご1またはかご2のいずれか)の暫定的な割当ごとに計算され、次に、最短AWTのかごの選択が、現在の時間tcにおける現在の乗客の要求に対する割当のために使用される。言い換えると、スケジューラ105は、現時点で利用できるすべてのかごについて、既存の乗客および可能性のある今後の乗客の集合が、どれだけの間待つことになるかを比較する。複数の連続集合は、この計算が、乗客到着ストリームについて、1つだけでなくより多くの可能な今後の実現について考慮することを、保証する。したがって、一群のエレベータ109に属するかご(かご1およびかご2)は、スケジュール107の最適化に従ってスケジューリングされる。
図2Aは、本開示の実施形態の一例に係る、ニューラルネットワーク103のブロック図を示す。行先予測部141は、1人以上の乗客の今後の要求を予測するために、ニューラルネットワーク103によって実現することができる。いくつかの実施形態において、ニューラルネットワーク103は、モデルベースの方法に基づいて実現することができ、モデルベースのアプローチは、過去に観察されたデータ(たとえば部分的な移動経路113)の長いシーケンスを扱う場合に困難に遭遇する。なぜなら、初期の情報は長いシーケンスに遭遇すると消失する傾向があるからである。
これに代えて、いくつかの他の実施形態において、ニューラルネットワーク103は、深層学習ベースの方法に基づくことができる。そのような実施形態は、深層学習ベースの方法が自然言語問題を克服することができかつ行先/移動経路予測のような非言語アプリケーションにも適合可能である、という認識に基づいている。深層学習ベースのニューラルネットワークの例は、可変長時間シーケンスデータを扱う回帰型ニューラルネットワーク(RNN)を含み、(時間シーケンスデータに対応する)移動経路をRNNを通して予測することにより、今後の要求を予測することができる。RNNの例は、長・短期記憶(LSTM)ベースのニューラルネットワーク、双方向長・短期記憶(BiLSTM)ベースのニューラルネットワークなどを含み得るが、これらに限定される訳ではない。
図2Aにおいて、ニューラルネットワーク103は、入力ゲートと忘却ゲートと出力ゲートとを含むLSTMベースのニューラルネットワークである。これらのゲートの各々は、順方向(または多層)ニューラルネットワークにおける「標準的な」ニューロンに対応する、すなわち、加重和の活性化を(活性化関数を用いて)計算する。さらに、it、otおよびftはそれぞれ、時間ステップtにおける入力ゲート、出力ゲート、および忘却ゲートの活性化を表す。メモリセルcから3つのゲートi、o、およびfへの3つの矢印は、覗き穴(peephole)結合を表す。これらの覗き穴結合は、時間ステップt-1におけるメモリセルcの活性化の寄与、すなわち、寄与ct-1を示す。言い換えると、ゲートi、o、およびfは、時間ステップt-1におけるメモリセルcの活性化も考慮する、時間ステップtにおけるこれらの活性化(すなわちそれぞれit、ot、およびft)を計算する。メモリセルcから出ている左から右への1つの矢印は、覗き穴結合ではなくctを表し、「×」記号は入力間の要素単位の乗算を表す。さらに、LSTMベースのニューラルネットワークは、加重和への微分可能関数(シグモイド関数と同様)を含む。
動作時に、忘却ゲートは、センサ117によって検出された部分的な移動経路113を受ける。忘却ゲートは、セル状態と呼ばれることもある、入力データ(部分的な移動経路113)から、どのような情報を破棄するかを決める。たとえば、以前の出力および新規出力を、シグモイド隠れ層を通して送ることができる。隠れ層内の各ニューロンは、(たとえば関連するパラメータによって重み付けされた)入力のエントリの加重和を計算し、それに対してバイアス値を加算することができる。次に、結果として得られるスカラーは、シグモイドσと名付けられた特定の非線形関数を通して送ることができる。次に、そのようなプロセスの出力を、ニューロンによって次のステップに設定することができる。忘却ゲートの出力は、入力ゲートに与えられる。
さらに、入力ゲートは、どのような新規情報をセル状態に保存するかを決定する。そのために、以前の出力および新規入力を、シグモイド隠れ層を通して送ることができ、いくつかの実施形態では、別々に、以前の出力および新規入力を、隠れ層を通して送ることができる。これらの2つの異なる層の違いは、各ニューロンの個々の計算の出力に適用される非線形関数の種類のみである(たとえば一方がシグモイドσ、他方がtanh)。セルの状態は、入力ゲートの出力に基づいて更新することができる。
さらに、出力ゲートは、LSTMベースのニューラルネットワークの出力を、更新されたセル状態と、以前の出力と、現在の入力とに基づいて、決定する。以前の出力および新規入力はいずれもシグモイド隠れ層を通して送ることができる。結果は、更新されたセル状態ベクトルCtでポイントごとに乗算することができ、出力は、結果として得られた、多項式111に対応するベクトルhtである。LSTMベースのニューラルネットワークは、忘却ゲートを通して情報を破棄することを含むので、多項式111は、出力で正確に得られないことがある。
図2Bは、本開示の実施形態の別の例に係る、ニューラルネットワーク103のブロック図を示す。
いくつかの実施形態は、トランスフォーマアーキテクチャのアテンションメカニズムが、シーケンス内の要素の依存性をそれらの距離を考慮することなくモデル化することを可能にし、トランスフォーマアーキテクチャのそのような利点は、音声関連用途に限定されず、拡張行先予測タスクについても当てはまる、という認識に基づいている。
したがって、そのような実施形態において、行先予測部141は、エンコーダ-デコーダ構造を有する、専らアテンションベースの行先予測部であってもよい。アテンションベースの行先予測部は、トランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワークを用いて実現することができる。行先予測部141は、N個のエンコーダ201ブロックおよびN個のデコーダ203ブロックのスタックを含み得る。さらに、N個のエンコーダ201ブロックおよびN個のデコーダ203ブロックの各々のスタックは、セルフアテンションおよび全結合フィードフォワード層の構成要素のスタックを、トランスフォーマアーキテクチャが、並列化を可能にする、位置符号化およびアテンションメカニズムを使用する態様で、含む。
図2Bに示されるように、最初に、入力移動経路205は、埋め込み・位置符号化ブロック207を通過し、ここで、入力トークンを埋め込み層によってdmodel次元ベクトルに変換することができ、トークンは離散要素であってもよい。さらに、この入力の要素に関する順序情報を、位置符号化を用いて得ることができ、次に、埋め込みベクトルと組み合わせて、加法演算を通して新規ベクトルを得る。さらに、新規ベクトルを、マルチヘッドアテンションブロック209を通してエンコーダ201に送り込むことができる。エンコーダ201におけるアテンションは、特定のトークンを符号化しようとするときに入力移動経路205における他のトークンを参照するための手段として使用することができる。
マルチヘッドアテンションブロック209は、スケーリングされたドット積アテンション成分のアレイからなるものであってもよく、アテンション関数は、データ行列Xに基づいて計算することができる。データ行列は、訓練において学習された3つの異なる行列を用いて投影することができ、それぞれクエリ、キー、および値を表す投影された行列Q、KおよびVが得られる。
いくつかの実施形態において、マルチヘッドアテンションメカニズムは、改善された表現パフォーマンスを生み出すために、学習された異なる投影を用いて複数のアテンション関数を計算することを含む。
さらに、エンコーダ201における加算・正規化ブロック211は、残余の結合を、層正規化(RLN)とともに含み得るものであり、層正規化は、マルチヘッドアテンションブロック209への入力を、マルチヘッドアテンションブロック209の出力と結合し、これらを加算し、次に正規化することができる。得られた要素はさらに、フィードフォワードサブ層213を通過し、続いて、もう1つの加算・正規化ブロック215を通過し、これは、エンコーダ201から出る過程でRLN結合を含む。加算・正規化ブロック215は、フィードフォワード層213への入力を、フィードフォワード層213の出力に結合し、これらを加算し、次に正規化することができる。
さらに、ターゲット出力移動経路217は、マスクされたマルチヘッドアテンションブロック221に入る前に、埋め込み・位置符号化ブロック207と同様であってもよい、埋め込み・位置符号化ブロック219を通過することができる。マスクされたマルチヘッドアテンションブロック221要素は、マスクされたマルチヘッドアテンションブロック221が先行する出力移動経路位置のみを参照できるように、出力移動経路217がマスクされる点を除いて、エンコーダ201のマルチヘッドアテンションブロック209と同様であってもよい。さらに、残余の結合を層正規化(RLN)とともに含む加算・正規化ブロック223が、マスクされたマルチヘッドアテンションブロック221への入力を、マスクされたマルチヘッドアテンションブロック221の出力と結合し、これらを加算し、その後正規化することができる。
加算・正規化ブロック223の後に、もう1つのマルチヘッドアテンションブロック225が存在してもよく、これは、マルチヘッドアテンションブロック225がアテンションの計算において追加の入力としてエンコーダ出力からの情報を使用することを除いて、エンコーダ201のマルチヘッドアテンションブロック209と、同様であってもよい。
さらに、もう1つの加算・正規化ブロック227が、マルチヘッドアテンションブロック225への入力を、マルチヘッドアテンションブロック225の出力と結合し、これらを加算し、次に正規化することができる。得られた要素はさらに、フィードフォワードサブ層229を通過し、続いて、デコーダ203から出る過程で、もう1つの加算・正規化ブロック231を通過することができる。加算・正規化ブロック231は、フィードフォワード層229への入力を、フィードフォワード層229の出力と結合し、これらを加算し、次に正規化することができる。
デコーダ203の外部に、線形層・ソフトマックスブロック233が存在してもよく、これは、デコーダ203の出力を取り込んで、すべての可能な出力要素について論理ベクトルを作成することができる。さらに、線形層・ソフトマックスブロック233は、ソフトマックス演算を実行して、論理ベクトルにおける値を変換することにより、予測された到着情報を含む確率を示す多項式111を出力することができる。多項式111から最大値およびそのインデックスを抽出することにより、予測された行先の位置を特定する、または、到着時間の既存の到着ストリームの連続等の複数の実現化を、1つ以上の行先としての一組のフロア129a~129fのうちの複数のフロアまたは特定のフロア上のエレベータかご(たとえばかご125またはかご127)とともに、生成することができる。実施形態の一例において、行先予測部141を、トランスフォーマベースの行先予測部として訓練する場合、KLダイバージェンス損失関数を、複数のエポックにわたって最小化することができ、グリーディデコード方式を、出力される行先を発見する方法として使用することができる。
したがって、訓練内での並列化を禁止することができる順次方式でシーケンスを扱うRNNとは異なり、トランスフォーマアーキテクチャは、位置符号化およびアテンションモジュールを並列化のために使用し、その結果、より効率的な訓練手順である。並列化により、トランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワークは、高処理速度でデータを処理するように構成され、好ましいニューラルネットワークアーキテクチャである。
訓練
実施形態の一例において、トランスフォーマアーキテクチャに基づく行先予測部141は、N=4個のエンコーダ/デコーダブロックを、4レベルスタック長・短期記憶(LSTM)/双方向長・短期記憶(BiLSTM)モデルとともに、含み得る。
トランスフォーマアーキテクチャに基づいて行先予測部141を訓練するために、実際のおよび/またはシミュレートされた屋内移動が、異なる実施形態によって使用される。たとえば、SimTreadシミュレーションソフトウェアを使用することにより、作成されたフロアアーキテクチャに基づいた屋内設定において移動経路を生成することができる。これに加えてまたはこれに代えて、一実施形態では、シミュレートされたデータに基づく、最初に訓練されたニューラルネットワーク103が、その動作中に、部分的な移動経路および最終的な行先の実際の測定値に基づいて、さらにオンラインで訓練される。データセットの訓練が少数の移動経路を含む場合、平均パフォーマンスを得るための一つ抜き交差検証(LOOCV:Leave-One-Out Cross-Validation)技術は、休止予測モデルをもたらし得る。
さらに、所与の合計S個のサンプル(移動経路)に対し、S回の繰り返しを実行することができ、各繰り返しにおいて、S個の移動経路のうちの1つをモデルテストに、残りのS-1個の移動経路をモデル訓練に使用することができる。1回の繰り返しにつき、正しい行先確率のアレイを、クエリテスト移動経路の百分率を高めることによって得ることができる。そのような確率アレイをすべてのS回の繰り返しについて平均することにより、所与のモデルの平均行先予測パフォーマンスを得ることができる。
制御システム101はさらに、連続集合の生成について、潜在的な今後の到着の時間間隔の長さを表す予測の期間すなわち予測期間Tを含み得る。計算リソースの可用性に応じて、大きなまたは小さなTを選択することができる。一組のフロア129a~129fのうちの各フロア上で、センサ117が、現在の時間tまでのすべての歩行者の移動を監視するものとし、プロセッサ137が、時間間隔[t,t+T]内の候補となる今後の到着の、一組の部分的な移動経路(たとえば部分的な移動経路113)を特定するものとする。
いくつかの実施形態において、制御システム101におけるニューラルネットワーク103(LSTMベースのニューラルネットワーク、トランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワークなど)を、オンラインで訓練することができる。いくつかの他の実施形態において、制御システム101におけるニューラルネットワーク103(LSTMベースのニューラルネットワーク、トランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワークなど)を、オフラインで訓練(予め訓練)することができる。いくつかの他の実施形態において、制御システムにおけるニューラルネットワーク103(LSTMベースのニューラルネットワーク、トランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワークなど)を、一部はオフラインで訓練し、一部はオンラインで訓練することができる。
図2Cは、本開示のある実施形態に係る、建築物内のあるフロアのレイアウトを、訓練のための歩行者の複数の移動経路および行先予測部141のテストのための歩行者の1つの部分的な移動経路とともに示す。
いくつかの実施形態において、部分的な移動経路113は、位置情報のみを含む移動経路を含み得るものであり、この場合、各移動経路は、テッセレーションインデックスのシーケンスで表すことができる。テッセレーションインデックスは、位置座標の範囲を離散化することによって得ることができ、この場合、位置座標の範囲は、フロアに対応するテッセレーション要素に関連付けられる経度および緯度を表すことができる。別の実施形態において、部分的な移動経路113は、位置情報およびタイミング情報の双方を含む移動経路を含み得る。さらに、各移動経路は、テッセレーションインデックスのタプルのシーケンスによって表すことができ、この場合、各タプルは、位置座標の範囲および予測の期間を離散化することによって得られたテッセレーションインデックスを含み得る。予測の期間は、今後の乗客の要求に対して制御システム101が考慮する最大時間であってもよい。
図2Cに示されるように、フロア235上の位置の座標を、テッセレーションインデックス237に離散化することにより、移動経路の表現を簡略化する。フロア235の連続空間を、50×50テッセレーションに離散化し、各移動経路を、トランスフォーマアーキテクチャへの入力の役割を果たすテッセレーションロケーションのシーケンスに変換する。総合的に、このデータは、一日のうちのある期間中の、あるフロア全体にわたる単一のユーザの移動を模倣する役割を果たすことができ、ユーザが訪れた行先は、手洗い、階段、エレベータ、および休憩室等の、主にアクセスされた現実の屋内の行先を表し得る。各訓練移動経路239(すなわち履歴移動経路)は、それ自身の出発ポイント241と最終的に確定した行先243とを有し得るものであり、各テスト移動経路245(すなわち新規移動経路)はそれ自身の出発ポイント247を有し得るが、テスト移動経路245にはまだ確定した行先249がなく、この行先は、制御システム101の行先予測部141によって予測される。訓練移動経路239で訓練された行先予測部141は、この人物の可能性のある行先と、この人物が対応する行先に到着する時間とを、この人物の部分的な移動経路に基づいて、正確に予測することができる。
実施形態の一例において、多層階建築物の各フロアは、それ自身のレイアウトと行先予測部141とを有し得る。別の実施形態において、行先予測部141は、部分的な移動経路113がエレベータかご(たとえばかご125およびかご127)の外部にある限り、複数のフロアにわたって構築されてもよい。加えて、潜在的な乗客の予測された到着情報を示す多項式111から連続集合を生成するときに、1日のうちの時間帯を考慮するパラレルヘルパーが取り入れられてもよい。たとえば、平日のダウンピーク期間中において、典型的な乗客の行先フロアは、玄関ホールとみなされ、確率が等しいすべての残りのフロアではない。
さらに、予測推定を多項式の形態で出力するために行先予測部141を訓練することにはいくつかの利点が存在し得る。第1に、多項式は、エレベータ要求エリアに到着する確率の個別の予測を、任意の行先への到着の共同予測に置き換え、この場合、エレベータ要求エリアは行先のうちの1つである。よって、エレベータ要求エリアに到着する確率は、2つの条件が満たされる場合に、他の行先との比較で求められる。
2つの条件は、行先のリストが網羅的であることと、多項式内のすべての値の和が「1」に等しいこととを含む。第1の要件は空間量子化によって満たされ、第2の要件は行先予測部141を含むニューラルネットワーク103の訓練中に実現される。このようにして、エレベータ要求エリアへの到着の確率の拡張行先予測を単純化することができる。
図2Dは、本開示の実施形態の一例に係る、トランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワーク、長・短期記憶(LSTM)ベースのニューラルネットワーク、および双方向長・短期記憶(BiLSTM)ベースのニューラルネットワークにより求められた行先予測の確率の比較のプロット251を示す。
プロット251は、X軸にプロットされた、観察されたテスト移動経路の百分率と、Y軸にプロットされた、正しい行先の確率とを含む。プロット251は、中央値パフォーマンスを、近傍の分位数挙動とともに考慮する。プロット251は、テスト移動経路の複雑さの変動を測定するために行先の確率の40番目、50番目、および60番目の分位数を示す。一つ抜き交差検証(LOOCV)アプローチを実行する際に、長さおよび訓練軌道との類似性が変動するテスト軌道に遭遇する場合がある。さらに、いくつかの分割部分について得られた行先の確率は異なり得るものであって、予測の確率がより大きく広がっていることからわかるように、ロバストな行先予測モデルは移動経路の違いを認識しそれに応じてその予測を適合させることができなければならない。
さらに、プロット251は、トランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワークが、正確な予測を行うためにより多くの観察を必要とするLSTMベースのニューラルネットワークおよびBiLSTMベースのニューラルネットワークとは異なり、移動経路の進行の早期において改善された行先予測をもたらすことが可能であることを示す。加えて、トランスフォーマアーキテクチャニューラルネットワークの正確なクラス確率の変動は、ベースライン方法に対して改善された精度を示す。
図2Eは、本開示の実施形態の一例に係る、トランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワーク、LSTMベースのニューラルネットワーク、およびBiLSTMベースのニューラルネットワークにより求められた行先予測の確率の比較のプロット253を示す。
プロット253は、真のテスト移動経路行先確率が観察されたテスト移動経路の百分率の関数である場合の行先予測の確率に対応する。プロット253は、X軸にプロットされた、観察されたテスト移動経路の百分率と、Y軸にプロットされた、正しい行先の確率とを含む。プロット253は、図2Eに示されるように、LOOCVアプローチの1つの分割部分を考慮する。この場合、テスト移動経路は、その進行の初期においていくつかの訓練移動経路と重なり始める。この重なりは、行先に関して役立つ情報を提供し、予測モデルによる認識および利用され得るものである。理想的なモデルは、初期の重なりを検出し、これを、テスト移動経路の20%のマークの付近で真の行先確率を高めることにより、説明するであろう。
よって、これらの結果は、トランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワークが、移動経路の進行の初期に行先を正確に検出することができないLSTMベースのニューラルネットワークおよびBiLSTMベースのニューラルネットワークとは異なり、その行先確率の増加によって立証されるように、この単純な低データ設定のパターンを学習することが可能であることを、示す。
図3は、本開示のいくつかの実施形態に係る、一群のエレベータ109の動きを制御するために実現された方法のステップを示す。この方法は、制御システム101の構成要素によって実行されてもよい。
この方法は、ステップ301で開始される。ステップ303において、一群のエレベータ109によるサービスに対する人物からの現在の要求が得られる。現在の要求は、人物から第1の入力インターフェイスを介して得られてもよい。
ステップ305において、この人物の動きの部分的な移動経路が得られる。一群のエレベータ109によってサービスされるエリアを含むあるフロア(たとえばフロア129a)の上で移動している人物の部分的な移動経路は、第2の入力インターフェイス133から得られてもよく、第2の入力インターフェイス133は、各種モーションセンサを含み得る。
ステップ307において、人物の動きの部分的な移動経路を受けると、部分的な移動経路に従って動く人物の拡張行先予測のために訓練されたニューラルネットワーク103を、人物の拡張行先予測の多項式(たとえば多項式111)を生成するために実行することができる。
ステップ309において、人物からの現在の要求と人物の今後の要求とに対応するために、一群のエレベータ109のスケジュール107を最適化することができる。スケジュール107は、多項式において与えられた時間インスタンスにおいてエレベータサービスを提供することによって最適化することができ、多項式における対応する値の確率は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素について求められたものである。
ステップ311において、一群のエレベータ109を、スケジュール107に従って制御することができる。スケジュール107は、すべての乗客の平均待ち時間(AWT)が最小化されることを保証する。この方法は、ステップ313で終了する。
図4は、本開示のいくつかの実施形態に係る、一群のエレベータ109の動きを制御するためにスケジュールを決定するためのモンテカルロシミュレーションに対して実現された方法のステップを示す。この方法は、制御システム101の構成要素によって実行されてもよい。
この方法は、ステップ401で開始される。ステップ403において、ニューラルネットワーク103により生成された多項式111が得られる。多項式111は、人物の行先の第1の次元と、第1の次元の行先に人物が到着した時間インスタンスの第2の次元とを含む、少なくとも2つの次元を有し、フロアは、第1の次元の行先を形成するテッセレーション要素に量子化され、少なくとも1つのテッセレーション要素は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられる。
ステップ405において、多項式111の値は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられる行先に基づいてフィルタリングすることができる。そのようにして、多項式111において示される、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアと関係がないその他の行先を破棄することにより、正確な行先予測を提供することができる。
ステップ407において、多項式111のフィルタリングされた値のモンテカルロシミュレーションを、要求の時間の複数の組み合わせを生成するために、実行することができる。要求の時間の複数の組み合わせにおける特定の時間インスタンスの発生の頻度は、多項式における、特定の時間インスタンスと、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素との交点の値を有する、特定のインスタンスでの、エレベータサービスに対する今後の要求の確率である。
ある代替の実施形態において、このステップは省略される。なぜなら、前のステップにおけるサンプルは既に到着時間を含んでいるからである。いくつかの他の実施形態において、サンプリングが如何にして行われるかに応じて、このステップを選択する。1つのアプローチは、多項式のセルを、このセル内の値に等しい確率に従って選び出す。各セルは、行先と時間との組み合わせに対応するので、時間成分は既にサンプル内に存在することになる。
ステップ409において、要求の時間の複数の組み合わせを現在の要求と組み合わせることにより、複数の連続集合を生成することができる。いくつかの実施形態において、連続集合は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアのみを考慮した行先のフィルタリングを通して形成される。
ステップ411において、一群のエレベータ109のスケジュール(たとえばスケジュール107)を決定することができ、スケジュール107は、連続集合のすべての組み合わせにおける少なくとも一部の乗客についてパフォーマンスの測定基準を最適化するように、決定される。
ステップ413において、一群のエレベータ109を、スケジュール107に従って制御することができる。スケジュール107は、すべての乗客についての平均待ち時間(AWT)が最小化されることを保証する。この方法は、ステップ415で終了する。
実施形態の一例において、建築物の各フロアにモーションセンサが設置される。たとえば、モーションセンサは、すべてのキャビン、廊下、カフェテリアなどに設置することができる。モーションセンサは、各フロアをテッセレーションまたはテッセレーション要素に量子化するために使用することができる。そうすると、各テッセレーション要素は、フロア上の特定のエリアに設置されたモーションセンサに対応する。テッセレーション要素は、規則的な形状であっても不規則な形状であってもよい。モーションセンサは、常時1人以上の乗客の動きを追跡することができる。
今後の到着の予測の対象期間を10秒とする。モーションセンサは、モーションセンサのうちのいずれかがフロアのエレベータ要求エリアの付近でしきい値量を超える乗客を確認した場合に、ニューラルネットワーク103ベースの行先予測部141をトリガできるように、構成することができる。そうすると、行先予測部141は、直近の10秒間のすべての乗客の部分的な移動経路113を取り出すことができる。各乗客の部分的な移動経路113は、別々に判断されてもよく、同一ルートに沿って進んでいるまたは移動している他の乗客と組み合わせて判断されてもよい。取り出されたデータに基づいて、行先予測部141は、潜在的な今後の乗客の到着情報を多項式111の形態で予測する。次に、多項式111を制御システム101が使用することにより、スケジューラ105がそれに基づいてスケジュール107を決定する、連続集合を求めることができる。
実施形態の別の例において、制御システム101は、エレベータによってサービスされるエリアに到着する企業の従業員ごとにトリガされるように構成されてもよい。そのために、建築物内のすべての従業員に、対応する従業員のIDを認識するために各フロアに設置されたモーションセンサによる読取が可能な電子IDカードを、提供してもよい。電子IDカードは、たとえば、無線周波数ID(RFID)カード/タグであってもよいが、これに限定される訳ではない。制御システム101は、すべての従業員の識別情報が保存されたデータベースを含み得る。この情報は、従業員の名前、従業員が働いているフロアに関する情報、従業員の履歴移動経路、従業員の勤務シフトタイミングなどを、含み得る。
本開示の実施形態は、一群のエレベータ109によるサービスに対する1人以上の乗客からの現在の要求と、一群のエレベータ109によってサービスされる1つ以上のエリアを含むフロア上で移動している1人以上の乗客の動きの部分的な移動経路113とに基づいて、一群のエレベータ109の動きを制御する制御システム101を含む。ある好ましい実施形態において、制御システム101は、部分的な移動経路113に基づく拡張行先予測のために訓練されたトランスフォーマアーキテクチャベースのニューラルネットワークを含む。特に、制御システム101は、ニューラルネットワーク103を実行することにより、各乗客の部分的な移動経路に基づいた1人以上の乗客の拡張行先予測の多項式を生成する。多項式は、各乗客の、可能性のある行先と、可能性のある、各乗客が行先に到着する時間インスタンスとを含む。多項式は、フロアを、可能性のある行先を形成するテッセレーション要素に量子化し、さらに、予測の期間を時間インスタンスに量子化することにより、決定される。予測の期間は、1人以上の乗客の今後の要求について制御システム101が考慮する最大時間である。
本開示の実施形態は、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素について求められた多項式の値のモンテカルロシミュレーションを実行することにより、要求の時間の複数の組み合わせを生成する。要求の時間の複数の組み合わせにおける特定の時間インスタンスの発生の頻度は、多項式における、特定の時間インスタンスと、一群のエレベータ109によってサービスされるエリアに関連付けられるテッセレーション要素との交点の値を有する、特定の時間インスタンスでの、エレベータサービスに対する今後の要求の確率である。本開示の実施形態は、要求の時間の複数の組み合わせの各々を、現在の要求と組み合わせることにより、複数の連続集合を生成し、さらに、すべての連続集合の組み合わせにおける少なくとも一部の乗客について、パフォーマンスの測定基準(たとえば平均待ち時間)を最適化するために、一群のエレベータ109のスケジュール107を決定する。
また、本明細書で概要を述べたさまざまな方法またはプロセスは、多様なオペレーティングシステムまたはプラットフォームのうちのいずれか1つを採用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとして符号化されてもよい。加えて、そのようなソフトウェアは、複数の適切なプログラミング言語および/またはプログラミングもしくはスクリプトツールのうちのいずれかを用いて記述されてもよく、フレームワークまたは仮想マシン上で実行される、実行可能な機械語コードまたは中間コードとしてコンパイルされてもよい。典型的に、プログラムモジュールの機能は、各種実施形態において所望される通りに組み合わせるまたは分散させることができる。
また、本開示の実施形態は、方法として実施され得るものであり、その一例が提供されている。この方法の一部として実行される動作の順序は任意の適切なやり方で決定することができる。したがって、実施形態は、例示されている順序と異なる順序で動作が実行されるように構成されてもよく、これは、いくつかの動作を、例示されている実施形態では一連の動作として示されていても、同時に実行することを含み得る。さらに、請求項では請求項の要素を修飾するために「第1の」、「第2の」といった順序を表す用語が使用されるが、これは、それ自体で、ある請求項要素の、別の請求項要素に対する、何らかの優先、先行、もしくは順序を、または、方法の動作が実行される時間的な順序を示唆する訳ではなく、何らかの名称を有するある請求項要素を同一名称(順序を表す用語の使用を除く)を有する別の要素と区別するためのラベルとして使用されてこれらの請求項要素を特徴付けるにすぎない。
本開示をいくつかの好ましい実施形態を参照しながら説明してきたが、本開示の精神および範囲の中でさまざまな他の適合化および修正が可能であることが理解されるはずである。したがって、以下の請求項の特徴は、本開示の真の精神および範囲に含まれるそのような変形および修正のすべてをカバーすることである。